(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032282
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】乗り物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20240305BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135859
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】後藤 美空
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA03
3B087BD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペダルの踏み込みによるロック解除動作が良好な乗り物用シートを提供する。
【解決手段】乗り物用シート91は、シートバック2をリクライニング動作させるリクライニングデバイス7と、幅方向スライド装置912と、ロック機能解除で踏み込むペダル部51と、踏み込み動作をリクライニングデバイスに伝達しロック機能を解除させる伝達機構とを備える。リクライニングデバイスは、所定角度の回動でロック機能を解除するロック解除プレート71を有し、伝達機構は、摺動子521を有しペダル部の踏み込みで回動する第1リンク52と、カム面を有し第1リンクの回動で摺動子がカム面を摺動して回動する第2リンク53と、下端が第2リンクに連結され上端にロック解除プレート71が係合し第2リンクの回動で下方移動しロック解除プレートを所定角度回動させる第3リンク55とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、シートバックと、前記シートバックを前記シートクッションに対しロック機能を有してリクライニング動作させるリクライニングデバイスと、前記リクライニングデバイスの下方に配置され前記シートクッションをシートクッションの幅方向に移動させるスライド装置と、前記リクライニングデバイスの前記ロック機能を解除させるために踏み込むペダル部と、前記ペダル部の踏み込み動作を前記リクライニングデバイスに伝達して前記ロック機能を解除させる伝達機構と、を備え、
前記リクライニングデバイスは、所定角度回動することで前記ロック機能を解除するロック解除プレートを有し、
前記伝達機構は、
摺動子を有し、前記ペダル部の踏み込み動作により回動する第1リンクと、
カム面を有し、前記第1リンクの回動によって前記摺動子が前記カム面を付勢摺動することで回動する第2リンクと、
下端部が前記第2リンクに連結され上端部に前記ロック解除プレートが係合し、前記第2リンクが回動することで下方移動して前記ロック解除プレートを前記所定角度回動させる第3リンクと、
を有する乗り物用シート。
【請求項2】
前記ペダル部は、前記スライド装置の可動レールと実質的に一体の部材によって回動可能に支持されている請求項1記載の乗り物用シート。
【請求項3】
前記第2リンクの回動支点は、前記第1リンクの回動支点よりも前記シートクッションの先端側、かつ前記一体の部材よりも上方に位置している請求項2記載の乗り物用シート。
【請求項4】
前記ペダル部が踏み込まれていない状態を第1の状態とし、前記ペダル部が踏み込まれた状態を第2の状態としたときに、
前記第1の状態から前記第2の状態への状態遷移で、前記摺動子は上方に移動し、前記ロック解除プレートと前記第3リンクとの係合位置は下方に移動する請求項1~3のいずれか1項に記載の乗り物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両用シートにおいて、ロック解除専用レバーの操作でリクライニングデバイスのロック解除を行う構造が記載されている。
車両用シートが車両の前席又は3列シートの中央席の場合、ロック解除専用レバーは、多くの場合、後席の乗員が足で踏み込むペダルとされる。
【0003】
特許文献2に記載された車両用シートは、シートを前後方向にスライドさせる前後スライド装置と、幅方向にスライドさせる左右スライド装置とを備えている。
左右スライド装置は、車両の前後に離隔して一対配置されており、前後スライド装置の可動レール部材の上部に連結された左右に延びる固定レールと、その固定レールに対し左右にスライド可能に支持されシート側部材に連結された可動レールとを有する。
【0004】
特許文献1に記載されたロック解除構造は、ロック解除専用レバーが、リクライニングデバイスから延出してリクライニングデバイスに直接作用する。
