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特開2024-32370蒸気供給システム及びタイヤ加硫システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032370
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】蒸気供給システム及びタイヤ加硫システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 33/18 20060101AFI20240305BHJP
   F22B 33/12 20060101ALI20240305BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20240305BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20240305BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20240305BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F22B33/18
F22B33/12
F22B1/18 C
F22B35/00 F
B29C33/02
B29C33/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135984
(22)【出願日】2022-08-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若松 駿一
【テーマコード(参考)】
3L021
4F202
【Fターム(参考)】
3L021DA04
3L021FA04
4F202AH20
4F202AR02
4F202AR14
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU12
4F202CU20
4F202CY30
(57)【要約】
【課題】既存ボイラと水素ボイラとを併用し、既存ボイラ由来の蒸気を利用する製造工程の一部に、水素ボイラ由来の蒸気を利用する製造工程を構築する。
【解決手段】蒸気供給システム10は、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1を発生させる水素ボイラ21、化石燃料由来の第2蒸気S2を発生させる既存ボイラ22、蒸気ヘッダー36、蒸気ヘッダー36と水素ボイラ21とを接続する第1蒸気配管31、蒸気ヘッダー36と既存ボイラ22とを接続する第2蒸気配管32、蒸気ヘッダー36と第1蒸気消費設備11aとを接続する第3蒸気配管33、第2蒸気配管32と第2蒸気消費設備12aとを接続する第4蒸気配管34、第2蒸気配管32上の第4蒸気配管34との接続位置より蒸気ヘッダー36側に配置される第1制御弁41、第1制御弁41を制御し、第1制御弁41を閉として、第1蒸気S1のみを第1蒸気消費設備11aに供給する制御装置50、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を消費する第1蒸気消費設備を有する第1工程と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備を有する第2工程と、を含む製品の製造工程に蒸気を供給する蒸気供給システムであって、
カーボンフリー燃料を用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気を発生させる第1ボイラと、
化石燃料を用いて化石燃料由来の第2蒸気を発生させる第2ボイラと、
蒸気ヘッダーと、
前記蒸気ヘッダーと前記第1ボイラとを接続する第1蒸気配管と、
前記蒸気ヘッダーと前記第2ボイラとを接続する第2蒸気配管と、
前記蒸気ヘッダーと前記第1蒸気消費設備とを接続する第3蒸気配管と、
前記第2蒸気配管と前記第2蒸気消費設備とを接続する第4蒸気配管と、
前記第2蒸気配管上の前記第4蒸気配管との接続位置よりも前記蒸気ヘッダー側に配置される第1制御弁と、
前記第1制御弁を制御し、当該第1制御弁を閉として、前記第1蒸気のみを前記第1蒸気消費設備に供給する制御装置と、を備える、蒸気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置が、
前記第1制御弁を開として、前記第1蒸気及び前記第2蒸気を前記第1蒸気消費設備に供給する、請求項1に記載の蒸気供給システム。
【請求項3】
前記蒸気ヘッダーにおける蒸気の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、
前記圧力センサの計測値が所定の第1閾値以下の場合、前記制御装置が前記第1制御弁を開とする、請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項4】
前記第1制御弁をバイパスして前記第2蒸気配管と前記蒸気ヘッダーとを接続する第5蒸気配管と、
前記第5蒸気配管に設置される第2制御弁と、をさらに備え、
前記制御装置が、
前記第2制御弁を制御し、当該第2制御弁を開として、前記第1蒸気を前記第2蒸気消費設備に供給する、請求項1又は請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項5】
前記蒸気ヘッダーにおける蒸気の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、
前記圧力センサの計測値が所定の第2閾値以上である場合、前記制御装置が前記第2制御弁を開とする、請求項4に記載の蒸気供給システム。
【請求項6】
前記第3蒸気配管を流れる蒸気の流量を計測する第1流量計と、
前記第2蒸気配管を流れる蒸気の流量を計測する第2流量計と、をさらに備え、
前記制御装置が、
前記第1蒸気消費設備の運転中における前記第1流量計及び前記第2流量計の計測値から、前記第1蒸気消費設備の運転中における二酸化炭素の排出量を算出し、かつ、算出した二酸化炭素の排出量を、前記第1蒸気消費設備の運転中に製造された前記製品に紐づけた情報を生成する、請求項1又は請求項2に記載の蒸気供給システム。
【請求項7】
蒸気を消費する第1蒸気消費設備を有する第1工程と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備を有する第2工程と、を含む製品の製造工程に蒸気を供給する蒸気供給システムであって、
カーボンフリー燃料を用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気を発生させる第1ボイラと、
