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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032283
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/02 20060101AFI20240305BHJP
   G01S 13/32 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135861
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】榎並 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 佳枝
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 友宏
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB10
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD08
5J070AF03
5J070AH04
5J070AH12
5J070AH35
5J070AK15
(57)【要約】
【課題】実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるレーダ装置を提供する。
【解決手段】実施形態のレーダ装置1は、物体が静止している場合に期待されるドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化したものを割り当て符号とすると、処理部6において割り当て符号の「1」に対応するビンに各送信信号に紐づくピークが発生するように各送信アンテナ3aとの対応関係を設定し、変調部22において、割り当て符号として線形ブロック符号に従った位相偏移変調を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナ(3a)を有する送信アンテナ部(3)と、
連続波の共通信号を発生させる発振部(21)と、
前記共通信号を前記送信アンテナと同数に分岐させた複数の分岐信号のそれぞれについて、それぞれが異なる位相回転量で位相を回転させる位相偏移変調を行い、前記複数の送信アンテナに入力される複数の送信信号を生成する変調部(22)と、
1つ以上の受信アンテナ(4a)を有する受信アンテナ部(4)と、
前記受信アンテナ部にて受信された1つ以上の受信信号のそれぞれについて、ドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化した受信符号を生成する受信部(5)と、
前記受信部にて生成された前記受信符号に基づいて、前記送信アンテナ部からの放射波を反射した物体に関する情報を生成する処理部(6)と、を備え、
物体が静止している場合に期待されるドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化したものを割り当て符号とすると、
前記変調部において、前記割り当て符号として線形ブロック符号に従った位相偏移変調を行うレーダ装置。
【請求項2】
前記変調部において、前記割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が2以上となる位相偏移変調を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記変調部において、前記割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が3以上となる位相偏移変調を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記変調部において、前記割り当て符号の符号多項式が、当該符号多項式の符号長以上の周期をもつ多項式で割り切れる多項式となる位相偏移変調を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記変調部において、前記割り当て符号を巡回シフトさせた符号群について、最大重複ビット数をC、最小ハミング距離をDとした場合に、C<Dとなる位相偏移変調を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記変調部において、前記割り当て符号が、ハミング符号、CRC符号、BCH符号、リードソロモン符号、巡回Golay符号およびM系列符号のいずれかとなる位相偏移変調を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記割り当て符号は、符号長が2のべき乗となるように1または0を1ビット分付加するビット拡張が行われる請求項1記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記変調部において、前記割り当て符号として、重複する物体数をKとし、K以上の整数をQとした場合において、前記割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群の任意のQ個の符号をOR演算した結果がそれぞれ異なる符号となる位相偏移変調を行う請求項1記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記割り当て符号と前記受信符号の相互相関関数を求めるメトリック演算部(601、611、621、631、641)を備える請求項1記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記受信符号を、複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号の期待値の全部または一部が予め記憶されている重複パターンデータと比較し、その差分を演算するメトリック演算部を備える請求項1記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記メトリック演算部は、前記割り当て符号と前記受信符号との相互相関の演算結果と、複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号と当該受信信号が得られる前記割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果が予め記憶されている相関演算結果データとを比較し、その差分を演算する請求項9記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記メトリック演算部は、差分をハミング距離で演算する請求項10または11記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記割り当て符号と前記受信符号との相互相関の演算結果におけるピークの検出を行う推定部(602、612、622、632、642)を備え、
前記推定部は、前記メトリック演算部の演算結果に対して閾値を用いてピークを抽出する閾値処理を行うことによって、または、前記メトリック演算部の演算結果に対して最大値、最小値あるいは極値を求める処理を行って検出したピークと、前記受信信号と複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号と当該受信信号が得られる前記割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果が予め記憶されている相関演算結果データとを比較して得られたピークと、を比較することによって物体の重複状況を推定する請求項9記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記割り当て符号と前記受信符号との相互相関の演算結果におけるピークの検出を行う推定部(602、612、622、632、642)と、を備え、