このロック解除構造を、特許文献2に記載された左右スライド装置を有する車両用シートに適用した場合、リクライニングデバイスの高さ位置は、左右スライド装置を搭載した分だけ高くなり、ペダルの好適位置であるフロア近傍から遠くなる。そのため、従来、ペダルとリクライニングデバイスとをワイヤで繋ぎ、ペダルの踏み込み動作をワイヤの引張り動作に変換してリクライニングデバイスに伝達することでロック解除などを行う構造が多用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-211292号公報
【特許文献2】特開2002-248973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、シートの軽量化などのため、シートを幅方向にスライドする左右スライド装置(以下、幅方向スライド装置)の構造簡略化が検討されている。これに伴い、乗員のリクライニング動作などで後方側の幅方向スライド装置に加わるモーメントを小さくするために、後部の幅方向スライド装置を、従来よりも後方側となるリクライニングデバイスの下方(直下又はその近傍)に設定することが望まれている。
【0007】
後部の幅方向スライド装置をリクライニングデバイスの下方に配置すると、ロック解除のためのペダルの機構と干渉し易くなる。例えば、ペダルの踏み込みによって回動させる連結部材の許容空間が少なくなって、ワイヤの引張り量が十分得られなくなり、ロック解除動作に支障が生じる虞がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、幅方向スライド装置を備えていてもペダルの踏み込みによるロック解除動作を良好に行うことができる乗り物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は次の構成を有する。
1) シートクッションと、シートバックと、前記シートバックを前記シートクッションに対しロック機能を有してリクライニング動作させるリクライニングデバイスと、前記リクライニングデバイスの下方に配置され前記シートクッションをシートクッションの幅方向に移動させるスライド装置と、前記リクライニングデバイスの前記ロック機能を解除させるために踏み込むペダル部と、前記ペダル部の踏み込み動作を前記リクライニングデバイスに伝達して前記ロック機能を解除させる伝達機構と、を備え、
前記リクライニングデバイスは、所定角度回動することで前記ロック機能を解除するロック解除プレートを有し、
前記伝達機構は、
摺動子を有し、前記ペダル部の踏み込み動作により回動する第1リンクと、
カム面を有し、前記第1リンクの回動によって前記摺動子が前記カム面を付勢摺動することで回動する第2リンクと、
下端部が前記第2リンクに連結され上端部に前記ロック解除プレートが係合し、前記第2リンクが回動することで下方移動して前記ロック解除プレートを前記所定角度回動させる第3リンクと、
を有する乗り物用シートである。
2) 前記ペダル部は、前記スライド装置の可動レールと実質的に一体の部材によって回動可能に支持されている1)に記載の乗り物用シートである。
3) 前記第2リンクの回動支点は、前記第1リンクの回動支点よりも前記シートクッションの先端側、かつ前記一体の部材よりも上方に位置している2)に記載の乗り物用シートである。
4) 前記ペダル部が踏み込まれていない状態を第1の状態とし、前記ペダル部が踏み込まれた状態を第2の状態としたときに、
前記第1の状態から前記第2の状態への状態遷移で、前記摺動子は上方に移動し、前記ロック解除プレートと前記第3リンクとの係合位置は下方に移動する1)~3)のいずれか一つに記載の乗り物用シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、幅方向スライド装置を備えていてもペダルの踏み込みによるロック解除動作を良好に行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る乗り物用シートの実施例である乗り物用シート91を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、乗り物用シート91に備えられた幅方向スライド装置912及び伝達機構Kを示す側面図である。
【
図3】
図3は、伝達機構Kを説明するための構造図である。
【
図4】
図4は、伝達機構Kを左後斜めやや下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る乗り物用シートを、実施例の乗り物用シート91(以下、シート91)によって説明する。以下の説明における上下前後左右の各方向は、説明の便宜上、
