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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032324
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】モノリシック水晶フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/56 20060101AFI20240305BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H03H9/56 C
H03H9/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135920
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA02
5J108AA07
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG16
5J108HH04
5J108KK05
(57)【要約】
【課題】 橋絡容量によるフィルタ特性調整を安定化させることのできるモノリシック水晶フィルタを提供する。
【解決手段】モノリシック水晶フィルタFは、全体として直方体形状で、上部が開口した凹部を有するパッケージ1と、前記パッケージ1の凹部内に収納される水晶振動板2と、パッケージ1の開口部に接合されるリッド3とからなる。一方の主面に入力電極21、出力電極22が形成され、他方の主面に共通電極23および橋絡容量Cが形成された水晶振動板2が、パッケージに導電接合され、橋絡容量Cの下方には接地電極パッド12dが形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に入力電極と出力電極を形成し、他方の主面に前記入力電極と前記出力電極に対応した共通電極を形成するとともに、前記入力電極と前記出力電極の各々と独立して電気的につながった接続電極を有する水晶振動板と、
前記水晶振動板を保持し、前記各接続電極と導電接合される接続電極パッドと、接地される接地電極パッドとを有するパッケージと、
を有するモノリシック水晶フィルタであって、
前記入力電極と前記出力電極の各々とつながる前記接続電極から各延出電極を水晶振動板の外周領域に引出し、これら各延出電極を前記外周領域で近接させることにより橋絡容量を形成し、前記橋絡容量の下方には接地電極が配置されていること特徴とするモノリシック水晶フィルタ。
【請求項2】
前記水晶振動板は平面視矩形であり、前記橋絡容量は前記水晶振動板の角部に形成されていることを特徴とする請求項1記載のモノリシック水晶フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信機器等に用いられるモノリシック水晶フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信機器は例えば業務用の無線機等があげられるが、その用途、仕様によって、様々なフィルタ特性のモノリシック水晶フィルタが求められる。例えば、小型化であったり、スプリアスの抑制であったり、保証減衰特性が比較的急峻であったり、通過帯域幅の広狭等の要請等があるが、これらフィルタ特性についても外部要因等に影響されない安定性等の信頼性も求められている。
【0003】
水晶フィルタにおいては、水晶振動板に形成される電極設計(金属薄膜形成)により、各種スプリアスの抑制等、フィルタ特性を向上させる工夫が多くなされているが、小型化が進むとこの電極設計が困難になるとともに、各電極間の周波数バランスや周波数帯域特性の調整を、限られた狭い領域で行わざるを得なくなっていた。
【0004】
例えば、モノリシック水晶フィルタの入力電極、出力電極間の調整領域(水晶素地が露出しているギャップ領域)が狭くなり、保証減衰量の低下を引き起こす場合が有る。
【0005】
このような問題を解決するために、各々の分割電極につながる配線パターンを水晶振動板上の別の領域で近接させ、橋絡容量部を形成することにより、上記調整の幅を拡げるとともに、電極間の短絡問題や保証減衰量の低下を解決する提案が本出願人からなされている。特許文献1参照。
【0006】