前記推定部(642)は、前記メトリック演算部の演算結果に対して演算したピークと、前記メトリック演算部の演算結果を複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号の期待値の全部または一部が予め記憶されている重複パターンデータと比較することに得られたピークと、を比較することによって物体の重複状況を推定する請求項9記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のアンテナから電波を送信して物体を検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置の分解能を向上させるための手法として、複数の送信アンテナから電波を送信するMIMO(Multi-Input Multi-Output)技術がある。このMIMO技術では、物体を検出するために各送信アンテナからの送信信号を分離する必要があるため、例えばドップラ分割多重により、送信アンテナごとに異なる位相偏移量を用いて位相偏移変調を行い、各送信信号をドップラ周波数軸上で異なる信号成分として分離することが行われている。そして、例えば特許文献1では、変調に用いる位相数よりも送信アンテナの数を少なくすることにより、受信信号から複数の送信信号を識別する精度を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6881177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1にも示されているように、物体の速度によっては、ドップラ周波数上でピークの位置がシフトするいわゆる折り返しが生じることがある。このとき、折り返されたピークが他の物体のピークと重複してしまうと、送信信号を分離することができず、物体の速度が正確に推定できなくなったり測角精度が劣化したりするなど、物体の情報を正確に得ることができなくなるおそれがある。
【0005】
この場合、ドップラ周波数上の各送信信号に対応するピークの組の間隔がすべて異なるゴロム定規になるようにすることにより、複数の物体が存在している場合における重複を1つにすることが考えられる。しかし、ゴロム定規となるように位相偏移変調を行うためには多くの位相数が必要となることから、現実的には実装することが困難である。
【0006】
本開示は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によるレーダ装置(1)は、複数の送信アンテナ(3a)を有する送信アンテナ部(3)と、連続波の共通信号を発生させる発振部(21)と、前記共通信号を前記送信アンテナと同数に分岐させた複数の分岐信号のそれぞれについて、それぞれが異なる位相回転量で位相を回転させる位相偏移変調を行い、前記複数の送信アンテナに入力される複数の送信信号を生成する変調部(22)と、1つ以上の受信アンテナ(4a)を有する受信アンテナ部(4)と、前記受信アンテナ部にて受信された1つ以上の受信信号のそれぞれについて、ドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化した受信符号を生成する受信部(5)と、前記受信部にて生成された前記受信符号に基づいて、前記送信アンテナ部からの放射波を反射した物体に関する情報を生成する処理部(6)と、を備え、物体が静止している場合に期待されるドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化したものを割り当て符号とすると、前記変調部において、前記割り当て符号として線形ブロック符号に従った位相偏移変調を行う。これにより、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態によるレーダ装置の構成例を模式的に示す図
図2】アンテナの配置例と、割り当て符号および受信符号の一例とを示す図
図3】ドップラビンにおける割り当て符号の生成例を模式的に示す図
図4】物体検出処理の流れを説明する図
図5】第3実施形態による処理部の構成と演算の流れを説明する図
図6】第4実施形態による処理部の構成と演算の流れを説明する図
図7】第5実施形態による処理部の構成と演算の流れを説明する図
図8】第6実施形態による処理部の構成と演算の流れを説明する図
図9】第7実施形態による処理部の構成と演算の流れを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。図1に示すレーダ装置1は、車両に搭載して使用され、車両の周囲に存在する様々な物体の情報を得るために使用されるものを想定している。レーダ装置1は、送信部2、送信アンテナ部3、受信アンテナ部と、受信部5、処理部6を備えている。送信アンテナ部3は、図2にアンテナ配置例として示すように、M個の送信アンテナ3a1から送信アンテナ3aMを有している。ここで、Mは2以上の整数である。各送信アンテナ3aは、予め設定された間隔で、予め設定された配列方向に沿って一列に配置されている。
【0011】
受信アンテナ部4は、送信側配置例として示すように、N個の受信アンテナ4a1から受信アンテナ4aNを有している。ここで、Nは1以上の整数である。受信アンテナ4aは、複数設けられている場合、送信アンテナ3aとは異なる間隔で、送信アンテナ3aの配列方向と同じ方向に沿って配置されている。
【0012】
さて、例えば検出対象となる物体が送信アンテナ部3および受信アンテナ部4の正面方向に対してθだけ傾いた方向に存在すると仮定する。この場合、周知のように、受信アンテナ4a1では、送信アンテナ3a1から送信された信号、送信アンテナ3a2から送信された信号、送信アンテナ3aMから送信された信号が受信される。同様に、他の受信アンテナ4aも、それぞれの送信アンテナ3aから送信された信号を受信する。
【0013】
これにより、基準となる1つの受信アンテナ4aからの距離が異なる状態で配置された合計M×N個の受信アンテナ4aの仮想アレーが形成される。その結果、1個の送信アンテナとM×N個の受信アンテナとを備える場合と同等の角度分解能を得ることができる。
【0014】
送信部2は、図1に示すように、発振部21と変調部22とを備えている。発振部21は、連続波の共通信号を生成し、生成した共通信号を変調部22に出力する。
【0015】
変調部22は、発振部21が生成した共通信号を分岐させ、送信アンテナ3aと同じ数のM個の分岐信号を生成する。具体的には、変調部22は、M個の分岐信号のそれぞれについて、互いに異なる大きさの位相回転量を設定し、設定した位相回転量だけ分岐信号の位相を回転させる位相偏移変調を行うことにより、M個の送信信号を生成している。
【0016】
例えば、位相偏移変調で使用する位相数をPとし、PはMより大きい整数であるとし、p=0,1,2,・・・P-1とすると、変調部22は、位相回転量(Δφ)=p×360°/Pで表されるP個の位相回転量を用いて位相偏移変調を行う。ただし、P>Mであることから、位相偏移変調が行われる場合にはP個の位相回転量の全てが使用される訳ではなく、その一部が使用されることになる。
【0017】
また、変調部22は、詳細については後述するが、割り当て符号が線形巡回ブロック符号となるような位相偏移変調が行われる。ここで、割り当て符号とは、測定範囲内に存在する物体が静止している場合に期待されるドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化したものである。また、ピークの出現パターンとは、各送信信号への位相割り当てによって決定されるものである。例えば、位相数がPであり、送信アンテナ3aの数がMである場合には、割り当て符号は、符号長がPビットであり、そのうちのMビットが「1」であり、残りのP-Mビットが「0」の符号として表される。例えば、送信アンテナ3aの数が2であり、位相数が5である場合には、割り当て符号として例えば「11000」の5ビットの符号を設定することができる。
【0018】
