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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032365
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】高電圧コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/35 20060101AFI20240305BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20240305BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240305BHJP
   H01G 2/02 20060101ALI20240305BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01G4/35 341
H01G4/38 A
H01G4/228 K
H01G4/228 J
H01G2/02 101E
H01G2/10 300
H01G2/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135976
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雄大
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB01
5E082BB02
5E082BC35
5E082BC36
5E082CC07
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG08
5E082FG26
5E082GG08
5E082HH03
5E082HH28
5E082HH47
5E082KK06
5E082KK07
5E082LL11
5E082LL13
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上する高電圧コンデンサを提供する。
【解決手段】高電圧コンデンサ1は、一対のコンデンサCと、一対のコンデンサCのそれぞれに電気的に接続された共通導体20と、対応するコンデンサCにそれぞれ電気的に接続された一対の個別導体30と、を備える。一対のコンデンサCは、第一方向D1を軸方向とする柱形状を呈し、第一方向D1に直交する第二方向D2において互いに対向している第一側面10c及び第二側面10dを有している素体10と、第一側面10cに配置され、対応する個別導体30と電気的に接続された第一電極11と、第二側面10dに配置され、共通導体20と電気的に接続された第二電極12と、をそれぞれ有すると共に、第一電極11同士が第二方向D2において互いに対向するように配置されている。第一方向D1から見て、共通導体20は、一対のコンデンサC及び一対の個別導体30の周りを囲んでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のコンデンサと、
前記一対のコンデンサのそれぞれに電気的に接続された共通導体と、
対応する前記コンデンサにそれぞれ電気的に接続された一対の個別導体と、を備え、
前記一対のコンデンサは、
第一方向を軸方向とする柱形状を呈し、前記第一方向に直交する第二方向において互いに対向している第一側面及び第二側面を有している素体と、
前記第一側面に配置され、対応する前記個別導体と電気的に接続された第一電極と、
前記第二側面に配置され、前記共通導体と電気的に接続された第二電極と、をそれぞれ有すると共に、
前記第一電極同士が前記第二方向において互いに対向するように配置され、
前記第一方向から見て、前記共通導体は、前記一対のコンデンサ及び前記一対の個別導体の周りを囲んでいる、
高電圧コンデンサ。
【請求項2】
前記一対の個別導体は、前記第一電極に電気的に接続された第一部分と、屈曲部を介して前記第一部分に接続された第二部分と、をそれぞれ含み、
前記第二部分同士が前記第二方向において離間する距離は、前記第一部分同士が前記第二方向において離間する距離よりも長い、
請求項1に記載の高電圧コンデンサ。
【請求項3】
前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向において、前記第二部分の長さは、前記第一部分の長さよりも長い、
請求項2に記載の高電圧コンデンサ。
【請求項4】
前記素体及び前記共通導体は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向において互いに離間している、
請求項1に記載の高電圧コンデンサ。
【請求項5】
前記一対のコンデンサを内部に収容している絶縁ケースと、