図1において矢印で規定した方向とする。例えば、左右方向はシート91(シートクッション1)の幅方向である。
シート91は、例えば乗り物の床FLに、後席に対する前席として設置される。
例えば、乗り物が3列シートを有する自動車の場合、シート91は前席又は中席として床FLに設置される。
【0013】
図1に示されるように、シート91は、シートクッション1と、シートバック2と、シートバック2に対し着脱可能に取り付けられたヘッドレスト3とを備えている。シートクッション1は、下部に、前後方向に延び左右に平行に離隔して取り付けられた一対の前後可動レール部911を有する。
一方、シート91が取り付けられる自動車などの乗り物の床FLには、前後方向に延び左右に平行に離隔して敷設された一対の前後固定レール81が敷設されている。
前後固定レール81に対し前後可動レール部911が前後方向にスライド可能に支持されている。これにより、シート91は、床FLに対し前後方向にスライド可能となっている(矢印DR1参照)。
【0014】
シートクッション1は、前後可動レール部911の上部に、左右方向に延び前後方向に平行に離隔した一対の幅方向スライド装置912を有する。幅方向スライド装置912は、シートクッション1の上部と連結されている。これにより、シートクッション1の上部及びその上部に回動可能に連結されたシートバック2は、前後可動レール部911に対して左右方向にスライド可能となっている(矢印DR2参照)。
【0015】
シートクッション1の後部の左側には、リクライニングデバイス7が備えられている。リクライニングデバイス7は、シートクッション1に対しシートバック2をリクライニング動作可能に連結している(矢印DR3参照)。
リクライニングデバイス7と、後部の幅方向スライド装置912との間に、伝達機構Kが配設されている。
【0016】
図2は、シート91に備えられた幅方向スライド装置912及び伝達機構Kを示す側面図である。
図2に示されるように、シート91は、前後固定レール81に支持された前後可動レール部911の上部に、前後に平行に離隔して左右方向に延びる一対の幅方向スライド装置912を有する。左右方向は
図2の紙面直交方向であり、左方が紙面手前方である。
【0017】
前部の幅方向スライド装置912は、前後可動レール部911の前部から上方に延びるように設けられた左右固定レール912aと、左右固定レール912aに対し左右方向に移動可能に支持された左右可動レール111とを有する。
【0018】
後部の幅方向スライド装置912は、前後可動レール部911の後部から上方に延びるように設けられた左右固定レール912bと、左右固定レール912bに対し左右方向に移動可能に支持された左右可動レール112とを有する。
シートクッション1は、底部に、前後左右方向に延在するベースパネル11を有する。ベースパネル11は、高い剛性を有してシートクッション1の骨格となる部材である。
左右可動レール111及び左右可動レール112は、それらの上方においてベースパネル11に一体的に接続している。
ベースパネル11の後縁部は、斜め上方に傾斜したバックパネル113となっている。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、後部の左右可動レール112の上方には、シートクッション1に対しシートバック2をリクライニング可能に連結するリクライニングデバイス7が配置されている。
リクライニングデバイス7は、シートクッション1に対し、シートバック2を、左右方向に延びるリクライニング軸線CL7まわりに、選択的に回動可能及び回動不能とする。リクライニングデバイス7は、シートバック2のリクライニング動作を禁止状態(回動不能状態)で維持するロック機能を有する。
【0020】
リクライニングデバイス7は、リクライニング軸線CL7まわりに回動可能な略円板状のロック解除プレート71を有する。ロック解除プレート71は、トルク付勢部材(不図示)によって
図2の時計まわりに付勢されている。
ロック解除プレート71は、外力が付与されない通常状態で、トルク付勢部材によってトルク付勢されて回動規制部材(不図示)に当接している。ロック解除プレート71の、回動規制部材に当接した回動位置をロック位置とする。ロック解除プレート71がロック位置にあるとき、リクライニング動作は禁止状態でロックされている。
ロック解除プレート71を、トルク付勢部材の付勢トルクに抗してロック位置から
図2の反時計まわりに所定角度回動させることで、リクライニングロックが解除される。
【0021】
次に、伝達機構Kについて
図2~
図4を参照して詳述する。
図3は、
図2に示における伝達機構Kを抽出して拡大した構造図であり、
図4は、伝達機構Kの一部を左後やや下方から見た斜視図である。
【0022】
