(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032336
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 2/344 20060101AFI20240305BHJP
F04C 18/344 20060101ALI20240305BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F04C2/344 331L
F04C18/344 351E
F04C25/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135936
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 康裕
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】櫻場 茂圭
【テーマコード(参考)】
3H040
3H129
【Fターム(参考)】
3H040AA09
3H040BB10
3H040BB11
3H040CC07
3H040CC14
3H040DD01
3H040DD11
3H040DD16
3H129AA05
3H129AA11
3H129AA12
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB01
3H129CC16
(57)【要約】
【課題】信頼性を確保可能な圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮機は、圧縮室423の容積を変化させるピストンロータ41、ピストンロータ41の内側に設けられたクランク部72を有する圧縮機構を備える。圧縮機構は、回転シャフトが第1回転方向R1に回転すると第1空間から圧縮室423に吸入した冷媒を圧縮して第2空間に吐出し、第2回転方向R2に回転すると第2空間から圧縮室423に吸入した冷媒を圧縮して第1空間に吐出する構造になっている。クランク部72には、ピストンロータ41との隙間にオイルを導出する導出穴742が形成されている。回転シャフトの軸心CLおよびクランク部72の中心Crを通る仮想線ILによってクランク部72におけるピストンロータ41に対向する部位を第1領域AR1と第2領域AR2とに分けたとする。このとき、導出穴742は、第1領域AR1および第2領域AR2の双方に開口している。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮して吐出する圧縮機であって、
前記流体が流入出する第1流入出部(831)および第2流入出部(832)が形成されたハウジング(20)と、
前記ハウジングに収容され、回転可能に支持される回転シャフト(70)と、
環状のシリンダ(42)、前記回転シャフトの回転に伴って前記シリンダの内側に形成される圧縮室(423)の容積を変化させるピストンロータ(41)、前記ピストンロータの内側において前記回転シャフトの軸心に対して偏心して設けられたクランク部(72)を有する圧縮機構(40)と、を備え、
前記圧縮機構は、前記回転シャフトが第1回転方向に回転すると前記第1流入出部から前記圧縮室に吸入した前記流体を圧縮して前記第2流入出部に吐出し、前記回転シャフトが前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転すると前記第2流入出部から前記圧縮室に吸入した前記流体を圧縮して前記第1流入出部に吐出する構造になっており、
前記クランク部には、前記クランク部と前記ピストンロータとの隙間にオイルを導出するオイル導出穴(742、742A、742B)が形成されており、
前記回転シャフトの軸心および前記クランク部の中心を通る仮想線によって前記クランク部における前記ピストンロータに対向する部位を第1領域と第2領域とに分けたとき、
前記オイル導出穴は、前記第1領域および前記第2領域の双方に開口している、圧縮機。
【請求項2】
前記オイル導出穴は、前記第1領域および前記第2領域の双方にまたがって開口する導出部(747)を含んでいる、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記クランク部における前記ピストンロータに対向する部位と前記仮想線とが交差する一対の交点のうち、前記回転シャフトの軸心から離れた交点を第1交点とし、前記回転シャフトの軸心に近い交点を第2交点としたとき、
前記導出部は、前記クランク部における前記第2交点を含む位置に開口している、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記オイル導出穴は、前記第1領域に開口する第1導出部(745)、前記第2領域に開口する第2導出部(746)を含んでいる、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第1導出部は、前記クランク部のうち、前記回転シャフトが前記第1回転方向に回転している際に前記ピストンロータに対して最も大きい圧縮荷重が作用するタイミングで前記ピストンロータから離間する部位に開口し、
前記第2導出部は、前記クランク部のうち、前記回転シャフトが前記第2回転方向に回転している際に前記ピストンロータに対して最も大きい圧縮荷重が作用するタイミングで前記ピストンロータから離間する部位に開口している、請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
流体を圧縮して吐出する圧縮機であって、
前記流体が流入出する第1流入出部(831)および第2流入出部(832)が形成されたハウジング(20)と、
前記ハウジングに収容され、回転可能に支持される回転シャフト(70)と、
環状のシリンダ(42)、前記回転シャフトの回転に伴って前記シリンダの内側に形成される圧縮室(423)の容積を変化させるピストンロータ(41)、前記ピストンロータの内側において前記回転シャフトの軸心に対して偏心して設けられたクランク部(72)を有する圧縮機構(40)と、を備え、
前記圧縮機構は、前記回転シャフトが第1回転方向に回転すると前記第1流入出部から前記圧縮室に吸入した前記流体を圧縮して前記第2流入出部に吐出し、前記回転シャフトが前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転すると前記第2流入出部から前記圧縮室に吸入した前記流体を圧縮して前記第1流入出部に吐出する構造になっており、
前記クランク部には、前記ピストンロータと対向する部位にオイルを導出するオイル導出穴(742、742A、742A)として第1導出部(745、745A)および第2導出部(746、746A)が形成されており、
前記第1導出部および前記第2導出部は、前記クランク部の周方向において異なる位置に開口している、圧縮機。
【請求項7】
前記第1導出部(745A)および前記第2導出部(746A)は、単一の貫通穴によって形成されている、請求項3または6に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体を圧縮して吐出する圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正・逆どちらの回転方向でも流体の圧縮が可能な回転式の圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の可逆回転式の圧縮機は、シリンダ、シリンダの内側に配置されるピストンロータ、ピストンロータの内側に配置されてピストンロータの回転軸に対して偏心したクランク部、スライドベーン等を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の如く構成される圧縮機では、ピストンロータとクランク部とが摺動する構造となる。本発明者らは、クランク部にオイル導出穴を形成して、ピストンロータとクランク部との隙間にオイルを供給することを検討した。
【0005】
本発明者らの検討によれば、クランク部におけるオイル導出穴の開口位置によっては、冷媒の圧縮時にピストンロータに作用する荷重(以下、圧縮荷重とも呼ぶ)によってオイル導出穴の閉鎖が起こり得ることが判った。オイル導出穴の閉塞は、ピストンロータとクランク部の隙間へのオイル供給を阻害するものであって、圧縮機の信頼性を低下させる要因となるので、好ましくない。
【0006】
本開示は、信頼性を確保可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
流体を圧縮して吐出する圧縮機であって、
流体が流入出する第1流入出部(831)および第2流入出部(832)が形成されたハウジング(20)と、
ハウジングに収容され、回転可能に支持される回転シャフト(70)と、
環状のシリンダ(42)、回転シャフトの回転に伴ってシリンダの内側に形成される圧縮室(423)の容積を変化させるピストンロータ(41)、ピストンロータの内側において回転シャフトの軸心に対して偏心して設けられたクランク部(72)を有する圧縮機構(40)と、を備え、
圧縮機構は、回転シャフトが第1回転方向に回転すると第1流入出部から圧縮室に吸入した流体を圧縮して第2流入出部に吐出し、回転シャフトが第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転すると第2流入出部から圧縮室に吸入した流体を圧縮して第1流入出部に吐出する構造になっており、
クランク部には、クランク部とピストンロータとの隙間にオイルを導出するオイル導出穴(742)が形成されており、
回転シャフトの軸心およびクランク部の中心を通る仮想線によってクランク部におけるピストンロータに対向する部位を第1領域と第2領域とに分けたとき、
オイル導出穴は、第1領域および第2領域の双方に開口している。
【0008】
前述の如く、この種の圧縮機では、圧縮室の冷媒の圧力変化に起因して圧縮荷重が作用する。この圧縮荷重によってピストンロータは、クランク部における第1領域および第2領域のいずれかに向けて押し付けられる。
【0009】
具体的には、ピストンロータは、回転シャフトが第1回転方向に回転する際にクランク部の各領域の一方に向けて押し付けられ、回転シャフトが第2回転方向に回転する際に各領域の他方に向けて押し付けられる。このため、オイル導出穴がクランク部の第1領域および第2領域の一方にのみ開口している場合、回転シャフトが第1回転方向に回転する際にオイル導出穴の閉塞が生じ易くなる。また、オイル導出穴がクランク部の第1領域および第2領域の他方にのみ開口している場合、回転シャフトが第2回転方向に回転する際にオイル導出穴の閉塞が生じ易くなる。
