(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032309
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20240305BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20240305BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G08G1/01 K
G08G1/04
G01S13/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135895
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 弘樹
【テーマコード(参考)】
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181CC14
5H181EE02
5J070AB17
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AE09
5J070AF03
5J070AH12
5J070AH14
5J070AH35
5J070AK35
(57)【要約】
【課題】移動体の検出の精度を維持しつつ、マルチパス散乱による移動体の誤検出を防止する。
【解決手段】移動体検出部38において、CFARのしきい値レベルを上げ下げして、誤警報の確率を一定に保っているとき、大型車両18B等の領域22への進入によるマルチパス散乱発生に起因する、歩行者18C等の誤検出を防止するため、補正部50において、大型車両18Bの領域22内への進入の期間に限定して、しきい値を補正することで、車両18A等に対して安全運転の注意を喚起する場合に、精度の高い情報を通知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダによる信号波の測定結果情報から、移動体の検出を行う移動体検出部と、前記移動体検出部による前記移動体の検出の真贋を判定する判定部と、を備えた情報処理装置であって、
前記レーダによる信号波の測定範囲に進入する前記移動体として、前記信号波の散乱が所定以上となる特定移動体を検出する検出部と、
前記検出部で、前記特定移動体を検出した場合に、当該特定移動体の検出時期に応じて設定される所定期間、前記判定部における前記移動体の検出の真贋判定レベルを補正して、少なくとも真判定に対する誤判定を減少させる補正部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記真贋判定レベルは、一定誤警報確率に基づくしきい値であり、
前記判定部が、前記真贋の判定を、前記移動体検出部による検出結果と前記しきい値との比較により判定しており、
前記補正部は、前記一定誤警報確率が減少するように当該しきい値を補正する、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記測定結果情報が、
周波数連続変調による送信信号と、当該送信信号が前記移動体に到達して反射する反射信号とに基づく解析により算出される、前記移動体までの距離、前記移動体の移動速度、及び基準方向に対する前記移動体の方向の角度を含む状態情報である、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定移動体が車両であり、前記補正部の補正期間中に前記真贋判定レベルを補正する対象の前記移動体が歩行者である、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置が、前記移動体としての車両が通過し得るように連続する道路に点在しており、
車両走行方向上流側の前記情報処理装置が備えた前記検出部で前記特定移動体を検出した場合に、
前記補正部が、車両走行方向下流側の前記情報処理装置の判定部の前記真贋判定レベルを補正する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
請求項1~請求項4の何れか1項記載の情報処理装置の前記移動体検出部、前記判定部、前記検出部、及び前記補正部として動作させる、
情報処理プログラム。
【請求項7】
レーダによる信号波の測定結果情報から、移動体の検出を行うと共に、前記移動体の検出の真贋を判定する基本処理が実行される情報処理方法であって、
前記基本処理の実行中に、
前記レーダによる信号波の想定範囲に進入する前記移動体として、前記信号波の散乱が所定以上となる特定移動体を検出する第1処理ステップと、
