(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032341
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】搬送車両
(51)【国際特許分類】
B60P 3/00 20060101AFI20240305BHJP
B62D 33/023 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B60P3/00 G
B62D33/023 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135945
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠樹
(57)【要約】
【課題】法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ可及的に広範な大型パネルを含む荷物を建設現場へ搬送することのできる、搬送車両を提供すること。
【解決手段】あおり30を備えた荷台20を有して荷物Pを搬送する、搬送車両100であり、あおり30には、荷物Pが固定される固定治具40が配設されており、あおり30の外側において、荷物Pを立設させて、荷物Pの下端を荷台20よりも低い位置に下げた状態で、固定治具40を介して荷台20に固定して搬送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
あおりを備えた荷台を有して荷物を搬送する、搬送車両であって、
前記あおりには、前記荷物が固定される固定治具が配設されており、
前記あおりの外側において、前記荷物を立設させて、該荷物の下端を前記荷台よりも低い位置に下げた状態で、前記固定治具を介して該荷台に固定して搬送することを特徴とする、搬送車両。
【請求項2】
前記固定治具は、
前記あおりの上方を跨ぐ、コの字状の跨線片と、
前記跨線片の一端から屈曲して前記荷台に延び、カウンターウェイトが載荷される、荷重載荷片とを有し、
前記跨線片には縦方向に複数の第1ボルト孔が開設されており、
前記荷重載荷片に前記荷物が載置され、前記跨線片の複数の前記第1ボルト孔と、該荷物の備える各第1ボルト孔に対応する第2ボルト孔がそれぞれ連通して複数の連通孔を形成し、各連通孔にボルトが螺合されることにより該荷物が前記固定治具に固定され、前記荷重載荷片に前記カウンターウェイトが載荷されることにより、前記荷物の立設した姿勢を保持することを特徴とする、請求項1に記載の搬送車両。
【請求項3】
前記固定治具は、前記跨線片の他端から屈曲して前記あおりの外側へ水平に延びる、荷物受け片をさらに備え、該荷物受け片にて前記荷物の下端が載置されることを特徴とする、請求項2に記載の搬送車両。
【請求項4】
前記跨線片は、前記あおりの少なくとも上端と接触せずに該あおりを跨いでいることを特徴とする、請求項2又は3に記載の搬送車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋や物流倉庫等の建物の工業化に伴い、建物の屋根や壁、床等を工場においてパネルとして製作し、屋根パネルや壁パネル、床パネルといった各種のパネルを搬送車両の荷台に搭載して建設現場に搬送し、建設現場においてパネル同士を組み付ける施工方法(例えば、パネル工法)が一般に普及している。また、昨今は、工場製作されるパネルの大型化も図られている。パネルが大型化することにより、建設現場におけるパネル同士の組み付け箇所が低減されることから、パネルの大型化は、建設現場における作業効率性にとって重要な要素である。
【0003】
ところで、大型パネルを搬送車両に搭載して出荷工場から建設現場まで搬送するに当たり、一般には、一つもしくは複数の大型パネルを荷台の上に寝かせた姿勢で搭載して搬送しているが、大型パネルの幅が広すぎる(高さは幅よりも長い)場合、大型パネルの幅が荷台の左右のあおりを大きく超えて側方にはみ出してしまうと、道路交通法(以下、法律と称する場合もある)上の車幅制限を超過する危険性がある。
【0004】
そこで、大型パネルを荷台に寝かせることに代えて、荷台の上に立設した姿勢で搭載し、搬送する方法もある。しかしながら、大型パネルの例えば幅方向を縦方向として立設させたとしても、幅が3mを超える大型パネルの場合は、地上から荷台までの高さがおよそ1m程度と仮定した際に、立ち姿勢の大型パネルの上端までの地上からの高さが3.8mを超えてしまい、今度は道路交通法上の高さ制限を超過する危険性がある。
【0005】
