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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032295
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】髄内釘、および骨接合具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20240305BHJP
   A61B 17/74 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61B17/72
A61B17/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135876
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】501046420
【氏名又は名称】HOYA Technosurgical株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 健
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼田 駿
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL44
4C160LL56
4C160LL58
(57)【要約】
【課題】使用性を向上した髄内釘、および骨接合具を提供する。
【解決手段】
筒状をなして第一の雌ネジ領域15、第一の雌ネジ領域15に対して基端Daの側に配置された第二の雌ネジ領域16、および第一の雌ネジ領域15と第二の雌ネジ領域16との間に配置された非ネジ領域17が自身の内周面に形成された釘本体10と、第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16に螺合可能であり、第一の雌ネジ領域15に螺合した規制位置において骨接合用軸部材2の釘本体10に対する相対移動および相対回転を規制する規制体20と、第二の雌ネジ領域16に螺合可能なリング体側雄ネジ領域35が形成され、使用位置において規制位置となる規制体20に対して基端Daの側に、かつ非ネジ領域17に配置されるリング体30と、を備え、リング体側雄ネジ領域35における形成範囲は非ネジ領域17における形成範囲よりも小さくなっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨を接合する際に骨に挿入され、自身に挿通される骨接合用軸部材とともに骨を内側から固定する髄内釘であって、
筒状をなし、長手方向の中途位置において外周面を貫通して前記骨接合用軸部材を挿通させる軸部材挿通孔が形成されるとともに、前記軸部材挿通孔に対して前記長手方向の基端側に配置された第一の雌ネジ領域、該第一の雌ネジ領域に対して前記基端側に配置された第二の雌ネジ領域、および前記長手方向に該第一の雌ネジ領域と該第二の雌ネジ領域との間に配置された非ネジ領域が自身の内周面に形成された釘本体と、
筒状をなし、前記第一の雌ネジ領域および前記第二の雌ネジ領域に螺合可能な規制体側雄ネジ領域が自身の外周面に形成され、前記第一の雌ネジ領域に螺合した規制位置において、前記先端側に向けて前記軸部材挿通孔に配置された前記骨接合用軸部材を押圧して該骨接合用軸部材の前記釘本体に対する相対移動および相対回転を規制する規制体と、
第一軸線を中心とした環状をなし、前記第二の雌ネジ領域に螺合可能なリング体側雄ネジ領域が自身の外周面に形成され、使用位置において前記規制位置となる前記規制体に対して前記基端側に、かつ少なくとも一部が前記非ネジ領域に配置されるリング体と、
を備え、
前記第一の雌ネジ領域および前記第二の雌ネジ領域は、前記長手方向に延びる第二軸線を中心として形成され、
前記リング体側雄ネジ領域における前記第一軸線方向の形成範囲が、前記非ネジ領域における前記第二軸線方向の形成範囲よりも小さい髄内釘。
【請求項2】
前記リング体における前記第一軸線方向の厚さ寸法が、前記非ネジ領域における前記第二軸線方向の形成範囲よりも小さい請求項1に記載の髄内釘。
【請求項3】
前記非ネジ領域は、前記第二軸線を中心とした断面円形状をなし、
前記リング体側雄ネジ領域におけるネジ山の外径は、前記非ネジ領域の内径よりも小さい請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項4】
前記第一の雌ネジ領域および前記第二の雌ネジ領域におけるネジ山の内径は、前記非ネジ領域の内径よりも小さい請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項5】
前記規制体側雄ネジ領域は、前記第三軸線を中心として形成され、
前記規制体側雄ネジ領域における前記第三軸線方向の形成範囲が、前記非ネジ領域における前記第二軸線方向の形成範囲よりも大きい請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項6】
