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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032342
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】畜産用ガス暖房器
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/00 20060101AFI20240305BHJP
   F24C 3/04 20210101ALI20240305BHJP
   F24C 3/14 20210101ALI20240305BHJP
   F24C 15/22 20060101ALI20240305BHJP
   A45B 19/10 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
A01K1/00 D
F24C3/04 N
F24C3/14 U
F24C15/22 E
A45B19/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135948
(22)【出願日】2022-08-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)展示を行った日:令和4年4月27日; 展示会の名称:国際養鶏養豚総合展2022; 展示を行った場所:ポートメッセなごや(名古屋国際展示場)
(71)【出願人】
【識別番号】522343108
【氏名又は名称】株式会社大阪TYS
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】赤楚 隆司
【テーマコード(参考)】
2B101
3B104
【Fターム(参考)】
2B101BB02
3B104AA04
3B104AA10
3B104LB03
3B104QB01
(57)【要約】
【課題】 取り付け、取外しの作業負担を軽減する畜産用ガス暖房器を提供する。
【解決手段】 本開示による畜産用ガス暖房器は、ガスバーナーと、熱輻射体と、反射傘と、を有している。熱輻射体は、ガスバーナーの上方に配置され、ガスバーナーの燃焼炎により加熱されることにより熱線を放射する。反射傘は、熱輻射体及びガスバーナーを覆うように、これらの上方に配置され、熱輻射体が放射する熱線を反射する。また、反射傘は、開閉可能な複数の親骨と、複数の親骨に張られた不燃性シートと、を有している。反射傘は、第1ろくろと、複数の受骨と、第2ろくろと、中棒と、を更に有している。第1ろくろは、複数の親骨が開閉可能なように複数の親骨の基端部を束ねる。複数の受骨は、複数の親骨の中間部に、それぞれ先端部が回動自在に連結されている。第2ろくろは、複数の受骨が開閉可能なように複数の受骨の基端部を束ね、中棒に沿ってスライドする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナーと、
前記ガスバーナーの上方に配置され、前記ガスバーナーの燃焼炎により加熱されることにより熱線を放射する熱輻射体と、
前記熱輻射体及び前記ガスバーナーを覆うように、これらの上方に配置され、前記熱輻射体が放射する前記熱線を反射する反射傘と、を備え、
前記反射傘は、
基端部において回動自在にかつ放射状に配置されることにより開閉可能な複数の親骨と、
前記複数の親骨に張られた不燃性シートと、を有する畜産用ガス暖房器。
【請求項2】
前記反射傘は、
前記複数の親骨が開閉可能なように前記複数の親骨の前記基端部を回動自在に束ねる第1ろくろと、
前記複数の親骨の中間部に、それぞれ先端部が回動自在に連結された複数の受骨と、
前記複数の受骨が開閉可能なように前記複数の受骨の基端部を回動自在に束ねる第2ろくろと、
下端部により前記ガスバーナー及び前記熱輻射体を支持し、前記親骨の開閉に伴い、前記第1ろくろと前記第2ろくろのうち、上方にある上ろくろを、自身に沿ってスライドするように案内する中棒と、を更に有する、請求項1に記載の畜産用ガス暖房器。
【請求項3】
前記反射傘は、
前記中棒に設置された係止機構であって、前記親骨を開くように前記上ろくろが下方にスライドする動きを妨げず、前記親骨を開いた状態に維持するように、前記上ろくろの上方への逆戻りを係止するとともに、手操作により係止状態を解除可能な係止機構を、更に有する、請求項2に記載の畜産用ガス暖房器。
【請求項4】
