(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032405
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】投影制御装置、投影装置、投影システム、投影制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20240305BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240305BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H04N5/74 Z
G03B21/14 D
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136043
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 芳彦
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2K203FA79
2K203FB03
2K203GC16
2K203KA37
2K203KA44
2K203KA83
2K203KA87
2K203MA23
5C058BA11
5C058EA02
(57)【要約】
【課題】従来よりもフォーカス調整をより容易に行うことを可能にする。
【解決手段】投影制御装置200は、互いに異なる複数の被写界深度のそれぞれに対応するフォーカス調整値を記憶している記憶部120と、記憶部120から、複数のフォーカス調整値のいずれかの値を取得し、フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する制御部110と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の被写界深度のそれぞれに対応するフォーカス調整値を記憶している記憶部と、
前記記憶部から、複数の前記フォーカス調整値のいずれかの値を取得し、前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する制御部と、を備える、
投影制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は、
投影レンズでフォーカスを合わせた状態で投影可能な投影距離の所定の範囲が全て含まれるように前記複数の被写界深度を記憶している、
請求項1に記載の投影制御装置。
【請求項3】
前記所定の範囲は、前記投影レンズがフォーカスを合わせた状態で投影可能な投影距離の全範囲である、
請求項2に記載の投影制御装置。
【請求項4】
複数の前記フォーカス調整値のうち大きさが隣り合う2つのフォーカス調整値において、一方のフォーカス調整値における被写界深度と他方のフォーカス調整値における被写界深度との間に所定の重複範囲が存在する、
請求項3に記載の投影制御装置。
【請求項5】
複数の前記フォーカス調整値のうちのいずれか1つを直接指定する絶対指定部と、大きさが隣り合う2つの前記フォーカス調整値のうちのいずれか1つを指定する相対指定部と、を有する操作入力部を備え、
前記制御部は、前記操作入力部で指定された前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の投影制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の投影制御装置と、
投影部と、を備え、
前記投影制御装置は前記投影部のフォーカスを調整する、
投影装置。
【請求項7】
請求項6に記載の投影装置と、
投影面までの距離を測定する測距装置と、を備え、
前記制御部は前記測距装置が測定した距離に基づいて前記フォーカス調整値を取得し、
前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する、
投影システム。
【請求項8】
投影面を有する物体を運搬する運搬装置をさらに備え、
前記測距装置は前記運搬装置で運搬されている前記物体の前記投影面までの距離を測定し、
前記制御部は、
前記測距装置が測定した距離に基づいて前記投影装置から前記投影面までの距離を算出し、
前記算出した距離に基づいて前記フォーカス調整値を取得し、
前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する、
請求項7に記載の投影システム。
【請求項9】
制御部と記憶部とを備える投影制御装置の前記制御部が、
互いに異なる複数の被写界深度のそれぞれに対応するフォーカス調整値を記憶している前記記憶部から、複数の前記フォーカス調整値のいずれかの値を取得し、
前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する、
投影制御方法。
【請求項10】
