(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032401
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240305BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B62D6/00
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136037
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 鷹人
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和之
(72)【発明者】
【氏名】米田 彩美
(72)【発明者】
【氏名】石黒 皓幹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋平
【テーマコード(参考)】
2B043
3D232
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043DA04
2B043DA05
2B043DA17
2B043DB18
2B043DC03
2B043EA02
2B043EA03
2B043EA32
2B043EB05
2B043EC14
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2B043ED12
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA22
3D232DA32
3D232DA87
3D232DC01
3D232DC02
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3D232DC08
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD01
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3D232DD17
3D232DE03
3D232EA04
3D232EB16
3D232GG11
(57)【要約】
【課題】本発明は、圃場の違いや作付けの違いに対応して適切な走行ラインに対する位置ずれ解消行う作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】
位置検出装置による自車位置検出手段と、圃場における目標とする進行方向600に向かう走行ラインを決定し、走行ライン上に自車位置を合致させながら自動走行する作業機において、
走行ラインと自車位置の位置ずれの距離603による位置偏差制御と、
走行ラインと車軸610のなす方向ずれの角度604による方向偏差制御の偏差制御において、位置偏差優先と方向偏差優先の制御モードを備え、選択できるようにした作業機とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出装置による自車位置検出手段と、圃場における目標とする進行方向(600)に向かう走行ラインを決定し、走行ライン上に自車位置を合致させながら自動走行する作業機において、
走行ラインと自車位置の位置ずれの距離(603)による位置偏差制御と、
走行ラインと車軸(610)のなす方向ずれの角度(604)による方向偏差制御の偏差制御において、位置偏差優先と方向偏差優先の制御モードを備え、
選択できるようにした作業機。
【請求項2】
ステアリングと作業車の車輪が、機械的にリンクしておらず、
ステアリングの切り角度を角度検出装置により読み取り、電気的なステアリング制御によって車輪の操舵を行うものであり、
前記走行ライン上を走行中に、ステアリングの回転を検出すると、ステアリングの切れ角度に応じた操舵制御、操舵設定を行い、
ステアリングの切れ角度が、第一の切れ角までは車輪の操舵制御を行い、さらに大きな切れ角である第二の切れ角まで回転させると、位置偏差優先の制御モードに入り、
ステアリングの切れ角度が、さらに大きな切れ角である第三の切れ角まで回転させると、方向偏差優先の制御モードに入る、請求項1の作業機。
【請求項3】
ステアリングが棒状の構成(9S-1)においては、ステアリングの倒し角度によって、第一の倒し角までは車輪の操舵制御を行い、さらに大きな倒し角である第二の倒し角まで倒すと、走行ライン上に合致させる制御において、位置偏差制御を優先する制御に入り、さらに大きな倒し角である第三の倒し角まで倒すと、方位偏差制御を優先する制御に入る操舵制御を行う請求項1の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業において、高精度で自動直進走行を可能とする作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転において検出精度を高め、検出位置のずれ対応を行う発明が記載されているが、その位置ずれ制御は目標とするラインに対して、距離のずれと、方向のずれの大きく2種のずれがあるが、距離のずれ解消である位置ずれ解消を優先して対応するものである。
