(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032313
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20240305BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240305BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B62D21/15 B
B62D25/20 F
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135900
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】磯村 かおり
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
【テーマコード(参考)】
3D203
3J066
【Fターム(参考)】
3D203BB04
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA04
3D203CA37
3D203CA40
3D203CB03
3J066AA23
3J066BA03
3J066BC03
3J066BD07
3J066BF02
(57)【要約】
【課題】エネルギーの吸収量の維持または向上を図りつつ、軽量化を図ることができる車両の下部構造を提供する。
【解決手段】車両下部構造11は、車幅方向に互いに離間し前後方向に延伸する中空の2つのロッカ12と、2つのロッカ12のそれぞれの内部に配置され複数のリブによって内部の空間が車幅方向に並ぶ複数の区画に分割されているエネルギー吸収部材13と、2つのロッカ12どうしの間に配置される平板状のフロアパネル14と、を備え、エネルギー吸収部材13の前後方向に直角な平面で切断した断面外形は、車幅方向中心側から車幅方向外側に向かって上下方向寸法が徐々に小さくなる略台形である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に離間して配置されるとともに前記第一方向とは直角な第二方向に延伸している互いに略平行な中空棒状の2つの第一部材と、
前記第二方向に延伸している中空棒状であり、内部の空間が、前記第二方向、および前記第一方向と前記第二方向とに直角な第三方向に平行な平板状の複数のリブによって前記第一方向に並ぶ複数の区画に分割されており、2つの前記第一部材のそれぞれの内部に配置されている第二部材と、
前記第一方向および前記第二方向に延伸する板状の構成を備えており、2つの前記第一部材のどうしの間に配置され、前記第一方向の両端部のそれぞれが2つの前記第一部材のそれぞれに接合される第三部材と、
を備え、
前記第二部材の前記第二方向に直角な平面で切断した断面外形は、前記第三部材に近い側から遠い側に向かうにしたがって前記第三方向の寸法が徐々に小さくなる略台形である、
車両下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両下部構造であって、
前記第二部材は、前記第二方向視において前記第三方向に関して対称の形状を備える、
車両下部構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両下部構造であって、
前記第一方向に延伸する棒状の構成を備え、前記第三部材の前記第三方向の一方に配置され、前記第三方向の一方の面が前記第三部材に接合され、前記第一方向の両端部のそれぞれが2つの前記第一部材のそれぞれに接合される第四部材を備え、
前記第一方向視において、2つの前記第一部材と前記第四部材とは少なくとも一部が互いに重畳している、
車両下部構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の車両下部構造であって、
前記第二部材は、
前記第二方向および前記第三方向に延伸する平板状に構成され、前記第一方向に互いに離間した第一板部および第二板部と、
前記第一板部の前記第三方向における一辺と前記第二板部の前記第三方向における一辺とを繋ぐように設けられる第三板部と、
前記第一板部の前記第三方向における他辺と前記第二板部の前記第三方向における他辺とを繋ぐように設けられる第四板部と、
を備え、
前記第一板部が前記第三部材に近接して設けられるとともに、前記第三方向視における前記第一板部の前記一辺の位置と前記第三部材の位置が略一致する、
