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特開2024-32308フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032308
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/72 20120101AFI20240305BHJP
【FI】
G03F1/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135894
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】591012668
【氏名又は名称】株式会社ホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100089141
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 守弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 恵三
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BD02
2H195BD32
2H195BD33
2H195BD36
(57)【要約】
【目的】本発明は、フォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法に関し、2次電子プロファイルが目標2次電子プロファイルに合致したときに修復処理を終了し、自動修復することを目的とする。
【構成】欠陥のない形状に対する目標2次電子プロファイルと、修復対象の2次電子プロファイルと、フォトマスクの欠陥のある部分に、エッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを欠陥のある部分に照射してエッチングあるいはデポジションを行う、当該ガスを噴射するガス噴射手段と、目標2次電子プロファイルと修復対象の2次電子プロファイルとを比較し、後者が前者に一致するように、ガス噴射手段からエッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを照射し、エッチングあるいはデポジションを行って欠陥を修復する修復手段とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復装置において、
前記フォトマスクの前記欠陥のある部分に対応する、当該欠陥のない形状に対する目標2次電子プロファイルと、
前記フォトマスクの前記欠陥のある部分に細く絞った1次電子ビームを照射しつつ走査し、放出された2次電子を検出・増幅して取得した修復対象の2次電子プロファイルと、
前記フォトマスクの前記欠陥のある部分に、エッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを当該欠陥のある部分に照射してエッチングあるいはデポジションを行う、当該ガスを噴射するガス噴射手段と、
前記目標2次電子プロファイルと、前記修復対象の2次電子プロファイルとを比較し、後者が前者に一致するように、前記ガス噴射手段からエッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを照射し、エッチングあるいはデポジションを行って欠陥を修復する修復手段と
を備えたことを特徴とするフォトマスク修復装置。
【請求項2】
前記目標2次電子プロファイルは、フォトマスクに形成されたパターンの欠陥のある部分に対応する、欠陥のないパターンを抽出し、当該欠陥のないパターンあるいは当該欠陥のないパターンに対してプロセス処理を考慮したパターンに対して発生する2次電子プロファイルあるいは実験で求めた2次電子プロファイルとしたことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク修復装置。
【請求項3】
前記修復対象の2次電子プロファイルは、前記ガス噴射手段からガスの噴射を一時的に停止した状態で、前記細く絞った1次電子ビームを当該フォトマスクの欠陥のある部分に照射しつつ一定方向に走査し、放出された2次電子を検出・増幅して取得することを特徴する請求項1から請求項2にいずれかに記載のフォトマスク修復装置。
【請求項4】
前記フォトマスクの欠陥は、前記ガス噴射手段からガスを欠陥のある部分に噴射しかつ1次電子ビームを照射しつつ平面走査し、当該欠陥のある部分に対して、エッチングあるいはデポジションを行い、修復することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のフォトマスク修復装置。
【請求項5】
前記フォトマスクの欠陥の修復の終了判定は、前記修復対象の2次電子プロファイルが、前記目標2次電子プロファイルに一致したときとしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のフォトマスク修復装置。
【請求項6】
フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復方法において、
前記フォトマスクの前記欠陥のある部分に対応する、当該欠陥のない形状に対する目標2次電子プロファイルと、
前記フォトマスクの前記欠陥のある部分に細く絞った1次電子ビームを照射しつつ走査し、放出された2次電子を検出・増幅して取得した修復対象の2次電子プロファイルと、
前記フォトマスクの前記欠陥のある部分に、エッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを当該欠陥のある部分に照射してエッチングあるいはデポジションを行う、当該ガスを噴射するガス噴射手段とを設け、
修復手段が、前記目標2次電子プロファイルと、前記修復対象の2次電子プロファイルとを比較し、後者が前者に一致するように、前記ガス噴射手段からエッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを照射し、エッチングあるいはデポジションを行って欠陥を修復する
ことを特徴とするフォトマスク修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクの欠陥を修復するフォトマスク修復装置およびフォトマスク修復方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフォトマスク修復はセミオートであり、修正目標図形を人間が作成、選択あるいは既存の図形をコピーするなどして決める必要があった。修正するためには熟練職人が必要とされ生産性が低いという課題が存在した。修正を人が行うので修復結果にばらつきが生じ半導体製造歩留まりに悪影響していた。
【0003】
また、フォトマスク上のパターンは3次元構造からなるため、修復プロセスを管理および修復対象を認識し修復完了判定を行うためにはnmオーダー精度で修正前後の3次元構造を知ることが必要であった。しかしながら、電子顕微鏡内においてnmオーダーの精度で3次元構造を正確に測定することは困難であった。
【0004】
また、精密な3次元構造を知るためには別途AFM等外部装置を用いて当該3次元構造を測定する必要があった。あるいは出来上がった3次元構造の詳細は不問とし別途AIMS等の光学シミュレーション顕微鏡をもちいて修正の出来を評価する必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来のフォトマスクの修復は、人が修正すべき図形を作成、選択、既存の図形をコピーなどして決め、修復(切除、堆積)していたため、自動的に修復できないという課題があった。
【0006】
また、フォトマスク上のパターンは3次元構造からなり、nmオーダー精度で修正前後の3次元構造を知ることが必要であったが、正確に測定することは困難であるという課題があった。
【0007】
また、AIMS等の光学シミュレーション顕微鏡をもちいて修正の出来を評価する必要があり、同一装置で評価できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するために、1次電子ビームを修復対象のパターンに走査した際に発生する修復対象の2次電子プロファイルが、予め作成した目標のパターンの2次電子プロファイル(目標2次電子プロファイル)と一致するように、ガスを導入した1次電子ビームによるエッチングあるいはデポジションを行い、修復装置1台で目標とするパターンの3次元構造を精密に修復して再現した完全自動のマスク修復装置を実現することを目的としている。
【0009】
このため、本発明は、フォトマスクの欠陥のある部分に対応する、当該欠陥のない形状に対する目標2次電子プロファイルと、フォトマスクの欠陥のある部分に細く絞った1次電子ビームを照射しつつ走査し、放出された2次電子を検出・増幅して取得した修復対象の2次電子プロファイルと、フォトマスクの欠陥のある部分に、エッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを当該欠陥のある部分に照射してエッチングあるいはデポジションを行う、当該ガスを噴射するガス噴射手段と、目標2次電子プロファイルと修復対象の2次電子プロファイルとを比較し、後者が前者に一致するように、ガス噴射手段からエッチング用あるいはデポジション用のガスを噴射すると共に1次電子ビームを照射し、エッチングあるいはデポジションを行って欠陥を修復する修復手段とを備える。
【0010】
この際、目標2次電子プロファイルは、フォトマスクに形成されたパターンの欠陥のある部分に対応する、欠陥のないパターンを抽出し、当該欠陥のないパターンあるいは当該欠陥のないパターンに対してプロセス処理を考慮したパターンに対して発生する2次電子プロファイルあるいは実験で求めた2次電子プロファイルとするようにしている。
【0011】
また、修復対象の2次電子プロファイルは、ガス噴射手段からガスの噴射を一時的に停止した状態で、細く絞った1次電子ビームを当該フォトマスクの欠陥のある部分に照射しつつ一定方向に走査し、放出された2次電子を検出・増幅して取得するようにしている。
【0012】
また、フォトマスクの欠陥は、ガス噴射手段からガスを欠陥のある部分に噴射しかつ1次電子ビームを照射しつつ平面走査し、当該欠陥のある部分に対して、エッチングあるいはデポジションを行い、修復するようにしている。
【0013】
また、フォトマスクの欠陥の修復の終了判定は、修復対象の2次電子プロファイルが、目標2次電子プロファイルに一致したときとするようにしている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、1次電子ビームを修復対象のパターンに走査した際に発生する修復対象の2次電子プロファイルが、予め作成した目標のパターンの2次電子プロファイル(目標2次電子プロファイル)と一致するように、ガスを導入した1次電子ビームによるエッチングあるいはデポジションを行い、修復装置1台で目標とするパターンの3次元構造を精密に修復して再現した完全自動のマスク修復装置を実現することが可能となった。
【0015】
これにより、下記が可能となった。
1 1台の装置内で完全自動マスク修正が完結できる。
2 別途装置による精密な3次元構造測定あるいは情報を必要としない。
3 別途光学シミュレーション顕微鏡による修正結果評価を必要としない。
【実施例0016】
図1は、本発明の1実施例構成図を示す。この図1は、サンプル13であるフォトマスク上に形成されたパターンの欠陥を修復する装置の構成図であって、フォトマスクにガスを噴射しつつ電子ビームを照射し、その電子ビームの反応範囲について、エッチングあるいはデポジションを行って欠陥を修復する装置の構成図を示す。以下詳細に説明する。
【0017】
図1において、電子銃1は、電子を発生するものである。
【0018】
ブランキング電極2は、電子銃1で発生された1次電子ビームをnsのオーダーで高速に通過あるいは遮断するものであって、平行平板であり、高電圧を印加するものである。ブランキングした電子ビームが帯電によって1次電子ビームをドリフトさせないように工夫されている。
【0019】
ブランキングアパチャー3は、ブランキング電極2に高電圧を印加して偏向された1次電子ビームを遮断するアパチャーである。
【0020】
収差補正装置4は、複数段からなる電磁界を発生するオクタポールからなる電子ビーム偏向素子とトランスファーレンズからなり、低エネルギーの1次電子ビームに対する色収差を3次以上まで補正し、サンプル13上で細く絞るためのものである。ここで、必要に応じて、収差補正装置(色収差補正装置)4により、電子ビームエネルギーが100Vの時に3nm,200Vの時に2nm,500V以上の時に1nm以下のビームスポット径を実現できるものである。
【0021】
電子検出装置5は、細く絞った1次電子ビームをサンプル13に照射しつつ走査し、そのときに放出された2次電子を検出・増幅するものである。
【0022】
偏向装置6は、1次電子ビームを2段偏向し、細く絞った1次電子ビームをサンプル13の上を照射しつつ走査するものである。
【0023】
対物レンズ7は、1次電子ビームを細く絞ってサンプル13の上に照射するものである。ここでは、必要に応じて収差補正装置(球面、色収差補正装置)を合わせて使用し、球面および色収差を最小限に低減する。
【0024】
試料室10は、真空排気した内部に、フォトマスクなどのサンプル13などを収納する容器である。
【0025】
ガス噴射ノズル11は、ガス(エッチング用のガス、デポジション用のガス、パージ用のガス)をサンプル13の表面に垂直に噴射したり、試料室10の内部にガスを充満させたりなどするためのノズルである。
【0026】
高さセンサー12は、サンプル13の高さ(対物レンズ7の先端との距離等)をリアルタイムに測定するものである。
【0027】
サンプル13は、フォトマスクなどのサンプルであって、表面に形成されたパターンの欠陥を修復する対象の試料である。
【0028】
サンプル温度制御装置14は、搭載したサンプル13の温度を自動調整するものである。