【0003】
そのため圃場の違いや、作付けの違いによって制御の度合いを変更するも設定された範囲内でしか対応ができない制御であった。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術では、距離のずれである位置ずれ解消を優先する位置偏差制御の開始で行い、この度合いによって操舵角を決定するため、方向のずれの対応は制限されない。そのため大きく操舵を行うこともあり、未作業の範囲は最低限度に収めることは可能となるが、走行ラインに対して作業機の車体が大きく傾く場合もあり、圃場を傷める要因にもなった。
【0006】
本発明においては、圃場の違いや作付けの違いに対応して走行ラインに対する位置ずれ解消を適切に行う作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、次の技術手段により解決される。
【0008】
位置検出装置による自車位置検出手段と、圃場における目標とする進行方向600に向かう走行ラインを決定し、走行ライン上に自車位置を合致させながら自動走行する作業機において、走行ラインと自車位置の位置ずれの距離603による位置偏差制御と、走行ラインと車軸610のなす方向ずれの角度604による方向偏差制御の偏差制御において、位置偏差優先と方向偏差優先の制御モードを備え、選択できるようにした。
【0009】
第二の発明は、次の技術手段により解決される。
【0010】
ステアリングと作業車の車輪が、機械的にリンクしておらず、ステアリングの切り角度を角度検出装置により読み取り、電気的なステアリング制御によって車輪の操舵を行うものであり、前記走行ライン上を走行中に、ステアリングの回転を検出すると、ステアリングの切れ角度に応じた操舵制御、操舵設定を行い、ステアリングの切れ角度が、第一の切れ角までは車輪の操舵制御を行い、さらに大きな切れ角である第二の切れ角まで回転させると、位置偏差優先の制御モードに入り、ステアリングの切れ角度が、さらに大きな切れ角である第三の切れ角まで回転させると、方向偏差優先の制御モードに入る。
【0011】
第三の発明は、次の技術手段により解決される。
【0012】
ステアリングが棒状の構成9S-1においては、ステアリングの倒し角度によって、第一の倒し角までは車輪の操舵制御を行い、さらに大きな倒し角である第二の倒し角まで倒すと、走行ライン上に合致させる制御において、位置偏差制御を優先する制御に入り、さらに大きな倒し角である第三の倒し角まで倒すと、方位偏差制御を優先する制御に入る操舵制御を行う。
【発明の効果】
【0013】
第一の発明で、位置偏差の解消を優先するか、方向偏差の解消を優先するかをユーザーが選択できるようになる。
【0014】
第二の発明で、この制御の選択をステアリングの切り角の中に取り込むことで、ユーザーは操作が容易になる。また直線走行時は、ステアリングの揺れが発生しないため、ユーザーは振動による疲労感が無くなる。
【0015】
第三の発明で、ステアリングが棒状の構成においても、倒し角度の中で位置偏差優先と方向偏差優先の選択ができるためユーザーは操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態における、作業機の外装を外した斜視図
【
図2】本発明の実施形態における、作業機の外装を外した拡大斜視図
【
図3】本発明の実施形態における、作業機の電装系関連図
【
図5】本発明のステアリングの操作と制御内容の関連図
【
図6】本発明の二輪操舵時で、位置偏差制御優先時の作業機の移動図
【
図7】本発明の二輪操舵時で、方向偏差制御優先時の作業機の移動図
【
図8】本発明の四輪操舵時で、位置偏差制御優先時の作業機の移動図
【
図9】本発明のステアリングが棒状の構成の操作と制御内容の関連図
【
図14】本発明の位置偏差優先と方向偏差優先の差の模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明を説明する。
【0018】
図1~
図14に示す作業機は、本実施形態の作業機の一例を示すものである。
【0019】
本発明の動力の伝達の流れについて説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本機の前方部分のフード110の中には、機体の前方に左右方向で低電圧バッテリー120と、その後方に前後方向で高圧用のメインバッテリー130と、このメインバッテリー130の電力を利用して機体本体、作業機を作動させるための動力源となる電動モータ140をメインバッテリー130の横に前後方向で備えている。
