(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032279
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車載用の電力供給装置、及び車載用の電力供給装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240305BHJP
H02H 3/087 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
H02J1/00 306A
H02H3/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135853
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中口 真之介
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB03
5G004BA04
5G004DA04
5G004DA05
5G004EA01
5G165BB04
5G165EA02
5G165GA04
5G165JA04
5G165LA02
5G165NA05
5G165PA05
(57)【要約】
【課題】複数の第1負荷を搭載する車両と、第1負荷よりも定格電流の大きい第2負荷を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置を、大型化を抑制しつつ実現する。
【解決手段】車載用の電力供給装置10は、共通経路12と、複数の分岐路(第1分岐路20)と、各々の分岐路(第1分岐路20)に設けられる遮断部(第1遮断部25)と、を備える。各々の分岐路(第1分岐路20)は、上流側導体(第1上流側導体21)と、下流側導体(第1下流側導体22)と、を有する。各々の遮断部(第1遮断部25)は、上流側導体(第1上流側導体21)と下流側導体(第1下流側導体22)との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に許容状態から遮断状態に切り替わる。複数の下流側導体(第1下流側導体22)は、導通部材80を介して互いに導通され得る構成である。各々の下流側導体(第1下流側導体22)には、導通部材80に接続される接続部26が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部に基づく電力が供給される共通経路と、
前記共通経路から分岐した複数の分岐路と、
各々の前記分岐路に設けられる遮断部と、を備え、
各々の前記分岐路は、上流側導体と、前記上流側導体よりも前記共通経路側とは反対側に設けられる下流側導体と、を有し、
各々の前記遮断部は、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に前記上流側導体側から前記下流側導体側への電流の流れを許容する許容状態から遮断する遮断状態に切り替わり、
複数の前記下流側導体は、導通部材を介して互いに導通され得る構成であり、
各々の前記下流側導体には、前記導通部材に接続される接続部が設けられる
車載用の電力供給装置。
【請求項2】
前記遮断部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1制御と第2制御とを選択的に実行可能であり、
前記第1制御は、各々の前記分岐路を流れる電流値に基づき前記分岐路の各々について前記遮断条件の一つである個別遮断条件が成立したか否かを判定し、前記個別遮断条件が成立したと判定した前記分岐路に設けられた前記遮断部を前記遮断状態に切り替える制御であり、
前記第2制御は、少なくとも一の前記分岐路を流れる電流値に基づき前記遮断条件の一つである一括遮断条件が成立したか否かを判定し、前記一括遮断条件が成立したと判定した場合に、複数の前記分岐路に設けられた前記遮断部の各々を前記遮断状態に切り替える制御である
請求項1に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1制御及び前記第2制御のうちいずれの制御を実行するかを指示する信号が外部から与えられた場合に、前記信号が指示する制御を実行する
請求項2に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項4】
複数の前記下流側導体が前記導通部材によって導通された導通状態であるか否かを判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記判定部によって前記導通状態でないと判定された場合に前記第1制御を実行し、前記判定部によって前記導通状態であると判定した場合に前記第2制御を実行する
請求項2に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項5】
各々の前記分岐路において、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられるスイッチ部を備え、
前記判定部は、判定開始条件が成立した場合に、複数の前記分岐路のうち一部の前記分岐路に設けられる前記スイッチ部をオン状態に制御し、且つ他の前記分岐路に設けられる前記スイッチ部をオフ状態に制御した状態で、前記一部の分岐路のうち少なくとも一の前記分岐路を流れる電流値を取得し、取得した電流値に基づいて前記導通状態であるか否かを判定する
請求項4に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項6】
前記個別遮断条件は、前記分岐路を流れる電流値が第1閾値を超えた場合に成立する条件であり、
前記一括遮断条件は、一の前記分岐路を流れる電流値に所定の乗算値を乗じた値が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合に成立する条件である
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項7】
前記上流側導体と前記下流側導体との間には、前記遮断部を含む少なくとも一の電子部品が設けられ、
前記下流側導体には、負荷を接続するための負荷側接続部が設けられ、
前記接続部は、前記少なくとも一の電子部品と、前記負荷側接続部との間において、前記負荷側接続部側に寄せて配置される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項8】
複数の前記下流側導体は、互いに平行に並んで配置される二の並列下流側導体を含み、
前記接続部は、各々の前記並列下流側導体における、前記二の並列下流側導体が伸びる方向と直交し、且つ前記二の並列下流側導体が並ぶ方向と直交する直交方向の一方側の面に設けられ、