【0029】
Zステージ15は、サンプル13の高さ方向の位置を調整するものである。
【0030】
サンプルバイアス電圧制御装置16は、サンプル13に所定のバイアス電圧を印加するものである。
【0031】
XYステージ17は、サンプル13をX,Y方向に移動させるものであって、レーザー計測19によって精密に測定しつつ所定の位置に移動させるものである。
【0032】
除振台18は、試料室10の振動を除振し、サンプル13の高分解能のSEM画像の取得を可能にするためのものである。
【0033】
レーザー計測19は、サンプル13の位置(X.Y.Z)を、レーザー干渉計を用いて精密にリアルタイムに測定するものである。
【0034】
真空計20は、試料室10の内部の真空を測定するものである。
【0035】
ガス供給装置21は、ガスを供給するものである。
【0036】
ガス流量制御装置22は、ガス供給装置21から供給されたガス(エッチング用、デポジション用、パージ用のガス)の流量を制御するものである。
【0037】
除害装置23は、ドライポンプ24から排気される排気ガスの有害成分を除去するものである。
【0038】
ドライポンプ24は、TMP25から排出されるガスを排気する、オイルレスのポンプである。
【0039】
TMP25は、試料室10の内部を真空排気するポンプであって、オイルレスのポンプである。
【0040】
次に、図1の構成について、詳細に説明する。
【0041】
図1に示す、フォトマスク修正装置は電子ビーム励起反応を利用してエッチングやデポジションを行う装置である。所望のエネルギー、電流量を有した電子ビームを所望の位置に所望のタイミングで照射するために必要な電子銃1、電子ビームをオンオフするためのブランキング電極2、電子ビームを細く絞ってフォトマスクに照射するための対物レンズ7、低エネルギーにおける対物レンズ7の特性を補正して電子ビームをより細く絞るための収差補正装置4、2次電子や反射電子を検出する電子検出装置5、電子ビームをフォトマスク上で2次元走査するための偏向装置6などからなる電子ビームコラムを有する。
【0042】
本発明で利用する収差補正装置4は、100エレクトロンボルトオーダーの低電子ビームエネルギーにおける電子ビームサイズをnmオーダーに絞れるように通常の球面収差補正に加え3次以上の高次の色収差補正を可能とした特別な装置である。
【0043】
修正対象を観察、エッチングあるいはデポジション終点確認をするための電子検出装置5は非常に重要であり、反応ガス耐性および汚染耐性の強いALD型MCPを用いることが望ましい。プロセスの終点判定は2次電子や反射電子の強度あるいは質量分析装置などの出力を用いて行われる。電子ビームコラム内を反応ガスで汚染しないように対物レンズ7には2段の差動排気装置が設けられており、試料室10の内部に混入した反応ガスがコラム内には侵入しないようにしてある。
【0044】
電子ビーム照射に伴うサンプル13の表面帯電を防止するための低真空を実現するために酸素や窒素ガスを反応ガスとは別のガス配管を用いて導入できるようにしてある。電子ビームコラムを制御する電子ビームコラム制御装置や電子銃制御のための高圧電源を有する。これらは装置全体を制御するPC(パソコン)から制御される。
【0045】
電子ビームはTFE、コールドフィールドエミッター、フォトカソードなどのエミッターから発生される。電子を発生する電子銃1およびコラム内を10のマイナス7乗パスカル以上の超高真空に保つための図示外のイオンポンプ等も有している。
【0046】
フォトマスクを適切な座標系にアライメントを行うための光学顕微鏡、nmオーダーで電子ビーム照射位置に対するサンプル位置を決めるためのXYZステージ17、レーザー干渉計あるいはレーザースケールなどのサンプル位置精密測定装置、フォトマスク温度制御装置を有する。Zステージ15にはZ方向に高さの変わる3つの独立したアクチュエータが採用されており、複数の高さセンサーとともに電子ビーム照射軸がフォトマスクに対して常にリアルタイムに垂直に保たれるように動作する。これによりフォトマスク表面への電子ビーム入射角が常に一定となる。逆に必要に応じて任意の角度に設定することも出来る。
【0047】
電子ビームがフォトマスクに到達できるように10のマイナス5乗パスカル以下の真空を実現できる純鉄やインバーあるいはスーパーインバーなどの低熱膨張材料からなる試料室10を有す。試料室10内を所望の真空度に保つためドライポンプ24やターボ分子ポンプ(TMP)25を有す。試料室10の真空度を測定するための真空計20などを有す。ステージドリフトを避けるためにレーザー干渉計を構成する反射鏡やバーミラーおよびミラー等を配置するサンプル位置制御装置周りには熱膨張係数が10ppb以下の超低熱膨張率材料を用いる。レーザー計測19は、差動型を採用する。装置設置場所周辺環境からの振動が装置内部に伝達するのを抑えるためにアクティブ除振装置18、サンプル振動を電子ビーム偏向装置にフィードバックして電子ビーム振動を止める装置なども付いている。
【0048】
クリーンルーム温度は23度±1度程度に保たれているが、マスク修正装置の試料室10温度が大きく変動しないように±0.1度以下の温度調節装置が装置内に別途設けられている。
【0049】
フォトマスク修正を行うためには電子ビーム照射点にのみ確実に化学反応を起こす必要がある。複数種類の反応ガスを必要なタイミング、流量あるいはガス圧、温度で電子ビーム照射点およびその周辺に高応答速度で供給するガスノズルシステムを有している。自発エッチング等を避けるためにガス注入と同時に不要となったガスを瞬間的に電子ビーム照射点から除去するための強制ガス排出装置や反応ガスの活性を瞬時に失わせるための失活ガス供給装置を有している。これらは図示外のPCから自動制御される。
【0050】
フォトマスクに吹き付けられるガス供給温度はガス噴射ノズル11に設けたヒーターで制御できる。ガス噴射ノズル11には温度計を設けガスが固体化する温度以上に保温されるように温度管理する。ヒーターには特殊な配線やシールドを施し電磁波を出さない工夫をする。ガス分子温度はガス噴射ノズル11から放出され修正対象パターンに吸着した瞬間にほぼフォトマスクの表面温度に成る。従って反応温度はフォトマスクの表面温度によって規定される。
【0051】
セラミックヒーターやペルチェ素子を用いてフォトマスクの温度を制御できる。ペルチェが発生する熱はチャンバーに逃がす。レーザー光線あるいは電子ビームによって供給されるエネルギーを用いてフォトマスク表面の局所温度を上昇させることが出来る。フォトマスク上の局所的な温度は光学式温度計を用いて測定可能で、その値を用いてフォトマスク表面温度をフィードバック制御できる。
【0052】
反応ガスを予めイオン化して供給することもできる。イオン化には紫外線照射、電子ビーム照射、RF励起などのイオン化法を用いることが出来る。イオン化されたガスは電界あるいはイオン源と電子ビーム照射点の電位差を用いてフォトマスク修正点に効率よく導くことが出来る。イオン化ガスの輸送効率を上げるためバイアス電極や静電レンズを有することも出来る。イオン銃を用いて加速した反応ガスイオンを直接修正点に届けることも出来る。ここで用いるイオン銃は従来のFIBがGa等の高速で重いイオンを用いて物理的にエッチングを行うために利用していたのとは全く逆に実質的に物理的スパッタリング効果を有さない100eV以下の低いエネルギーで修正点に軽いガスを届けることに特徴がある。クラスター化したイオンを届けることも出来る。クラスター化すればさらにそれぞれの分子の運動エネルギーを下げることが可能でサンプルダメージを防止できる。
中性原子あるいは中性分子の状態で届けた方が良い場合にはイオン化された反応ガスの経路に電子ビーム照射等の中性化手段を設けてイオンの電荷を取り除くことも出来る。
【0053】
次に、図2を用いてガスの供給について詳細に説明する。
【0054】
図2は、本発明のガス供給装置構成例を示す。
【0055】
図2において、精密温度制御装置(独立制御)31は、内部に図示する、ガス源311、弁312、MFC313、混合弁314などを一定温度(例えば50℃)に精密に制御し、所望のガスを気体状態に保持するものである。
【0056】
ガス源311は、使用するガス(エッチングガス系、デポガス系(デポジションガス系)、支援ガス系(H2Oなど))を保存したボンベ、あるいは固体や液体で加熱などするとガス(気体)となるガス源である。
【0057】
弁312は、ガス源311と、窒素バージ系のガスとを切換え、配管などの内部のガスを所望のガスを置換させるための切換弁である。
【0058】
MFC(マスフローコントローラ)313は、ガスを流量制御するコントローラであって、指定した流量に制御するものである。
【0059】
混合弁314は、複数のガスを混合して1つのガス(混合ガス)にするものである。
【0060】
また、チャンバー(試料室10)の側面などあるいは内部に設けるものとして、図示の切換弁318がある。切換弁318は、3つのガス(エッチング系、デポ系、支援系)のうちの1つあるいは2つあるいは3つに任意に高速(ms以下ないし数秒)に切換、所望のガスをサンプル13に向けて噴射するものである。
【0061】
デポ系315は、デポジションを行うガスである(後述する)。
【0062】
エッチング系316は、エッチングを行うガスである(後述する)。
【0063】
支援系317は、エッチングガス、デポジションガスを早急に中和(パージ)などするためのガスである。
【0064】
PLC3(Programable Logic Controller)319は、PC320からの指示に従い、ガス源311,弁312,MFC313,更に、温度などを自動制御する制御装置である。
【0065】
PC320は、パソコンであって、プログラムに従い全体を制御するものである。
【0066】
Display321は、表示装置であって、制御情報などを表示するものである。
【0067】
次に、図2のガスを供給するシステムの構成について詳細に説明する。
【0068】
図2において、フォトマスク修正には複数種類の反応ガスを利用する。反応ガスはエッチング系ガス316、デポ系ガス315に大別され、不要となった反応ガスを流路あるいはチャンバー、フォトマスク表面から高速に除去するためのパージガス(支援系ガス317)が含まれる。
【0069】
エッチング系ガス316には二フッ化キセノンや塩素あるいはALEで使用するジケトン類が含まれる。エッチング加速剤として酸素や水蒸気が含まれる。
【0070】
デポジション系ガス315にはトリメチル白金あるいはテトラキス白金、ADDPあるいはタンタルエトキシドやタングステンカルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニル等一般に知られている有機金属化合物などデポジション材料が含まれる。デポジション促進剤として水蒸気が含まれる。ここに書かれたのはガスの一例である。
【0071】
パージ系ガス(支援系ガス)317としては窒素やアルゴンなどが含まれる。
【0072】
ガス供給装置にて発生させられた反応ガスはマントルヒーター等により所望の温度に保ったままパイプを通って試料室10内にステンレスやチタンなどの非磁性ノズル(ガス噴射ノズル11)を介して当該試料室10に注入される。ガス噴射ノズル11にはヒーター、温度計等、ガス温度を調整する機能が組み込まれている。ガス供給系のコンダクタンスを高くしてガス供給応答速度を改善するために先端だけが尖っているノズルを用いている。試料室10内のガスデリバリー部品は試料室10内の真空によって断熱されるので、直近のガス保温用ヒーター温度に保たれる。
【0073】
反応ガスは常温で固体あるいは液体である場合が多い。そのため、電界複合研磨を行って内壁を鏡面化した小型のボンベ(ガス源311)の中に材料を入れ、ボンベ周辺から加熱を行って昇華させてガス化した後に真空引きされた試料室10に導いて利用する。固体ソースを昇華させて適切なガス圧の気体にするためのヒーターや温度制御回路および供給圧力を測定する圧力センサーあるいはマスフローメーターがガス供給装置には含まれる。制御温度範囲は固体がガス化するために必要な室温から200度程度の範囲であり0.1度程度の精度で制御することが望ましい。
【0074】
試料室10に至る配管途中で材料が固化しないように50度から200度程度の適切な温度に配管は保たれている。反応ガスはマスフロー等(MFC313など)により適切な流量になるように制御される。反応ガスはプロセスごとに数種類使用されるため複数のパイプで供給される。装置を簡単にするため、相互作用が無くて予め混合しても良いガスに関しては、マスフローメーターにて予め決められた流量に設定した後にガス混合装置(切換弁314)を通してガスを1つに混合して供給する。従来の装置で見られるように試料室10内に配置された複数のノズルから反応点に向かって吹き付けただけではガスは均一に混合されないが、本方法を使用すればガスが良く混合されプロセス結果を安定化できる。一方、相互作用のあるガスの場合は、それぞれ独立したガス供給系を持つことが望ましい。各供給系に流量、圧力、温度、供給タイミング等がデジタル的に数値制御できるように複数の独立した制御系(複数の独立したMFC313)を有している。
【0075】
本装置ではエッチング系ガス、デポジション系ガス、および支援系ガスの系統の3つにまとめ電子ビームコラムや試料室10に近い位置に配置した高速バルブ(切換弁318)を用いて適切なタイミングで適切な量のガスが試料室10内のフォトマスク表面に導入できるようにしてある。水蒸気等の支援系ガスは必要に応じて途中で混合することも出来る構成としている。
【0076】
フォトマスク表面へのガス注入をms以下の短時間でオンオフするための高速切換弁318も組み込まれている。切換弁318には電磁弁やピエゾ式あるいはMEMSで作った静電式の弁を利用できる。高速切換弁318は試料室10の近傍においても良いし、応答速度を上げるためにノズル先端に組み込んでも良い。
【0077】