車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される車両下部構造は、車両の側方部において前後方向に延伸する中空棒状のロッカと、車幅方向に沿って複数の空間部が設けられた衝撃吸収部材とを備え、衝撃吸収部材がロッカの内部においてロッカの車内側の面と車外側の面との間に掛け渡されるように配置される。特許文献1に記載の車両下部構造によれば、ロッカに対して車幅方向外側からエネルギー(荷重)が掛かった場合、衝撃吸収部材が車幅方向に圧縮変形することによってエネルギーを吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、燃費の向上などの観点から車両の軽量化が求められている。一方で、車両の強度(衝撃に対する耐性)の向上が求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、吸収できるエネルギーの量を維持または向上しつつ、軽量化を図ることができる車両の下部構造を提供することである。
【0006】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両下部構造は、
第一方向に離間して配置されるとともに前記第一方向とは直角な第二方向に延伸している互いに略平行な中空棒状の2つの第一部材と、
前記第二方向に延伸している中空棒状であり、内部の空間が、前記第二方向および、前記第一方向と前記第二方向とに直角な第三方向に平行な平板状の複数のリブによって前記第一方向に並ぶ複数の区画に分割されており、2つの前記第一部材のそれぞれの内部に配置されている第二部材と、
前記第一方向および前記第二方向に延伸する板状の構成を備えており、2つの前記第一部材のどうしの間に配置され、前記第一方向の両端部のそれぞれが2つの前記第一部材のそれぞれに接合される第三部材と、
を備え、
前記第二部材の前記第二方向に直角な平面で切断した断面外形は、前記第三部材に近い側から遠い側に向かうにしたがって前記第三方向の寸法が徐々に小さくなる略台形である。
第三方向の寸法が徐々に小さくなる略台形である。
【0007】
本発明によれば、第二部材の構成部分のうち、第三部材から遠い側の外表面を形成する部分の第三方向寸法を、第二部材の構成部分のうち第三部材に近い側の表面を形成する部分の第三方向寸法に比較して小さくできる。このため、第二部材の第三方向寸法が均一である構成に比較して、軽量化を図ることができる。なお、第二部材を第二方向に直角な平面で切断した断面外形が略台形であると、断面外形が長方形や正方形である構成に比較して、圧縮変形量を大きくできる。このため、エネルギーの吸収量を大きくできる。したがって、本発明によれば、第二部材によるエネルギーの吸収量の低下を防止または抑制しつつ、第二部材の軽量化を図ることができる。
【0008】
前記第二部材は、前記第二方向視において前記第三方向に関して対称の形状を備える、
という構成が適用できる。
【0009】
このような構成によれば、車幅方向外側から荷重が掛かった場合に、第二部材部材は、座屈的な変形をすることなく、車幅方向に圧縮変形することによりエネルギーを吸収することができる。このため、第二部材によるエネルギーの吸収量の低下を防止または抑制できる。
【0010】
前記第一方向に延伸する棒状の構成を備え、前記第三部材の前記第三方向の一方に配置され、前記第三方向の一方の面が前記第三部材に接合され、前記第一方向の両端部のそれぞれが2つの前記第一部材のそれぞれに接合される第四部材を備え、
前記第一方向視において、2つの前記第一部材と前記第四部材とは少なくとも一部が互いに重畳している、
という構成が適用できる。
【0011】
このような構成によれば、車幅方向外側から第一部材に掛かった荷重は、第一部材の内部に配設される第二部材を介して第三部材に接合されている第四部材に伝達される。したがって、車幅方向外側から荷重が掛かった場合に、第三部材の変形を防止または抑制できる。
【0012】
前記第二部材は、
前記第二方向および前記第三方向に延伸する平板状に構成され、前記第一方向に互いに離間した第一板部および第二板部と、
前記第一板部の前記第三方向における一辺と前記第二板部の前記第三方向における一辺とを繋ぐように設けられる第三板部と、
前記第一板部の前記第三方向における他辺と前記第二板部の前記第三方向における他辺とを繋ぐように設けられる第四板部と、
を備え、
前記第一板部が前記第三部材に近接して設けられるとともに、前記第三方向視における前記第一板部の前記一辺の位置と前記第三部材の位置が略一致する、
という構成が適用できる。
【0013】
このような構成によれば、車幅方向外側から第一部材に掛かった荷重は、第一部材の内部に配設される第二部材を介して第四部材に伝達される。したがって、車幅方向外側から荷重が掛かった場合に、第四部材の変形を防止または抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、車両の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、車両下部構造を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、車両下部構造を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、車両下部構造を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のエネルギー吸収部材が変形した状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は、エネルギー吸収部材とクロスメンバーとの位置関係を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、本発明の実施形態に係る車両下部構造を「下部構造」と略して記すことがある。