制御部と記憶部とを備える投影制御装置の前記制御部に、
互いに異なる複数の被写界深度のそれぞれに対応するフォーカス調整値を記憶している前記記憶部から、複数の前記フォーカス調整値のいずれかの値を取得し、
前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影制御装置、投影装置、投影システム、投影制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像をスクリーン等の投影面に投影して表示することができる投影装置(プロジェクタ)が知られている。このような投影装置を使用する際には、投影面に焦点が合うようにフォーカスを調整する必要がある。投影装置のフォーカス調整に関し、例えば特許文献1には、投影面の形状に合わせてフォーカス調整を自動的に行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、撮像部によって投影面の複数箇所の測距を行って投影面の形状を判断し、投影面の形状に合わせて自動的にフォーカス調整を行うことができる。しかし、フォーカス調整は、このような従来の技術により自動で行う場合も、ユーザが手動で行う場合も、焦点距離を連続的(アナログ的)に微調整する必要があり、いずれにしてもフォーカス調整には手間がかかった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、従来よりもフォーカス調整をより容易に行うことを可能にする投影制御装置、投影装置、投影システム、投影制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る投影制御装置の一態様は、
互いに異なる複数の被写界深度のそれぞれに対応するフォーカス調整値を記憶している記憶部と、
前記記憶部から、複数の前記フォーカス調整値のいずれかの値を取得し、前記フォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来よりもフォーカス調整をより容易に行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る投影装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態に係るリモコンが備えるボタンの一例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る投影装置のプリセットポジション、被写界深度、投影距離等の関係の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る投影装置が記憶するプリセットポジションとリング移動量の関係の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係るフォーカス調整処理のフローチャートの一例である。
【
図6】変形例に係る投影システムの一例を説明する図である。
【
図7】変形例に係るリモコン信号送信処理のフローチャートの一例である。
【
図8】変形例に係るリモコン信号受信処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る投影装置等について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。
【0010】
(実施の形態)
実施の形態に係る投影装置は、入力された映像を投影面に投影して表示するプロジェクタである。そして、この投影装置では投影面までの距離を測定する手段は用意されておらず、投影面に映像の焦点を合わせるためのフォーカス調整はユーザにより手動で行われる。
【0011】
投影装置100は、
図1に示すように、投影制御装置200、操作入力部130、映像入力部140、投影部150を備える。そして、投影制御装置200は、制御部110、記憶部120を備える。
【0012】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。制御部110は、記憶部120に記憶されているプログラムにより、投影装置100の各種機能を実現する処理や後述するフォーカス調整処理等を実行する。また制御部110は、マルチスレッドに対応し、複数の処理を並行して実行することができる。
【0013】
記憶部120は、制御部110が実行するプログラムや、必要なデータを記憶する。記憶部120は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を含み得るが、これらに限られるものではない。なお、記憶部120は、制御部110の内部に設けられていてもよい。
【0014】
操作入力部130は、押しボタンスイッチ、タッチパネル、リモコン等のユーザインタフェースを備え、ユーザからの操作入力を受け付ける。また、操作入力部130は、リモコンが送信するリモコン信号を受信するリモコン信号受信部も備える。
