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  • 特開-炉および燃焼方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032315
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】炉および燃焼方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/00 20060101AFI20240305BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20240305BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20240305BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F23C1/00 301
F23N5/24 Z
F23N5/00 N
F23N1/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135903
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】川崎 祐司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏行
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 孝一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏祐
(72)【発明者】
【氏名】藪本 博俊
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健
【テーマコード(参考)】
3K003
3K068
3K091
【Fターム(参考)】
3K003EA08
3K003FB10
3K003GA03
3K003PA05
3K003PA10
3K003PB08
3K068FA01
3K068FA04
3K068FC02
3K068HA03
3K091AA20
3K091BB05
3K091BB26
3K091CC06
3K091CC23
3K091DD01
(57)【要約】
【課題】爆発下限が低い燃料ガスを使用する炉において、炉内に未燃焼の燃料ガスが滞留することを防止または抑制する。
【解決手段】炉10は、内部上端が閉塞しているドーム状の炉室111と、第一燃料ガスを燃焼させることにより炉室111内の対象物を加熱するように構成される第一バーナー13と、炉室111の内周面の上端部に配置され、第一燃料ガスよりも爆発下限が高い第二燃料ガスを燃焼させる第二バーナー14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部上端が閉塞しているドーム状の炉室と、
所定の爆発下限を有し空気よりも比重が小さい第一燃料ガスを燃焼させることにより炉室内の対象物を加熱するように構成される第一バーナーと、
前記炉室の内周面の上端部に配置され、前記第一燃料ガスよりも爆発下限が高い第二燃料ガスを燃焼させる第二バーナーと、
を備える、
炉。
【請求項2】
請求項1に記載の炉であって、
前記第一燃料ガスは水素であり、
前記第二燃料ガスは都市ガスである、
炉。
【請求項3】
内部上端が閉塞しているドーム状の炉室と、
所定の爆発下限を有し空気よりも比重が小さい第一燃料ガスを燃焼させることにより炉室内の対象物を加熱するように構成される第一バーナーと、
前記炉室の内周面の上端部に配置され、前記第一燃料ガスよりも爆発下限が高い第二燃料ガスを燃焼させる第二バーナーと、
を備える炉を用いた燃焼方法であって、
前記第一バーナーにより前記第一燃料ガスの燃焼を継続している間、前記第二バーナーによる第二燃料ガスの燃焼を継続し、
前記第一バーナーによる前記第一燃料ガスの燃焼を終了してから所定の時間が経過するまでは前記第二バーナーによる前記第二燃料ガスの燃焼を継続する、
燃焼方法。
【請求項4】
請求項3に記載の燃焼方法であって、
前記第一バーナーにより前記第一燃料ガスの燃焼を開始するよりも所定の時間前に前記第二バーナーによる第二燃料ガスの燃焼を開始する、
燃焼方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の方法であって、
前記第一燃料ガスは水素であり、
前記第二燃料ガスは都市ガスである、
燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉および燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料ガスと支燃性ガスとが供給されたバーナーによって燃料を燃焼し、燃焼により生じた燃焼ガスにより金属を溶解させる溶解炉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2001-116468号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