前記絶縁ケースの内側に充填され、前記一対のコンデンサを封止している樹脂と、を更に備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高電圧コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
知られている高電圧貫通型コンデンサは、コンデンサと、一対の個別導体と、共通導体と、を備えている(たとえば、特許文献1参照)。コンデンサは、一対の貫通孔が形成された素体と、貫通孔が開口する素体の両面に設けられた第一電極及び第二電極と、を有している。第一電極は、貫通孔に挿通された個別導体と接続されている。第二電極は、共通導体に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-351830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一つの態様は、信頼性を向上する高電圧コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの態様に係る高電圧コンデンサは、一対のコンデンサと、一対のコンデンサのそれぞれに電気的に接続された共通導体と、対応するコンデンサにそれぞれ電気的に接続された一対の個別導体と、を備え、一対のコンデンサは、第一方向を軸方向とする柱形状を呈し、第一方向に直交する第二方向において互いに対向している第一側面及び第二側面を有している素体と、第一側面に配置され、対応する個別導体と電気的に接続された第一電極と、第二側面に配置され、共通導体と電気的に接続された第二電極と、をそれぞれ有すると共に、第一電極同士が第二方向において互いに対向するように配置され、第一方向から見て、共通導体は、一対のコンデンサ及び一対の個別導体の周りを囲んでいる。
【0006】
本発明者らは、信頼性を向上する高電圧コンデンサについて、調査研究を行った。この結果、本発明者らは、以下の事項を新たに見出した。
電位の異なる二つの導体間に形成される電界の強度は、高電圧コンデンサの信頼性に影響を与える。以下、電位の異なる二つの導体間に形成される電界の強度は、単に「導体間電界強度」と称されることがある。導体間電界強度が高い高電圧コンデンサでは、絶縁破壊が生じやすい。絶縁破壊は、たとえば、貫通孔を画成する素体の内面に沿う放電により生じる。したがって、導体間電界強度を低下させる構成が採用された高電圧コンデンサでは、絶縁破壊が生じがたい。すなわち、導体間電界強度を低下させる構成が採用された高電圧コンデンサは、信頼性を向上する。
【0007】
本発明者らは、導体間電界強度を低下させる構成について、調査研究を行った。この結果、本発明者らは、柱形状の素体をそれぞれ有する一対のコンデンサを用いることで、導体間電界強度を低下させることを見出した。このような一対のコンデンサによれば、設計の自由度が高まり、電位の異なる二つの導体間の距離を長くすることができる。すなわち、第一電極及び共通導体間の距離を長くすることができると共に、第二電極及び個別導体間の距離を長くすることができる。これにより導体間電解強度が低下する。
【0008】
上記一つの態様では、一対の個別導体は、第一電極に電気的に接続された第一部分と、屈曲部を介して第一部分に接続された第二部分と、をそれぞれ含み、第二部分同士が第二方向において離間する距離は、第一部分同士が第二方向において離間する距離よりも長くてもよい。この場合、一対の第二部分を配置間隔が規定された一対のタブ接続子として利用しながら、高電圧コンデンサのサイズが第二方向に大きくなることを抑制できる。
【0009】
上記一つの態様では、第一方向及び第二方向に直交する第三方向において、第二部分の長さは、第一部分の長さよりも長くてもよい。この場合、一対の第二部分をサイズが規定された一対のタブ接続子として利用することができる。
【0010】
上記一つの態様では、素体及び共通導体は、第一方向及び第二方向に直交する第三方向において互いに離間していてもよい。この場合、第一電極及び共通導体間を長くし易い。
【0011】
上記一つの態様に係る高電圧コンデンサは、一対のコンデンサを内部に収容している絶縁ケースと、絶縁ケースの内側に充填され、一対のコンデンサを封止している樹脂と、を更に備えてもよい。