この提案においては、水晶振動板裏面の入力電極と出力電極の各引出電極を表面に導出し、前記表面において各引出電極を近接させた構成をとっている。この近接距離を変化させる等により橋絡容量を調整することができる。特許文献1の図3に示すように、この橋絡容量は各引出電極の近接距離tを近づけ橋絡容量を増加させると、減衰帯域幅が狭くなり、保証減衰量の減衰極がプラス方向(右側方向)に特性が変化する。逆に各引出電極の近接距離tを離し、橋絡容量を減少させると、減衰帯域幅が広くなり、保証減衰量の減衰極がマイナス方向(左方向)に特性が変化する。このような調整により、減衰極を創出するとともに、前記減衰極を所定の位置にスイープさせることができ、いわゆるイメージ周波数における減衰量を極小化することができる。なお、減衰帯域幅の広狭は要求される仕様により決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3436251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1においては、橋絡容量部を水晶振動板の外周部に形成し、上述のとおり、モノリシック水晶フィルタ特性の調整を行っている。ところが、橋絡容量形成領域は、外部からの電磁ノイズや電位変動の影響により、設定した容量値から変動してしまうことがあり、特性調整の変動要因となることがあった。具体的には橋絡容量の形成により、特許文献1に記載された減衰極を極小化する等フィルタ特性の調整を所望の値に行うことができるが、調整したフィルタ特性(通過帯域特性、保証減衰特性、周波数特性等)が外部からの電磁ノイズや電位変動等の影響により、変動してしまうことがあった。
【0009】
また、周知のとおり、モノリシック水晶フィルタにおいては様々な特性調整を行う。例えば、共通電極に対して各電極間の周波数バランスを行う際は、裏面の入力電極と出力電極のそれぞれに対応する共通電極領域に、電極膜厚(金属薄膜の膜厚)を加減することにより行う。また周波数帯域特性の調整を行う際は、入力電極と出力電極間に対応する領域に電極膜厚(金属薄膜の膜厚)を加減することにより行う。さらに中心周波数の調整においては、共通電極全面の電極膜厚を加減することにより行う。
【0010】
なお、電極膜厚(金属薄膜の膜厚)の加減については、膜厚を増加させる場合は、例えばパーシャル蒸着により、金属材料を付加する。また、膜厚を減少する場合は、例えばイオンミリングにより電極膜厚(金属薄膜の膜厚)を減少させることにより行う。一般的には膜厚を付加する調整か、膜厚を減少させる調整かのいずれかを用いることにより
、特性調整を行う。
【0011】
このようなパーシャル蒸着やイオンミリングによる調整は、調整したい領域が開口した金属マスクを用いて、開口から露出した金属薄膜に対して、膜厚加減の処理を行うが、このとき前述の橋絡容量形成領域の金属薄膜の膜厚も変動(加減)させてしまうことがあった。特にイオンミリングは、例えばアルゴンイオンビームを金属薄膜に照射し、金属原子を削っていくことにより調整を行うが、アルゴンイオンビーム自体が拡がり、所望以外の金属薄膜を削ってしまうことがあった。特許文献1の構成であると、橋絡容量領域の金属薄膜が削られてしまい、フィルタ特性を悪化させてしまうことがあった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、橋絡容量によるフィルタ特性調整を安定化させることのできるモノリシック水晶フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるモノリシック水晶フィルタは、一方の主面に入力電極と出力電極を形成し、他方の主面に前記入力電極と前記出力電極に対応した共通電極を形成するとともに、前記入力電極と前記出力電極の各々と独立して電気的につながった接続電極を有する水晶振動板と、前記水晶振動板を保持し、前記各接続電極と導電接合される接続電極パッドと、接地される接地電極パッドとを有するパッケージと、を有するモノリシック水晶フィルタであって、前記入力電極と前記出力電極の各々とつながる前記接続電極から各延出電極を水晶振動板の外周領域に引出し、これら各延出電極を前記外周領域で近接させることにより橋絡容量を形成し、前記橋絡容量の下方には接地電極が配置されていること特徴としている。
【0014】
