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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032380
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240305BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240305BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240305BHJP
   F24D 18/00 20220101ALI20240305BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20240305BHJP
   F24D 103/17 20220101ALN20240305BHJP
   F24D 101/30 20220101ALN20240305BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04313
F24D18/00
F24H1/00 631Z
F24D103:17
F24D101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135997
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英隆
【テーマコード(参考)】
3L122
5H127
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA28
3L122BA32
3L122BB02
3L122DA35
3L122EA22
5H127AB23
5H127AC03
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DB91
5H127DB93
5H127DC93
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG04
5H127GG10
(57)【要約】
【課題】水張りの実施条件を適切に設定することで、気温が低いときでも水張りを実施することができる場合には水張りを実行させ、利便性に優れた燃料電池装置を提供する。
【解決手段】水タンク3への水張り要求を受けた場合、外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサ(外気温サーミスタTH7)が検知した温度が、第一温度帯の場合は水張りを許可し、第一温度帯よりも低い第二温度帯の場合は循環ポンプ(熱媒ポンプP1、与熱ポンプP2)を駆動して回転が検知された場合に水張りを許可し、回転が検知されない場合に水張りを許可せず、第二温度帯よりも低い第三温度帯の場合は水張りを許可しない。気温が高くなく凍結が発生する可能性がある場合でも、循環ポンプを駆動することができれば、実際に凍結することはないと判断して水張を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池モジュールと、
前記燃料電池の発電に用いられる水が循環する循環経路と、
前記循環経路に設けられ水を循環させる循環ポンプと、
水を貯留する水タンクと、
外部の給水源から前記水タンクに給水する給水流路と、
外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサと、
前記燃料電池の発電を制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記水タンクへの水張り要求を受けた場合、
前記第一温度センサが検知した温度が、第一温度帯の場合は水張りを許可し、
第一温度帯よりも低い第二温度帯の場合は前記循環ポンプを駆動するよう指示して、前記循環ポンプの回転が検知された場合に水張りを許可し、前記循環ポンプの回転が検知されない場合に水張りを許可せず、
第二温度帯よりも低い第三温度帯の場合は水張りを許可しない燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御装置は、水張りを許可しない場合には水張り待機状態に移行し、該水張り待機状態では再判定条件を満たした場合に水張りを許可する請求項1記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記循環経路に設けられた第二温度センサと、
前記給水流路に設けられた第三温度センサと、を備え、
前記再判定条件は、前記第一温度センサと前記第二温度センサと前記第三温度センサの検知温度に関する条件を含む請求項2記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記再判定条件は、前記循環ポンプの回転を検知したことを含む請求項3記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記水張り待機状態のまま所定時間が経過した場合には水張りを禁止し、禁止したことを通知する請求項2から4のいずれかに記載の燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を含有する燃料ガスと酸素含有ガス(空気)とを用いて発電を行ない、電気を外部に供給する燃料電池装置が知られており、燃料電池からは発電に伴って熱が排出される。そのため、燃料電池装置は、燃料電池からの排熱と熱媒体とで熱交換を行う熱交換器、熱媒体が循環する循環流路、熱媒体を蓄える蓄熱タンクを備えており、燃料電池の発電によって発生した排熱を熱媒体に回収して蓄熱タンクに蓄え、この熱媒体を給湯や暖房等に使用している。また、熱媒体としては一般に水が用いられる。