前記リング体の内周面は、前記使用位置において前記基端側となる前記第一軸線の一方側の端から、該第一軸線の他方側に向かって内径が漸次小さくなる前記第一軸線を中心としたテーパ円環状面を有する請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項7】
前記規制体は、前記規制位置において前記基端側を向く規制体端面を有し、
前記リング体は、前記使用位置において前記先端側を向くとともに前記規制位置となる前記規制体の前記規制体端面に対して前記基端側から対向するリング体端面を有する請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項8】
前記規制体は、第三軸線を中心とした筒状をなし、
前記第一軸線と前記第三軸線とが同軸上に配置された状態で、前記規制体端面における内周縁は、前記リング体端面における内周縁よりも径方向外側に配置される請求項7に記載の髄内釘。
【請求項9】
前記規制体端面には、前記規制位置となる前記規制体において前記長手方向に延びる第三軸線を中心とした円形状の規制体内孔が形成され、
前記リング体端面には、前記第一軸線を中心とした円形状をなすとともに前記規制体内孔よりも小径のリング体内孔が形成されている請求項7に記載の髄内釘。
【請求項10】
前記規制体および前記リング体は同一の金属材料によって形成され、
前記規制体端面および前記リング体端面のうちの一方における全部の領域が、他方における一部の領域に対して前記長手方向に対向する請求項7に記載の髄内釘。
【請求項11】
前記リング体の内周面には、径方向外側に向かって凹むか、または径方向内側に向かって突出する係合部が形成され、
前記係合部が工具の被係合部に係合した状態で、前記工具によって前記リング体が前記第一軸線回りに回転可能となっている請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項12】
請求項1または2に記載の髄内釘と、
前記髄内釘における前記軸部材挿通孔に挿通される骨接合用軸部材と、
を備える骨接合具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の接合に用いられる髄内釘、および骨接合具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大腿骨や上腕骨等の骨頭近傍の骨折を治療する際には髄内釘(ネイル)と呼ばれる手術器具が用いられている。髄内釘は、骨の長手方向に沿って骨の髄腔に挿入され、かつ、ラグスクリューと呼ばれる軸状部材を自身に挿通させて骨内にねじ込むことで、軸部材とともに骨折した骨を内側から強固に固定する。
【0003】
ここで髄内釘は、例えば特許文献1に記載されているように事前にガイドワイヤを骨の髄腔内に挿入してから、このガイドワイヤを自身に挿通させるようにして骨内に挿入されるため筒状をなしている。そしてこのように筒状をなす髄内釘の内側には同様に筒状をなすセットスクリューと呼ばれる規制体が設けられ、この規制体によって髄内釘に対する軸状部材(ラグスクリュー)の相対移動や相対回転を規制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-512853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した従来の髄内釘においては、振動等の外的要因によって上記の規制体(セットスクリュー)が所定の位置から移動してしまう可能性があり、この結果、髄内釘への軸状部材(ラグスクリュー)の固定が不十分となってしまう可能性や、輸送時に髄内釘から規制体(セットスクリュー)が脱落してしまう可能性があり、使用性が十分ではなく、この点について改善が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、使用性を向上した髄内釘、および骨接合具を提供する。
【0007】
本発明の一態様に係る髄内釘は、骨を接合する際に骨に挿入され、自身に挿通される骨接合用軸部材とともに骨を内側から固定する髄内釘であって、筒状をなし、長手方向の中途位置において外周面を貫通して前記骨接合用軸部材を挿通させる軸部材挿通孔が形成されるとともに、前記軸部材挿通孔に対して前記長手方向の基端側に配置された第一の雌ネジ領域、該第一の雌ネジ領域に対して前記基端側に配置された第二の雌ネジ領域、および前記長手方向に該第一の雌ネジ領域と該第二の雌ネジ領域との間に配置された非ネジ領域が自身の内周面に形成された釘本体と、筒状をなし、前記第一の雌ネジ領域および前記第二の雌ネジ領域に螺合可能な規制体側雄ネジ領域が自身の外周面に形成され、前記第一の雌ネジ領域に螺合した規制位置において、前記先端側に向けて前記軸部材挿通孔に配置された前記骨接合用軸部材を押圧して該骨接合用軸部材の前記釘本体に対する相対移動および相対回転を規制する規制体と、第一軸線を中心とした環状をなし、前記第二の雌ネジ領域に螺合可能なリング体側雄ネジ領域が自身の外周面に形成され、使用位置において前記規制位置となる前記規制体に対して前記基端側に、かつ少なくとも一部が前記非ネジ領域に配置されるリング体と、を備え、前記第一の雌ネジ領域および前記第二の雌ネジ領域は、前記長手方向に延びる第二軸線を中心として形成され、前記リング体側雄ネジ領域における前記第一軸線方向の形成範囲が、前記非ネジ領域における前記第二軸線方向の形成範囲よりも小さい。