本構成によれば、パッケージには接地電極パッドが形成され、水晶振動板に形成された橋絡容量の直下には前記接地電極パッドが配置された構成となっている。このような構成により、橋絡容量領域に対して、外部からの電磁ノイズや電位変動が生じたとしても、橋絡容量領域の下方にある接地電極パッドにより、橋絡容量による特性調整において意図した調整を行うことができ、また調整したフィルタ特性を安定化させることのできるモノリシック水晶フィルタを得ることができる。
【0015】
また、前記水晶振動板は平面視矩形であり、前記橋絡容量は前記水晶振動板の角部に形成されていることを特徴とする構成としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、橋絡容量の形成領域自体が矩形水晶振動板の角部に位置することになる。入力電極、出力電極、共通電極は水晶振動板の中央部分に形成されることから、前記橋絡容量はこれら各電極から距離を持たせることができ、これにより各電極に対する調整作業の影響を大幅に軽減することができる。
【0017】
この点について、もう少し詳説する。モノリシック水晶フィルタは、ATカット水晶振動板による厚みすべり振動を用いており、この厚みすべり振動モードは水晶振動板の外周の影響を受けないように、水晶振動板の中央部分に励振電極が形成されている。すなわち入力電極、出力電極、共通電極の電極群が水晶振動板の中央部分に形成されている。これにより厚みすべり振動モードのエネルギー閉じ込め効果が発揮され、単独の振動モードでの動作を得やすくなる。
【0018】
そして、これら各電極の形成すなわち金属薄膜の形成、並びにこれら入力電極、出力電極、共通電極に対する膜厚調整による各種フィルタ特性の調整においては、各電極の形成された水晶振動板の中央領域に対して行われる。本発明による橋絡容量形成位置は水晶振動板の角部であるので、フィルタ特性調整対象の入力電極、出力電極および共通電極の形成領域とは離れており、これら入力電極、出力電極および共通電極に対する調整作業を行ったとしても、その影響を受けない。
【0019】
例えばイオンミリングにより、各電極に対して周波数調整を行った場合、橋絡容量形成位置は水晶振動板の角部に形成されているので、アルゴンイオンビーム自体が拡がったとしても、前記アルゴンイオンビームが橋絡容量にまで到達する機会は極端に減少し、橋絡容量の金属薄膜を削るということがなくなった。そして、上記外部からの電磁ノイズ等の影響を抑制するという効果と相まって、特性の安定したモノリシック水晶フィルタを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、橋絡容量によるフィルタ特性調整を安定化させたモノリシック水晶フィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態にかかる電極形成された水晶振動板の一方の主面の平面図である。
図2】本実施の形態にかかる電極形成された水晶振動板の他方の主面の平面図である。
図3】本実施の形態にかかるパッケージの平面図である。
図4】本実施の形態にかかるパッケージに水晶振動板を搭載した状態の平面図である。
図5図4のパッケージにリッドにて封止した状態のA-A断面図である。
図6図4のパッケージにリッドにて封止した状態のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
第1の実施形態
本発明による第1の実施の形態を図1乃至図6とともに説明する。図1は本実施の形態を示す電極形成された水晶振動板の一方の主面の平面図であり、図2は同じく電極形成された水晶振動板の他方の主面の平面図である。また図3は前記水晶振動板を収納し、保持するパッケージを示す平面図である。図4はパッケージに水晶振動板を収納し、保持した状態を示す平面図であり、図5は水晶振動板を収納し、導電接合したパッケージをリッドで気密封止した状態における図4のA-A断面図、図6は同様にパッケージをリッドで気密封止した状態における図4のB-B断面図である。
【0024】
モノリシック水晶フィルタFは、全体として直方体形状で、上部が開口した凹部を有するパッケージ1と、前記パッケージ1の凹部内に収納される圧電振動素子である水晶振動板2と、パッケージ1の開口部に接合されるリッド3とからなる。
【0025】