【0010】
これらを考慮し、本開示の圧縮機は、オイル導出穴がクランク部における第1領域および第2領域の双方に開口する構造を備える。これによると、オイル導出穴の閉塞が生じ難くなるので、圧縮機の信頼性を確保することができる。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
流体を圧縮して吐出する圧縮機であって、
流体が流入出する第1流入出部(831)および第2流入出部(832)が形成されたハウジング(20)と、
ハウジングに収容され、回転可能に支持される回転シャフト(70)と、
環状のシリンダ(42)、回転シャフトの回転に伴ってシリンダの内側に形成される圧縮室(423)の容積を変化させるピストンロータ(41)、ピストンロータの内側において回転シャフトの軸心に対して偏心して設けられたクランク部(72)を有する圧縮機構(40)と、を備え、
圧縮機構は、回転シャフトが第1回転方向に回転すると第1流入出部から圧縮室に吸入した流体を圧縮して第2流入出部に吐出し、回転シャフトが第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転すると第2流入出部から圧縮室に吸入した流体を圧縮して第1流入出部に吐出する構造になっており、
クランク部には、ピストンロータと対向する部位にオイルを導出するオイル導出穴(742)として第1導出部(745)および第2導出部(746)が形成されており、
第1導出部および第2導出部は、クランク部の周方向において異なる位置に開口している。
【0012】
このようになっていれば、仮に、第1導出穴および第2導出穴の一方がピストンロータで閉塞されたとしても、第1導出穴および第2導出穴の他方を通じてピストンロータとクランク部との間へのオイル供給を継続させることができる。したがって、本開示の圧縮機によれば、圧縮機の信頼性を確保することができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置であって暖房モード時の状態を示す概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る冷凍サイクル装置であって冷房モード時の状態を示す概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係る圧縮機の模式的な軸方向断面図である。
【
図14】第1実施形態の比較例の圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図16】比較例の圧縮機構において回転シャフトを第1回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図17】比較例の圧縮機構において回転シャフトを第2回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図18】第1実施形態の圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図19】第1実施形態の圧縮機構において回転シャフトを第1回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図20】第1実施形態の圧縮機構において回転シャフトを第2回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図21】第2実施形態の圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図22】第2実施形態のクランク部の模式的な側面図である。
【
図23】第2実施形態の圧縮機構において回転シャフトを第1回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図24】第2実施形態の圧縮機構において回転シャフトを第2回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図25】第2実施形態の第1変形例となる圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図26】第2実施形態の第2変形例となるクランク部の模式的な側面図である。
【
図27】第2実施形態の第3変形例となるクランク部の模式的な側面図である。
【
図29】冷房モード時にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明するための説明図である。
【
図30】暖房モード時にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明するための説明図である。
【
図31】第3実施形態の圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図32】第3実施形態の変形例となる圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図33】第4実施形態の圧縮機構の模式的な断面図である。
【
図34】第4実施形態の圧縮機構において回転シャフトを第1回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図35】第4実施形態の圧縮機構において回転シャフトを第2回転方向に回転させた際にピストンロータに作用する圧縮荷重を説明する説明図である。
【
図36】第5実施形態に係る圧縮機の模式的な軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図20を参照して説明する。本実施形態では、本開示の圧縮機10および当該圧縮機10を含む冷凍サイクル装置1を車両に搭載されるシート空調装置に適用した例について説明する。シート空調装置は、車両のシートの内側または下部に配置され、乗員が着座するシートの表側に向けて温風や冷風を供給する装置である。
【0017】
冷凍サイクル装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルであって、シートの表側に向けて温風を供給する暖房モードとシートの表側に向けて冷風を供給する冷房モードとを切替可能なヒートポンプサイクルとして構成されている。
【0018】
図1および
図2に示すように、冷凍サイクル装置1は、圧縮機10、第1熱交換器11、絞り装置12、第2熱交換器13、冷媒配管14、図示しない制御装置を備える。冷凍サイクル装置1は、冷媒としてR134aやR1234yf等のフロン系冷媒や二酸化炭素等の自然冷媒が採用されている。
【0019】
ここで、圧縮機10は、圧縮機構40の軸受や圧縮室423を形成する部品の周囲のクリアランスが小さく接触が発生し易いため、適宜潤滑する必要がある。このことを加味して、冷媒には、圧縮機10の摺動部位を潤滑するオイルが混合されている。オイルの一部は、冷媒とともにサイクル内を循環する。
【0020】
圧縮機10は、流体である冷媒を圧縮して吐出するものである。圧縮機10は、正・逆どちらの回転方向でも流体の圧縮が可能な両回転型圧縮機である。圧縮機10は、外殻を構成するハウジング20、冷媒を圧縮する圧縮機構40、圧縮機構40を駆動する電動モータ30を備える電動圧縮機で構成されている。ハウジング20には、冷媒配管14が接続される第1接続口81および第2接続口82が形成されている。第1接続口81および第2接続口82は、冷媒の流入出口を構成している。具体的には、
図1に示すように、暖房モード時には、第1接続口81が冷媒の流出口(すなわち、吐出ポート)となり、第2接続口82が冷媒の流入口(すなわち、吸入ポート)となる。また、
図2に示すように、冷房モード時には、第1接続口81が冷媒の流入口(すなわち、吸入ポート)となり、第2接続口82が冷媒の流出口(すなわち、吐出ポート)となる。圧縮機10の詳細は、後述する。
【0021】
第1熱交換器11は、冷媒配管14を介して第1接続口81に接続されている。第1熱交換器11は、空調ケース15の内側に配置された利用側熱交換器である。第1熱交換器11は、空調ケース15に配置された送風機16から送風される送風空気と冷媒とを熱交換させる。第1熱交換器11は、暖房モード時に圧縮機10から吐出された高圧冷媒を送風空気と熱交換させて放熱する放熱器として機能し、冷房モード時に絞り装置12で減圧された低圧冷媒を送風空気と熱交換させて吸熱する吸熱器として機能する。
【0022】
第2熱交換器13は、冷媒配管14を介して第2接続口82に接続されている。第2熱交換器13は、空調ケース15の外側に配置された外部熱交換器である。第2熱交換器13は、空調ケース15の外部の空気等と冷媒とを熱交換させる。第2熱交換器13は、冷房モード時に高圧冷媒を空調ケース15の外部の空気等と熱交換させて放熱する放熱器として機能し、暖房モード時に低圧冷媒を空調ケース15の外部の空気等と熱交換させて吸熱する吸熱器として機能する。
【0023】
絞り装置12は、第1熱交換器11または第2熱交換器13にて放熱された冷媒を減圧する減圧装置である。絞り装置12は、例えば、キャピラリチューブ、オリフィス等の固定絞りで構成される。なお、絞り装置12は、可変絞りで構成されていてもよい。
【0024】
このように構成される冷凍サイクル装置1は、暖房モード時に、送風機16から送風された空気を第1熱交換器11で温風になるまで加熱し、当該温風をシートの表面側に供給する。また、冷凍サイクル装置1は、冷房モード時に、送風機16から送風された空気を第1熱交換器11で冷風になるまで冷却し、当該冷風をシートの表面側に供給する。
【0025】
次に、圧縮機10の詳細について
図3等を参照しつつ説明する。
図3は、圧縮機10を回転シャフト70の軸心CLに沿って上下に切断した軸方向断面図である。
図3等に示す上下を示す矢印は、圧縮機10を車両に搭載した状態における上下方向を示している。
図3に示すように、圧縮機10は、回転シャフト70の軸心CLが水平方向と略一致する姿勢で配置される。以下、回転シャフト70の軸心CLに沿って延びる方向を軸方向DRaとする。また、本明細書では、回転シャフト70の回転角度は上死点を基準とする角度としている。回転シャフト70の回転角度については、第1回転方向R1へ回転する際の回転シャフト70の回転角度を正の角で示し、第2回転方向R2へ回転する際の回転シャフト70の回転角度を負の角で示すことがある。
【0026】