各々の前記並列下流側導体に設けられる前記接続部は、前記二の並列下流側導体が並ぶ方向において、互いに近づく方向に寄せて配置される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項9】
各々の前記分岐路に設けられる前記遮断部は、互いに同じ型番の素子によって構成される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用の電力供給装置。
【請求項10】
電源部に基づく電力が供給される共通経路と、前記共通経路から分岐した複数の分岐路と、各々の前記分岐路に設けられる遮断部と、を備える装置本体を準備する準備工程を含み、
各々の前記分岐路は、上流側導体と、前記上流側導体よりも前記共通経路側とは反対側に設けられる下流側導体と、を有し、
各々の前記遮断部は、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に前記上流側導体側から前記下流側導体側への電流の流れを許容する許容状態から遮断する遮断状態に切り替わり、
更に、複数の前記分岐路の前記下流側導体を、導通部材によって接続させるか否かを選択する選択工程を含み、
前記装置本体に前記選択工程による選択結果を適用して車載用の電力供給装置を構成する
車載用の電力供給装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用の電力供給装置、及び車載用の電力供給装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源の電力を負荷回路に供給する電力供給装置が開示されている。この電力供給装置は、半導体スイッチと、電流検出部と、異常判定部と、を備える。半導体スイッチは、電源からの電力を負荷回路に供給する電力供給線に接続されている。電流検出部は、電力供給線に流れる電流を検出する。異常判定部は、電流検出部によって検出された電流に基づいて異常を判定する。異常判定部は、異常が発生していると判定した場合に、半導体スイッチを制御して負荷回路に流れる電流を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される負荷の定格電流や数は、車種などに応じて様々である。特許文献1の技術を利用して、これらの様々な車種などに対応可能な電力供給装置を構成しようとすると、負荷の定格電流ごとに負荷の数と同じ数の電力供給線と半導体スイッチを設ける必要があり、電力供給装置の大型化が懸念される。
【0005】
本開示は、複数の第1負荷を搭載する車両と、第1負荷よりも定格電流の大きい第2負荷を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置を、大型化を抑制しつつ実現することが可能な技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用の電力供給装置は、
電源部に基づく電力が供給される共通経路と、
前記共通経路から分岐した複数の分岐路と、
各々の前記分岐路に設けられる遮断部と、を備え、
各々の前記分岐路は、上流側導体と、前記上流側導体よりも前記共通経路側とは反対側に設けられる下流側導体と、を有し、
各々の前記遮断部は、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に前記上流側導体側から前記下流側導体側への電流の流れを許容する許容状態から遮断する遮断状態に切り替わり、
複数の前記下流側導体は、導通部材を介して互いに導通され得る構成であり、
各々の前記下流側導体には、前記導通部材に接続される接続部が設けられる。
【0007】
本開示の車載用の電力供給装置の製造方法は、
電源部に基づく電力が供給される共通経路と、前記共通経路から分岐した複数の分岐路と、各々の前記分岐路に設けられる遮断部と、を備える装置本体を準備する準備工程を含み、
各々の前記分岐路は、上流側導体と、前記上流側導体よりも前記共通経路側とは反対側に設けられる下流側導体と、を有し、
各々の前記遮断部は、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に前記上流側導体側から前記下流側導体側への電流の流れを許容する許容状態から遮断する遮断状態に切り替わり、
更に、複数の前記分岐路の前記下流側導体を、導通部材によって接続させるか否かを選択する選択工程を含み、
前記装置本体に前記選択工程による選択結果を適用して車載用の電力供給装置を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る技術は、複数の第1負荷を搭載する車両と、第1負荷よりも定格電流の大きい第2負荷を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置を、大型化を抑制しつつ実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電力供給装置を含む車載システムを概略的に例示する構成図である。
【
図2】
図2は、各々の下流側導体が導通部材によって接続されていない状態の電力供給装置を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、各々の下流側導体が導通部材によって接続された状態の電力供給装置を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の電力供給装置を含む車載システムを概略的に例示する構成図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態の電力供給装置における切替スイッチ部周辺の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0011】
〔1〕電源部に基づく電力が供給される共通経路と、
前記共通経路から分岐した複数の分岐路と、
各々の前記分岐路に設けられる遮断部と、を備え、
各々の前記分岐路は、上流側導体と、前記上流側導体よりも前記共通経路側とは反対側に設けられる下流側導体と、を有し、
各々の前記遮断部は、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に前記上流側導体側から前記下流側導体側への電流の流れを許容する許容状態から遮断する遮断状態に切り替わり、
複数の前記下流側導体は、導通部材を介して互いに導通され得る構成であり、
各々の前記下流側導体には、前記導通部材に接続される接続部が設けられる
車載用の電力供給装置。
【0012】
上記車載用の電力供給装置は、複数の下流側導体が導通部材によって接続されない場合には、複数の分岐路を別々の経路として構成する。また、上記車載用の電力供給装置は、複数の下流側導体が導通部材によって接続されることで、共通経路から複数の分岐路に供給された電流を下流側導体で合流させる経路を構成する。つまり、この構成によれば、複数の第1負荷を搭載する車両と、第1負荷よりも定格電流の大きい第2負荷を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置を、大型化を抑制しつつ実現することができる。