それぞれのガス材料は異なる昇華温度をもつため、それぞれ適切な温度に加熱できる手段を有している。ここで、図3に示すように、ガスをPLC319により統括自動制御するための制御盤上に設けられた制御画面を示している。制御画面には昇華量を制御するためのガスボンベ温度、ガス流量、ガス配管温度、各バルブの開閉状態、ノズル温度などが示されている。目標値と現在値が交互に表示される。制御パラメータ値はPC320から自動修復のシーケンスに沿って遠隔制御することが出来る。装置稼働状態あるいはプロセス途中の上記データはメインテナンス用に全てログとして記録されている。
【0078】
ガスは固化しやすいのでパイプに詰まるのを防止するために弁を温めるのは当然として、昇華温度以上に加熱した不活性ガスを定期的にパイプに流してガスの固化を防止する仕組みを有している。一瞬だけガス流量を急増して反応ガスをフラッシングさせるなどの機能も有している。
【0079】
反応ガスは常温で10Pa程度と蒸気圧が低いため常温で気体となる窒素や酸素などと比較して供給圧が低くなる傾向がある。その圧力を補うために、反応ガスとともに窒素やアルゴンあるいはヘリウムなどの不活性ガスを昇圧ガスとして同時に用いることも出来る。これら昇圧ガスは1次電子ビームとの衝突によりイオンを発生し帯電防止用のガスとしても機能する。昇圧ガスを用いると、従来のようにガス流を得るために必ずしも注射針のような小さな穴が開いたノズルを用いる必要は無く大きな口径を持つガス導入口を利用できるため、ガス固化による不具合発生が軽減される。また、ガス供給ノズルのコンダクタンスを大きくとれるので、反応ガスの供給応答速度向上が出来る。
【0080】
各制御装置はローカルエリアネットワーク(LAN)あるいは遠隔操作のためにインターネットを介して装置全体を制御する制御用PC320に接続されている。制御用PC320にはマスク修正装置の装置状態を表示するためのステイタス表示ディスプレイ321と修正箇所を観察するためのディスプレイ321が複数備えられている。観察用ディスプレイ321では、プロセス中に発生する2次電子を利用して修正プロセス過程をその場で観察することが出来る。ノズル11とサンプルの位置関係を確認するための観察手段も備えられている。小型カメラモジュールを試料室10内に配置する、あるいは試料室10に設けた観察用窓を介して配置することで実現する。内視鏡に用いるファイバースコープも利用できる。画素数は500万画素以上が望ましい。可視光用のカメラだけでなく反応部の温度を測定するために赤外線カメラを用いることも出来る。
【0081】
フォトマスク(サンプル13)にはバイアス電圧を印加出来る。EUVマスクの場合マスクには静電チャック用導電膜がフォトマスク裏面に設けてあるため、その膜に電圧を印加することが出来る。マスク裏面に導電膜が無い場合は、マスクが搭載されるマスク支持機構の金属部分をバイアス電極の代わりとして利用することが出来る。必要によってはマスク表面にある金属膜に針状の電極を接触して電気導通を取っても良い。
【0082】
フォトマスクに印加されたバイアス電圧はサンプルから放出される2次電子の軌道や量を変化させるため電子ビーム励起プロセスに対して影響を及ぼすプロセスパラメータの1つを為す。バイアスはDCの場合もあればACあるいは高周波RFの場合もある。これらのバイアス電圧印加は電子ビーム制御あるいはガス制御に同期して行われる特徴がある。例えばプラスの電位をフォトマスクに印加すると2次電子はフォトマスクに作られたパターンの底に留まる。つまり、底の部分の電子励起反応が起こりやすくなる。一方、フォトマスクにマイナス電位を印加すると発生した2次電子は四方に飛び散るため、パターンの底以外の場所でも反応を引き起こす。両者の反応は場所が異なるため、プロセス終了時の形状に差が生じる。フォトマスクへの印加電圧によって反応箇所が変わる性質を用いて側壁形状の制御を行うことも出来る。
【0083】
次に、図3について説明する。
【0084】
図3は、既述したように、本発明のガス供給システムの制御ウィンドウ―例を示す。ここでは、図示の下記を表示する。
【0085】
・ガス種:図2のガス源311のガス種であって、Gas1からGas6を表示する。
【0086】
・元栓:図2の弁312の開閉状態であって、ON(開)、OFF(閉)を示す。
【0087】
・流量:ガスの流量を示す。
【0088】
・ノズル温度:図1のガス噴射ノズル11の温度を示す。
【0089】
・ボンベ温度:図22のガス源311であるボンベの温度を示す。
【0090】
・ガス配管温度:図2の配管の温度を示す(例えば55℃)。
【0091】
・切換弁:図2の切換弁318の開閉状態であって、ON(開)、OFF(閉)を示す。
【0092】
尚、図示の表示は、PC320から指示した指示値と、設定されている、あるいは測定した温度の現在値とを交互(あるいは色を変えて交互)に表示するモードや、いずれかの1つの状態を表示するモードがあるので、任意に切り替えて表示させ、確認できる。
【0093】
図4は、本発明の自動マスク修復システム構成図を示す。
【0094】
図4において、マスク修復装置41は、サンプル13であるフォトマスクの欠陥を修復する装置であって、図示のように、画像処理装置411,画像認識装置412,プロセス手順発生装置413等から構成されるものである。
【0095】
画像処理装置411は、デバイス設計データなどを参照し、必要な画像処理を行うものである。
【0096】
画像認識装置412は、画像を認識するものである。
【0097】
プロセス手順発生装置413は、プロセスの手順を発生するものである。
【0098】
プロセス手順ライブラリー42は、プロセスの手順を予め登録したものである。
【0099】
反応半径等電子ビーム情報データベース43は、修復対象材料あるいは反応ガスごとに、1次電子ビームの加速電圧に対応づけた反応半径などを予め実験で求めて登録したデータベースである。
【0100】
設計データサーバー44に保存されているデバイス設計データ441は、パターンの3D化などに必要なデータ(CADデータなど)を予め登録したものである。
【0101】
欠陥検査装置あるいはレビュー装置45は、修復対象のマスクの欠陥を予め検査などする装置である。本発明は、この欠陥情報によって特定された欠陥の修復を自動的に行うものである。尚、本発明に係る装置を、フォトマスクの欠陥検査装置としても使用した場合には、本発明のマスク修復装置、1台でフォトマスクの欠陥の検査をし、見つけた欠陥について修復を実行し、完全自動で全部、実行可能である。
【0102】
欠陥位置座標、欠陥画像等451は、欠陥検査装置あるいはレビュー装置45で見つかったフォトマスクのパターンの欠陥位置座標、欠陥画像等である。
【0103】
偽欠陥フィルター46は、欠陥検査装置あるいはレビュー装置45で見つかったパターンの欠陥位置座標、欠陥画像等について、偽の欠陥を除去し、真の欠陥に対する欠陥位置座標、修復範囲など452を出力するものである。
【0104】
修復完了基準データベース47は、修復を完了して基準となるデータを登録したものであって、本発明では後述する目標2次電子プロファイルなどである。
【0105】
次に、図4の構成について詳細に説明する。
【0106】
図4において、マスク修正は欠陥検査装置において欠陥と認識されたパターンを実際の露光を行った際に正常とされるパターンに修正することである。マスク修正のためには、フォトマスク全体の中から欠陥を探し出す必要があるため、欠陥検査装置あるいはレビュー装置45が出力する欠陥位置座標データを利用して行われる。また、正常状態のマスクパターン形状を知る必要があるため欠陥位置座標に対応する正規のパターン形状を保持しているデバイス設計データ(CADデータ)44も必要である。CADデータベースにはGDSIIあるいはoasis等のフォーマットで記述された修正対象デバイスの設計データが蓄積されている。これらのデータはOPCやILTなどの光学補正が行われているフォトマスクパターン描画時に利用されるデータである。
【0107】
欠陥検査装置の出力する検査結果は大量に偽情報が含まれるためそれを除去する偽欠陥フィルター46や真の欠陥であることを確認するためのレビューSEM観察を終えて確実に欠陥であると確定した欠陥についての座標のみを扱えるようにすることが望ましい。あるいはミクロンを超える大きなサイズのパーティクルなど欠陥原因が電子ビームマスク修正装置では修復できない欠陥を予め取り除いた座標データあるいは電子ビーム修正装置では修正できないような大きな欠陥は既に取り除かれたフォトマスクを使用することが望ましい。
【0108】
フォトマスク修正装置には欠陥位置データに対応した設計データを高速抽出するための仕組みが内蔵されている。1枚のフォトマスクを作製するために必要なCADデータのサイズは数テラバイトにも及ぶ。この大量のデータの中から修正に必要とされるデータだけを高速に抽出する必要がある。より具体的には欠陥検査装置が出力する欠陥位置座標データをキーとして、修正対象範囲(xnm,y nm)を指定し設計データを蓄積しているCADデータベースを参照し該当する範囲のCADデータを抽出しフォトマスク修正装置にデータ転送する仕組みである。
【0109】
欠陥検査装置の出力する座標とマスク修正装置の出力する座標には誤差が生じるのでそれを補正するために、修正に先立ち画像認識装置を利用して装置間位置補正を行う。さらにAI用いた画像認識を行うことで修正箇所をSEM像中心にセンタリングすることが出来る。センタリングされた修正箇所に対してCADデータベースから対応する設計データを引き出し、パターンマッチングを用いて両者をサブnmオーダーで1対1に位置合わせを行い両者比較可能な状態を維持する。この状態で修正プロセスを実行する。頻繁に使用する設計データに関してはキャッシング技術を用いてアクセスタイムを短くする工夫がされている。転送されたCADデータは後述するようにAIを利用した疑似SEM画像に変換されフォトマスク修正目標画像として使用される。パターンマッチングによる位置合わせはAIによる疑似SEM変換を行った画像に対して行うことが望ましい。
【0110】
図5は、本発明の2次電子プロファイルの説明図を示す。
【0111】
図5の(a)は凸のパターンの2次電子プロファイルを模式的に示し、図5の(b)は凹のパターンの2次電子プロファイルを模式的に示す。
【0112】
図5の(a)および(b)において、基板51は、フォトマスクなどの基板であって、パターン52を形成する基板である。
【0113】
パターン52は、基板51の上に形成したパターンであって、図5の(a)では上に凸のパターンを形成し、図5の(b)では上に凹のパターンを形成したものである。
【0114】
2次電子プロファイル53は、細く絞った1次電子ビームを図示の左から右方向(あるいは右から左方向)に線走査したときに放出された2次電子を検出・増幅した2次電子プロファイルを模式的にしたものである。横方向が1次電子ビーム照射位置を表し、縦方向はそのときに放出された2次電子ビームの強度を表したものである。
【0115】
図5の(a)の2次電子プロファイル53は、1次電子ビームを例えば左から右方向に線走査した場合の2次電子プロファイルの強度について、図示の(A)から(G)の順番に具体的に説明する。
【0116】
(A)は、1次電子ビームのスポットが基板51の上を照射するので、一定強度の2次電子プロファイル53となる。
【0117】
(B)は、スポットがパターン52の縁(エッジ)にかかって当該パターン52により2次電子放出が制限されるため、2次電子プロファイル53が小さくなり、図示のように、下向きの小さいピークの波形となる。
【0118】
(C)は、1次電子ビームのスポットがパターン52の傾斜した側壁の少し内側に照射し、更にスポットが全部、パターン52の傾斜部分に照射するので、斜め効果により2次電子放出が大きくなり、図示のように、2次電子プロファイルが上向きのピークの波形となる。更に、1次電子ビームのスポットが全部、パターン52の傾斜した側壁に照射すると、斜め効果により2次電子放出が最大となり飽和し、図示のように、2次電子プロファイルが最大で飽和して平らな波形となる。更に、スポットが基板51の上に照射すると、2次電子の放出が小さくなり、基板51の値と等しくなる。尚、パターン52の傾斜した側壁の幅が、1次電子ビームのスポットの幅(直径)と等しいあるいは小さくなると、当該2次電子プロファイルの最大で飽和して平らな波形の部分はなくなり、後述する図8などに示すように、単にピークを有する波形となる(通常、この状態が観察されることが多い)。
【0119】
(D)は、1次電子ビームのスポットが基板51の上に照射するので、基板51の一定強度の2次電子放出となり、図示のように、2次電子プロファイルは、平坦な波形となる。
【0120】
(E)、(F)は、(C)、(B)の2次電子プロファイルと同じである。
【0121】
(G)は、(A)あるいは(D)の2次電子プロファイルと同じである。
【0122】
また、同様に、図5の(b)についても、(A)から(G)は、(A’)から(G’)にそれぞれ対応する。
【0123】
尚、2次電子プロファイルは、1回の線走査でなく、必要な精度が得られる複数回(10ないし100回)の測定を行い、その測定値の平均値を求めるのが望ましい。
【0124】
次に、図5について、具体的に詳細に説明する。
【0125】
(1)2次電子プロファイルについて:この図5は、フォトマスクパターン断面に対応する2次電子プロファイルを表している。2次電子プロファイルは電子照射に伴って発生する2次電子の放出強度(縦軸)と電子ビーム照射位置(横軸)の関係を表した図形である。フォトマスク上に形成されるパターンは多種に及ぶがどのような形状のパターンでも垂直断面は凡そ台形形状をしている。台形のエッジ間距離はパターン幅に相当し、断面高さ(あるいは断面窪みの高さ)は実際の精密薄膜堆積プロセスで積まれた膜厚みに一致しサブnmオーダーで一定である。台形形状を特徴付ける側壁角度はエッチング条件などによりその都度決まる。つまり、パターン幅、台形の高さ(窪みの高さ)と側壁角度3つが特定できれば任意のパターンの断面形状は決定できる。3次元構造は垂直断面の集積で出来ている。連続した複数の断面が表現できれば3次元構造も表現できることは容易に推定できる。
【0126】