【0008】
また上記髄内釘では、前記リング体における前記第一軸線方向の厚さ寸法が、前記非ネジ領域における前記第二軸線方向の形成範囲よりも小さくともよい。
【0009】
また上記髄内釘では、前記非ネジ領域は、前記第二軸線を中心とした断面円形状をなし、前記リング体側雄ネジ領域におけるネジ山の外径は、前記非ネジ領域の内径よりも小さくともよい。
【0010】
また上記髄内釘では、前記第一の雌ネジ領域および前記第二の雌ネジ領域におけるネジ山の内径は、前記非ネジ領域の内径よりも小さくともよい。
【0011】
また上記髄内釘では、前記規制体側雄ネジ領域は、前記第三軸線を中心として形成され、前記規制体側雄ネジ領域における前記第三軸線方向の形成範囲が、前記非ネジ領域における前記第二軸線方向の形成範囲よりも大きくともよい。
【0012】
また上記髄内釘では、前記リング体の内周面は、前記使用位置において前記基端側となる前記第一軸線の一方側の端から、該第一軸線の他方側に向かって内径が漸次小さくなる前記第一軸線を中心としたテーパ円環状面を有してもよい。
【0013】
また上記髄内釘では、前記規制体は、前記規制位置において前記基端側を向く規制体端面を有し、前記リング体は、前記使用位置において前記先端側を向くとともに前記規制位置となる前記規制体の前記規制体端面に対して前記基端側から対向するリング体端面を有してもよい。
【0014】
また上記髄内釘では、前記規制体は、第三軸線を中心とした筒状をなし、前記第一軸線と前記第三軸線とが同軸上に配置された状態で、前記規制体端面における内周縁は、前記リング体端面における内周縁よりも径方向外側に配置されてもよい。
【0015】
また上記髄内釘では、前記規制体端面には、前記規制位置となる前記規制体において前記長手方向に延びる第三軸線を中心とした円形状の規制体内孔が形成され、前記リング体端面には、前記第一軸線を中心とした円形状をなすとともに前記規制体内孔よりも小径のリング体内孔が形成されていてもよい。
【0016】
また上記髄内釘では、前記規制体および前記リング体は同一の金属材料によって形成され、前記規制体端面および前記リング体端面のうちの一方における全部の領域が、他方における一部の領域に対して前記長手方向に対向してもよい。
【0017】
また上記髄内釘では、前記リング体の内周面には、径方向外側に向かって凹むか、または径方向内側に向かって突出する係合部が形成され、前記係合部が工具の被係合部に係合した状態で、前記工具によって前記リング体が前記第一軸線回りに回転可能となっていてもよい。
【0018】
また本発明の一態様に係る骨接合具は、上記の髄内釘と、髄内釘における前記軸部材挿通孔に挿通される骨接合用軸部材と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
上記の髄内釘、および骨接合具によれば、使用性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る骨接合具が患者の骨内に設置された様子を、骨を透過して示す全体側面図である。
図2】上記骨接合具の髄内釘の要部の縦断面図であって、骨接合具の使用状態において髄内釘を患者の身体の前方から見た断面図である。
図3】上記髄内釘の釘本体の縦断面図であって、(a)は図2と同じ断面における断面図であり、(b)は(a)に対して周方向に180度反対側、すなわち患者の身体の後方から釘本体を見た断面図である。
図4】上記髄内釘の規制体を示す側面図であって、(a)は規制体を骨接合具の使用状態において患者の身体の前方から見た図であり、(b)は(a)に対して周方向に90度ずれた位置から規制体を見た図である。
図5】上記髄内釘の規制体とリング体とが釘本体内に設置された状態を示す縦断面図であって、図2と同じ断面における断面図である。
図6】上記髄内釘のリング体を示す図であって、(a)は基端側から見た上面図であり、(b)は(a)のA矢視図である。
図7】上記髄内釘のリング体を回転させるための専用工具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(全体構成)
図1に示すように本実施形態の骨接合具100は、例えば患者の大腿骨(以下、単に骨)Bの骨頭B1近傍における骨折(大腿骨頚部骨折)の治療に用いられるものである。そして骨接合具100は、大腿骨Bの内部に大腿骨Bの延在方向に沿って挿入される棒状の髄内釘1と、髄内釘1に対して髄内釘1の長手方向Dに交差するように挿通される骨接合用軸部材(ラグスクリュー)2と、骨接合用軸部材2と併設されて髄内釘1に挿通される補助軸部材3とを備えている。
【0022】
(髄内釘)
図2に示すように髄内釘1は、大腿骨Bの延在方向に沿って延びるように大腿骨Bの髄腔(内腔)に挿入される円筒状をなす釘本体10と、釘本体10の内側に設けられる規制体20およびリング体30と、釘本体10の上部開口10xを塞ぐエンドキャップ40とを有している。
【0023】
(釘本体)
図3(a)および図3(b)に示すように釘本体10は、長手方向Dの基端Daの側(骨接合具100の使用状態において上側)に配置されて長手方向Dに延びる近位部11と、近位部11に対して長手方向Dの先端Dbの側(骨接合具100の使用状態において下側)に配置され、近位部11に一体となって近位部11に対して屈曲(または湾曲)するように先端Dbの側に延びる遠位部12とを有している。
