IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エレベータ制御システム 図1
  • 特開-エレベータ制御システム 図2
  • 特開-エレベータ制御システム 図3
  • 特開-エレベータ制御システム 図4
  • 特開-エレベータ制御システム 図5
  • 特開-エレベータ制御システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032338
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】エレベータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20240305BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20240305BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B13/14 N
B66B13/14 Q
B66B1/14 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135939
(22)【出願日】2022-08-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】真壁 立
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔一
(72)【発明者】
【氏名】宮野 一輝
(72)【発明者】
【氏名】寺島 英明
【テーマコード(参考)】
3F303
3F307
3F502
【Fターム(参考)】
3F303BA05
3F303CA16
3F303CB24
3F303CB27
3F303CB29
3F303CB35
3F307BA06
3F307EA21
3F307EA28
3F502HB02
3F502JA24
3F502JA29
3F502JA54
3F502KA13
3F502KA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車椅子利用者だけでなく、車椅子利用者を含む車椅子相当利用者をより正確に検出することができ、利便性を向上させることができるエレベータ制御システムを得ることを目的とする。
【解決手段】エレベータ制御システムは、運行制御部21、加速度センサ22、及び情報処理部23を有している。運行制御部21は、主制御装置5と、ドアコントローラ13とを有している。加速度センサ22は、かご室に設けられている。加速度センサ22は、かご枠に対するかご室の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する。情報処理部23は、加速度センサ22からの加速度検出信号を受信し処理する。これによって、情報処理部23は、乗場とかご室内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご室の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する1軸以上の加速度センサ、
前記加速度検出信号を受信し処理することによって、乗場と前記かご室内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に、車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する情報処理部、及び
前記情報処理部における判定結果に基づいて、かごの運行に関する制御を行う運行制御部
を備え、
前記情報処理部には、前記車椅子相当利用者が前記乗場と前記かご室内との間を移動したときに前記かご室に生じる振動に関する情報である特定振動情報が記憶されており、
前記情報処理部は、前記加速度検出信号を処理して得られる前記かご室の振動に関する値を、前記特定振動情報と比較することによって、前記車椅子相当利用者がいるかどうかの判定を行うエレベータ制御システム。
【請求項2】
前記運行制御部による前記かごの運行モードには、通常モードと、車椅子モードとが含まれており、
前記運行制御部は、車椅子利用者のための操作ボタンである専用ボタンの操作が行われた場合、
前記情報処理部における判定結果に基づいて、前記専用ボタンの操作による呼びにかかわる少なくとも1人の利用者の中に前記車椅子相当利用者がいるかどうかを判定し、
前記車椅子相当利用者がいると判定した場合、前記運行モードとして前記車椅子モードを選択し、
前記車椅子相当利用者がいないと判定した場合、前記運行モードとして前記通常モードを選択する請求項1記載のエレベータ制御システム。
【請求項3】
前記運行制御部における前記かごの運行に関する制御には、かごドアの全開状態を維持する時間の制御と、前記かごドアの開閉動作速度の制御と、前記かごドアの開動作を開始するタイミングの制御とのうちの少なくともいずれか1つの制御が含まれている請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記かご室の振動に関する値として、前記かご室の振動の周波数を求める請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項5】
前記特定振動情報は、機械学習によって予め得られた情報である請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項6】