【0021】
低電圧バッテリー120は、運転席ディスプレー330や作業機のコントローラ331の電源となっている。走行、作業の制御や外部通信、また各運転状態のデータの登録を行うコントローラであり補機バッテリーで、12V系等の低電圧バッテリーである。低圧バッテリー120は、HST150の余剰動力より回生モータ550によって回生電気として低圧バッテリー120に充電されるものである。また高圧用のメインバッテリー130は、MDU131によって電圧管理され、電動モータ140を制御している。
【0022】
電動モータ140は、モータの後端に外扇141を備えており、モータ軸と連動しており、モータが作動中は外扇141により発生する風でモータ、低電圧バッテリー120、メインバッテリー130が空冷される。熱を持った風はフード110の前方のグリルの網部111や、フード前方下方から外部に排出される。またフード110は電動モータ140、低電圧バッテリー120、メインバッテリー130を完全に覆うことで雨や洗車における防滴対応を行う構成であり、適度な防塵対応も施されている。
【0023】
電動モータ140は、
図2のごとく出力軸を車体の前後方向の後方側とし、その後方に備えるHST150に電動している。伝達方法は、ベルトにより各軸に備えられたプーリーを繋ぐことであっても良いし、電動モータ140とHST軸を直結するも良い。電動モータ140の軸と、HST150の入力と出力軸は、ベルト駆動の場合では軸心は並行方向であり、動力機構としては直列的で曲がる事無く動力を伝えるためロスが少なく、コンパクトな配置を形成できる。
【0024】
図13は、電動モータ140の出力軸を車体の後方にしてHST150に繋ぐ構成をとることで、エンジン650構成とも互換性が容易にとれやすくなっている。重量のあるメインバッテリー130と電動モータ140をフード110に配備し、エンジン650に近しい重量とすることで、電動モータ140仕様とエンジン仕様のバランス差が出ないように構成される。BMSとインバーター160をフード110から外し、座席170後方に配備することで、メンテナンス性と熱ごもりに対応することが可能となる。この構成においても、低圧バッテリー120は、HST150の余剰動力より回生モータ550によって回生電気として低圧バッテリー120に充電されるものである。
【0025】
なお
図3に示すように、BMS(バッテリー・メネージメント・システム)は、高圧用のメインバッテリー130の管理を行うものであり、制御部180の指令を受け制御に応じた電圧管理等を行っている。同位置に配備されるインバーターはMDUとも呼ばれ電動モータの回転数を制御している。本提案においては、BMSとインバーター160は一体化したもので整備が容易にできる座席後部に配置となっており、熱ごもり対応や塵埃対応も可能である。構成によってはBMSとインバータ(MDU)は、別々の位置に配備するも良い。
【0026】
この配備により、電動モータ140は固定回転数で連続回転するも、必要な動力に合わせて回転が変動できるインバーター制御でも良い。本発明実施例では、本機の制御部180の指令に対して、BMSとインバーター160を介して、高圧用のメインバッテリー130の管理をしながら、電動モータ140の回転数を制御するシステムである。こうしたシステムであるため、本機が走行を停止し、作業機も停止の状態でも、電動モータ140の回転はHST150の基準油圧を発生できる範囲で低下し対応する。
【0027】
ロボット作業機100の基本的な位置ずれ対応、自動操舵について説明する。
【0028】
GPSの受信装置310と、測位方式である測位ユニットは、測位衛星と既知の位置に設けられた基地局とに設けられた移動局で構成されている。これにより測位衛星から移動局に送信されてくる位置情報と基地局から移動局に送信されてくる補正用の位置情報から移動局の位置、すなわち作業機の位置を正確に得ることができる。
【0029】
基地局は、固定用通信機と測位衛星からの位置情報を受信するGPSの受信装置310と、移動局に補正用の位置情報を送信する固定用データ送信アンテナで構成されている。
【0030】
移動局は、移動用通信機と、測位衛星からの位置情報を受信する移動用GPSの受信装置と、基地局からの補正用の位置情報を受信する移動用データ送信アンテナで構成されている。作業機の制御部180は、CPU等からなる処理部と、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等からなる記憶部と、外部とのデータ通信用の通信部から形成されている。
【0031】