前記特定移動体を検出した場合に、当該特定移動体の検出時期に応じて設定される所定期間、前記移動体の検出の真贋判定レベルを補正して、少なくとも真判定に対する誤判定を減少させる第2処理ステップと、
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダによる測定結果に基づいて移動体の検出を行う情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路を走行する車両の数が多くなるに伴い、走行中の車両や、歩行者との干渉を回避するための情報収集が重要であり、特に、自動運転車両においては、精度の高い情報が要求される。
【0003】
特許文献1では、ミリ波レーダにより走行車両を計測し、車線数、各車線幅、中央分離帯等を自動的に判断しながら車両交通量を監視する道路交通監視装置が提案されている。
【0004】
この特許文献1では、ミリ波レーダによりミリ波ビームを照射し反射波受信により複数の走行車両の検出を行うことが記載され、照射角、反射までの時間、ドップラーシフトの関係から、ミリ波レーダからの距離、方向角度、速度等を算出し、車両の走行軌跡を求め、走行車両数と車線幅方向の関係をグラフ化してグループ分けを行い、グラフの山から車線数を抽出し、グラフの山と両脇の谷から車線幅を抽出し、走行軌跡の速度成分方向が正から負に切り替わる境界部分の中央分離帯の幅を求め、得られた道路配置に基づき車両交通量の計測と監視を行う構成となっている。
【0005】
ここで、ミリ波レーダを含むレーダ装置では、物体(特に、移動体)による反射等から得られる信号パワーのピークがしきい値を超えているかどうかに基づいて、移動体の有無を判定する。
【0006】
この移動体の有無の判定の際、CFAR(Constant False Alarm Rate:一定誤警報確率)という手法を用いて、しきい値を決める処理が広く用いられている。
【0007】
これにより、移動体が存在しないのに、存在すると検知してしまう誤警報確率が一定値となるようしきい値が決定される。
【0008】
一般的には、CFARで定まる誤警報確率が,予め定めた所定値(数%程度)となるようにしておく。これにより、誤警報が発生してしまうのをある程度許容する代わりに、遠距離に存在する移動体(歩行者等)のような反射率の低い移動体から生ずる微弱な信号を検知し、歩行者等が存在していると判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、誤警報確率を、定常的に許容すると、例えば、比較的大規模な移動体(大型車両等)によるマルチパス散乱が生じたとき等には、その信号の影響を受けて、本来、存在しないはずの比較的小規模な移動体(歩行者等)を検知してしまうことがある。
【0011】
本発明は、移動体の検出の精度を維持しつつ、マルチパス散乱による移動体の誤検出を防止することができる情報処理装置、情報処理プログラム、情報処理方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る情報処理装置は、レーダによる信号波の測定結果情報から、移動体の検出を行う移動体検出部と、前記移動体検出部による前記移動体の検出の真贋を判定する判定部と、を備えた情報処理装置であって、前記レーダによる信号波の想定範囲に進入する前記移動体として、前記信号波の散乱が所定以上となる特定移動体を検出する検出部と、前記検出部で、前記特定移動体を検出した場合に、当該特定移動体の検出時期に応じて設定される所定期間、前記判定部における前記移動体の検出の真贋判定レベルを補正して、少なくとも真判定に対する誤判定を減少させる補正部と、を有している。
【0013】
本発明に係る情報処理プログラムは、コンピュータを、上記の情報処理装置の前記移動体検出部、前記判定部、前記検出部、及び前記補正部として動作させることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る情報処理方法は、レーダによる信号波の測定結果情報から、移動体の検出を行うと共に、前記移動体の検出の真贋を判定する基本処理が実行される情報処理方法であって、前記基本処理の実行中に、前記レーダによる信号波の想定範囲に進入する前記移動体として、前記信号波の散乱が所定以上となる特定移動体を検出する第1処理ステップと、前記特定移動体を検出した場合に、当該特定移動体の検出時期に応じて設定される所定期間、前記移動体の検出の真贋判定レベルを補正して、少なくとも真判定に対する誤判定を減少させる第2処理ステップと、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明した如く本発明によれば、移動体の検出の精度を維持しつつ、マルチパス散乱による移動体の誤検出を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係るインフラレーダ装置が設置された交差点を含む道路の平面図である。