前記複数の親骨の各々が、複数本折り可能なように、直列にかつ回動自在に連結された複数本の単位親骨を有しており、それにより前記反射傘は、閉じたときに複数本折りに折り畳むことが可能である、請求項2又は3に記載の畜産用ガス暖房器。
【請求項5】
前記ガスバーナーのガス流量を制御する制御器と、
前記中棒の上端部と前記制御器とを、開閉する前記反射傘に干渉しないように支持する支持部材と、
前記支持部材に設置された吊り下げ具と、を更に備える、請求項2に記載の畜産用ガス暖房器。
【請求項6】
前記不燃性シートは、前記複数の親骨の先端部を通す金属製の複数の鳩目を有しており、
前記複数の親骨の先端部はカシメ部を有しており、それにより、前記複数の鳩目が前記複数の親骨の前記基端部に向かって移動することを制止している、請求項1に記載の畜産用ガス暖房器。
【請求項7】
前記不燃性シートは、周方向に配置され、互いに不燃性繊維により縫製された略3角形の複数の不燃性シート片を有する、請求項1に記載の畜産用ガス暖房器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜産用ガス暖房器に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産用の暖房には、従来よりガス暖房器が用いられている(特許文献1及び非特許文献1参照)。図1は、非特許文献1に示される畜産用ガス暖房器の構成を示す部分断面正面図である。図1に例示する従来の畜産用ガス暖房器100は、吊り下げ型のガスランプ状であり、ガスバーナー1の炎によりセラミック陶板製の熱輻射体3を下方から加熱し、熱輻射体3が放散する熱線すなわち赤外線を、アルミ鍍金鋼板製の反射傘(キャノピー)5により下方に反射させる構造となっている。反射傘5は直径1mを超え、その重量が7kgほどにも達する。なお、特許文献1に開示される畜産用ガス暖房器も、その基本構成は図1と共通である。
【0003】
畜産用ガス暖房器100は、反射傘5のサイズ及び重量が大きいために、取り付け、取外しが容易ではない、という問題点があった。特に、畜産用ガス暖房器100を養鶏用として用いる場合には、暖房等の効率化のため、鶏舎の天井が低く設定されており、しかも、雛(ひな)は2箇月ほどで若鶏に成長し、出荷されるため、約2箇月に一度、糞の処理のため小型ブルドーザーが入る度に、天井に吊した畜産用ガス暖房器100を外し、再度吊す必要がある。重量物であり、鶏舎に幾つも設置される畜産用ガス暖房器100を、上げ下ろしするのは、養鶏家の大きな作業負担となっている。反射傘5をアルミニウム製にすると、ある程度軽量にはなるが、コストが高くなるという、別の問題を生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-215535号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社大阪TYSのウェブページ「種火ノズルの掃除がワンプッシュでらくらく」(https://ishii-osakatys.com/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、取り付け、取外しの作業負担を軽減する畜産用ガス暖房器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、畜産用ガス暖房器であって、ガスバーナーと、熱輻射体と、反射傘と、を備えている。熱輻射体は、前記ガスバーナーの上方に配置され、前記ガスバーナーの燃焼炎により加熱されることにより熱線を放射する。反射傘は、前記熱輻射体及び前記ガスバーナーを覆うように、これらの上方に配置され、前記熱輻射体が放射する前記熱線を反射する。また、前記反射傘は、基端部において回動自在にかつ放射状に配置されることにより開閉可能な複数の親骨と、前記複数の親骨に張られた不燃性シートと、を有している。
【0008】
この構成によれば、熱線を反射する反射材として不燃性シートが用いられるので、燃焼の恐れがなく、軽量であり、かつアルミニウム製の反射傘を用いた場合よりも製造コストが抑えられる。さらに、不燃性シートが張られた反射傘の複数の親骨が開閉可能であるので、反射傘は不燃性シートを含めて開閉可能である。このため、この構成による畜産用ガス暖房器を取り付け、及び取外しするときには、反射傘を閉じておくことができる。このように、重量が軽量化され、かつ取り付け、及び取外しするときには、使用時よりも水平方向の広がりを小さくすることができるので、取り付け、取外しの作業負担が軽減される。