【0013】
〔2〕前記遮断部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、第1制御と第2制御とを選択的に実行可能であり、
前記第1制御は、各々の前記分岐路を流れる電流値に基づき前記分岐路の各々について前記遮断条件の一つである個別遮断条件が成立したか否かを判定し、前記個別遮断条件が成立したと判定した前記分岐路に設けられた前記遮断部を前記遮断状態に切り替える制御であり、
前記第2制御は、少なくとも一の前記分岐路を流れる電流値に基づき前記遮断条件の一つである一括遮断条件が成立したか否かを判定し、前記一括遮断条件が成立したと判定した場合に、複数の前記分岐路に設けられた前記遮断部の各々を前記遮断状態に切り替える制御である
〔1〕に記載の車載用の電力供給装置。
【0014】
第1制御は、複数の下流側導体が導通部材によって互いに導通されていない構成を想定した制御となっており、個別遮断条件が成立した分岐路を個別に遮断させることができる。第2制御は、複数の下流側導体が導通部材によって互いに導通された構成を想定した制御となっており、異常が生じた場合に複数の分岐路を一括して遮断させることができる。つまり、上記車載用の電力供給装置は、複数の下流側導体が導通部材によって互いに導通された構成と導通されていない構成とのそれぞれに対応した制御を選択的に実行することができる。
【0015】
〔3〕前記制御部は、前記第1制御及び前記第2制御のうちいずれの制御を実行するかを指示する信号が外部から与えられた場合に、前記信号が指示する制御を実行する
〔2〕に記載の車載用の電力供給装置。
【0016】
この構成によれば、制御部に外部から信号を与えることで、制御部に実行させる制御を制御部に指示することができる。
【0017】
〔4〕複数の前記下流側導体が前記導通部材によって導通された導通状態であるか否かを判定する判定部を備え、
前記制御部は、前記判定部によって前記導通状態でないと判定された場合に前記第1制御を実行し、前記判定部によって前記導通状態であると判定した場合に前記第2制御を実行する
〔2〕に記載の車載用の電力供給装置。
【0018】
上記車載用の電力供給装置は、導通状態であるか否かに応じて適した制御を、自動的に選択して実行することができる。
【0019】
〔5〕各々の前記分岐路において、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられるスイッチ部を備え、
前記判定部は、判定開始条件が成立した場合に、複数の前記分岐路のうち一部の前記分岐路に設けられる前記スイッチ部をオン状態に制御し、且つ他の前記分岐路に設けられる前記スイッチ部をオフ状態に制御した状態で、前記一部の分岐路のうち少なくとも一の前記分岐路を流れる電流値を取得し、取得した電流値に基づいて前記導通状態であるか否かを判定する
〔4〕に記載の車載用の電力供給装置。
【0020】
上記車載用の電力供給装置は、簡素な構成で導通状態であるか否かを判定することができる。
【0021】
〔6〕前記個別遮断条件は、前記分岐路を流れる電流値が第1閾値を超えた場合に成立する条件であり、
前記一括遮断条件は、一の前記分岐路を流れる電流値に所定の乗算値を乗じた値が前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合に成立する条件である
〔2〕から〔5〕のいずれかに記載の車載用の電力供給装置。
【0022】
上記車載用の電力供給装置は、一の分岐路を流れる電流値に基づいて一括遮断条件の成否を判定することができる。
【0023】
〔7〕前記上流側導体と前記下流側導体との間には、前記遮断部を含む少なくとも一の電子部品が設けられ、
前記下流側導体には、負荷を接続するための負荷側接続部が設けられ、
前記接続部は、前記少なくとも一の電子部品と、前記負荷側接続部との間において、前記負荷側接続部側に寄せて配置される
〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の車載用の電力供給装置。
【0024】
上記車載用の電力供給装置は、導通部材を介して合流した電流が、上流側導体と下流側導体との間に設けられる電子部品に流れることを抑えることができる。
【0025】
〔8〕複数の前記下流側導体は、互いに平行に並んで配置される二の並列下流側導体を含み、
前記接続部は、各々の前記並列下流側導体における、前記二の並列下流側導体が伸びる方向と直交し、且つ前記二の並列下流側導体が並ぶ方向と直交する直交方向の一方側の面に設けられ、
各々の前記並列下流側導体に設けられる前記接続部は、前記二の並列下流側導体が並ぶ方向において、互いに近づく方向に寄せて配置される
〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の車載用の電力供給装置。
【0026】
上記車載用の電力供給装置は、各々の並列下流側導体の接続部がいずれも上記直交方向の一方側の面に設けられているため、導通部材を接続させやすい。しかも、各々の接続部は、二の並列下流側導体が並ぶ方向において、互いに近づく方向に寄せて配置されるため、導通部材の長さを短くしやすい。
【0027】
〔9〕各々の前記分岐路に設けられる前記遮断部は、互いに同じ型番の素子によって構成される
〔1〕から〔8〕のいずれかに記載の車載用の電力供給装置。
【0028】
上記車載用の電力供給装置は、各々の分岐路における遮断部の遮断性能の均一性を確保しやすい。
【0029】
〔10〕電源部に基づく電力が供給される共通経路と、前記共通経路から分岐した複数の分岐路と、各々の前記分岐路に設けられる遮断部と、を備える装置本体を準備する準備工程を含み、
各々の前記分岐路は、上流側導体と、前記上流側導体よりも前記共通経路側とは反対側に設けられる下流側導体と、を有し、
各々の前記遮断部は、前記上流側導体と前記下流側導体との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に前記上流側導体側から前記下流側導体側への電流の流れを許容する許容状態から遮断する遮断状態に切り替わり、
更に、複数の前記分岐路の前記下流側導体を、導通部材によって接続させるか否かを選択する選択工程を含み、
前記装置本体に前記選択工程による選択結果を適用して車載用の電力供給装置を構成する
車載用の電力供給装置の製造方法。
【0030】