この場合、電位の異なる二つの導体間における放電の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様は、信頼性を向上する高電圧コンデンサを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係る高電圧コンデンサの斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、一対のコンデンサ、共通導体及び一対の個別導体を示す斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、一対のコンデンサ、共通導体及び一対の個別導体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1から図5を参照して、本実施形態に係る高電圧コンデンサ1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る高電圧コンデンサの斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、一対のコンデンサ、共通導体及び一対の個別導体を示す斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、一対のコンデンサ、共通導体及び一対の個別導体を示す平面図である。高電圧コンデンサ1は、たとえば、従来の高電圧貫通型コンデンサと同様に電子レンジ用マグネトロンに接続され、電子レンジ用マグネトロンの不要輻射ノイズを防止する。
【0016】
図1図5に示されるように、高電圧コンデンサ1は、一対のコンデンサCと、共通導体20と、一対の個別導体30と、絶縁ケース40と、樹脂50と、を備える。各コンデンサCは、素体10と、第一電極11と、第二電極12と、を有する。
【0017】
素体10は、第一方向D1を軸方向とする柱形状を呈している。本実施形態では、素体10は、角柱状を呈している。素体10は、直方体形状を呈しているとも言える。素体10は、第一方向D1において互いに対向している第一端面10a及び第二端面10bと、第二方向D2において互いに対向している第一側面10c及び第二側面10dと、第三方向D3において互いに対向している一対の第三側面10eと、を有している。第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は、互いに交差(ここでは直交)している。
【0018】
第一側面10c、第二側面10d、及び一対の第三側面10eは、第一端面10a及び第二端面10bを互いに連結するように第一方向D1に延在している。本明細書では、第二端面10bから第一端面10aに向かう方向が上方向であり、第一端面10aは、第二端面10bより上方に位置している。
【0019】
素体10の第一方向D1の長さは、素体10の第二方向D2の長さよりも長く、素体10の第三方向D3の長さよりも長い。素体10の第一方向D1の長さは、5mm以上15mm以下であり、一例として、11mmである。素体10の第二方向D2の長さは、3mm以上10mm以下であり、一例として、5mmである。素体10の第三方向D3の長さは、3mm以上10mm以下であり、4mmである。
【0020】
素体10は、たとえば、絶縁材料からなる。素体10は、たとえば、セラミックを含む。セラミックは、たとえば、BaTiО3、BaZrO3、CaTiO3、又はMgTiOを含む。素体10は、セラミックに添加される添加物を含んでいてもよい。添加物は、たとえば、Si、Mg、Zr、Zn、Y、V、Al、又はMnを含む。
【0021】
第一電極11は第一側面10c上に配置されている。第一電極11は、第一側面10cの全体を覆っている。第一電極11は、対応する個別導体30と電気的に接続されている。すなわち、一方のコンデンサCの第一電極11は、一方の個別導体30と電気的に接続されている。他方のコンデンサCの第一電極11は、他方の個別導体30と電気的に接続されている。
【0022】
第二電極12は、第二側面10d上に配置されている。第二電極12は、第二側面10dの全体を覆っている。第二電極12は、共通導体20と電気的に接続されている。第一電極11と第二電極12とは、第一方向D1で互いに対向している。素体10は、第一電極11と第二電極12との間に位置している。したがって、第一電極11と第二電極12とは、素体10が第一電極11と第二電極12との間に位置している状態で、第一方向D1で互いに間接的に対向している。
【0023】
第一電極11及び第二電極12は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Agを含む。第一電極11及び第二電極12は、導電性金属材料と共に磁性材料を含んでいてもよい。磁性材料は、たとえば、Fe、Co、Ni、Cu、若しくはSr、又は、それらの組み合わせである。第一電極11及び第二電極12は、たとえば、第一側面10c及び第二側面10dに付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成される。第一電極11及び第二電極12を形成するための導電性ペーストは、上記導電性金属材料を含む。
【0024】
一対のコンデンサCは、第二方向D2において互いに離間して配置されている。一対のコンデンサCは、第一電極11同士が第二方向D2において互いに対向するように配置されている。一対のコンデンサCは、互いに同形状を呈している。
【0025】