【0024】
近位部11は、長手方向Dに延びる近位部軸線(第二軸線)O1を中心とした円筒状をなしている。また近位部11の内周面によって形成される近位部11の内孔11aは、近位部軸線O1を中心とした断面正円形状をなしている。近位部11は遠位部12に接続される側となる先端Dbの側の端部近傍において、近位部軸線O1の一方側(基端Daの側)から他方側(先端Dbの側)に向かって漸次縮径している。
【0025】
遠位部12は、長手方向Dに、かつ近位部軸線O1に交差する方向に延びる遠位部軸線O2を中心とした円筒状をなしている。また遠位部12には遠位部軸線O2を中心とした断面正円形状をなす内孔12aが形成されている。近位部11と同様に遠位部12は先端Dbの側の端部近傍において、遠位部軸線O2の一方側(基端Daの側)から他方側(先端Dbの側)に向かって漸次縮径し、先細りの形状をなしている。
【0026】
そして近位部11の内孔11aと遠位部12の内孔12aとは滑らかに接続され、これら内孔11a、12aが全体として釘本体10の内側を長手方向Dに貫通している。これら内孔11a、12aは、釘本体10を髄腔に挿入する前に髄腔に挿入されたガイドワイヤ(不図示)を挿通させる機能を有する。
【0027】
また釘本体10の長手方向Dの中途位置において近位部11には、外周面を貫通するように軸部材挿通孔10yが形成されている。この軸部材挿通孔10yは、自身の中心軸線Oyが近位部軸線O1に交差する方向に延びるように、骨接合具100の使用状態を基準として大腿骨Bの転子部B2を経て骨頭B1に向かうように(図1参照)、患者の身体の外側から内側に向かうにしたがって下方から上方に向かって延びている。
【0028】
すなわち軸部材挿通孔10yは近位部11の内孔11aに連通し、骨接合具100の使用状態を基準として内孔11aを挟んで身体の内側および外側の二か所で釘本体10の外周面を貫通している。この軸部材挿通孔10yには、詳しく後述する骨接合用軸部材2(図1参照)が挿通されるようになっている。
【0029】
さらに軸部材挿通孔10yよりも基端Daの側において近位部11には、自身の中心軸線Ozが軸部材挿通孔10yの中心軸線Oyと平行に延びるようにして、外周面を貫通する補助軸部材挿通孔10zが形成されている。よって補助軸部材挿通孔10zは、近位部11の内孔11aに連通し、骨接合具100の使用状態を基準として内孔11aを挟んで患者の身体の内側および外側の二か所で釘本体10の外周面を貫通している。
【0030】
この補助軸部材挿通孔10zには、詳しく後述する補助軸部材3が挿通されるようになっており、補助軸部材挿通孔10zに補助軸部材3が挿通されると、補助軸部材3と軸部材挿通孔10yに挿通された骨接合用軸部材2とが平行に配置されるようになっている(図1参照)。
【0031】
また、軸部材挿通孔10yよりも先端bの側において遠位部12には、長手方向Dに交差する方向に、すなわち遠位部軸線O2に直交する方向に外周面を貫通する固定具挿通孔12yが形成されている。すなわち固定具挿通孔12yは遠位部12の内孔12aに連通し、骨接合具100の使用状態を基準として内孔12aを挟んで患者の身体の内側および外側の二か所で釘本体10の外周面を貫通している。この固定具挿通孔12yには、髄内釘1を大腿骨Bに固定するための固定用スクリュー13が挿通される(図1参照)。
【0032】
さらに近位部11の内周面、すなわち内孔11aの孔内面には、軸部材挿通孔10yおよび補助軸部材挿通孔10zよりも基端Daの側において、第一の雌ネジ領域15、第二の雌ネジ領域16、および非ネジ領域17が形成されている。
【0033】
第一の雌ネジ領域15は近位部軸線O1を中心として形成されている。第一の雌ネジ領域15には、骨接合具100の使用状態において、詳しく後述する規制体20が螺合する(図2参照)。
【0034】
第二の雌ネジ領域16は、近位部軸線O1の方向に間隔をあけて第一の雌ネジ領域15よりも基端Daの側に配置されている。第二の雌ネジ領域16のネジ山・ネジ溝の寸法、およびピッチ等の規格は、第一の雌ネジ領域15と同一となっている。第二の雌ネジ領域16は、釘本体10の基端Daの側の端である内孔11aの開口端よりも先端Dbの側に形成されている。
【0035】
非ネジ領域17は、第一の雌ネジ領域15と第二の雌ネジ領域16との間に配置されている。非ネジ領域17は、近位部11の内孔11aの孔内面において雌ネジが形成されていない領域であって、近位部軸線O1を中心とした断面正円形状の孔からなる領域である。そして非ネジ領域17の内径は、第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16におけるネジ溝の内径と同じか、当該ネジ溝の内径よりも若干大きくなっており、第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16を拡径したような空間を画成している。
【0036】
さらには、内孔11aの孔内面には釘本体10の基端Daの側の端面に向けて開口するとともに近位部軸線O1の方向に第一の雌ネジ領域15、第二の雌ネジ領域16、および非ネジ領域17にわたって径方向外側に凹み、かつ第一の雌ネジ領域15よりも先端Dbの側まで延びるガイド溝18が形成されている。ガイド溝18によって第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16が周方向の1カ所で分断されている。