選択工程において、複数の下流側導体を導通部材によって接続させないことが選択された場合には、複数の分岐路を別々の経路として構成することができる。また、選択工程において、複数の下流側導体を導通部材によって接続させることが選択された場合には、共通経路から複数の分岐路に供給された電流を下流側導体で合流させる経路を構成することができる。つまり、この構成によれば、複数の第1負荷を搭載する車両と、第1負荷よりも定格電流の大きい第2負荷を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置を、大型化を抑制しつつ実現することができる。
【0031】
<第1実施形態>
1.車載用の電力供給装置10の構成
図1に示す車載用の電力供給装置10(以下、単に「電力供給装置10」とも称する)は、図示しない車両に取り付けられる。車両には、電源部90が搭載される。電源部90は、例えばバッテリなどの直流電源である。バッテリの負極側の端子は、グラウンドに電気的に接続される。
【0032】
電力供給装置10は、負荷の定格電流が異なる複数種類の車両に取り付けられることが想定されている。複数種類の車両とは、車種、グレード、仕向け地、オプションなどの違いによって少なくとも一の負荷の定格電流が異なる車両のことを意味する。
【0033】
電力供給装置10は、例えばジャンクションボックス、電気接続箱などとして構成される。電力供給装置10は、筐体11と、共通経路12と、第1分岐路20と、第2分岐路40と、を備える。
【0034】
共通経路12は、例えばバスバーによって構成され、板状をなしている。共通経路12の少なくとも一部は、筐体11内に配置される。共通経路12は、電源部90(より具体的には、バッテリの正極側の端子)に電気的に接続されている。共通経路12には、電源部90に基づく電力が供給される。
【0035】
第1分岐路20は、共通経路12から分岐した経路である。第1分岐路20は、10Aの電流が流れることを想定した経路となっている。第1分岐路20は、複数(本実施形態では2つ)設けられている。複数の第1分岐路20は、互いに平行に配置される。各々の第1分岐路20は、第1上流側導体21と、第1下流側導体22と、を有する。
【0036】
第1上流側導体21は、共通経路12に短絡した形態で共通経路12に電気的に接続される。第1上流側導体21は、例えばバスバーによって構成され、板状をなしている。第1上流側導体21の一端側は、共通経路12に固定される。固定方法は、特に限定されず、例えば半田付けであってもよいし、溶接であってもよいし、ボルトによる共締めであってもよい。
【0037】
第1下流側導体22は、第1上流側導体21よりも共通経路12側とは反対側(下流側)に設けられる。第1下流側導体22は、例えばバスバーによって構成され、板状をなしている。第1下流側導体22は、電流が流れる方向に沿って長い形態をなしている。第1下流側導体22には、負荷91を接続するための第1負荷側接続部23が設けられている。第1負荷側接続部23は、本実施形態では、ボルト(例えばスタッドボルト)を挿入するための第1挿入孔24が形成された構成として説明するが、別の構成であってもよい。例えば、第1負荷側接続部23は、負荷91側の配線部を表面実装するための実装面が形成された構成であってもよい。第1負荷側接続部23は、ボルトを用いて、負荷91に電気的に接続される。第1負荷側接続部23の第1挿入孔24に挿入されるボルトは、負荷91への電力供給経路の一部として機能する。複数の第1挿入孔24のうち、一の第1挿入孔24(より具体的には、第1挿入孔24A)は、20A以下に対応した内径となっており、他の第1挿入孔24(より具体的には、第1挿入孔24B)は、10A以下に対応した内径となっている。このため、一の第1挿入孔24(より具体的には、第1挿入孔24A)の内径は、他の第1挿入孔24(より具体的には、第1挿入孔24B)の内径よりも大きい。
【0038】
負荷91は、第1負荷92と、第1負荷92よりも定格電流が大きい第2負荷93と、を含む。第1負荷92の定格電流は、例えば10Aであり、第2負荷93の定格電流は、例えば20Aである。つまり、第2負荷93の定格電流は、第1負荷92の定格電流の整数倍(より具体的には2倍)となっている。第1負荷92は、例えば寒冷地以外向けのヒータ、チラーなどである。第2負荷93は、例えば寒冷地向けのヒータである。
【0039】
電力供給装置10は、複数の第1遮断部25を備える。第1遮断部25は、各々の第1分岐路20に設けられる。第1遮断部25は、第1上流側導体21と第1下流側導体22との間に設けられ、遮断条件が成立した場合に、第1上流側導体21側から第1下流側導体22側への電流の流れを許容する第1許容状態から遮断する第1遮断状態に切り替わる。各々の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25は、互いに同じ型番の素子によって構成される。この構成によれば、電力供給装置10は、各々の第1分岐路20における第1遮断部25の遮断性能を均一化しやすい。第1遮断部25は、本実施形態では、スイッチング素子を含む構成、より具体的には半導体スイッチング素子を含む構成である。半導体スイッチング素子を含む構成は、半導体スイッチング素子のみの構成であってもよいし、保護回路等を含む構成(例えばIPD(Intelligent Power Device)など)であってもよい。半導体スイッチング素子は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。第1遮断部25は、第1上流側導体21と第1下流側導体22とに接合される。第1遮断部25は、スイッチ部としても機能する。第1遮断部25は、半導体スイッチング素子がオン状態のときに許容状態となり、第1上流側導体21と第1下流側導体22とを導通させる。また、第1遮断部25は、半導体スイッチング素子がオフ状態のときに遮断状態となり、第1上流側導体21と第1下流側導体22とを非導通にする。つまり、第1遮断部25は、許容状態と遮断状態とに切り替わる。
【0040】
複数の第1下流側導体22は、導通部材80(
図3参照)を介して互いに導通され得る構成となっている。各々の第1下流側導体22には、導通部材80に接続される接続部26が設けられている。第1下流側導体22を構成するバスバーは、導電性の基材30と、基材の一部を覆う絶縁層31と、によって構成される。接続部26は、絶縁層31によって覆われずに露出した基材30の露出面によって構成される。接続部26は、第1遮断部25と第1負荷側接続部23との間において、第1負荷側接続部23側に寄せて配置される。この構成によれば、電力供給装置10は、導通部材80を介して合流した電流が、第1上流側導体21と第1下流側導体22との間に設けられる第1遮断部25に流れることを抑えることができる。
【0041】