【0003】
このような燃料電池装置においては、発電を開始する前に、蓄熱タンクに水を張るいわゆる「水張り」を行う。ところが、冬季などは気温が低く、水が凍結する可能性がある。このような状況で水張りを実施してしまうと、配管等の内部で凍結が発生することが考えられる。配管内で水が凍結すると、水張りを完了することができず、エラーを発報させてしまったり、最悪の場合には配管を破損させてしまうおそれもある。そこで、このような問題に対し特許文献1では、温度に関する給水条件を設定して、給水条件を満たした場合には凍結のおそれがないと判断して、水張りを実行させるようになっている。凍結のおそれがある場合には、水張りは行われない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-194665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池装置は、水張りが完了しない限り発電運転を行うことはできない。そのため、ユーザーの利便性を考慮すると、できるだけ水張りを実施して発電を行わせるのがよい。つまり、気温が低いときであっても、実際に凍結しないのであれば水張りを実行するように条件を設定したい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、水張りの実施条件を適切に設定することで、気温が低いときでも水張りを実施することができる場合には水張りを実行させ、利便性に優れた燃料電池装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃料ガスと酸素含有ガスとを用いて発電を行う燃料電池を備えた燃料電池モジュールと、
前記燃料電池の発電に用いられる水が循環する循環経路と、
前記循環経路に設けられ水を循環させる循環ポンプと、
水を貯留する水タンクと、
外部の給水源から前記水タンクに給水する給水流路と、
外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサと、
前記燃料電池の発電を制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記水タンクへの水張り要求を受けた場合、
前記第一温度センサが検知した温度が、第一温度帯の場合は水張りを許可し、
第一温度帯よりも低い第二温度帯の場合は前記循環ポンプを駆動するよう指示して、前記循環ポンプの回転が検知された場合に水張りを許可し、前記循環ポンプの回転が検知されない場合に水張りを許可せず、
第二温度帯よりも低い第三温度帯の場合は水張りを許可しない燃料電池装置である。
【発明の効果】
【0008】
上述のように構成することにより、気温が低いときであっても循環ポンプを回転させることができる場合には、凍結は起こらないと判断して水張りを実行する。これにより、発電運転の開始条件が緩和されて利便性に優れた燃料電池装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。
図2】水張り判定のフローチャートである。
図3】再判定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0011】
本発明の燃料電池装置は、発電に用いられる水が循環する循環経路と、水を循環させる循環ポンプと、水を貯留する水タンクと、を備えており、水タンクへの水張り要求を受けた場合、外気温もしくは外気温と相関を有する温度を検知する第一温度センサが検知した温度が、第一温度帯の場合は水張りを許可し、第一温度帯よりも低い第二温度帯の場合は循環ポンプを駆動するよう指示して、循環ポンプの回転が検知された場合に水張りを許可し、循環ポンプの回転が検知されない場合に水張りを許可せず、第二温度帯よりも低い第三温度帯の場合は水張りを許可しない。つまり、気温に関する条件を複数設け、気温が高くなく凍結が発生する可能性がある場合でも、循環ポンプを駆動することができれば、実際に凍結することはないと判断して水張を実行する。このように、循環ポンプの駆動を判定条件に組み入れることで、結果的として発電運転の開始条件が緩和されて利便性に優れた燃料電池装置となる。
【0012】
また、水張りを許可しない場合には水張り待機状態に移行し、水張り待機状態では再判定条件を満たした場合に水張りを許可する。これにより、待機中に水張可能であると判断された場合には、水張を実行することができる。
【0013】