受信部5は、受信アンテナ部4の各受信アンテナ4aから出力されるN個の受信信号のそれぞれについて、ドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化した受信符号を生成して処理部6に出力する。ここで、受信符号とは、実際の受信信号のドップラ周波数軸上のピーク検出結果から求まる出現パターンを符号化したものである。例えば位相数がPであり、送信アンテナ3aの数がMである場合には、受信符号は、位相偏移変調に用いられた位相数と等しい符号長のPビットのうちMビットが「1」であり、残りのP-Mビットが「0」の符号として表される。
【0019】
例えば、図2に符号例として示すように、割り当て符号として「11000」が設定されて位相偏移変調が行われた場合には、縦軸が距離、横軸がドップラ周波数に基づいて一義的に特定可能な速度となる距離-速度マップにおいて、ドップラ観測範囲をP分割した地点のうちM個の地点にてピークが検出される。そのため、例えば物体が存在しない場合に受信される受信符号は、黒丸の位置にピークが検出されることになる。そして、ピーク位置を「1」、ピークが存在しない位置を「0」に対応させることにより、「11000」の5ビットの符号が受信符号として得られることになる。
【0020】
処理部6は、CPU61と、例えば、RAMやROMなどのメモリ62とを有するマイクロコンピュータで構成されている。処理部6は、CPU61でメモリ62に記憶されているプログラム63を実行することにより、レーダ装置1の全体を制御する。また、処理部6は、詳細は後述するが、変調部22において割り当て符号が線形巡回ブロック符号となる位相偏移変調が行われるようにするとともに、割り当て符号と受信符号との相互相関に基づいて、物体の情報を生成する。このとき、位相数や割り当て符号あるいは相互相関の演算等に用いる各種のデータは、メモリ62にデータベース64として記憶されている。
【0021】
なお、処理部6は、1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成することもできる。また、処理部6の機能を実現する手法はソフトウェアに限るものではなく、その1部または全部の機能は、1つあるいは複数のハードウェアを用いて実現する構成とすることでもきる。
【0022】
次に、上記した構成の作用および効果について説明する。
前述のように、MIMO技術を利用するレーダ装置1では、物体を検出するために各送信アンテナ3aからの送信信号を分離する必要がある。なお、送信信号の分離とは、受信信号がどの送信アンテナ3aからの放射波が反射されたものであるのかを特定することを意味する。この場合、例えば変調に用いる位相数よりも送信アンテナの数を少なくすることによって、受信信号から複数の送信信号を識別する精度を向上させることがある。
【0023】
しかし、測定範囲内に存在する物体の速度によっては、ドップラ周波数上でピークの位置がシフトするいわゆる折り返しが生じ、その結果、折り返されたピークが他の物体のピークと重複してしまい、送信信号を分離することができなくなるおそれがある。そして、送信信号を分離することができなくなると、物体の速度が正確に推定できなくなったり、測角精度が劣化したりするなど、物体の情報を正確に得ることができなくなる。
【0024】
この場合、ドップラ周波数上の各送信信号に対応するピークの組の間隔がすべて異なるゴロム定規になるようにすることで、複数の物体が存在している場合における重複を1つにすることも考えられる。しかし、ゴロム定規は、多重化する送信信号の数が増加すると、必要になる位相数が増大するという問題がある。例えば12個の送信信号を多重化する場合には、ゴロム定規の長さは85になるため、最低でも位相数はその倍の170は必要となる。しかし、現状そのような位相数を実装することは困難である。
【0025】
そこで、レーダ装置1は、以下のようにして、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるようにしている。換言すると、レーダ装置1は、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができる割り当て符号に基づいて、変調部22において位相偏移変調を行っている。
【0026】
まず、割り当て符号に求められる条件について説明する。例えば測定範囲内に2つの物体が存在しており、一方の物体では折り返しが発生せず、他方の物体では折り返しが発生し、その結果が距離-速度マップとして得られたとする。このとき、ある割り当て符号に基づいて位相偏移変調を行ってレーダ測定を行っていたとすると、実際に得られる距離-速度マップは、折り返しがない割り当て符号と、1回巡回シフトした割り当て符号との論理和演算の結果として得られることになる。以下、論理和演算をOR演算と称する。
その場合、各送信信号を分離可能とするためには、割り当て符号が下記の条件を満たすような符号になっていることが望ましいと考えられる。
【0027】
1.巡回シフトした符号間において、「1」と「1」との対応が少ないこと。つまり、元の符号と巡回シフトした符号とにおいて、同じビット位置では可能な限り「1」と「0」との組み合わせとなるような符号であること。なお、「1」と「1」とが対応している箇所がピークの重複に相当する。
2.OR演算の結果がユニークであること。つまり、OR演算の結果と同じ結果が得られる組み合わせが少ない符号であること。
【0028】
ここで、上記した条件を満たす可能性がある符号として、線形巡回ブロック符号について検討する。線形巡回ブロック符号は、例えば符号長が8bitであれば256種類の符号の集合から、互いのハミング距離が大きくなるような特定の符号だけを利用する。このとき、選ばれる符号が符号語になる。
【0029】
線形巡回ブロック符号は、符号語の巡回シフトもまた符号語になる巡回性という特性を有している。また、ハミング距離が大きいということは、「1」と「1」、「0」と「0」の対応が少ないことを意味しており、そのことは、ドップラ周波数軸上でのピーク同士の重複が少なくなることを意味している。そのため、例えばいわゆる誤り訂正符号を選択する場合と同様に、ハミング距離が大きな線形巡回ブロック符号を割り当て符号として選択することにより、ドップラ周波数軸上でのピークの重複数を低減できると期待できる。そのため、レーダ装置1は、割り当て符号として巡回性を有する線形巡回ブロック符号を用いて位相偏移変調を行う。
【0030】
このとき、割り当て符号は、上記したように送信アンテナ3aの数がMである場合、Mビットが「1」、P-Mビットが「0」となる符号である。一例ではあるが、例えば送信アンテナ3a1の数がM=4であった場合には、4ビットの「1」が存在する線形巡回ブロック符号を求めるために、位相数としてP=8を選択することができる。この位相数は、変調部22で位相偏移変調を行うことができる範囲で適宜選択すればよい。
【0031】
さて、位相数としてP=8を選択した場合、線形巡回ブロック符号となる割り当て符号として、例えば「10001011」を設定することができる。なお、「10001011」は、8ビットの2進数において最上位ビットが「1」、その次が「0」と続き、最下位ビットが「1」となっていることを示している。
【0032】
そして、レーダ装置1は、図3に示すようにドップラビン数(Nd=256)のドップラビンをNd/Pごとに見た状態において、割り当て符号の「1」に対応するビンに各送信信号に紐づくピークが発生するように位相偏移変調を行う。なお、図3では、黒塗りのビンが割り当て符号の「1」に対応し、斜線で示すブロックが割り当て符号の「0」に対応している。
【0033】
具体的には、レーダ装置1の処理部6は、図4に示す物体検出処理を繰り返し実行する。処理部6は、まず、割り当て符号を取得する(S1)。本実施形態の場合、割り当て符号は予め設定されてデータベース64に記憶されている。そのため、処理部6は、ステップS1において、データベース64から割り当て符号を読み出している。
【0034】
続いて、処理部6は、割り当て符号の「1」に対応するビンに各送信信号に紐づくピークが発生するように、各送信アンテナ3aとの対応関係を設定する(S2)。例えば、処理部6は、送信アンテナ3a1が「0」のビンに対応し、送信アンテナ3a2が「128」のビンに対応し、送信アンテナ3a3が「192」のビンに対応し、送信アンテナ3a4が「255」のビンに対応するように、位相偏移変調を行う際の各送信信号に対する位相回転量が、各送信アンテナ3aを対応するなお、各送信アンテナ3aとの対応関係についても予め設定しておき、データベース64として記憶しておいてもよい。