【0015】
リモコン1300は、例えば
図2に示すように、各種ボタンを備え、押されたボタンに対応するリモコン信号を操作入力部130のリモコン信号受信部に送信する。リモコン1300が備えるボタンとしては、ズームを調整するズーム調整ボタンやフォーカスを調整するボタンがあるが、フォーカスを調整するボタンとして、フォーカス微調整ボタン、フォーカスプリセット番号増減ボタン、フォーカスプリセットボタンの3種類がある。
【0016】
リモコン1300は、ズーム調整ボタンとしてズーム+ボタン1301とズーム-ボタン1302を備える。また、フォーカス微調整ボタンとして、フォーカス+ボタン1303とフォーカス-ボタン1304を備える。また、フォーカスプリセット番号増減ボタンとして、フォーカス++ボタン1305とフォーカス--ボタン1306を備える。また、フォーカスプリセットボタンとして、フォーカス1ボタン1311、フォーカス2ボタン1312、フォーカス3ボタン1313、フォーカス4ボタン1314、フォーカス5ボタン1315、フォーカス6ボタン1316、フォーカス7ボタン1317、フォーカス8ボタン1318を備える。
【0017】
また投影装置100は、操作入力部130として、本体にもリモコン1300と同様にズーム調整ボタンやフォーカス調整ボタンを備えていてもよい。
【0018】
フォーカス調整ボタンのうち、フォーカスプリセット番号増減ボタンはフォーカスの設定値を相対的に指定するので相対指定部とも呼ばれ、フォーカスプリセットボタンはフォーカスの設定値を絶対的に指定するので絶対指定部とも呼ばれる。
【0019】
映像入力部140は、投影部150で投影する映像を入力するためのインタフェースであり、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、アナログRCA(Radio Corporation of America)等の映像入力用の端子を備える。
【0020】
投影部150は、
図1に示すように、光源151、投影デバイス152、レンズユニット153を備える。
【0021】
光源151は、水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)、レーザー等による任意の光源を用いることができる。また、投影デバイス152は、液晶、DMD(Digital Mirror Device)等、映像を出力可能な任意のデバイスを用いることができる。そして、光源151から発せられた光が、投影デバイス152及びレンズユニット153を通って投影面で焦点を結び、映像が投影される。
【0022】
レンズユニット153は、
図1に示すように、投影レンズ154と、フォーカス調整部155と、ズーム調整部156を備える。フォーカス調整部155は、投影レンズ154の焦点距離を調整するためのフォーカスリングと、フォーカスリングを回転させるフォーカスモータ及びギアを備える。また、フォーカス調整部155は、フォーカスリングが起点位置に戻っているか否かを判定するための起点センサと、フォーカスリングの現在の回転量を取得するためのエンコーダも備える。ズーム調整部156は、投影時のズームサイズを調整するためのズームリングと、ズームリングを回転させるズームモータ及びギアを備える。
【0023】
フォーカスリングやズームリングは、ユーザが直接手で回転させることもできるが、制御部110が、フォーカスモータやズームモータを駆動制御することにより、電動で回転させることもできる。
【0024】
フォーカスリングを起点から終点まで回転させると、投影レンズ154の焦点距離が最遠端投影のための焦点距離から最近端投影のための焦点距離まで変化する。これにともない、フォーカスの合う投影距離は
図3に示すように最遠端から最近端まで変化する。ここでは、フォーカスリングの起点からの回転量をリング移動量と呼ぶことにする。フォーカスリングの各リング移動量に対応する(フォーカスが合った)投影距離は1つに定まるが、実際にはユーザが各リング移動量に対して「投影映像のフォーカスが合っている(投影映像がぼけていない)」とみなせる投影距離にはある程度の幅(範囲)があり、フォーカスが合っているとみなせる投影距離の範囲を被写界深度という。
【0025】
被写界深度は、許容錯乱円の大きさ(許容錯乱円径)を用いて定義することができる。許容錯乱円とは、投影面に投影された映像中の点(ピクセル)の大きさにおいて、ぼけとして認識しない最小の大きさの円のことである。許容錯乱円径を用いて定義すると、被写界深度とは、投影距離を変化させたときに、完全にフォーカスが合っている距離の前後で許容錯乱円径以下の大きさのぼけしか生じない投影距離の範囲をいう。許容錯乱円の大きさをどの程度にするかは投影装置の投影距離やピクセルサイズ等に依存するが、通常は2×2ピクセル程度のサイズ(許容錯乱円径が2ピクセル以下)が許容され、最も厳しく設定する場合でも1×1ピクセルのサイズ(許容錯乱円径が1ピクセル以下)で十分と考えられる。
