(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032312
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】表示灯付発信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240305BHJP
H01H 9/18 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G08B17/00 H
H01H9/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135899
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】大下 剛
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 颯月
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】原田 麻魚
(72)【発明者】
【氏名】武井 隆
【テーマコード(参考)】
5G052
5G405
【Fターム(参考)】
5G052AA23
5G052BB01
5G052JA02
5G052JA09
5G052JB05
5G052JC04
5G052JC12
5G405AA02
5G405CA60
5G405FA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発信機のカバーの前面全体から光を放出させることができそれによって正面側からの視認性が極めて良好な表示灯付発信機を提供する。
【解決手段】前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチ11を内蔵した発信機本体部10と、発信機本体部の前方に配置された前面カバー20と、押しボタンスイッチの前方に位置するように配置された保護板21と、前面カバーの後方に配設された発光素子(LED)28と、を備えた表示灯付発信機において、前面カバーは、開口22aを有し、開口の縁部近傍から外縁部近傍まで、全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光板により形成され、保護板は、透光材からなり少なくとも前面の一部が開口より露出するように配設した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の前方に配置された前面カバーと、前記押しボタンスイッチの前方に位置するように配置された保護板と、前記前面カバーの後方に配設された光源と、を備えた表示灯付発信機であって、
前記前面カバーは、開口を有し、前記開口の縁部近傍から外縁部近傍まで、全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光板により形成され、
前記保護板は、透光材からなり、少なくとも前面の一部が前記開口より露出するように配設されていることを特徴とする表示灯付発信機。
【請求項2】
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の前方に配置された前面カバーと、前記押しボタンスイッチの前方に位置するように配置された保護板と、前記前面カバーの後方に配設された光源と、を備えた表示灯付発信機であって、
前記前面カバーは、導光板と前記導光板の前面に接合された透光性を有するカバー層とからなり、前記導光板およびカバー層に開口が形成され、
前記導光板は、前記開口の縁部近傍から外縁部近傍まで、全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光材により形成され、
前記保護板は、透光材からなり、少なくとも前面の一部が前記開口に臨むように配設されていることを特徴とする表示灯付発信機。
【請求項3】
前記光源は、前記開口の後方かつ近傍に、環状をなすように配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示灯付発信機。
【請求項4】
前記開口は、前面視で前記前面カバーの中央に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の表示灯付発信機。
【請求項5】
前記前面カバーは、前記開口の縁部から外縁部まで、全径方向に亘って導光材により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の表示灯付発信機。
【請求項6】
前記導光板の裏面には、複数の溝が、前記開口を中心として同心円状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の表示灯付発信機。
【請求項7】