化石燃料を用いて化石燃料由来の第2蒸気を発生させる第2ボイラと、
前記第1蒸気消費設備に向けて前記第2ボイラで生成された蒸気を供給する第1供給路と、
前記第2蒸気消費設備に向けて前記第1ボイラで生成された蒸気を供給する第2供給路と、
前記第1供給路または前記第2供給路のいずれかに選択的に切り替える制御装置と、
を備える、蒸気供給システム。
【請求項8】
蒸気を消費する第1蒸気消費設備を有する第1工程と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備を有する第2工程と、を含むタイヤの加硫工程に蒸気を供給するタイヤ加硫システムであって、
カーボンフリー燃料を用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気を発生させる第1ボイラと、
化石燃料を用いて化石燃料由来の第2蒸気を発生させる第2ボイラと、
蒸気ヘッダーと、
前記蒸気ヘッダーと前記第1ボイラとを接続する第1蒸気配管と、
前記蒸気ヘッダーと前記第2ボイラとを接続する第2蒸気配管と、
前記蒸気ヘッダーと前記第1蒸気消費設備とを接続する第3蒸気配管と、
前記第2蒸気配管と前記第2蒸気消費設備とを接続する第4蒸気配管と、
前記第2蒸気配管上の前記第4蒸気配管との接続位置よりも前記蒸気ヘッダー側に配置される第1制御弁と、
前記第1制御弁を制御し、当該第1制御弁を閉として、前記第1蒸気のみを前記第1蒸気消費設備に供給する制御装置と、を備える、タイヤ加硫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンフリー燃料に由来する蒸気を供給可能な蒸気供給システム、及びカーボンフリー燃料に由来する蒸気を利用するタイヤ加硫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの製造工程は、加硫工程等の熱需要のある工程を含んでおり、そのような工程では、加熱源及び加圧源として蒸気が広く利用されている。蒸気は、ボイラによって燃料を燃焼させ、水を蒸発させることで生成される。従来のボイラは、石炭、重油、天然ガス等の化石燃料を、燃料として主に使用する。これら化石燃料の燃焼時には、二酸化炭素(以下、COとも称する)が排出される。
【0003】
近年、CO排出量の削減に向けた取り組みとして、燃焼時のCO排出量(CO排出係数)が「0」である燃料(以下、カーボンフリー燃料とも称する)をボイラに使用することが検討されている。カーボンフリー燃料としては、例えば、水素ガス、アンモニア等が知られている。特許文献1では、天然ガスと水素ガスとを混合させた燃料をボイラに使用する技術が開示されている。
【0004】
また近年、製品の製造時におけるCO排出量に関する情報(以下、カーボンフットプリントとも称する)を製品に付して販売等を行う取り組みもなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-106372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、天然ガスを使用する既存のガス焚きボイラ(以下、既存ボイラとも称する)を、水素ガスを使用するガス焚きボイラ(以下、水素ボイラとも称する)へ更新することができれば、CO排出量を大幅に削減することが可能となる。しかしながら、全ての既存ボイラを一度に水素ボイラへ更新することは、コスト上の観点から困難である。このため、化石燃料を使用する既存ボイラと水素ボイラとを併用することが現実的であるが、既存ボイラと水素ボイラとを併用する技術は、未だ確立されていない。
【0007】
本発明は、カーボンフリー燃料由来の蒸気を用いて製品を製造する工程と、カーボンフリー燃料由来でない蒸気を用いて製品を製造する工程とが併存する製造工程を構築することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る蒸気供給システムは、蒸気を消費する第1蒸気消費設備を有する第1工程と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備を有する第2工程と、を含む製品の製造工程に蒸気を供給する蒸気供給システムであって、カーボンフリー燃料を用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気を発生させる第1ボイラと、化石燃料を用いて化石燃料由来の第2蒸気を発生させる第2ボイラと、蒸気ヘッダーと、前記蒸気ヘッダーと前記第1ボイラとを接続する第1蒸気配管と、前記蒸気ヘッダーと前記第2ボイラとを接続する第2蒸気配管と、前記蒸気ヘッダーと前記第1蒸気消費設備とを接続する第3蒸気配管と、前記第2蒸気配管と前記第2蒸気消費設備とを接続する第4蒸気配管と、前記第2蒸気配管上の前記第4蒸気配管との接続位置よりも前記蒸気ヘッダー側に配置される第1制御弁と、前記第1制御弁を制御し、当該第1制御弁を閉として、前記第1蒸気のみを前記第1蒸気消費設備に供給する制御装置と、を備える。
【0009】
上記構成の蒸気供給システムによれば、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気のみを用いて製品を製造する第1工程と、カーボンフリー燃料由来でない第2蒸気を用いて製品を製造する第2工程とが併存する製造工程を構築することができる。
【0010】
(2)本発明の前記(1)の態様の蒸気供給システムは、前記制御装置が、前記第1制御弁を開として、前記第1蒸気及び前記第2蒸気を前記第1蒸気消費設備に供給すると好ましい。
上記構成の蒸気供給システムによれば、第1工程に第1蒸気及び第2蒸気を供給可能に構成することで、第1蒸気が不足する場合に、第1工程に第2蒸気を供給することが可能となる。これにより、第1工程が稼働できない事態の発生を抑制することができる。
【0011】
(3)本発明の前記(2)の態様の蒸気供給システムは、前記蒸気ヘッダーにおける蒸気の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、前記圧力センサの計測値が所定の第1閾値以下の場合、前記制御装置が前記第1制御弁を開とすると好ましい。
上記構成の蒸気供給システムによれば、第1蒸気の不足により第1工程が稼働できない事態の発生を抑制することができる。
【0012】
(4)本発明の前記(1)~(3)の何れか1つの態様の蒸気供給システムは、前記第1制御弁をバイパスして前記第2蒸気配管と前記蒸気ヘッダーとを接続する第5蒸気配管と、前記第5蒸気配管に設置される第2制御弁と、をさらに備え、前記制御装置が、前記第2制御弁を制御し、当該第2制御弁を開として、前記第1蒸気を前記第2蒸気消費設備に供給すると好ましい。