上述した複数の第1下流側導体22は、互いに平行に並んで配置される二の並列下流側導体22A、22Bを含む。二の並列下流側導体22A、22Bは、厚さ方向と直交する方向に並んで配置される。接続部26は、並列下流側導体22A、22Bにおける、並列下流側導体22A、22Bが伸びる方向と直交し、且つ並列下流側導体22A、22Bが並ぶ方向と直交する直交方向(第1下流側導体22の厚さ方向)の一方側の面に設けられる。各々の並列下流側導体22A、22Bに設けられる接続部26は、並列下流側導体22A、22Bが並ぶ方向において、互いに近づく方向に寄せて配置される。つまり、並列下流側導体22A、22Bが並ぶ方向において、一方側の並列下流側導体22Aに設けられる接続部26は、他方側に寄せて配置され、他方側の並列下流側導体22Bに設けられる接続部26は、一方側に寄せて配置される。この電力供給装置10は、並列下流側導体22A、22Bの接続部26がいずれも上記直交方向の一方側の面に設けられているため、導通部材80を接続させやすい。しかも、各々の接続部26は、並列下流側導体22A、22Bが並ぶ方向において、互いに近づく方向に寄せて配置される。このため、電力供給装置10は、導通部材80の長さを短くしやすい。
【0042】
更に、一方側の並列下流側導体22Aに設けられる接続部26は、並列下流側導体22Aの他方側の端部に設けられている。他方側の並列下流側導体22Bに設けられる接続部26は、並列下流側導体22Bの一方側の端部に設けられている。このため、電力供給装置10は、導通部材80の長さを一層短くしやすい。
【0043】
導通部材80は、導電性を有しており、例えば棒状をなしている。導通部材80は、複数の第1下流側導体22の接続部26に接続され、複数の第1下流側導体22に跨って配置される。導通部材80は、複数の第1下流側導体22を互いに導通させる。導通部材80は、第1下流側導体22を互いに短絡させる。
【0044】
電力供給装置10は、複数の第1分岐路20が導通部材80によって接続されない場合には、複数の第1分岐路20を別々の経路として構成する。また、電力供給装置10は、複数の第1分岐路20が導通部材80によって接続されることで、共通経路12から複数の第1分岐路20に供給された電流を第1下流側導体22で合流させる経路を構成する。つまり、この構成によれば、複数の第1負荷92を搭載する車両と、第1負荷92よりも定格電流の大きい第2負荷93を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置10を、大型化を抑制しつつ実現することできる。
【0045】
電力供給装置10は、複数の第1電流検出部32を備える。第1電流検出部32は、各々の第1分岐路20に設けられ、第1分岐路20を流れる電流値を検出する。第1電流検出部32は、第1分岐路20における接続部26よりも共通経路12側(より具体的には、第1上流側導体21)に設けられ、第1分岐路20における接続部26よりも共通経路12側(より具体的には、第1上流側導体21)を流れる電流値を検出する。第1電流検出部32は、第1分岐路20を流れる電流値を特定可能な信号を出力する。第1電流検出部32は、例えば公知の電流センサ(本実施形態では、ホール素子)を含んで構成される。
【0046】
第2分岐路40は、共通経路12から分岐した経路である。第2分岐路40は、第2上流側導体41と、第2下流側導体42と、を有する。第2分岐路40は、第1分岐路20よりも大きい電流が流れ得る経路である。本実施形態では、第2分岐路40は、20Aの電流が流れることを想定した経路となっている。
【0047】
第2上流側導体41は、共通経路12に短絡した形態で共通経路12に電気的に接続される。第2上流側導体41は、例えばバスバーによって構成され、板状をなしている。第2上流側導体41の一端側は、共通経路12に固定される。固定方法は、特に限定されず、例えば半田付けであってもよいし、溶接であってもよいし、ボルトによる共締めであってもよい。上述した第1上流側導体21は、第2上流側導体41よりも小さい断面(電流が流れる方向と直交する方向に切断した断面)を有する。
【0048】
第2下流側導体42は、第2上流側導体41よりも共通経路12側とは反対側(下流側)に設けられる。第2下流側導体42は、例えばバスバーによって構成され、板状をなしている。第2下流側導体42は、電流が流れる方向に沿って長い形態をなしている。第2下流側導体42には、負荷91(より具体的には、第2負荷93)を接続するための第2負荷側接続部43が設けられている。第2負荷側接続部43は、本実施形態では、ボルト(例えばスタッドボルト)を挿入するための第2挿入孔44が形成された構成として説明するが、別の構成であってもよい。例えば、第2負荷側接続部43は、負荷91側の配線部を表面実装するための実装面が形成された構成であってもよい。第2負荷側接続部43は、ボルトを用いて、負荷91に電気的に接続される。第2負荷側接続部43の第2挿入孔44に挿入されるボルトは、負荷91への電力供給経路の一部として機能する。第2挿入孔44は、20A以下に対応した内径となっている。つまり、第2挿入孔44の内径は、第1挿入孔24Aの内径と同じである。なお、同じ内径とは、厳密に同じ内径に限らず、実質的に同じ内径も含む。実質的に同じ内径とは、大きい方の内径に対する第2挿入孔44の内径と第1挿入孔24Aの内径との差の割合が5%以内であることをいう。
【0049】
電力供給装置10は、第2遮断部45を備える。第2遮断部45は、第2分岐路40に設けられる。第2遮断部45は、第2上流側導体41と第2下流側導体42との間に設けられ、第2遮断条件が成立した場合に、第2上流側導体41側から第2下流側導体42側への電流の流れを許容する第2許容状態から遮断する第2遮断状態に切り替わる。第2遮断部45は、本実施形態では、スイッチング素子を含む構成、より具体的には半導体スイッチング素子を含む構成である。半導体スイッチング素子を含む構成は、半導体スイッチング素子のみの構成であってもよいし、保護回路等を含む構成(例えばIPD(Intelligent Power Device)など)であってもよい。半導体スイッチング素子は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。第2遮断部45は、第2上流側導体41と第2下流側導体42とに接合される。第2遮断部45は、第2スイッチ部としても機能する。第2遮断部45は、半導体スイッチング素子がオン状態のときに第2許容状態となり、第2上流側導体41と第2下流側導体42とを導通させる。また、第2遮断部45は、半導体スイッチング素子がオフ状態のときに第2遮断状態となり、第2上流側導体41と第2下流側導体42とを非導通にする。つまり、第2遮断部45は、第2許容状態と第2遮断状態とに切り替わる。
【0050】
電力供給装置10は、第2電流検出部52を備える。第2電流検出部52は、第2分岐路40に設けられ、第2分岐路40を流れる電流値を検出する。第2電流検出部52は、第2分岐路40を流れる電流値を特定可能な信号を出力する。第2電流検出部52は、例えば公知の電流センサ(本実施形態では、ホール素子)を含んで構成される。
【0051】