前記前面カバーの周縁に庇部が設けられ、庇部の端部が、当該表示灯付発信機が取り付けられる取付け面に一致するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の表示灯付発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急報知用の発信機、さらには表示灯を備え建物の壁部等に設置され緊急事態の発生時に操作されることで警報を発するための表示灯付発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内部には火災など緊急事態の発生を知らせるために、押しボタンスイッチを備えた手動の発信機が建物の壁面に適切な高さで設置されている。緊急事態の発生時には、発見者が発信機の押しボタンスイッチを強く押すことにより、緊急事態の発生を知らせる信号が受信機等へ伝送されると共に、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し緊急事態の発生を知らせることができるようになっている。
また、発信機には、火災関連設備(発信機を含む)があることを知らせるための表示灯が一体に設けられているものがある(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-18445号公報
【特許文献2】特開2016-118993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている表示灯付発信機は、保護板(いわゆる押しボタン)の周囲に円弧状の発光部を配設して、全体としてリング状に発光する位置表示灯を発信機の前面に設けるとともに、リング状の表示部は、外周側に対し内周側を前方に僅かに飛び出した傾斜表示面を持つように形成している。そのため、斜め横方向からの視認性はある程度良好であるものの、真横からの視認性は良好でない。また、特許文献1の発信機は、そもそも表示部のトータルの面積が小さいため、視認性が良好でない。そこで、表示部の面積を大きくすることも考えられるが、そのようにすると発信機が大型化するという課題がある。
【0005】
一方、特許文献2に記載されている表示灯付発信機は、中央に押しボタンが臨む開口を有する円板状の発信機カバーの周縁部後方に、リング状をなす発光表示部を設けるとともに、発信機カバーの全部又は一部を透光性の部材で形成するようにしている。そのため、側方からの視認性はある程度良好であるものの、発信機カバー全体から光を放出させる構成を有しておらず、発信機カバーの周縁部のみが明るくなる構造であるため、正面からの視認性が良好でないという課題がある。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、発信機のカバーの前面全体から光を放出させることができ、それによって正面側からの視認性が極めて良好な表示灯付発信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の前方に配置された前面カバーと、前記押しボタンスイッチの前方に位置するように配置された保護板と、前記前面カバーの後方に配設された光源と、を備えた表示灯付発信機において、
前記前面カバーは、開口を有し、前記開口の縁部近傍から外縁部近傍まで、全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光板により形成され、
前記保護板は、透光材からなり、少なくとも前面の一部が前記開口より露出するように配設されているように構成したものである。
【0008】
あるいは、前方からの押圧操作でオン状態にされる押しボタンスイッチを内蔵した本体部と、前記本体部の前方に配置された前面カバーと、前記押しボタンスイッチの前方に位置するように配置された保護板と、前記前面カバーの後方に配設された光源と、を備えた表示灯付発信機において、
前記前面カバーは、導光板と前記導光板の前面に接合された透光性を有するカバー層とからなり、前記導光板およびカバー層に開口が形成され、
前記導光板は、前記開口の縁部近傍から外縁部近傍まで、全径方向のうち少なくとも一部の径方向の領域が導光材により形成され、
前記保護板は、透光材からなり、少なくとも前面の一部が前記開口に臨むように配設されているように構成する。
【0009】
上記のような構成を有する表示灯付発信機によれば、前面カバーが導光板により構成され、保護板が透光材により構成されているため、前面カバーの後方に配設された光源から放出された光が、導光材からなる前面カバーに入射されて誘導され、前方へ放出されるとともに透光材からなる保護板に入射されるため、保護板の前面と前面カバーの前面が広範囲に亘って光を放出する。その結果、正面側からの視認性を極めて良好にすることができる。
また、前面カバーと保護板の材質が異なるため、発光の見え方が異なり、押圧すべき箇所が視覚的に認識し易くなる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記光源は、前記開口の後方かつ近傍に、環状をなすように配設されているように構成する。
かかる構成によれば、押しボタンへ入射される光の量を多くすることができ、押しボタンの視認性を良好にすることができるとともに、発信機の小型化が可能になる。
【0011】
さらに、望ましくは、前記開口は、前面視で前記前面カバーの中央に形成されているようにする。