GPSの受信装置310は、単独測位方式、DGPS(相対測位)方式、RTK(干渉測位)方式等のうち、作業をする地域に適したものを用いるとよい。しかしながら、機体の傾斜や振動の影響によりGPSの受信装置310の地上高が変動すると、実際の機体位置と異なる座標位置が測定され、受信精度が低下すると共に、直進からずれた方向に機体が走行してしまう問題が生じる。これを防止すべく、GPSの受信装置310に加えて、慣性計測装置IMU320を設ける。慣性計測装置IMU320は、ロボット作業機100が傾斜姿勢になるときの地表からGPSの受信装置310までの高さと、傾斜していないときの地表からGPSの受信装置310までの高さの差に基づき、GPSの受信装置310が取得した位置座標を制御部180に修正させるものである。
【0032】
なお、地表からGPSの受信装置310までの高さは、ロボット作業機100の傾斜等の挙動を、慣性計測装置IMU320に内蔵される三軸の加速度センサと角速度センサで計測して割り出すものとする。これに加えて、自動直進システムによる機体の走行方向が正しいかどうかをより確実に制御部180に判定させるべく、方位センサ311を設ける。このときの位置座標の補正については、
図10のSS1からSS5に示すとおりである。これにより、機体の進路を計測される方位により定めることができるので、直進走行の精度がいっそう向上する。
【0033】
GPSの受信装置310が取得する位置情報は、慣性計測装置IMU320と方位センサ311が検出する情報に基づき、制御部180により補正される。そして、制御部180は、現在の位置情報と先に取得されている位置情報を比較し、位置情報の相違が許容範囲を超えていると、機体を直進走行位置に戻すべく、前輪左560と前輪右570を左右方向に操舵させる。
【0034】
前輪左560と前輪右570の操舵を自動化すべく、
図11に示すステアリング171を操舵アクチュエータ173で回動させる自動操舵装置172を設ける。自動操舵装置172は、
図12のSS6~SS9に示すとおり制御部180が算出した現在の位置情報のX座標と、先に取得されている基準となる位置情報のX座標の差異に基づき、操舵アクチュエータ173の作動量が変動されることで、機体を直進走行位置に向かわせるべく、ステアリング171を左右に切ると共に、直進走行位置に来ると操舵アクチュエータ173を停止させてステアリング171の自動操舵172を停止させるものである。
【0035】
操舵アクチュエータ173は、電動や油圧式のモータ、あるいはシリンダで構成する。上記構成により、算出された位置情報のX座標の差異に合わせてステアリング171が自動的に操舵され、機体を直進走行位置に自動的に合わせることができるので、作業装置による作業位置が左右方向にずれることが防止され、圃場内に作業が行われない箇所が発生しにくくなる。これにより、作業が行われなかった箇所に、後から人手で作業を行う必要が無くなり、作業者の労力が軽減される。
【0036】
GPSの受信装置と慣性計測装置より算出された自車位置、慣性座標について説明する。
【0037】
ロボット作業機100において、自車の座標位置として、東西をX軸とし南北をY軸として、GPSの受信装置310の座標を重ね合わせる制御を行う。またロボット作業機100の自動直進の開始点である圃場の一側と自動直進の終了点である圃場の他側の座標を取得させる。
【0038】
第1基準点A601を取得した状態で、第2基準点B602を取得し、この直線ラインが進行方向600となる。進行方向600に向かう走行ラインに対して、自車の前後の車軸610、いわゆる方向ラインが傾いている場合は、
図6の如く、方向変更を行う。
【0039】
圃場の一端と他端の所定位置、例えば、直進走行を終えて作業機が旋回を開始する位置と、旋回終了後に直進走行を開始する位置に第1基準点A601と第2基準点B602を移設設定し、直進走行する。
【0040】
上記のとおり、新規に第1基準点A601と第2基準点B602を取得していると、該第1基準点A601と第2基準点B602の各Y座標を結んだ基準線が、移設設定した自動直進の目安となる線となり、走行中の機体の位置座標のX座標が、自動直進の目安となる線のX座標と合致しているか否かを判定し、合致していなければ自動操舵装置172により合致する方向にステアリング171を自動操舵させることで、自動直進走行を実現することができる。制御部180は、GPSの受信装置310が取得する位置座標のY座標と基準線のY座標を比較し、操舵アクチュエータ173を作動させてステアリング171を左右方向に回転させ、ロボット作業機100を直進走行すべき位置に移動させる制御を開始する。この自動操舵は、ステアリング171が所定の時間内に走行車体を旋回させる角度まで操作されるか、自動直進設定部材207が第2の方向に操作されると終了する。前記ステアリング171の操舵角度は、ハンドルポテンショメータ172によって検知するものとする。第1基準点Aまたは第2基準点BのY座標と一致する場所に走行車体2が到達すると、自動直進制御が終了され、旋回制御に入る構成としてもよい。