【
図2】本実施の形態に係るインフラレーダ装置の制御ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るインフラレーダ装置に適用された補正部の詳細を示す機能ブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係るインフラレーダ装置の移動体検出の流れのメインルーチンを示す制御フローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係り、メインルーチンの処理と並行処理される、しきい値補正処理ルーチンを示す制御フローチャートである。
【
図6】(A)は、変形例に係るインフラレーダ装置が設置された交差点を含む道路の平面図、(B)は変形例に係るCFARのしきい値補正を実行するための制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施の形態に係るインフラレーダ装置10が設置された交差点12を含む道路の平面図である。インフラレーダ装置10は、道路上の交通状況を監視する装置の一例である。
【0018】
交差点12は、所謂十字路の連結部であり、片側一車線道路14A(右折車線を含む)と、片側二車線道路14B(右折車線を含む)とが交差している(以下、総称して「道路14」という)。四方から交差点12に至る道路14には、それぞれ横断歩道16が設けられている。なお、信号の設置の有無は問わない。
【0019】
上記交差点12には、様々な種類の移動体18が進入し、かつ、提出する。
【0020】
(移動体18の定義)
ここで、本実施の形態では、移動体18の種類として、乗用車等の車両18Aを基準として、比較的大規模な移動体である大型車両18B、比較的小規模な移動体である歩行者18Cの三種類に分類する。なお、移動体18には、自転車、オートバイ、中型トラック、バス、特殊車両等がある。また、本明細書中の大型車両は、普通乗用車に比して大きい車体を有する車両を意味しており、必ずしも法定の意味に限定されない。
【0021】
本実施の形態における三種類の分類は、基準となる移動体18として車両18Aを例示し、インフラレーダ装置10を発生源とする電波(送信波に対する反射波)にマルチパス散乱が発生する可能性のある移動体18として大型車両18Bを例示し、インフラレーダ装置10の移動体検出において、最も重視する移動体18として歩行者18Cを例示したものであり、例示していない移動体に関しては、適宜、三種類の何れかに分類すればよい。例えば、バスは、大型車両18Bと同類である。なお、以下において、上記分類したもの以外を含め、総称する場合は、移動体18という。
【0022】
(インフラレーダ装置10の構成)
インフラレーダ装置10は、交差点12の一角に設置されており、交差点12の全域が、RFフロントエンド20(
図2参照、詳細後述)から出力される送信波が到達し、かつ、受信波が入力される領域22とされている。
【0023】
なお、本実施の形態のインフラレーダ装置10における領域22は、指向性があり、所定の角度の扇形となっているが、例えば、交差点12の中心にインフラレーダ装置を設置可能である場合は、領域は、指向性のない円形であってもよい。少なくとも、交差点12(横断歩道16を含む)の範囲を網羅できればよい。
【0024】
本実施の形態に係るインフラレーダ装置10では、領域22の内部を通過する移動体18(車両18A、歩行者18C等)の位置を検出し、例えば、歩行者18Cが横断歩道16を横断することを予測し、車両18Aに予測情報を通知することで、車両18Aの安全走行を促す役目を有している。
【0025】
図2は、本実施の形態のインフラレーダ装置10の制御ブロック図である。より詳しくは、FMCW(周波数連続変調)方式のレーダにおける信号処理の制御ブロック図である。
【0026】
インフラレーダ装置10は、RFフロントエンド20を有している。RFフロントエンド20は、受信した電波よりベースバンドデータ抽出等の処理を行う。
【0027】