このような炉において、バーナーの着火不良や失火(立ち消え)などが生じると、炉室内に燃料ガスが滞留することがある。そして、炉室内の燃料ガスの濃度が高くなると、不測の燃料ガスの爆発が生じるおそれがある。特に、燃料として水素のような爆発下限が低いガスが適用されると、不測の爆発が生じるおそれが高くなる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の一つは、炉室内に滞留した未燃焼の燃料ガスの不測の爆発を防止または抑制することである。
【0006】
(課題を解決するための手段)
上記目的を達成するため、本発明に係る炉は、
内部上端が閉塞しているドーム状の炉室と、
所定の爆発下限を有し空気よりも比重が小さい第一燃料ガスを燃焼させることにより炉室内の対象物を加熱するように構成される第一バーナーと、
前記炉室の内周面の上端部に配置され、前記第一燃料ガスよりも爆発下限が高い第二燃料ガスを燃焼させる第二バーナーと、
を備える。
【0007】
本発明によれば、第一バーナーの失火(立ち消え)などによって第一バーナーから第一燃料ガスが炉室内に流入した場合、第二バーナーによって当該流入した第一燃料ガスを燃焼させることができる。したがって、第一燃料ガスが炉室内に滞留することを防止または抑制できるから、第一燃料ガスの不測の爆発を防止または抑制できる。
【0008】
前記第一燃料ガスは水素であり、
前記第二燃料ガスは都市ガスである、
という構成が適用できる。
【0009】
第一燃料ガスに水素が適用される構成によれば、燃焼時にCOが発生しないから、COの排出量の削減に資する。また、第二燃料ガスに都市ガスが適用される構成であれば、都市ガス供給のための既存の設備を使用できるため、設備費の上昇を抑制できる。
【0010】
本発明に係る燃焼方法は、
内部上端が閉塞しているドーム状の炉室と、
所定の爆発下限を有し空気よりも比重が小さい第一燃料ガスを燃焼させることにより炉室内の対象物を加熱するように構成される第一バーナーと、
前記炉室の内周面の上端部に配置され、前記第一燃料ガスよりも爆発下限が高い第二燃料ガスを燃焼させる第二バーナーと、
を備える炉を用いた燃焼方法であって、
前記第一バーナーにより前記第一燃料ガスの燃焼を継続している間、前記第二バーナーによる第二燃料ガスの燃焼を継続し、
前記第一バーナーによる前記第一燃料ガスの燃焼を終了してから所定の時間が経過するまでは前記第二バーナーによる前記第二燃料ガスの燃焼を継続する。
【0011】
本発明に係る燃焼方法によれば、第一バーナーの燃焼中に失火(立ち消え)したために第一燃料ガスが炉室内に流入した場合や、第一バーナーの消火後に第一燃料ガスの供給経路に残った第一燃料ガスが炉室内に流入した場合などに、第二バーナーによって当該流入した第一燃料ガスを燃焼させることができる。このため、第一燃料ガスが炉室内に滞留することを防止または抑制できるから、不測の爆発を防止または抑制できる。
【0012】
前記第一バーナーにより前記第一燃料ガスの燃焼を開始するよりも所定の時間前に前記第二バーナーによる第二燃料ガスの燃焼を開始する、
という構成が適用できる。
【0013】
このような構成によれば、第一バーナーによる燃焼の開始前に第一燃料ガスが炉室内に流入した場合に、第一燃料ガスが炉室内に滞留することを防止または抑制できる。このため、不測の爆発を防止または抑制できる。
【0014】
前記第一燃料ガスは水素であり、
前記第二燃料ガスは都市ガスである、
という構成が適用できる。
【0015】
第一燃料ガスに水素が適用される構成によれば、燃焼時にCOが発生しないから、COの排出量の削減に資する。また、第二燃料ガスに都市ガスが適用される構成であれば、都市ガス供給のための既存の設備を使用できるため、設備費の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、炉の構成を示す模式図である。
図2図2は、炉を用いた燃焼方法を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る炉について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る炉を示す模式図である。本実施形態では、炉の例として、アルミニウムなどの溶解に用いられる溶解炉を示す。ただし、本発明に係る炉は溶解炉に限定されるものではなく、熱処理炉などの加熱炉にも適用可能である。
【0018】
(炉の構成)