前記機械学習は、前記車椅子相当利用者と、前記車椅子相当利用者以外の利用者である一般利用者とを含む複数の利用者をそれぞれサンプルとし、各前記サンプルが前記乗場と前記かご室内との間を移動したときに前記加速度センサから得られる前記加速度検出信号を入力データとし、各前記サンプルが前記一般利用者であるか前記車椅子相当利用者であるかを出力データとする教師あり学習である請求項5記載のエレベータ制御システム。
【請求項7】
前記特定振動情報は、シミュレーションによって予め得られた情報である請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項8】
前記特定振動情報は、予め指定した1つ以上の閾値情報を利用した情報である請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車椅子兼用エレベータの制御システムでは、かご出入口の上部にカメラが設けられている。カメラによって撮影された映像は、映像解析装置によって解析される。映像解析装置は、乗場に車椅子利用者がいるか否かを判定する。乗場に車椅子利用者がいないと判定されたにもかかわらず、かご内の車椅子専用呼びボタンが操作された場合、制御装置は、一般呼びボタンが操作された場合と同様の呼びを登録する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-151453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の車椅子兼用エレベータの制御システムでは、車椅子専用呼びボタンが操作されても、利用者が車椅子利用者ではないと判定されると、一般の呼びが登録される。このため、台車を押す利用者、ベビーカーを押す利用者など、車椅子利用者以外の利用者であって、車椅子利用者と同等の制御を希望する利用者にも、一般の呼びが登録され、利便性が低下する。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、車椅子利用者だけでなく、車椅子利用者を含む車椅子相当利用者をより正確に検出することができ、利便性を向上させることができるエレベータ制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータ制御システムは、かご室の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する加速度センサ、加速度検出信号を受信し処理することによって、乗場とかご室内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に、車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する情報処理部、及び情報処理部における判定結果に基づいて、かごの運行に関する制御を行う運行制御部を備え、情報処理部には、車椅子相当利用者が乗場とかご室内との間を移動したときにかご室に生じる振動に関する情報である特定振動情報が記憶されており、情報処理部は、加速度検出信号を処理して得られるかご室の振動に関する値を、特定振動情報と比較することによって、車椅子相当利用者がいるかどうかの判定を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエレベータ制御システムによれば、車椅子利用者だけでなく、車椅子利用者を含む車椅子相当利用者をより正確に検出することができ、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1によるエレベータ装置を示す概略の構成図である。
図2】実施の形態1によるエレベータ制御システムを示すブロック図である。
図3】一般利用者と車椅子相当利用者とのそれぞれがかごに乗り込む際にかご室に生じる振動の特性を示すグラフである。
図4図2の情報処理部の動作を示すフローチャートである。
図5】実施の形態1の主制御装置、ドアコントローラ、及び情報処理部の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。
図6】実施の形態1の主制御装置、ドアコントローラ、及び情報処理部の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベータ装置を示す概略の構成図であり、マシンルームレスエレベータを示している。図において、昇降路1の頂部には、支持梁2及び主制御装置5が設けられている。
【0010】
支持梁2には、巻上機3が支持されている。巻上機3は、駆動シーブ4、図示しない巻上機モータ、及び図示しない巻上機ブレーキを有している。巻上機モータは、駆動シーブ4を回転させる。巻上機ブレーキは、駆動シーブ4の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、駆動シーブ4の回転を制動する。
【0011】
駆動シーブ4には、懸架体7が巻き掛けられている。懸架体7としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。
【0012】
かご8及び釣合おもり9は、懸架体7により吊り下げられており、駆動シーブ4を回転させることにより昇降路1内を昇降する。主制御装置5は、巻上機3を制御することにより、かご8の昇降を制御する。
【0013】
昇降路1内には、図示しない一対のかごガイドレールと、図示しない一対の釣合おもりガイドレールとが設置されている。一対のかごガイドレールは、かご8の昇降を案内する。一対の釣合おもりガイドレールは、釣合おもり9の昇降を案内する。