【0041】
本実施の形態では、基準ラインの位置情報を作業工程ごとに取得し、そのたびに作業工程の次の工程における目標ラインの位置情報を決定する。これにより、基準ラインのズレを最小限に抑えることが出来て、次の作業工程における目標ラインもズレを少なく出来ると共に、自動旋回工程における条合わせも実施出来る。
【0042】
また次工程の目標ラインを設定する場合、残耕等の未処置領域が発生しないため、次工程において作業機の車幅分、目標値の位置をずらすのではなく、重なり部、所謂ラップ代を持つことが必要である。しかしラップ代を大きく持つと作業面積が圃場面積よりも拡大することになり、作業ロスということになる。そこで、自動運転時では、未処置領域を無くし、また作業効率も上げるため、ラップ代を最小限に設定する方法が取られる。
【0043】
具体的には作業機の車幅から10cm短い値で次工程のA-B点を設定し、走行ラインを決定するものや、旋回時の最小半径を基準にして安全率を乗じて値を決める方法も考えられる。
【0044】
ラップ代の制御で、未処置領域のおこらない走行ライン決定するが、時間の経過とともに基準ラインにズレが生じたり、雲等の影響で基準ラインのズレが生じる場合もあるので、上記の様に作業工程ごとに基準ラインを新たに取得することにより、基準ラインのズレを最小限に抑えることが出来、次の植付け作業工程における目標ラインもズレを少なく出来ると共に、ラップ代の制御を毎回行うことで、自動旋回工程における条合わせも実施出来る。
【0045】
四輪駆動四輪操舵走行について説明する。
【0046】
本作業機は、四輪駆動で四輪操舵を可能とするものである。前輪左560、前輪右570、後輪左580、後輪右590と配備され、560、570、580、590の各車輪は、同じHST150からの動力を受けて回転しているが、動力伝達経路において各軸への個別変速が行われ、各車輪にあるファイナルケース内の遊星ギヤーで回転数は個別に変更可能である。また各車輪のブレーキも電子制御にて、個別にかけることも可能である。
【0047】
また各車輪は、個別のリンクによって操舵を可能としている。本発明では各車軸に個別の電動式ギヤーモータが配備されており、制御部180にて回転を制御されている。各車軸にはポテンショメータが配備さてており個別で操舵角を検出している。制御部180による操舵角の指示に対して検出角度が異なる場合は、各電動式ギヤーモータを作動させる。
【0048】
操作を利用することで、二輪駆動二駆操舵走行や四輪駆動二輪操舵走行も可能であり、万能な走行を行える作業機である。走行においては二輪駆動二駆操舵走行や四輪駆動二輪操舵走行の専用車両の内容も含める内容で示している。
【0049】
図6~
図8は、第一の発明の実施例を示すものである。
【0050】
走行の仕方について説明する。
図6に記載したように第1基準点A601と第2基準点B602を取得し、進行方向600に向かう走行ラインを決定する。またGPSの受信装置と慣性計測装置より算出された自車位置は慣性座標である。
【0051】
自動運転、あるいは直進アシスト運転においては、慣性座標で検出した位置と、第1基準点A601と第2基準点B602を取得による走行ラインによる位置とGPSの受信装置と慣性計測装置より算出された自車位置の位置ずれを合わせる制御も行いながら、進行方向600と前後の車軸610を合わせながら、進行方向600と位置を合わせるものである。
【0052】
図6は、進行方向600に対して、方位は同じであるが、自車中心位置611が進行方向600の走行ライン上におらず位置ずれしている場合である。従来技術は、位置ずれの距離603を走行しながら合わせていくものである。したがって方位が合致しているにもかかわらず、方位変更を許可して位置ずれ合わせのために所定の範囲内で方位を変更し、走行をしながら徐々に位置ずれを合わせるものである。こうした位置合わせを行った後に、方位を合わせていくものである。この位置ずれを優先的に行う制御を、位置偏差優先とする。
【0053】
位置偏差優先は、
図6に示すように進行方向600は合致、あるいは近しい範囲内にあっても進行方向600の走行ラインに対する位置ずれが大きいため、進行方向600の合致を外して操舵を行う制御である。そのため素早く位置ずれを解消し、未耕運面積を少なくしたりすることは可能であるが、大きく操舵を行うため圃場を傷めることがある。この場合では、方向ずれ角度604を発生させてしまうことになる。
【0054】
ユーザーの使用条件変更や圃場による条件で、一律に位置偏差優先をすることが好ましくない場合がある。こういった場合の対応として、従来技術では操舵角の最大角度を決定し操舵規制を行う等の対応がある。あるいは、走行距離や走行時間を基準に位置偏差の解消率を設定し、その範囲内で操舵を行う制御もある。しかし、いずれの制御においてもあらかじめ基準値が設定され、その範囲内で位置偏差の解消の強弱を設定するものであり、その度合いによって方向ずれ角度604が決定されるものであり、この程度の範囲で真っ直ぐに走行して欲しいという方向偏差を優先したい制御を代用するには至らなかった。