また、循環経路に設けられた第二温度センサと、給水流路に設けられた第三温度センサと、を備え、再判定条件は、第一温度センサと第二温度センサと第三温度センサの検知温度に関する条件を含む。再判定が行われるのは、先の判定で水張りが許可されなかった、つまり凍結している可能性が高い場合である。よって、再判定条件には、外気温と水の流路の温度に関する条件を含むことで、確実に凍結していないことが検知されたときに水張りを許可することができる。
【0014】
また、再判定条件は、循環ポンプの回転を検知したことを含む。再判定時は、水が流れる流路の温度に加えて、循環ポンプの回転を検知することで、確実に凍結しないことを判断して水張りを許可することができる。
【0015】
また、水張り待機状態のまま所定時間が経過した場合には水張りを禁止し、禁止したことを通知する。これにより、水張が実行されなかったことを使用者に認知させることができる。
【実施例0016】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0017】
図1は本実施形態の燃料電池装置のシステム構成図である。燃料電池装置100は、燃料電池モジュール1を含み、燃料電池モジュール1を作動させるための、第1熱交換器2、蓄熱タンク3、凝縮水タンク4、放熱器5、空気供給装置14、燃料供給装置15、改質水供給装置16等の複数の補機が筐体50内に納められている。筐体50内には上述の装置全てが収められる必要はなく、例えば、第1熱交換器2や蓄熱タンク3を筐体50の外部に設けてもよい。また、上述の装置の一部を省略した燃料電池装置も可能である。
【0018】
燃料電池モジュール1は、箱状の収納容器10の内部に、燃料ガスと酸素含有ガスとで発電を行なう燃料電池11と、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する改質器12と、を収容して構成される。
【0019】
燃料電池11の構成については特に限定はしないが、例えば、複数の燃料電池セルが配列されてなるセルスタック構造を有していてもよい。セルスタック構造の燃料電池11は、例えば、各燃料電池セルの下端を、ガラスシール材等の絶縁性接合材を用いて、マニホールドに固定することによって構成される。
【0020】
改質器12は、天然ガス、LPガス等の原燃料ガスを水蒸気改質し、燃料電池11に供給する燃料ガスを生成する。改質器12には、原燃料ガスを供給する燃料供給装置15と、改質水を供給する改質水供装置16が接続されており、原燃料ガスと改質水は加熱された改質器12で改質反応し、水素を含む燃料ガスが生成される。
【0021】
燃料電池11には、改質器12で生成された燃料ガスと、空気供給装置14によって導入された空気(酸素含有ガス)が供給される。燃料ガスは、燃料電池セル内を通過するときに酸素含有ガスと反応して発電が行われる。燃料電池11と改質器12の間の空間は燃焼部13であり、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスは燃焼部13で合流して燃焼する。この燃料ガスの燃焼によって高温の排ガスが生成され、改質器12はこの熱によって加熱される。このようにして燃料電池モジュール1内で生じた排ガスは、第1熱交換器2に供給される。
【0022】
第1熱交換器2には配管を介して、蓄熱タンク3、熱媒ポンプP1および放熱器5が接続され、第1熱媒循環ラインHC1が形成されている。この第1熱媒循環ラインHC1には熱媒体が導入されており、第1熱交換器2ではこの熱媒体と前述の排ガスとで熱交換が行われて熱媒体が加熱される。本実施形態において、熱媒体としては水を用いており、蓄熱タンク3は熱交換により温度が上昇した熱媒体を蓄える。蓄熱タンク3に蓄えられた熱媒体は、放熱器5に送られて冷却され、再び第1熱交換器2で排ガスと熱交換を行った後、蓄熱タンク3に還流する。これにより、蓄熱タンク3には上部から温度の高い熱媒体が蓄えられ温度成層が形成される。
【0023】
蓄熱タンク3には、水を補給するための補給流路25が接続されている。補給流路25は、外部の水供給源に接続された供給流路26から分岐して設けられ、途中に流路を開閉する給水弁25aを備えている。燃料電池装置100の設置時や、運転中に蓄熱タンク3内の水位が所定以下となったときには給水弁25aを開くことで補給流路25を通じて蓄熱タンク3に水道水が供給される。
【0024】
また、蓄熱タンク3には、蓄熱タンク3内の水量を監視するための水位検知手段7と、熱媒体を加熱するための加熱ヒータ8が設けられている。水位検知手段としては、フロートセンサや静電容量センサなど公知の水位センサを用いることができ、蓄熱タンク3内の水量が所定量以上であるときに水有を検知し、所定量を下回ったときに水無しを検知する。本実施形態においては、水位検知手段7が1箇所に設けられている例を示しているが、水位検知手段7を上下方向に複数設け、複数箇所における水位を検知するようにしてもよい。
【0025】
加熱ヒータ8は、蓄熱タンク3内に配設されて蓄熱タンク3内の水を加熱する。例えば、外気温が低く、燃料電池装置100内で水が凍結するおそれのあるときは、加熱ヒータ8に通電することで水温を上昇させて凍結を防止することができる。さらには、燃料電池11での発電量が需要家での消費電力量を超える場合には、余った電力(余剰電力)を消費させるために加熱ヒータ8に通電するようにしてもよい。
【0026】