このため、RFフロントエンド20は、送信アンテナ(Tx)24と、受信アンテナ(Rx)26とを備えている。RFフロントエンド20では、シンセサイザ27で変調波を生成し、送信波として送信アンテナ(Tx)24から、少なくとも所定の領域22(
図1参照)を送信エリアとして送信する。
【0028】
受信アンテナ(Rx)26では、所定の領域22に進入している移動体18(車両18A、大型車両18B、歩行者18C等)にあたり、反射した反射波を、受信波として受信する。
【0029】
混合部28では、送信波と受信波とを混合し、ADC(アナログ-デジタル変換部)30へ送出する。
【0030】
ADC30では、アナログ信号がデジタル信号に変換され、変換されたデジタル信号は、前処理部32へ送出される。
【0031】
前処理部32では、DC(直流分)除去や干渉低減等、後の信号処理の品質を上げるための処理が行われる。
【0032】
前処理部32は、距離検出部34が接続されている。距離検出部34では、一次元FFT(フーリエ変換)処理によって、移動体までの距離に対する受信信号強度の情報を得て、当該移動体までの距離を検出する。
【0033】
距離検出部34は、速度検出部36に接続されている。速度検出部36では、二次元FFT処理によって、距離検出部34での結果における、ピークのデータに対しての移動速度の情報を得て、当該移動体の速度を検出する。
【0034】
速度検出部36は、移動体検出部38が接続されている。
【0035】
移動体検出部38では、距離検出部34及び速度検出部36を経て出力されたデータ(移動体までの距離情報及び移動速度情報)を用いて、CFAR(一定誤警報確率)に基づく移動体検出を行う。
【0036】
すなわち、移動体検出部38は、しきい値算出部38Aを備えている。しきい値算出部38Aでは、CFAR(一定誤警報確率)を維持するためのしきい値を算出し、当該算出したしきい値に用い、速度検出部36から取得したデータに基づいて移動体の検出処理(ノイズに起因する、移動体の誤検出の判定)を行う。
【0037】
移動体検出部38には、角度検出部40及び補正部50が接続されている(補正部50については後述)。
【0038】
角度検出部40では、三次元FFT処理によって、移動体検出部38での結果において、検出した移動体がインフラデータ装置10に対して、どの角度に存在するかの情報を得る。
【0039】
角度検出部40は、クラスタリング部42に接続されている。クラスタリング部42は、検出した移動体のグループ化を行い、追跡部44へ送出する。
【0040】
追跡部44では、移動体18の軌道の追跡が実行され、グループ化情報及び軌道追跡情報が、移動体分類部46へ送出される。
【0041】
移動体分類部46では、移動体18の種類(車両18A、歩行者18C等)によって分類する分類処理が実行される。
【0042】
移動体分類部46までの処理で得た、グループ化情報軌道追跡情報、分類情報は、図示しない情報管理装置へ送出され、例えば、歩行者18Cの存在等を、交差点12を通過しようとする車両18Aに対して通知するといった、歩行者18Cと車両18Bとの干渉を回避するための情報提供が実行される。
【0043】
(補正部50の役割)
ところで、本実施の形態では、
図1に示される如く、移動体検出部38で適用されるしきい値を補正するための補正部50が設けられている。
【0044】
移動体検出部38において、CFAR(一定誤警報確率)を維持するために、ノイズレベルが空間的および時間的に変化することを考慮し、しきい値レベルを上げ下げして、誤警報の確率を一定に保っている。
【0045】
このとき、例えば、比較的大規模な移動体18(大型車両18B)が領域22(
図1参照)に進入すると、強いマルチパス散乱が生じることがある。強いマルチパス散乱が生じると、定常的に制御されるしきい値では、その信号の影響を受けて、本来、存在しないはずの比較的小規模な移動体18(歩行者18C等)を、誤って検知してしまうことがある。
【0046】
そこで、本実施の形態では、補正部50において、大型車両18Bの領域22内への進入の期間に限定して、しきい値を補正するようにした。
【0047】
図1に示される如く、補正部50は、移動体検出部38の検出結果を取得可能に接続されている。補正部50では、この取得した移動体検出部38の検出結果に基づいて、しきい値の補正量を算出し、移動体検出部38にフィードバックする。
【0048】
図3は、補正部50でのしきい値補正の機能ブロック図である。
【0049】
前述したように、移動体検出部38では、しきい値算出部38Aで算出したしきい値に基づいて、速度検出部36からのデータから移動体の検出(存在の有無の判定)を行うという処理がなされる。
【0050】