幅が3m以上(高さは当然に3mよりも長い)の大型パネルの建設現場への搬送需要も少なくない現状を勘案すると、法律に準拠しながら、大型パネルを建設現場へ搬送することを可能にした搬送車両が望まれる。
【0006】
尚、2022年5月の道路交通法の改正により、車両の側方にパネル等を立設した姿勢で搭載し、搬送する際の側方へのパネル等のはみ出し幅が緩和されたことを勘案すると、大型パネルを建設現場へ搬送することを可能にした搬送車両への要請は一層高くなるものと考えられる。
【0007】
ここで、特許文献1には、トラックの荷台に効率よく並べて積み込むことのできる大型パネルが提案されている。この大型パネルは、建物の壁や屋根、床等を構成する大型パネルであり、大型パネルを輸送するトラックの荷台の長辺方向の長さをKとし、大型パネルの長辺方向の長さをLとし、荷台の長手方向に並べて積み込む大型パネルの枚数をn枚とした際に、大型パネルの長辺方向の長さLが、K/1.2n≦L≦K/nに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の大型パネルは、大型パネルの寸法を規定しているに過ぎず、様々な寸法の大型パネルの建設現場への搬送に際し、法律に準拠しながら、大型パネルの搬送を可能にした搬送車両を提案するものではない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ可及的に広範な大型パネルを含む荷物を建設現場へ搬送することのできる、搬送車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による搬送車両の一態様は、
あおりを備えた荷台を有して荷物を搬送する、搬送車両であって、
前記あおりには、前記荷物が固定される固定治具が配設されており、
前記あおりの外側において、前記荷物を立設させて、該荷物の下端を前記荷台よりも低い位置に下げた状態で、前記固定治具を介して該荷台に固定して搬送することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、荷台の上に荷物を搭載することに代えて、あおりの外側において、荷物を立設させてその下端を荷台よりも低い位置に下げた状態で荷台に固定することにより、荷物の横幅や縦幅が長い大型パネルにおいても、荷台よりも低い位置(例えば、地上から僅かに高い位置)から法律の高さ制限までの幅(高さ)と、荷台のあおりの長さの高さ(幅)を備えた寸法の大型パネルの搬送が可能になる。このことにより、可及的に広範な大型パネルの搬送を可能にして、建設現場における大型パネル同士の組み付け作業効率を高めることができる。
【0013】
ここで、キャビンや荷台の横幅は、法律の横幅制限である2.5mに準拠するように設定される。このような横幅の荷台のあおりの外側に、立設姿勢の荷物の下端が荷台よりも低い位置に下げられた状態で固定治具を介して荷台に固定される。本態様の搬送車両に搬送される荷物としては、高さと幅がともに長い、屋根パネルや壁パネル、床パネルといった各種のパネルの他、大型の窓ガラス等が好適である。
【0014】
荷物の寸法の具体例としては、荷台のあおりの長さ(例えば4m以上)と、公道の高さ制限である3.8m以上(地上ぎりぎりまで下げた姿勢で固定される場合)を、それぞれ高さ(もしくは幅)と幅(もしくは高さ)とした大寸法で平面視矩形の荷物が挙げられる。
【0015】
尚、法律では、荷物の最低地上高が90mmと規定されていることから、荷物の底面を地上から100mm乃至150mm程度上方に設定した上で、高さ制限である3.8mに準拠するとした場合、荷物の高さの最大値は3.7m程度に設定することができる。
【0016】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記固定治具は、
前記あおりの上方を跨ぐ、コの字状の跨線片と、
前記跨線片の一端から屈曲して前記荷台に延び、カウンターウェイトが載荷される、荷重載荷片とを有し、
前記跨線片には縦方向に複数の第1ボルト孔が開設されており、
前記荷物受け片に前記荷物が載置され、前記跨線片の複数の前記第1ボルト孔と、該荷物の備える各第1ボルト孔に対応する第2ボルト孔がそれぞれ連通して複数の連通孔を形成し、各連通孔にボルトが螺合されることにより該荷物が前記固定治具に固定され、前記荷重載荷片に前記カウンターウェイトが載荷されることにより、前記荷物の立設した姿勢を保持することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、荷台に設置される固定治具の荷重載荷片を荷台上でカウンターウェイトにて固定しながら、あおりを跨ぐ固定治具の跨線片の複数箇所で荷物をボルト固定することにより、搬送車両の荷台に特別な固定手段を設けることなく、簡易な構成の固定治具を設置するのみで荷物を立設した姿勢で固定することができる。