【0035】
そして、処理部6は、所定の測定開始タイミングになったかを判定し(S3)、測定開始タイミングではないと判定した場合には(S3:NO)待機する。一方、処理部6は、測定開始タイミングになったと判定した場合には(S3:YES)、レーダ測定を行う(S4)。このステップS4では、処理部6は、設定した条件に従って送信部2を所定の測定期間に渡って作動させ、各送信アンテナ3aからそれぞれ放射波を出力し、受信部5において物体からの反射波を受信する。
【0036】
この場合、割り当て符号が「10001011」であったとすると、折り返しが生じることによって得られる巡回シフトした符号は「11000101」となり、それらの最小ハミング距離は3となる。つまり、本実施形態では、変調部22において、割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が3以上となる位相偏移変調を行っている。なお、巡回シフトからなる符号群は、想定される実際の受信符号の期待値の集合に相当するものである。
【0037】
続いて、処理部6は、割り当て符号と受信符号との相互相間を解析する(S5)。この受信符号は、実際に受信した信号を例えば二次元フーリエ変換(2DFFT)してピーク検出(CFAR)することによって得ることができる。つまり、処理部6は、既知の割り当て符号と実際に得られた測定結果である受信符号との関係から、その受信符号がどのような状況で得られたのか推定するとともに、推定の確かさ、つまりは、分離の信頼性を検証する。
【0038】
例えば、割り当て符号が「10001011」であり、受信符号が「11001111」であった場合には、その受信符号は、割り当て符号とその割り当て符号を巡回シフトした符号とのOR演算の結果に一致する。そのため、受信部5は、2つの物体が存在し、一方の物体で折り返しが生じている状況であると推測できる。また、処理部6は、他の組み合わせによって同じ受信符号が得られるか否かを解析することで、その推測の確かさを検証することができる。すなわち、処理部6は、複数の物体が存在する場合において、各送信信号を分離することができる。
【0039】
そして、処理部6は、解析結果に基づいて、物体の距離や速度といった情報を生成する(S6)。なお、生成された情報は、車両に搭載されている表示制御用や速度制御用の電子制御装置に出力され、ドライバーへの報知や車両の速度の制御などに利用される。また、ステップS5における相互相関の演算およびステップS6における情報の生成については、後述する他の実施形態で詳細を説明する。このように、レーダ装置1は、変調部22において割り当て符号として線形巡回ブロック符号に従った位相偏移変調を行っている。
【0040】
以上説明したレーダ装置1によれば、次のような効果を得ることができる。
レーダ装置1は、複数の送信アンテナ3aを有する送信アンテナ部3と、連続波の共通信号を発生させる発振部21と、共通信号を送信アンテナ3aと同数に分岐させた複数の分岐信号のそれぞれについて、それぞれが異なる位相回転量で位相を回転させる位相偏移変調を行い、複数の送信アンテナ3aに入力される複数の送信信号を生成する変調部22と、1つ以上の受信アンテナ4aを有する受信アンテナ部4と、受信アンテナ部4にて受信された1つ以上の受信信号のそれぞれについて、ドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化した受信符号を生成する受信部5と、受信部5にて生成された受信符号に基づいて、送信アンテナ部3からの放射波を反射した物体に関する情報を生成する処理部6と、を備えている。
【0041】
そして、レーダ装置1は、物体が静止している場合に期待されるドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化したものを割り当て符号とすると、処理部6において割り当て符号の「1」に対応するビンに各送信信号に紐づくピークが発生するように各送信アンテナ3aとの対応関係を設定し、変調部22において、割り当て符号として線形巡回ブロック符号に従った位相偏移変調を行う。
【0042】
線形巡回ブロック符号は、符号語の巡回シフトもまた符号語になる巡回性という特性を有している。そのため、ハミング距離が大きいものを選ぶことにより、ドップラ周波数軸上でのピーク同士の重複を少なくすることができる。つまり、各送信信号を分離しやすくなる。
【0043】
これにより、送信信号の分離ができれば各物体の速度をそれぞれ正確に推定することができる。また、符号間のハミング距離が大きい割り当て符号を用いることによって重複するピーク数を低く抑えることができ、測角誤差を低減することができる。つまり物体の情報を正確に得ることができる。また、必要となる割り当て符号の符号長、つまりは、位相偏移変調を行う際の位相数(P)は、概ね送信アンテナ3aの数(M)の2倍程度で済むことになる。
したがって、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができる。
【0044】
レーダ装置1は、変調部22において、割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が2以上となる位相偏移変調を行う。これにより、ピークの重複をより少なくすることができ、各送信信号の分離が容易になるとともに、分離した結果の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、変調部22において、割り当て符号と巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が3以上となるように位相偏移変調を行う構成とすることができる。このような構成によっても、ピークの重複をより少なくすることができ、各送信信号の分離を容易に行うことができるとともに、分離した結果の信頼性を向上させることができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、割り当て符号を設定あるいは選択する他の手法について説明する。また、第2実施形態は、競合がなければ他の1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。
【0047】
レーダ装置1は、変調部22において、割り当て符号の符号多項式が、当該符号多項式の符号長以上の周期をもつ多項式で割り切れる多項式となる位相偏移変調を行う構成とすることができる。
【0048】
また、レーダ装置1は、変調部22において、割り当て符号を巡回シフトさせた符号群について、最大重複ビット数をC、最小ハミング距離をDとした場合に、C<Dとなる位相偏移変調を行う構成とすることができる。
【0049】
また、レーダ装置1は、変調部22において、割り当て符号として、重複する物体数をKとし、K以上の整数をQとした場合において、割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群の任意のQ個の符号をOR演算した結果がそれぞれ異なる符号となる位相偏移変調を行う構成とることができる。
【0050】
このような位相偏移変調を行うことができる割り当て符号としては、例えば、第1実施形態で説明したハミング符号、CRC符号、BCH符号、リードソロモン符号、巡回Golay符号およびM系列符号が考えられる。以下、各符号での割り当て符号の求め方について説明するが、各符号は周知であるため、以下では変数xの符号多項式を用いて求め方を例示するものとする。なお、以下の式における「^」はべき乗を示し、「=」は、割り当て符号の符号多項式が当該符号多項式の符号長以上の周期をもつ多項式で割り切れることを示している。
【0051】
a)ハミング符号の例
・割り当て符号=「01011001」の場合
符号多項式:x^5+x^3+x^2=x^2×(x^3+X+1)