図3に示されるように、伝達機構Kは、下方側から、ペダル部51,第1リンク52,第2リンク53,コイルばね54,及び第3リンク55を含んで構成されている。
図4に示されるように、ペダル部51は、後方に向け延びるアーム部510と、アーム部510の根元に連結して左右方向に延びる軸部511とを有する。
軸部511は、ベースパネル11のバックパネル113に一体化されたバックプレート12に形成された軸受け部121,122に、軸線まわりに回動可能に挿通されている。
すなわち、ペダル部51は、ベースパネル11と一体の部材によって左右方向に延びるペダル軸線CL5まわりに回動可能に支持されている。
【0023】
軸部511は、付勢部材である捩りコイルばね513によって
図3の反時計まわりに付勢されている。ペダル部51は、後席乗員に踏まれていない通常状態で、回動規制部材(不図示)に当接することでアーム部510が概ね水平となる位置で維持される。
側面図である
図3における、ペダル軸線CL5の前後上下方向の2次元位置を、第1回動支点P1とする。
【0024】
以下、通常状態を第1の状態と称し、ペダル部51が十分踏み込まれた状態を第2の状態と称する。
【0025】
ペダル部51の軸部511には、板状部材である第1リンク52が、アーム部510と成す角度が所定の角度θb(
図3参照)で一体的に連結されている。角度θbは、例えば、約150°である。
第1リンク52は、ペダル部51の第1の状態で前上方に斜めに延びている。第1リンク52は、先端部位に、左方に突出する円柱状の第1リンクピン521を有する。
【0026】
第2リンク53は、第2回動支点P2においてベースパネル11側の部材(不図示)に対し、左右に延びる第1回動軸線CL53まわりに回動可能に固定されている。
図2に示されるように、第2回動支点P2の前後上下方向の2次元位置は、第1回動軸線CL53の位置であり、ベースパネル11の上方側、かつペダル部51の第1の状態での第1リンクピン521の左下方に設定されている。
【0027】
第2リンク53は細長い板状部材である。第2回動支点P2は、第2リンク53の一端部近傍に位置している。
第2リンク53は、長手方向に沿って開口した開口部531を有する。開口部531は、一方の端部側(下側端部側)が、概ね円形に開口する待機開口部531aとされる。また、開口部531は、待機開口部531aに連接して先端側に向かう開口部分の下側の縁部が、後述する第1リンクピン521が摺動子として摺動するカム面531bとされている。
【0028】
第2リンク53における他方の端部(上側端部)には、リンク連結点P3が設定されている。リンク連結点P3には、第3リンク55が第2回動軸線CL54まわりに回動可能に連結されている。
第2リンク53は、リンク連結点P3よりも先端側に細い幅で延出した延出腕部532を有する。
【0029】
付勢部であるコイルばね54は、一端側が、ベースパネル11側の部材に、ばね第1支点P54aで固定されている。コイルばね54の他端側は、第2リンク53の開口部531とリンク連結点P3との間の、ばね第2支点P54bに連結されている。
これにより、第2リンク53は、コイルばね54によって
図3における反時計まわりに付勢されている。
【0030】
第3リンク55は、上下方向に延びる細長い板状の部材であって、既述のように、下端部がリンク連結点P3で第2リンク53に連結されている。
第3リンク55は、第2リンク53の左側に位置するように連結されている。
第3リンク55の長手方向の中間部位から上端部には、外形形状に対応した細長形状の開口部551が形成されている。
開口部551内の上部には、リクライニングデバイス7のロック解除プレート71に設けられたピン711が進入係合している。すなわち、第3リンク55の上端部にロック解除プレート71が係合している。
図2に示された第1の状態において、開口部551に進入係合したピン711の位置は、ロック解除プレート71のロック位置に対応している。
【0031】
図4に示されるように、第3リンク55におけるリンク連結点P3の上方には、右方向に突出した突き出し部552が、いわゆるダボ出し加工で形成されている。
延出腕部532を有する第2リンク53は、コイルばね54によって第1回動軸線CL53を中心とする反時計まわりに付勢されている。ペダル部51が概ね水平位置となる第1の状態で、
図5に示されるように、第2リンク53の延出腕部532が、第3リンク55の突き出し部552に当接する。そのため、コイルばね54の付勢力による第2リンク53及び第3リンク55の連結した回動が禁止される。一方で、第3リンク55は、上方側がピン711の開口部551との係合によって前後方向への移動が規制されている。従って、第2リンク53及び第3リンク55の姿勢は、第1の状態において