電力供給装置10は、第1遮断部25及び第2遮断部45を制御する制御部50を備える。制御部50は、例えばMCU(Micro Controller Unit)、スイッチング素子の駆動回路などを含んで構成される。制御部50は、各々の第1電流検出部32から出力される信号を受信して、各々の第1分岐路20を流れる電流値を取得する。制御部50は、第2電流検出部52から出力される信号を受信して、第2分岐路40を流れる電流値を取得する。
【0052】
制御部50は、第1制御と第2制御とを選択的に実行可能である。第1制御は、複数の第1下流側導体22が導通部材80によって互いに導通されていない構成を想定した制御である。第1制御は、各々の第1分岐路20を流れる電流値に基づき第1分岐路20の各々について第1遮断条件の一つである個別遮断条件が成立したか否かを判定し、個別遮断条件が成立したと判定した第1分岐路20に設けられた第1遮断部25を第1遮断状態に切り替える制御である。
【0053】
第2制御は、複数の第1下流側導体22が導通部材80によって互いに導通された構成を想定した制御である。第2制御は、少なくとも一の第1分岐路20を流れる電流値に基づき第1遮断条件の一つである一括遮断条件が成立したか否かを判定し、一括遮断条件が成立したと判定した場合に、複数の第1分岐路20に設けられた第1遮断部25の各々を第1遮断状態に切り替える制御である。この構成によれば、電力供給装置10は、複数の第1下流側導体22が導通部材80によって互いに導通された構成と導通されていない構成とのそれぞれに対応した制御を選択的に実行することができる。
【0054】
制御部50は、第1制御及び第2制御のうちいずれの制御を実行するかを指示する信号が外部から与えられた場合に、当該信号が指示する制御を実行する。この構成によれば、制御部50に外部から信号を与えることで、制御部50に実行させる制御を制御部50に指示することができる。外部からの指示は、基本的に、電力供給装置10が車両に搭載される前に行われる。
【0055】
制御部50は、第2分岐路40を流れる電流値に基づき第2遮断条件が成立したか否かを判定し、第2遮断条件が成立したと判定した第2分岐路40に設けられた第2遮断部45を第2遮断状態に切り替える。
【0056】
個別遮断条件は、第1分岐路20を流れる電流値が第1閾値を超えた場合に成立する条件である。個別遮断条件は、第1分岐路20を流れる電流値が第1閾値を超えた場合に直ちに成立する条件であってもよいし、第1分岐路20を流れる電流値が第1閾値を超えた状態が第1所定時間継続した場合に成立する条件であってもよい。第1所定時間は、第1分岐路20を流れる電流値が第1閾値を超える度合いによって変化してもよい。例えば、第1所定時間は、第1分岐路20を流れる電流値が第1閾値を超える度合いが大きくなるほど短くなってもよい。個別遮断条件は、複数の電流値と各々の電流値に対応する第1所定時間との対応関係を示す第1対応データと、第1分岐路20を流れる電流値とに基づいて成立する条件であってもよい。制御部50は、第1対応データに示される各々の電流値を超えるごとに当該電流値に対応する第1所定時間が経過したか否かの判定を開始し、いずれかの第1所定時間が経過したと判定した場合に第1遮断部25を第1遮断状態に切り替えてもよい。第1対応データは、関数データであってもよいし、テーブルデータであってもよい。
【0057】
一括遮断条件は、一の第1分岐路20を流れる電流値に所定の乗算値(本実施形態では2)を乗じた値が、第1閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合に成立する条件である。この構成によれば、電力供給装置10は、一の第1分岐路20を流れる電流値に基づいて一括遮断条件の成否を判定することができる。乗算値は、1よりも大きい値である。乗算値は、第1分岐路20の数であり、より具体的には、導通部材80を介して導通され得る第1分岐路20の数である。一括遮断条件は、一の第1分岐路20を流れる電流値に所定の乗算値を乗じた値が第2閾値を超えた場合に直ちに成立する条件であってもよいし、第2閾値を超えた状態が第2所定時間継続した場合に成立する条件であってもよい。第2所定時間は、一の第1分岐路20を流れる電流値に所定の乗算値を乗じた値が第2閾値を超える度合いによって変化してもよい。例えば、第2所定時間は、一の第1分岐路20を流れる電流値に所定の乗算値を乗じた値が第2閾値を超える度合いが大きくなるほど短くなってもよい。一括個別遮断条件は、複数の電流値と各々の電流値に対応する第2所定時間との対応関係を示す第2対応データと、一の第1分岐路20を流れる電流値に所定の乗算値を乗じた値とに基づいて成立する条件であってもよい。制御部50は、第2対応データに示される各々の電流値を超えるごとに当該電流値に対応する第2所定時間が経過したか否かの判定を開始し、いずれかの第2所定時間が経過したと判定した場合に各々の第1遮断部25を第1遮断状態に切り替えてもよい。第1対応データは、関数データであってもよいし、テーブルデータであってもよい。
【0058】
第2遮断条件は、第2分岐路40を流れる電流値が第2閾値を超えた場合に成立する条件である。第2遮断条件は、第2分岐路40を流れる電流値が第2閾値を超えた場合に直ちに成立する条件であってもよいし、第2分岐路40を流れる電流値が第2閾値を超えた状態が第2所定時間継続した場合に成立する条件であってもよい。第2所定時間は、第2分岐路40を流れる電流値が第2閾値を超える度合いによって変化してもよい。例えば、第2所定時間は、第2分岐路40を流れる電流値が第2閾値を超える度合いが大きくなるほど短くなってもよい。第2遮断条件は、上述した第2対応データと、第2分岐路40を流れる電流値とに基づいて成立する条件であってもよい。制御部50は、第2対応データに示される各々の電流値を超えるごとに当該電流値に対応する第2所定時間が経過したか否かの判定を開始し、いずれかの第2所定時間が経過したと判定した場合に第2遮断部45を第2遮断状態に切り替えてもよい。
【0059】
この構成によれば、電力供給装置10は、一括遮断条件と第2遮断条件とで第2閾値を共用することができる。また、電力供給装置10は、一括遮断条件と第2遮断条件とで第2対応データも共用することができる。
【0060】
2.電力供給装置10の動作
電力供給装置10の制御部50は、第1制御と第2制御のうち電力供給装置10の外部から指示された制御を行う。
【0061】
制御部50は、第1制御が指示された場合、以下のように動作する。なお、電力供給装置10は、