上記構成の蒸気供給システムによれば、第1蒸気が余剰となる場合に、第1蒸気を第2蒸気消費設備に供給することによって、第1蒸気を有効に活用すると共に、第2工程におけるCO排出量を抑制することができる。
【0013】
(5)本発明の前記(4)の態様の蒸気供給システムは、前記蒸気ヘッダーにおける蒸気の圧力を計測する圧力センサをさらに備え、前記圧力センサの計測値が所定の第2閾値以上である場合、前記制御装置が前記第2制御弁を開とすると好ましい。
上記構成の蒸気供給システムによれば、第1蒸気が余剰となる場合に、第1蒸気を第2蒸気消費設備に供給することによって、第1蒸気を有効に活用すると共に、第2工程におけるCO排出量を抑制することができる。
【0014】
(6)本発明の前記(1)~(5)の何れか1つの態様の蒸気供給システムは、前記第3蒸気配管を流れる蒸気の流量を計測する第1流量計と、前記第2蒸気配管を流れる蒸気の流量を計測する第2流量計と、をさらに備え、前記制御装置が、前記第1蒸気消費設備の運転中における前記第1流量計及び前記第2流量計の計測値から、前記第1蒸気消費設備の運転中における二酸化炭素の排出量を算出し、かつ、算出した二酸化炭素の排出量を、前記第1蒸気消費設備の運転中に製造された前記製品に紐づけた情報を生成すると好ましい。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、第1工程で製造された製品について、製造時におけるCO排出量を特定することができる。このようにして生成する製品情報は、LCA(ライフサイクルアセスメント)の算定データとなり得る。
【0015】
(7)本発明の蒸気供給システムは、蒸気を消費する第1蒸気消費設備を有する第1工程と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備を有する第2工程と、を含む製品の製造工程に蒸気を供給する蒸気供給システムであって、カーボンフリー燃料を用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気を発生させる第1ボイラと、化石燃料を用いて化石燃料由来の第2蒸気を発生させる第2ボイラと、前記第1蒸気消費設備に向けて前記第1ボイラで生成された蒸気を供給する第1供給路と、前記第2蒸気消費設備に向けて前記第2ボイラで生成された蒸気を供給する第2供給路と、前記第1供給路または前記第2供給路のいずれかに選択的に切り替える制御装置と、を備える。
【0016】
上記構成の蒸気供給システムによれば、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気のみを用いて製品を製造する第1工程と、カーボンフリー燃料由来でない第2蒸気を用いて製品を製造する第2工程とが併存する製造工程を構築することができる。
【0017】
(8)本発明のタイヤ加硫システムは、蒸気を消費する第1蒸気消費設備を有する第1工程と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備を有する第2工程と、を含むタイヤの加硫工程に蒸気を供給するタイヤ加硫システムであって、カーボンフリー燃料を用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気を発生させる第1ボイラと、化石燃料を用いて化石燃料由来の第2蒸気を発生させる第2ボイラと、蒸気ヘッダーと、前記蒸気ヘッダーと前記第1ボイラとを接続する第1蒸気配管と、前記蒸気ヘッダーと前記第2ボイラとを接続する第2蒸気配管と、前記蒸気ヘッダーと前記第1蒸気消費設備とを接続する第3蒸気配管と、前記第2蒸気配管と前記第2蒸気消費設備とを接続する第4蒸気配管と、前記第2蒸気配管上の前記第4蒸気配管との接続位置よりも前記蒸気ヘッダー側に配置される第1制御弁と、前記第1制御弁を制御し、当該第1制御弁を閉として、前記第1蒸気のみを前記第1蒸気消費設備に供給する制御装置と、を備える。
【0018】
上記構成のタイヤ加硫システムによれば、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気のみを用いて製品を製造する第1工程と、カーボンフリー燃料由来でない第2蒸気を用いて製品を製造する第2工程とが併存するタイヤの加硫工程を構築することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カーボンフリー燃料由来の蒸気を用いて製品を製造する工程と、カーボンフリー燃料由来でない蒸気を用いて製品を製造する工程とが併存する製造工程を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る蒸気供給システムを示す概略的な模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る蒸気供給システムを適用する前の状況を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る蒸気供給システムの制御ブロック図である。
図4】蒸気供給システムにおける蒸気供給系統の切換動作を示すフロー図である。
図5】通常運用時における蒸気の供給状況を示す模式図である。
図6】蒸気不足時における蒸気の供給状況を示す模式図である。
図7】蒸気余剰時における蒸気の供給状況を示す模式図である。
図8】蒸気供給システムにおけるCO排出量に関する製品情報の生成動作を示すフロー図である。
図9】タイヤについての製品情報の活用イメージの一例(カーボンフットプリント)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0022】
[蒸気供給システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る蒸気供給システムを示す概略的な模式図である。図2は、本発明の一実施形態に係る蒸気供給システムを適用する前の状況を示す模式図である。図3は、本発明の一実施形態に係る蒸気供給システムの制御ブロック図である。図1には、本発明に係る蒸気供給システムの一実施形態である蒸気供給システム10を示している。図1に示す蒸気供給システム10は、タイヤの製造工程の一部であり複数の第1蒸気消費設備11aを含む第1工程11、及び複数の第2蒸気消費設備12aを含む第2工程12に蒸気を供給するシステムである。本実施形態の各蒸気消費設備11a、12aは、生タイヤ(グリーンタイヤ)を加硫成形する加硫機である。加硫機は、生タイヤを加熱及び加圧するために蒸気を使用(消費)する。
【0023】