かかる構成によれば、光源が前面カバーの中央に来るため、前面カバーの前面全体を均一に発光させることが可能となる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記前面カバーは、前記開口の縁部から外縁部まで、全径方向に亘って導光材により形成されているようにする。
かかる構成によれば、発光領域を前面カバーの全体に広げることができるため、より一層する正面側からの視認性を向上させることができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記導光板の裏面には、複数の溝が、前記開口を中心として同心円状に形成されているようにする。
かかる構成によれば、前面カバーを周方向に沿って均一に発光させることができ、表示灯の見え方を良好にすることができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記前面カバーの外周縁に庇部が設けられ、庇部の端部が、当該表示灯付発信機が取り付けられる取付け面に一致するように構成する。
かかる構成によれば、前面カバーの庇部も発光させることができるため、側方からの視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る表示灯付発信機によれば、発信機のカバーの前面全体から光を放出させることができ、それによって正面側からの視認性を極めて良好にすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の表示灯付発信機を前方から見た外観を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の表示灯付発信機の内部構造の概略構成を示す断面側面説明図である。
【
図3】第1実施形態の表示灯付発信機を前方から見た状態を示す正面図である。
【
図4】第2実施形態の表示灯付発信機の内部構造の概略構成を示す断面側面説明図である。
【
図5】第1および第2の実施形態の表示灯付発信機の変形例を示す正面図である。
【
図6】第2実施形態の表示灯付発信機のより具体的な内部構造を示す断面側面図である。
【
図7】
図6の表示灯付発信機における前面カバーを構成する導光板の構造例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明が適用される発信機は、緊急事態が発生した際に押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより緊急事態の発生を知らせる信号を送出する機能を備え、建造物の壁面や所定の取付けパネルなどに設置されて使用されるように構成される。具体的には、中央に押しボタンを有する前面カバーと、前面カバーの背部に設けられ押しボタンの押込み操作によってオン状態にされる押しボタンスイッチおよび該スイッチのオンによって信号を生成し外部へ送出する回路基板を内蔵した収納ケースとから構成される。
以下、図面を参照しながら、本発明を適用した表示灯付発信機の実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1~
図3は、本発明に係る表示灯付発信機の第1の実施形態を示す。このうち、
図1は発信機の全体斜視図、
図2は
図1に示す発信機の内部構造の概略構成を示す断面側面説明図、
図3は第1実施形態の発信機を前方から見た正面図である。
本実施形態の発信機は、
図1に示すように、押しボタンスイッチを内蔵した箱状の収納ケース13を備えた発信機本体部10と、前面中央に押しボタンスイッチを保護する保護板としての押しボタン21と導光板22Aを備え発信機本体部10の前部に設けられた円板状の発信機カバー20とから構成されている。
【0019】
本実施形態の発信機は、
図2に示すように、押しボタンスイッチ11を内蔵した収納ケース13の前面を覆う円板状の発信機カバー20の導光板22Aの中央に、押しボタンスイッチ11を保護する保護板としての押しボタン21の前面の押圧部が嵌合する円形の開口22aが形成されている。
導光板22Aの背面側には、外周縁部から後方へ向かって突出するように短円筒状をなす庇部22bと、開口22aの縁部から後方へ向かって突出する円筒部22cとが設けられている。
【0020】
また、本実施形態の発信機においては、導光板22Aの円筒部22cの後方には、光源として機能する複数の発光素子(LED:発光ダイオード)28が実装された回路基板27が、発光素子28の出射部が円筒部22cの端面に対向するようにして配設されている。
また、押しボタン21の背面中央に、後方へ向かって突出する棒状の押圧ロッド部21aが形成されており、回路基板27には押圧ロッド部21aの後端面に対向するように、押しボタンスイッチ11が実装されているとともに、該スイッチのオンによって信号を生成し外部へ送出する回路が設けられている。なお、上記複数の発光素子28は、円筒部22cに対応して環状に配設されている。発光素子28の発光色は、赤色が望ましい。
【0021】