共通導体20は、一対のコンデンサCのそれぞれに電気的に接続されている。共通導体20は、第二電極12に電気的に接続されている。共通導体20は、接地されている接地金具である。共通導体20は、周辺部21と、中央部22とを有している。周辺部21は、中央部22を囲んでいる。中央部22は、厚肉に形成された厚肉部であり、周辺部21は、薄肉に形成された薄肉部である。中央部22と周辺部21とは、厚さ方向(第一方向D1)の中心位置が互いに一致するように形成されている。中央部22は、周辺部21から第一方向D1の両側に突出している。
【0026】
中央部22には、開口23が形成されている。開口23は、第一方向D1で、中央部22を貫通している。本実施形態では、開口23は、第一方向D1から見て、中央部22の中央領域に位置している。開口23は、第一方向D1から見て、第二方向D2を長辺方向とする矩形状を呈している。共通導体20は、第一方向D1から見て、第二方向D2を長辺方向とする矩形状を呈している。矩形状は、角が丸められている形状及び角が取られている形状を含む。共通導体20は、矩形状以外の形状を呈していてもよい。
【0027】
共通導体20は、第二方向D2を長辺方向とする矩形枠状を呈しているとも言える。共通導体20は、第二方向D2で互いに対向している一対の辺部20aと、第三方向D3で互いに対向している一対の辺部20bと、を含んでいる。辺部20aは、短辺部である。辺部20bは、長辺部である。各辺部20a,20bは、周辺部21及び中央部22のそれぞれを有している。
共通導体20は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0028】
共通導体20は、第一方向D1から見て、一対のコンデンサC及び一対の個別導体30の周りを囲んでいる。各コンデンサCは、第二電極12が開口23の内側から中央部22に接合されるように、開口23に挿通されている。一方のコンデンサCの第二電極12は、一方の辺部20aの中央部22に接合されている。他方のコンデンサCの第二電極12は、他方の辺部20aの中央部22に接合されている。第二電極12は、はんだにより中央部22に接合されている。
【0029】
各辺部20bは、一対のコンデンサCから第三方向D3において離間している。すなわち、素体10及び共通導体20は、第三方向D3において互いに離間している。各コンデンサCは、一対の辺部20bから等しい距離に配置されている。
【0030】
共通導体20の第二方向D2の長さは、20mm以上50mm以下であり、一例として、32mmである。共通導体20の第三方向D3の長さは、10mm以上30mm以下であり、一例として、20mmである。中央部22の厚さ(第一方向D1の長さ)は、一例として、4mmである。周辺部21の厚さ(第一方向D1の長さ)は、0.6mmである。開口23の第二方向D2の長さは、10mm以上40mm以下であり、一例として、18mmである、開口23の第三方向D3の長さは、5mm以上25mm以下であり、一例として、15mmである。各辺部20bと一対のコンデンサCとの第三方向D3における離間距離は、1.5mm以上であり、一例として、5.5mmである。
【0031】
一対の個別導体30のそれぞれは、対応するコンデンサCに電気的に接続されている。一対の個別導体30は、一対のコンデンサCと共に開口23に挿通されている。一対の個別導体30は、一対のコンデンサCの間に配置され、第二方向D2で互いに対向している。一対の個別導体30は、互いに同形状を呈している。各個別導体30は、対応するコンデンサCの第一電極11に電気的に接続されている。
【0032】
個別導体30は、第一部分31、第二部分32、第三部分33、屈曲部34、及び屈曲部35を有している。第一部分31、第二部分32、及び第三部分33は、第一方向D1に延在している。屈曲部34及び屈曲部35は、第二方向D2に延在している。第一部分31は、第一電極11に電気的に接続されている。第一部分31は、はんだにより第一電極11に接合されている。第二部分32は、屈曲部34を介して第一部分31の上端に接続されている。第三部分33は、屈曲部35を介して第一部分31の下端に接続されている。
【0033】
第二部分32同士が第二方向D2において離間する距離L2は、第一部分31同士が第二方向D2において離間する距離L1よりも長い。第三部分33同士が第二方向D2において離間する距離L3は、距離L1よりも長い。距離L2は、距離L3以上である。距離L2及び距離L3は、5mm以上35mm以下である。個別導体30の第一方向D1の長さは、30mm以上60mm以下である。第一部分31の第一方向D1の長さは、素体10の第一方向D1の長さよりも長く、一例として、22mmである。第二部分32の第一方向D1の長さは、一例として16mmである。第三部分33の第一方向D1の長さは、一例として12mmである。屈曲部34の第二方向D2の長さは、屈曲部35の第二方向D2の長さ以上である。
【0034】