【0037】
(規制体)
規制体20は例えばチタン等の金属材料によって形成されており、図4(a)および図4(b)に示すように、骨接合具100の使用状態において骨接合用軸部材2に接触する規制体本体21と、規制体本体21に対して相対回転するスクリュー部22とを有している。規制体20は、釘本体10の近位部11の内孔11aに上部開口10x(図2参照)から挿入される。
【0038】
規制体本体21は、骨接合具100の使用状態において長手方向Dに延びる規制体軸線(第三軸線)O3を中心とした円筒状をなしており、下方に向かって外径が漸次縮径する先細りの形状をなしている。また、骨接合具100の使用状態において規制体本体21の下端となる先端からは、基端に向かって径方向外側に向かうように外周面を切り欠いたように形成された傾斜平面21aが、周方向に180度ずれた位置において一対配置されている。
【0039】
そして、傾斜平面21a同士の間には板状をなす略三角形状の押圧部21bが一対形成されている。そしてこれら一対の押圧部21bの先端(下端)同士は、規制体軸線O3の方向にずれた位置に配置されており、詳しく後述する骨接合用軸部材2が釘本体10の軸部材挿通孔10yに挿通されて釘本体10を貫通した状態で、それぞれ骨接合用軸部材2に接触可能となっている(図2参照)。
【0040】
また規制体本体21の外周面には、径方向外側に突出するとともに規制体軸線O3の方向に延びる矩形状のガイド突起21cが形成されている。規制体本体21が釘本体10の内孔11aに挿入される際には、ガイド突起21cが釘本体10のガイド溝18内に配置されて、釘本体10に対する相対回転が規制されながら、規制体本体21が釘本体10の内孔11aにおいて長手方向Dに案内されるようになっている(図3(b)参照)。
【0041】
また規制体本体21には、規制体軸線O3の方向に交差する方向に外周面を貫通する規制体貫通孔21xが形成されている。この規制体貫通孔21xは、骨接合具100の使用状態において、詳しく後述する補助軸部材3が挿通されるようになっており(図2参照)、すなわち骨接合具100の使用状態において身体の外側から内側に向かって下方から上方に向かって延び、釘本体10の補助軸部材挿通孔10z(図3(a)および図3(b)参照)と同軸上に配置される。
【0042】
スクリュー部22は、規制体軸線O3を中心とした円環状をなしている。スクリュー部22は規制体本体21の基端Daの側において規制体本体21の外周面を覆うようにして規制体本体21を支持し、規制体本体21に対して規制体軸線O3回りに相対回転可能となっている。またスクリュー部22の外周面には、規制体軸線O3を中心として規制体側雄ネジ領域25が形成されている。
【0043】
この規制体側雄ネジ領域25は、釘本体10における第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16(図3(a)および図3(b)参照)の双方に螺合可能となっている。また規制体側雄ネジ領域25における規制体軸線O3の方向の形成範囲は、釘本体10における非ネジ領域17の近位部軸線O1の方向の形成範囲よりも大きくなっている。すなわち、規制体側雄ネジ領域25が第一の雌ネジ領域15と第二の雌ネジ領域16との間にわたって配置され、第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16の双方に螺合した状態となることが可能となっている。
【0044】
ここで図5に示すように、スクリュー部22の内側において後述する規制体側ストレート円環状面22bの一部領域には六角穴(もしくはヘクサロビュラ穴等)22xが形成されており、この穴22xに不図示の工具が係合することにより工具によってスクリュー部22を規制体軸線O3回りに回転させることが可能となっている。そしてスクリュー部22の規制体側雄ネジ領域25を第二の雌ネジ領域16から第一の雌ネジ領域15(図3(a)および図3(b)参照)に螺合させ、釘本体10の内孔11aにスクリュー部22を挿入していく。すると規制体本体21のガイド突起21cがガイド溝18(図3(b)参照)によって案内され、スクリュー部22が規制体本体21に対して規制体軸線O3回りに相対回転しつつ、かつ規制体本体21の釘本体10に対する相対回転が規制されつつ規制体本体21が釘本体10に挿入されていく。
【0045】
そしてスクリュー部22の規制体側雄ネジ領域25が第一の雌ネジ領域15のみに螺合した位置において、骨接合用軸部材2に対して規制体本体21の押圧部21bが接触し、骨接合用軸部材2を規制体軸線O3の方向に先端Dbの側に押圧するようになっている。このように押圧部21bが骨接合用軸部材2を押圧している規制体20の位置が「規制位置」となり、この規制位置に規制体20が配置されると、骨接合用軸部材2の釘本体10に対する相対移動および相対回転が規制されるようになっている。さらに規制体20が規制位置に配置されると、規制体軸線O3は近位部軸線O1(図3(a)および図3(b)参照)と同軸上に配置される。
【0046】