本実施形態に係る炉10は、保持部11と溶解部12とを備える。保持部11は、後述する第一バーナー13および第二バーナー14において発生させた燃焼ガスによって、溶解した金属(以下、湯と記すことがある)を所定の温度の液体の状態に保持するための部分である。保持部11の内部空間が本発明の炉室111の例である。炉室111は内部上端が閉塞しているドーム状の構成を備える。このため、炉室111の内部に空気よりも比重が小さい気体が流入すると、当該流入した気体は炉室111の上部に滞留する。炉室111の下部には、湯溜部15および出湯口部16が設けられる。湯溜部15は、湯を溜めておくことができるように構成される。出湯口部16は、湯溜部15と炉10の外部とを連通する開口部である。炉10の使用者等は、湯溜部15に溜まった湯を出湯口部16から取り出すことができる。溶解部12は、炉室111から流入した燃焼ガスによって溶解対象金属を溶解させるための部分であり、上下方向に延伸し上端部が開口する筒状の構成を備える。溶解部12は、その下部において保持部11と気体および液体が流通可能に連通している。溶解部12の底面は、湯が湯溜部15に流れるように、湯溜部15の側に向かって下り勾配となる傾斜面が設けられている。
【0019】
保持部11には第一バーナー13および第二バーナー14が設けられる。
【0020】
第一バーナー13は、溶解対象金属を溶解させるための火炎および燃焼ガスを発生させるためのバーナーである。第一バーナー13は、炉10の外部から供給された第一燃料ガスを、炉10の外部から供給された燃焼用空気と混合して燃焼させることにより、炉室111内において火炎を成形するとともに、炉室111の内部に高温の燃焼ガス(第一燃料ガスを燃焼させることにより発生したガス)を供給する。具体的には、図1に示すように、第一バーナー13は、第一燃料ガス経路20を介して炉10の外部に設置されている第一燃料ガス供給源21に接続されているとともに、燃焼用空気経路22を介して炉10の外部に設置されている燃焼用空気供給源23に接続されている。
【0021】
第一燃料ガスには、空気よりも比重が小さく、かつ、後述する第二燃料ガスよりも爆発下限(燃焼下限)が低い可燃性のガスが適用される。本実施形態では、第一燃料ガスに水素ガスが適用され、第一燃料ガス供給源21に水素ボンベが適用される。また、燃焼用空気には外気が適用され、燃焼用空気供給源23には外気を取り込むことができるように構成されるブロアが適用される。また、第一燃料ガス経路20には第一燃料ガスバルブ24が設けられ、燃焼用空気経路22には第一燃焼用空気バルブ25が設けられる。そして、第一燃料ガスバルブ24と第一燃焼用空気バルブ25とによって、第一燃料ガスと燃焼用空気との流量(第一バーナー13への供給量)を調整できる。
【0022】
なお、第一バーナー13の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。本実施形態では、第一バーナー13として、従来公知の水素ガスバーナーが適用できる。また、図1においては、1基の第一バーナー13が配置される構成を示すが、配置される第一バーナー13の数は特に限定されない。また、第一燃料ガスバルブ24および第一燃焼用空気バルブ25の構成も特に限定されるものではなく、ニードルバルブやバタフライバルブなど、従来公知の各種のバルブが適用できる。
【0023】
また、第一燃料ガス経路20の第一燃料ガスバルブ24と第一バーナー13との間にパージガスを供給できるように、第一燃料ガス経路20の第一燃料ガスバルブ24と第一バーナー13との間の部分は、パージガス経路26によって炉10の外部のパージガス供給源27に接続されている。本実施形態では、パージガスとして窒素ガスが適用され、パージガス供給源27として窒素ボンベが適用される。このような構成によれば、第一燃料ガスバルブ24が閉じているときに第一燃料ガス経路20にパージガスを供給することにより、第一燃料ガス経路20の第一バーナー13との第一燃料ガスバルブ24と間に滞留する第一燃料ガスを、第一バーナー13を通じて排出できる。
【0024】
第二バーナー14は、炉室111の内部に未燃焼の第一燃料ガスが存在するときに、当該未燃焼の第一燃料ガスを燃焼させるためのバーナーである。第二バーナー14は、炉10の外部から供給された第二燃料ガスを、炉10の外部から供給された燃焼用空気を用いて燃焼させることにより、炉室111の内部において火炎を成形する。具体的には、第二バーナー14は、第二燃料ガス経路29を介して炉10の外部に設置されている第二燃料ガス供給源30に接続されているとともに、燃焼用空気経路22を介して第二バーナー14と共通の燃焼用空気供給源23に接続されている。
【0025】
本実施形態では、第二燃料ガスには都市ガス(13A)が適用され、第二燃料ガス供給源30には商用の都市ガスの供給設備(ガスの配管など)が適用される。また、第二燃料ガス経路29には第二燃料ガスバルブ31が設けられ、燃焼用空気経路22には第二燃焼用空気バルブ32が設けられる。そして、第二燃料ガスバルブ31と第二燃焼用空気バルブ32とによって、第二燃料ガスと燃焼用空気との流量(第二バーナー14への供給量)を調整できる。