図1に示すように、蒸気供給システム10は、水素ボイラ21、既存ボイラ22、蒸気配管30、及び制御装置50を備える。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態の蒸気供給システム10は、既存ボイラ22から蒸気が供給される既存の第1工程11及び第2工程12において、既設配管70を撤去すると共に、この既設配管70の撤去部分に水素ボイラ21を接続するための新たな蒸気配管30を設けることで構築される。なお、本実施形態では、第1工程11及び第2工程12が、蒸気供給システム10の適用前から存在する既存の工程である場合を例示するが、第1工程11及び第2工程12は、蒸気供給システム10の適用に合わせて新設する工程であってもよい。
【0025】
本実施形態で例示する第1工程11及び第2工程12は、蒸気消費設備11a、12aとして、生タイヤ(グリーンタイヤ)を加硫成形する加硫機を含む。つまり、本実施形態で例示する第1工程11及び第2工程12は、タイヤの加硫工程である。このため、以下の説明では、蒸気供給システム10を、タイヤの加硫工程(第1工程11及び第2工程12)に蒸気を供給するシステムであるとして、タイヤ加硫システム10とも称する。
【0026】
水素ボイラ21は、カーボンフリー燃料の一例である水素ガスを燃料として蒸気を発生させる装置である。以下の説明では、水素ボイラ21が発生させる蒸気を、第1蒸気S1と称する。換言すると、第1蒸気S1は、カーボンフリー燃料由来の蒸気である。なお、本実施形態では、水素ガスを利用する水素ボイラ21を例示しているが、本発明の蒸気供給システムで利用するカーボンフリー燃料は、水素ガスには限定されない。本発明の蒸気供給システムは、水素ガス以外のカーボンフリー燃料を利用するボイラで構成されてもよい。
【0027】
既存ボイラ22は、化石燃料の一例である天然ガスを燃料として蒸気を発生させる装置である。以下の説明では、既存ボイラ22が発生させる蒸気を、第2蒸気S2と称する。換言すると、第2蒸気S2は、化石燃料由来の蒸気である。なお、本実施形態では、化石燃料として天然ガスを利用する既存ボイラ22を例示しているが、本発明の蒸気供給システムで利用する化石燃料は、天然ガスには限定されない。本発明の蒸気供給システムは、天然ガス以外の化石燃料(例えば、重油等)を利用するボイラで構成されてもよい。なお、本実施形態では、既存のボイラ(既存ボイラ22)を蒸気供給システム10の一部として利用する構成を例示するが、本発明の蒸気供給システムを構成する既存ボイラ(第2ボイラ)は、化石燃料を利用するボイラであればよく、新設のボイラであってもよい。
【0028】
蒸気配管30は、第1蒸気配管31、第2蒸気配管32、第3蒸気配管33、第4蒸気配管34、第5蒸気配管35、及び蒸気ヘッダー36を含む。
【0029】
第1蒸気配管31は、水素ボイラ21で生成した第1蒸気S1を蒸気ヘッダー36へ供給する配管である。第1蒸気配管31は、水素ボイラ21と蒸気ヘッダー36とを接続する。第2蒸気配管32は、既存ボイラ22で生成した第2蒸気S2を蒸気ヘッダー36へ供給する配管である。第2蒸気配管32は、既存ボイラ22と蒸気ヘッダー36とを接続する。第3蒸気配管33は、第1蒸気S1及び第2蒸気S2を第1工程11に供給する配管である。第3蒸気配管33は、蒸気ヘッダー36と第1工程11(各第1蒸気消費設備11a)とを接続する。蒸気供給システム10は、第3蒸気配管33上に、第1流量計51を備える。第4蒸気配管34は、第1蒸気S1及び第2蒸気S2を第2工程12に供給する配管である。第4蒸気配管34は、第2蒸気配管32と第2工程12とを接続する。第5蒸気配管35は、第1蒸気S1を第2工程12に供給する配管である。第5蒸気配管35は、後で説明する第1制御弁41をバイパスして、蒸気ヘッダー36と第2蒸気配管32とを接続する。なお、第1蒸気配管31、第2蒸気配管32、第3蒸気配管33、及び第5蒸気配管35は、それぞれ仕切弁37を介して蒸気ヘッダー36に接続される。蒸気ヘッダー36は、第1~第5の各蒸気配管31~35を接続する管部材である。蒸気ヘッダー36には、蒸気トラップ44が設けられる。
【0030】
蒸気供給システム10は、さらに、第1制御弁41及び第2制御弁42を備える。第1制御弁41は、第2蒸気配管32の途中に設けられる。なお、第2蒸気配管32における第1制御弁41の配置位置は、第2蒸気配管32における第4蒸気配管34の接続位置より蒸気ヘッダー36側である。第1制御弁41は、その弁開度に応じて、第2蒸気配管32を流れる蒸気量を調整する。なお、第1制御弁41は、全開あるいは全閉の何れかで使用される弁(いわゆるON-OFF弁)であってもよい。第1制御弁41を「閉」とした場合、第2蒸気配管32を流れる蒸気の流量は、「0」となる。さらに、第2蒸気配管32上には、蒸気ヘッダー36側から順に、チャッキ弁43、第2流量計52、蒸気トラップ44、及びストレーナ45が設けられる。第2蒸気配管32上のチャッキ弁43は、既存ボイラ22側から蒸気ヘッダー36側(第1工程11)へ向かう蒸気の流れを許容する。第1制御弁41は、この蒸気の流れ方向におけるチャッキ弁43の下流側に配置される。
【0031】
第2制御弁42は、第5蒸気配管35の途中に設けられる。第2制御弁42は、その弁開度に応じて、第5蒸気配管35を流れる蒸気量を調整する。なお、第2制御弁42は、全開あるいは全閉の何れかで使用される弁(いわゆるON-OFF弁)であってもよい。第2制御弁42を「閉」とした場合、第5蒸気配管35を流れる蒸気の流量は、「0」となる。さらに、第5蒸気配管35上には、蒸気ヘッダー36側から順に、ストレーナ45、蒸気トラップ44、第3流量計53、及びチャッキ弁43が設けられる。第5蒸気配管35上のチャッキ弁43は、蒸気ヘッダー36側から第2工程12側へ向かう蒸気の流れを許容する。第2制御弁42は、この蒸気の流れ方向におけるチャッキ弁43の下流側に配置される。なお、本発明の蒸気供給システムにおけるチャッキ弁、ストレーナ、蒸気トラップ等の配置位置及び配置数はこれに限定されず、これらの弁類は、各工程11、12に対して蒸気を適切に供給する上で必要な箇所に適宜配置すればよい。
【0032】
蒸気供給システム10は、さらに、第1流量計51、第1圧力センサ61、第2圧力センサ62及び第3圧力センサ63を備える。
【0033】
蒸気供給システム10では、第1制御弁41を「開」としたとき、第1制御弁41、チャッキ弁43、第2流量計52、蒸気トラップ44、及びストレーナ45が設けられた第2蒸気配管32とを通った第2蒸気S2、蒸気ヘッダー36及び第3蒸気配管33を介して、第1工程11に供給される。以下の説明では、この場合に第2蒸気S2の供給路となる、第1制御弁41、チャッキ弁43、第2流量計52、蒸気トラップ44、ストレーナ45、及び第2蒸気配管32を含む配管路を、第1供給路R1と称する。換言すると、第1供給路R1は、第1蒸気消費設備11aに向けて既存ボイラ22で生成された第2蒸気S2を供給する。