【0026】
被写界深度を考慮すると、
図3に示すように、最遠端から最近端までの投影距離の全ての範囲を含むように互いに異なる複数の被写界深度を設定できる。そして、各被写界深度に対応するフォーカスリングの回転位置(プリセットポジション)を設定できる。例えば
図3に示す例では、フォーカスリングをPP1(プリセットポジション1)からPP8(プリセットポジション8)までの8つの位置のいずれかに移動させるだけで、最遠端から最近端までの全ての投影距離で、フォーカスが合っているとみなせる映像を投影できることがわかる。したがって、ユーザは、複数のプリセットポジション(
図3では8箇所)のいずれかを選択すれば(例えば順番に選択していけば)フォーカスが合うので、フォーカス調整をデジタル的に容易に行うことができる。
【0027】
従来のフォーカス調整では、フォーカスリングをアナログ的に(ほぼ無限とも言える段階数で)微調整する必要があったため、フォーカスを合わせるのに手間がかかった。しかし、プリセットポジションの選択によるフォーカス調整なら、投影距離の全ての範囲において、有限(
図3の例では8個)の段階数(プリセットポジションの選択)でデジタル的にフォーカス調整を行うことができる。つまり、本実施の形態では、従来に比較して、フォーカスを合わせる際の調整の段階数を格段に少なくすることができる。
【0028】
なお、
図3の例では、例えばPP1に対応する被写界深度であるPA1(プリセットエリア1)と、PP2に対応する被写界深度であるPA2(プリセットエリア2)とで、重複範囲が存在するが、この重複範囲は存在していなくてもよい。ただし、隣り合う被写界深度間に隙間が生じてはならない。
【0029】
例えば、
図3での被写界深度は、許容錯乱円のサイズを2ピクセル(2×2ピクセル)とした場合だとする。そして、投影距離がPP1とPP2の間のP12の場合、フォーカスリングをPP1に移動させた状態での許容錯乱円のサイズは2×2ピクセルになるが、フォーカスリングをPP2に移動させた状態での許容錯乱円のサイズは2×2ピクセルよりも小さいサイズ(例えば1.5×1.5ピクセル)になる。このように、隣り合う被写界深度に重複範囲を存在させることで、許容錯乱円の最大サイズを基準値(所定のピクセル数)以下にすることが可能である。
【0030】
投影装置100は、用意されたプリセットポジションのいずれかにフォーカスリングを回転させることにより、投影レンズ154でフォーカスを合わせた状態で投影可能な全ての投影距離において、フォーカスが合っているとみなせる映像を投影することができる。すなわち、最遠端から最近端までの間に複数の被写界深度が存在するので、各被写界深度に対応してプリセットポジションを設け、プリセットポジションのいずれかにフォーカスリングを回転させることにより、投影可能な全ての投影距離において、フォーカスが合っているとみなせる映像を投影することができる。
図3に示す例ではプリセットポジションは8個だが、投影距離の範囲と被写界深度の幅により、いくつのプリセットポジションを用意すれば良いかは変わる。
【0031】
例えば、投影距離の全範囲をカバーするためのフォーカスリング回転量をA、1つの被写界深度をカバーするためのフォーカスリング回転量をB、隣り合う被写界深度が重なり合うフォーカスリング回転量をCとすると、投影距離の全範囲を網羅するために用意しなければならないプリセットポジションの個数PNは、次の式(1)で表すことができる。
PN=CEIL((A-C)÷(B-C))…(1)
ただし、CEILは、引数の小数点以下を切り上げる関数である。例えば、A=180°で、B=50°で、C=5°なら、PN=8となる。
【0032】
もっとも、実際には、1つの被写界深度をカバーするためのフォーカスリング回転量は、投影距離の大小によって変化する(常にBに等しいとは限らない)可能性があるし、隣り合う被写界深度が重なり合うフォーカスリング回転量も同様に変化する(常にCに等しいとは限らない)可能性があるので、式(1)のように簡単にプリセットポジションの個数を算出することはできない場合もある。しかし、例えば、投影距離とフォーカスリングとを、許容錯乱円のサイズを確認しながら、少しずつ変化させていけば、被写界深度を鑑みて投影距離の全範囲を網羅する全てのプリセットポジションを取得することは可能である。
【0033】
そして、各プリセットポジションには対応するリング移動量(フォーカスリングの起点からの回転量)が存在するので、投影装置100の記憶部120には、例えば
図4に示すように全てのプリセットポジション(PP1~PP8)について、対応するリング移動量(D1~D8)を記憶させておくことができる。なお、各プリセットポジションにおける投影距離の範囲についても、プリセットエリア(PA1~PA8)として記憶部120に記憶させておいてもよい。
【0034】