一方、電子ビームを上記フォトマスクパターン垂直断面の最表面に沿って走査すると、フォトマスク断面形状を反映した2次電子プロファイルが得られる。2次電子放出にはコサイン効果があるため、フォトマスクパターンのエッジに相当する場所では2次電子放出が激増してピークが生じる一方、平坦部では材料の2次電子放出効率に対応した低い一定高さに成る。以上のように2次電子プロファイルはフォトマスクの3次元構造を反映した情報を含んでいる。
【0127】
そこで、本発明では“同一の構造を有するフォトマスクパターンは同一の2次電子プロファイルを有す”という極めて単純な原理を用いてプロセスを制御する。言い直すと従来の方法とは全く逆にマスク修正結果の3次元詳細情報を知らなくても2次電子プロファイルが目的とする形状の2次電子プロファイルと同一になったかどうかを判定することで修正結果が所望の形状と一致したかどうかを判定できる全く新しい手法である。
【0128】
(2)目標2次電子プロファイルの作成について:
第1の方法は、実際のフォトマスクに形成されたパターンに1次電子ビームを実際に走査して得られる実際の2次電子プロファイルを測定し、データベースに保存し、利用する方法である。フォトマスクに形成されているパターンは高度に面内均一性が実現されている。極端なマイクロローディング効果を除けば、場所によるエッチング加工ばらつきは小さく、どこの場所でも同じような側壁角度でエッチングされている。つまり2次電子プロファイルを精度よく測定しやすい長い辺を持つ代表エッジの2次電子プロファイルを用いてフォトマスク上にあるすべてのパターンエッジの2次電子プロファイルを代表することが出来る。代表エッジから得られる2次電子プロファイルとそれぞれのパターンに特有なパターン幅を設計データから抽出して合成することでフォトマスク上にあるすべてのパターンに対して目標2次電子プロファイルを得ることが出来る。
【0129】
第2の方法は、上記の方法を精密化した方法である。フォトマスクは均一に作られているとは言ってもパターン形状ごとにエッジはわずかに変化する。このわずかに変化するエッジプロファイルを考慮する方法である。第1の方法では代表は1つであったが、第2の方法では形状ごとの代表エッジ集合体を定義して利用するところに特徴がある。フォトマスク上に作製された種々のパターンエッジとそのパターンエッジに対応する2次電子プロファイルを測定し、パターンエッジ形状と2次電子プロファイルを対にしてディープラーニングを用いた画像変換の1つであるGANの学習ファイルを作る。GANに任意のパターンエッジを入力するとGANにより近似計算が行われ、入力したパターンエッジ形状に対応する目標2次電子プロファイルを自動発生する。第2の方法を用いるとパターン形状が異なる場合に起こる僅かなエッジ構造の差を考量したより精密な目標2次電子プロファイルを生成出来る。
【0130】
第3の方法は第1原理から導く方法である。目的とする構造に対して材料や表面トポロジーを考慮した2次電子発生シミュレーションを行って2次電子プロファイルを生成する。これにより任意のパターン形状あるいはエッジに対する目標2次電子プロファイルを得ることが出来る。この方法は事前実験が不要なので2次電子放出効率が異なる複雑な材料を用いた場合の2次電子プロファイルを推定するのに利用価値がある。但し、実測値と計算値には常にオフセットや解離があるため、基礎データ収集やシミュレーション値の実測値との校正が最初に必要である。
【0131】
以上の3つの方法で得られた種々の材料や側壁角度に対する2次電子プロファイルをライブラリー化して必要に応じて使い分けて利用する。計算能力を高く保てる場合にはライブラリーを関数表現してリアルタイム計算して良い。
【0132】
図6は、本発明の目標2次電子プロファイルの生成説明図を示す。
【0133】
図6の(a)は、OPC付きCADデータで決まるパターン領域例(エッジ対の距離)の例を示す。ここで、パターン領域53は、OPC付きCADデータで決まるパターン領域であって、例えばフォトマスク上に形成するパターンの幅であり、既述した図5の(a)の(D)の部分の幅である。
【0134】
図6の(b)は、マスクの代表的な実測エッジプロファイルの例を示す。ここで、実測エッジプロファイル55は、図6の(a)の膜高さとプロセスとで決まるエッジ領域54について、1次電子ビームを線走査し、その時に放出された2次電子を検出・増幅して測定(実測)した2次電子プロファイルの例を模式的に表示したものである。この実測エッジプロファイル55を、本発明の目標2次電子プロファイルとして採用することにより、欠陥のあるパターン(例えば図6の(a)のエッジ領域に欠陥があるパターン)について、目標2次電子プロファイルと一致するように、エッジ領域をエッチングあるいはデポジションして修復することが可能となる。
【0135】
図7は、本発明の2次電子プロファイルを利用した修復説明図を示す。
【0136】
図7の(a)は修復前フォトマスクを模式的に示す。
【0137】
図7の(a-1)は修復前のフォトマスクパターンの例を示し、図7の(a-2)は修復前の2次電子プロファイルの例を示す。修復前では、パターンの右側に矩形の穴という欠陥があるため、2次電子プロファイルのピークの間の距離(パターンの幅)が狭くなっている。
【0138】
図7の(b)は修復後フォトマスクを模式的に示す。
【0139】
図7の(b-1)は修復後のフォトマスクパターンの例を示し、図7の(b-2)は目標2次電子プロファイルの例を示す。ここでは、図7の(b-2)の目標2次電子プロファイルは、図7の(a-1)の欠陥のあるパターンに対応する欠陥のないバターン(設計データ)に対応する、データベースから読みだした目標2次電子プロファイル(図6))である。この目標2次電子プロファイル(図7の(b-2)と、2次電子プロファイル(図7の(a-2))が一致するように図7の(a-1)フォトマスクパターン56の修復(必要あればエッチング、そして、デポジション)を行うことにより、図7の(b-1)の修復後のフォトマスク56を自動生成することが可能となる。
【0140】
次に、図7について詳細に説明する。
【0141】
(1)2次電子プロファイルはフォトマスクパターン構造を反映している。修復目標構造が有する2次電子プロファイルと修復対象が現在持つ2次電子プロファイルを比較して一致しているかどうかを確認することで修復完了を判定することが出来る。一致しているかどうかは、2次電子プロファイルを図形とみなして、修復前後の2次電子プロファイル図形の相関近似度を用いる方法や特定のピーク高さや幅に対する差あるいは比率を定義して差あるいは比率が基準以下の場合を一致していると判定する方法が利用できる。あるいはFFTなど空間周波数解析を行って特定の成分の差あるいは比率があらかじめ決められた範囲にあることで一致していると判定できる。フラクタル特性など前述の方法以外の数学的変換、幾何学的性質を用いてその成分を指標に用いて判定しても良い。
【0142】
(2)フォトマスク修復はデポジションとエッチングプロセスを単独あるいは組み合わせて行う。デポジションはフォトマスクパターンの一部分に欠損が生じた場合にその欠損部を埋めるために利用される。理想的にはフォトマスクの光学特性を完全再現するためにフォトマスク構成材料と全く同じ材料で同じ高さ、形状になるように修正されることが望ましい。エッチングはフォトマスクパターンの一部分に余分なパターンが生じた際にその余分なパターンを除去するために行われる。修正完了判定は目標とする2次電子プロファイルと現時点で修復対象構造が示す2次電子プロファイルを比較し一致度を測定することで実現できる。
【0143】
次に、図8を用いてエッチングによるエッジ加工例について説明する。この図8は、修復パターンと材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)の例であって、両者の部分の2次電子プロファイルが同じ例である。
【0144】
図8の(a)は、目標2次電子プロファイルの例を示す。これは、設計データ中の欠陥のある修復対象のパターンに対応づけて、予め作成して登録してある当該パターンの欠陥のない目標2次電子プロファイルである。
【0145】
図8の(b)は、2次電子プロファイルの例を示す。これは、図8の(c)のパターン断面形状に1次電子ビームを線走査して放出された2次電子を検出・増幅して得た2次電子プロファイルであって(横方向がパターンの位置、縦方向が2次電子の強度を表す)、図8の(c)の(A)修復前、(B)修復中1、(C)修復中2、(D)修復終了のパターンにそれぞれ対応するものである。
【0146】
[1]図8の(b)の(A)修復前に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)および(2)の部分の両者から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(2)の部分の右側との2か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0147】
[2]図8の(b)の(B)修復中1に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)の左側の部分と、(1)と約1/3がエッチング処理によりエッチングされた(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0148】
[3]図8の(b)の(C)修復中2に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)の左側の部分と、(1)と約2/3がエッチング処理によりエッチングされた(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0149】
[4]図8の(b)の(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)の左側の部分と、(2)の部分が全部エッチングされて除去されたので、(1)の右側の部分との2か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)の部分の右側との2か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0150】
従って、このエッチングの例では、図8の(b)の2次電子プロファイルが、(D)の修復終了の2次電子プロファイル(等しい図8の(a)目標2次電子プロファイル)に一致したときに、(2)の部分のエッチング処理を終了することにより、欠陥を修復することが可能となる。
【0151】
以上のようにエッチングプロセス進行に伴って2次電子プロファイルは特徴的な変化を示す。特徴は2次電子プロファイルに現れるピークの数、ピークの強さ、沈み込み量などに現れるためこの量の変化をモニターすることでエッチングプロセスの進行程度を把握することが出来る。上記例ではエッチング途中ではピーク数が3つとなりエッチングが終了するとピーク数が2つになる。エッチング進行とともにエッチングによって新たに形成されたエッジによるダウンピークも深くなる。このようにピークの数やダウンピークの深さを測定することでエッチング進行具合を把握できる。目標2次電子プロファイルと一致したことが確認されるとプロセスは終了する。
【0152】
図9は、本発明のエッチング深さと2次電子信号強度の関係説明図を示す。横軸はエッチング深さを表し、縦軸は2次電子信号の信号強度を表す。これは、例えば既述した図8のパターン62のうちの(2)の部分などをエッチングする場合に、エッチングする深さが深くなるに従い、検出できる2次電子信号の信号強度が徐序に低くなる様子を模式的に表したものである。これにより、例えば既述した図8の(B)修復中1,(C)修復中2の(2)の右端の側壁から検出される2次電子信号の強度が少し小さくなるので、予め実験で求めた図9の関係を用いて目標2次電子プロファイルの強度(高さ)を補正し、より正確な目標2次電子プロファイルを生成し、終了判定することが可能となる。
【0153】
次に、図10を用いてデポジションによるエッジ加工例について説明する。この図10は、修復パターンと材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)の例であって、両者の部分の2次電子プロファイルが同じ例である。
【0154】
図10の(a)は、目標2次電子プロファイルの例を示す。これは、設計データ中の欠陥のある修復対象のパターンに対応づけて、予め作成して登録してある当該パターンの欠陥のない目標2次電子プロファイルである。
【0155】
図10の(b)は、2次電子プロファイルの例を示す。これは、図10の(c)のパターン断面形状に1次電子ビームを線走査して放出された2次電子を検出・増幅して得た2次電子プロファイルであって(横方向がパターンの位置、縦方向が2次電子の強度を表す)、図10の(c)の(A)修復前、(B)修復中1、(C)修復中2、(D)修復終了のパターンにそれぞれ対応するものである。
【0156】
[1]図10の(b)の(A)修復前に対応する2次電子プロファイルは、パターン63の(1)の部分から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)の部分の右側との2か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0157】
[2]図10の(b)の(B)修復中1に対応する2次電子プロファイルは、パターン63の(1)の左側の部分と、(1)の右側と約1/3がデポジション処理により堆積された(2)の左側との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0158】
[3]図10の(b)の(C)修復中2に対応する2次電子プロファイルは、パターン63の(1)の左側の部分と、(1)の右側と約2/3がデポジション処理により堆積された(2)の左側との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0159】