パッケージ1は、内部および外部に金属膜による配線が形成されたセラミックパッケージで、断面で見て凹形であり、凹形周囲の堤部(側壁)10と前記堤部上面に形成される周状の金属シール部11とを有している。金属シール部11は、タングステン等からなるメタライズ層と、メタライズ層上に形成される金属膜層とからなる。金属膜層は例えばメタライズ層に接してニッケルメッキ層と、前記ニッケルメッキ層の上部に形成される極薄の金メッキ層とからなる。またコバール等の溶接用の金属リングを取り付けてもよい。
【0026】
前記パッケージ1内部の4角には接続電極パッド12a,12b,12cが形成されるとともに,接地電極パッド12dが形成されている。これら各接続電極パッド、接地電極パッドは、これら電極パッド形成面の反対面、すなわちパッケージ裏面の外部との電気的接続を行う外部接続面に導通電極を介して引出され、外部接続端子に導通接続されている。すなわち接続電極パッド12aは導通電極12a1を介して外部接続端子13aに、接続電極パッド12bは導通電極12b1を介して外部接続端子13bに、接続電極パッド12cは導通電極12c1を介して外部接続端子13cに、接地電極パッド12dは導通電極12d1を介して外部接続端子13dに、それぞれ導通接続されている。
【0027】
またセラミックパッケージの角部には厚さ方向に伸びるキャスタレーション13a1,13b1,13c1,13d1が形成されるとともに、側壁にもキャスタレーション13e1,13f1が形成されている。各キャスタレーション13a1,13b1,13c1,13d1は各々外部接続端子13a,13b,13c,13dと電気的につながっている。なお、キャスタレーション13e1,13f1は図示していないが、パッケージの裏面に形成された外部接続端子13e、13fにそれぞれ接続されている。
【0028】
これら外部接続端子並びにキャスタレーションは、例えばタングステンによるメタライズ層の上部にニッケルメッキ、金メッキ等を施した構成である。
【0029】
水晶振動板2はATカット水晶板からなり、平面で見て短辺と長辺を有する矩形形状を有している。前記水晶振動板2の表裏にはモノリシック水晶フィルタを構成する電極が形成されている。すなわち、一方の主面には平面で見て矩形の入力電極21と平面で見て矩形の出力電極22が所定の間隔を持って並列に形成され、他方の主面には前記入力電極21と出力電極22に対応する1つの共通電極23が形成されている。前記共通電極23も平面で見て矩形であり、前記入力電極21と前記出力電極22の並列形成した領域に対応した外形サイズを有している。
【0030】
入力電極21と出力電極22からは、互いに離れる方向(長辺方向)にそれぞれ引出電極21a,引出電極22aが延びている。これら引出電極21a,22aは水晶振動板2の端部(短辺側端部)に到達後、各々対角の角部に延び、これら角部にて接続電極21b、22bを形成している。
【0031】
前記接続電極21b形成領域の反対面(他方の主面)には延出電極21cが形成されている。延出電極21cは短辺に沿って延出し、この短辺の他の端部近傍まで伸長している。また前記接続電極22b形成領域の反対面(他方の主面)には延出電極22cが形成されている。延出電極22cは長辺に沿って延出し、この長辺の他の端部近傍まで伸長している。また、各角部において接続電極の一部と延出電極の一部とが重畳している。なお、図示していないが、入力電極21の接続電極21bと延出電極21c並びに入力電極22の接続電極22bと延出電極22cは、それぞれ前記重畳している領域において水晶振動板の側面に形成された側面電極(金属薄膜)により導通させてもよい。この場合、後述する導電性接合材による接続電極と接続電極パッドとの導電接合において、導電性接合材の上塗り形成を省くことができる。
【0032】
以上の構成により図2の右上部に示すように、延出電極21cと延出電極22cは水晶振動板の角部で近接する構成としており、延出電極21cの端面と延出電極22cの端面がギャップtを持って対向するように配置されている。これら延出電極間のギャップにより橋絡容量Cを形成している。なお、対向する延出電極21cと22cの各端面は一定間隔で対向している構成が好ましい。これにより容量形成の設計が容易となる。
【0033】
また、図1に示すように、入力電極21と出力電極22の中間を通る仮想延長線L上にはマーカーMが形成されている。このような位置関係によりマーカーMの形成位置に対して入力電極21と出力電極22の形成位置を特定することができる。
【0034】