図2に示すように、各々の第1分岐路20に第1負荷92が接続され、第2分岐路40には負荷91が接続されていない構成を想定する。制御部50は、開始条件が成立した場合に、各々の第1分岐路20を流れる電流値の監視を開始する。開始条件は、例えば、車両の始動スイッチ(例えばイグニッションスイッチ、パワースイッチなど)がオフ状態からオン状態に切り替わったことである。この場合、制御部50は、いずれかの第1分岐路20について許容条件が成立した場合に許容条件が成立した第1分岐路20に設けられる第1遮断部25を第1許容状態に切り替え、第1負荷92に電力を供給する。許容条件は、例えばユーザによって許容操作が行われたことである。なお、第2遮断部45は、第2遮断状態で維持される。制御部50は、各々の第1分岐路20を流れる電流値に基づき第1分岐路20の各々について個別遮断条件が成立したか否かを判定する。制御部50は、いずれの第1分岐路20についても個別遮断条件が成立していないと判定した場合、各々の第1分岐路20を流れる電流値に基づき第1分岐路20の各々について個別遮断条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部50は、個別遮断条件が成立したと判定した場合、個別遮断条件が成立したと判定した第1分岐路20に設けられた第1遮断部25を第1遮断状態に切り替える。
【0062】
制御部50は、第2制御が指示された場合、以下のように動作する。なお、電力供給装置10は、
図3に示すように、一の第1分岐路20に第2負荷93が接続され、他の第1分岐路20及び第2分岐路40には負荷91が接続されていない構成を想定する。制御部50は、上述した開始条件が成立した場合に、いずれか一方の第1分岐路20を流れる電流値の監視を開始する。制御部50は、第1分岐路20について許容条件が成立した場合に各々の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25を第1許容状態に切り替え、第2負荷93に電力を供給する。なお、第2遮断部45は、第2遮断状態で維持される。制御部50は、いずれか一方の第1分岐路20を流れる電流値に基づき一括遮断条件が成立したか否かを判定する。制御部50は、一括遮断条件が成立していないと判定した場合、いずれか一方の第1分岐路20を流れる電流値に基づき一括遮断条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部50は、一括遮断条件が成立したと判定した場合、各々の第1分岐路20に設けられた第1遮断部25を第1遮断状態に切り替える。
【0063】
なお、第2分岐路40に第2負荷93が接続された構成では、制御部50は、更に、第2分岐路40を流れる電流値の監視を開始する。そして、制御部50は、第2分岐路40を流れる電流値に基づき第2遮断条件が成立したか否かを判定する。制御部50は、第2遮断条件が成立していないと判定した場合、第2分岐路40を流れる電流値に基づき第2遮断条件が成立したか否かの判定を繰り返す。制御部50は、第2遮断条件が成立したと判定した場合、第2分岐路40に設けられた第2遮断部45を第2遮断状態に切り替える。
【0064】
3.電力供給装置10の製造方法
電力供給装置10の製造方法は、準備工程と、選択工程と、を含む。
【0065】
準備工程では、装置本体10Aを準備する。装置本体10Aは、電源部90に基づく電力が供給される共通経路12と、共通経路12から分岐した複数の第1分岐路20と、各々の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25と、を備える。各々の第1分岐路20は、第1上流側導体21と、第1上流側導体21よりも共通経路12側とは反対側に設けられる第1下流側導体22と、を有する。各々の第1遮断部25は、第1上流側導体21と第1下流側導体22との間に設けられ、第1遮断条件が成立した場合に第1上流側導体21側から第1下流側導体22側への電流の流れを許容する第1許容状態から遮断する第1遮断状態に切り替わる。
【0066】
選択工程では、複数の第1分岐路20の第1下流側導体22を、導通部材80によって接続させるか否かを選択する。そして、装置本体10Aに選択工程による選択結果を適用して電力供給装置10を構成する。
【0067】
選択工程において、複数の第1下流側導体22を導通部材80によって接続させないことが選択された場合には、複数の第1分岐路20を別々の経路として構成することができる。また、選択工程において、複数の第1下流側導体22を導通部材80によって接続させることが選択された場合には、共通経路12から複数の第1分岐路20に供給された電流を第1下流側導体22で合流させる経路を構成することができる。つまり、この構成によれば、複数の第1負荷92を搭載する車両と、第1負荷92よりも定格電流の大きい第2負荷93を搭載する車両とのいずれにも対応可能な電力供給装置10を、大型化を抑制しつつ実現することができる。
【0068】
<第2実施形態>
第1実施形態の車載用の電力供給装置10は、外部からの指示に応じて第1制御と第2制御のいずれかを選択して実行する構成であった。これに対し、第2実施形態では、車載用の電力供給装置210自身がいずれの制御を実行するかを決定する構成について説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成について同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0069】
第2実施形態の車載用の電力供給装置210(以下、単に「電力供給装置210」とも称する)は、
図4に示すように、主に、制御部250を備える点で第1実施形態の電力供給装置10とは異なる。
図4に示す装置本体210Aは、主に、制御部250を備える点で第1実施形態の装置本体10Aとは異なる。制御部250は、主に、判定部251を含む点で第1実施形態の制御部50とは異なる。
【0070】
判定部251は、複数の第1下流側導体22が導通部材80(
図3参照)によって導通された導通状態であるか否かを判定する。より具体的には、判定部251は、判定開始条件が成立した場合に、複数の第1分岐路20のうち一部の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25を第1許容状態に制御し、且つ他の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25を第1遮断状態に制御した状態で(つまり、一部の第1分岐路20に設けられるスイッチ部をオン状態に制御し、他の第1分岐路20に設けられるスイッチ部をオフ状態に制御した状態で)、上記一部の第1分岐路20のうち少なくとも一の第1分岐路20を流れる電流値を取得し、取得した電流値に基づいて導通状態であるか否かを判定する。
【0071】
本実施形態では、判定開始条件が成立した場合に、二の第1分岐路20のうち一方の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25を第1許容状態に制御し、且つ他方の第1分岐路20に設けられる第1遮断部25を第1遮断状態に制御した状態で(つまり、一方の第1分岐路20に設けられるスイッチ部をオン状態に制御し、他方の第1分岐路20に設けられるスイッチ部をオフ状態に制御した状態で)、上記一方の第1分岐路20を流れる電流値を取得し、取得した電流値に基づいて導通状態であるか否かを判定する。この構成により、電力供給装置210は、簡素な構成で導通状態であるか否かを判定することができる。