【0009】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による畜産用ガス暖房器であって、前記反射傘は、第1ろくろと、複数の受骨と、第2ろくろと、中棒と、を更に有している。第1ろくろは、前記複数の親骨が開閉可能なように前記複数の親骨の前記基端部を回動自在に束ねる。複数の受骨は、前記複数の親骨の中間部に、それぞれ先端部が回動自在に連結されている。第2ろくろは、前記複数の受骨が開閉可能なように前記複数の受骨の基端部を回動自在に束ねる。中棒は、下端部により前記ガスバーナー及び前記熱輻射体を支持し、前記親骨の開閉に伴い、前記第1ろくろと前記第2ろくろのうち、上方にある上ろくろを、自身に沿ってスライドするように案内する。
【0010】
この構成によれば、前記反射傘は、上ろくろが中棒に沿ってスライドすることにより開閉するので、開いたときの反射傘と、その下方に配置される熱輻射体との間の距離を短くすることができ、それにより暖房の効果が高められる。また、上ろくろの操作により反射傘を開閉できるので、開閉の操作が容易である。
【0011】
本発明のうち第3の態様によるものは、第2の態様による畜産用ガス暖房器であって、前記反射傘は、前記中棒に設置された係止機構を、更に有している。係止機構は、前記親骨を開くように前記上ろくろが下方にスライドする動きを妨げず、前記親骨を開いた状態に維持するように、前記上ろくろの上方への逆戻りを係止するとともに、手操作により係止状態を解除可能である。
【0012】
この構成によれば、反射傘の開閉の操作性が、更に高められる。雨傘等に広く用いられる「はじき」は、係止機構の一例に該当する。
【0013】
本発明のうち第4の態様によるものは、第2又は第3の態様による畜産用ガス暖房器であって、前記複数の親骨の各々が、複数本折り可能なように、直列にかつ回動自在に連結された複数本の単位親骨を有しており、それにより前記反射傘は、閉じたときに複数本折りに折り畳むことが可能である。
【0014】
この構成によれば、反射傘を閉じたときに、折り畳むことが可能であるので、開いたときの反射傘の面積を保ちつつ、反射傘の開閉に伴って上ろくろがスライドする動きの幅を、小さく抑えることができる。それにより、畜産用ガス暖房器の全高を低くすることができる。
【0015】
本発明のうち第5の態様によるものは、第2から第4のいずれかの態様による畜産用ガス暖房器であって、制御器と、支持部材と、吊り下げ具と、を更に備えている。制御器は、前記ガスバーナーのガス流量を制御する。支持部材は、前記中棒の上端部と前記制御器とを、開閉する前記反射傘に干渉しないように支持する。吊り下げ具は、前記支持部材に設置されている。
【0016】
この構成によれば、本構成による畜産用ガス暖房器を吊して使用することができる。また、吊したときに、相応の重量を有する制御器が、制御器からガスバーナーへガスを送る導管に負荷を掛けることなく支持される。
【0017】
本発明のうち第6の態様によるものは、第1から第5のいずれかの態様による畜産用ガス暖房器であって、前記不燃性シートは、前記複数の親骨の先端部を通す金属製の複数の鳩目を有している。また、前記複数の親骨の先端部はカシメ部を有しており、それにより、前記複数の鳩目が前記複数の親骨の前記基端部に向かって移動することを制止している。
【0018】
この構成によれば、不燃性である金属製の鳩目を使って、不燃性シートが複数の親骨に張られているので、不燃性シートを複数の親骨に張る製造工程が簡素化される。
【0019】
本発明のうち第7の態様によるものは、第1から第6のいずれかの態様による畜産用ガス暖房器であって、前記不燃性シートは、周方向に配置され、互いに不燃性繊維により縫製された略3角形の複数の不燃性シート片を有している。
【0020】
この構成によれば、面積が相対的に小さく、入手が相対的に容易な不燃性シート片を用いて、面積が相対的に大きい不燃性シートを得ることができる。また、開いたときの不燃性シートの形状を、曲面状にすることも容易である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、取り付け、取外しの作業負担を軽減する畜産用ガス暖房器が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術による畜産用ガス暖房器の構成を例示する部分断面正面図である。
図2】本発明の一実施の形態による畜産用ガス暖房器の構成を例示する部分断面正面図である。
図3図2の畜産用ガス暖房器の一部分について、反射傘を開いたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。