押しボタン21は、円筒部22cの内周面(開口22a)に沿って前後に移動可能であり、押しボタン21の前面の押圧部が指で押されると、押圧ロッド部21aが後方へ移動して後端面が押しボタンスイッチ11のアクチュエータに当たってスイッチをオンさせるように構成されている。なお、
図2には示されていないが、円筒部22cの内部には押しボタン21を前方へ付勢する圧縮コイルバネが内蔵される。また、押しボタン21は透光性を有する材料で形成されている。特に限定されるものでないが、押しボタン21の表面と発信機カバー20の表面は、同一平面をなすように配設されている。
【0022】
さらに、第1実施形態の発信機においては、導光板22A全体がアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂のような光透過性を有する導光材により形成されている。ここで、導光材とは、内部に光反射粒子が混入もしくは裏面に微細な溝が形成されることで、入射された光が表面と裏面で反射を繰り返して進み、途中で一部の光が光反射粒子または微細な溝に当たって方向を変えて表面側から放出されることで、全体が明るく発光する構造のものを意味する。なお、
図2において、符号Fは、発信機の取付け面であり、発信機カバー20の庇部22bの後端がこの取付け面と一致するようにして、発信機が建造物の壁や防災関連機器の機器収容箱の前面パネル等に取り付けられる。
【0023】
図2のような構造を有する発信機は、発光素子28から放出された光が、導光板22Aの円筒部22cの端面から入射して円筒部22cを進み、カバーの前面に到達すると外側へ反射され、発信機カバー20の前面全体が明るく発光する。また、円筒部22cを進んだ光の一部は内側へ反射されて、押しボタン21の鍔部から内部に入射し、前面より放出される。
その結果、
図3に示すように、導光板22Aの前面全体および押しボタン21の前面全体が発光することとなる。この際、押しボタン21の前面は導光板22Aの前面よりも少し暗くなる。なお、
図3においては、高い輝度の部分ほど黒く、低い輝度の部分ほど白く描いている。また、押しボタン21の表面には、印刷あるいは輝度の強弱で、「強く押す」なる文字が表示されるようになっている。さらに押しボタンの内部には光反射粒子を混入もしくは裏面に微細な溝を設けることでより光るようにしてもよい。
【0024】
本実施形態の発信機は、上述したように、発信機カバー20の前面全体が発光するので、カバーの径を大きくしなくても前面側からの視認性が良好となる。また、発信機カバー20の導光板22Aに入射した光は、外周部に設けられた庇部22bの表面すなわち発信機カバー20の外周面からも放出される。そのため、側方からの視認性も良好である。
なお、
図2の実施形態の発信機においては、押しボタン21はその表面が発信機カバー20の表面と同一平面をなすように配設されているが、押しボタン21の表面が発信機カバー20の表面よりも前方にはみ出していても良いし、導光板22Aの開口22aの背部に押しボタン21の縁部が位置することで、押しボタン21の一部のみが開口22aより臨むように配設されていても良い。
【0025】
(第2実施形態)
図4には、第2の実施形態の表示灯付発信機の内部構造の概略構成が示されている。
第2の実施形態の表示灯付発信機においては、
図4に示すように、発信機カバー20が導光板22Aとその前面側に接合されたカバー本体22Bとから構成されている。導光板22Aは第1の実施形態における発信機カバー20の庇部22bを省略したような形状をなし、カバー本体22Bは第1の実施形態における発信機カバー20の円筒部22cを省略したような形状をなしている。
【0026】
また、導光板22Aの円筒部22cの内径は、押しボタン21の押圧ロッド部21aが挿通可能な大きさに設定されている。カバー本体22Bおよび押しボタン21は透光性材料で形成されており、発光素子28からの光が導光板22Aにより誘導されてカバー本体22Bの裏面へ入射され全体から前方へ放出される。また、カバー本体22Bの裏面へ入射された光の一部が押しボタン21の周面より入射され、前方へ放出される。
さらに、導光板22Aの中央の開口の縁部には、傾斜角約45度をなすすり鉢状のテーパ面が形成されており、円筒部22cの後端から前方へ向けて入射した光を径方向外側へ向けて反射するように構成されている。
【0027】
(変形例)
図5には、第1および第2の実施形態の発信機の変形例が示されている。
図5に示す変形例は、発信機カバー20の後方に電話ジャックを設けるとともに、電話ジャックの前方の発信機カバー20の一部に、非透光材で形成された開閉扉25を設けたものである。内部構造は、
図2または
図4に示すものと同じである。
従って、この変形例の発信機にあっては、開閉扉25を除く発信機カバー20の全面および押しボタン21の前面全体が発光することとなる。このような構成であっても、従来の表示灯付きの発信機に比べて発光面積を大きくし、前方からの視認性を向上させることができる。
【0028】
(具体例)
図6には、第2実施形態の表示灯付発信機のより具体的な内部構造が示されている。