[4]図10の(b)の(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルは、パターン63の(1)の左側の部分と、(2)の部分が全部デポジションされて修復されて平らになったので、(2)の右側の部分との2か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(2)の部分の右側との2か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0160】
従って、このデポジションの例では、図10の(b)の2次電子プロファイルが、(D)の修復終了の2次電子プロファイル(等しい図10の(a)目標2次電子プロファイル)に一致したときに、(2)の部分のデポジション処理を終了することにより、欠陥を修復することが可能となる。
【0161】
以上のようにデポジションプロセス進行に伴って2次電子プロファイルは特徴的な変化を示す。特徴は2次電子プロファイルに現れるピークの数、ピークの強さ、沈み込み量などに現れるためこの量の変化をモニターすることでエッチングプロセスの進行程度を把握することが出来る。デポジション進行とともに3つのピークが生じ、パターン右エッジのダウンピークが徐々に小さくなる。これらを信号として制御できる。
【0162】
図11は、本発明のエッチングによる側壁角度制御例を示す。この図11は、修復パターンと材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)の例であって、両者の部分の2次電子プロファイルが同じ例である。
【0163】
図11の(a)は、目標2次電子プロファイルの例を示す。これは、設計データ中の欠陥のある修復対象のパターンに対応づけて、予め作成して登録してある当該パターンの欠陥のない目標2次電子プロファイルである。
【0164】
図11の(b)は、2次電子プロファイルの例を示す。これは、図11の(c)のパターン断面形状に1次電子ビームを線走査して放出された2次電子を検出・増幅して得た2次電子プロファイルであって(横方向がパターンの位置、縦方向が2次電子の強度を表す)、図11の(c)の(A)修復前、(B)修復中1、(C)修復中2、(D)修復終了のパターンにそれぞれ対応するものである。
【0165】
[1]図11の(b)の(A)修復前に対応する2次電子プロファイルは、パターン64の(1)の部分から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(2)の部分の右側との2か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0166】
[2]図11の(b)の(B)修復中1に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)の左側の部分と、(2)の約1/3がエッチング処理によりエッチングされた(2)の左側の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0167】
[3]図11の(b)の(C)修復中2に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)の左側の部分と、(2)の左側の部分と、(2)の右側の部分を約1/3だけ更にエッチング処理によりエッチングされた(3)の左側の部分と、(3)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)と(3)との境界部分と、(3)の右側の部分との4か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0168】
[4]図11の(b)の(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルは、パターン62の(1)の左側の部分と、(1)と(2)の境界の部分と、(2)と(3)の境界の部分と、(3)の右側の部分との4か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の左側の部分と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)と(3)の境界の部分と、(3)の右側の部分との4か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0169】
従って、このエッチングの例では、図11の(b)の2次電子プロファイルが、(D)の修復終了の2次電子プロファイル(等しい図11の(a)目標2次電子プロファイル)に一致したときに、エッチングを終了することにより、欠陥を修復することが可能となる。
【0170】
以上のように、プロセス途中では特徴的な2次電子プロファイルの変化を示すため、この変化を用いてプロセス管理できる。
【0171】
図12は、本発明のデポジションによる側壁角度制御例を示す。この図12は、修復パターンと材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)の例であって、両者の部分の2次電子プロファイルが同じ例である。
【0172】
図12の(a)は、目標2次電子プロファイルの例を示す。これは、設計データ中の欠陥のある修復対象のパターンに対応づけて、予め作成して登録してある当該パターンの目標2次電子プロファイルである。
【0173】
図12の(b)は、2次電子プロファイルの例を示す。これは、図12の(c)のパターン断面形状に1次電子ビームを線走査して放出された2次電子を検出・増幅して得た2次電子プロファイルであって(横方向がパターンの位置、縦方向が2次電子の強度を表す)、図12の(c)の(A)修復前、(B)修復中1、(C)修復中2、(D)修復終了のパターンにそれぞれ対応するものである。
【0174】
[1]図12の(b)の(A)修復前に対応する2次電子プロファイルは、パターン65の(1)の部分から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(2)の部分の右側との2か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0175】
[2]図12の(b)の(B)修復中1に対応する2次電子プロファイルは、パターン65の(1)の左側の部分と、(1)と(2)の約1/3がデポジション処理によりデポジションされた(2)の左側の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の部分の左側と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0176】
[3]図12の(b)の(C)修復中2に対応する2次電子プロファイルは、パターン65の(1)の左側の部分と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の左側の部分と、(1)と(2)の境界の部分と、(2)の右側の部分との3か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0177】
[4]図12の(b)の(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルは、パターン65の(1)の左側の部分と、(1)と(2)の境界の部分と、(2)と(3)の境界の部分と、(3)の右側の部分との4か所から放出され、材料が同じであって2次電子の放出割合が同じであるので、図示のように、(1)の左側の部分と、(1)と(2)との境界の部分と、(2)と(3)の境界の部分と、(3)の右側の部分との4か所でピークのある2次電子プロファイルが測定される。
【0178】
従って、このデポジションの例では、図12の(b)の2次電子プロファイルが、(D)の修復終了の2次電子プロファイル(等しい図12の(a)目標2次電子プロファイル)に一致したときに、デポジションを終了することにより、欠陥を修復することが可能となる。
【0179】
以上のように、プロセス途中では特徴的な2次電子プロファイルの変化を示すため、この変化を用いてプロセス管理できる。
【0180】
図13は、本発明のエッチングによるエッジ加工例を示す。図13は、修復パターンと材料が異なる場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が異なる場合)の例であり、図8の材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)に対応するものである。ここでは、パターン62’の(1)の部分の2次電子放出効率が高く、(2)の部分の2次電子放出効率が低いとした。その他は図8と同じあるいはほぼ同じであるので、説明を省略する。以下説明する。
【0181】
[1] 図13の(b)の(A)修復前のパターン62に対応する2次電子プロファイルの(11)の部分は、パターン62’の(1)の2次電子放出効率が高い部分に対応して(11)のように高くなる。一方、パターン62’の(2)の2次電子放出効率が低い部分に対応して(12)のように低くなる。
【0182】
従って、図示のように、(1)の左側の部分にピークと、(1)と(2)の境界の部分に図示の段差と、(2)の右側の部分にピークとの合計、2つのピークおよび1つの段差かなる2次電子プロファイルが測定されることとなる(図8は2つのピークのみ)。
【0183】
[2] 以下同様に、図13の(b)の(B)修復中1、(C)修復中2、(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルが測定されることとなる(図8参照)。
【0184】
[3] 最終的には、測定した2次電子プロファイルが、(D)修復終了に対応する2次電子プロファイル(図13の(a)の目標2次電子プロファイルと等しい)と一致したときにエッチング処理を終了することにより、修復を行うことが可能となる。
【0185】
図14は、本発明のデポジションによるエッジ加工例を示す。図14は、修復パターンと材料が異なる場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が異なる場合)の例であり、図10の材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)に対応するものである。ここでは、パターン63’の(1)の部分の2次電子放出効率が高く、(2)の部分の2次電子放出効率が低いとした。その他は図10と同じあるいはほぼ同じであるので、説明を省略する。以下説明する。
【0186】
[1] 図14の(b)の(A)修復前のパターン63に対応する2次電子プロファイルの(13)の部分は、パターン63’の(1)の2次電子放出効率が高い部分に対応して(13)のように高くなる。一方、パターン63’の(2)の2次電子放出効率が低い部分に対応して(14)のように低くなる。
【0187】
従って、図示の(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルのように、(1)の左側の部分にピークと、(1)と(2)の境界の部分に図示の段差と、(2)の右側の部分にピークとの合計、2つのピークおよび1つの段差かなる2次電子プロファイルが測定されることとなる(図10の(D)修復処理に対応する2次電子プロファイルは2つのピークのみ)。
【0188】
[2] 以下同様に、図13の(b)の(A)修復前、(B)修復中1、(C)修復中2に対応する2次電子プロファイルが測定されることとなる(図10の説明を参照)。
【0189】
[3] 最終的には、測定した2次電子プロファイルが、(D)修復終了に対応する2次電子プロファイル(図14の(a)の目標2次電子プロファイルと等しい)と一致したときにデポジション処理を終了することにより、修復を行うことが可能となる。
【0190】
図15は、本発明のエッチングによる側壁角度制御例を示す。図15は、修復パターンと材料が異なる場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が異なる場合)の例であり、図11の材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)に対応するものである。ここでは、パターン64’の(1)の部分の2次電子放出効率が高く、(2)の部分の2次電子放出効率が低いとした。その他は図11と同じあるいはほぼ同じであるので、説明を省略する。以下説明する。
【0191】
[1] 図15の(b)の(A)修復前のパターン64’に対応する2次電子プロファイルの(11)の部分は、パターン64’の(1)の2次電子放出効率が高い部分に対応して(11)のように高くなる。一方、パターン64’の(2)の2次電子放出効率が低い部分に対応して(12)のように低くなる。
【0192】
従って、図示のように、(1)の左側の部分にピークと、(1)と(2)の境界の部分に図示の段差と、(2)の右側の部分にピークとの合計、2つのピークおよび1つの段差かなる2次電子プロファイルが測定されることとなる(図11は2つのピークのみ)。
【0193】
[2] 以下同様に、図15の(b)の(B)修復中1、(C)修復中2、(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルが測定されることとなる(図11の説明を参照)。
【0194】
[3] 最終的には、測定した2次電子プロファイルが、(D)修復終了に対応する2次電子プロファイル(図15の(a)の目標2次電子プロファイルと等しい)と一致したときにエッチング処理を終了することにより、任意角度の側壁に修復を行うことが可能となる。
【0195】
図16は、本発明のデポジションによる側壁角度制御例を示す。図16は、修復パターンと材料が異なる場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が異なる場合)の例であり、図12の材料が同じ場合(パターンの修復しない部分と、修復する部分との材料が同じ場合)に対応するものである。ここでは、パターン65’の(1)の部分の2次電子放出効率が高く、(2)、(3)の部分の2次電子放出効率が低いとした。その他は図12と同じあるいはほぼ同じであるので、説明を省略する。以下説明する。