上記した符号多項式から7ビットの例えば「0101100」の符号語を求め、求めた符号語の末尾に「1」を付加するビット拡張を行い、割り当て符号=「01011001」を求める。この場合、ビット拡張は、「1」または「0」の1ビットを符号語の末尾に追加、先頭に追加、あるいは、ビット間に挿入することのいずれかによって実現すればよい。
【0052】
ただし、他の手法についても同様であるが、ビット拡張は、処理部6での演算を容易にするためのものであり必須ではない。例えば、以下のように求めることができる。
・割り当て符号=「10001011」の場合、
符号多項式:x^6+x^2+1=x^3×(x^3+x+1)
上記した符号多項式により例えば「1000101」の符号語を求め、求めた符号語の末尾に「1」を付加するビット拡張を行い、割り当て符号=「10001011」を求める。
【0053】
b)CRC符号の例
符号多項式:x^15+x^12+x^7+x^6+x^5+x^4+x+1=(x^7+x^2)×(x^8++x^7+x^6+x^4+x^2+X+1)
上記した符号多項式により求まる符号語から割り当て符号=「1001000010111011」を求める。
【0054】
c)BCH符号の例
符号多項式:x^14+x^13+x^12+x^7+x^6+x^5+x^2+X=(x^4++x^3+x^2)×(x^10++x^8+x^5+x^4+x^2+X+1)
上記した符号多項式により例えば「111000010100110」の符号語を求め、求めた符号語の末尾に「1」を付加するビット拡張を行い、割り当て符号=「1110000101001101」を求める。
【0055】
d)リードソロモン符号の例
符号多項式:x^3+x+1
上記した符号多項式により例えば「000010000011010001001」の符号語を求め、求めた符号語の末尾に「1」を付加するビット拡張を行い、割り当て符号=「0000100000110100010011」を求める。
【0056】
e)巡回Golay符号の例
符号多項式:x^11+x^10+x^6+x^5+x^4+x^2+1
上記した符号多項式により例えば「01110111010101111111010」の符号語を求め、求めた符号語の末尾に「1」を付加するビット拡張を行い、割り当て符号=「011101110101011111110101」を求める。
【0057】
f)M系列符号の例
符号多項式:x^3+x+1
上記した符号多項式により例えば「1110100」の符号語を求め、求めた符号語の末尾に「1」を付加するビット拡張を行い、割り当て符号=「11101001」を求める。
【0058】
このような符号語から割り当て符号を設定し、その割り当て符号を用いて変調部22において位相偏移変調を行うことにより、第1実施形態と同様に、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができる。
【0059】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態で説明した図4のステップS5における割り当て符号と受信符号との相互相関を解析する際の具体的な手法について説明する。なお、他の実施形態で説明したものと共通する部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、第3実施形態で説明する内容は、競合がなければ他の1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。
【0060】
図5に演算ブロック構成例として示すように、本実施形態のレーダ装置1の処理部6は、割り当て符号と受信符号との相互相関関数を求めるメトリック演算部601を備えている。本実施形態の場合、メトリック演算部601は、演算結果として一例を示すように、割り当て符号と受信符号との相関値を、割り当て符号が何ビットシフトしたかを示す時間遅延(τ)との関係として演算する。なお、図5では、説明のために変調部22で位相偏移変調に利用した割り当て符号を処理部6に入力する態様としているが、割り当て符号は処理部6から変調部22に設定されるパラメータであるため処理部6において既知である。
【0061】
このとき、メトリック演算部601は、割り当て符号と受信符号との相互相関関数をハミング距離に基づいて演算する。例えば、割り当て符号と、割り当て符号を1ビットシフトした符号とのOR演算の演算結果を、便宜的に演算符号と称すると、メトリック演算部601は、受信符号と演算符号とのハミング距離が小さければ相関値が高いと判定し、受信符号と演算符号とのハミング距離が大きければ相関値が低いと演算する。なお、図5の場合、割り当て符号と受信符号とは、τ=8つまりは8ビットシフトした状態と、τ=10つまりは10ビットシフトした状態とにおける相関値が高いことが示されている。
【0062】
メトリック演算部601の演算結果は、推定部602に出力される。そして、推定部602は、閾値を用いて相互相関が高いものを抽出する閾値処理により、相関値が高いピークを抽出する。これにより、受信符号に対する遅延時間、つまりは、実際の受信符号に対応する割り当て符号のシフト量を求めることが可能となり、その結果、各送信信号を分離することができる。
【0063】
そして、各送信信号を分離することができれば、例えば速度推定部603において対象物100のような物体の速度を推定でき、角度推定部604において各物体の角度を推定できることから、情報生成部605において各物体の距離や速度あるいは角度といった情報を生成することができる。
【0064】
このように、本実施形態のレーダ装置1は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部601を備えている。これにより、複数のピークが重複する場合において、相互相関に基づいて各送信信号を分離することができる。したがって、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるなど、第1実施形態や他の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1実施形態で説明した図4のステップS5における割り当て符号と受信符号との相互相関を解析する際の具体的な手法について説明する。なお、他の実施形態で説明したものと共通する部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、第4実施形態で説明する内容は、競合がなければ他の1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。
【0066】
図6に演算ブロック構成例として示すように、本実施形態のレーダ装置1の処理部6は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部611を備えている。メトリック演算部611は、受信符号と、複数の物体が存在する場合に想定される受信符号の期待値の全部または一部が予め記憶されている重複パターンデータ613と比較し、それらの差分をハミング距離で求める。
【0067】
重複パターンデータ613は、例えば位相数をPとし、重複する物体の数を2と想定した場合に期待される受信符号の全部または一部を、予めリスト化してデータベース64に記憶したものである。重複パターンデータ613は、メトリック演算部611において割り当て符号と受信符号との相互相関を演算する際に参照される。なお、図6に示す重複パターンデータ613は一例である。また、重複する物体の想定数が異なる他の重複パターンデータ613を記憶することもできる。つまり、重複パターンデータ613は、想定される全部または一部の物体の重複状況に対して、期待される受信符号の全部または一部を予めリスト化したデータである。
【0068】
前述のように、割り当て符号は予め設定されているものであるため、重複する物体の数を想定すれば、実際に得られる受信符号の期待値を予め把握することができる。つまり、重複パターンデータ613は、割り当て符号と相関している。そのため、受信符号の期待値をリスト化して重複パターンデータ613として記憶しておけば、実際の測定時に得られた受信符号と割り当て符号との相互相関を、重複パターンデータ613を参照することによって求めることができる。