図5に示すようにスクリュー部22の内周面は、規制体軸線O3の方向の一方側(規制位置において基端Daの側)から、他方側(規制位置において先端Dbの側)に向かって内径が漸次小さくなる規制体軸線O3を中心とした規制体側テーパ円環状面22aと、規制体側テーパ円環状面22aに対して規制体軸線O3の方向の他方側に接続され、規制体軸線O3を中心とした正円環状をなす規制体側ストレート円環状面22bとを有している。またスクリュー部22は、規制体軸線O3の一方側を向く平面状をなす規制体端面22cを有している。
【0047】
(リング体)
図6(a)および図6(b)に示すようにリング体30は、リング体軸線(第一軸線)O4を中心とした正円環状をなしている。リング体30は規制体20と同一の材料によって形成されている。またリング体30の外周面にはリング体側雄ネジ領域35が形成されている。このリング体側雄ネジ領域35はリング体軸線O4を中心として形成され、釘本体10における第二の雌ネジ領域16(図3(a)および図3(b)参照)に螺合可能となっている。リング体側雄ネジ領域35が第二の雌ネジ領域16に螺合した状態では、リング体軸線O4は規制体軸線O3に一致する(図5参照)。
【0048】
またリング体30におけるリング体軸線O4の方向の長さ寸法は、非ネジ領域17の近位部軸線O1の方向の形成範囲よりも小さくなっている。本実施形態では、例えばリング体30におけるリング体軸線O4の方向の厚さ寸法tは13mmであり、非ネジ領域17における近位部軸線O1の方向の形成範囲(形成長さ)Lは15mmとなっている(図3(a)および図3(b)参照)。またリング体側雄ネジ領域35の最大外径、すなわちネジ山の外径は、非ネジ領域17の内径よりも小さくなっている。これによりリング体30は非ネジ領域17内に収容可能となっている。
【0049】
ここでリング体30は、規制体20が規制位置に配置された状態で非ネジ領域17内に収容されるように、規制体20の後に釘本体10に挿入される(図2参照)。そしてリング体30が非ネジ領域17内に配置される位置を「使用位置」とし、骨接合具100の使用状態においては、リング体30はこの使用位置に配置される。
【0050】
また図5に戻ってリング体30における内周面は、リング体軸線O4の方向の一方側(使用位置において基端Daの側)から、他方側(使用位置において先端Dbの側)に向かって内径が漸次小さくなるリング体軸線O4を中心としたリング体側テーパ円環状面30aと、リング体側テーパ円環状面30aに対してリング体軸線O4の方向の他方側に接続され、リング体軸線O4を中心とした正円環状をなすリング体側ストレート円環状面30bとを有している。またリング体30は、リング体軸線O4の他方側を向く平面状をなすリング体端面30cを有している。
【0051】
リング体端面30cは、リング体軸線O4と規制体軸線O3とが同軸上に配置された状態において、規制位置となる規制体20の規制体端面22cに対して使用位置となるリング体30のリング体端面30cが長手方向Dに対向する。またリング体軸線O4と規制体軸線O3とが同軸上に配置された状態において、リング体端面30cの一部の領域に、規制体端面22cの全部の領域が長手方向Dに対向して接触可能となっており、より具体的には本実施形態ではリング体端面30cの内周縁を構成するリング体側ストレート円環状面30bに対して、規制体端面22cの内周縁を構成する規制体側テーパ円環状面22aが径方向外側に位置している。換言すると、規制体端面22cの内孔(規制体内孔)の内径よりもリング体端面30cの内孔(リング体内孔)内径が小径となっている。
【0052】
また図6(a)に示すようにリング体30の内周面には、リング体軸線O4の方向の一方側に開口するとともに径方向外側に凹む係合溝(係合部)30xが形成されている。係合溝30xは周方向に等間隔(180度の間隔)で二つ形成されている。この係合溝30xには、図7に示すような専用工具Kの係合突起Kxが係合可能となっている。専用工具Kの係合突起Kxを係合溝30xに係合させた状態で専用工具Kを回転させることで、リング体30を第二の雌ネジ領域16に螺合させつつ釘本体10に挿入していくことで、リング体30を釘本体10の非ネジ領域17に案内することが可能となっている。
【0053】
(エンドキャップ)
図2に戻ってエンドキャップ40は、釘本体10の内孔11a、12a(図3(a)および図3(b)参照)への組織の流入を防ぐものであり、近位部軸線O1の一方側から近位部11の内孔11aに挿入され、釘本体10の第二の雌ネジ領域16に螺合するようになっている。エンドキャップ40は、規制体20およびリング体30の内側に挿通される軸状領域41と、骨接合具100の使用状態において軸状領域41に対して釘本体10の基端Daの側に設けられかつ外周面に雄ネジ42aが形成された螺合領域42とを有している。
【0054】
骨接合具100の使用状態においては、雄ネジ42aが釘本体10の第二の雌ネジ領域16に螺合した状態で、規制位置となる規制体20および使用位置となるリング体30の内側に軸状領域41が挿通され、釘本体10の補助軸部材挿通孔10zおよび規制体20の規制体貫通孔21xに挿通された補助軸部材3の外周面に接触して、補助軸部材3を釘本体10の先端Dbの側に向けて押圧する。
【0055】
(骨接合用軸部材)