【0055】
本発明では、この問題を解決すべく、方向偏差優先を希望する場合も考慮し、位置偏差優先と方向偏差優先をユーザーが選択できる機構とした。また、その切換機構を操作パネル内の切換スイッチとかで行うのではなく、ステアリングの切り角の度合いの中に入れることで、運転中のユーザーが安全に楽に、操作ミスすることなく行うことを可能とした。
【0056】
方向偏差優先について、
図7で説明する。進行方向600は合致しているが、走行ラインに対する位置ずれは大きい。
図6の位置偏差優先では、操舵角を大きく切り、作業機の車軸610を走行ラインに対して大きく傾けたが、
図7の方向偏差優先では、操舵角は小さく、作業機の車軸610と走行ラインのなす角、方向ずれ角度604は小さく、設定された範囲でほぼ真っすぐ走行することがわかる。この方向偏差優先では作業機の車軸610を走行ラインのなす角、方向ずれ角度604を設定値により固定して走行する。そのため初動時の操舵角より徐々に操舵角を小さくする制御となり、圃場においては、初期の操舵のすべりをユーザーが了解すれば、それ以上に操舵角が大きくなることはないため、圃場を傷めるという心配もなく、安心して自動運転を行うことができる。
【0057】
なお位置ずれ偏差も検出しており、この値を含めてPID制御を利用して操舵制御を行う。
【0058】
本
図7においては、中央の図は、位置ずれ偏差が所定内に近づいた状態を示している。操舵角を徐々に小さくする制御のため、操舵角は徐々に小さくし、最終的に0になり車軸610と走行ラインが位置、方向とも合致する。しかし、走行速度が速い場合や圃場が柔らかく滑りやすい場合は、車軸610を走行ラインに合致させる場合、逆の操舵を行い、車体方向を合致させる場合があり、PID制御を利用して車速感知しながら操舵制御を行う。
【0059】
図6と7は、二輪駆動二駆操舵走行を基準とした内容であったが、
図8は四輪駆動四輪操舵走行を示している。この場合は四輪操舵を利用して平行移動走行が可能なため、方向偏差優先にした場合でも、方向は合致した状態である。位置偏差を基準に初期の操舵角を決定し、徐々に小さくさせることで位置偏差を解消する制御となる。
【0060】
このように四輪操舵機能を持つ作業機では、車軸610が走行ラインとなす角が一致している場合や、稼働初期に検出されても早期に解消することができるため、位置偏差と操舵角の制御が中心となる制御となり、二駆操舵走行とは異なるPID制御となる。
【0061】
位置偏差優先と方向偏差優先の制御内容をしめしたが、この両制御を選択する内容について記載しながら、両制御のコントローラ内の制御について説明する。
【0062】
図4は、第一発明の制御フロー図である。作業機は、衛星情報による位置情報S4-1と、あらかじめ設定された走行ライン601、602のABラインの情報S4-2と、作業機によっては撮像手段を利用しクラウド情報と撮影された画像から位置情報を算出する手段S4-3も有している。これらの情報をもって、直進アシストを開始する。
【0063】
直進アシスト作動S4-4は、自動走行運転である。基準設定では、直進アシスト制御は、位置偏差演算S4-7を行う。つまり位置ずれを解消するのを優先する制御となっている。この基準では操舵角の範囲の制限がなされている。その操舵角の範囲内において、位置ずれ量と車速に合わせて、PID制御による操舵角を決定する。
【0064】
PID制御では、Pは比例、Iは積分、Dは微分の演算を行うものであり、Iの積分では、1/積分時間を、Dの微分では微分時間を演算式に利用し、Pの比例値を補正することで比例ゲインを算出するものである。その後、算出する比例ゲインを基準にテーブルデータや基準換算を行うことで、操舵角の強弱の度合いを演算する。この演算により目標方向演算S4-8、方向偏差演算S4-9が算出され、基準範囲内であれば、操舵角演算S4-10の算出し、この値において自動操舵S4-11を行うものである。
【0065】
ステアリング制御はS4-12のように目標値に到達されるまで継続される。ただしS4-13の如くユーザーがステアリングを操作し、ステアリング手動信号が検出されると基準の自動運転は解除される。所定時間内にステアリングの切り角をどの位置まで作動させたかで制御内容を変更できるようにしている。
【0066】
これは一例としての切換手段であるが、操作パネル内に位置偏差優先と方向偏差優先の切換のスイッチを設けて、スイッチ切換によってS4-16のように位置偏差優先S4-17か、方向偏差優先S4-19かを切換できるようにすることも可能である。いずれの切換手段にしても、位置偏差優先と方向偏差優先を切換できることが可能であることが本発明の課題である。