これに対して、本実施の形態では、補正部50として、しきい値設定部52、しきい値補正部54、及びタイマ56を備えている。
【0051】
移動体検出部38から角度検出部40へ送出される情報は、分岐されてしきい値設定部52へ送出される。
【0052】
しきい値設定部52では、レーダの検知に影響を与えるような強いマルチパス散乱が発生する恐れのある時期の予測(補正期間の設定)、及びしきい値補正量算出が実行される。
【0053】
しきい値設定部52は、しきい値補正部54に接続され、処理結果(補正期間、しきい値補正量)が送出される。また、しきい値補正部54には、タイマ56が接続され、現在時刻を認識する。
【0054】
しきい値補正部54は、移動体検出部38に接続されている。しきい値補正部54では、マルチパス散乱の発生が移動体検出に影響を与えるとき、設定された補正期間、しきい値補正量を。移動体検出部38へ送出する。
【0055】
移動体検出部38では、受け取ったしきい値補正量に基づいて、しきい値算出部38Aで算出したしきい値を補正する。
【0056】
この結果、移動体検出部38では、設定された補正期間中は、補正されたしきい値を使用して移動体の検出を行う。
【0057】
以下に、本実施の形態の作用を
図4及び
図5のフローチャートに従い説明する。
【0058】
(交差点監視制御)
図4は、本実施の形態に係るインフラレーダ装置の移動体検出の流れのメインルーチンを示す制御フローチャートである。
【0059】
ステップ100では、RFフロントエンド20による送信及び受信処理を行い、次いで、ステップ102へ移行して混合波のAD変換処理、及び前処理を実行して、ステップ104へ移行する。
【0060】
ステップ104では、距離検出部34において、一次元FFTによる移動体18の距離検出処理を実行し、次いで、ステップ106へ移行して、速度検出部36において、二次元FFTによる移動体18の速度検出処理を実行して、ステップ108へ移行する。
【0061】
ステップ108では、移動体検出部38において、CFARのしきい値に基づく、移動体検出(一定誤警報確率に基づく移動体誤検出排除)処理を実行し、ステップ110へ移行する。
【0062】
次のステップ110では、角度検出部40において、三次元FFTによる移動体の角度検出処理を実行し、ステップ112へ移行する。
【0063】
ステップ112では、距離、速度及び角度(位置)が確定した移動体18のクラスタリング処理を実行し、次いで、ステップ114へ移行して、各移動体18の追跡処理を実行し、ステップ116へ移行する。
【0064】
ステップ116では、移動体18の分類し、情報管理装置へ送出することで、例えば、交差点12に進入する車両18Aに対して、横断歩道16を渡ろうとする歩行者18Cが存在する等、交通状況を通知する。
【0065】
これにより、車両18A(運転者、又は、自動運転の場合はその制御系)に対して、安全運転の注意を喚起することができる。
【0066】
(CFARしきい値補正)
図5は、本実施の形態に係り、メインルーチンの処理と並行処理される、しきい値補正処理ルーチンを示す制御フローチャートである。なお、並行処理とは、例えば、デュアルコアCPU等においてメインルーチン(
図4)と同時に処理することを前提としているが、シングルコアCPUにおいて、メインルーチン(
図4)の各ステップ(又は特定のステップ)の処理の間に実行する場合を含む。
【0067】
ステップ150では、移動体検出部38から、CFARのしきい値を取得し、次いで、ステップ152へ移行して、マルチパス散乱の発生源である移動体18(ここでは、大型車両18B)の領域22内への進入を判別する。
【0068】
次のステップ154では、ステップ152での判別の結果、大型車両18Bの進入があったか否かを判断する。
【0069】
このステップ154で、肯定判定されると、大型車両18Bの領域22への進入に起因するマルチパス散乱が発生すると予測し、ステップ156へ移行して、CFARのしきい値補正量を算出し、ステップ158へ移行する。
【0070】
ステップ158では、大型車両18Bの領域22への進入時期、速度等からしきい値の補正期間を算出し、ステップ160へ移行する。
【0071】
ステップ160では、タイマから取得した事項情報との同期処理を実行する。すなわち、ステップ158で算出した補正期間に基づき、しきい値の補正時期、補正終了時期を設定し、ステップ162へ移行する。
【0072】
ステップ162では、補正開始時期か否かを判断し、肯定判定されるまで待機し、ステップ162で肯定判定された場合は、ステップ164へ移行して、移動体検出部28に対して、CFARのしきい値補正処理を開始し、ステップ166へ移行する。