【0034】
蒸気供給システム10では、第2制御弁42を「開」としたとき、水素ボイラ21から蒸気ヘッダー36に供給された第1蒸気S1が、ストレーナ45、蒸気トラップ44、第3流量計53、チャッキ弁43、及び第2制御弁42が設けられた第5蒸気配管35を通って、第2工程12に供給される。以下の説明では、この場合に第1蒸気S1の供給路となる、ストレーナ45、蒸気トラップ44、第3流量計53、チャッキ弁43、及び第2制御弁42、及び第5蒸気配管35を含む配管路を、第2供給路R2と称する。換言すると、第2供給路R2は、第2蒸気消費設備12aに向けて水素ボイラ21で生成された第1蒸気S1を供給する。
【0035】
[制御装置]
図1及び図3に示す制御装置50は、蒸気供給システム10の動作を制御する装置である。図3に示すように、制御装置50は、水素ボイラ21、第1制御弁41、及び第2制御弁42に接続され、これらの動作を制御する。制御装置50は、第1蒸気消費設備11a、第1流量計51、第2流量計52、第3流量計53、第1圧力センサ61、第2圧力センサ62、及び第3圧力センサ63に接続される。制御装置50は、これらのセンサの計測値に基づいて、水素ボイラ21、第1制御弁41、及び第2制御弁42の動作を制御する。なお、制御装置50は、さらに、既存ボイラ22に接続されていてもよい。また、水素ボイラ21は、水素ボイラ21自身が有する機能により、制御装置50から独立して動作を制御する構成であってもよい。
【0036】
第1蒸気消費設備11aは、制御装置50に対して、当該設備の運転が開始した旨の信号(以下、運転信号とも称する)と、運転が停止した旨の信号(以下、停止信号とも称する)とを送信する。
【0037】
第1流量計51は、蒸気ヘッダー36から第3蒸気配管33を通じて第1工程11に供給される蒸気(第1蒸気S1及び第2蒸気S2)の流量F1を計測する。第2流量計52は、既存ボイラ22から第2蒸気配管32を通じて蒸気ヘッダー36に供給される第2蒸気S2の流量F2を計測する。第3流量計53は、蒸気ヘッダー36から第4蒸気配管34を通じて第2工程12に供給される第1蒸気S1の流量F3を計測する。
【0038】
制御装置50は、第1流量計51の計測値と、第2流量計52の計測値との差分から、第1工程11に供給される第1蒸気S1の流量を算出する。制御装置50は、第2流量計52の計測値から、第1工程11に供給される第2蒸気S2の流量を算出する。制御装置50は、第3流量計53の計測値から、第2工程12に供給される第1蒸気S1の流量を取得する。
【0039】
第1圧力センサ61は、蒸気ヘッダー36における蒸気(第1蒸気S1及び第2蒸気S2)の圧力を計測する。第2圧力センサ62は、第2蒸気配管32における蒸気(第1蒸気S1及び第2蒸気S2)の圧力を計測する。第3圧力センサ63は、第3蒸気配管33における蒸気(第1蒸気S1及び第2蒸気S2)の圧力を計測する。
【0040】
制御装置50は、第1圧力センサ61の計測値に基づいて、蒸気供給システム10の動作を制御する。制御装置50は、第2圧力センサ62の計測値に基づいて、第2工程12に供給する蒸気の圧力を監視し、第3圧力センサ63の計測値に基づいて、第1工程11に供給する蒸気の圧力を監視する。なお、制御装置50は、第1圧力センサ61の計測値と、第2圧力センサ62及び第3圧力センサ63の計測値とに基づいて、蒸気供給システム10の動作を制御してもよい。なお、本実施形態の蒸気供給システム10は、第2圧力センサ62及び第3圧力センサ63を省略してもよい。
【0041】
蒸気供給システム10では、制御装置50が、第1供給路R1または第2供給路R2のいずれかで蒸気が供給可能となるように、第1供給路R1及び第2供給路R2を選択的に切り替える。
【0042】
[蒸気供給システムの動作について]
図4は、蒸気供給システムにおける蒸気供給系統の切換動作を示すフロー図である。図5は、通常運用時における蒸気の供給状況を示す模式図である。図6は、蒸気不足時における蒸気の供給状況を示す模式図である。図7は、蒸気余剰時における蒸気の供給状況を示す模式図である。以下、図4図7に基づいて、蒸気供給システム10における蒸気供給系統の切換動作を説明する。
【0043】
図5には、蒸気供給システム10の通常運用時における蒸気供給系統の切換状態を示している。通常運用時において、制御装置50は、第1制御弁41及び第2制御弁42を、「閉」の状態に切り換える。
【0044】
水素ボイラ21は、水素ボイラ21自身が有する機能によって、第1蒸気S1の供給圧力を調整することができる。本実施形態では、水素ボイラ21における第1蒸気S1の供給圧力を1.45~1.75MPaに設定する。このため、蒸気供給システム10では、通常運用時における蒸気ヘッダー36内の蒸気圧力が、1.45~1.75MPaとなる。換言すると、蒸気供給システム10では、通常運用時において、第1工程11の各第1蒸気消費設備11aに、1.45~1.75MPaの圧力で、第1蒸気S1を供給する。なお、本実施形態で示す第1工程11(第1蒸気消費設備11a)は、必要な蒸気圧力が1.0~1.6MPa程度である。
【0045】
既存ボイラ22は、既存ボイラ22自身が有する機能によって、第2蒸気S2の供給圧力を調整することができる。本実施形態では、既存ボイラ22における第2蒸気S2の供給圧力を1.45~1.75MPa程度に設定する。このため、蒸気供給システム10では、通常運用時において、第2工程12の各第2蒸気消費設備12aに対して、1.45~1.75MPa程度の圧力で第2蒸気S2を供給する。
【0046】
蒸気供給システム10において、制御装置50は、第1圧力センサ61の検出値P1(蒸気ヘッダー36内の蒸気の圧力)に応じて、第1制御弁41及び第2制御弁42を制御する。蒸気供給システム10は、第1蒸気消費設備11aから運転信号が入力された場合に、制御装置50が図4に示すフローに沿った制御を開始する。
【0047】
図4に示す制御の開始時点において、制御装置50は、蒸気供給システム10を通常運用時(図5参照)の状態とする。そして、制御装置50は、第1圧力センサ61の検出値P1についての判定を実行する(S101)。ステップ(S101)において、制御装置50は、検出値P1が第1閾値Z1以下であるか否かを判定する。本実施形態の蒸気供給システム10では、第1閾値Z1を、1.2MPaに設定する。検出値P1が第1閾値Z1以下である場合(Yes)、制御装置50は、次のステップ(S103)を実行する。一方、検出値P1が第1閾値Z1を超えている場合(No)、制御装置50は、次のステップ(S102)を実行する。