【0014】
かご8は、かご枠10、かご室11、及びかごドア12を有している。かご枠10には、懸架体7が接続されている。かご室11は、かご枠10に支持されている。かご室11には、かご出入口が設けられている。かごドア12は、かご出入口を開閉する。
【0015】
かご8上には、ドアコントローラ13が設けられている。ドアコントローラ13は、かごドア12の開閉動作を制御する。
【0016】
複数階の乗場のそれぞれには、乗場ドア14が設けられている。各乗場において、乗場ドア14は、乗場出入口を開閉する。また、各乗場において、乗場ドア14は、かご8の着床時にかごドア12に連動して開閉動作する。
【0017】
各乗場には、かご8を呼ぶための複数の乗場操作ボタンが設けられている。各乗場において、複数の乗場操作ボタンは、1つ又は2つの乗場側一般ボタン15と、1つ又は2つの乗場側専用ボタン16とを含んでいる。各乗場側専用ボタン16は、車椅子利用者のための操作ボタンである。
【0018】
かご室11内には、行先階を指定するための複数のかご内操作ボタンが設けられている。複数のかご内操作ボタンは、複数のかご側一般ボタン17と、少なくとも1つのかご側専用ボタン18とを含んでいる。かご側専用ボタン18は、車椅子利用者のための操作ボタンである。
【0019】
図2は、実施の形態1によるエレベータ制御システムを示すブロック図である。エレベータ制御システムは、運行制御部21、加速度センサ22、及び情報処理部23を有している。運行制御部21は、主制御装置5と、ドアコントローラ13とを有している。
図2に示さないが、加速度センサ22又は情報処理部23内において、必要に応じて信号処理に不必要なノイズを除去する。
【0020】
加速度センサ22は、図1では省略したが、かご室11に設けられている。より好ましくは、加速度センサ22は、かご室11の床部の下面中央に配置されている。また、加速度センサ22は、少なくとも1軸以上を有し、かご枠10に対するかご室11の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する。
【0021】
情報処理部23は、図1では省略したが、例えばかご8上に設けられている。また、情報処理部23は、加速度センサ22からの加速度検出信号を受信し処理する。これによって、情報処理部23は、乗場とかご室11内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に、車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する。
【0022】
車椅子相当利用者には、車椅子利用者と、かご8の運行に関する制御を車椅子利用者と同じにすべき利用者とが含まれている。具体的には、車椅子相当利用者には、車椅子利用者、台車を押す利用者、ショッピングカートを押している利用者、ベビーカーを押す利用者、車輪付きバッグを使用している利用者、自転車を押している利用者などが含まれている。
【0023】
また、情報処理部23は、かご8の走行中に、かご室11を故意に揺する利用者がかご室11内にいるかどうかを、加速度検出信号に基づいて判定してもよい。
【0024】
情報処理部23は、機能ブロックとして、送受信部23a、信号処理部23b、比較判定部23c、情報記憶部23d、及び学習部23eを有している。
【0025】
送受信部23aは、加速度センサ22からの加速度検出信号を受信する。また、送受信部23aは、運行制御部21との間の信号の送受信を行う。
【0026】
情報記憶部23dには、特定振動情報が記憶されている。特定振動情報は、車椅子相当利用者が乗場とかご室11内との間を移動したときにかご室11に生じる振動に関する情報である。実施の形態1における特定振動情報は、かご室11の振動の周波数に関する情報である。また、特定振動情報は、AI学習、即ち機械学習によって予め得られた情報である。
【0027】
学習部23eは、例えばエレベータ装置の据付後であって通常のサービス開始前に、機械学習によって特定振動情報を得る。機械学習は、例えば教師あり学習である。
【0028】
教師あり学習においては、車椅子相当利用者と、車椅子相当利用者以外の利用者である一般利用者とを含む複数の利用者をそれぞれサンプルとする。そして、各サンプルが乗場とかご室11内との間を移動したときに加速度センサ22から得られる加速度検出信号を入力データとし、各サンプルが一般利用者であるか車椅子相当利用者であるかを出力データとする。
【0029】
信号処理部23bは、エレベータ装置の通常のサービス開始後に、加速度センサ22からの加速度検出信号を処理、フーリエ変換することによって、かご室11の振動に関する値として、かご室11の振動の周波数を求める。フーリエ変換は、リアルタイム性のあるフーリエ変換処理である。例えば、短時間フーリエ変換などがある。
【0030】
比較判定部23cは、信号処理部23bによって求められた周波数を特定振動情報と比較することによって、車椅子相当利用者がいるかどうかの判定を行う。
【0031】
運行制御部21は、情報処理部23における判定結果に基づいて、かご8の運行に関する制御を行う。
【0032】
運行制御部21によるかご8の運行モードには、通常モードと、車椅子モードとが含まれている。
【0033】