【0196】
[1] 図16の(b)の(A)修復前のパターン65’に対応する2次電子プロファイルの(1)の部分は、パターン65’の(1)の2次電子放出効率が高い部分に対応して高くなる。一方、パターン65’のデポジションした(2)、(3)の2次電子放出効率が低い部分に対応して低くなる。
【0197】
従って、図示の(D)修復終了に対応する2次電子プロファイルのように、(1)の左側の部分にピークと、(1)と(2)の境界の部分のピークと、(2)と(3)の境界の部分のピークと、(3)の右側の部分のピークとの、合計4つのピークからなる2次電子プロファイルが測定されることとなる(但し、(2)、(3)の平坦部分の2次電子放出効率が低いので、この平坦部分が低くなる)。
【0198】
[2] 以下同様に、図16の(b)の(A)修復前、(B)修復中1、(C)修復中2に対応する2次電子プロファイルが測定されることとなる(図12の説明を参照)。
【0199】
[3] 最終的には、測定した2次電子プロファイルが、(D)修復終了に対応する2次電子プロファイル(図16の(a)の目標2次電子プロファイルと等しい)と一致したときにデポジション処理を終了することにより、任意角度の側壁に修復を行うことが可能となる。
【0200】
図17は、本発明の自動化シーケンス例を示す。
【0201】
図17において、S1は、欠陥検査装置で欠陥検査を行う。これは、フォトマスク上の形成されたパターンについて、設計データ(CADデータ)にもとづいて、所望の形状のパターンに形成されているか検査し、欠陥のパターンの位置座標、欠陥部分の画像などを取得して保存する。
【0202】
S2は、欠陥座標を取得する。これは、S1の欠陥検査装置で欠陥検査して保存した欠陥座標(欠陥のあるパターンの座標(例えば中心座標))を取得する。
【0203】
S3は、欠陥場所を特定する。これは、S2で取得した欠陥座標をもとに、CADデータを参照して欠陥のある場所(パターン)を特定する。
【0204】
S4は、修復対象の2次電子プロファイルを測定する。これは、S3で特定した場所のパターン(フォトマスク上の修復対象のパターン)の2次電子プロファイルを測定する。この修復対象の2次電子プロファイルは、特定された修復対象のパターンについて、1次電子ビームを線走査し、そのときに放出された2次電子を検出・増幅して2次電子プロファイルを測定する。
【0205】
S5は、CADデータを抽出する。これは、S2で取得した欠陥座標をもとに、データベースから当該欠陥座標に対応するCADデータ(3次元構造のパターンの情報)を抽出する。
【0206】
S6は、目標2次電子プロファイルを算出する。これは、S5で抽出した欠陥座標に対応する欠陥のあるパターン(修復対象のパターン)のCADデータをもとに、当該CADデータで特定される欠陥のないパターンに対応する2次電子プロファイル(目標2次電子プロファイルという)を自動生成あるいは予め登録したあるものを読み出す。
【0207】
以上のS1からS6によって、欠陥のないパターンの目標2次電子プロファイル、および欠陥のある部分のパターンの実際の2次電子プロファイルが取得できたこととなる。
【0208】
S7は、修復部を特定する。これは、S1からS6で特定された欠陥場所などをもとに、修復する修復部を特定する。
【0209】
S8は、修復部をクリーニングする。これは、S7で特定された修復部をクリーニングし、綺麗にする。
【0210】
S9は、修復部をデポジションあるいはエッチングする。これは、S7,S8で特定、クリーニングした修復部について、欠落があるときはデポジションし、余分の部分があるときはエッチングすることを、S10からS13の処理が満たされるまで繰り返す。
【0211】
S10は、2次電子プロファイルを測定し、ピークが3つの間は進行する。
【0212】
S11は、目標2次電子プロファイルと一致か判別する。YESの場合には、修復が完了したので、終了する。NOで、少ない場合(エッチングあるいはデポジションが少ない場合)には、S9を繰り返す。また、NOで、過剰の場合(エッチングあるいはデポジションが過剰の場合)には、S12に進む。
【0213】
S12は、エッチングバックあるいはデポジションバックを行う。これは、S11で、NOで、過剰と判明、即ち、修復部へのエッチングあるいはデポジションが過剰であると判明したので、エッチングバックあるいはデポジションバックを行う。エッチングバックあるいはデポジションバックは、エッチングが過剰の場合にはデポジションを行い、デポジションが過剰の場合にはエッチングを行い、元の方向に戻す処理を行う。具体的には、エッチング用のガスあるいはデポジション用のガスをノズルから修復部に吹き付け、かつ1次電子ビームで修復部のみを平面走査し、当該部分のみガスに応じたエッチングあるいはデポジションを行う。
【0214】
S13は、目標2次電子プロファイルと一致か判別する。これは、S12で、エッチングバックあるいはデポジションバックした後の2次電子プロファイルが、目標2次電子プロファイルと一致し、欠陥が修復されたか判別する。YESの場合には、修復部について測定した2次電子プロファイルが、目標2次電子プロファイルと一致し、修復処理が完了したと判明したので、終了する。NOの場合には、S9以降を繰り返す。
【0215】
以上によって、修復部について、2次電子プロファイルを測定、およびガスを吹き付けてエッチングあるいはデポジションを行うことを繰り返し、目標2次電子プロファイルと一致したときに修復終了することにより、欠陥場所(欠陥パターン)を完全自動で修復(エッチングあるいはデポジション)を行うことが可能となる。この際、エッチング過剰あるいはデポジション過剰の場合にはエッチングバックあるいはデポジションバックし、2次電子プロファイルが目標2次電子プロファイルと一致するまで、修復を行う。
【0216】
次に、図17について、詳細に説明する。
【0217】
図17は2次電子プロファイルを用いて完全自動で欠損した部分を補い、あるいは余分な部分を削除し、フォトマスク修復を行う手順を示している。
【0218】
先ず、欠陥検査装置から欠陥が生じている座標情報を受け取る(S1,S2)。欠陥検査装置からの出力には本当の欠陥に対応する座標情報のほかに何十万個という大量の偽情報が含まれているため、その情報をもとにフォトマスク修正を行うと無限に時間が掛かり実用価値は0になる。それを避けて修復効率を向上するために偽情報を除去するためのソフトウエアーを利用し、レビューSEMで一旦欠陥を確認して修正が必須であることを確定した後に修正プロセスを行うことが望ましい。
【0219】
以上のように修正必須と認定された欠陥に対するフォトマスク上の座標を受け取る(S2)。その欠陥場所(S3)に対応するCADデータ(設計情報)を設計データベースから抽出する(S5)。ここで用いるCADデータはOPC やILTなどの光学補正を行ったフォトマスクに描画されるときに利用されるデータを用いる。欠陥座標を用いてマスク修正装置に搬送されたフォトマスクの該当点に当たる場所の2次電子プロファイル(SEM像)を取得する(S4)。同時に前述のCADデータおよびプロセスデータあるいは実測のエッジに対する2次電子プロファイル情報を利用して目標2次電子プロファイルを算出する(S6)。次に修復部を特定(S7)してXYステージを用いて修正対象パターンを電子ビームコラムの真下に位置するように移動し、プロセス実行に当たって前処理であるクリーニングを行う(S8)。修復対象のフォトマスクは炭素化合物をはじめ大気に存在する種々の物質が表面に付着していると想定される。そのままプロセスを行うと、フォトマスク材料とデポジション材料が密着せず剥がれなど不具合が起こる可能性が高いため修復に先立って表面を酸素や二フッ化キセノンでクリーニングして付着物を除去する。
【0220】
次に欠陥部分を補うためのデポジションを行う,あるいは余分な部分を削除するためのエッチングを行う(S9)。単位量デポジション(あるいはエッチング)を行った後、SEM像を取得して2次電子プロファイルを確認し、プロセスの進行程度をモニターする。モニターの結果、目標2次電子プロファイルと修復されたパターンの2次電子プロファイルを比較した結果一致すれば修復プロセスを終了する(S11のYES)。目標に達していなければ(S11のNO(少ない)場合)、追加デポジションあるいは追加エッチングを行う(S9)。一方、過剰の場合(S11のNO(過剰)の場合)には、エッチングバックあるいはデポジションバックを行う(S12)。エッチングバックあるいはデポジションバックは、エッチングが過剰のときにデポジションを行いあるいはデポジションが過剰のときにエッチングを行い、修復することである。そして、目標2次電子プロファイルと一致すれば(S13のYES)、修復完了として終了する。
【0221】
図18は、本発明のSEM観察のシーケンス例を示す。
【0222】
図18において、S21は、反応ガスを停止する。これは、ガスをフォトマスクの修復対象のパターンの部分への反応ガス(エッチング用、デポジション用のガス)の噴射を停止する。
【0223】
S22は、吸着ガスのパージ用のガスを噴射する。これは、S21で反応ガスの噴射を停止しただけでなく、当該反応ガスを吸着するパージ用のガス(窒素、水蒸気、アンモニアガス等)を噴射し、超高速に反応ガスを無力化する。
【0224】
S23は、SEM観察する。これは、S22でパージ用のガスを修復対象のパターンの部分に噴射して残る反応ガスを無力化した後、1次電子ビームを走査して放出された2次電子を検出・増幅し、2次電子プロファイル、更に平面走査してSEM画像を表示し、観察する。
【0225】
以上によって、フォトマスクの修復時には反応ガスを噴射しつつ1次電子ビームを走査し、エッチングあるいはデポジションを行い、一方、SEM像の観察時には、反応ガスの噴射を停止すると共にパージ用のガスを噴射して超高速に中和することにより、チャージのない高分解能のSEM画像、2次電子プロファイルを取得して表示することが可能となると共に、SEM画像を取得した領域について反応ガスとの作用によるエッチングあるいはデポジションを防止できる。。
【0226】
以下図18について、詳細に説明する。
【0227】
図18において、プロセス進行をモニターするために2次電子プロファイル取得を目的としてSEM観察を行うことがある。プロセス進行中にも電子ビーム照射により2次電子が発生するのでそれをリアルタイムで利用することでプロセス進行中のSEM画像取得をすることが出来る。しかしながら、プロセス最中に得られる2次電子プロファイルにはプロセス制御に必要なエッジ領域の情報が含まれていない。プロセス制御のためはプロセスを行っている領域よりも広い領域に電子ビームを照射してエッジを含む2次電子プロファイルを取得する必要がある。つまりプロセス制御用に別途SSEM観察する必要がある。
【0228】
SEM観察は反応ガスが何もない超真空状態であれば、フォトマスクに対して変形を催すような作用は無い。しかしながら、反応ガスが存在するときにSEM観察を行うとSEM観察された領域に吸着した反応ガスが電子ビームと反応してしまい観察前の状態から変化する。SEM観察した場所に不要な跡を残すことに成る。
【0229】
この不具合を避けるために、本発明では図18に示したようなシーケンスを用いてSEM観察による反応が起こらない状況を作り出してSEM観察を行う。SEM観察の指令が出ると最初に反応ガスを停止する(S21)。このガス停止は電子ビームコラム近傍に設けた高速弁に指令を送ることで実現する。次に反応を完全に停止させるためにフォトマスク表面に吸着しているガスを除去するためのパージガス(窒素、アルゴン、水蒸気等)をフォトマスク表面に噴射する(S22)。パージが完了した後にSEM観察を行う(S23)。
【0230】
以上のようにすることでプロセスに悪影響を与えることなくプロセスをモニターすることが出来る。
【0231】
図19は、本発明のドリフト補正のシーケンス例を示す。これは、修復対象のパターンの修復する部分が何らかの原因でドリフトした時に当該ドリフトを補正する手順を示したものである。
【0232】
図19において、S31は、反応ガスを停止する。エッチングあるいはデポジション用の反応ガスを停止し、修復部分に当該反応ガスが噴射されないようにする。
【0233】
S32は、吸着ガスのパージ用のガス噴射をする。これは、S31で反応ガスを停止した後、当該吸着している反応のパージ用のガスを噴射し,無力化する。
【0234】
S33は、SEM観察する。これは、S31で反応ガスの停止,S32でパージのガス噴射した後、1次電子ビームを照射しつつ走査し、放出された2次電子を検出・増幅してSEM画像を取得し、観察する。
【0235】
S34は、パターンマッチングする。
【0236】
S35は、重心位置を計算する。これらS34,S35は、S33で取得して観察したSEM画像中の修復対象の部分と、修復対象でない部分(特定部分)とについて、パターンマッチングを行って特定し、それぞれの重心位置を計算する。
【0237】
S36は、電子ビーム偏向補正を行う。これは、S35でそれぞれの重心位置をもとに、修復対象の部分が何らかの原因によりドリフトしているので、このドリフトを補正するように、修復対象の部分に対する補正を行う(図20参照)。
【0238】
以上によって、何らかの原因により、修復対象の部分が、修復中にドリフトした場合には、自動的に、SEM画像を取得してその修復対象の部分の、周囲からのドリフトを検出し(重心位置の移動量)、これを補正するように修復対象の領域を1次電子ビームで平面走査するように電子ビーム偏向補正(S36)を行うことにより、常に所定の修復対象の領域をエッチングあるいはデポジションすることが可能となる。
【0239】
次に、図19について詳細に説明する。
【0240】