【0067】
位置偏差優先と方向偏差優先は、位置と方向のどちらも演算して操舵角計算S4-18、S4-20するのであって片側の項目を演算しないわけではない。PID制御の比例ゲイン値をどちらの演算式を優先するかを変更するものである。
【0068】
なお、位置偏差優先、方向偏差優先を選択すると、操舵角の変更の度合いを選択する設定に入り、度合い選択することが可能である。これらは本発明ではステアリングの切り角の大きさで選択し、所定時間、この角度を保持すると設定として登録されるものである。一旦決定すると、再設定するか、解除スイッチを押すか、エンジン停止しない限り継続するものである。
【0069】
最終的には、GPS等を利用して位置情報を確認し、目標位置に達したかS5-21を確認する。こうしてステアリングを利用して、位置偏差優先、方向偏差優先の選択をし、その度合いを設定した場合は、S4-21で制御に問題がなかったことを確認すると、S4-22のように自動運転変更設定登録がされる。
【0070】
解除については、前述のように、直進アシスト運転中に、ステアリングからの信号を受けるS4-13の検出があった場合に対応する。あるいは、解除スイッチを手動で押す場合や、エンジン停止でリセットされ、基準であるS4-7の制御に戻る。
【0071】
図14にて、位置優先と方向優先の制御の差について追加説明する。S14-1~S14-6までが位置優先制御の流れである。またS14-7~S14-12までが方向優先制御の流れである。
【0072】
位置優先制御を設定した場合は、位置偏差計算S14-2を行う。目標とする走行ラインとGPSから算出される自車位置との距離的な差の値である。位置偏差制御は、位置ずれの解消速度S14-3を設定できるものであり、第二の発明に記載しているが、ステアリングの切り角度にて設定できるものである。設定の度合いは、数段階に設定可能であるが、ここでは3段階で示している。ゆっくり、ふつう、はやくの3段階である。この設定は、位置ずれである距離の差を単位時間にどれだけ縮めることができるかの度合いである。例えば、ゆっくりでは0.2m/s、ふつうでは0.4m/s、はやくでは0.6m/sの速さで位置ずれ対応するものである。S14-4では、車速と位置ずれ解消速度より、目標とする自車の方向、目標方向演算を行う。ただしS14-5のように方向偏差を算出した場合、設定限度の方向変更に入らないかの確認を行う。こうした制御によってS14-5の操舵角演算を行い、位置偏差優先のPID制御にて対応する。
【0073】
PID制御はS14-13に記載する模式図であり、P:比例S14-14・I:積分S14-15・D:微分S14-16で前述の内容にて制御される。このPID制御は、位置偏差優先も方向偏差優先時も同様であるが、Kp:比例ゲインS14-17の係数が変わっており、操舵角の演算値は位置変更優先と方向変更優先では異なる値となる。
【0074】
このように操舵角を算出し、操舵制御S14-19を行うが、GPS位置情報S14-18から自車位置を算出し、制御内容が目標どおりになっていない場合は、S14-20の自動操舵制御補正がかかり、位置ずれと方向ずれの補正を行うものである。
【0075】
方向優先制御を設定した場合は、方向偏差計算S14-18を行う。目標とする走行ラインと車軸610とのなす角を優先的に制御するものである。方向偏差制御は、方向ずれ角の限度範囲S14-9を設定できるものであり、第二の発明に記載しているが、ステアリングの切り角度にて設定できるものである。設定の度合いは、数段階に設定可能であるが、ここでは3段階で示している。方向は大きく傾けない・ふつうの範囲内で傾け許容・方向は最大設定値まで変更可能の3段階である。この設定は、目標とする走行ラインと車軸610とのなす角をどれだけ大きくしないかの度合いである。例えば、方向は大きく傾けないでは、5度以内の角度で徐々に位置合わせする。ふつうの範囲内で傾け許容では、10度以内の角度とする。方向は最大設定値まで変更の場合は、40度以内の角度とする。S14-10では目標位置演算を行う。ただしS14-11のように位置偏差を算出した場合、設定限度の位置変更量に入らないかの確認を行う。この場合は位置ずれが解消できない場合の限度値を確認する。こうした制御によってS14-12の操舵角演算を行い、方向偏差優先のPID制御にて対応する。
【0076】
PID制御は、前述の内容S14-13~S14-16の内容である。前述のように、Kp:比例ゲインS14-17の係数が変わっており、操舵角の演算値は位置変更優先と方向変更優先では異なる値となる。S14-18~S14-20の内容は前述と同様である。
【0077】
第二の発明のステアリングの操作について説明する。
図4の制御フローの選択で、S4-13、S4-14、S4-15、S4-16、S4-19はステアリングの切り角と連動するものである。