運行制御部21は、乗場側専用ボタン16又はかご側専用ボタン18が操作された場合、その操作による呼びにかかわる少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいるかどうかを、情報処理部23における判定結果に基づいて判定する。そして、車椅子相当利用者がいると判定した場合、運行モードとして車椅子モードを選択する。また、車椅子相当利用者がいないと判定した場合、運行モードとして通常モードを選択する。
【0034】
運行制御部21におけるかご8の運行に関する制御には、戸開不干渉時間の制御と、開閉速度制御と、戸開タイミング制御とのうちの少なくともいずれか1つの制御が含まれている。
【0035】
戸開不干渉時間の制御は、かごドア12の全開状態を維持する時間の制御である。車椅子モードにおける戸開不干渉時間は、通常モードにおける戸開不干渉時間よりも長い。
【0036】
開閉速度制御は、かごドア12の開閉動作速度の制御である。車椅子モードにおける開閉動作速度は、通常モードにおける開閉動作速度よりも低い。
【0037】
戸開タイミング制御は、かごドア12の開動作を開始するタイミングの制御である。通常モードにおいては、かご8が着床する直前、即ちかご8が完全に停止する前に、開動作が開始される。車椅子モードにおいては、かご8が着床して完全に停止してから、開動作が開始される。
【0038】
また、運行制御部21は、かご8の走行中に、かご室11を故意に揺する利用者がかご室11内にいると情報処理部23によって判定された場合、運行モードとして車椅子モードを選択してもよい。
【0039】
例えば、運行制御部21は、乗場側専用ボタン16が操作され、かつその乗場からかご室11内に移動した少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいると判定した場合、戸開不干渉時間を延長してもよいし、戸閉速度を低速にしてもよい。
【0040】
また、運行制御部21は、乗場側専用ボタン16が操作されたにもかかわらず、その乗場からかご室11内に移動した車椅子相当利用者はいないと判定した場合、戸開不干渉時間を延長せず、戸閉速度も低速にしない。
【0041】
また、運行制御部21は、乗場側専用ボタン16が操作されていないが、乗場からかご室11内に移動した少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいると判定した場合、戸開不干渉時間を延長してもよいし、戸閉速度を低速にしてもよい。
【0042】
また、運行制御部21は、乗場からかご室11内に車椅子相当利用者が移動したと判定し、その直後にかご側専用ボタン18によって行先階が指定された場合、行先階において、かご8が完全に停止してから、開動作を開始する。また、この場合、運行制御部21は、行先階において、戸開不干渉時間を延長してもよいし、戸閉速度を低速にしてもよい。
【0043】
また、運行制御部21は、かご側専用ボタン18が操作されたにもかかわらず、その直前に乗場からかご室11内に移動した車椅子相当利用者はいないと判定した場合、行先階において、かご8が着床する直前に開動作を開始する。また、この場合、運行制御部21は、行先階において、戸開不干渉時間を延長せず、開閉速度も低速にしない。
【0044】
また、運行制御部21は、かご側一般ボタン17のみが操作されたが、その直前に乗場からかご室11内に移動した少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいると判定した場合、行先階において、かご8が完全に停止してから、開動作を開始してもよい。また、この場合、運行制御部21は、行先階において、戸開不干渉時間を延長してもよいし、戸閉速度を低速にしてもよい。
【0045】
図2に示したブロック図は、図1のマシンルームレスエレベータに限らず、機械室を有するエレベータ装置、油圧式エレベータなど、他の構造のエレベータ装置においても成立する。
【0046】
図3は、一般利用者と車椅子相当利用者とのそれぞれがかご8に乗り込む際にかご室11に生じるかご上下方向の1軸の振動の特性を示すスペクトログラムのグラフである。かご室11は、かご枠10に支持されている。利用者が乗場からかご室11内に移動する際、及び利用者がかご室11内から乗場に移動する際には、かご室11内の重量の変移とそれに伴うかご室11への衝撃により、かご室11に振動が生じる。
【0047】
また、一般利用者と車椅子相当利用者とでは、乗場とかご室11内との間を移動する際にかご室11に加わる衝撃が相違する。このような相違によって、かご室11に生じる振動の周波数特性に相違が生じる。
【0048】
図3において、周波数Aは、一般利用者が乗場からかご室11内に移動する際に生じる振動の周波数である。また、周波数Bは、車椅子相当利用者が乗場からかご室11内に移動する際に生じる振動の周波数であり、周波数Aよりも低い。
【0049】
情報処理部23は、加速度センサ22からの加速度検出信号を処理して、かご室11に生じる振動をスペクトログラムにリアルタイム変換し、周波数Bの有無を判定する。
【0050】
図3における「一般戸閉」は、通常モードにおいて戸開不干渉時間が終了するタイミングを示している。情報処理部23は、かご8の着床時に、戸開開始のタイミングから一般戸閉のタイミングまでの間に、車椅子相当利用者の有無の判定を実行する。
【0051】
図3の例では、3人の一般利用者と1人の車椅子相当利用者とが乗場からかご室11内に移動したことが検出されている。一般利用者と車椅子相当利用者とが同時にかご室11内に移動した場合にも、周波数Bを検出することにより、車椅子相当利用者が存在すると判定される。
【0052】