図4図2の畜産用ガス暖房器について、開閉式の反射傘を閉じたときの構成を例示する部分断面正面図である。
図5図2の畜産用ガス暖房器の一部分について、反射傘を閉じたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。
図6図2の畜産用ガス暖房器について、不燃性シートと親骨との接続部分を拡大して例示する部分拡大図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
図7図2の畜産用ガス暖房器について、不燃性シートの構成を例示する平面図である。
図8】本発明の別の実施の形態による畜産用ガス暖房器の一部分について、反射傘を開いたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。
図9図8の畜産用ガス暖房器の一部分について、反射傘を閉じたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。
図10図8の畜産用ガス暖房器の一部分について、構成を拡大して例示する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図2は 本発明の一実施の形態による畜産用ガス暖房器の構成を例示する部分断面正面図である。この畜産用ガス暖房器101は、従来技術による畜産用ガス暖房器100(図1参照)と同様に、吊り下げて用いられるガス暖房器であり、ガスバーナー1及び熱輻射体3を有しており、更に、反射傘5に代えて反射傘7を有している。熱輻射体3は、ガスバーナー1の上方に配置され、ガスバーナー1の燃焼炎により加熱されることにより、熱線すなわち赤外線を放射する。一例として、反射傘7はセラミック陶板製である。反射傘7は、熱輻射体3及びガスバーナー1を覆うように、これらの上方に配置され、熱輻射体3が放射する熱線を反射する。すなわち、畜産用ガス暖房器101は、畜産用ガス暖房器100と同様に、ガスバーナー1の炎により熱輻射体3を下方から加熱し、熱輻射体3が放散する熱線を、反射傘7により下方に反射させる構造を成している。
【0024】
反射傘7は、畜産用ガス暖房器100の反射傘5とは異なり、雨傘の親骨と同様に、放射状に配置され、かつ基端部において回動自在に配置されることにより開閉可能な複数の親骨9と、これらの親骨9に張られた不燃性シート11とを有している。親骨9の開閉の機構については、後に詳述する。親骨9は、例えばステンレス鋼製である。不燃性シート11は、一例として、ガラス布の両面にアルミニウム箔が配置された多層構造のシートであり、耐熱性、不燃性、及び遮熱性に優れている。また、不燃性シート11は、従来技術による畜産用ガス暖房器100に使用されるアルミ鍍金鋼板製の反射傘5とは異なり、折り畳み可能なほどに柔軟であり、かつ軽量である。従って反射傘7は、不燃性シート11を含めて、あたかも雨傘と同様に開閉可能であるとともに、反射傘5に比べて著しく軽量である。また、反射傘7は、アルミ鍍金鋼板製からアルミニウム板製に仮に置き換えた反射傘5に比べて、製造コストが抑えられる。反射傘7は開閉可能であるので、畜産用ガス暖房器101を取り付け、及び取外しするときには、反射傘7を閉じておくことができる。このように、畜産用ガス暖房器101では、重量が軽量化され、かつ取り付け、及び取外しするときには、使用時よりも水平方向の広がりを小さくすることができるので、取り付け、取外しの作業負担が軽減される。
【0025】
図示例では、ガスバーナー1は、円板状のバーナー支持板13に固定されている。バーナー支持板13には、ガスバーナー1に隣接して種火ノズル15が、更に固定されている。ガス導入管17に着脱可能に接続される柔軟なガスホース(図示略)を通じて、外部よりガスが供給される。供給されたガスは、ガス導入管17を経て制御器19に送られる。送られたガスは、制御器19により流量が制御され、導管21,23を通じて、ガスバーナー1及び種火ノズル15に送られる。畜産用ガス暖房器101を使用しているときには、種火ノズル15から噴き出すガスにより、種火が常時維持される。これにより、鶏舎等の屋内の温度の調節のために、制御器19の制御によりガスバーナー1の炎が消火したときにも、温度の低下を緩やかにすることができる。
【0026】