マーカーMは例えば円形であり、水晶振動板の他方の主面(反対面)に形成された共通電極の形成領域の外側であって、前記延出電極形成領域との間に独立して形成されている。水晶振動板は透明であるので前記マーカーは他方の主面からも視認することができ、製造時の位置決め起点として機能し、後述する特性調整時の調整領域の特定に有用となる。
【0035】
前記各電極、すなわち入出力電極、共通電極、引出電極、接続電極、延出電極、そしてマーカーは金属薄膜からなり、例えば水晶振動板に接して下地層としてクロム(Cr)を用い、前記下地層の上部に金(Au)あるいは銀(Ag)を形成した構成を採用している。これら金属薄膜はこれ以外の金属材料を用いてもよく、例えばアルミニウム(Al)一層構成の金属材料を用いてもよい。
【0036】
上記水晶振動板に形成された各電極並びにマーカーの寸法を例示する。水晶振動板は長辺寸法1.55mm、短辺寸法1.35mmであり、厚さはATカット水晶板を用いているので周波数によって決定される。入力電極および出力電極は長辺寸法0.3mm、短辺寸法0.19mm、厚さ約600オングストロームであり、前記入力電極と出力電極に対応する共通電極は長辺寸法0.66mm、短辺寸法0.3mm、厚さ約1200~1500オングストロームである。またマーカーは直径0.1mmの円形であり、厚さは約600オングストロームである。なお、上記電極(金属薄膜)の膜厚はフィルタ特性調整前の膜厚である。後述するとおり、共通電極はイオンミリングにより膜厚を減少させることにより調整されるので、フィルタ特性調整後の膜厚は上記膜厚から減少した状態となる。
【0037】
図4は、パッケージ1に水晶振動板1が平置き搭載された状態を示している。上記各電極が形成された水晶振動板2を、入力電極と出力電極が形成された一方の主面がパッケージの前記電極パッド12a,12b,12c,12dに対向するようにセラミックパッケージに搭載し、導電接合材Sで電気的機械的に接続する。具体的には図5図6に示すように、導電接合材Sを介して各接続電極と各接続電極パッドが導電接合される。導電接合材Sは例えば、ペースト状の導電フィラーの添加された樹脂接合材を用い、熱可塑性により接合材が硬化し、水晶振動板2がパッケージ1に導電接合される。
【0038】
これにより図4に示すように、共通電極23がパッケージの開口側に位置し、また延出電極22cが水晶振動板の上方端の長辺に伸長し、延出電極21cが水晶振動板の右側端の短辺に伸長した状態で、支持固定される。導電接合材Sは、図1および図4に示すように導電接続の必要な接続電極21b、22b、23bとその上部に供給され、接続電極21bと延出電極21cと接続電極パッド12cが、接続電極22bと延出電極22cと接続電極パッド12aが、そして接続電極23bと接続電極パッド12bが、それぞれ独立して電気的接合される。
【0039】
図5図4のA-A断面図を示しており、導電接合材Sが接続電極23bと接続電極パッド12bを導電接合し、また導電接合材Sが接続電極22bと延出電極22cと接続電極パッド12aを導電接合している。
【0040】
また図6図4のB-B断面図を示しており、導電接合材Sが接続電極21bと延出電極21cと接続電極パッド12cを導電接合している。また橋絡容量Cの領域においては、その直下に水晶振動板とギャップGを介して、接地電極パッドが位置している。ここでギャップGは0.01mm~0.08mmに設定している。ギャップGは短いほうが外部ノイズ影響の抑制等特性向上には好ましいが、自由端部分であるので外部衝撃等により水晶振動板と接地電極パッドが接触することにより、水晶振動板に損傷が出る可能性があるので、上記ギャップGの距離が好ましい。さらに好ましくは、ギャップGは0.02mm~0.06mmの範囲が更に好ましく、外部ノイズや電位変動に対するフィルタ特性の安静性がより向上するとともに、耐衝撃性も向上する範囲となる。
【0041】
なお、前記延出電極を入力電極、出力電極形成側に形成し、一方の主面において橋絡容量を形成してもよい。この構成であると橋絡容量形成領域と接地電極パッドとの距離が近接させることができ、フィルタ特性の安定性をより向上させることができる。
【0042】
図5図6に示すように、パッケージ1をリッド3で気密接合することにより、水晶振動板収納空間が気密に保たれる。この収納空間は、不活性ガスが充填された構成であってもよいし、真空雰囲気としてもよい。
【0043】
次に、気密封止前に行うフィルタ特性の調整方法について説明する。本例においてはイオンミリングにより、金属薄膜の膜厚を減じる方法での調整例を示している。