図3の例では、かご上下方向の1軸で示したが、かご8に取り付けた加速度センサ22の位置に依存して、1つ以上の軸を用いても判定することができる。
【0053】
図4は、図2の情報処理部23の動作を示すフローチャートである。情報処理部23は、図4の処理を繰り返し実行する。
【0054】
情報処理部23は、まずステップS101において、加速度センサ22から加速度検出信号を受信し取得する。続いて、情報処理部23は、ステップS102において、加速度検出信号を処理して、かご室11に生じている振動の周波数を得る。
【0055】
この後、情報処理部23は、ステップS103において、かご室11に生じている振動の周波数を特定振動情報と比較し、車椅子相当利用者の有無を判定する。そして、情報処理部23は、ステップS104において、判定結果を運行制御部21に送信する。
【0056】
このようなエレベータ制御システムでは、加速度センサ22は、かご室11の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する。情報処理部23は、加速度検出信号を受信し処理することによって、乗場とかご室11内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する。そして、運行制御部21は、情報処理部23における判定結果に基づいて、かご8の運行に関する制御を行う。
【0057】
情報処理部23には、特定振動情報が記憶されている。そして、情報処理部23は、加速度検出信号を処理して得られるかご室11の振動に関する値を、特定振動情報と比較することによって、車椅子相当利用者がいるかどうかの判定を行う。
【0058】
このため、車椅子利用者だけでなく、車椅子利用者を含む車椅子相当利用者をより正確に検出することができ、利便性を向上させることができる。
【0059】
カメラから得た利用者の映像を解析することにより利用者のカテゴリーを判定する方法では、高度な映像認識処理と複雑な判定処理とが必要である。また、カメラから見て、他の利用者の後ろにいる利用者のカテゴリーを判定することが難しい。また、様々な外形及びサイズの車椅子が存在するため、車椅子利用者を正確に検出することは難しい。また、車椅子利用者以外の車椅子相当利用者を検出することも難しい。
【0060】
これに対して、実施の形態1のエレベータ制御システムでは、加速度検出信号から振動の周波数を求めるため、処理が簡単である。また、利用者の人数及び位置によらず、車椅子相当利用者の有無に関する判定を行うことができる。また、様々なタイプの車椅子利用者をより正確に検出することができるとともに、車椅子利用者以外の車椅子相当利用者をより正確に検出することができる。
【0061】
また、運行制御部21は、乗場側専用ボタン16又はかご側専用ボタン18が操作された場合、その操作による呼びにかかわる少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいるかどうかを、情報処理部23における判定結果に基づいて判定する。そして、車椅子相当利用者がいると判定した場合、運行モードとして車椅子モードを選択する。また、車椅子相当利用者がいないと判定した場合、運行モードとして通常モードを選択する。
【0062】
このため、一般利用者が、意図に相違して乗場側専用ボタン16又はかご側専用ボタン18を操作した場合でも、呼びにかかわる少なくとも1人の利用者の中に車椅子相当利用者がいなければ、車椅子モードが選択されない。このため、かご8の運行効率の低下を抑制することができる。これにより、複数のエレベータ装置を含むエレベータシステムにおいても、システム全体の運行効率の低下を抑制することができる。
【0063】
また、かご8の運行に関する制御には、戸開不干渉時間の制御と、開閉速度制御と、戸開タイミング制御とのうちの少なくともいずれか1つの制御が含まれている。このため、かご8の運行効率の低下をより確実に抑制することができる。
【0064】
また、情報処理部23は、かご室11の振動に関する値として、かご室11の振動の周波数を求める。このため、簡単な処理によって、車椅子相当利用者の有無に関する判定をより正確に行うことができる。
【0065】
また、特定振動情報は、機械学習によって予め得られた情報である。このため、エレベータ装置毎の違いによらず、車椅子相当利用者の有無に関する判定をより正確に行うことができる。
【0066】
また、機械学習は、教師あり学習である。教師あり学習においては、車椅子相当利用者と一般利用者とを含む複数の利用者をそれぞれサンプルとする。そして、各サンプルが乗場とかご室11内との間を移動したときに加速度センサ22から得られる加速度検出信号を入力データとし、各サンプルが一般利用者であるか車椅子相当利用者であるかを出力データとする。
【0067】
このため、エレベータ装置毎の違いによらず、より適切な特定振動情報を得ることができ、車椅子相当利用者の有無に関する判定をより正確に行うことができる。
【0068】
なお、加速度センサ22は、かご室11の加速度を検出できれば、かご室11以外、例えばかご枠10に設けられてもよい。
【0069】
また、専用ボタンは、乗場及びかご室11内のいずれか一方のみに設けられていてもよい。また、専用ボタンは、乗場から離れた遠隔、例えばビルの入口に設けられていてもよい。また、専用ボタンは、携帯端末に設けられていてもよい。
【0070】