【0048】
ステップ(S102)において、制御装置50は、検出値P1が第2閾値Z2以上であるか否かを判定する。本実施形態の蒸気供給システム10では、第2閾値Z2を、1.7MPaに設定する。検出値P1が第2閾値Z2以上である場合(Yes)、制御装置50は、次のステップ(S106)を実行する。一方、検出値P1が第2閾値Z2未満である場合(No)、制御装置50は、ステップ(S101)に戻って処理を継続する。つまり、ステップ(S101)が(No)で、かつ、ステップ(S102)が(No)である場合、制御装置50は、第1工程11に対する第1蒸気S1の供給が安定していると判断し、通常運用時(図5参照)の状態を維持する。
【0049】
ステップ(S103)において、制御装置50は、第1制御弁41を「開」とする。このとき制御装置50は、蒸気供給システム10を蒸気不足時(図6参照)の状態に切り換える。蒸気不足時において、制御装置50は、第1制御弁41を「開」、第2制御弁42を「閉」の状態に切り換える。なお、制御装置50は、蒸気配管30におけるスチームハンマーの発生を防止する観点から、第1制御弁41及び第2制御弁42の開閉速度を、急な開閉とならないよう制御すると好ましい。
【0050】
つまり、ステップ(S101)の判定が(Yes)の場合、制御装置50は、第1工程11に対する第1蒸気S1の供給が不足すると判断し、第1制御弁41を「開」として、第2蒸気S2を蒸気ヘッダー36に導入するとともに、第1蒸気S1及び第2蒸気S2を、第1工程11に供給する。このように、蒸気供給システム10は、第1工程11が蒸気不足となることを抑制し、第1蒸気消費設備11aが稼働できない事態を回避する。
【0051】
制御装置50は、ステップ(S103)の実行後、次のステップ(S104)を実行する。ステップ(S104)において、制御装置50は、検出値P1が第3閾値Z3以上であるか否かを判定する。本実施形態の蒸気供給システム10では、第3閾値Z3を、1.3MPaに設定する。ここで、検出値P1が第3閾値Z3以上である場合(Yes)、制御装置50は、次のステップ(S105)を実行する。一方、検出値P1が第3閾値Z3未満である場合(No)、制御装置50は、検出値P1が第3閾値Z3以上となるまで、ステップ(S104)を繰り返し実行する。つまり、ステップ(S104)において、判定が(No)となる場合、制御装置50は、水素ボイラ21で生成する第1蒸気S1だけでは第1工程11に対する蒸気の供給量が不足すると判断し、第1工程11に対する第2蒸気S2の供給を継続する。
【0052】
ステップ(S105)において、制御装置50は、第1制御弁41を「閉」とする。このとき制御装置50は、蒸気供給システム10を通常運用時(図5参照)の状態に切り換える。つまり、ステップ(S104)において、判定が(Yes)となる場合、制御装置50は、水素ボイラ21で生成する第1蒸気S1だけで第1工程11に対する蒸気の供給が足りると判断し、第1制御弁41を「閉」として、蒸気ヘッダー36への第2蒸気S2の導入を停止する。
【0053】
ステップ(S106)において、制御装置50は、第2制御弁42を「開」とする。このとき制御装置50は、蒸気供給システム10を蒸気余剰時(図7参照)の状態に切り換える。蒸気余剰時において、制御装置50は、第1制御弁41を「閉」、第2制御弁42を「開」の状態に切り換える。
【0054】
つまり、ステップ(S102)において、判定が(Yes)となる場合、制御装置50は、水素ボイラ21で生成する第1蒸気S1が余剰になると判断し、第2制御弁42を「開」として、余剰分の第1蒸気S1を第2工程12に供給する。制御装置50は、ステップ(S106)の実行後、次のステップ(S107)を実行する。
【0055】
ステップ(S107)において、制御装置50は、検出値P1が第4閾値Z4以下であるか否かを判定する。本実施形態の蒸気供給システム10では、第4閾値Z4を、1.6MPaに設定する。ここで、検出値P1が第4閾値Z4以下である場合(Yes)、制御装置50は、次のステップ(S108)を実行する。一方、検出値P1が第4閾値Z4を超えている場合(No)、制御装置50は、検出値P1が第4閾値Z4以下となるまでステップ(S107)を繰り返し実行する。つまり、ステップ(S107)において判定が(No)となる場合、制御装置50は、第1蒸気S1が未だ余剰になっていると判断し、第2工程12に対する第1蒸気S1の供給を継続する。
【0056】
ステップ(S108)において、制御装置50は、第2制御弁42を「閉」とする。このとき制御装置50は、蒸気供給システム10を通常運用時(図5参照)の状態に切り換える。つまり、制御装置50は、ステップ(S107)において、判定が(Yes)となる場合、第1蒸気S1の余剰が解消したと判断し、第2制御弁42を「閉」として、第2工程12に対する第1蒸気S1の供給を停止する。
【0057】
以上説明したように、蒸気供給システム10は、通常運用時(図5参照)において、第1工程11に第1蒸気S1のみを供給し、第2工程12に第2蒸気S2のみを供給する。蒸気供給システム10は、第1蒸気S1の余剰時(図6参照)において、第1蒸気S1及び第2蒸気S2を第2工程12に供給する。蒸気供給システム10は、第1蒸気S1の不足時(図7参照)において、第1蒸気S1及び第2蒸気S2を第1工程11に供給する。
【0058】
[製品情報の生成方法について]
図8は、蒸気供給システムにおけるCO排出量に関する製品情報の生成動作を示すフロー図である。本実施形態の蒸気供給システム10において、制御装置50は、さらに、図8のフローに示す制御を実行して、製品の製造時におけるCO排出量に関する情報(以下、製品情報とも称する)を生成する。蒸気供給システム10は、運用が開始されると、制御装置50が、図8に示すフローに沿った制御をさらに実行する。
【0059】
図8に示す制御を実行すると、まず制御装置50は、第1蒸気消費設備11aからの運転信号の有無を判定する(S201)。ステップ(S201)において、制御装置50は、第1蒸気消費設備11aから運転信号の入力が有った場合(Yes)、次のステップ(S202)を実行する。一方、第1蒸気消費設備11aからの運転信号の入力が無い場合(No)、制御装置50は、第1蒸気消費設備11aからの運転信号の入力が有るまで、繰り返しステップ(S201)を実行する。
【0060】