【0069】
例えば重複パターンNo.1と受信符号とのハミング距離が3であり、重複パターンNo.2と受信符号とのハミング距離が4であり、重複パターンNo.3と受信符号とのハミング距離が0であり、重複パターンNo.Uと受信符号とのハミング距離が3であったとする。この場合、受信符号と割り当て符号との相互相関は、重複パターンNo.3が最も相関値が高いピークとなり、重複パターンNo.1とNo.Uとの相関値が相対的に低く、重複パターンNo.2の相関値が相対的に最も低いことになる。なお、図6に示すハミング距離の演算結果は一例である。
【0070】
メトリック演算部611による演算結果は、推定部612に出力される。推定部612は、演算結果に対して閾値を用いて相互相関が高いものを抽出する閾値処理、あるいは、演算結果に対して最大値や最小値を求める処理を実行することにより、受信符号の期待値と受信符号との相互相関におけるピークを検出する。なお、本実施形態ではハミング距離の最小値を求めているが、重複パターンデータ613の生成の仕方によっては、例えばハミング距離の最大値を求める構成とすることもできる。また、閾値処理と、最小値または最大値を求める処理とを組み合わせることもできる。
【0071】
そして、推定部612は、検出した相互相関におけるピークに基づいて、重複パターンデータ613において受信信号に対応する重複パターンの推定を行う。例えば図6の場合において重複パターンNo.3がピークとして検出された場合、推定部612は、受信信号に対応する重複パターンとして、重複パターンNo.3を特定する。重複パターンは、予め物体の存在を想定して求められた符号であるため、重複パターンが分かれば、そのパターンに該当する物体を推定することができる。すなわち、各送信信号を実質的に分離した状況を再現することができる。
【0072】
そして、各送信信号を分離することができれば、例えば速度推定部603において各物体の速度を推定でき、角度推定部604において各物体の角度を推定できることから、情報生成部605において各物体の距離や速度あるいは角度といった情報を生成することができる。
【0073】
このように、本実施形態のレーダ装置1は、受信符号の期待値と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部611を備えている。そして、メトリック演算部611は、受信符号を、複数の物体が存在する場合に想定される受信符号の期待値の全部または一部が予め記憶されている重複パターンデータ613との差分をハミング距離として求める。これにより、まず、受信符号との相互相関が高い重複パターンを推定することができる。
【0074】
重複パターンデータ613は、物体の状況に応じて想定される受信信号の期待値であることから、相互相関が高い重複パターンを推定することができれば、その重複パターンから物体の状況を推定することができる。つまり、実際の受信信号から、想定される物体の状況を推定することができる。これにより、割り当て符号と受信符号との相互相関を求めることができ、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。
【0075】
したがって、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるなど、第1実施形態や他の実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、重複パターンデータ613に含まれていない受信信号については、例えば第3実施形態と組み合わせて相互相関の演算により重複パターンを求めることができる。
【0076】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について説明する。第5実施形態では、第1実施形態で説明した図4のステップS5における割り当て符号と受信符号との相互相関を解析する際の具体的な手法について説明する。なお、他の実施形態で説明したものと共通する部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、第5実施形態で説明する内容は、競合がなければ他の1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。
【0077】
図7に演算ブロック構成例として示すように、本実施形態のレーダ装置1の処理部6は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部621を備えている。このメトリック演算部621は、演算ブロック詳細として示すように、割り当て符号と受信符号等の相互相関を演算する相関演算ブロック621aと、相関演算結果データ623を参照して相関演算ブロック621aの演算結果との差分を演算する差分演算ブロック621bとを備えている。
【0078】
相関演算ブロック621aは、第1実施形態のメトリック演算部601と同様に、割り当て符号と受信符号の相互相関を例えば図5の演算結果として示す相関値と遅延時間との関係として求めるための演算ブロックである。また、差分演算ブロック621bは、相関演算ブロック621aの演算結果を、例えばデータベース64に予め記憶されている相関演算結果データ623と比較することにより、相関演算結果データ623との差分を演算する演算ブロックである。
【0079】
相関演算結果データ623は、複数の物体が存在する場合に想定される受信符号の期待値と割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果を予め演算してまとめたデータである。つまり、相関演算結果データ623は、例えば図5の演算結果に示す相関値と遅延時間との関係のような相互相関を示すデータが、想定される物体の数などに対応付けて記憶されている。また、相関演算結果データ623は、相関演算ブロック621aの演算結果と対比可能なデータとして記憶されている。つまり、つまり、相関演算結果データ623は、想定される全部または一部の物体の重複状況に対して、受信符号の期待値と割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果を予め演算したデータである。
【0080】
このような構成の場合、レーダ測定が行われると、まず、相関演算ブロック621aにおいて、割り当て符号と受信符号との相互相関関数が演算され、その演算結果が差分演算ブロック621bに出力される。続いて、差分演算ブロック621bにおいて、相関演算ブロック621aの演算結果と相関演算結果データとが比較されて、それらの差分が計算される。
【0081】
差分演算ブロック621bの演算結果は推定部622に出力され、推定部622は、差分に対して閾値を用いて相互相関が高いものを抽出する閾値処理、あるいは、差分に対して最大値や最小値を求める処理を実行することにより、割り当て符号と受信符号との相互相関におけるピークを検出する。
【0082】
相関演算結果データ623は、ある状況における受信信号の期待値と割り当て信号との相互相関を示すものであることから、相互相関におけるピークを検出することにより、実際の受信信号に対応する物体の状況を推定することができる。すなわち、相関演算結果データ623に基づいて、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。
【0083】
そして、各送信信号を分離することができれば、例えば速度推定部603において各物体の速度を推定でき、角度推定部604において各物体の角度を推定できることから、情報生成部605において各物体の距離や速度あるいは角度といった情報を生成することができる。
【0084】
このように、本実施形態のレーダ装置1は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部621を備えている。そして、メトリック演算部621は、割り当て符号と受信符号との相互相関の演算結果と、複数の物体が存在する場合に想定される受信符号と当該受信信号が得られる割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果が予め記憶されている相関演算結果データ623とを比較し、その差分を演算する。これにより、受信符号に対応した物体の状況を推定することができ、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。