図2にしめされる姿勢で維持される。
【0032】
以上詳述した伝達機構Kは、ペダル部51に力が付与されていない第1の状態から、後席乗員がペダル部51を十分踏み込むことで第2の状態に移行する。
図3は、伝達機構Kの第2の状態を実線で示し、一部の部位について第1の状態を一点鎖線で示してある。
【0033】
図3に示されるように、一点鎖線で示された第1の状態にあるペダル部51のアーム部510を下方に踏み込んで回動させると(矢印DR31)、アーム部510と一体化されている第1リンク52の第1リンクピン521がペダル軸線CL5を中心として時計まわりに回動する(矢印DR32)。
第1リンクピン521が時計まわりに回動すると、第1リンクピン521が進入している第2リンク53の開口部531におけるカム面531bに当接する。第1リンク52は、ペダル部51の踏み込みにより、コイルばね54の弾性反発力に抗してさらに回動する。そのため、第1リンクピン521は、カム面531bを付勢摺動し第2リンク53を時計まわりに付勢して、第2リンク53は第1回動軸線CL53を中心とする時計まわりに回動する(矢印DR33)。第1リンクピン521はカム面531bに対する摺動子として機能する。
【0034】
第2リンク53の矢印DR33の回動により、リンク連結点P3も第1回動軸線CL53を中心として時計まわりに回動する(矢印DR34)。
そのため、リンク連結点P3で回動自由に連結された第3リンク55は、右下方に引張られて下方移動する(矢印DR35)。
これにより、第3リンク55における開口部551内の上部に進入係合していたロック解除プレート71のピン711が下方に引張られる(矢印DR36)。そのため、ロック解除プレート71は、ピン711の引っ張られた距離に応じた角度θaだけ回動する(DR37)。
【0035】
角度θaは、リクライニングロック解除に必要なロック解除プレート71の反時計回りの所定の回動角度よりも十分大きくなるように設定されている。従って、伝達機構Kを、第1の状態からペダル部51のアーム部510の踏み込みによって第2の状態に状態遷移させることで、リクライニングデバイス7のリクライニングロックを解除できる。
【0036】
図3に実線で示される第2の状態からアーム部510の踏み込み力をなくすと、第1リンク52を含むアーム部510は、捩りコイルばね513の捩り弾性反発力によって第1の状態に復帰する。
リンク連結点P3を含む第2リンク53は、コイルばね54の引っ張り弾性反発力によって反時計まわりに回動し、
図4及び
図5に示されるように、突き出し部552に延出腕部532が当接する規制位置で回動停止する。すなわち、第1の状態に復帰する。
【0037】
図3に示されるように、摺動子である第1リンクピン521は、第1の状態から第2の状態に状態遷移する際の回動で、上下方向について、距離Haだけ上方に移動する。一方、ロック解除プレート71におけるピン711と第3リンク55との係合位置は、第1の状態から第2の状態に状態遷移すると、上下方向について、距離Hbだけ下方に移動する。伝達機構Kにおいて、距離Ha<距離Hbとなっている。
【0038】
図2に示されるように、リクライニングデバイス7と後部の幅方向スライド装置912との間の前後方向の距離Daが小さいほど、次のような制約が顕著に生じ得る。
すなわち、
図3に示されるように、第1回動支点P1の前下方の領域AR1は、
図2に示されるように、幅方向スライド装置912が配置されているため第1リンクピン521を有する第1リンク52の回動範囲にすることができない。
また、第1回動支点P1の右方から右上方に跨る領域AR2は、シートバック2の後席乗員の脚が置かれる居住空間であるため、ペダル部51以外の部材を突出させることはできない。
【0039】
従って、第1リンク52は、実質的に、第1回動支点P1の上方から左上方に跨る領域に回動するよう配置することになる。そのため、ペダル部51を踏み込むんだときに第1リンクピン521は回動して上昇し、リクライニングロックを解除させる際のロック解除プレート71のピン711の下降動作とは上下逆方向に移動する。
【0040】
これに対し、伝達機構Kは、第3リンク55を有し、カム面531bを有する第2リンク53及び第2リンク53の回動動作を、ピン711を有するロック解除プレート71の回動動作に伝達して連動させるようになっている。
そして、第1リンク52の第1リンクピン521を摺動子とし、ペダル部51の踏み込み回動で第1リンクピン521を第2リンク53のカム面531bに摺動させる。この摺動により、第2リンク53を回動させてリンク連結点P3を下方向に移動させると共に、ピン711と係合した第3リンク55の下方への移動量である距離Hbを、第1リンクピン521の上方への移動量である距離Haよりも増幅した大きい距離としている。