【0073】
ステップ166では、補正終了時期か否かを判断し、否定判定された場合はしきい値の補正を継続し、肯定判定された場合は、ステップ168へ移行して、しきい値補正処理を終了し、このルーチンは終了する。
【0074】
(変形例)
図6に基づき、本実施の形態に係るインフラレーダ装置10の変形例を示す。なお、本実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0075】
図6の変形例では、インフラレーダ装置として、第1インフラレーダ装置10Aと、第2インフラレーダ装置10Bとを備える。
【0076】
第1インフラレーダ装置10A及び第2インフラレーダ装置10Bは、共に、
図4に示すメインルーチンを実行可能な制御系を有している。すなわち、移動体18の進入を監視するのは、第1インフラレーダ装置10Aが設置された交差点12であり、上記の実施の形態と同様に、RFフロントエンド20により、領域22が設定されている。
【0077】
第1インフラレーダ装置10Aと、第2インフラレーダ装置10Bとは、一定距離L(正確には、第2インフラレーダ装置10Bによる大型車両18の検出地点から第1インフラレーダ装置10Aの領域22への進入点)の区間だけ離れて設置されており、第2インフラレーダ装置10Bで検出した移動体18が、第1インフラレーダ装置10Aの領域22に進入するまでには、一定のタイムラグ(移動体18の移動速度により変動)がある。
【0078】
ここで、変形例では、本実施の形態とは異なり、
図6(B)に示される如く、補正部50の機能が独立されている。すなわち、第1インフラレーダ装置10Aと第2インフラレーダ装置10Bとは、補正部50を介して接続されている。
【0079】
補正部50は、第2インフラレーダ10Bの移動体検出部38からCFARのしきい値情報を取得することで、マルチパス散乱を発生する可能性のある大型車両18Bの有無を判別し、マルチパス散乱発生が有ると判定した場合に、しきい値の補正量を算出する。
【0080】
変形例では、上記の実施の形態における領域22に相当するのは、第1インフラレーダ装置10Aで設置した領域22である。
【0081】
このため、第2インフラレーダ装置10Bとは、一定距離L離れているため、この一定距離Lと、対象の移動体18(大型車両18B)の速度情報とから、第1インフラレーダ装置10AのCFARのしきい値の補正開始時期と、補正終了時期とを算出し、しきい値の補正を実行する。
【0082】
変形例によれば、強いマルチパス散乱が発生する恐れが生ずることを、事前に認識することができる。
【0083】
例えば、しきい値補正期間は、インフラレーダ装置10Aとは別に、短期間であれば、膨大な処理量を必要とする画像解析処理等を用いて、監視精度を変えることなく監視を継続することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態(変形例を含む)によれば、移動体検出部38において、CFARのしきい値レベルを上げ下げして、誤警報の確率を一定に保っているとき、大型車両18B等の領域22への進入によるマルチパス散乱発生に起因する、歩行者18C等の誤検出を防止するため、補正部50において、大型車両18Bの領域22内への進入の期間に限定して、しきい値を補正するようにした。
【0085】
これにより、車両18A等に対して安全運転の注意を喚起する場合に、精度の高い情報を通知することができる。なお、本実施の形態として、レーダを用いて大型車両18B等の強いマルチパス散乱の領域22への侵入を検知する構成を説明したが、必ずしも当該実施の形態に限定されない。例えば、領域22に侵入する車両をカメラ等で認識することによって、領域22への大型車両の侵入を検知してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 インフラレーダ装置
12 交差点
14A 片側一車線道路
14B 片側二車線道路
14 道路
16 横断歩道
18 移動体
18A 車両
18B 大型車両
18C 歩行者
20 RFフロントエンド
22 領域
24 送信アンテナ(Tx)
26 受信アンテナ(Rx)
27 シンセサイザ
28 混合部
30 ADC
32 前処理部
34 距離検出部
36 速度検出部
38 移動体検出部
38A しきい値算出部
40 角度検出部
42 クラスタリング部
44 追跡部
46 移動体分類部
50 補正部
52 しきい値設定部
54 しきい値補正部
56 タイマ