ハウジング20は、軸方向DRaの両端に配置されるメインハウジング21、サブハウジング22に加え、この両者の間に配置される第1ミドルハウジング23、第2ミドルハウジング24、第3ミドルハウジング25を有している。ハウジング20は、メインハウジング21、サブハウジング22、第1ミドルハウジング23、第2ミドルハウジング24、第3ミドルハウジング25が図示しないボルト等の締結手段によって気密に締結される密閉容器構造になっている。
【0027】
メインハウジング21は、軸方向DRaの一方側に配置される。メインハウジング21は、軸方向DRaの他方側が開口した有底筒状の形状になっている。メインハウジング21の底部には、第2接続口82が形成されている。メインハウジング21の内側には、電動モータ30が収容されている。
【0028】
メインハウジング21は、圧縮機構40側に向かって冷媒が流れ易くなるように、電動モータ30から開口に至るまでの開口側部位の内径が開口に近づくに伴って徐々に大きくなっている。
【0029】
サブハウジング22は、軸方向DRaの他方側に配置される。すなわち、サブハウジング22は、圧縮機構40に対してメインハウジング21とは反対側に配置されている。サブハウジング22は、板状になっている。サブハウジング22には、第1接続口81が形成されている。
【0030】
第1ミドルハウジング23は、メインハウジング21の開口全体を覆うように、メインハウジング21に隣接して配置されている。第1ミドルハウジング23は、その略中央部分に回転シャフト70が貫通している。第1ミドルハウジング23の内面と回転シャフト70との間にはシール部材29が配置されている。
【0031】
第2ミドルハウジング24は、サブハウジング22と圧縮機構40との間に配置されている。第2ミドルハウジング24は、その略中央部分に回転シャフト70が貫通する貫通穴が形成されている。この貫通穴には、回転シャフト70を回転可能に支持する第1滑り軸受431が配置されている。第2ミドルハウジング24には、第1接続口81に連通する第1空間831が形成されている。第1空間831は、第1接続流路833によって第1接続口81に連通し、第1接続流路833および第1接続口81を介して冷媒が流入または流出する。本実施形態では、第1空間831が、ハウジング20において流体が流入出する第1流入出部を構成している。
【0032】
第3ミドルハウジング25は、第1ミドルハウジング23と圧縮機構40との間に配置されている。第3ミドルハウジング25は、その略中央部分に回転シャフト70が貫通する貫通穴が形成されている。この貫通穴には、回転シャフト70を回転可能に支持する第2滑り軸受432が配置されている。第3ミドルハウジング25には、第2接続口82に連通する第2空間832が形成されている。第2空間832は、第2接続流路834によって第2接続口82に連通し、第2接続流路834および第2接続口82を介して冷媒が流入または流出する。本実施形態では、第2空間832が、ハウジング20において流体が流入出する第2流入出部を構成している。
【0033】
回転シャフト70は、ハウジング20に収容されている。回転シャフト70は、ハウジング20の内側に配置された第1滑り軸受431および第2滑り軸受432によって回転可能に支持されている。
【0034】
回転シャフト70は、軸心CLを中心とする円柱状の主軸71、主軸71の途中に設けられて軸心CLに対して偏心するクランク部72によって構成されている。主軸71は、第1滑り軸受431および第2滑り軸受432によって支持されている。クランク部72は、偏心軸であって、圧縮機構4のシリンダ42の内側に配置されている。クランク部72は、圧縮機構40の一部として機能する。なお、回転シャフト70の軸心CLは、主軸71の回転軸である。
【0035】
回転シャフト70には、圧縮機構4の摺動部位にオイルを供給するオイル供給路74が形成されている。オイル供給路74は、回転シャフト70の軸心CLに沿って延びる主供給穴741、回転シャフト70の外側に開口するとともに主供給穴741に連通する導出穴742、第1導入穴743、第2導入穴744が形成されている。第1導入穴743は、回転シャフト70のうち第1滑り軸受431に対向する部位に開口している。第2導入穴744は、回転シャフト70のうち第2滑り軸受432に対向する部位に開口している。導出穴742は、回転シャフト70のうち、ピストンロータ41に対向する部位に開口している。本実施形態では、導出穴742が、クランク部72とピストンロータ41との隙間にオイルを導出するオイル導出穴を構成している。導出穴742の詳細については後述する。
【0036】
電動モータ30は、メインハウジング21に収容されている。電動モータ30は、固定子31および可動子32を有する。電動モータ30は、固定子31への通電形態を変更することで、可動子32の回転方向を変えることが可能な両回転型モータで構成されている。電動モータ30は、インナロータ型のモータで構成されている。具体的には、固定子31はハウジング20の内壁に固定されている。可動子32は、固定子31の内側にて回転シャフト70に固定されている。
【0037】
このように構成される電動モータ30は、図示しないインバータから固定子31に電力が供給されると、可動子32を回転させる回転磁界が発生し、この回転磁界によって可動子32および回転シャフト70が一体に回転する。
【0038】
圧縮機構40は、第2ミドルハウジング24と第3ミドルハウジング25との間に配置されている。具体的には、圧縮機構40は、第1空間831および第2空間832と回転シャフト70の軸方向DRaに並ぶように、第1空間831と第2空間832との間に配置されている。
【0039】
圧縮機構40は、シリンダ42側に設置されたベーン43によって圧縮室423を高圧と低圧とに分離するローリングピストン型の構造を有する。
図3、
図4、
図5に示すように、圧縮機構40は、ピストンロータ41、シリンダ42、ベーン43、付勢バネ44を含んで構成されている。
【0040】
ピストンロータ41は、ローリングピストンとして機能するものである。ピストンロータ41は、回転シャフト70のクランク部72に嵌合されている。ピストンロータ41は、クランク部72と同様に、その中心軸が回転シャフト70の軸心CLに対して偏心している。ピストンロータ41は、回転シャフト70の回転を受けてシリンダ42の内周面に対して公転運動を行う。
【0041】
シリンダ42は、その内側に冷媒を圧縮する圧縮室423が形成されている。シリンダ42は、円筒形状の穴が形成されたシリンダ本体42aと、シリンダ本体42aに形成された円筒形状の穴を塞ぐ一対のサイドプレート42b、42cと、を有している。圧縮室423は、シリンダ本体42aおよび一対のサイドプレート42b、42cによって区画形成されている。
【0042】
図6、
図7、
図8に示すように、シリンダ42には、圧縮室423と第1空間831とを連通させる第1連通部421が形成されている。また、
図11、
図12に示すように、シリンダ42には、圧縮室423と第2空間832とを連通させる第2連通部422が形成されている。第1連通部421および第2連通部422は、互いに連通しないように、シリンダ42における異なる位置に形成されている。
【0043】
第1連通部421および第2連通部422は、ピストンロータ41が上死点に位置する際にピストンロータ41の側面によって閉塞され、ピストンロータ41が上死点からずれた位置にある場合に開放される。上死点は、ピストンロータ41の中心Crが最もベーン溝424に近づく状態である。また、下死点は、ピストンロータ41の中心Crが最もベーン溝424から離れる状態である。
【0044】
図8に示すように、第1連通部421は、シリンダ42のうち、軸方向DRaにおいて圧縮室423および第1空間831それぞれと重なり合う部位に形成されている。第1連通部421は、軸方向DRaに沿って直線状に延びている。具体的には、第1連通部421は、サイドプレート42bを貫通する貫通穴とシリンダ本体42aに設けられた有底穴とで構成されている。
【0045】
第2連通部422は、シリンダ42のうち、軸方向DRaにおいて圧縮室423および第2空間832それぞれと重なり合う部位に形成されている。第2連通部422は、軸方向DRaに沿って直線状に延びている。具体的には、第2連通部422は、サイドプレート42cを貫通する貫通穴とシリンダ本体42aに設けられた有底穴とで構成されている。
【0046】
図4、
図5に示すように、シリンダ42には、ベーン43をスライド可能に受け入れるベーン溝424が形成されている。ベーン溝424は、シリンダ42における圧縮室423を形成する内壁のうち上壁部分に形成されている。ベーン溝424は、ベーン43を上下方向にスライド可能なように上下方向に延びている。
【0047】
シリンダ42には、ベーン溝424の内壁およびベーン43の後端面によって圧力室425が区画形成されている。圧力室425には、ベーン43の先端面をピストンロータ41に向けて付勢するための付勢バネ44が配置されている。
【0048】
また、シリンダ42には、圧力室425と第1空間831とを連通させる第1連通路841および圧力室425と第2空間832とを連通させる第2連通路842が形成されている。第1連通路841および第2連通路842は、互いに連通しないように、シリンダ42における異なる位置に形成されている。
【0049】
図4、
図6、
図9、
図10に示すように、第1連通路841によって圧力室425と第1空間831とが連通している。
図9に示すように、第1連通路841の途中には、第1逆止弁851が設けられている。第1連通路841は、第1逆止弁851によって、第1空間831から圧力室425への冷媒の流れが許容され、圧力室425から第1空間831への冷媒の流れが禁止されている。この第1逆止弁851は、一方向にのみ開くリード弁で構成されている。第1逆止弁851は、第1逆止弁851に隣接して設けられたストッパ853によって最大開度が規制されている。第1逆止弁851およびストッパ853は、ボルト等の締結部材855によってハウジング20に固定されている。
【0050】
図5、
図11、
図12、
図13に示すように、第2連通路842によって圧力室425と第2空間832とが連通している。第2連通路842の途中には、第2逆止弁852が設けられている。第2連通路842は、第2逆止弁852によって、第2空間832から圧力室425への冷媒の流れが許容され、圧力室425から第2空間832への冷媒の流れが禁止されている。この第2逆止弁852は、一方向にのみ開くリード弁で構成されている。第2逆止弁852は、第2逆止弁852に隣接して設けられたストッパ854によって最大開度が規制されている。第2逆止弁852およびストッパ854は、ボルト等の締結部材によってハウジング20に固定されている。