【0078】
図5は、ステアリングの切り角を示す図である。S5-1は基準位置であり、真っすぐ走行する状態である。本発明ではステアリングは、ロータリエンコーダによって切れ角を電気的に検出するものであるため、メカ的な連動は無いため、直進アシスト等の自動運転においてはステアリングが回転や微振動を起こすことは無く、固定状態にある。そのためユーザーは、直進走行中にしっかりステアリングを握っていても、ステアリングの振動を受けることがなく、安全で疲労も無く対応できる。
【0079】
S5-2、S5-10の範囲までの第一の切れ角までは、手動で操舵する範囲である。S5-1から左右、それぞれの範囲でステアリングを回すと、手動で操舵ができるようになり、切り角の大きいほど操舵角も大きくなる。なおステアリングの最初の切り角の応答性はやや鈍くしており、誤作動であった場合の対応をしている。瞬時に基準位置まで戻れば、手動制御、位置偏差優先、方向偏差優先の各制御に入らない制御となっている。逆に、ステアリングを回し、所定時間経過しないと手動制御、位置偏差優先、方向偏差優先の各制御に入ることはなく、レスポンスとしては鈍感な制御である。
【0080】
第二の切れ角であるS5-3、S5-11は位置偏差制御を優先する設定に入るステアリングの位置である。この角度まで切り、所定時間経過すると制御を受け付ける。なお位置偏差制御には度合いがありS5-4とS5-12は操舵角の変更は弱めであり、S5-6、S5-13までステアリングを切ると強めに設定できる。いずれもステアリングを希望する角度で所定時間固定すると、その設定内容が登録されるものであり、再設定するか、解除スイッチを押すか、エンジン停止しない限り継続するものである。
【0081】
第三の切れ角であるS5-7、S5-14は方向偏差制御を優先する設定に入るステアリングの位置である。この角度まで切り、所定時間経過すると制御を受け付ける。なお方向偏差制御には度合いがありS5-8とS5-14は操舵角の変更は弱めであり、S5-9、S5-16までステアリングを切ると強めに設定できる。いずれもステアリングを希望する角度で所定時間固定すると、その設定内容が登録されるものであり、再設定するか、解除スイッチを押すか、エンジン停止しない限り継続するものである。
【0082】
第三の発明について説明する。
図9は、ステアリングが棒状の構成のジョイスティックレバーのような場合の構成である。コンバイン等のクローラ構成の作業機もパワステレバーも同様な構成で応用することが可能である。このレバーは、左右に倒す倒し度合い、倒し角度を検出することで対応する。
【0083】
コンバイン等の作業機のように、本発明の作業機は、走行の前後、速度調整は、専用のレバーで対応する。また作業機の刈取部等の上下作動は、このレバーをS9-1の中心にある位置で上下が可能となる。
【0084】
ステアリングが棒状の構成の場合の実施例について説明する。第一の倒し角のS9-2、S9-5の範囲で一旦、抵抗のあるストッパに接触する。この左右の倒し角度までは、手動操舵を行う操作に利用する。操舵はクローラの作動時間により操舵度合いを変更できるものであり、S9-1からS9-2、S9-5に寄せた時間分、操舵するシステムである。
【0085】
第二の倒し角であるS9-3、S9-6まで行き、所定時間経過すると、位置偏差優先制御に入る。この制御に入るとレバーの前後制御は、位置偏差の度合い制御の設定モード専用となる。前倒しで度合いが高く、後ろ倒しで低くなる制御となる。いずれも前後の倒し角度で度合いが異なり、所定時間固定することで設定登録される。
【0086】
第三の倒し角であるS9-4、S9-7まで行き、所定時間経過すると、方向偏差優先制御に入る。この制御に入るとレバーの前後制御は、方向偏差の度合い制御の設定モード専用となる。前倒しで度合いが高く、後ろ倒しで低くなる制御となる。いずれも前後の倒し角度で度合いが異なり、所定時間固定することで設定登録される。
【0087】
本第一発明は、第二、第三の操作によって利便性が高まるものであり、別の操作手段による対応も可能であるが、操作するステアリングやレバーの中に取り込むことで、安全性と操作性の向上を行えるものである。
【符号の説明】
【0088】
100 ロボット作業機
120 低圧バッテリー
130 高圧のメインバッテリー
140 電動モータ
150 HST
160 BMSとインバーター
310 GPSの受信装置
320 慣性計測装置 IMU
600 進行方向
601 第1基準点A
602 第2基準点B
610 前後の車軸
S4-14 操舵制御の選択
S4-17 位置偏差優先制御
S4-19 方向偏差優先制御
S4-15 手動運転制御
S14-3 位置ずれの解消速度(ステアリングの設定値)
S14-9 方向ずれの限度範囲(ステアリングの設定値)
S14-13 PID制御