また、第1熱交換器2には、凝縮水回収路20を介して凝縮水タンク4が接続されている。燃料電池モジュール1で発生した排ガスが熱交換によって冷却されると、排ガス中に含まれる水蒸気が水と気体に分離され、分離された水は、凝縮水回収流路20を通って凝縮水タンク4に回収される。凝縮水タンク4では、イオン交換器(図示せず)などを経て、回収した水から不純物を取り除いて純水化する。純水化した水は水供給装置16により改質器12に供給され、改質水として使用される。一方で、水分が取り除かれた気体は、排気流路21を通ってから筐体50の外に排出される。
【0027】
改質器12に原燃料を供給する燃料供給装置15は、燃料の供給源から繋がる原燃料流路22上に、第1電磁弁150、圧力センサ151、脱硫器152、ガス流量計153、燃料ポンプ154、第2電磁弁155等の補機が設けられている。改質器12に改質水を供給する改質水供給装置16は、凝縮水タンク4から繋がる改質水流路23上に改質水ポンプ160等の補機が設けられている。燃料電池モジュール1に酸素含有ガスを供給する空気供給装置14は、酸素含有ガス流路24上に、エアフィルタ140、空気流量計141、エアブロワ142等の補機が設けられている。なお、ここに挙げた補機は一例であって、この他の補機を備える構成としてもよい。
【0028】
また、燃料電池装置100は、第2熱交換器6、蓄熱タンク3から熱媒を循環させる与熱ポンプP2およびこれらを繋ぐ配管を含む第2熱媒循環ラインHC2を備えている。第2熱媒循環ラインHC2では、外部から供給流路26を介して供給された水道水を、蓄熱タンク3に貯留された高温の熱媒体を用いて第2熱交換器6で加温する。加温された水を外部の給湯器等の再加熱装置に向けて送給流路27を介して送給することができる。
【0029】
さらに燃料電池装置100は、筐体50内外の各部の温度を計測するための、温度センサやサーミスタ等の温度検知手段を複数備える。
【0030】
第1熱媒循環ラインHC1や第2熱媒循環ラインHC2のように熱媒体が流れる流路には、熱媒体の温度を計測するため温度検知手段TH1~TH6が設けられている。
【0031】
例えば、蓄熱タンク3内の熱媒体の温度を検知する手段として、タンク低サーミスタTH1、タンク高サーミスタTH2を有している。タンク低サーミスタTH1は、蓄熱タンク3内の比較的低温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3の下部に設けられている。タンク高サーミスタTH2は、蓄熱タンク3内の比較的高温の熱媒体の温度を検知するものであり、蓄熱タンク3近傍の第2熱媒循環ラインHC2上に設けられている。また、第1熱媒循環ラインHC1を流れる熱媒体の温度を検知する手段として、熱媒低サーミスタTH3、熱媒高サーミスタTH4を有している。熱媒低サーミスタTH3は熱媒ポンプP1と第1熱交換器2の間に設けられ、放熱器5で冷却されて第1熱交換器2に流入する熱媒体の温度を検知する。熱媒高サーミスタTH4は第1熱交換器2と蓄熱タンク3との間に設けられ、第1熱交換器2を通過した後の熱媒体の温度を検知する。さらに、供給流路26には外部から供給される水の温度を検知する入水サーミスタTH5、送給流路27には第2熱交換器6により加温された水の温度を検知する出湯サーミスタTH6が設けられる。
【0032】
燃料電池モジュール1内には、燃料電池11の中心部の温度を検知する中心部温度センサTC1と、発電に使用されなかった燃料ガスと酸素含有ガスが燃焼する燃焼部13の温度を検知する燃焼部温度センサTC2が配設されている。
【0033】
また、燃料電池装置100の周囲の気温を検知するために、外気温サーミスタTH7が配設されている。この外気温サーミスタTH7は、直接外気温を測定してもよいし、筐体50内において外気温と相関を有する部分の温度を測定してもよい。
【0034】
なお、上述のサーミスタや温度センサは温度検知手段の一例であって、検知する温度や配置場所は本実施形態に限らない。また、これ以外の温度検知手段を備えていてもよい。
【0035】
さらに、燃料電池装置100には、各種機器の動作を制御する制御装置30が設けられているほか、燃料電池モジュール1にて発電された直流電力を交流電力に変換し、変換された電気の外部負荷への供給量を調整するための供給電力調整部(パワーコンディショナ)40を備えている。
【0036】
制御装置30は、燃料電池装置100を構成する補機や各種センサに接続されており、各種センサが検知する値や図示しないリモコンからの指示に基づいて燃料電池装置100の動作を制御する。
【0037】
上述のように構成される燃料電池装置100において、制御装置30は運転開始の指示を受けた場合、蓄熱タンク3に水が貯められているかを水位センサ7の検知結果から判定し、蓄熱タンク3に水がないと判定した場合には水張りを行う。運転開始の指示は、例えばユーザ宅に設けられたリモコンや、メンテナンス作業者が操作する操作基板から行うことができる。
【0038】
ところで、冬季は外気温が氷点下を下回ることもある。外気温が極端に低い場合に水張りを実行してしまうと、燃料電池装置100内部の配管で凍結が発生することが考えられる。配管で水が凍結すると、水張りを完了することができず、エラーを発報させてしまったり、最悪の場合には配管を破損させてしまうおそれもある。そのため、制御装置30は水張りを行う前に、水張りが実行可能かどうかを判断する水張り判定を行う。