第三方向D3において、第一部分31、第三部分33、屈曲部34及び屈曲部35は、同等の長さW1を有している。第三方向D3において、第二部分32の長さW2は、第一部分31の長さW1よりも長い。すなわち、第二方向D2から見て、第二部分32は、第一部分31に比べて幅広に形成されている。第二部分32は、タブ接続子として機能する。
個別導体30は、たとえば、導電性金属材料からなる。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0035】
絶縁ケース40は、第一方向D1を軸方向とする中空の筒状を呈している。絶縁ケース40は、他の形状を呈していてもよい。絶縁ケース40は、一対のコンデンサCを内部に収容している。本実施形態では、絶縁ケース40は、各コンデンサCの全体と、共通導体20の一部と、各個別導体30の一部とを内部に収容している。絶縁ケース40は、一対のコンデンサC及び一対の個別導体30を囲むように配置されている。共通導体20の周辺部21は、絶縁ケース40から露出している。周辺部21は、全周にわたって絶縁ケース40から突出している。
【0036】
絶縁ケース40は、共通導体20より上方に配置された第一ケース41と、共通導体20より下方に配置された第二ケース42と、を含む。第一ケース41は、コンデンサCの上部と、第一部分31の上部と、屈曲部34の全体と、第二部分32の下端部と、中央部22の上部と、を囲んでいる。第二ケース42は、コンデンサCの下部と、第一部分31の下部と、屈曲部35の全体と、第三部分33の上端部と、中央部22の下部と、を囲んでいる。
【0037】
第一ケース41及び第二ケース42は、共通導体20に物理的に接続されている。第一ケース41は、第一ケース41の内側面のうち下端部に位置する面が中央部22の外側面に接するように、共通導体20に接続されている。第一ケース41の下端面は、周辺部21の上面に接している。第二ケース42は、第二ケース42の内側面のうち上端部に位置する面が中央部22の外側面に接するように、共通導体20に接続されている。第二ケース42の上端面は、周辺部21の上面に接している。
【0038】
第一ケース41の第一方向D1の長さは、10mm以上25mm以下である。第一ケース41の第二方向D2の長さは、10mm以上40mm以下である。第一ケース41の第三方向D3の長さは、5mm以上25mm以下である。第二ケース42は、第一ケース41と同じ形状を呈している。
【0039】
絶縁ケース40は、絶縁材料を含む。絶縁材料は、たとえば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は変性メラミンを含む。絶縁材料には、無機物が含まれていてもよい。無機物は、たとえば、ガラス粉及びセラミック粉を含む。ガラス粉は、たとえば、工業用ガラス粉を含む。セラミック粉は、たとえば、SiO粉、Al粉、タルク(MgSi10(OH))、窒化アルミニウム(AlN)、若しくは窒化ケイ素(Si)、又は、これらの混合物を含む。
【0040】
樹脂50は、絶縁ケース40の内側に充填され、一対のコンデンサCを封止している。実施形態では、樹脂50は、コンデンサCを覆うように、絶縁ケース40の内側に充填されている。樹脂50は、絶縁ケース40と、コンデンサC、共通導体20及び個別導体30との間に配置されている。樹脂50は、絶縁ケース40と、コンデンサC、共通導体20及び個別導体30との間を埋めている。樹脂50は、コンデンサC、共通導体20及び個別導体30に接している。
【0041】
樹脂50の上端縁は、第二部分32の下端部が埋まる位置に達しており、樹脂50の下端縁は、第三部分33の上端部が埋まる位置に達している。第二部分32の残りの部分及び第三部分33の残りの部分は、樹脂50から露出している。樹脂50の上端縁は樹脂50の第一方向D1での両端縁のうち上方に位置する端縁を示し、樹脂50の下端縁は樹脂50の第一方向D1での両端縁のうち下方に位置する端縁を示す。
【0042】
樹脂50は、絶縁材料を含む。絶縁材料は、たとえば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、又はシリコーン樹脂を含む。樹脂50は、互いに異なる絶縁材料を含んでいてもよい。本実施形態では、樹脂50は、エポキシ樹脂を含んでいる。
【0043】
高電圧コンデンサ1の第一方向D1の長さは、個別導体30の第一方向D1の長さと等しく、30mm以上60mm以下である。高電圧コンデンサ1の第二方向D2の長さは、共通導体20の第二方向D2の長さと等しく、20mm以上50mm以下である。高電圧コンデンサ1の第三方向D3の長さは、共通導体20の第三方向D3の長さと等しく、10mm以上30mm以下である。
【0044】