また、専用ボタンは、それ相当の機能を有する、タッチパネル式の乗場操作盤に設けられてもよい。同様に、3D(立体、空中)ボタン、又はセンサにより操作を検出する方法で、設けられてもよい。センサによる検出の種類は光、可聴域を問わない音波、音声、モーションなどで設けられてもよい。
【0071】
また、情報処理部23は、かご8上以外の他の場所に設置されてもよく、例えばエレベータ装置から離れた場所に設置されてもよい。
【0072】
また、かご8の運行に関する制御には、かごドア12の動作に関する制御以外の制御が含まれてもよい。例えば、かご8の運行に関する制御には、かご8の走行速度、かご8の加減速度、利用者に対するアナウンス内容の制御などが含まれてもよい。
【0073】
また、特定振動情報を得る方法は、機械学習に限定されず、例えばコンピュータ上でのシミュレーションにより導かれてもよい。即ち、特定振動情報は、シミュレーションによって予め得られた情報であってもよい。
【0074】
また、特定振動情報は、予め指定した1つ以上の閾値情報を利用した情報であってもよい。例えば、特定振動情報は、かご室11の振動の周波数の閾値、即ち周波数閾値であってもよい。この場合、例えば、かご室11の振動の周波数が周波数閾値よりも低ければ、車椅子相当利用者が存在すると判定される。
【0075】
また、特定振動情報は、かご室11に生じる加速度の閾値、即ち加速度閾値であってもよい。この場合、例えば、かご室11に生じる加速度が加速度閾値よりも高ければ、車椅子相当利用者が存在すると判定される。
【0076】
また、特定振動情報は、かご室11に生じる加速度の閾値、即ち加速度閾値が2つであってもよい。この場合、例えば、かご室11に生じる加速度が2つの加速度閾値の間であれば、車椅子相当利用者が存在すると判定される。
【0077】
また、実施の形態1の主制御装置5、ドアコントローラ13、及び情報処理部23の各機能は、処理回路によって実現される。図5は、実施の形態1の主制御装置5、ドアコントローラ13、及び情報処理部23の各機能を実現する処理回路の第1例を示す構成図である。第1例の処理回路100は、専用のハードウェアである。
【0078】
また、処理回路100は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。また、主制御装置5、ドアコントローラ13、及び情報処理部23の各機能それぞれを個別の処理回路100で実現してもよいし、各機能をまとめて処理回路100で実現してもよい。
【0079】
また、図6は、実施の形態1の主制御装置5、ドアコントローラ13、及び情報処理部23の各機能を実現する処理回路の第2例を示す構成図である。第2例の処理回路200は、プロセッサ201及びメモリ202を備えている。
【0080】
処理回路200では、主制御装置5、ドアコントローラ13、及び情報処理部23の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、メモリ202に格納される。プロセッサ201は、メモリ202に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0081】
メモリ202に格納されたプログラムは、上述した各部の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。ここで、メモリ202とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリである。また、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDといった記憶可能な媒体等も、メモリ202に該当する。
【0082】
なお、上述した各部の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0083】
このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述した各部の機能を実現することができる。
【0084】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
また、1つまたは複数といった表現においても、制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0085】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0086】
(付記1)
かご室の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する1軸以上の加速度センサ、
前記加速度検出信号を受信し処理することによって、乗場と前記かご室内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に、車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する情報処理部、及び
前記情報処理部における判定結果に基づいて、かごの運行に関する制御を行う運行制御部
を備え、
前記情報処理部には、前記車椅子相当利用者が前記乗場と前記かご室内との間を移動したときに前記かご室に生じる振動に関する情報である特定振動情報が記憶されており、
前記情報処理部は、前記加速度検出信号を処理して得られる前記かご室の振動に関する値を、前記特定振動情報と比較することによって、前記車椅子相当利用者がいるかどうかの判定を行うエレベータ制御システム。
(付記2)
前記運行制御部による前記かごの運行モードには、通常モードと、車椅子モードとが含まれており、