また、以下の説明において、下部構造および下部構造が備える各部材について用いる各方向は、車両の方向を基準とする。各図においては、下部構造の前側を矢印Frで示し、後側を矢印Rrで示し、車幅方向右側を矢印Rで示し、車幅方向左側を矢印Lで示し、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示す。また、車幅方向外側を矢印Outで示し、車幅方向内側(中心側)を矢印Inで示すことがある。なお、左右方向(車幅方向)が本発明の第一方向の例であり、前後方向が本発明の第二方向の例であり、上下方向が本発明の第三方向の例である。
【0016】
図1は、車両10の構成を示す側面図であり、下部構造11の位置を示す図である。
図1に示すように、下部構造11は、車両10の下部であって車室の下方に設けられる。そして、下部構造11は、車室の床面を構成する。
【0017】
図2、
図3、および
図4は、下部構造11を模式的に示す図である。なお、
図2は下部構造11の全体を示す斜視図であり、
図3は
図2のIII部の拡大図であり、
図4は
図2のIV-IV矢視断面図である。これらの図に示すように、下部構造11は、2つのロッカ12と、2つのエネルギー吸収部材13と、フロアパネル14と、所定の数のクロスメンバー15とを備える。
【0018】
2つのロッカ12は、本発明の2つの第一部材の例である。2つのロッカ12は中空棒状の部材である。2つのロッカ12は、それらの長尺方向が前後方向に略平行な向きで、左右方向(車幅方向)に所定の距離をおいて互いに離間して配置される。なお、2つのロッカ12は、車両の下部(具体的には車室の下方)であって、車両の側面の近傍に設けられる。従って、2つのロッカ12は、車両10の側方部において前後方向に延伸するように構成される。各ロッカ12は、車幅方向内側に位置するロッカインナパネル16と、車幅方向外側に位置するロッカアウタパネル17とを備える。ロッカインナパネル16およびロッカアウタパネル17は、いずれも鋼板などにより成形される部材であり、前後方向に直角な平面で切断した断面外形(断面形状)が略ハット状の形状である。そして、ロッカインナパネル16とロッカアウタパネル17とが溶接などによって一体に接合されることにより、中空棒状のロッカ12が形成される。なお、ロッカインナパネル16の内周面とロッカアウタパネル17の内周面のうちの互いに車幅方向に対向する面は、いずれも上下方向および前後方向に平行であり、かつ互いに平行である(特に
図4参照)。
【0019】
エネルギー吸収部材13は、本発明の第二部材の例である。エネルギー吸収部材13は、2つのロッカ12のそれぞれの内部の空間に配置される。エネルギー吸収部材13は、内部に空間が設けられ前後方向に延伸する中空棒状の部材である。なお、エネルギー吸収部材13の長さは、ロッカ12の長さとほぼ同じである。すなわち、ロッカ12の内部の略全長にわたってエネルギー吸収部材13が存在する。エネルギー吸収部材13の前後方向に直角な平面で切断した断面外形(断面形状)は、車幅方向外側に向かって上下方向寸法が徐々に小さくなる略台形である。なお、本実施形態では、エネルギー吸収部材13の前後方向に直角な平面で切断した断面外形(断面形状)は略上下対称(前後方向および左右方向に平行な面に関して略面対称)である。エネルギー吸収部材13には、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる押し出し材が適用できる。
【0020】
エネルギー吸収部材13は、内側縦板部131、外側縦板部132、上側横板部133、下側横板部134、第一リブ部136、第二リブ部137、および第三リブ部138を備える。内側縦板部131は、エネルギー吸収部材13の車幅方向内側の面を形成する部分であり、略台形状の断面の下底を構成する部分である。外側縦板部132は、エネルギー吸収部材13の車幅方向外側の面を形成する部分であり、略台形状の断面の上底を構成する部分である。内側縦板部131および外側縦板部132は、前後方向および上下方向に延伸する平板状の構成を備える。内側縦板部131と外側縦板部132は、互いに平行であり、左右方向に所定の距離をおいて互いに離間している。なお、外側縦板部132の上下方向寸法は、内側縦板部131の上下方向寸法よりも小さい。
【0021】