図1に戻って骨接合用軸部材2は、骨接合具100の使用状態において釘本体10の軸部材挿通孔10y(図3(a)および図3(b)参照)に挿通されて釘本体10に設けられる。骨接合用軸部材2は、大腿骨Bの転子部B2を経て骨頭B1に向かって配置され、すなわち患者の身体の外側から内側に向かって下方から上方に向かって延びるように大腿骨B内に配置される。
【0056】
骨接合用軸部材2の先端外周面には雄ネジ2aが形成され、この雄ネジ2aが大腿骨B内にねじ込まれるようにして設けられる。そして雄ネジ2aよりも自身の基端側において骨接合用軸部材2の外周面には、骨接合用軸部材2の軸方向に延びる被押圧溝2bが形成されている。そして骨接合具100の使用状態においては、規制体20における一対の押圧部21b(図4(a)および図4(b)参照)が骨接合用軸部材2の軸方向に並んで配置された状態で、各々の押圧部21bの先端が被押圧溝2b内に配置され、押圧部21bによって骨接合用軸部材2が釘本体10の先端Dbの側に押圧され、釘本体10に対する骨接合用軸部材2の相対移動や相対回転が規制されるようになっている。
【0057】
(補助軸部材)
補助軸部材3は、骨接合具100の使用状態において釘本体10の補助軸部材挿通孔10z(図3(a)および図3(b)参照)に挿通されて釘本体10に設けられる。補助軸部材3は、骨接合具100の使用状態において骨接合用軸部材2の上方に骨接合用軸部材2と平行に配置され、すなわち大腿骨Bの転子部B2を経て骨頭B1に向かって大腿骨B内に配置される。補助軸部材3の先端外周面には雄ネジ3aが形成され、この雄ネジ3aが大腿骨B内にねじ込まれるようにして設けられる。そして雄ネジ3aよりも自身の基端側において補助軸部材3の外周面には、エンドキャップ40の軸状領域41(図2参照)の先端が接触し、補助軸部材3が釘本体10の先端Dbの側に押圧され、釘本体10に対する補助軸部材3の相対移動や相対回転が規制されるようになっている。
【0058】
(作用効果)
上述した本実施形態の骨接合具100を骨折の治療に使用する際には、まず、大腿骨Bにおける上端にオウル等を用いてエントリーホールを形成した後、ドリル等の穿孔具によってエントリーホールを広げ、大腿骨Bの髄腔に連通する開口Baを形成する。そして開口Baに不図示のガイドワイヤを挿通させてから、釘本体10の内側に規制体20およびリング体30を設けた状態で、このガイドワイヤを釘本体10、規制体20、およびリング体30の内側に挿通させるようにして釘本体10を開口Baから挿入する。
【0059】
その後、骨接合用軸部材2を挿通するための骨孔および補助軸部材3を挿通するための骨孔を穿孔具によって形成し、骨接合用軸部材2および補助軸部材3をねじ込む。その後、規制体20を釘本体10にさらにネジ込んで規制体20によって骨接合用軸部材2を下方に押圧して固定し、最後にエンドキャップ40を釘本体10にねじ込むことで骨接合具100の設置が完了する。
【0060】
以上説明した本実施形態の骨接合具100によれば、髄内釘1の釘本体10の内側に第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16を形成し、かつ、これらの雌ネジ領域15、16の間に雌ネジの無い非ネジ領域17を形成した。このため規制体20を釘本体10に挿入して第一の雌ネジ領域15のみに螺合する規制位置に配置した後に、リング体30を第二の雌ネジ領域16に螺合させつつ釘本体10の内側に挿入して非ネジ領域17に収容すると、リング体30が外的要因によって非ネジ領域17において回転してしまったとしても、リング体側雄ネジ領域35は第一の雌ネジ領域15や第二の雌ネジ領域16に螺合することなく非ネジ領域17において空転する。
【0061】
したがってリング体30が釘本体10から抜け落ちることがなくなり、非ネジ領域17にとどまることになるため、規制位置となる規制体20が外的要因によって回転して釘本体10内で長手方向Dの基端Daの側(骨接合具100の使用状態で上側)へ移動しようとしても、リング体30によってこのような移動が規制されることになり、規制体20の脱落を回避することができ、規制体20が規制位置から大きく移動してしまうことを回避できる。
【0062】
特に本実施形態ではリング体側雄ネジ領域35におけるネジ山の外径が、非ネジ領域17の内径よりも小さくなっているため、リング体30を非ネジ領域17でスムーズに空転させることができる。またこの際、リング体30と非ネジ領域17との間には隙間が形成されるため、非ネジ領域17においてリング体30が径方向に移動できる。この結果、リング体30のリング体軸線O4が第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16の中心となる近位部軸線O1と軸ずれした状態となり、非ネジ領域17からリング体30が脱落してしまうことを確実に回避できる。
【0063】
また、第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16におけるネジ山の内径は、非ネジ領域17の内径よりも小さくなっているため、第一の雌ネジ領域15と非ネジ領域17との間、および第二の雌ネジ領域16と非ネジ領域17との間には段差が形成されることになり、段差にリング体30が接触することで、非ネジ領域17から長手方向Dの双方へのリング体30の脱落を回避できる。