図示例では、熱輻射体3は、中央部が下方に膨らむように湾曲したボウル状であり、環状の熱輻射体支持板25に支持されている。熱輻射体3は、湾曲した中央部が、環状である熱輻射体支持板25の中央の空洞を通じて、熱輻射体支持板25の下方に突出するように、辺縁部が熱輻射体支持板25に載置されている。それにより、熱輻射体3は、熱輻射体支持板25に着脱可能に、かつ安定して支持されている。バーナー支持板13と熱輻射体支持板25とは、複数(図示例では3本)の板状の連結片27により、互いに連結されている。
【0027】
複数の連結片27と熱輻射体支持板25との接続部分には、複数(図示例では3本)の別の板状の連結片29の先端部が同時に接続されている。複数の連結片29の基端部は互いに重ね合わされ、互いに重なり合う位置に貫通孔(図示略)が形成されている。これらの貫通孔を貫通する中棒31の下端部が、複数の連結片29の基端部に接続されている。このように、連結片29と熱輻射体支持板25とを通じて、熱輻射体3が中棒31の下端部に支持され、連結片29と連結片27とバーナー支持板13とを通じて、ガスバーナー1が同じく中棒31の下端部に支持されている。
【0028】
畜産用ガス暖房器101は、吊り下げて使用することを可能にする部材として、支持部材33を更に有している。支持部材33の一端部は中棒31の上端部を支持しており、他端部はガス導入管17を通じて制御器19を支持している。図示例では、支持部材33は、中棒31の上端部と、ガス導入管17とに、それぞれナットによりネジ止めされている。支持部材33は、例えば棒状或いは板状の長尺体である。前述の通り、反射傘7は開閉可能である。支持部材33は、開閉する反射傘7に干渉しないように、屈曲した形状を成している。図示例では、制御器19は、反射傘7により反射される熱線により過度に加熱されないように、また、反射される熱線を遮蔽しないように、開いた反射傘7に覆われない周辺部に配置される。支持部材33は、重量のある制御器19と、同じく重量のあるガスバーナー1及び熱輻射体3とを、それぞれ別個に支持することにより、制御器19とガスバーナー1との間の配管に、制御器19の重量を支えるための負荷が加えられることを防いでいる。
【0029】
支持部材33には、吊り下げ具35が接続されている。吊り下げ具35は、例えば、中棒31が垂直な姿勢を取ったときの畜産用ガス暖房器101全体の重心を通る鉛直線上に位置決めされる。この場合には、吊り下げ具35を用いて、畜産用ガス暖房器101を吊したときに、中棒31は垂直な姿勢となり、熱輻射体3及び開いた反射傘7は水平な姿勢となる。
【0030】
図3は、畜産用ガス暖房器101の一部分について、反射傘7を開いたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。中棒31の下端部には雄ネジ37が形成されている。この雄ネジ37に螺合する一対のナット39,41により、中棒31の下端部は連結片29に締結されている。中棒31を中心に放射状に配置される複数の親骨9の基端部は、第1ろくろ43に回動自在に連結されている。第1ろくろ43は、複数の親骨9の基端部を回動自在に束ねる束ね部材である。第1ろくろ43は環状であり、その中空部(図示略)には中棒31の下端部が挿通されている。第1ろくろ43は、雄ネジ37に螺合する一対のナット41,44により、中棒31の下端部に、不動となるように締結されている。
【0031】
放射状に配置される親骨9の各々の中間部には、受骨45の先端部が回動自在に連結されている。複数の受骨45の基端部は、複数の受骨45が中棒31を中心として放射状となるように、第2ろくろ47に回動自在に連結されている。第2ろくろ47は、複数の受骨45の基端部を、回動自在に束ねる束ね部材である。第2ろくろ47も環状であり、その中空部(図示略)には中棒31の下端部が挿通されている。第2ろくろ47は、中棒31に案内されつつ、中棒31に沿って移動可能である。第2ろくろ47が中棒31に沿って移動するのに伴い、複数の受骨45の働きにより、複数の親骨9は開閉する。それに伴い、反射傘7が開閉する。図示例では、反射傘7を展開された状態に保つように、雄ネジ37に螺合するナット49により、第2ろくろ47が下方に押し付けられている。ナット49には、ナット49を手操作により回転させるためのレバー51が、例えば溶接により連結されている。
【0032】
第1ろくろ45と第2ろくろ47とのうち、上方に位置する上ろくろである第2ろくろ47が中棒31に沿ってスライドすることにより、反射傘7が開閉するので、開いたときの反射傘7と、その下方に配置される熱輻射体3との間の距離を短くすることができ、それにより暖房の効果が高められる。また、上ろくろ(図示例では第2ろくろ47)の操作により反射傘7を開閉できるので、開閉の操作が容易である。
【0033】