【0039】
水張判り判定では、外気温サーミスタTH7が検知する温度に基づき、凍結の可能性があるかを判断する。具体的には、判定の閾値となる複数の温度帯を設定し、外気温サーミスタTH7が検知した温度が属する温度帯によって、水張りを許可するかを決定する。本実施形態では、温度が高い順に、第一温度帯、第二温度帯、第三温度帯の3つの温度帯を設定している。第一温度帯は、確実に凍結しない温度帯である。第三温度帯は、確実に凍結する、または凍結する可能性が極めて高い温度帯である。また、第一温度帯と第三温度帯の間に設けた第二温度帯では、凍結するか否かは外気温サーミスタTH7の検知結果からだけでは判断できない温度帯である。
【0040】
よって、制御装置30は、外気温サーミスタTH7が検知した温度が、第一温度帯であった場合は水張りを許可し、第三温度帯であった場合には水張りを許可しない。そして、その中間の第二温度帯であった場合には、熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2を駆動させる。つまり、温度がそれほど高くなく、確実に凍結しないとは言い難い場合でも、水の流路に配置されたポンプ(本実施形態においては、熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2)が回転すれば凍結はしないと判断することができる。そこで、ポンプの回転が検知された場合には水張りを許可する。反対に、ポンプの回転が検知されなかった場合は、凍結していると判断して水張りを許可しない。
【0041】
このように、外気温に加えてポンプの駆動を判定条件に組み入れることで、第一温度帯だけでなく、第二温度帯であってもポンプが回転するのであれば凍結はしないと判断して水張りを行うことができる。もし、温度だけで水張りの可否を判断しようとすると、第一温度帯の場合には水張りを実行することができるが、第二温度帯の場合には凍結するかどうかは確実には分からないので、安全を考慮すると水張りを実行することができなくなってしまう。本実施形態によれば、第二温度帯ではポンプが回転すれば水張りを実行することができるため、結果として発電運転の開始条件が緩和されて利便性に優れた燃料電池装置となる。
【0042】
制御装置30は、水張りを許可すると給水弁25aを開き、補給流路25を通って蓄熱タンク3に水が供給される。
【0043】
また、水張りが許可されなかった場合には、リモコン等に水張りが実行できないことを表示してもよい。さらには、このまま水張りを中止するか、もしくは外気温が高くなるのを待って自動的に水張りをリトライするかを選択させるようにしてもよい。リトライが選択された場合には、水張り待機状態に移行して、再判定を行う。なお、水張りが実行できないことを表示せずに、自動的に再判定を行うようにしてもよい。
【0044】
図2は、水張り判定のフローチャートである。制御装置30は、発電開始の指示を受けると、水位センサ7が水有を検知しているかを判定する(ステップ1)。水位センサ7が水有の場合は、すでに蓄熱タンク3には水が張られており水張りをする必要はないため、判定フローを終了する。水位センサ7が水無しを検知している場合は、水張りが実行可能かどうかを判断する水張り判定を行う。
【0045】
まず、外気温サーミスタTH7の検知温度が第一温度帯(例えば7℃以上)であるかを判断する(ステップ2)。検知温度が7℃以上であれば、すぐさま水張りを許可して水張り工程へ移行する。一方、検知温度が7℃未満の場合には、次に第二温度帯(4℃以上)であるかを判断する(ステップ3)。
【0046】
検知温度が4℃以上で第二温度帯である場合は、次に熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2を駆動する(ステップ4)。ステップ4では、熱媒ポンプP1をduty40%で、与熱ポンプP2を5500rpmで駆動する。なお、ポンプを駆動する時間は、1s以下の短い時間でよい。
【0047】
次いで、制御装置30は、熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2の回転が検知されたかを判定する(ステップ5)。熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2の両方の回転が検知されると、水張りを許可して水張り工程へ移行するが、熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2のどちらか片方でも回転が検知されない場合は、水張りは許可されず、ステップ6へ進む。
【0048】
また、ステップ3で検知温度が4℃未満の場合には、外気温は第三温度帯であるため水張りは許可されず、ステップ6へ進む。
【0049】
ステップ6では、リモコンにポップアップを表示させて待機状態に移行する。ポップアップの内容としては、水張りが実施されていないこと、そして水張りをリトライするかを「はい」または「いいえ」で選択させることができる。例えば、「外気温が低いため水張りを待機します。外気温が高くなりましたら自動的に水張りを開始しますか?」などと表示する。