【0018】
縦方向の複数のボルトによって荷物が跨線片に固定されるため、荷物の立設姿勢の安定性が確保され、荷物の倒れが防止される。例えば、一枚の大型パネルの固定においては、側方のあおりの離れた少なくとも二箇所に固定治具を設置し、各固定治具の跨線片に対して大型パネルの左右端のいずれか一方を少なくとも二つの縦方向に配設されたボルトで固定し、二つの固定治具に対して少なくとも合計四つのボルトで大型パネルを固定することにより、立設した大型パネルの安定姿勢を保持できる。
【0019】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記固定治具は、前記跨線片の他端から屈曲して前記あおりの外側へ水平に延びる、荷物受け片をさらに備え、該荷物受け片にて前記荷物の下端が載置されることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、固定治具が、跨線片の他端から屈曲してあおりの外側へ水平に延びて、荷物の下端が載置される荷物受け片をさらに備えていることにより、立設姿勢の荷物をより一層安定的に保持することができる。
【0021】
また、本発明による搬送車両の他の態様において、
前記跨線片は、前記あおりの少なくとも上端と接触せずに該あおりを跨いでいることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、跨線片があおりの少なくとも上端と接触せずにあおりを跨いでいることにより、荷物を保持する固定治具の跨線片からあおりに対して荷物の荷重が負担されないため、当初から荷物の荷重を負担することを想定されていないあおりが荷物の荷重を負担することに起因して変形や破損することを防止できる。
【0023】
ここで、「あおりの少なくとも上端と接触せずに」とは、あおりの上端と接触せず、あおりの内外の側面とは接触する形態と、あおりの上端に加えて、あおりの内外の側面とも接触しない(あおりと全く接触しない)形態の双方を含んでいる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の搬送車両によれば、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ可及的に広範な大型パネルを含む荷物を建設現場へ搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る搬送車両の一例の平面図であって、あおりの外側に大型パネルを立設した姿勢で固定している状態を示す図である。
【
図2】
図1のII方向矢視図であって、実施形態に係る搬送車両の一例の側面図である。
【
図3】固定治具があおりに配設されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る搬送車両の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[実施形態に係る搬送車両]
図1乃至
図3を参照して、実施形態に係る搬送車両の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係る搬送車両の一例の平面図であって、あおりの外側に大型パネルを立設した姿勢で固定している状態を示す図である。また、
図2は、
図1のII方向矢視図であって、実施形態に係る搬送車両の一例の側面図であり、
図3は、固定治具があおりに配設されている状態を示す図である。
【0028】
搬送車両100は、キャビン10と荷台20とを有し、荷台20は、側あおり30(あおりの一例)と後ろあおり35を回動自在に備えて、通常の荷物を搭載する際は、側あおり30と後ろあおり35を立設させて積載空間を形成し、荷台20の上に荷物を搭載して搬送する車両である。
【0029】
搬送車両100は、上記する通常の荷物の搭載形態(一般搭載形態)に加えて、図示例のように、側あおり30の外側に荷物Pを立設させた姿勢で荷台20に固定し(特殊搭載形態)、搬送することを可能にしている。
【0030】
特殊搭載形態は、搭載する荷物が図示例のように広範な大型パネルPの場合の搭載形態である。ここで、大型パネルPには、屋根パネルや壁パネル、床パネルといった各種のパネル、大型の窓ガラス等が含まれる。
【0031】