図示例では、親骨9の基端部を束ねる第1ろくろ43が、相対的に下方に位置する下ろくろであり、中棒31に固定され、受骨45の基端部を束ねる第2ろくろ47が相対的に上方に位置する上ろくろであり、中棒31に対してスライドする。これに対して、第2ろくろ47が下ろくろとなって中棒31に固定され、第1ろくろ43が上ろくろとなって、中棒31にスライドするように、反射傘7を構成しても良い。
【0034】
図示例では、放射状に配置される複数の親骨9の各々は、直列にかつ回動自在に連結される複数(図2の例では4本)の単位親骨90を有している。受骨45の先端部は、中棒31に最も近い単位親骨90の中間部に回動自在に連結されている。すなわち、図示例の反射傘7は、閉じたときに、あたかも折り畳み雨傘のように、複数本折り(図示例では特に4本折り)に折り畳むことが可能なように構成されている。
【0035】
図4は、畜産用ガス暖房器101について、反射傘7を閉じたときの構成を例示する部分断面正面図である。また、図5は、畜産用ガス暖房器101の一部分について、反射傘7を閉じたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。図4及び図5では、傘布に相当する不燃性シート11は、便宜上、図示を略している。中棒31は、下端部に雄ネジ37が設けられるとともに、上端部にも雄ネジ53が設けられている。雄ネジ53に螺合する一対のナット55,57により、支持部材33の一端部が中棒31の上端部に締結される。中棒31のうち、雄ネジ37と雄ネジ53とに挟まれた中間部59には、雄ネジは設けられない。また、中間部59の外径は、雄ネジ37,53の外径よりも小さく設定されている。このため、上ろくろである第2ろくろ47を下方に押し付けていたナット49を緩める方向にレバー51を回転させることにより、ナット49と雄ネジ37との螺合を解除すると、ナット49及び第2ろくろ47は、中間部59に沿ってスライド可能となる。第2ろくろ47を上方に持ち上げ、傘布に相当する不燃性シート11(図示略)の周囲を紐等により縛ることにより、反射傘7を閉じた状態に維持することが可能となる。
【0036】
図示例では、反射傘7は、折り畳み傘のように複数本(図示例では特に4本)折りに折り畳まれている。図示例では、反射傘7が複数折りに折り畳むことができるので、開いたときの反射傘7の面積を保ちつつ、反射傘7の開閉に伴って上ろくろ(図示例では第2ろくろ47)がスライドする動きの幅を、小さく抑えることができる。それにより、畜産用ガス暖房器101の全高を低くすることができる。
【0037】
図6は、畜産用ガス暖房器101について、不燃性シート11と親骨9との接続部分を拡大して例示する部分拡大図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。親骨9に張られる不燃性シート11には、複数の親骨9の先端部を通す金属製の複数の鳩目61が設けられている。各親骨9の先端部は、カシメられることにより形成されるカシメ部63を有している。このカシメ部63は、鳩目61が親骨9の基端部に向かって異動することを制止する。親骨9のうち、カシメ部63よりも先端部に近い部位に、別のカシメ部65を設けることにより、鳩目61が親骨9の先端部に向かって移動し、親骨9から脱落することを防ぐことも可能である。畜産用ガス暖房器101では、このように、不燃性である金属製の鳩目61を使って、不燃性シート11が親骨9に張られているので、不燃性シート11を親骨9に張る製造工程が簡素化される。
【0038】
図7は、畜産用ガス暖房器101について、不燃性シート11の構成を例示する平面図である。図示例では、不燃性シート11は、複数の不燃性シート片67を互いに不燃性繊維により縫製することにより作られている。各不燃性シート片67は、略二等辺三角形状であり、周方向に沿って二等辺を順次連結するように互いに縫製される。このように、面積が相対的に小さく、入手が相対的に容易な不燃性シート片67を用いて、面積が相対的に大きい不燃性シート11を得ることができる。また、各不燃性シート片67の二等辺を直線よりも外側に膨らむ曲線とすることにより、縫製されて成る不燃性シート11を曲面状とすることも可能である。
【0039】