【0050】
ステップ7で「いいえ」が選択された場合は、フローを終了して発電待機状態に移行する。「はい」が選択された場合は、再判定に移行する。
【0051】
再判定では、再判定条件に基づいて水張りを実行するかを判定する。再判定条件は、例えば、気温と水の流れる流路の温度とに基づいて設定することができる。本実施形態では、外気温サーミスタTH7に加え、第1熱媒循環ラインHC1に設けられた熱媒低サーミスタTH3、供給流路26に設けられた入水サーミスタTH5の検知温度から水張りの再判定を行う。なお、熱媒低サーミスタTH3は、通常の発電運転時には第1熱媒循環ラインHC1を流れる水の温度を検知するが、再判定時には水が流れていないので、流路そのものの温度を検知する。
【0052】
再判定を行うということは、先の水張り判定で水張りが許可されなかった、つまり凍結している可能性が高い状態である。したがって、再判定条件は、外気温と水の流路の温度に基づいて行われ、確実に凍結していないことが検知されたときに水張りを許可する。例えば、外気温サーミスタTH7、熱媒低サーミスタTH3、入水サーミスタTH5の検知する温度を閾値と比較し、これらサーミスタすべての検知温度が閾値以上であった場合に温度条件が満たされたと判定する。温度条件の判定は所定時間ごとに行われる。
【0053】
温度条件が満たされた場合、さらに熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2を駆動させてポンプが回転するかを判定してもよい。ポンプが回転すればより確実に凍結していないと判断することができる。
【0054】
また、再判定を開始した際に制御装置30内部のタイマを起動させ、タイマのカウントが所定時間以上となったときには、異常状態であると判断して水張りを禁止し、異常状態である若しくは水張りを禁止したことを報知する。
【0055】
図3は、再判定のフローチャートである。前述の水張り判定で水張りが許可されず、ユーザーがリトライを指示した際に開始される。
【0056】
制御装置30は再判定が開始されると、まずタイマを作動させてカウントを開始する(ステップ11)。このタイマは再判定のフローが継続されている時間を計測する。次いで、タイマのカウントが所定時間を超えていないかを判定する(ステップ12)。本実施形態では、所定時間として72時間を設定しており、タイマのカウントが72時間以上である場合は、異常状態であると判定して異常報知し、フローが終了する。
【0057】
ステップ12でYES、つまりタイマのカウントが72時間に満たない場合は、再判定条件のうち温度条件を満たしているかを判定する(ステップ13)。温度条件は、外気温サーミスタTH7の検知温度が6℃より高く、熱媒低サーミスタTH3の検知温度が2℃より高く、入水サーミスタTH5の検知温度が2℃より高いことであり、これらの条件をすべて満たした場合に温度条件が満たされたと判断して次のステップ(ステップ14)に移行する。温度条件が満たされなかった場合には、ステップ12に戻り、判定を継続する。
【0058】
ステップ14では、熱媒ポンプP1をduty40%で、与熱ポンプP2を5500rpmで駆動し、次いで、熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2の回転が検知されたかを判定する(ステップ15)。熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2の両方の回転が検知されると、凍結のおそれはないと判断し、水張りを許可して水張り工程へ移行する。また、これと同時にタイマのカウントもクリアする。熱媒ポンプP1と与熱ポンプP2のどちらか片方でも回転が検知されない場合は、水張りは許可されない。
【0059】
ステップ15でポンプの回転が検知されなかった場合は、ステップ16で所定時間待機した後、ステップ12に戻り判定を継続する。待機する時間は例えば10分である。
【0060】
なお、再判定を実施している間は、再判定中であることをリモコンに表示してもよい。例えば、「水張り待機中です。外気温が高くなると、自動的に水張りを開始します」などと表示する。
【0061】
このように、本実施形態によれば、外気温が確実に凍結しない温度より低くても、ポンプが回転すれば凍結しないと判断して水張りを実行することができるため、結果として発電運転の開始条件が緩和されて利便性に優れた燃料電池装置となる。
【0062】
また、水張りが許可されなかった場合には再判定を行い、この再判定条件には、外気温と水の流路の温度に関する条件を含むことで、確実に凍結していないことが検知されたときに水張りを許可することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 燃料電池モジュール
3 蓄熱タンク(水タンク)
11 燃料電池
25 補給流路(給水流路)
26 供給流路(給水流路)
30 制御装置
HC1 第1熱媒循環ライン(循環経路)
HC2 第2熱媒循環ライン(循環経路)
P1 熱媒ポンプ(循環ポンプ)
P2 与熱ポンプ(循環ポンプ)
TH3 熱媒低サーミスタ(第二温度センサ)
TH5 入水サーミスタ(第三温度センサ)
TH7 外気温サーミスタ(第一温度センサ)
図1
図2
図3