図19において、プロセスを受けないパターンとプロセスを受けるパターンの2つの領域がある。ここで補正したいのはプロセスを行っている最中にプロセスを受けないパターンを基準としたときに起こるドリフトを補正することである。SEM観察を何度か行うと画像位置が種々のドリフト原因により移動することがある。観察している位置が移動するということはプロセスされている位置も移動することを示している。プロセス最中にプロセス対象構造が移動すると特に急峻なエッジを修復する際にエッジが傾斜してしまうなど不具合が起こる。まず、反応ガスを停止する(S31)。次にフォトマスク表面に吸着した反応ガスを除去するためにパージガスを噴射する(S32)。次にSEM観察を行う(S33)。観察によって得られた画像とプロセス初期に撮影したSEM画像をパターンマッチングする(S34)。パターンマッチングを行うと相関分析が行われ、2つのSEM画像の重心位置変位を求めることが出来る(S35)。重心変位量を電子ビーム偏向系にフィードバックすることでドリフトが補正できる(S36)。
【0241】
図20は、本発明のドリフト例を示す。
【0242】
図20の(a)は位置シフト量を用いたドリフト補正の例を示す。ここでは、SEM画像中の(2)のプロセスを受けるパターンが右方向にドリフトする例を示す。
【0243】
この場合には、(2)の右方向にドリフトする量を求め、プロセスを行う場合の電子ビーム偏向補正を行うことにより、補正する。
【0244】
図20の(b)は形状歪を利用したリアルタイムドリフト補正の例を示す。ここでは、SEM走査範囲は、プロセス中にリアルタイムに右方向に図示のようにドリフトさせることにより(電子ビーム偏向により)、補正する。
【0245】
以下詳細に説明する。
【0246】
図20の(a)は、ドリフト前と後のSEM画像を示している。大きな矩形がFOVを表し、その中にプロセスを受けるパターン領域(2)とプロセスを受けないパターン領域(1)が含まれている。補正ドリフト量はプロセスを受けないパターン領域(1)の中心座標(X0,Y0)を基準として測定したプロセスを受けるパターン領域(2)の中心座標(X1,Y1)とプロセス実施によってドリフトを受け移動したパターンの中心座標(X2,Y2)の差となる。パターン移動量測定はパターンマッチングを行うことで実現される。それぞれのパターンをパターンマッチングして重心位置を測定し、お互いの相対値を算出する。X,Y方向に成分を分離したのち、ドリフトが0に成るように電子ビーム偏向装置にオフセット信号として入力する。このオフセット信号を加味して電子ビーム走査を行うことにより、ドリフトを補正することが出来る。オフセット処理は電子ビーム偏向信号にフィードバックしても良いし、走査座標値をドリフト分変更しても良い。ドリフト補正の実施はタイマーを用いて定期的に行っても良いし、ずれ量が規定値を超えたところで自動的に行っても良い。もちろん手動操作で行うことも出来る。
【0247】
図20の(b)は、別のドリフト補正法を示している。プロセス中にドリフトが起こるとプロセス結果に歪が生じる。その図形歪を2次電子画像として検出することでドリフトを補正できる。ここで、プロセス進行中に得られるプロセス領域よりも少し広い矩形で表した領域を撮像した2次電子画像を表している。図20の(b)の左は目的とする矩形を表しており、右はプロセス中に右方向に等速度でドリフトを起こした場合を示している。図から明らかなようにドリフトが起こるとプロセス結果に歪が生じ、本来矩形が得られるところ、平行四辺形が得られる。この歪図形を解析することでドリフト量を知ることが出来る。ドリフト量測定には基準点が必要となる。プロセス開始点はドリフトの影響が無いので歪測定の基準点として利用できる。プロセス開始点座標x1、y1に対する残り3つの頂点座標の差がドリフト量になる。x成分y成分に分けて算出されたドリフト量を電子ビーム偏向系にそれぞれフィードバックすることでドリフトを補正できる。図で示した方法と比較して小さなSEM画像で実施可能。基準となるパターンが周辺部に無くてもドリフト補正が可能となる。
【0248】
図21は、本発明のガス噴射のシーケンス例を示す。これは、ノズル内部でガスが固化しないように対策したものである。
【0249】
図21において、S41は、ダミーガス噴射、ノズル加熱する。これは、ダミーガスを噴射し、かつノズルをガスの固化しない所定温度に加熱する。
【0250】
S42は、ノズル温度を測定する。これは、反応ガスを噴射するノズルの温度を測定する。
【0251】
S43は、規定温度以上か判別する。YESの場合には、S44に進む。NOの場合には、S41以降を繰り返す。
【0252】
以上のS41からS43のYESにより、ガスを噴射するノズル(およびガスを供給する配管、バルブなど)の温度が固化しない規定温度以上に加熱されたことを確認できたこととなるので、S44に進む。
【0253】
S44は、反応ガスを噴射する。これは、ノズルから修復対象のパターンの部分に、反応ガス(エッチング用、デポジション用のガス)を噴射し、かつ1次電子ビームを照射しつつ平面走査し、当該平面走査した領域の反応ガスにより修復対象のパターンの部分をエッチングあるいはデポジションすることにより、修復することが可能となる。
【0254】
以上によって、反応ガスがノズルなどに固化して付着することを防止し、安定的に反応ガスを修復対象のパターンの部分に噴射して修復することが可能となる。
【0255】
次に、図21について、詳細に説明する。
【0256】
図21において、電子ビーム励起反応で使用するガスは常温で固体である材料が多い。つまり、温度が下がると固化する性質を持っている。試料室10内にはガス照射用のガス噴射ノズル11が存在する。ガス噴射ノズル11がガスの昇華温度よりも下がった状態で反応ガスを流してしまうとノズル内でガスが固化しノズルが詰まる事故が起こる。本実施例ではガスのノズル内固化をインターロックにより防止する方法を開示している。
【0257】
装置立ち上げ時に、ノズルの温度は室温付近にある。この状態で反応ガスを流せば確実に反応ガスはノズル内で固化する。そこで、反応ガスを流す前に窒素等のダミーガスを流す。ダミーガスは予め50度以上に加熱してあり、ノズルに流すことでノズルを温めることが出来る(S41)。ノズルには温度計が設けられておりノズルの温度を測定できる。ノズルの温度が規定温度に成るまでダミーガスを流し続ける。ノズルの温度が規定温度に達したら(S43のYES)、反応ガス注入許可信号を発生してインターロックを解除し反応ガスを制御するバルブ開閉を可能とする(S44)。PCからの指令により反応ガスのバルブの開閉を自由に制御可能となり必要に応じて反応ガスがノズルに供給されフォトマスク表面にガスが供給される。本実施例では予め加温されたガスを流すことで反応ガス固化を防止したが、ダミーガスだけでノズルを加温するには時間が掛かるためノズル部分を加熱するためのセラミックヒーターを用いて加温しても良い。ノズルの熱が対物レンズやステージなどに伝わらないように周辺に断熱機構を入れておくことが望ましい。
【0258】
図22は、本発明の側壁角度ライブラリー例を示す。側壁は、フォトマスク上に形成された例えば上に凸あるいは上に凹(窪み)のパターンの側壁であって、当該側壁は図示のように、所定角度で形成することが要求されている。ここでは、図示の下記角度の情報がライブラリーとして登録されており、この情報をもとに任意角度の側壁を自動形成できる(例えば既述した図11図12図15図16参照)。
【0259】
側壁角度
・90度
・89度
・70度
・45度
次に、図22について、詳細に説明する。
【0260】
図22に示したようにマスク修正プロセスにおいて変化があるのは側壁角度制御部分だけである。電子ビームを照射する位置のシフト量や電子ビーム照射回数を指定することで任意の側壁角度を実現できる。従って所望の角度を持つ側壁を作るための標準シーケンスを必要とする側壁角度および材料に合わせて予め作っておけば任意の平坦部のパターンと組み合わせることで任意のパターンに対応することが出来る。ユーザーは予め何度の角度で側壁を作るのかをディスプレイ上の指定ボタンで指定しておけば自動的にライブラリーから側壁角度形成プロセスが設定されて所望の側壁角度を持つ任意の修復パターンが得られる。
【0261】
電子ビーム走査シーケンスは任意形状およびプロセス安定化を考慮する必要があるので、ラスタースキャンを基本とし、2値化した目標修復図形を電子ビームオンオフ信号として利用することで実現する。例えば、矩形のXY方向右端から1ピクセルステップで右に走査し、矩形の端に至ったら、Y方向に1ピクセル下に降りて再び右端から1ピクセルステップで右に走査を繰り返し、最後まで至ったら再び元の位置に戻ってN回繰り返す等のことが記述されている。電子ビームオフが続くピクセルがある場合は修正時間短縮のために次のビームオンピクセルまで飛ばすなどの処理を行う。
【0262】
以上のライブラリーを用いることで任意形状のプロセス修復の容易化が出来る。
【0263】
図23は、本発明の加工例を示す。
【0264】
図23の(a)は反応径よりも小さいドット抜けの加工例を示す。
【0265】
図23の(a-1)は、ピンホールの例を示す。図示の白丸がピンホールであって、修復対象(欠陥)である。
【0266】
図23の(a-2)は、周辺部を除去した状態を示す。これは、欠陥のピンホールを含む周辺部を除去した状態である。除去は、エッチング処理により行う。
【0267】
図23の(a-3)は、デポジションした状態を示す。これは、図23の(a-2)の除去した矩形の部分に、デポジションにより同じ材料を堆積する様子を示す。
【0268】
図23の(a-4)は、修復完了の状態を示す。これは、図23の(a-3)デポジションを行い、2次電子プロファイル(デポジションした状態の2次電子プロファイル)が目標2次電子プロファイル(ライブラリーから取得した修復完了時の目標2次電子プロファイル)と一致したので、修復を終了したものである。
【0269】
図23の(b)は、ビームサイズよりも小さいピンの加工例を示す。
【0270】
図23の(b-1)は、ピンドットの例を模式的に示す。
【0271】
図23の(b-2)は、エッチング修復完了の状態を示す。これは、ビームサイズよりも小さいピンを、エッチング処理によりエッチングして除去した後の状態を示す。エッチング除去の終了判定は、エッチング中の2次電子プロファイルが、ライブラリーから取得した目標2次電子プロファイルと一致したときに終了と判定する。
【0272】
次に、図23について、詳細に説明する。
【0273】
(1)図23の(a)は、修復部を平坦に修復する方法を開示している。修復対象のピンホールはビーム径よりも小さいので、穴の部分だけに電子ビームを照射してデポジションを行うことが出来ない。本実施例ではデポジションに先立ち予めピンホールの周辺パターン部をエッチングして除去し電子ビーム径よりも十分広い矩形の空間を作る。電子ビームが矩形空間の内側に入るようになったので、電子ビームの反応範囲が作製した空間の境界に接するように電子ビーム走査位置を決めて、矩形の辺に沿うように電子ビームを走査してデポジションを行う。電子ビーム走査軌跡が重ならないように少しずつデポジション位置を縦方向にずらしながら第1層を形成する。1層ずつデポジションを積み重ねていき元のパターンの高さと同じになるまで埋めていく。このように修復することで、周辺部との接続も強固かつ、盛り上がりの無い修復が出来上がる。
【0274】
(2)図23の(b)は、反応径よりもピンドットは小さいのでピンドットだけを狙ってエッチングすることが出来ない。エッチング対象材料と下地材料のエッチング選択比が大きくなるように電子ビーム励起エッチングのガスを選択するとピンドットだけ除去できる。例えば、タンタル化合物などをエッチング除去する場合は二フッ化キセノンを用いれば、下地との選択比を10以上に取れるため、反応径が大きな電子ビームを除去したいピン構造に直接照射することでピン構造だけを除去できる。下地とパターンのエッチング選択比が大きくとれない場合にはピン構造を含む周辺領域を一度エッチングして除去した後に下地材料をデポジションして埋め戻し平坦にする。
【0275】
図24は、本発明の電子ビームによるデポジション説明図を示す。電子ビームを重複走査した場合、重複反応により表面に凹凸ができるので、これを解消する方法を説明する。
【0276】
図24の(a)は、ALDを適用しない場合を示す。これは、図24の(b)で後述するALDを適用しない場合の例を示す。
【0277】
図24の(a-1)、(a-2)、(a-3)に示す例は、理想的な重複が無い矩形電子ビームで横方向に走査した場合には、パターンの断面が平坦である様子を模式的に示す。
【0278】
図24の(a-4)、(a-5)、(a-6)に示す例は、重複がある矩形電子ビームで横方向に走査した場合には、パターンの断面に凹凸がある様子を模式的に示す。
【0279】
以上説明したように、ALDの適用のない、通常の電子ビーム走査によるデポジションでは、右側に示すように、凹凸が発生してしまう。
【0280】
図24の(b)は、ALDを適用した場合を示す。
【0281】
図24の(b-1)、(b-2)、(b-3)に示す例は、理想的な重複が無い矩形電子ビームで横方向に走査した場合には、パターンの断面が平坦である様子を模式的に示す。
【0282】
図24の(b-4)、(b-5)、(b-6)に示す例は、重複がある矩形電子ビームで横方向に走査した場合には、パターンの断面が、ここでは、ALDにより平坦になる様子を模式的に示す(後述する)。
【0283】
以上説明したように、ALDを適用した電子ビーム走査によるデポジションでは、右側に示すように、平坦になる。
【0284】
以下詳細に説明する。
【0285】
(1)ALDは、原子層デポジションの略であって、1回の反応に供給するガスの量を1原子層程度しか進行しないように制限することで重複電子ビーム走査が生じても電子ビーム走査1回分のデポジションしか起こらないことを利用した技術である。
【0286】
(2)図24の(b)において、電子ビームALDではステップ1として堆積材料の前駆体ガスをフォトマスクに照射する。ステップ2でパージを行いフォトマスク表面に吸着されているプリカーソル以外の余分なガスを除去する。ステップ3でオプション的にプリカーソルを還元するための水素や水蒸気等をフォトマスクに照射する。ステップ4でデポジションしたい場所にだけ電子ビームを照射する。
【0287】