【0051】
このような構造になっていることで、圧力室425には、回転シャフト70の回転方向によらず、第1連通路841および第2連通路842の一方から圧縮機構40で生じた高圧の冷媒が導入される。これにより、ベーン43は、付勢バネ44による付勢力に加えて、圧力室425の圧力を受けてピストンロータ41に向けて付勢される。
【0052】
ベーン43は、圧縮室423を第1連通部421に連通する第1室423aと第2連通部422に連通する第2室423bとに分離する分離部材である。ベーン43は、圧縮機構40の動作によって生ずる冷媒が導入される圧力室425の圧力によって第1室423aと第2室423bとをシールする。ベーン43は、ピストンロータ41に接する先端面を有する。ベーン43は、ベーン溝424に収容され、回転シャフト70の軸心CLに向かって近づく方向、軸心CLから遠ざかる方向に変位可能になっている。ベーン43は、ピストンロータ41が上死点に位置する際に軸心CLから最も離れた位置に変位し、ピストンロータ41が下死点に位置する際に軸心CLに最も近い位置に変位する。
【0053】
ここで、
図7、
図8に示すように、第1空間831には、第1吐出弁531が配置されている。第1吐出弁531は、圧縮室423の第1空間831の圧力が所定の第1開弁圧まで高まると圧縮室423の第1空間831から第1連通部421への冷媒の流れを許容するとともに、第1連通部421から圧縮室423への冷媒の流れを防止するものである。すなわち、第1吐出弁531は、第1連通部421から圧縮室423への冷媒の流れを防止する逆流防止機能を有する。
【0054】
第1吐出弁531は、一方向にのみ開くリード弁で構成されている。第1吐出弁531は、第1吐出弁531に隣接して設けられた第1ストッパ521によって最大開度が規制されている。第1吐出弁531は、第1ストッパ521とともに第1可動部材541に固定されている。
【0055】
第1可動部材541は、一部が第1空間831に露出することで第1空間831の圧力を受けるとともに、第2圧力導入穴892を介して導入される第2空間832の圧力を受けることで回転シャフト70の軸方向DRaに変位可能になっている。
【0056】
具体的には、第1可動部材541は、シリンダ42のうち、軸方向DRaの他方側に位置する一端面に形成された有底の第1凹溝426に対して、軸方向DRaに変位可能に挿入されている。第1可動部材541には、第1可動部材541の回転を防止するガイドピン543が一体に連結されている。このガイドピン543は、シリンダ42に設けられた第1ピン溝427に挿入されている。
【0057】
第1凹溝426の底部には、第1凹溝426と第2空間832とを連通させる第2圧力導入穴892が形成されている。第2圧力導入穴892は、回転シャフト70の軸方向DRaに沿って延びている。第1凹溝426には、第1吐出弁531の逆流防止機能が発揮されない位置に向けて第1吐出弁531を付勢する第1付勢部材551が配置されている。第1付勢部材551は、回転シャフト70が停止しているときに第1吐出弁531の逆流防止機能が発揮されない位置に第1吐出弁531を変位させる。なお、第1吐出弁531の逆流防止機能が発揮されない位置は、第1吐出弁531がシリンダ42から離間する位置である。また、第1吐出弁531の逆流防止機能が発揮される位置は、第1吐出弁531がシリンダ42に接する位置である。
【0058】
図12に示すように、第2空間832には、第2吐出弁532が配置されている。第2吐出弁532は、圧縮室423の第2空間832の圧力が所定の第2開弁圧まで高まると圧縮室423の第2空間832から第2連通部422への冷媒の流れを許容するとともに、第2連通部422から圧縮室423への冷媒の流れを防止するものである。すなわち、第2吐出弁532は、第2連通部422から圧縮室423への冷媒の流れを防止する逆流防止機能を有する。なお、第2開弁圧は、第1開弁圧と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
第2吐出弁532は、一方向にのみ開くリード弁で構成されている。第2吐出弁532は、第2吐出弁532に隣接して設けられた第2ストッパ522によって最大開度が規制されている。第2吐出弁532は、第2ストッパ522とともに第2可動部材542に固定されている。
【0060】
第2可動部材542は、一部が第2空間832に露出することで第2空間832の圧力を受けるとともに、第1圧力導入穴891を介して導入される第1空間831の圧力を受けることで回転シャフト70の軸方向DRaに変位可能になっている。
【0061】
具体的には、第2可動部材542は、シリンダ42のうち、軸方向DRaの一方側に位置する他端面に形成された有底の第2凹溝428に対して、軸方向DRaに変位可能に挿入されている。第2可動部材542には、第2可動部材542の回転を防止するガイドピン544が一体に連結されている。このガイドピン544は、シリンダ42に設けられた第2ピン溝429に挿入されている。
【0062】
第2凹溝428の底部には、第2凹溝428と第1空間831とを連通させる第1圧力導入穴891が形成されている。第1圧力導入穴891は、回転シャフト70の軸方向DRaに沿って延びている。第2凹溝428には、第2吐出弁532の逆流防止機能が発揮されない位置に向けて第2吐出弁532を付勢する第2付勢部材552が配置されている。第2付勢部材552は、回転シャフト70が停止しているときに第2吐出弁532の逆流防止機能が発揮されない位置に第1吐出弁531を変位させる。なお、第2吐出弁532の逆流防止機能が発揮されない位置は、第2吐出弁532がシリンダ42から離間する位置である。また、第2吐出弁532の逆流防止機能が発揮される位置は、第2吐出弁532がシリンダ42に接する位置である。
【0063】
本実施形態の圧縮機10では、第1可動部材541、第2可動部材542、第1付勢部材551、第2付勢部材552が、第1吐出弁531の逆流防止機能および第2吐出弁532の逆流防止機能の有効化および無効化を切り替える機能切替部54を構成している。
【0064】
両回転可能な圧縮機10では、正回転時の吐出口が逆回転時の吸入口となるため、各吐出弁531、532それぞれが逆回転時にも機能すると、吸入口から冷媒を吸入することができなくなってしまう。これに対して、本実施形態の圧縮機10は、機能切替部54を備えていることで、各吐出弁531、532を設けたとしても、吸入口から冷媒を吸入することができる。
【0065】
ここで、第1空間831には、その下方側にオイルを貯留する第1オイル貯留部861が設けられている。この第1オイル貯留部861は、第1オイル通路871および第1滑り軸受431と回転シャフト70との隙間を介してオイル供給路74および圧縮機構40の摺動部位に連通している。
【0066】
第1オイル通路871は、サブハウジング22と第2ミドルハウジング24との間に形成されている。第1オイル通路871は、第1オイル貯留部861から第2ミドルハウジング24において回転シャフト70が貫通する貫通穴241まで延びている。
【0067】
第1滑り軸受431と回転シャフト70との隙間は、第1オイル通路871に比べてオイルを通過させるための通路面積が小さい微細な絞り流路になっている。第1滑り軸受431と回転シャフト70との隙間は、第1オイル貯留部861から圧縮機構40の摺動部位に向かって流れるオイルを減圧する第1減圧部を構成している。このように、第1滑り軸受431と回転シャフト70との隙間にオイルを通過させる構造とすれば、第1滑り軸受431へオイルを供給しつつ、第1オイル貯留部861の冷媒が圧縮室423に流れてしまうことを抑制することができる。
【0068】
また、第2空間832には、その下方側にオイルを貯留する第2オイル貯留部862が設けられている。この第2オイル貯留部862は、第2オイル通路872および第2滑り軸受432と回転シャフト70との隙間を介してオイル供給路74および圧縮機構40の摺動部位に連通している。
【0069】
第2オイル通路872は、第1ミドルハウジング23と第3ミドルハウジング25との間に形成されている。第2オイル通路872は、第2オイル貯留部862から第3ミドルハウジング25において回転シャフト70が貫通する貫通穴251まで延びている。
【0070】
第2滑り軸受432と回転シャフト70との隙間は、第2オイル通路872に比べてオイルを通過させるための通路面積が小さい微細な絞り流路になっている。第2滑り軸受432と回転シャフト70との隙間は、第2オイル貯留部862から圧縮機構40の摺動部位に向かって流れるオイルを減圧する第2減圧部を構成している。このように、第2滑り軸受432と回転シャフト70との隙間にオイルを通過させる構造とすれば、第2滑り軸受432へオイルを供給しつつ、第2オイル貯留部862の冷媒が圧縮室423へ流れてしまうことを抑制することができる。
【0071】
各オイル貯留部861、862に貯留されたオイルは、各滑り軸受431、432の内側にある各導入穴743、744を介してオイル供給路74の主供給穴741に導かれる。主供給穴741に導かれたオイルは、導出穴742を介して、ピストンロータ41とクランク部72との隙間に供給される。これにより、ピストンロータ41とクランク部72との摺動による摩耗が抑制される。
【0072】
本発明者らは、ピストンロータ41とクランク部72との摺動を円滑するために、圧縮機構40の動作時におけるピストンロータ41とクランク部72との隙間へのオイルの供給状態等について鋭意検討した。本発明者らの検討によると、クランク部72における導出穴742の開口位置によっては、冷媒の圧縮時にピストンロータ41に作用する荷重(以下、圧縮荷重とも呼ぶ)によって導出穴742の閉鎖が起こり得ることが判った。
【0073】
以下、導出穴742の閉塞について、
図14~
図17を参照しつつ説明する。
図14~
図17は、本実施形態の比較例となる圧縮機構CEの模式的な断面形状等を示している。なお、理解し易いように、
図14~
図17では、比較例の圧縮機構CEのうち、本実施形態の圧縮機構40と対応する構成については本実施形態の圧縮機構40と同様の符号を付している。
【0074】
比較例の圧縮機構CEは、
図14に示すように、クランク部72に対して単一の導出穴OHが形成されている。導出穴OHは、クランク部72の外表面からクランク部72の中心Crに向かって延びている。
【0075】