前記運行制御部は、車椅子利用者のための操作ボタンである専用ボタンの操作が行われた場合、
前記情報処理部における判定結果に基づいて、前記専用ボタンの操作による呼びにかかわる少なくとも1人の利用者の中に前記車椅子相当利用者がいるかどうかを判定し、
前記車椅子相当利用者がいると判定した場合、前記運行モードとして前記車椅子モードを選択し、
前記車椅子相当利用者がいないと判定した場合、前記運行モードとして前記通常モードを選択する付記1記載のエレベータ制御システム。
(付記3)
前記運行制御部における前記かごの運行に関する制御には、かごドアの全開状態を維持する時間の制御と、前記かごドアの開閉動作速度の制御と、前記かごドアの開動作を開始するタイミングの制御とのうちの少なくともいずれか1つの制御が含まれている付記1又は付記2に記載のエレベータ制御システム。
(付記4)
前記情報処理部は、前記かご室の振動に関する値として、前記かご室の振動の周波数を求める付記1から付記3までのいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
(付記5)
前記特定振動情報は、機械学習によって予め得られた情報である付記1から付記4までのいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
(付記6)
前記機械学習は、前記車椅子相当利用者と、前記車椅子相当利用者以外の利用者である一般利用者とを含む複数の利用者をそれぞれサンプルとし、各前記サンプルが前記乗場と前記かご室内との間を移動したときに前記加速度センサから得られる前記加速度検出信号を入力データとし、各前記サンプルが前記一般利用者であるか前記車椅子相当利用者であるかを出力データとする教師あり学習である付記5記載のエレベータ制御システム。
(付記7)
前記特定振動情報は、シミュレーションによって予め得られた情報である付記1から付記6までのいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
(付記8)
前記特定振動情報は、予め指定した1つ以上の閾値情報を利用した情報である付記1から付記7までのいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。
【符号の説明】
【0087】
8 かご、11 かご室、12 かごドア、16 乗場側専用ボタン、18 かご側専用ボタン、21 運行制御部、22 加速度センサ、23 情報処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご室の動きの加速度を検出し、加速度検出信号を送信する1軸以上の加速度センサ、
前記加速度検出信号を受信し処理することによって、乗場と前記かご室内との間を移動する少なくとも1人の利用者の中に、車椅子相当利用者がいるかどうかを判定する情報処理部、及び
前記情報処理部における判定結果に基づいて、かごの運行に関する制御を行う運行制御部
を備え、
前記情報処理部には、前記車椅子相当利用者が前記乗場と前記かご室内との間を移動したときに前記かご室に生じる振動に関する情報である特定振動情報が記憶されており、
前記情報処理部は、前記加速度検出信号を処理して得られる前記かご室の振動に関する値を、前記特定振動情報と比較することによって、前記車椅子相当利用者がいるかどうかの判定を行い、
前記情報処理部は、前記かご室の振動に関する値として、前記かご室の振動の周波数を求めるエレベータ制御システム。
【請求項2】
前記運行制御部による前記かごの運行モードには、通常モードと、車椅子モードとが含まれており、
前記運行制御部は、車椅子利用者のための操作ボタンである専用ボタンの操作が行われた場合、
前記情報処理部における判定結果に基づいて、前記専用ボタンの操作による呼びにかかわる少なくとも1人の利用者の中に前記車椅子相当利用者がいるかどうかを判定し、
前記車椅子相当利用者がいると判定した場合、前記運行モードとして前記車椅子モードを選択し、
前記車椅子相当利用者がいないと判定した場合、前記運行モードとして前記通常モードを選択する請求項1記載のエレベータ制御システム。
【請求項3】
前記運行制御部における前記かごの運行に関する制御には、かごドアの全開状態を維持する時間の制御と、前記かごドアの開閉動作速度の制御と、前記かごドアの開動作を開始するタイミングの制御とのうちの少なくともいずれか1つの制御が含まれている請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項4】
前記特定振動情報は、機械学習によって予め得られた情報である請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項5】
前記機械学習は、前記車椅子相当利用者と、前記車椅子相当利用者以外の利用者である一般利用者とを含む複数の利用者をそれぞれサンプルとし、各前記サンプルが前記乗場と前記かご室内との間を移動したときに前記加速度センサから得られる前記加速度検出信号を入力データとし、各前記サンプルが前記一般利用者であるか前記車椅子相当利用者であるかを出力データとする教師あり学習である請求項記載のエレベータ制御システム。
【請求項6】
前記特定振動情報は、シミュレーションによって予め得られた情報である請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。
【請求項7】
前記特定振動情報は、前記かご室の振動の周波数の閾値の情報である請求項1又は請求項2に記載のエレベータ制御システム。