(3)電子ビームALDプロセスではフォトマスク表面には1原子層分の反応ガスしか存在しないため、電子ビームが重複して照射されても1回分以上に反応は進まない。つまり、電子ビーム走査に重なりがあっても、反応範囲が急峻で無くても平坦なデポジションが得られる。上記プロセスを必要回数繰り返すことで所望の修復膜厚みが実現出来る(図24の(b-4)、(b-5)、(b-6)参照)。
【0288】
図24の(c)は、スキャンシフトを適用した場合を示す。
【0289】
図24の(c-1)、(c-2)、(c-3)に示す例は、理想的な重複が無い矩形電子ビームで横方向に走査した場合には、パターンの断面が平坦である様子を模式的に示す。
【0290】
図24の(c-4)、(c-5)、(c-6)に示す例は、重複領域をビーム幅以下の距離で変化させながら矩形電子ビームを満遍なく走査した場合には、パターンの断面が平坦になる様子を模式的に示す。
【0291】
以上説明したように、重複領域をビーム幅以下の距離で変化させながら矩形電子ビームを満遍無く走査(スキャンシフト)することにより、パターン断面を平坦にすることができる。
【0292】
以下説明する。
【0293】
図24の(c)において、平坦な膜を得る方法としてはスキャンシフトを用いることも出来る。通常は、常に同じ開始位置から電子ビーム走査を始めていたため、同じ場所が繰り返し電子ビーム照射されるため膜形成に凸凹が生じたが、図24の(c)の本実施例ではデポジション対象領域の2次元電子ビーム走査を1層分終了するたびに、電子ビーム走査位置をy方向にわずかに変えながら走査を繰り返す。このようにすることで、満遍なく電子ビームが照射され、電子ビームデポジションの偏りがなくなりデポジション高さが平均化されより平坦なデポジションを得ることが出来る。
【0294】
図25は、本発明の出っ張り欠陥を任意形状に修復する説明図を示す。
【0295】
図25の(a)は、欠陥領域を標準形状に削除する場合の例を示す。
【0296】
図25の(a-1)は、初期状態を示す。ここでは、パターンの右側に図示の欠陥(1)がある。
【0297】
図25の(a-2)は、欠陥領域を標準形状に削除した状態を示す。ここでは、標準形状は、図示のような、矩形である。
【0298】
図25の(a-3)は、CADデータから修復形状を生成した状態を示す。図示の(2)が修復形状である。
【0299】
図25の(a-4)は、修復完了した状態を示す。これは、図25の(a-3)でCADデータから生成した修復形状(2)となるように、図25の(a-2)で形成した標準形状の部分にデポジションしたものである。
【0300】
以上のように、出っ張り欠陥について、当該欠陥の部分を含む標準形状に削除(エッチング)し、次に、CADデータから生成した修復形状(2)となるように、標準形状の部分にデポジションすることにより、修復することが可能となる。
【0301】
詳細に説明する。
【0302】
図25の(a)において、先ず、欠陥を取り囲む最小矩形を抽出する。最小矩形は欠陥部分の輪郭抽出を行い、その最大および最小座標から判明する。矩形は輪郭に接する必要は無く、数ピクセル余裕を持たせた大きさとする。次に、その領域にあるパターンに電子ビームを照射して電子ビームエッチングにより全て除去する(図25の(a-2))。パターンがタンタル化合物ベースの場合、エッチングガスとしては二フッ化キセノンを用いる。フッ化キセノンは下地に対してエッチング作用を持たないため、パターンのみがエッチング除去され矩形の更地が出来る。次に、欠陥に該当する位置に対応する設計データを抽出して修復対象パターンを生成する(図25の(a-3))。このパターンは設計データであるGDSIIやOASISフォーマットのファイルに記載してあるポリゴン情報から実際のSEMが発生する2次電子プロファイルの集積であるSEM画像の特徴を持つように画像変換を用いて変換する。画像変換としては機械学習を用いたGANなどを利用できる。GANではポリゴンとSEM画像の対を学習することで任意のポリゴンパターンを所望の側壁角に対応した二次電子プロファイル特徴を持つSEM画像に変換出来る。この時に前述したライブラリーから最適なものを自動選択して使用することも出来る。次にこの目標パターンを前工程で作製した更地領域に電子ビームデポジションを用いて構築する。
【0303】
以上の手続きにより欠陥を修復し所望の新たなパターンに修正することが出来る。
【0304】
図25の(b)は、欠陥領域を輪郭に沿って削除する場合の例を示す。
【0305】
図25の(b-1)は、初期状態を示す。ここでは、パターンの右側に図示の欠陥(1’)がある。
【0306】
図25の(b-2)は、欠陥領域を輪郭に沿って削除した状態を示す。ここでは、輪郭形状は、図示のような、輪郭形状である。
【0307】
図25の(b-3)は、CADデータから修復形状を生成した状態を示す。図示の(2’)が修復形状である。
【0308】
図25の(b-4)は、修復完了した状態を示す。これは、図25の(b-3)でCADデータから生成した修復形状(2’)となるように、図25の(b-2)で形成した輪郭形状の部分にデポジションしたものである。
【0309】
以上のように、出っ張り欠陥について、当該欠陥の輪郭に沿って削除(エッチング)し、次に、CADデータから生成した修復形状(2’)となるように、輪郭形状の部分にデポジションすることにより、修復することが可能となる。
【0310】
詳細に説明する。
【0311】
図25の(b)は、輪郭抽出を用いてエッチング削除される領域が最小になるように工夫した方法を示している。この例では削除したい図形の輪郭線を抽出しその形を外形とする図形のエッジおよび内部に電子ビーム走査を行い、エッチングを行う。任意図形の電子ビーム走査は目的とする図形を2値化して表現し、電子ビームオンオフを行うブランキング回路を駆動する信号として利用することで実現できる。不要な欠陥部を除去した後に設計データから得られる所望の図形を同様の方法で電子ビーム走査してデポジションすることで修復が実現する。
【0312】
図26は、本発明の引っ込み欠陥を任意形状に修復する説明図を示す。
【0313】
図26の(a)は、欠陥領域を標準形状に削除する場合の例を示す。
【0314】
図26の(a-1)は、初期状態を示す。ここでは、パターンの右側に図示の欠陥(3)がある。
【0315】
図26の(a-2)は、欠陥領域を標準形状に削除した状態を示す。ここでは、標準形状は、図示のような、矩形である。
【0316】
図26の(a-3)は、CADデータから修復形状を生成した状態を示す。図示の(4)が修復形状である。
【0317】
図26の(a-4)は、修復完了した状態を示す。これは、図26の(a-3)でCADデータから生成した修復形状(4)となるように、図26の(a-2)で形成した標準形状の部分にデポジションしたものである。
【0318】
以上のように、引っ込み欠陥について、当該欠陥の部分を含む標準形状に削除(エッチング)し、次に、CADデータから生成した修復形状(4)となるように、標準形状の部分にデポジションすることにより、修復することが可能となる。
【0319】
図26の(b)は、欠陥領域を輪郭に沿って削除する場合の例を示す。
【0320】
図26の(b-1)は、初期状態を示す。ここでは、パターンの右側に図示の欠陥(3’)がある。
【0321】
図26の(b-2)は、欠陥領域を輪郭に沿って削除した状態を示す。ここでは、輪郭形状は、図示のような、輪郭形状である。
【0322】
図26の(b-3)は、CADデータから修復形状を生成した状態を示す。図示の(4’)が修復形状である。
【0323】
図26の(b-4)は、修復完了した状態を示す。これは、図26の(b-3)でCADデータから生成した修復形状(4’)となるように、図26の(b-2)で形成した輪郭形状の部分にデポジションしたものである。
【0324】
以上のように、引っ込み欠陥について、当該欠陥の輪郭に沿って削除(エッチング)し、次に、CADデータから生成した修復形状(4’)となるように、輪郭形状の部分にデポジションすることにより、修復することが可能となる。
【0325】
図27は、本発明のレイヤー処理説明図を示す。
【0326】
図27の(a)は、目的形状の例を示す。ここでは、矩形(1)とする。
【0327】
図27の(b)は、第1レイヤーの例を示す。ここでは第1レイヤーに、図27の(a)の矩形(1)のエッジ部分(周辺の部分)(2)を割り当てる。
【0328】
図27の(c)は、第2レイヤーの例を示す。ここでは第2レイヤーに、図27の(a)の矩形(1)の中心部分(中央の部分)(3)を割り当てる。
【0329】
以上のように、目的形状(1)を、エッジ部分の(2)と、中央部分の(3)との2つに分割し、(2)のデポジションを第1レイヤーに割り当て、(3)のデポジションを第3のレイヤーに割り当てる。
【0330】
これにより、第1のレイヤーのパターンは、
・200eV
・反応半径3nm
となる1次電子ビームの照射を受けてデポジションされ、
第2のレイヤーのパターンは、
・2000eV
・反応半径20nm
となる1次電子ビームの照射を受けてデポジションされることとなる。
【0331】
次に、詳細に説明する。
【0332】
図27において、本実施例では同一照射電流であっても電子の持つエネルギーが異なると反応半径が大きく変化することに注目した。反応プロセスをレイヤーに分け、それぞれの図形を複数段階の異なる電子ビームエネルギー条件で形成することを特徴としている。
具体的には目的とする幾何形状を複数の部分形状に分解する。図27に示すように、矩形のエッジ部分と中心部分に分けて表現する。2つの図形は異なる電子ビーム条件やプロセス条件で行うレイヤーとなる。図27の例では2つのレイヤーに分けており、第1のレイヤーは矩形の周辺部を受け持つレイヤーであり200eVで処理を行う。一方、第2のレイヤーは矩形中心部を受け持つレイヤーであり1000eVで処理を行う。電子ビームエネルギーの変更は加速エネルギーを変えても良いが、基板に印加する電圧を変更しても良い。電子ビーム励起反応は2次電子によって引き起こされるため、1次電子のエネルギーが高いと広範囲に2次電子が発生し反応半径が大きくなる。例えば200eVの反応半径が3nmであるのに対して1kVの反応半径は20nmになる。同一照射電流であるにも関わらず、処理面積は40倍以上も異なる。
【0333】
図27に示したように、矩形周辺部は正確なエッジ形状を実現する必要があるため200eVで反応半径を3nmと小さくした状態でプロセスを行い、矩形中心部の図形形成には高分解能は要らないので反応半径が20nmと大きい1kVで処理をおこなう。このようにすると照射電流量が同じであるにも関わらず、矩形全てを200eVで処理した場合と比較して10倍以上早く処理を行うことが出来る。このようにレイヤー処理することで、照射電流を増加させなくてもスループット向上が出来る。目的とする図形の周辺から何nmを周辺部として分離して別のレイヤーにするかの閾値を予め決めておくことで自動的に目的図形を複数のレイヤーに分離することが出来る。
【0334】
以上のようなレイヤー処理は実施例で示した電子ビームエネルギーをパラメータとするだけでなく、照射電流やガス流量等あらゆるプロセスパラメータに対して適用できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0335】
図1】本発明の1実施例構成図である。
図2】本発明のガス供給装置構成例である。
図3】本発明のガス供給システムの制御ウィンドウ―例である。
図4】本発明の自動マスク修復システム構成図である。
図5】本発明の2次電子プロファイルの説明図である。
図6】本発明の目標2次電子プロファイルの生成説明図である。
図7】本発明の2次電子プロファイルを利用した修復説明図である。
図8】本発明のエッチングによるエッジ加工例である。
図9】本発明のエッチング深さと2次電子信号強度の関係説明図である。
図10】本発明のデポジションによるエッジ加工例である。
図11】本発明のエッチングによる側壁角度制御例である。
図12】本発明のデポジションによる側壁角度制御例である。
図13】本発明のエッチングによるエッジ加工例である。
図14】本発明のデポジションによるダエッジ加工例である。
図15】本発明のエッチングによる側壁角度制御例である。
図16】本発明のデポジションによる側壁角度制御例である。
図17】本発明の自動化シーケンス例である。
図18】本発明のSEM観察のシーケンス例である。
図19】本発明のドリフト補正のシーケンス例である。
図20】本発明のドリフト補正例である。
図21】本発明のガス噴射のシーケンス例である。
図22】本発明の側壁角度ライブラリー例である。
図23】本発明の加工例である。
図24】本発明の電子ビームによるデポジション説明図である。
図25】本発明の出っ張り欠陥を任意形状に修復する説明図である。
図26】本発明の引っ込み欠陥を任意形状に修復する説明図である。
図27】本発明のレイヤー処理説明図である。
【符号の説明】
【0336】
1:電子銃
2:ブランキング電極
3:ブランキングアパチャー
4:収差補正装置
5:電子検出装置
6:偏向装置
7:対物レンズ
10:試料室
11:ガス噴射ノズル
12:高さセンサー
13:サンプル
14:サンプル温度制御装置
15:Zステージ
16:サンプルバイアス電圧制御装置
17:XYステージ
18:除振台
19:レーザー計測
20:真空計
21:ガス供給装置
22:ガス流量制御装置
23:除害装置
24:ドライポンプ
25:TMP
31:精密温度制御装置
311:ガス源
312:弁
313:MFC
314:混合弁
315:デポ系
316:エッチング系
317:支援系
318:切換弁
319:PLC
320:PC
321:Display
322:LAN,Intenet
40:2次電子プロファイルデータベース
41:マスク修正装置
411:画像処理装置
412:画像認識装置
413:プロセス手順発生装置
44:設計データベース
45:欠陥検査装置あるいはレビュー装置
51:基板
52、62、63、64、65:パターン
53:2次電子プロファイル
54:エッジ領域
55:実測エッジプロファイル
56:フォトマスクパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27