比較例の圧縮機構CEは、冷媒の圧縮時に形成される圧縮室423の第1室423aと第2室423bの圧力差に起因してピストンロータ41に対して圧縮荷重Fcが作用する。この圧縮荷重Fcは、第1室423aおよび第2室423bのうち高圧側から低圧側に向けて作用する。圧縮荷重Fcがピストンロータ41に作用すると、例えば、
図15に示すように、ピストンロータ41のうち低圧となる第2空間832に相対する部位とクランク部72の隙間が拡大する。
【0076】
ここで、本実施形態では、回転シャフト70の軸心CLとクランク部72の中心Crとを通る仮想線ILによってクランク部72におけるピストンロータ41に対向する部位を第1領域AR1および第2領域AR2といった2つの領域に分けている。また、クランク部72におけるピストンロータ41に対向する部位と仮想線ILとが交差する一対の交点のうち、回転シャフト70の軸心CLから離れた交点を第1交点CP1とし、回転シャフト70の軸心CLに近い交点を第2交点CP2としている。なお、第1領域AR1は、クランク部72におけるピストンロータ41に対向する部位のうち、第2交点CP2から第1回転方向R1に沿って第1交点CP1に至るまでの範囲の領域である。また、第2領域AR2は、クランク部72におけるピストンロータ41に対向する部位のうち、第1交点CP1から第1回転方向R1に沿って第2交点CP2に至るまでの範囲の領域である。
【0077】
回転シャフト70が第1回転方向R1に回転する場合、圧縮荷重Fcは、
図16に示すように、ピストンロータ41をクランク部72の第2領域AR2に押し付けるように作用する。このため、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転される場合は、第2領域AR2よりも第1領域AR1の方がピストンロータ41とクランク部72の隙間が拡大し易い。
【0078】
これらを加味して、比較例の圧縮機構CEでは、オイルの導出穴OHが、クランク部72の第1領域AR1に開口するようにクランク部72に対して設けられている。このような構成になっていれば、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転される場合に、導出穴OHを介してクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルに供給することができる。
【0079】
ところが、比較例の圧縮機構CEが正・逆どちらの回転方向でも流体の圧縮が可能に構成されている場合、回転シャフト70が第1回転方向R1とは逆の第2回転方向R2に回転する際に、ピストンロータ41の内面で導出穴OHが閉塞されてしまうことがある。これは、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転する際の圧縮荷重Fcが、
図17に示すように、ピストンロータ41をクランク部72の第1領域AR1に押し付けるように作用するからである。導出穴OHの閉塞は、ピストンロータ41とクランク部72の隙間へのオイル供給を阻害するものであって、圧縮機10の信頼性を低下させる要因となるので、好ましくない。
【0080】
これらを考慮し、本実施形態の圧縮機構40は、
図18に示すように、クランク部72におけるピストンロータ41と対向する部位にオイルを導出する導出穴742として第1導出部745および第2導出部746が形成されている。この第1導出部745および第2導出部746は、クランク部72の周方向において異なる位置に開口している。
【0081】
本実施形態では、第1導出部745がクランク部72の第1領域AR1に開口し、第2導出部746がクランク部72の第2領域AR2に開口している。このように本実施形態の導出穴742は、クランク部72の第1領域AR1に開口する第1導出部745および第2領域AR2に開口する第2導出部746を含んでいる。
【0082】
本実施形態の第1導出部745は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転している際にピストンロータ41に対して最も大きい荷重が作用するタイミングでピストンロータ41から離間する部位に開口している。また、第2導出部746は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転している際にピストンロータ41に対して最も大きい荷重が作用するタイミングでピストンロータ41から離間する部位に開口している。
【0083】
具体的には、第1導出部745は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転している際にピストンロータ41から受ける荷重が最も大きくなる部位とクランク部72の中心Crを挟んで反対側の部位に開口している。そして、第2導出部746は、仮想線ILを挟んで第1導出部745と左右対称となるように形成されている。また、第1導出部745および第2導出部746は、クランク部72における軸方向DRaの略中央部分に形成されている。
【0084】
【0085】
[冷房モード]
冷凍サイクル装置1は、冷房モード時に、圧縮機10の回転シャフト70が第1回転方向R1に回転される。これにより、
図2に示すように、圧縮機10で高温高圧となるまで圧縮された冷媒が、第2熱交換器13に流入して放熱される。そして、第2熱交換器13を通過した後の冷媒は、絞り装置12にて所望の圧力まで減圧された後、第1熱交換器11に流入する。第1熱交換器11に流入した冷媒は、送風機16から送風される空気から吸熱して蒸発する。この際、送風機16から送風される空気が冷却されてシートの表面側に供給される。第1熱交換器11で蒸発した冷媒は、圧縮機10に再び吸入された圧縮される。
【0086】
具体的には、圧縮機10は、冷房モード時に、電動モータ30への電力供給によって回転シャフト70が、
図19に示す上死点位置から第1回転方向R1に回転されると、第1空間831から第1連通部421を介して圧縮室423の第1室423aに吸入される。第1室423aへ冷媒を吸入する吸入工程は、ピストンロータ41が再び上死点位置に回転されると完了する。冷媒の吸入工程の完了後、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転されると、冷媒は第2室423bにて圧縮される。第2室423bにて圧縮された冷媒は、第2連通部422を介して第2空間832に吐出される。そして、第2空間832に吐出された冷媒は、モータ室を構成する第2接続流路834を介して第2接続口82から第2熱交換器13に向けて吐出される。
【0087】
ここで、冷房モード時には、第1空間831が低圧空間となり、第2空間832が高圧空間となる。第2空間832が第1空間831よりも高圧となることで、第1可動部材541および第2可動部材542は、軸方向DRaの他方側へ変位する。これにより、冷房モード時は、第1吐出弁531がシリンダ42から離間して逆流防止機能が発揮されない位置に変位し、第2吐出弁532がシリンダ42に当接して逆流防止機能が発揮される位置に変位する。
【0088】
また、冷房モード時は、第2空間832が高圧となることで、第2空間832の冷媒が、第2連通路842を介して圧力室425に導入される。また、第1連通路841には、第1逆止弁851が設けられているので、圧力室425の冷媒は第1空間831に流れない。これにより、圧力室425が高圧に維持されることで、ベーン43は、付勢バネ44による付勢力に加えて、圧力室425の圧力を受けてピストンロータ41に向けて付勢される。
【0089】
さらに、冷房モード時は、第2空間832の第2オイル貯留部862に貯留されたオイルが、第2オイル通路872および第2滑り軸受432と回転シャフト70との隙間を介してオイル供給路74に流れる。この際、第2滑り軸受432と回転シャフト70との隙間が第2減圧部となることで、オイル供給路74は、第2空間832よりも低い中間圧となる。オイル供給路74に流入したオイルは、導出穴742を介して、ピストンロータ41とクランク部72との隙間に供給される。
【0090】
冷房モード時は、
図19に示すように、圧縮荷重Fcが、ピストンロータ41をクランク部72の第2領域AR2に押し付けるように作用する。このため、第2導出部746がピストンロータ41によって閉塞される可能性があるが、第1導出部745がピストンロータ41から離間するので、第1導出部745を介してクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルが供給される。
【0091】
クランク部72とピストンロータ41の隙間に供給されたオイルは、圧縮機構40の内側に形成される隙間を介して圧縮室423の低圧側に流れる。これにより、圧縮室423を形成する部品が潤滑される。圧縮室423に流れたオイルは、冷媒とともに再び圧縮されて第2空間832に戻り、第2オイル貯留部862に貯留される。
【0092】
[暖房モード]
冷凍サイクル装置1は、暖房モード時に、圧縮機10の回転シャフト70が第2回転方向R2に回転される。これにより、
図1に示すように、圧縮機10で高温高圧となるまで圧縮された冷媒は、第1熱交換器11に流入して送風機16から送風される空気に放熱して凝縮する。この際、送風機16から送風される空気が加熱されてシートの表面側に供給される。第1熱交換器11を通過した後の冷媒は、絞り装置12にて所望の圧力まで減圧された後、第2熱交換器13に流入する。第2熱交換器13に流入した冷媒は、空調ケース15の外部から吸熱して蒸発する。第2熱交換器13で蒸発した冷媒は、圧縮機10に再び吸入された圧縮される。
【0093】
具体的には、圧縮機10は、暖房モード時に、電動モータ30への電力供給によって回転シャフト70が、
図20に示す上死点位置から第2回転方向R2に回転されると、第2空間832から第2連通部422を介して圧縮室423の第2室423bに吸入される。第2室423bへ冷媒を吸入する吸入工程は、ピストンロータ41が再び上死点位置に回転されると完了する。冷媒の吸入工程の完了後、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転されると、冷媒は第1室423aにて圧縮される。第1室423aにて圧縮された冷媒は、第1連通部421を介して第1空間831に吐出される。そして、第1空間831に吐出された冷媒は、第1接続流路833を介して第1接続口81から第1熱交換器11に向けて吐出される。
【0094】