【0085】
したがって、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるなど、第1実施形態や他の実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、相関演算結果データ623に含まれていない受信信号については、例えば第3実施形態と組み合わせて相互相関の演算により重複パターンを推定したり、第4実施形態と組み合わせて重複パターンデータ613に基づく推定を行ったりすることができる。
【0086】
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について説明する。第6実施形態では、第1実施形態で説明した図4のステップS5における割り当て符号と受信符号との相互相関を解析する際の具体的な手法について説明する。なお、他の実施形態で説明したものと共通する部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、第6実施形態で説明する内容は、競合がなければ他の1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。
【0087】
図8に演算ブロック構成例として示すように、本実施形態のレーダ装置1の処理部6は、割り当て符号と受信符号の相互相関関数を求めるメトリック演算部631と、割り当て符号と受信符号との相互相関関数におけるピークの検出を行う推定部632とを備えている。
【0088】
メトリック演算部631は、第1実施形態のメトリック演算部601と同様に、割り当て符号と受信符号の相互相関関数を例えば図5の演算結果として示す相関値と遅延時間との関係として求めるための演算ブロックである。
【0089】
推定部632は、演算ブロック詳細として示すように、メトリック演算部631の演算結果のピークを検出する演算ピーク検出ブロック632a、受信符号と相関演算結果データ623とを比較して相互相関におけるピークを検出する相関ピーク検出ブロック632b、および、それらの出力に基づいてピークの重複状態を推定する重複パターン推定ブロック632cの演算ブロックを備えている。
【0090】
演算ピーク検出ブロック632aは、メトリック演算部631の演算結果に対して、閾値を用いて相互相関が高いものを抽出する閾値処理、あるいは、演算結果に対して最大値や最小値を求める処理を実行することにより、割り当て符号と受信符号との相互相関におけるピークを検出する。
【0091】
相関ピーク検出ブロック632bは、受信符号と相関演算結果データ623とを比較し、閾値を用いて相互相関が高いものを抽出する閾値処理、あるいは、演算結果に対して最大値や最小値を求める処理を実行することにより、受信符号と相関演算結果データ623との相互相関におけるピーク、つまりは、相関演算結果データ623に含まれているデータのうち受信信号との相関値が高いデータを推定する。ただし、受信符号の情報はメトリック演算部632aの出力としての相互相関演算結果に含まれているため、それを利用する場合には相関ピーク検出ブロック632bへの受信符号の入力は必須では無い。
【0092】
重複パターン推定ブロック632cは、演算ピーク検出ブロック632aによって検出されたピークと、相関ピーク検出ブロック632bによって検出されたピークとを比較することにより、実際の物体の重複状況に対応するピークの重複状態を推定する。このとき、重複パターン推定ブロック632cは、例えば両者のピークの差分をハミング距離として求め、ハミング距離が小さければ各ブロックのピーク検出結果が妥当であると判定し、そのピークに対応する物体の重複状態を推定する。これにより、受信符号に対応した物体の状況を推定することが可能となり、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。
【0093】
そして、推定部632の推定結果は、例えば速度推定部603において各物体の速度を推定でき、角度推定部604において各物体の角度を推定できることから、情報生成部605において各物体の距離や速度あるいは角度といった情報を生成することができる。
【0094】
このように、本実施形態のレーダ装置1は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部621と、割り当て符号と受信符号との相互相関におけるピークの検出を行う推定部632とを備えている。
【0095】
そして、推定部632は、メトリック演算部631の演算結果に対して閾値を用いてピークを抽出する閾値処理を行うことによって、または、メトリック演算部の演算結果に対して最大値、最小値あるいは極値を求める処理を行って検出したピークと、受信信号と相関演算結果データ623とを比較して得られたピークとを比較することにより、物体の重複状況を推定する。これにより、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。
【0096】
したがって、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるなど、第1実施形態や他の実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、相関演算結果データ623に含まれていない受信信号については、例えば第3実施形態と組み合わせて相互相関の演算により重複パターンを推定したり、第4実施形態と組み合わせて重複パターンデータ613に基づく推定を行ったりすることができる。
【0097】
(第7実施形態)
以下、第7実施形態について説明する。第7実施形態では、第1実施形態で説明した図4のステップS5における割り当て符号と受信符号との相互相関を解析する際の具体的な手法について説明する。なお、他の実施形態で説明したものと共通する部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、第7実施形態で説明する内容は、競合がなければ他の1つまたは複数の実施形態と組み合わせることができる。
【0098】
図9に演算ブロック構成例として示すように、本実施形態のレーダ装置1の処理部6は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部641と、割り当て符号と受信符号との相互相関におけるピークの検出を行う推定部642とを備えている。
【0099】
メトリック演算部641は、第1実施形態のメトリック演算部601と同様に、割り当て符号と受信符号の相互相関関数を例えば図5の演算結果として示す相関値と遅延時間との関係として求めるための演算ブロックである。
【0100】
推定部642は、演算ブロック詳細として示すように、メトリック演算部641の演算結果のピークを検出する演算ピーク検出ブロック642a、メトリック演算部641の演算結果と重複パターンデータ613とを比較してピークの重複状態を推定する重複パターン推定ブロック642b、演算ピーク検出ブロック642aの検出結果と重複パターン推定ブロック642bの推定結果のうち受信信号との相関値が信頼性が高い方を選択するセレクタ642cの演算ブロックを備えている。
【0101】
演算ピーク検出ブロック642aは、メトリック演算部641の演算結果に対して、閾値を用いて相互相関が高いものを抽出する閾値処理、あるいは、演算結果に対して最大値や最小値を求める処理を実行することにより、割り当て符号と受信符号との相互相関におけるピークを検出する。
【0102】
重複パターン推定ブロック642bは、メトリック演算部641の演算結果と相関演算結果データ623とを比較し、それらの相互相関におけるピーク、つまりは、相関演算結果データ623に含まれているデータのうち演算結果との相関値が高いデータを推定する。
【0103】