上側横板部133はエネルギー吸収部材13の上面を形成する部分であり、下側横板部134はエネルギー吸収部材13の下面を形成する部分である。上側横板部133および下側横板部134は、略台形状の断面の対向する斜辺を構成する部分である。上側横板部133は、内側縦板部131の上辺と外側縦板部132の上辺とに跨るように(換言すると、内側縦板部131の上辺(上端)と外側縦板部132の上辺(上端)とを繋ぐように)設けられる平板状の部分である。上側横板部133は、前後方向に平行で、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって下り勾配となる態様で上下方向に対して傾斜している。下側横板部134は、内側縦板部131の下辺と外側縦板部132の下辺とに跨るように(換言すると、内側縦板部131の下辺(下端)と外側縦板部132の下辺(下端)とを繋ぐように)設けられる平板状の部分である。下側横板部134は、前後方向に平行で、車幅方向内側から車幅方向外側に向かって上り勾配となる態様で上下方向に対して傾斜している。このため、エネルギー吸収部材13は、車幅方向外側に向かうにしたがって上下方向寸法が小さくなる先細り形状(前後方向視において、下底が車幅方向内側に位置し、上底が車幅方向外側に位置する台形)を備える。
【0022】
そして、エネルギー吸収部材13の内部には、内側縦板部131と、外側縦板部132と、上側横板部133と、下側横板部134とに囲まれる空間(内部空間135)が設けられる。この内部空間135には、第一リブ部136、第二リブ部137、および第三リブ部138が設けられる。
【0023】
第一リブ部136、第二リブ部137、および第三リブ部138は、本発明の複数のリブの例である。以下、第一リブ部136、第二リブ部137、および第三リブ部138を、「リブ部136,137,138」と総称することがある。リブ部136,137,138は、内側縦板部131および外側縦板部132と同様に、前後方向および上下方向に延伸する平板状の構成を備える。リブ部136,137,138は互いに平行であるとともに、内側縦板部131および外側縦板部132に対しても平行である。そして、リブ部136,137,138は、左右方向に所定の距離をおいて互いに離間して設けられる。本実施形態では、内側縦板部131に近い側から、第一リブ部136、第二リブ部137、第三リブ部138の順に設けられる。リブ部136,137,138の上辺(上端)は上側横板部133に一体的に繋がっており、リブ部136,137,138の下辺(下端)は下側横板部134に一体的に繋がっている。そして、エネルギー吸収部材13の内部の空間は、リブ部136,137,138によって左右方向に並ぶ複数の区画(本実施形態では4つの区画)に分けられる。
【0024】
そして、エネルギー吸収部材13の内側縦板部131の車内側の面がロッカ12のロッカインナパネル16の内周面(車外側の面)に接合され、エネルギー吸収部材13の外側縦板部132の車外側の面がロッカ12のロッカアウタパネル17の内周面(車内側の面)に接合される。なお、接合方法は特に限定されないが、例えば接着剤による接合が適用できる。また、前記のとおり、ロッカインナパネル16の内周面とロッカアウタパネル17の内周面のうちの互いに対向する面は、いずれも上下方向および前後方向に平行であり、かつ互いに平行である。このため、エネルギー吸収部材13は、その内側縦板部131および外側縦板部132が前後方向および上下方向に平行な向きで、ロッカ12の内周面に密着するように接合できる。
【0025】
フロアパネル14は、本発明の第三部材の例である。フロアパネル14は上下方向視において略四辺形の平板状の部材であり、車両10の車室の床を形成する(床板の構成部材である、ということもできる)。フロアパネル14は、例えば鋼板により成形される。フロアパネル14の車幅方向の外周部は、左右のロッカ12の車幅方向内側の面に接合されている。例えば、フロアパネル14は、略平板状の本体部141と、本体部141の車幅方向外側の縁部に設けられるリブ状部142とを備える。リブ状部142は、上側に向かって略直角に曲げ起こされたリブ状の部分である。そして、このリブ状部142がロッカ12の車幅方向内側の面に溶接などによって接合される。
【0026】
クロスメンバー15は、本発明の第四部材の例である。クロスメンバー15は、例えば鋼板により成形される。クロスメンバー15は、長尺棒状の部材であり、それらの長尺方向が車幅方向に略平行な向きで、フロアパネル14の上面に配置される。クロスメンバー15の下端部がフロアパネル14の上面に溶接などによって接合されるとともに、長尺方向の両端部(車幅方向の端部)は、左右のロッカ12の車幅方向の内側の面に溶接などによって接合される。
【0027】
本実施形態によれば、上側横板部133と下側横板部134とが略平行である従来の構成に比較して、エネルギー吸収部材13によるエネルギーの吸収量の維持または向上を図りつつ、エネルギー吸収部材13の軽量化を図ることができる。
【0028】
図5は、本実施形態のエネルギー吸収部材13に車幅方向外側から荷重が掛かった場合(すなわち圧縮荷重)の変形状態を示す模式図である。