図2に示すように、大型パネルPの幅Bpは例えば3mを超える幅であり、高さHpは幅Bpよりも長い寸法を有している。そのため、荷台20の上に大型パネルPを寝た姿勢で搭載した場合、公道における車両(荷物を積載している車両の場合は荷物の幅も含まれる)の法律上の幅制限である2.5mを超過することから、寝た姿勢で搬送することができない。
【0032】
大型パネルPを荷台20の上に立設させて搭載する場合、地上から荷台20までの高さが1m程度あることから、仮に高さHpを鉛直方向とした状態で立設させると、公道における車両の法律上の高さ制限である3.8mを超過することから、幅Bpを鉛直方向とした状態で立設させるしかないが、この場合も高さ制限を超過することから搬送ができないことになる。
【0033】
そこで、搬送車両100は、荷台20の側あおり30に複数の固定治具40を設置し、側あおり30の外側で荷台レベルよりも下方の位置(
図2のh1下方の位置)に、幅Bpを鉛直方向とした立設姿勢の大型パネルPを下げた状態で各固定治具40に固定することにより、大型パネルPの搬送を実現可能としている。ここで、大型パネルPの高さHpは、荷台20の長さL1以下である。
【0034】
ここで、荷台20の側あおり30の外側で、荷台レベルよりも下方の位置に鉛直方向とした立設姿勢の大型パネルPの下端は、地上から100mm乃至150mmの位置に設定されるようにして、法律上の最低地上高である90mm以上を確保しておく。
【0035】
図示例では、キャビン10の左右の横幅B1と、荷台20の横幅B2がともに、法律上の幅制限以下となるように設定されている上で、立設姿勢の大型パネルPを荷台20の側あおり30の外側に配設して荷台20に固定する。
【0036】
図3に示すように、固定治具40は、あおり30の上方を跨ぐ、コの字状の跨線片41と、跨線片41の一端から屈曲して荷台20に延びて、カウンターウェイト50が載荷される荷重載荷片42と、跨線片41の他端から屈曲してあおり30の外側へ水平に延びる荷物受け片43とを有する。
【0037】
荷物受け片43に大型パネルPの下端が載置され、跨線片41の複数の第1ボルト孔41aと、大型パネルPの備える不図示の第2ボルト孔がそれぞれ連通して不図示の複数の連通孔を形成し、各連通孔にボルト60が螺合されることにより、大型パネルPが固定治具40に固定される。
【0038】
さらに、跨線片41は、あおり30の上端や側面と接触せずにあおり30を跨ぎ、荷台20の上に延びる荷重載荷片42に対して、カウンターウェイト50の下面にある凹部51が嵌まり込むようにしてX1方向に載荷される。
【0039】
このように、荷台20に設置される固定治具40の荷重載荷片42を荷台20上でカウンターウェイト50にて固定しながら、あおり30を跨ぐ固定治具40の跨線片41の複数箇所で大型パネルPをボルト固定することにより、搬送車両100の荷台20に特別な固定手段を設けることなく、簡易な構成の固定治具40を設置するのみで大型パネルPを立設した姿勢で固定することができる。
【0040】
また、縦方向の複数のボルト60によって大型パネルPが跨線片41に固定されるため、大型パネルPの立設姿勢の安定性が確保され、大型パネルPの倒れが防止される。
【0041】
図示例では、
図2に示すように、あおり30の離れた三箇所に固定治具40を設置し、各固定治具40の跨線片41に対して大型パネルPを二つの縦方向に配設されたボルト60で固定することにより、立設した大型パネルPの安定姿勢を保持できる。
【0042】
さらに、跨線片41があおり30の上端や側面と接触せずにあおり30を跨いでいることにより、大型パネルPを保持する固定治具40の跨線片41からあおり30に対して大型パネルPの荷重が負担されない。このことにより、当初から大型パネルPの荷重を負担することを想定されていないあおり30が、大型パネルPの荷重を負担することに起因して変形や破損することを防止できる。
【0043】
搬送車両100によれば、法律の高さ制限と幅制限に準拠しつつ、可及的に広範な大型パネルPを建設現場へ搬送することが可能になる。
【0044】
このように可及的に広範な大型パネルPが建設現場に搬送されることにより、建設現場における大型パネルP同士の組み付け作業効率を高めることができる。
【0045】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0046】
10:キャビン
20:荷台
30:側あおり(あおり)
35:後ろあおり
40:固定治具
41:跨線片
41a:第1ボルト孔
42:荷重載荷片
43:荷物受け片
50:カウンターウェイト
60:ボルト
100:搬送車両
P:荷物(大型パネル)
Hp:大型パネルの高さ
Bp:大型パネルの幅
B1:車幅
B2:荷台幅
L1:長さ(荷台の長さ)