【0026】
なお、燃焼用空気経路22は中間において分岐しており、分岐する一方の経路が第一バーナー13に接続され、他方の経路が第二バーナー14に接続される。そして、分岐する前記一方の経路に第一燃焼用空気バルブ25が設けられ、他方の経路に第二燃焼用空気バルブ32が設けられる。また、第二燃料ガスバルブ31および第二燃焼用空気バルブ32の構成も特に限定されるものではなく、ニードルバルブやバタフライバルブなど、従来公知の各種のバルブが適用できる。
【0027】
第二バーナー14の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。本実施形態では、第二バーナー14として、従来公知の都市ガス用のバーナーが適用できる。ただし、前記のとおり、第二バーナー14は未燃焼の第一燃料ガスが炉室111内に存在する場合に当該未燃焼の第一燃料ガスを燃焼させるためのバーナーである。このため、第二バーナー14は、第一バーナー13に比較して小型でよい。例えば、第二バーナー14は、溶解対象金属の溶解に必要な熱量を有する燃焼ガスを発生させることができなくてもよい。このため、第二バーナー14における第二燃料ガスの燃焼による単位時間当たりの熱量は、第一バーナー13における第一燃料ガスの燃焼による単位時間当たりの熱量よりも少なくて良い。要は、第二バーナー14により成形される火炎は、未燃焼の第一燃料ガスを燃焼させる(未燃焼の第一燃料ガスに着火できる)程度の大きさでよい。そして、第二燃料ガスに都市ガスが適用される構成であれば、都市ガス供給のための既存の設備を使用できるため、設備費の上昇を抑制できる。
【0028】
また、前記のとおり、第一燃料ガスには空気よりも比重が小さいガスが適用される。このため、第二バーナー14が成形する火炎によって炉室111の内部であって上端部近傍に存在する第一燃料ガスを確実に燃焼できるように、第二バーナー14は炉室111の上端部またはその近傍に配置される。好ましくは、第二バーナー14は、炉室111の内周面の最も高い位置に設けられる。例えば、第二バーナー14は、炉室111の天井面112の直下において火炎を成形できるように、炉室111の天井面112に配置される。なお、第一バーナー13の設置位置は、炉室111内に燃焼ガスを発生することができる位置であれば特に限定されないが、本実施形態においては、第一バーナー13は、第二バーナー14とともに天井面112に配置される。
【0029】
(燃焼方法)
次に、炉10を用いた燃焼方法について説明する。炉10を用いて溶解対象金属を溶解する際には、第一バーナー13および第二バーナー14を点火する。炉室111は上側が閉塞しているため、第一バーナー13および第二バーナー14において発生した燃焼ガスは炉室111の内部を下方に向かって流れ、溶解部12の下端部に流入する。溶解部12は上端側が開口しているため、溶解部12に流入した燃焼ガスは溶解部12を上昇して上端部から炉10の外部に排出される。
【0030】
溶解部12の上端側から投入された溶解対象金属は、溶解部12の下端部において、保持部11から流入する燃焼ガスによって加熱されることにより溶解する。そして、溶解した金属(湯)は、溶解部12から湯溜部15に向かって流れ、湯溜部15に溜まる。湯溜部15に溜まった湯は、第一バーナー13および第二バーナー14において発生した燃焼ガスによって、所定の温度、かつ溶解している状態に保持される。このため、使用者等は、出湯口部16から湯を取り出すことができる。
【0031】
本実施形態では、溶解対象金属を溶解させるための燃料ガスである第一燃料ガスに、水素ガス(気体の水素)が適用される。水素ガスは燃焼しても二酸化炭素を生じないため、第一燃料ガスに水素を適用することにより、COの排出量の削減に資する。一方で、水素ガスの爆発下限(燃焼下限)は4.0体積%であるため、低濃度でも爆発する。このため、保持部11の炉室111内に未燃の水素ガスが滞留すると、不測の爆発を生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、第二バーナー14で第二燃料ガスを燃焼させることにより(換言すると、第二バーナー14により成形される火炎により)、炉室111の内部に存在する未燃焼の水素ガスを燃焼させる。これにより、炉室111の内部に未燃焼の水素ガスが滞留することを防止または抑制できるから、未燃焼の水素ガスの不測の爆発を防止または抑制できる。
【0032】
本実施形態では、第二燃料ガスには都市ガスが適用される。都市ガス(13A)はメタンを主成分とするガスであり、その爆発下限は5.0体積%である。このように、第二燃料ガスには、第一燃料ガスよりも爆発下限が高いガスが適用される。このような構成によれば、第二燃料ガスが炉室111の内部に滞留した場合であっても第二燃料ガスの不測の爆発を防止または抑制できる。