ここで、暖房モード時には、第1空間831が高圧空間となり、第2空間832が低圧空間となる。第1空間831が第2空間832よりも高圧となることで、第1可動部材541および第2可動部材542は、軸方向DRaの一方側へ変位する。これにより、暖房モード時は、第1吐出弁531がシリンダ42に当接して逆流防止機能が発揮される位置に変位し、第2吐出弁532がシリンダ42から離間して逆流防止機能が発揮されない位置に変位する。
【0095】
また、暖房モード時は、第1空間831が高圧となることで、第1空間831の冷媒が、第1連通路841を介して圧力室425に導入される。また、第2連通路842には、第2逆止弁852が設けられているので、圧力室425の冷媒は第2空間832に流れない。これにより、圧力室425が高圧に維持されることで、ベーン43は、付勢バネ44による付勢力に加えて、圧力室425の圧力を受けてピストンロータ41に向けて付勢される。
【0096】
さらに、暖房モード時は、第1空間831の第1オイル貯留部861に貯留されたオイルが、第1オイル通路871および第1滑り軸受431と回転シャフト70との隙間を介してオイル供給路74に流れる。この際、第1滑り軸受431と回転シャフト70との隙間が第1減圧部となることで、オイル供給路74は、第1空間831よりも低い中間圧となる。オイル供給路74に流入したオイルは、導出穴742を介して、ピストンロータ41とクランク部72との隙間に供給される。
【0097】
暖房モード時は、
図20に示すように、圧縮荷重Fcが、ピストンロータ41をクランク部72の第1領域AR1に押し付けるように作用する。このため、第1導出部745がピストンロータ41によって閉塞される可能性があるが、第2導出部746がピストンロータ41から離間するので、第2導出部746を介してクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルが供給される。
【0098】
クランク部72とピストンロータ41の隙間に供給されたオイルは、圧縮機構40の内側に形成される隙間を介して圧縮室423の低圧側に流れる。これにより、圧縮室423を形成する部品が潤滑される。圧縮室423に流れたオイルは、冷媒とともに再び圧縮されて第1空間831に戻り、第1オイル貯留部861に貯留される。
【0099】
[運転停止]
冷凍サイクル装置1は、運転停止時に、圧縮機10の回転シャフト70が回転停止状態となり、冷媒配管14および圧縮機構40の内部等を介して第1空間831と第2空間832とが連通して、第1空間831と第2空間832とが均圧する。この状態では、圧縮機10は、第1付勢部材551によって第1可動部材541が軸方向DRaの他方側へ変位し、第2付勢部材552によって第2可動部材542が軸方向DRaの一方側へ変位する。これにより、回転シャフト70が停止しているときは、第1吐出弁531および第2吐出弁532がシリンダ42から離間して逆流防止機能が発揮されない位置に変位する。
【0100】
以上説明した圧縮機10は、圧縮機構40を備える。圧縮機構40は、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転したときに第1連通部421から圧縮室423に吸入した冷媒を圧縮して第2連通部422に吐出する構造になっている。また、圧縮機構40は、回転シャフト70が第1回転方向R1と逆の第2回転方向R2に回転したときに第2連通部422から圧縮室423に吸入した冷媒を圧縮して第1連通部421に吐出する構造になっている。そして、クランク部72には、クランク部72とピストンロータ41との隙間にオイルを導出する導出穴742が形成されている。この導出穴742は、クランク部72における第1領域AR1および第2領域AR2の双方に開口している。これによると、導出穴742の閉塞が生じ難くなるので、圧縮機10の信頼性を確保することができる。
【0101】
また、本実施形態の圧縮機10は、以下の特徴を備える。
【0102】
(1)導出穴742は、第1領域AR1に開口する第1導出部745、第2領域AR2に開口する第2導出部746を含んでいる。これによると、仮に、第1導出部745および第2導出部746の一方がピストンロータ41で閉塞されたとしても、第1導出部745および第2導出部746の他方を通じてピストンロータ41とクランク部72との間へのオイル供給を継続させることができる。
【0103】
(2)第1導出部745は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転している際にピストンロータ41に対して最も大きい荷重が作用するタイミングでピストンロータ41から離間する部位に開口している。第2導出部746は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転している際にピストンロータ41に対して最も大きい荷重が作用するタイミングでピストンロータ41から離間する部位に開口している。これによると、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転している際には、第1導出部745を通じてピストンロータ41とクランク部72との間へのオイル供給を継続させることができる。また、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転している際には、第2導出部746を通じてピストンロータ41とクランク部72との間へのオイル供給を継続させることができる。
【0104】
(3)第1導出部745および第2導出部746は、クランク部72の周方向において異なる位置に開口している。このようになっていれば、仮に、各導出部745、746の一方がピストンロータ41で閉塞されたとしても、各導出部745、746の他方を通じてピストンロータ41とクランク部72との間へのオイル供給を継続させることができる。
【0105】
(4)圧縮機10は、第1吐出弁531、第2吐出弁532、第1吐出弁531の逆流防止機能および第2吐出弁532の逆流防止機能の有効化および無効化を切り替える機能切替部54を備える。この機能切替部54は、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転したときに第2吐出弁532の逆流防止機能を有効化し、且つ、第1吐出弁531の逆流防止機能を無効化する。また、機能切替部54は、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転したときに第1吐出弁531の逆流防止機能を有効化し、且つ、第2吐出弁532の逆流防止機能を無効化する。
【0106】
このような構成によれば、第1連通部421および第2連通部422のうち、逆流防止機能が無効化された一方の連通部から圧縮室423へと冷媒を吸入することができる。そして、圧縮室423で所望の圧力まで昇圧した冷媒を逆流防止機能が有効化された他方の連通部へ吐出することができる。したがって、各吐出弁531、532を省略することなく、正・逆どちらの回転方向でも冷媒の圧縮が可能な圧縮機10をシンプルな構造で実現することができる。
【0107】
(5)機能切替部54は、圧縮機構40の動作によって生ずる冷媒の圧力差によって変位する第1可動部材541と、圧縮機構40の動作によって生ずる冷媒の圧力差によって変位する第2可動部材542と、を含む。第1可動部材541は、第1吐出弁531に連結されている。第1可動部材541は、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転したときに逆流防止機能が発揮されない位置に第1吐出弁531を変位させ、第2回転方向R2に回転したときに逆流防止機能が発揮される位置に第1吐出弁531を変位させる。また、第2可動部材542は、第2吐出弁532に連結されている。第2可動部材542は、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転したときに逆流防止機能が発揮される位置に第2吐出弁532を変位させ、第2回転方向R2に回転したときに逆流防止機能が発揮されない位置に第2吐出弁532を変位させる。
【0108】
このように、圧縮機構40の動作によって発生する圧力差を利用すれば、専用のアクチュエータ等を追加することなく、各吐出弁531、532の逆流防止機能の有効化および無効化を切り替えることができる。
【0109】
(6)圧縮機構40は、第1空間831および第2空間832と回転シャフト70の軸方向DRaに並ぶように、第1空間831と第2空間832との間に配置されている。第1可動部材541は、一部が第1空間831に露出することで第1空間831の圧力を受けるとともに、第2圧力導入穴892を介して導入される第2空間832の圧力を受けることで回転シャフト70の軸方向DRaに変位可能になっている。第2可動部材542は、一部が第2空間832に露出することで第2空間832の圧力を受けるとともに、第1圧力導入穴891を介して導入される第1空間831の圧力を受けることで、回転シャフト70の軸方向DRaに変位可能になっている。
【0110】
このように、圧縮機構40を第1空間831と第2空間832との間に配置すれば、各圧力導入穴891、892同士が干渉し難くなるので、各圧力導入穴891、892の設置位置等の自由度を確保することができる。
【0111】
(7)第1圧力導入穴891および第2圧力導入穴892は、回転シャフト70の軸方向DRaに沿って延びている。このように、各圧力導入穴891、892をストレートな穴で構成すれば、構造がシンプルで加工コストの低減も図ることができる。
【0112】
(8)機能切替部54は、回転シャフト70が停止しているときには第1吐出弁531の逆流防止機能および第2吐出弁532の逆流防止機能それぞれを無効化する。このように、回転シャフト70の停止時に、第1吐出弁531の逆流防止機能および第2吐出弁532の逆流防止機能それぞれを無効化すれば、圧縮機10の停止時における圧縮機10の内部の冷媒の均圧化を促進させることができる。このことは、例えば、圧縮機10の回転方向の切り替えに要する時間の短縮化に寄与する。
【0113】
(9)機能切替部54は、逆流防止機能が発揮されない位置に向けて第1吐出弁531を付勢する第1付勢部材551と、逆流防止機能が発揮されない位置に向けて第2吐出弁532を付勢する第2付勢部材552と、を含んでいる。第1付勢部材551は、回転シャフト70が停止しているときに逆流防止機能が発揮されない位置に第1吐出弁531を変位させる。また、第2付勢部材552は、回転シャフト70が停止しているときに逆流防止機能が発揮されない位置に第2吐出弁532を変位させる。これによれば、回転シャフト70の停止時における第1吐出弁531の逆流防止機能および第2吐出弁532の逆流防止機能それぞれの無効化をシンプルな構成で実現することができる。