他方の主面に形成された共通電極23に対して各電極間の周波数バランス調整を行う際は、一方の主面(反対面)の入力電極21と出力電極22のそれぞれ対応する共通電極領域各々に、イオンビームを照射して電極膜厚を減少させる。また周波数帯域特性の調整を行う際は、入力電極と出力電極間に対応する共通電極領域に、イオンビームを照射して電極膜厚を減少させる。
【0044】
水晶振動板の一方の主面に形成する入力電極21と出力電極22の形成位置は、他方の主面に形成される共通電極23と正対向していることが望ましい。しかしながらマスク手段を用いた真空蒸着法やスパッタリング法等の成膜時において表裏のずれが生じることがあり、この場合、上述の共通電極23における入力電極21と出力電極23の対応部分の位置推定については、ずれが生じる場合がある。これは共通電極23がその反対面に形成された入力電極21と出力電極22を覆ってしまうからであり、入力電極21、出力電極22の推定位置がずれることがあった。
【0045】
本発明においては、入力電極21および出力電極22と同じ面にマーカーMを形成している。これら入力電極、出力電極、マーカーの形成は、これらを形成する開口部を有するマスク手段を用いて形成する。これによりマーカーMの形成位置に対して、入力電極および出力電極の形成位置は特定されることになり、相対的な位置関係のずれはない。前記マーカーは透明な水晶振動板を透過して一方の主面に視認可能な状態で形成されている。この視認できるマーカーMを基準とし、共通電極23に対する調整領域を特定することができる。そして本実施の形態においては、前記マーカーMは入力電極21と出力電極22の中間点に位置するために、これを基準として入力電極21と出力電極22の位置を特定できる。
【0046】
さらに中心周波数の調整においては、共通電極23全面の膜厚を加減することにより行う。なお、調整領域の絞込(限定)は、金属板に開口を設けた部分開口マスクを用いて行う。図4において、一点鎖線で示す領域は部分開口マスクPWを示しており、これは例えば中心周波数の調整を行う共通電極全面の膜厚を減少させる際に用いる。なお、前述の共通電極における入力電極対応領域への調整または出力電極対応領域への調整は、図示していないが、その領域のみの開口を持った部分開口マスクがセットされ、イオンミリングが行われる。
【0047】
なお、橋絡容量Cの調節を局所的に行ってもよい。例えば、各延出電極の近接部分をレーザーやイオンミリングにより部分的に電極除去したり、局所的なパーシャル真空蒸着による電極付加(金属薄膜付加)により、このギャップtを変化させ、あるいは電極サイズを変化させることにより橋絡容量を調整することができる。
【0048】
ところで、近接距離を小さくするあるいは近接領域の引出電極サイズを大きくする場合は、パーシャル蒸着等による電極付加が必要となるが、この場合電極付加を容易かつ膜形成の安定化をはかるために、予め前記電極付加予定領域に極薄の金属膜を形成してもよい。これにより橋絡容量の調整を行うことができる。なお、金属膜は例えばクロムを用い、その厚さを数オングストローム~数10オングストロームとすることにより、両延出電極間を導通させる能力を持たない程度に抵抗が高い状態とすることが必要である。また各延出電極の近接対向した中間部分には金属膜を形成しない構成としてもよい。
【0049】
上述の必要な調整を完了した後、アニール等の電極(金属膜)安定化処理を行い、リッド3により気密封止する。リッド3は平板状のコバール等からなる金属材を母材とし、その表面にニッケルメッキが施された金属板を用いている。前記金属シール部11上に前記リッド3を搭載し、この状態でシーム溶接やレーザー等のビーム溶接、あるいはろう接によりリッドと金属シール部を溶融させ、気密封止する。
【0050】
なお上記説明において2ポールタイプのモノリシック水晶フィルタを例示したが、3ポールあるいは4ポールの水晶フィルタに対しても同様に適用することができる。
【0051】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 パッケージ
10 堤部
11 金属シール部
2 水晶振動板
3 リッド
12a,12b,12c 接続電極パッド
12d 接地電極パッド
13a,13b,136c,13d、13e,13f キャスタレーション
C 橋絡容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6