【0033】
次に、第一バーナー13と第二バーナー14の動作について説明する。図2は、第一バーナー13および第二バーナー14の動作を示すタイムチャートである。
【0034】
時点tは、第二バーナー14による燃焼開始の時点(換言すると、第二バーナー14への第二燃料ガスおよび燃焼用空気の供給の開始および点火の時点)である。時点tは、第一バーナー13による燃焼開始の時点(換言すると、第一バーナー13への第一燃料ガスおよび燃焼用空気の供給の開始および点火の時点)である。時点tは時点tよりも所定の時間前の時点である。換言すると、第一バーナー13による燃焼が開始されるよりも前に第二バーナー14による燃焼が時点t1にて開始され、時点tから所定の時間が経過した時点tで第二バーナー14による燃焼が開始する(第一バーナー13への第一燃料ガスおよび燃焼用空気の供給を開始する)。
【0035】
このような構成によれば、例えば第一燃料ガスバルブ24の不調などによって第一バーナー13による燃焼の開始前に第一燃料ガスが第一バーナー13を通じて炉室111内に流入しても、あらかじめ第二バーナー14による燃焼を開始しておくことにより、未燃焼の第一燃料ガスを燃焼させることができる。したがって、例えば、時点t(第一バーナー13の点火時)において第一燃料ガスの不測の爆発が生じることを防止または抑制できる。なお、この所定の時間(時点tと時点tの間の時間)は特に限定されないが、例えば、1分が適用できる。
【0036】
また、第二バーナー14による第二燃料ガスの燃焼は、第一バーナー13による燃焼が開始される時点tの後においても継続する(換言すると、第二バーナー14への第二燃料ガスおよび燃焼用空気の供給を継続する)。従って、時点t以降、後述する時点tまでは、第一バーナー13による燃焼と第二バーナー14による燃焼が同時に行われる。
【0037】
例えば、第一バーナー13による燃焼開始時(時点t)における第一バーナー13の着火不良、第一バーナー13による燃焼開始後における失火(立ち消え)、第一バーナー13による第一燃料ガスの燃焼不良などによって、時点tの後において、第一バーナー13を通じて第一燃料ガスが炉室111内に流入することがある。このため、このような場合には、第一燃料ガスの不測の爆発が生じるおそれがある。そこで、時点tの後(すなわち、第一バーナー13の燃焼開始後)においても、第二バーナー14による第二燃料ガスの燃焼が継続されることにより、前記のような場合であっても第一燃料ガスの炉内への滞留を防止または抑制できるから、第一燃料ガスの不測の爆発を防止または抑制できる。
【0038】
時点tは、第一バーナー13による燃焼の停止の時点である(換言すると、消火の時点、または、第一バーナー13への第一燃料ガスおよび燃焼用空気の供給の停止の時点である)。時点tは、第二バーナー14による燃焼の停止の時点である(換言すると、消火の時点、または、第二バーナー14への第二燃料ガスおよび燃焼用空気の供給の停止の時点である)。第一バーナー13による燃焼が停止された後には、第一燃料ガス経路20の第一燃料ガスバルブ24と第一バーナー13との間に滞留している第一燃料ガスが、第一バーナー13を通じて炉室111内に流入することがある。
【0039】
そこで、図2に示すように、第一バーナー13による燃焼の停止の時点tから所定の時間が経過する時点tまでは、第二バーナー14による燃焼を継続する。これにより、第一燃料ガス経路20から炉室111内に流入した第一燃料ガスを燃焼させることができる。したがって、炉室111内に第一燃料ガスが滞留することを防止または抑制できるから、第一燃料ガスの不測の爆発を防止または抑制できる。時点tと時点tとの間の長さは特に限定されないが、例えば1分が適用できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0041】
例えば、前記実施形態では、炉として溶解炉を示したが、本発明の炉は溶解炉に限定されるものではない。本発明は、熱処理炉などの加熱炉にも適用可能である。要は、本発明は、燃料ガスを燃焼させることにより対象物を加熱する炉であれば適用可能である。
【0042】
また、前記実施形態では、第一燃料ガスとして水素が適用され、第二燃料ガスとして都市ガス(13A)が適用される構成を示したが、本発明における第一燃料ガスおよび第二燃料ガスは前記実施形態に限定されるものではない。例えば、第一燃料ガスにアンモニアガスが適用され、第二燃料ガスに液化石油ガス(プロパンガス)が適用されてもよい。要は、第二燃料ガスは、第一燃料ガスよりも爆発下限が高いガスであればよい。このような構成によれば、第一燃料ガスの滞留による不測の爆発を防止または抑制できる。また、第二燃料ガスが滞留した場合であっても、不測の爆発を防止または抑制できる。
【符号の説明】
【0043】
10…炉、11…保持部、111…炉室、112…炉室天井面、12…溶解部、13…第一バーナー、14…第二バーナー
図1
図2