【0114】
(10)圧縮機構40は、圧縮室423を第1連通部421に連通する第1室423aと第2連通部422に連通する第2室423bとに分離するベーン43を含んでいる。ベーン43は、圧縮機構40の動作によって冷媒が導入される圧力室425の圧力によって第1室423aと第2室423bとをシールする。第1空間831は、第1連通部421を介して圧縮室423に連通するとともに第1連通路841を介して圧力室425に連通する。第1連通路841は、第1逆止弁851によって、第1空間831から圧力室425への冷媒の流れが許容され、圧力室425から第1空間831への冷媒の流れが禁止されている。第2空間832は、第2連通部422を介して圧縮室423に連通するとともに第2連通路842を介して圧力室425に連通する。第2連通路842は、第2逆止弁852によって、第2空間832から圧力室425への冷媒の流れが許容され、圧力室425から第2空間832への冷媒の流れが禁止されている。圧力室425には、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転したときに圧縮室423から第2連通部422を介して第2空間832に吐出される高圧の冷媒が第2連通路842を介して導入される。また、圧力室425には、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転したときに圧縮室423から第1連通部421を介して第1空間831に吐出される高圧の冷媒が第1連通路841を介して導入される。
【0115】
これによると、回転シャフト70が回転している際には、第1連通路841または第2連通路842を介して高圧の冷媒が圧力室425に対して導入される。そして、各逆止弁851、852が設けられていることで、圧力室425の圧力が各連通路841、842のうち低圧となる連通路に抜けることが防止される。これにより、回転シャフト70が回転している際には圧力室425を高い圧力に維持されるので、ベーン43による第1室423aと第2室423bとのシール性を充分に確保することができる。
【0116】
ここで、ローリングピストン型圧縮機では、運転中は常にベーン43をピストンロータ41に押し付けておく必要がある。ピストンロータ41が揺動運動するため、回転数が上がるほどベーン43の上下動が激しくなる。これに打ち勝ってベーン43をピストンロータ41に押し付けておくためには大きな荷重が必要になり、付勢バネ44だけでは、体格の大型化および低回転時のベーン43の押付荷重過大によるベーン43の先端摩耗が生じずる虞がある。片方向にしか回転しない片回転ローリングピストン型圧縮機ではベーン43の背面部分を高圧空間と連通させておき圧縮室423との差圧を使ってベーン43をピストンロータ41に押し付ける。しかし、両回転化すると正回転時の高圧空間が逆回転時に低圧空間となるため、片回転ローリングピストン圧縮機と同じ構造を採用することはできない。このことは、スライドベーン型圧縮機においても同様である。
【0117】
そこで、本実施形態では、各逆止弁851、852を介して各空間831、832をベーン43の背面部分である圧力室425と連通させ、高圧冷媒の圧力を圧力室425に導入し、圧縮室423との差圧を使ってベーン43をピストンロータ41に押し付ける。各逆止弁851、852があることで、圧縮室423から低圧側への冷媒漏れが抑制される。
【0118】
(11)第1空間831には、冷媒に混合されたオイルを貯留する第1オイル貯留部861が設けられている。第1オイル貯留部861は、第1減圧部および第1オイル通路871を介して圧縮機構40の摺動部位に連通している。第2空間832には、オイルを貯留する第2オイル貯留部862が設けられている。第2オイル貯留部862は、第2減圧部および第2オイル通路872を介して圧縮機構40の摺動部位に連通している。圧縮機構40の摺動部位には、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転したときの第2空間832と圧縮室423との圧力差によって第2オイル貯留部862に貯留されたオイルが第2減圧部および第2オイル通路872を介して供給される。また、圧縮機構40の摺動部位には、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転したときの第1空間831と圧縮室423との圧力差によって第1オイル貯留部861に貯留されたオイルが第1減圧部および第1オイル通路871を介して供給される。
【0119】
これによると、回転シャフト70が回転している際には、第1オイル貯留部861および第2オイル貯留部862の一方に貯留されたオイルを第1オイル通路871および第2オイル通路872の一方を介して圧縮機構40の摺動部位に供給することができる。
【0120】
(12)冷凍サイクル装置1は、上記の圧縮機10と、第1接続口81に接続される第1熱交換器11と、第2接続口82に接続される第2熱交換器13と、第1熱交換器11と第2熱交換器13との間に接続される絞り装置12と、を備える。また、冷凍サイクル装置1は、冷媒を、圧縮機10、第1熱交換器11、絞り装置12、第2熱交換器13の間で循環するように接続する冷媒配管14を備える。
【0121】
これによると、サイクル内に流路切替弁を追加することなく、単一の圧縮機10によって、一方の熱交換器を吸熱器とし、他方の熱交換器を放熱器とするモードと、一方の熱交換器を放熱器とし、他方の熱交換器を吸熱器とするモードと、を切り替えることができる。このことは、サイクル構成の簡素化に寄与する。
【0122】
(第1実施形態の変形例)
導出穴742の第1導出部745は、第1領域AR1における任意の位置に設けることができる。また、導出穴742の第2導出部746は、第2領域AR2における任意の位置に設けることができる。
【0123】
クランク部72には、導出穴742として第1導出部745および第2導出部746といった2つの開口部が設けられているものに限定されず、例えば、導出穴742として3つ以上の開口部が設けられていてもよい。
【0124】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図21~
図24を参照して説明する。本実施形態では、第1導出部745および第2導出部746の代わりに第3導出部747が導出穴742としてクランク部72に設けられている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0125】
図21に示すように、クランク部72には、ピストンロータ41と対向する部位にオイルを導出する導出穴742として単一の第3導出部747が形成されている。第3導出部747は、クランク部72の第1領域AR1および第2領域AR2の双方にまたがって開口している。本実施形態の第3導出部747は、クランク部72における第2交点CP2を含む位置に開口している。
【0126】
具体的には、第3導出部747は、第1領域AR1および第2領域AR2の双方に均等にまたがるように開口している。
図22に示すように、第3導出部747は、穴形状が円形状となる穴によって構成されている。
【0127】
このように構成される圧縮機10は、
図23に示すように、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転する際に、圧縮荷重Fcが、ピストンロータ41をクランク部72の第2領域AR2に押し付けるように作用する。このため、第3導出部747における第2領域AR2側がピストンロータ41によって閉塞される可能性があるが、第3導出部747における第1領域AR1側がピストンロータ41から離間する。したがって、第3導出部747における第1領域AR1側からクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルが供給される。クランク部72とピストンロータ41の隙間に供給されたオイルは、圧縮機構40の内側に形成される隙間を介して圧縮室423の低圧側に流れる。これにより、圧縮室423を形成する部品が潤滑される。
【0128】
また、圧縮機10は、
図24に示すように、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転する際に、圧縮荷重Fcが、ピストンロータ41をクランク部72の第1領域AR1に押し付けるように作用する。このため、第3導出部747における第1領域AR1側がピストンロータ41によって閉塞される可能性があるが、第3導出部747における第2領域AR2側がピストンロータ41から離間する。したがって、第3導出部747における第2領域AR2側からクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルが供給される。クランク部72とピストンロータ41の隙間に供給されたオイルは、圧縮機構40の内側に形成される隙間を介して圧縮室423の低圧側に流れる。これにより、圧縮室423を形成する部品が潤滑される。
【0129】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0130】
また、本実施形態の圧縮機10は、以下の特徴を備える。
【0131】
(1)導出穴742は、第1領域AR1および第2領域AR2の双方にまたがって開口する第3導出部747を含んでいる。このようになっていれば、仮に、第3導出部747における第1領域AR1側の部位がピストンロータ41で閉塞されたとしても、第2領域AR2側の部位を通じてピストンロータ41とクランク部72との間へのオイル供給を継続させることができる。
【0132】
(2)また、第3導出部747は、クランク部72における第2交点CP2を含む位置に開口している。クランク部72における一対の交点のうち回転シャフト70の軸心CLに近い第2交点CP2近傍では、圧縮室423から冷媒を吐出する段階において、圧縮荷重Fcによってピストンロータ41とクランク部72との隙間が拡大し易い。このため、第3導出部747は、クランク部72における仮想線ILとの一対の交点CP1、CP2のうち回転シャフト70の軸心CLに近い第2交点近傍に開口していることが望ましい。
【0133】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、圧縮機構40の詳細について説明したが、圧縮機構40は上述したものに限定されず、適宜変形可能である。例えば、以下のように変形可能である。
【0134】
(第1変形例)
第3導出部747Aは、例えば、