【0072】
判定部251は、例えば、取得した電流値が判定閾値(例えば15A)を超えたか否かを判定し、判定閾値を超えていないと判定した場合に導通状態でないと判定し、判定閾値を超えたと判定した場合に導通状態であると判定する。
【0073】
なお、判定開始条件は、例えば、電力供給装置210が車両に搭載されてから制御部250が最初に起動したことであってもよいし、車両の始動スイッチがオン状態に切り替わったことであってもよい。
【0074】
制御部250は、判定部251によって導通状態でないと判定された場合に第1制御を選択して実行し、判定部251によって導通状態であると判定した場合に第2制御を選択して実行する。
【0075】
この構成によれば、電力供給装置210は、導通状態であるか否かに応じて適した制御を、自動的に選択して実行することができる。
【0076】
<第3実施形態>
第1実施形態では、第2制御において各々の第1遮断部25を個別に制御する構成であった。これに対し、第3実施形態では、第2制御において各々の第1遮断部25を一括して制御する構成について説明する。なお、第3実施形態の説明において、第1実施形態と同じ構成について同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0077】
第3実施形態の車載用の電力供給装置310(以下、単に「電力供給装置310」とも称する)は、
図5に示すように、第1信号線360と、切替スイッチ部361と、第2信号線362と、制御部350と、を備える。
【0078】
第1信号線360は、各々の第1遮断部25に対応して設けられる。各々の第1信号線360は、制御部350から出力された制御信号(例えばオンオフ信号)を自身に対応する第1遮断部25に与える。
【0079】
切替スイッチ部361は、各々の第1信号線360の間に設けられ、オン状態のときに第1信号線360同士を導通させ、オフ状態のときに第1信号線360同士を非導通とさせる。切替スイッチ部361は、スイッチング素子を含む構成、より具体的には半導体スイッチング素子を含む構成である。半導体スイッチング素子を含む構成は、半導体スイッチング素子のみの構成であってもよいし、保護回路等を含む構成(例えばIPD(Intelligent Power Device)など)であってもよい。半導体スイッチング素子は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。
【0080】
第2信号線362は、制御部350から出力された制御信号(例えばオンオフ信号)を切替スイッチ部361に与える。
【0081】
制御部350は、主に切替スイッチ部361を制御する点で、第1実施形態の制御部50とは異なる。制御部350は、各々の第1信号線360を介して第1遮断部25に制御信号を与える。制御部350は、第2信号線362を介して切替スイッチ部361に制御信号を与えることで、切替スイッチ部361を制御し得る。
【0082】
制御部350は、第1実施形態で説明した第1制御においては、切替スイッチ部361をオフ状態に制御する。制御部350は、切替スイッチ部361がオフ状態のときに、各々の第1信号線360を介して、各々の第1遮断部25(スイッチ部)を個別に制御し得る。また、制御部350は、第1実施形態で説明した第2制御においては、切替スイッチ部361をオン状態に制御する。制御部350は、切替スイッチ部361がオン状態のときに、いずれかの第1信号線360を介して複数の第1遮断部25(スイッチ部)を一括して制御し得る。つまり、制御部350は、複数の第1信号線360のいずれかに制御信号を出力することで、制御信号を複数の第1遮断部25(スイッチ部)に対して一括して与え、複数の第1遮断部25(スイッチ部)を一括して制御することができる。
【0083】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0084】
上記各実施形態では、電力供給装置10が第2分岐路40を備える構成であったが、第2分岐路40を備えない構成であってもよい。
【0085】
上記各実施形態では、第1遮断部25がスイッチ部として機能するものであったが、第1遮断状態に切り替わった後、第1許容状態に復帰できない構成であってもよい。例えば、第1遮断部25は、温度が閾値温度を超えた場合に溶断するメカヒューズであってもよいし、遮断信号が入力されることで第1分岐路20を物理的に切断する火工遮断器(例えばパイロヒューズ)であってもよい。第2遮断部45についても同様である。
【0086】
上記各実施形態では、スイッチ部が、第1遮断部25によって構成されていたが、第1遮断部25とは別に設けられる構成であってもよい。この場合、例えば、第1遮断部25とスイッチ部が、第1上流側導体21と第1下流側導体22との間において直列に設けられる構成であってもよい。上記各実施形態では、第2スイッチ部が、第2遮断部45によって構成されていたが、第2遮断部45とは別に設けられる構成であってもよい。この場合、例えば、第2遮断部45と第2スイッチ部が、第2上流側導体41と第2下流側導体42との間において直列に設けられる構成であってもよい。
【0087】
上記各実施形態では、二の第1分岐路20が導通部材80によって互いに導通され得る構成であったが、三以上の第1分岐路20が導通部材80によって互いに導通され得る構成であってもよい。
【0088】
判定部251は上記第2実施形態の構成に限らない。例えば、判定部251は、制御部50とは別に構成される判定回路であってもよい。
【0089】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0090】
10…電力供給装置
10A…装置本体
11…筐体
12…共通経路
20…第1分岐路(分岐路)
21…第1上流側導体(上流側導体)
22…第1下流側導体(下流側導体)
22A…並列下流側導体
22B…並列下流側導体
23…第1負荷側接続部(負荷側接続部)
24…第1挿入孔
24A…第1挿入孔(挿入孔)
24B…第1挿入孔
25…第1遮断部(遮断部)
26…接続部
30…基材
31…絶縁層
32…第1電流検出部
40…第2分岐路
41…第2上流側導体
42…第2下流側導体
43…第2負荷側接続部
44…第2挿入孔
45…第2遮断部
50…制御部
52…第2電流検出部
80…導通部材
90…電源部
91…負荷
92…第1負荷(負荷)
93…第2負荷
210…電力供給装置
210A…装置本体
250…制御部
251…判定部
310…電力供給装置
350…制御部
360…第1信号線
361…切替スイッチ部
362…第2信号線