ステップ(S202)において、制御装置50は、第1制御弁41が「閉」であるか否かを判定する。ステップ(S202)における判定が(Yes)である場合、制御装置50は、第1工程11に第1蒸気S1のみが供給されていると判断して、「カーボンフリー燃料由来」のフラグを生成する(S203)。なお、「カーボンフリー燃料由来」のフラグには、フラグを生成した時刻の情報が含まれる。制御装置50は、生成した「カーボンフリー燃料由来」のフラグを、製品データベースに逐次格納する。一方、ステップ(S202)における判定が(No)である場合、制御装置50は、第1工程11に第1蒸気S1と第2蒸気S2とが供給されていると判断して、「化石燃料由来」のフラグを生成する(S204)。なお、「化石燃料由来」のフラグには、フラグを生成した時刻の情報が含まれる。制御装置50は、生成した「化石燃料由来」のフラグを、製品データベースに逐次格納する。制御装置50は、ステップ(S203)又はステップ(S204)の実行後、次のステップ(S205)を実行する。
【0061】
ステップ(S205)において、制御装置50は、第1蒸気消費設備11aからの停止信号の有無を判定する。ステップ(S205)において、制御装置50は、第1蒸気消費設備11aからの停止信号の入力が有った場合(Yes)、次のステップ(S206)を実行する。一方、制御装置50は、第1蒸気消費設備11aから停止信号の入力が無い場合(No)、ステップ(S202)に戻って、第1蒸気消費設備11aからの停止信号の入力が有るまで、ステップ(S202)~(S204)の処理を繰り返し実行する。
【0062】
ステップ(S206)において、制御装置50は、ステップ(S201)~(S205)の実行期間中における第1蒸気S1及び第2蒸気S2の各積算流量を取得する。具体的には、制御装置50は、前記実行期間中における第1流量計51、第2流量計52、及び第3流量計53の各計測値から、前記実行期間中における第1蒸気S1及び第2蒸気S2の各積算流量を算出する。ステップ(S206)の実行後、制御装置50は、次のステップ(S207)を実行する。
【0063】
ステップ(S207)において、制御装置50は、ステップ(S201)~(S205)の実行期間中における、第1工程11からのCO排出量を算出する。CO排出量は、水素ボイラ21で使用する水素ガスのCO排出係数、既存ボイラ22で使用する天然ガスのCO排出係数、及び各ボイラ21,22の蒸発倍数(水の蒸発量を燃料量に換算する係数)を、第1蒸気S1及び第2蒸気S2の各積算流量に乗じて算出する。なお、カーボンフリー水素燃料のCO排出係数は「0(t-CO/千m3)」であり、天然ガス(LNGを除く)のCO排出係数は「2.22(t-CO/千m3)」である。
【0064】
制御装置50は、算出されたCO排出量を、ステップ(S201)~(S205)の実行期間中に製造された製品(タイヤ)の個数で除して、製品1個あたりのCO排出量をさらに算出する。なお、各製品のCO排出量の算出は、製品が1個完成するごとに、1個ずつ行う構成であってもよい。ステップ(S207)の実行後、制御装置50は、次のステップ(S208)を実行する。
【0065】
ステップ(S208)において、制御装置50は、ステップ(S201)~(S205)の実行期間中に製造した各製品のCO排出量を、製品データベースに記録する。製品データベースには、各製品(タイヤ)のシリアル番号と、当該製品の製造時のCO排出量とが紐づけられた製品情報が格納される。なお、製品データベースに格納する製品情報は、各製品(タイヤ)のロット番号と、当該製品の製造時のCO排出量とが紐づけられた情報であってもよい。
【0066】
[製品情報の活用例について]
図9は、タイヤについての製品情報の活用イメージの一例(カーボンフットプリント)を示す図である。蒸気供給システム10は、製品データベースに格納された製品情報に基づいて、第1工程11で製造された製品の製造時におけるCO排出量を特定することができる。このような製品情報(製造時におけるCO排出量)は、LCA(ライフサイクルアセスメント)の算定データとなり得る。タイヤについての製品情報の活用例としては、例えば、図9に示すようなカーボンフットプリントを生成することが挙げられる。蒸気供給システム10は、製品情報を活用することによって、例えば、個別の製品についての(あるいはロットごとの)カーボンフットプリントを生成することができる。このようなカーボンフットプリントをタイヤに付して販売した場合、ユーザに対してCO排出量の削減実績を示すことができると共に、環境に配慮した製品であることのアピールにもつながり、これにより、当該タイヤのユーザに対する訴求力を高めることができる。
【0067】
[各実施形態の作用効果]
(1)本実施形態の蒸気供給システム10は、蒸気を消費する第1蒸気消費設備11aを有する第1工程11と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備12aを有する第2工程12と、を含む製品の製造工程に蒸気を供給する。蒸気供給システム10は、カーボンフリー燃料の一例である水素ガスを用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1を発生させる水素ボイラ21と、化石燃料の一例である天然ガスを用いて化石燃料由来の第2蒸気S2を発生させる既存ボイラ22と、備える。さらに蒸気供給システム10は、蒸気ヘッダー36と、蒸気ヘッダー36と水素ボイラとを接続する第1蒸気配管31と、蒸気ヘッダー36と既存ボイラ22とを接続する第2蒸気配管32と、蒸気ヘッダー36と第1蒸気消費設備11aとを接続する第3蒸気配管33と、第2蒸気配管32と第2蒸気消費設備12aとを接続する第4蒸気配管34と、第2蒸気配管32上の第4蒸気配管34との接続位置よりも蒸気ヘッダー36側に配置される第1制御弁41と、第1制御弁41を制御し、当該第1制御弁41を閉として、第1蒸気S1のみを第1蒸気消費設備11aに供給する制御装置50と、を備える。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1のみを用いて製品を製造する第1工程11と、カーボンフリー燃料由来でない(化石燃料由来の)第2蒸気S2を用いて製品を製造する第2工程12とが併存する製造工程を構築することができる。
【0068】
(2)本実施形態の蒸気供給システム10は、制御装置50が、第1制御弁41を開として、第1蒸気S1及び第2蒸気S2を第1蒸気消費設備11aに供給する。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、第1工程11に第1蒸気S1及び第2蒸気S2を供給可能に構成することで、第1蒸気S1が不足する場合に、第1工程11に第2蒸気S2を供給することができる。これにより、第1工程11が稼働できない事態の発生を抑制することができる。
【0069】