【0064】
また規制体側雄ネジ領域25における規制体軸線O3の方向の形成範囲が、非ネジ領域17における近位部軸線O1の方向の形成範囲よりも大きくなっている。このため、釘本体10に規制体20をねじ込み、規制体側雄ネジ領域25が第二の雌ネジ領域16のみに螺合した状態から第一の雌ネジ領域15のみに螺合した状態となる位置(例えば規制位置)まで到達させようとした場合、規制体側雄ネジ領域25が非ネジ領域17を通過する際には規制体側雄ネジ領域25が第二の雌ネジ領域16と第一の雌ネジ領域15との双方に螺合した状態とすることができる。よってスムーズに規制体側雄ネジ領域25が非ネジ領域17を通過することができ、容易にかつ確実に規制体20を所定位置に設置することができる。
【0065】
またリング体30の内周面がリング体側テーパ円環状面30aを有しているため、エンドキャップ40の軸状領域41をリング体30の内側に挿入する際に、このリング体側テーパ円環状面30aによって軸状領域41を案内することができ、エンドキャップ40の設置を容易化できる。
【0066】
またリング体端面30cの内周縁を構成するリング体側ストレート円環状面30bに対して、規制体端面22cの内周縁を構成する規制体側テーパ円環状面22aが径方向外側に位置している。このため釘本体10が大腿骨Bに設置された状態で上方からリング体30を視た時、規制体端面22cの内周縁はリング体30に隠れた状態となっており、エンドキャップ40の軸状領域41を規制体20の内側からリング体30の内側に向かって挿入していく際に、リング体30と規制体20との間で引っ掛かることなく、スムーズに軸状領域41を案内することができる。
【0067】
ところで髄内釘1は、釘本体10の内側に規制体20およびリング体30が設置され、かつ、規制体端面20cとリング体端面30cとを接触させ、規制体端面20cおよびリング体端面30cの各々に内力を発生させた状態で規制体端面20cとリング体端面30cとを固定した状態で輸送される場合がある。本実施形態ではリング体端面30cの一部の領域に規制体端面22cが接触するため、リング体30と規制体20とが同一の金属材料で形成されていても、リング体30と規制体20との凝着の影響を最小限に抑えることができる。
【0068】
よって骨接合具100の使用時には、仮に規制体20とリング体30とが凝着していたとしても容易にリング体30から規制体20を引きはがし、規制体20を規制位置まで押し込むことが可能となる。
【0069】
またこのようにリング体端面30cに規制体端面22cが接触することでリング体30と規制体20とが干渉することになる。したがってリング体30によって、リング体30よりも基端Daの側に規制体20が移動してしまうことがなくなり、規制体20の脱落を回避できる。
【0070】
また専用工具Kのみによってリング体30を回転させることができるため、第三者が誤ってリング体30を釘本体10から取り外してしまうことを回避できる。
【0071】
ここで本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、リング体30においては、必ずしもリング体軸線O4の方向のリング体30の全体の厚さ寸法が、非ネジ領域17における近位部軸線O1の方向の形成範囲よりも小さくなくともよく、少なくともリング体側雄ネジ領域35におけるリング体軸線O4の方向の形成範囲が、非ネジ領域17における近位部軸線O1の方向の形成範囲よりも小さくなっていればよい。この場合、少なくとも非ネジ領域17に配置されたリング体30は第一の雌ネジ領域15および第二の雌ネジ領域16に螺合することなく、非ネジ領域17において空転することになり、規制体20の釘本体10に対する大幅な相対移動を回避することができる。
【0072】
またリング体30には係合溝30xに代えて係合突起を形成してもよい。この場合、専用工具Kには係合突起Kxに代えて係合溝を形成することになる。
【0073】
また上述の場合とは逆に、規制体端面22cの一部の領域に対してリング体端面30cの全部の領域が長手方向Dに対向して接触可能となっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の髄内釘、および骨接合具によれば、使用性を向上することができる。
【符号の説明】
【0075】
1…髄内釘
2…骨接合用軸部材
3…補助軸部材
10…釘本体
10x…上部開口
10y…軸部材挿通孔
10z…補助軸部材挿通孔
11…近位部
11a…内孔
12…遠位部
12a…内孔
15…第一の雌ネジ領域
16…第二の雌ネジ領域
17…非ネジ領域
20…規制体
20c…規制体端面
22a…規制体側テーパ円環状面
22c…規制体端面
25…規制体側雄ネジ領域
30…リング体
30a…リング体側テーパ円環状面
30b…リング体側ストレート円環状面
30c…リング体端面
30x…係合溝
35…リング体側雄ネジ領域
100…骨接合具
B…大腿骨
B1…骨頭
B2…転子部
D…長手方向
Da…基端
Db…先端
K…専用工具
Kx…係合突起
O1…近位部軸線(第二軸線)
O2…遠位部軸線
O3…規制体軸線(第三軸線)
O4…リング体軸線(第一軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7