図8は、本発明の別の実施の形態による畜産用ガス暖房器の一部分について、反射傘7を開いたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。この畜産用ガス暖房器102では、上ろくろである第2ろくろ47を中棒31の所定の部位に係止することにより、反射傘7を開いた状態に維持するために、畜産用ガス暖房器101が有するナット49(図3参照)に代えて、雨傘等にも用いられるはじき69を用いた係止機構を有している。第2ろくろ47は、受骨45の基端部を支持ずる部分から上方に延びる筒状部71を有している。中棒31には、はじき69の一部が露出するためのスリット(図示略)が設けられている。第2ろくろ47の筒状部71には、中棒31から露出したはじき69を受け入れるスリット(図示略)が設けられている。はじき69は、親骨9を開くように第2ろくろ47が下方にスライドする動きを妨げず、かつ親骨9を開いた状態に維持するように、第2ろくろ47の上方への逆戻りを係止する。第2ろくろ47を係止するはじき69は、指で押すことにより係止状態を解除することが可能である。
【0040】
中棒31のうち、はじき69の上方の部位には、別のはじき73が設けられている。はじき73は、第2ろくろ47を中棒31の別の所定の部位に係止することにより、反射傘7を閉じた状態に維持する。中棒31には、はじき73の一部が露出するためのスリット(図示略)が設けられている。第2ろくろ47の筒状部71に設けられ、はじき69を受け入れるスリット(図示略)は、はじき73をも受け入れる。
【0041】
図9は、畜産用ガス暖房器102の一部分について、反射傘7を閉じたときの構成を拡大して例示する部分拡大図である。図9においても、便宜上、不燃性シート11は図示を略している。はじき73は、親骨9を閉じるように第2ろくろ47が上方にスライドする動きを妨げず、かつ親骨9を閉じた状態に維持するように、第2ろくろ47の下方への逆戻りを係止する。第2ろくろ47を係止するはじき73は、指で押すことにより係止状態を解除することが可能である。
【0042】
図10は、畜産用ガス暖房器102の一部分について、構成を拡大して例示する部分拡大断面図である。図10は、はじき69、73の構造を例示している。中棒31は管状である。図示例では、はじき69とはじき73とは、中棒31の中空部80において、互いに連結されている。はじき69とはじき73とを連結する連結部75は、湾曲した梁状であり、弾性的に曲げ変形する。連結部75の中央部は、中棒31の内壁に当接している。連結部75の曲げ弾性復元力により、はじき69、73は中棒31の外方に向かって付勢されている。付勢されたはじき69は、中棒31に設けられたスリット79の縁に当接することにより、スリット79から外部に過剰に露出することが抑えられている。同様に、付勢されたはじき73は、中棒31に設けられたスリット81の縁に当接することにより、スリット81から外部に過剰に露出することが抑えられている。スリット79から外部に露出したはじき69、又はスリット81から外部に露出したはじき73は、第2ろくろ47の筒状部71に設けられたスリット83により受け入れられる。
【0043】
図示例では、中棒31のうち、雄ネジ37と雄ネジ53とに挟まれた中間部77には、雄ネジは設けられない。この場合には、中棒31に沿った第2ろくろ47の移動を円滑にするために、中間部77の外径は、雄ネジ37,53の外径と同一又はより大きく設定されている。中棒31をこのように形成するには、金属パイプの両端部に雄ネジ37,53を形成するのみで足りる。中棒31の中空部80に熱線が浸入しないように、中棒31の下端では、金属溶接等により中空部80を封じても良い。なお、第2ろくろ47に代えて、第1ろくろ43が上ろくろとなる形態においては、第2ろくろ47に代えて第1ろくろ43に筒状部71を設けると良い。
【符号の説明】
【0044】
1 ガスバーナー、 3 熱輻射体、 5,7 反射傘、 9 親骨、 11 不燃性シート、 13 バーナー支持板、 15 種火ノズル、 17 ガス導入管、 19 制御器、 21,23 導管、 25 熱輻射体支持板、 27,29 連結片、 31 中棒、 33 支持部材、 35 吊り下げ具、 37 雄ネジ、 39,41 ナット、 43 第1ろくろ(下ろくろ)、 45 受骨、 47 第2ろくろ(上ろくろ)、 49 ナット、 51 レバー、 90 単位親骨、 53 雄ネジ、 55,57 ナット、 59 中間部、 61 鳩目、 63 カシメ部、 65 カシメ部、 67 不燃性シート片、 69 はじき、 71 筒状部、 73 はじき、 75 連結部、 77 中間部、 79 スリット、 80 中空部、 81 スリット、 83 スリット、 100,101,102 畜産用ガス暖房器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10