【0041】
図3に示されるように、第1リンクピン521は、第1の状態と第2の状態との間の移動軌跡が、第1の状態のピン711の中心位置と第1回動支点P1とを結ぶ線分である連結線LN1を跨ぐようになっている。
【0042】
すなわち、伝達機構Kは、ペダル部51の踏み込みに伴う第1リンクピン521の上下方向の移動方向(上方)を逆(下方)にし、移動量(距離Ha)を増幅する(距離Hbに増幅する)機能を有している。
これにより、伝達機構Kを備えたシート91は、幅方向スライド装置912を備えていても、ペダルの踏み込みによるリクライニングロック解除動作を良好に行うことができる。
【0043】
ペダル部51は、ベースパネル11と実質的に一体のバックプレート12によって回動可能に支持されている。
これにより、ペダル部51の耐踏み込み強度は高くなっている。また、シート91が搭載された乗り物が衝突などしてシート91に衝撃力が付与された際にも、ペダル部51及び第1リンク52に変形が生じにくい。これにより、シート91に衝撃力が付与された際に、変形によって第1リンク52の第1リンクピン521が第2リンク53を回動させてしまい、リクライニングロックが意図せず解除されることが防止される。
【0044】
図4に示されるように、第1の状態において、第2リンクの開口部531における待機開口部531aの内縁と、待機開口部531a内に進入している第1リンクピン521との間には、間隙Dtで例示される間隙が設けられている。すなわち、第1リンク52がある程度回動しないと、第1リンクピン521が開口部531の内縁に当接しないようになっている。
【0045】
これにより、シート91が搭載された乗り物が衝突するなどしてシート91に衝撃力が付与されて各部材が変形、或いは慣性力で移動した際に、第1リンクピン521が第2リンク53を回動させて意図せずリクライニングロックが解除されることを防止している。
【0046】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
伝達機構Kは、距離Hbを距離Haよりも大きくするものに限らない。ただし、幅方向スライド装置912がリクライニングデバイス7の下方に配置されることでペダル部51の踏み込みによる回動が許容される領域が狭くなっている状況下では、距離Hbを距離Haよりも大きくできるように構成すると、ペダル部51まわりの占有スペースを小さくできて好ましい。
伝達機構Kは、第1の状態と第2の状態との間の状態遷移において、第1リンクピン521の移動軌跡が、第1の状態のピン711の中心位置と第1回動支点P1とを結ぶ線分である連結線LN1を跨ぐようになっているものに限定されない。ただし、幅方向スライド装置912がリクライニングデバイス7の下方に配置されることでペダル部51の踏み込みによる回動が許容される領域が狭くなっている状況下では、第1の状態と第2の状態との間の状態遷移で第1リンクピン521の移動軌跡が連結線LN1を跨ぐように構成すると、ペダル部51まわりの前後方向の占有スペースを小さくできるので好ましい。
【0047】
乗り物は自動車に限定されない。乗り物は車両及び車両以外の乗り物を含み、例えば、鉄道車両、航空機、船舶などであってもよい。
上述における上下左右前後の各方向は、説明の便宜のために規定したものであり、乗り物用シート91の乗り物における設置方向などを限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 シートクッション
11 ベースパネル
111,112 左右可動レール
113 バックパネル
12 バックプレート
121,122 軸受け部
2 シートバック
3 ヘッドレスト
51 ペダル部
510 アーム部
511 軸部
513 付勢部材(捩りコイルばね)
52 第1リンク
521 第1リンクピン(摺動子)
53 第2リンク
531 開口部
531a 待機開口部
531b カム面
532 延出腕部
54 コイルばね(付勢部材)
55 第3リンク
551 開口部
552 突き出し部
7 リクライニングデバイス
71 ロック解除プレート
711 ピン
81 前後固定レール
91 乗り物用シート(シート)
911 前後可動レール部
912 幅方向スライド装置
912a,912b 左右固定レール
AR1,AR2 領域
CL5 ペダル軸線
CL7 リクライニング軸線
CL53 第1回動軸線
CL54 第2回動軸線
Da、Ha,Hb 距離
Dt 間隙
FL 床
K 伝達機構
LN1 連結線
P1 第1回動支点
P2 第2回動支点
P3 リンク連結点
P54a ばね第1支点
P54b ばね第2支点
θa,θb 角度