図6に示すように、発信機本体部10の収納ケース13は、押しボタン21側(図では左側)に開口を有し奥部(図では右側)に複数(例えば4個)の圧縮バネ15を収納するバネ受け部材16が設けられ、このバネ受け部材16の各バネ収納凹部に収納された圧縮バネ15の前方側を覆うように、前面視で円形をなすスライド部材17が設けられている。また、収納ケース13内には、送受話器のコード先端のプラグを差し込む電話ジャック12が設けられている。
【0029】
上記スライド部材17の中心部には、後方(図では右側)に向かって突出するボス部17aが形成されているとともに、上記バネ受け部材16の前面側の中心には上記ボス部17aが嵌合可能なガイド筒部16aが形成されており、スライド部材17はガイド筒部16aに案内されて前後方向に移動可能に構成されている。また、ガイド筒部16aの中央に、アクチュエータがボス部17aの端面に対向するように、押しボタンスイッチ11が実装された回路基板27Bが配設されている。
さらに、上記収納ケース13の前端には、発信機カバー20の背面に接合される円環状の鍔部13aが形成されている。また、発信機10は、取付け壁や取付けパネルに形成された開口に収納ケース13が挿入され、鍔部13aが取付け面に接合した状態でボルト等により固定されて取り付けられる。
【0030】
一方、発信機カバー20は、前面中央に透光材で形成された円形状の押しボタン21が設けられ、その周囲に、半ドーナツ状をなすつまり断面が半円形をなし前面視で円環状をなす放光部22が設けられ、放光部22の背面側に皿状の支持プレート23が設けられている。そして、この支持プレート23の中央にガイド筒部23aが形成されており、このガイド筒部23aには、円形状の押しボタン21の背面中心に後方(図では右側)に向かって突出するように形成された押圧ロッド部21aが嵌合されている。なお、図示しないが、押しボタン21は所定以上前方(図では左方)へ移動しないように構成されている。
【0031】
さらに、押圧ロッド部21aは、ガイド筒部23aを貫通し収納ケース13側へ突出し、その突出端部が発信機本体部10の収納ケース13内の前記スライド部材17の前面中央に当接するように構成されている。そして、押しボタン21を前方より後方へ押圧すると、発信機本体部10内の圧縮バネ15のバネ力に抗して押しボタン21が後方へ移動され、背面の押圧ロッド部21aが押しボタンスイッチ11のアクチュエータ部に当接してこれを押し込むことでスイッチ11がオン状態にされるように構成されている。
【0032】
また、発信機カバー20の放光部22は、発信機カバー20の内部に配設された光源としての発光素子(LED)からの光を誘導し前面へ放出させることで発光表示を行う表示灯として機能するように構成されている。
また、上記支持プレート23前面のガイド筒部23aの周囲にLED基板27Aが設置され、このLED基板27A上に複数の発光素子(LED)28が所定の間隔をおいて周方向に沿って並んで配設されている。発光素子28から前方へ放出された光は発信機カバー20の円環状をなす放光部22へ誘導され、反射を繰り返しながら放光部22の前面より放出され、全体が明るく光るように構成されている。上記発光素子28の発光色は、例えば従来の表示灯と同様な赤色とされる。
【0033】
また、発信機カバー20を構成する上記放光部22は、すり鉢状の傾斜部を中央側に有し、前方へ膨らむように湾曲した湾曲部を押しボタン21の周囲に有しており、
図7に示すように、LED基板27A上の複数の発光素子28に対向する端面を有する傾斜部が形成された導光板22Aと、該導光板22Aの表面を覆う光透過可能なカバー本体22Bとから構成されている。
導光板22Aは導光材で構成され、
図7に示すように、裏面に断面がV字状をなす複数の微細な溝22dが形成され、前記支持プレート23の平坦部の前面に接合されている。
【0034】
一方、押しボタン21には鍔部21bが設けられ、その鍔部21bが導光板22Aの光導入部すなわち発光素子28の前方位置まで延設されている。なお、導光板22Aの裏面に溝22dを形成する代わりに、導光板の内部に光反射粒子が混入するようにしても良い。また、押しボタン21の押圧ロッド部21aには前端側が閉塞され後端側が開口された空洞が形成されており、透明材で形成された押しボタン21を通して後方にある押しボタンスイッチ11が前方より透けて見えるようになっている。
なお、本実施形態の発信機においては、電話ジャック12の前方に開閉扉はなく、代わりに発信機カバー20全体が図示しないリンク機構等により開閉可能に構成されている。
【0035】
本実施形態の発信機においては、導光板22Aの内側の端面の光導入部22eより入射した光が、傾斜部により外側の平坦部へ導光されて表面に当たって方向を変え、一部は表面側へ放出されるとともに残りは表面と裏面で反射を繰り返して外縁部の方へ導光される。そして、その途中で溝22dに当たって方向を変え、カバー本体22Bを通過して前方へ放出される。
また、導光板22Aおよび支持プレート23の外縁部には庇部22b,23bが設けられている。これにより、導光板22Aの本体部分により導光された光の一部は庇部22bより側方へ放出されるため、発信機の側方の離れた位置から発信機カバー20の発光表示を視認することが容易になる。