図25に示すように、クランク部72における第2交点CP2ではなく第1交点CP1を含む位置に開口していてもよい。また、導出穴742は、クランク部72における第1交点CP1だけでなく、第2交点CP2を含む位置に設けられていてもよい。
【0135】
(第2変形例)
第3導出部747Bは、例えば、
図26に示すように、穴形状が楕円形状となる穴によって構成されている。このことは、第2交点CP2に対して導出穴742を設ける場合についても同様である。
【0136】
(第3変形例)
クランク部72は、
図27、
図28に示すように、断面形状がD字形状に、第3導出部747が開口する部分に平坦部748に設けられていてもよい。このようになっていれば、ピストンロータ41による第3導出部747の閉塞を防止することができる。但し、第3導出部747近傍においてピストンロータ41とクランク部72との隙間が大きすぎると、当該隙間にオイルが偏り易くなってしまうことから、クランク部72に対して設ける平坦部748の大きさは、最小限にとどめること望ましい。
【0137】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図29~
図31を参照して説明する。本実施形態では、第1導出部745および第2導出部746の開口位置が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0138】
冷凍サイクル装置1は、冷房モード時に、圧縮機10の吸入側の冷媒圧力が所望の圧力となるように圧縮機10の回転数が調整される。本発明者らの試算によると、例えば、
図29に示すように、上死点を基準とする回転シャフト70の回転角度が238°となる際に、冷媒の圧力が最大となる。このタイミングで、ピストンロータ41に対して最も大きい圧縮荷重Fc(すなわち、最大荷重)が作用する。回転シャフト70の第1回転方向R1への回転角度が238°を超えると、ピストンロータ41における吐出冷媒の圧力を受ける面積が小さくなることで、圧縮荷重Fcは徐々に小さくなる。
【0139】
一方、暖房モード時には、圧縮機10の吐出側の冷媒圧力が所望の圧力となるように圧縮機10の回転数が調整される。本発明者らの試算によると、例えば、
図30に示すように、上死点を基準とする回転シャフト70の第2回転方向R2への回転角度が265°となる際に、冷媒の圧力が最大となる。このタイミングで、ピストンロータ41に対して最も大きい圧縮荷重Fc(すなわち、最大荷重)が作用する。回転シャフト70の回転角度が265°を超えると、ピストンロータ41における吐出冷媒の圧力を受ける面積が小さくなることで、圧縮荷重Fcは徐々に小さくなる。
【0140】
これらを考慮し、本実施形態の第1導出部745は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転している際にピストンロータ41に対して最大荷重が作用する位置から回転シャフト70の周方向に180°ずれた位置に開口している。また、第2導出部746は、クランク部72のうち、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転している際にピストンロータ41に対して最大荷重が作用する位置から回転シャフト70の周方向に180°ずれた位置に開口している。これによると、第1導出部745および第2導出部746のいずれかを介してピストンロータ41とクランク部72との間へのオイル供給を適切に継続させることができる。
【0141】
具体的には、第1導出部745および第2導出部746は、
図31に示すように、仮想線ILを挟んで左右非対称となるように形成されている。換言すれば、上死点を基準とする第1導出部745までの回転角θaと、上死点を基準とする第2導出部746までの回転角θbとは一致しない(θa>θb)。
【0142】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0143】
(第3実施形態の変形例)
第2実施形態の如く、導出穴742が第3導出部747で構成される場合、例えば、
図32に示すように、第3導出部747は、開口面積が第2領域AR2よりも第1領域AR1の方が大きくなるように開口させることが望ましい。
【0144】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図33~
図35を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0145】
図33に示すように、導出穴742は、第1導出部745Aおよび第2導出部746Aが単一の貫通穴によって形成されている。具体的には、第1導出部745Aおよび第2導出部746Aは、仮想線ILに直交する方向に延びる単一の貫通穴によって形成されている。第1導出部745Aおよび第2導出部746Aを構成する貫通穴は、クランク部72の中心Crを通過するように延びている。
【0146】
このように構成される圧縮機10は、
図34に示すように、回転シャフト70が第1回転方向R1に回転する際に、圧縮荷重Fcが、ピストンロータ41をクランク部72の第2領域AR2に押し付けるように作用する。この際、第2導出部746Aがピストンロータ41によって閉塞される可能性があるが、第1導出部745Aがピストンロータ41から離間する。したがって、第1導出部745Aからクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルが供給される。
【0147】
また、圧縮機10は、
図35に示すように、回転シャフト70が第2回転方向R2に回転する際に、圧縮荷重Fcが、ピストンロータ41をクランク部72の第1領域AR1に押し付けるように作用する。この際、第1導出部745Aがピストンロータ41によって閉塞される可能性があるが、第2導出部746Aがピストンロータ41から離間する。したがって、第2導出部746Aからクランク部72とピストンロータ41の隙間にオイルが供給される。
【0148】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0149】
また、本実施形態の圧縮機10は、以下の特徴を備える。
【0150】
(1)第1導出部745Aおよび第2導出部746Aは、単一の貫通穴によって形成されている。このように構成されていれば、簡易な形態で圧縮機10の信頼性を確保することができる。
【0151】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図36を参照して説明する。本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0152】
第1、第2実施形態では、クランク部72として、クランク部72における軸方向DRaの略中央部分に導出穴742が1つ形成されているものを例示したが、クランク部72は、このようなものに限定されない。
【0153】
例えば、
図36に示すように、クランク部72には、クランク部72における軸方向DRaに並ぶように2つの導出穴742A、742Bが形成されていてもよい。なお、クランク部72には、導出穴742が3つ以上形成されていてもよい。このようになっていれば、一部の導出穴742がピストンロータ41によって閉塞されたとしても、その他の導出穴742を介してピストンロータ41とクランク部72との隙間にオイルを供給することができる。
【0154】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0155】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0156】
上述の実施形態の如く、導出穴742は、クランク部72における第1領域AR1および第2領域AR2の双方に開口していることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0157】
上述の実施形態の如く、高圧冷媒の圧力を圧力室425に導入し、圧縮室423との差圧を使ってベーン43をピストンロータ41に押し付ける構造になっていることが望ましいが、圧縮機10は、これに限定されない。圧縮機10は、ベーン43が付勢バネ44だけでピストンロータ41に押し付けられる構造になっていてもよい。
【0158】
上述の実施形態では、第1空間831および第2空間832に対してオイルが貯留されるものを例示したが、圧縮機10は、これに限定されない。圧縮機10は、例えば、ハウジング20の外側に設置されるオイルタンクにオイルが貯留されるようになっていてもよい。
【0159】
上述の実施形態の如く、圧縮機構40は、第1吐出弁531および第2吐出弁532を備えることが望ましいが、これに限らず、第1吐出弁531および第2吐出弁532の少なくとも一方が省略されていてもよい。
【0160】
上述の実施形態のハウジング20は、例えば、メインハウジング21、サブハウジング22、第1ミドルハウジング23、第2ミドルハウジング24、第3ミドルハウジング25等を有しているが、これとは異なる構成になっていてもよい。
【0161】
上述の実施形態の電動モータ30は、インナロータ型のモータに構成されていたが、これに限らず、例えば、固定子31の外側に可動子32が配置されるアウタロータ型のモータで構成されていてもよい。
【0162】
上述の実施形態の圧縮機構40は、ローリングピストン型の構造になっていたが、これに限定されず、他の構造を有するもので構成されていてもよい。なお、圧縮機構40は、電動モータ30以外の正・逆の回転可能な原動機からの出力によって駆動されるようになっていてもよい。
【0163】
上述の実施形態は、本開示の圧縮機10を冷凍サイクル装置1に適用したものを例示したが、本開示の圧縮機10の適用対象は、これに限定されない。本開示の圧縮機10は、冷凍サイクル装置1以外の装置(例えば、冷媒以外の流体を圧縮する装置)にも適用可能である。
【0164】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0165】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0166】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0167】
10 圧縮機
20 ハウジング
40 圧縮機構
41 ピストンロータ
43 シリンダ
70 回転シャフト
72 クランク部
742 導出穴(オイル導出穴)
831 第1空間(第1流入出部)
832 第2空間(第2流入出部)