以上説明したように、高電圧コンデンサ1では、柱形状の素体10をそれぞれ有する一対のコンデンサCが用いられている。これにより、複数の貫通孔が形成された一つのコンデンサが用いられる構成に比べて、設計の自由度が高まる。第一電極11及び共通導体20間の距離を長くすることができると共に、第二電極12及び個別導体30間の距離を長くすることができる。この結果、導体間電界強度を低下させることができる。よって、高電圧コンデンサ1では、信頼性を向上させることができる。
【0045】
一対の個別導体30は、第一電極11に電気的に接続された第一部分31と、屈曲部34を介して第一部分31に接続された第二部分32と、をそれぞれ含む。第二部分32同士が第二方向D2において離間する距離L2は、第一部分31同士が第二方向D2において離間する距離L1よりも長い。このため、一対の第二部分32を配置間隔が規定された一対のタブ接続子として利用しながら、高電圧コンデンサ1のサイズが第二方向D2に大きくなることを抑制できる。
【0046】
第二部分32の長さW2は、第一部分31の長さW1よりも長い。このため、一対の第二部分32をサイズが規定された一対のタブ接続子として利用することができる。
【0047】
素体10及び共通導体20は、第三方向D3において互いに離間している。このため、第一電極11及び共通導体20間を長くし易い。
【0048】
絶縁ケース40は、一対のコンデンサCを内部に収容している。樹脂50は、絶縁ケース40の内側に充填され、一対のコンデンサCを封止している。このため、第一電極11及び共通導体20間における放電の発生を抑制できると共に、第二電極12及び個別導体30間における放電の発生を抑制できる。樹脂50によれば、高電圧コンデンサ1に耐湿性を付与することもできる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0050】
高電圧コンデンサ1は、一対のコンデンサC及び一対の個別導体30を備えているが、高電圧コンデンサ1は、三つ以上のコンデンサC及び三つ以上の個別導体30を備えていてもよい。絶縁ケース40は、第一ケース41及び第二ケース42の二部材からなるが、一部材からなってもよい。この場合、絶縁ケース40には、周辺部21の周方向の一部を露出させる貫通孔が設けられていてもよい。
【0051】
素体10は、第一方向D1を軸方向とする柱形状を呈し、第二方向D2において互いに対向している平面状の第一側面10c及び第二側面10dを有していれば、直方体形状でなくてもよい。たとえば、一対の第三側面10eが曲面であってもよい。個別導体30は、屈曲部34,35を有していなくてもよい。
【0052】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0053】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
一対のコンデンサと、
前記一対のコンデンサのそれぞれに電気的に接続された共通導体と、
対応する前記コンデンサにそれぞれ電気的に接続された一対の個別導体と、を備え、
前記一対のコンデンサは、
第一方向を軸方向とする柱形状を呈し、前記第一方向に直交する第二方向において互いに対向している第一側面及び第二側面を有している素体と、
前記第一側面に配置され、対応する前記個別導体と電気的に接続された第一電極と、
前記第二側面に配置され、前記共通導体と電気的に接続された第二電極と、をそれぞれ有すると共に、
前記第一電極同士が前記第二方向において互いに対向するように配置され、
前記第一方向から見て、前記共通導体は、前記一対のコンデンサ及び前記一対の個別導体の周りを囲んでいる、
高電圧コンデンサ。
(付記2)
前記一対の個別導体は、前記第一電極に電気的に接続された第一部分と、屈曲部を介して前記第一部分に接続された第二部分と、をそれぞれ含み、
前記第二部分同士が前記第二方向において離間する距離は、前記第一部分同士が前記第二方向において離間する距離よりも長い、
付記1に記載の高電圧コンデンサ。
(付記3)
前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向において、前記第二部分の長さは、前記第一部分の長さよりも長い、
付記1又は2に記載の高電圧コンデンサ。
(付記4)
前記素体及び前記共通導体は、前記第一方向及び前記第二方向に直交する第三方向において互いに離間している、
付記1~3のいずれか一つに記載の高電圧コンデンサ。
(付記5)
前記一対のコンデンサを内部に収容している絶縁ケースと、
前記絶縁ケースの内側に充填され、前記一対のコンデンサを封止している樹脂と、を更に備える、
付記1~4のいずれか一つに記載の高電圧コンデンサ。
【符号の説明】
【0054】
1…高電圧コンデンサ、10…素体、10c…第一側面、10d…第二側面、11…第一電極、12…第二電極、20…共通導体、30…個別導体、31…第一部分、32…第二部分、34…屈曲部、40…絶縁ケース、50…樹脂、C…コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5