【0036】
さらに、導光板22Aの表面に溝を設けて全面的に光を反射させる場合、断面がV字状をなす複数の溝を前面視で同心円あるいは格子状(メッシュ)をなすように形成、または多数のドット状の凹みを形成する。この際、光源(LED)がカバーの中心側に配設されているため、周縁部ほど到達する光の量が減少するので、中心からの距離が遠いほど溝や格子、ドットの深さを深くしたりピッチを狭くしたりすることで、カバー全体にほぼ均一に発光させるようにすることができる。
なお、例えばカバー本体22Bの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように、導光板22Aの表面の溝や格子、ドットの深さやピッチを設定しても良い。
【0037】
また、導光板22Aは、その裏面に光反射層を形成することで、導光板22Aの裏面側へ漏れる光の量を減らして放光部22より前方へ放出される光の量を多くしても良いが、支持プレート23の少なくとも前側表面を白色にすることで、導光板22Aの裏面から後方へ漏れた光を支持プレート23の表面で反射させて、導光板22Aへ戻すことによって、放光部22から放出される光の量が低下するのを防止するようにしても良い。また、導光板22Aは、一部に非透光材からなる部位を有していても良い。
【0038】
一方、カバー本体22Bは、シリコーン樹脂等の透光性を有し形状を保持可能な軟質材料で形成された保形部材と、該保形部材の表面を覆うように設けられた合成樹脂製シートやファブリック(布)のような柔軟性のある材料で形成された被覆部とから構成されている。そして、カバー本体22Bは、導光板22Aの外縁部の庇部22bを側部から背部まで覆うように形成されていても良い。
これにより、カバー本体22Bに外部から衝撃が加わったとしても保形部材が変形して衝撃を吸収し、表面の損傷を防止することができる。また、保形部材の表面が被覆部で覆われているため、導光板22Aにより導かれて来た光を拡散または透過させて前方へ放出することで、ぼんやりとした柔らかな質感を与えることができる。
【0039】
また、発信機カバー20の表面側が湾曲しているとともに、前述したように、カバー本体22Bの最も膨らんでいる部分が最も明るくなり、外側および内側へ向かうほど徐々に明るさが低下するように設定することによって、デザイン性を向上させ、発信機の設置環境である建物の内装との調和がとれ内装に馴染み易くすることができる。また、放光部22の外側ほど明るくなるように、導光板22Aの表面の溝や格子、ドットの深さやピッチを設定しても良い。これにより、放光部22すなわち表示灯の側方からの視認性を高めることができる。
【0040】
さらに、本実施形態の表示灯付発信機は、放光部22の前面が平坦に近い湾曲形状であるため、従来の砲弾型の表示灯に比べて前方への突出量がなく、備品を搬送する際に移動の障害となることがないという利点がある。
また、押しボタン21が透光材で形成されており、放光部22の導光板22Aの前面側が湾曲され、中央開口付近では開口部に向かって下り傾斜しているため、該傾斜部から放出(散乱)された光の一部が押しボタン21の表面に達して明るくするので、押しボタン21の表面と放光部22の表面の明度差が小さくなり、押しボタン21の視認性を良くすることができる。また、放光部22の中央側ほど明るくなるように、導光板22Aの表面の溝や格子、ドットの深さやピッチの形成態様を設定しても良い。これにより、押しボタン21の視認性を高めることができる。
【0041】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、押しボタン21を発信機カバー20の中心に配設しているが、例えば
図5に示す変形例の発信機のように開閉扉25を設ける場合などには、押しボタン21を中心からずれた位置に配設するようにしても良い。
また、上記実施形態では、
図2や
図4において発信機カバーを構成する導光板(22A)に、開口22aの縁部から後方へ向かって突出する円筒部22cを設け、円筒部22cの端面に対向するように、発光素子28を配設しているが、円筒部22cを省略して、開口22aの縁部の裏面に対向するように発光素子28を配設するように構成しても良い。
【0042】
さらに、上記実施形態では、本発明を、主として火災報知システムを構成する火災発信機に適用したものを説明したが、本発明は火災発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急報知用の発信機、トイレや浴室など設置される緊急呼出し用の発信機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 発信機本体部
11 押しボタンスイッチ
12 電話ジャック
13 収納ケース
15 圧縮バネ
16 バネ受け部材
17 スライド部材
20 発信機カバー(前面カバー)
21 押しボタン(保護板)
22 放光部
22A 導光板
22B カバー本体(カバー層)
22a 開口
22b 庇部
22c 円筒部
23 支持プレート
27 回路基板
28 発光素子(LED)