(3)本実施形態の蒸気供給システム10は、蒸気ヘッダー36における蒸気の圧力を計測する第1圧力センサ61をさらに備え、第1圧力センサ61の計測値が所定の第1閾値以下の場合、制御装置50が第1制御弁41を開とする。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、第1蒸気S1の不足により第1工程11が稼働できない事態の発生を抑制することができる。
【0070】
(4)本実施形態の蒸気供給システム10は、第1制御弁41をバイパスして第2蒸気配管32と蒸気ヘッダー36とを接続する第5蒸気配管35と、第5蒸気配管35に設置される第2制御弁42と、をさらに備える。蒸気供給システム10は、制御装置50が、第2制御弁42を制御し、当該第2制御弁42を開として、第1蒸気S1を第2蒸気消費設備12aに供給する。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、第1蒸気S1が余剰となる場合に、第1蒸気S1を第2蒸気消費設備12aに供給することができ、これにより、第1蒸気S1を有効に活用すると共に、第2工程12におけるCO排出量を抑制することができる。
【0071】
(5)本実施形態の蒸気供給システム10は、蒸気ヘッダー36における蒸気の圧力を計測する第1圧力センサ61をさらに備え、第1圧力センサ61の計測値が所定の第2閾値Z2以上である場合、制御装置50が第2制御弁42を開とする。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、第1蒸気S1が余剰となる場合に、第1蒸気S1を第2蒸気消費設備12aに供給することができ、これにより、第1蒸気S1を有効に活用すると共に、第2工程12におけるCO排出量を抑制することができる。
【0072】
(6)本実施形態の蒸気供給システム10は、第3蒸気配管33を流れる蒸気の流量を計測する第1流量計51と、第2蒸気配管32を流れる蒸気の流量を計測する第2流量計52と、をさらに備える。蒸気供給システム10は、制御装置50が、第1蒸気消費設備11aの運転中における第1流量計51及び第2流量計52の計測値から、第1蒸気消費設備11aの運転中におけるCO排出量を算出し、かつ、算出したCO排出量を、第1蒸気消費設備11aの運転中に製造された前記製品に紐づけた製品情報を生成する。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、第1工程11で製造された製品について、製造時におけるCO排出量を特定することができる。このようにして生成する製品情報(製造時におけるCO排出量)は、LCA(ライフサイクルアセスメント)の算定データとなり得る。このような製品情報は、例えば、第1工程11で製造された個々の製品について、製造時におけるCO排出量を示すカーボンフットプリント(図9参照)を付すことに活用することができる。
【0073】
(7)本実施形態の蒸気供給システム10は、蒸気を消費する第1蒸気消費設備11aを有する第1工程11と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備12aを有する第2工程12と、を含む製品の製造工程に蒸気を供給する。蒸気供給システム10は、カーボンフリー燃料の一例である水素ガスを用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1を発生させる水素ボイラ21と、化石燃料の一例である天然ガスを用いて化石燃料由来の第2蒸気S2を発生させる既存ボイラ22と、第1蒸気消費設備11aに向けて既存ボイラ22で生成された第2蒸気S2を供給する第1供給路R1と、第2蒸気消費設備12aに向けて水素ボイラ21で生成された第1蒸気S1を供給する第2供給路R2と、第1供給路R1または第2供給路R2のいずれかに選択的に切り替える制御装置50と、を備える。
上記構成の蒸気供給システム10によれば、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1のみを用いて製品を製造する第1工程11と、カーボンフリー燃料由来でない(化石燃料由来の)第2蒸気S2を用いて製品を製造する第2工程12とが併存する製造工程を構築することができる。
【0074】
(8)本実施形態のタイヤ加硫システム10は、蒸気を消費する第1蒸気消費設備11aを有する第1工程11と、蒸気を消費する第2蒸気消費設備12aを有する第2工程12と、を含むタイヤの加硫工程に蒸気を供給する。タイヤ加硫システム10は、カーボンフリー燃料の一例である水素ガスを用いてカーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1を発生させる水素ボイラ21と、化石燃料の一例である天然ガスを用いて化石燃料由来の第2蒸気S2を発生させる既存ボイラ22と、蒸気ヘッダー36と、蒸気ヘッダー36と水素ボイラ21とを接続する第1蒸気配管31と、蒸気ヘッダー36と既存ボイラ22とを接続する第2蒸気配管32と、蒸気ヘッダー36と第1蒸気消費設備11aとを接続する第3蒸気配管33と、第2蒸気配管32と第2蒸気消費設備12aとを接続する第4蒸気配管34と、第2蒸気配管32上の第4蒸気配管34との接続位置よりも蒸気ヘッダー36側に配置される第1制御弁41と、第1制御弁41を制御し、当該第1制御弁41を閉として、第1蒸気S1のみを第1蒸気消費設備11aに供給する制御装置50と、を備える。
上記構成のタイヤ加硫システム10によれば、カーボンフリー燃料由来の第1蒸気S1のみを用いてタイヤを製造する第1工程11と、カーボンフリー燃料由来でない第2蒸気S2を用いてタイヤを製造する第2工程12とが併存するタイヤの加硫工程を構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明された蒸気供給システム及びタイヤ加硫システムは、タイヤの製造工程に適用するだけでなく、蒸気を消費して製造される製品の製造工程について、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10:蒸気供給システム(タイヤ加硫システム)
11:第1工程
11a:第1蒸気消費設備
12:第2工程
12a:第2蒸気消費設備
21:水素ボイラ(第1ボイラ)
22:既存ボイラ(第2ボイラ)
31:第1蒸気配管
32:第2蒸気配管
33:第3蒸気配管
34:第4蒸気配管
35:第5蒸気配管
41:第1制御弁
42:第2制御弁
51:第1流量計
52:第2流量計
50:制御装置
61:第1圧力センサ(圧力センサ)
S1:第1蒸気
S2:第2蒸気
R1:第1供給路
R2:第2供給路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9