図5に示すように、エネルギー吸収部材13に車幅方向外側から車幅方向内側に向かって荷重が掛かった場合、上側横板部133および下側横板部134のうちの外側縦板部132と第三リブ部138との間の部分と、上側横板部133および下側横板部134のうちの第二リブ部137と第一リブ部136との間の部分とは、それぞれ上下方向外側に(区画の外側に)膨出するように変形する。一方、上側横板部133および下側横板部134のうちの第三リブ部138と第二リブ部137との間の部分と、上側横板部133および下側横板部134のうちの第一リブ部136と内側縦板部131との間の部分とは、それぞれ上下方向内側に(区画の内側に)入り込むように変形する。
【0029】
このとき、エネルギー吸収部材13は車幅方向外側に向かうにしたがって上下方向寸法が小さくなる先細り形状であるため、変形した部分どうしが上下方向にずれる。このため、エネルギー吸収部材13が略正方形または略長方形である場合に比べ、エネルギー吸収部材13が圧縮変形する際に、変形した部分どうしの干渉が少なくなる。また、リブ部136,137,138と上側横板部133との接合箇所、およびリブ部136,137,138と下側横板部134との接合箇所も、上下方向に互いにずれる。これらの接合箇所は、他の部分に比較して変形し難いため、これらの接合箇所の上下方向位置が同じであると、エネルギー吸収部材13が圧縮変形した際にこれらの接合箇所が車幅方向に並ぶ(重畳する)ことによって、圧縮変形し難くなり、その結果吸収できるエネルギー量が減少する。これに対して、本実施形態によれば、これらの接合箇所が上下方向に互いにずれているため、エネルギー吸収部材13が圧縮変形した際に、接合箇所どうしが干渉しないようにできる。したがって、圧縮変形量を大きくできるから、エネルギー吸収量を大きくできる。
【0030】
また、本実施形態によれば、エネルギー吸収部材13は、車幅方向外側に向かうにしたがって上下方向寸法が小さくなる先細り形状を備えるため、上側横板部と下側横板部とが略平行である従来構成に比較して、上下方向の最大寸法が同じである場合、外側縦板部およびリブ部の上下方向寸法を小さくできる。このため、上側横板部と下側横板部とが略平行である従来構成に比較してエネルギー吸収部材13の軽量化を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、従来構成と比較して、エネルギー吸収部材13によるエネルギーの吸収量の維持または向上を図りつつ、エネルギー吸収部材13の軽量化を図ることができる。このため、下部構造11によるエネルギーの吸収量の維持または向上を図りつつ、軽量化を図ることができる。さらに、本実施形態によれば、従来構成に比較して小型化を図ることができるため、ロッカ12の内部への配置が容易となる。
【0032】
図6は、エネルギー吸収部材13とフロアパネル14とクロスメンバー15との位置関係を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、フロアパネル14の本体部141は、上下方向に関しては、エネルギー吸収部材13の内側縦板部131の上辺と下辺との間に位置する。本実施形態では、フロアパネル14の下面の上下方向位置がエネルギー吸収部材13の内側縦板部131の下辺の上下方向位置と略同じである構成を示す。また、エネルギー吸収部材13とクロスメンバー15とは、車幅方向視において互いに重畳する部分を備える。具体的には、本実施形態においては、
図6に示すようにクロスメンバー15の上下方向寸法はエネルギー吸収部材13の上下方向寸法より大きく、さらにフロアパネル14の上下方向位置がエネルギー吸収部材13の内側縦板部131の下辺と略同じ位置であるので、フロアパネル14の上面に配置されるクロスメンバー15の下方部分は、車幅方向視においてエネルギー吸収部材13と重畳する。
【0033】
このような構成によれば、下部構造11の剛性の向上(荷重に対する耐性)の向上を図ることができる。すなわち、ロッカ12の車幅方向外側から車幅方向内側に向かって荷重が掛かった場合、当該荷重はロッカ12およびエネルギー吸収部材13を介してフロアパネル14およびクロスメンバー15に伝達される。本実施形態においては、エネルギー吸収部材13とフロアパネル14およびクロスメンバー15とが上下方向に関して重畳している(少なくとも重畳する部分を備える)ため、エネルギー吸収部材13に伝達された荷重は、直接的にフロアパネル14およびクロスメンバー15に伝達される。このため、フロアパネル14およびクロスメンバー15によって、エネルギー吸収部材13が車内側に入り込むように変形することが防止または抑制される。したがって、下部構造11の剛性の向上を図ることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
10…車両、11…車両下部構造、12…ロッカ、13…エネルギー吸収部材、14…フロアパネル、15…クロスメンバー、131…エネルギー吸収部材の内側縦板部、132…エネルギー吸収部材の外側縦板部、133…エネルギー吸収部材の上側横板部、134…エネルギー吸収部材の下側横板部、135…エネルギー吸収部材の内部空間、136…エネルギー吸収部材の第一リブ部、137…エネルギー吸収部材の第二リブ部、138…エネルギー吸収部材の第三リブ部