そして、セレクタ642cは、演算ピーク検出ブロック642aの検出結果と重複パターン推定ブロック642bの推定結果のうち、例えばハミング距離が相対的に小さいなど、より受信信号との相互相関があるほうを選択する。なお、両者の結果が一致している場合にはいずれかを選択すればよく、両者ともに確かさが低いと判定される状況であれば、他の実施形態で説明した他の手法に基づいてピークを検出する構成とすることができる。
【0104】
つまり、本実施形態では、物体の重複状況に対応するピークを複数の手法によって検出し、より信頼性が高い方を選択する構成となっている。そして、重複パターンデータ613は、物体の状況に応じて想定される受信信号の期待値であることから、相互相関が高い重複パターンを推定することができれば、その重複パターンから物体の状況を推定することができる。つまり、実際の受信信号から、想定される物体の状況を推定することができる。これにより、割り当て符号と受信符号との相互相関を求めることができ、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。
【0105】
このように、本実施形態のレーダ装置1は、割り当て符号と受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部621と、割り当て符号と受信符号との相互相関におけるピークの検出を行う推定部642とを備えている。そして、推定部642は、メトリック演算部641の演算結果から求まるピークと、演算結果を重複パターンデータ613と比較することに得られたピークと、を比較することによって物体の重複状況を推定する。
【0106】
これにより、各送信信号が実質的に分離された状況を再現することができる。したがって、実装が容易であり、且つ、複数の物体が存在する場合であっても物体の情報を正確に得ることができるなど、第1実施形態や他の実施形態と同様の効果を得ることができる。この場合、重複パターンデータ613に含まれていない受信信号については、例えば第3実施形態と組み合わせて相互相関の演算により重複パターンを推定したり、第5実施形態と組み合わせて相関演算結果データ623に基づく推定を行ったりすることができる。
【0107】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【0108】
本件は、特許請求の範囲に記載の発明に加え、以下のような発明を含む。
[1]
複数の送信アンテナを有する送信アンテナ部と、
連続波の共通信号を発生させる発振部と、
前記共通信号を前記送信アンテナと同数に分岐させた複数の分岐信号のそれぞれについて、それぞれが異なる位相回転量で位相を回転させる位相偏移変調を行い、前記複数の送信アンテナに入力される複数の送信信号を生成する変調部と、
1つ以上の受信アンテナを有する受信アンテナ部と、
前記受信アンテナ部にて受信された1つ以上の受信信号のそれぞれについて、ドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化した受信符号を生成する受信部と、
前記受信部にて生成された前記受信符号に基づいて、前記送信アンテナ部からの放射波を反射した物体に関する情報を生成する処理部と、を備え、
物体が静止している場合に期待されるドップラ周波数軸上のピークの出現パターンを符号化したものを割り当て符号とすると、
前記変調部において、前記割り当て符号として線形巡回ブロック符号に従った位相偏移変調を行うレーダ装置。
[2]
前記変調部において、前記割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が2以上となる位相偏移変調を行う[1]記載のレーダ装置。
[3]
前記変調部において、前記割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群との最小ハミング距離が3以上となる位相偏移変調を行う[1]または[2]記載のレーダ装置。
[4]
前記変調部において、前記割り当て符号の符号多項式が、当該符号多項式の符号長以上の周期をもつ多項式で割り切れる多項式となる位相偏移変調を行う[1]から[3]のいずれかに記載のレーダ装置。
[5]
前記変調部において、前記割り当て符号を巡回シフトさせた符号群について、最大重複ビット数をC、最小ハミング距離をDとした場合に、C<Dとなる位相偏移変調を行う[1]から[4]のいずれかに記載のレーダ装置。
[6]
前記変調部において、前記割り当て符号が、ハミング符号、CRC符号、BCH符号、リードソロモン符号、巡回Golay符号およびM系列符号のいずれかとなる位相偏移変調を行う[1]から[5]のいずれかに記載のレーダ装置。記載のレーダ装置。
[7]
前記割り当て符号は、符号長が2のべき乗となるように1または0を1ビット分付加するビット拡張が行われたものである[1]から[6]のいずれかに記載のレーダ装置。
[8]
前記変調部において、前記割り当て符号として、重複する物体数をKとし、K以上の整数をQとした場合において、前記割り当て符号と当該割り当て符号の巡回シフトからなる符号群の任意のQ個の符号をOR演算した結果がそれぞれ異なる符号となる位相偏移変調を行う[1]から[7]のいずれかに記載のレーダ装置。
[9]
前記割り当て符号と前記受信符号の相互相関を求めるメトリック演算部を備える[1]から[8]のいずれかに記載のレーダ装置。
[10]
前記受信符号を、複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号の期待値の全部または一部が予め記憶されている重複パターンデータと比較し、その差分を演算するメトリック演算部を備える[1]に記載のレーダ装置。
[11]
前記メトリック演算部は、前記割り当て符号と前記受信符号との相互相関の演算結果と、複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号と当該受信信号が得られる前記割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果が予め記憶されている相関演算結果データとを比較し、その差分を演算する[9]または[10]に記載のレーダ装置。
[12]
前記メトリック演算部は、差分をハミング距離で演算する[10]または[11]に記載のレーダ装置。
[13]
前記割り当て符号と前記受信符号との相互相関の演算結果におけるピークの検出を行う推定部を備え、
前記推定部は、前記メトリック演算部の演算結果に対して閾値を用いてピークを抽出する閾値処理を行うことによって、または、前記メトリック演算部の演算結果に対して最大値、最小値あるいは極値を求める処理を行って検出したピークと、前記受信信号と複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号と当該受信信号が得られる前記割り当て符号との相互相関の全部または一部の演算結果が予め記憶されている相関演算結果データとを比較して得られたピークと、
を比較することによって物体の重複状況を推定する[9]から[12]のいずれかに記載のレーダ装置。
[14]
前記割り当て符号と前記受信符号との相互相関の演算結果におけるピークの検出を行う推定部と、を備え、
前記推定部は、前記メトリック演算部の演算結果に対して演算したピークと、前記メトリック演算部の演算結果を複数の物体が存在する場合に想定される前記受信符号の期待値の全部または一部が予め記憶されている重複パターンデータと比較することに得られたピークと、を比較することによって物体の重複状況を推定する[9]から[13]のいずれかに記載のレーダ装置。
【符号の説明】
【0109】
図面中、1はレーダ装置、2は送信部、3は送信アンテナ部、3aは送信アンテナ、4は受信アンテナ部、4aは受信アンテナ、5は受信部、6は処理部、21は発振部、22は変調部、601、611、621、631、641はメトリック演算部、602、612、622、632、642は推定部、613は重複パターンデータ、623は相関演算結果データを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9