本実施の形態では、このようにフォーカスリングを各プリセットエリア(各被写界深度)に対応するリング移動量に規定された位置まで回転させることによってフォーカスを調整する。すなわち、フォーカスリングをいずれかのリング移動量の位置まで回転させると、当該リング移動量に対応するプリセットエリアの範囲で投影レンズ154のフォーカスが合う。このように、フォーカスを合わせる(調整する)ために、リング移動量が用いられるので、リング移動量はフォーカス調整値とも呼ばれる。
【0035】
投影装置100において、フォーカスを合わせる処理であるフォーカス調整処理について、
図5を参照して説明する。この処理は、投影装置100の電源が投入され、フォーカスモータを駆動する準備が整うと開始される。また、記憶部120には、
図4に示すように、互いに異なる複数の被写界深度(プリセットエリア)のそれぞれに対応するフォーカス調整値(リング移動量)が予め記憶されている。
【0036】
まず、制御部110は、操作入力部130で操作内容を取得する(ステップS101)。そして制御部110は、取得した操作内容がフォーカス微調整ボタンの押下であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0037】
取得した操作内容がフォーカス微調整ボタンの押下なら(ステップS102;Yes)、制御部110は、押下されたフォーカス微調整ボタンの種類(+又は-)の方向にフォーカスリングを回転させるために、フォーカスモータの駆動を開始する(ステップS103)。
【0038】
そして、制御部110はフォーカス微調整ボタンが離される(押下が終了する)まで待ち(ステップS104)、フォーカス微調整ボタンが離されたらフォーカスモータの駆動を停止する(ステップS105)。そして、ステップS101に戻る。
【0039】
一方、取得した操作内容がフォーカス微調整ボタンの押下でないなら(ステップS102;No)、制御部110は、取得した操作内容がフォーカスプリセットボタンの押下か否かを判定する(ステップS106)。
【0040】
取得した操作内容がフォーカスプリセットボタンの押下なら(ステップS106;Yes)、制御部110は、押下されたフォーカスプリセットボタンの番号に対応するプリセットポジションの位置までフォーカスリングを移動させる(ステップS107)。このステップで制御部110は、
図4に示すように記憶部120に記憶されているリング移動量の位置にフォーカスリングを回転させるようにフォーカスモータを駆動させればよい。そして、ステップS101に戻る。
【0041】
一方、取得した操作内容がフォーカスプリセットボタンの押下でないなら(ステップS106;No)、制御部110は、取得した操作内容がフォーカスプリセット番号増減ボタンの押下か否かを判定する(ステップS108)。取得した操作内容がフォーカスプリセット番号増減ボタンの押下でないなら(ステップS108;No)、ステップS101に戻る。
【0042】
取得した操作内容がフォーカスプリセット番号増減ボタンの押下なら(ステップS108;Yes)、制御部110は、フォーカス調整部155が備えるエンコーダにより、フォーカスリングの現在位置を取得する(ステップS109)。
【0043】
そして、制御部110は、押下されたフォーカスプリセット番号増減ボタンの種類(++又は--)の方向にフォーカスリングを回転させたときに、最も早く到達するプリセットポジションにフォーカスリングを移動させるために、フォーカスモータを駆動する(ステップS110)。そして、ステップS101に戻る。
【0044】
以上のフォーカス調整処理により、制御部110は、フォーカスを3種類(微調整、プリセット位置に移動、プリセット番号増減)の方法で調整することができる。特に、プリセットポジションを利用したフォーカス調整においては、制御部110はフォーカス調整値に合わせてフォーカスを調整するので、ユーザは従来よりも容易にフォーカス調整を行うことができる。
【0045】
また、被写界深度を鑑みれば、投影距離が不明であっても、複数(本実施の形態では8個)用意されているプリセットボタンのいずれかにより、フォーカスを合わせることができる。したがって、ユーザがフォーカスを合わせるためにしなければならない操作は、フォーカスプリセットボタンを順番に押下する操作に限定され、その押下回数も、フォーカスプリセットボタンの個数以下に抑えることができる。
【0046】
なお、上述の実施の形態では、リング移動量をフォーカス調整値として説明したが、フォーカス調整値はリング移動量に限定されない。例えば、投影レンズ154の焦点距離、フォーカスリングの回転位置(プリセットポジション)等、フォーカス調整のために用いられる値であれば任意の値をフォーカス調整値として用いることができる。
【0047】
(変形例)
上述の実施の形態では、ユーザが手動でフォーカスを合わせることを想定していたが、自動的にフォーカスを合わせる投影システムにおいても上述のプリセットポジションは有用である。ここでは変形例として、
図6に示すような、投影装置101、測距装置210、制御装置220、リモコン信号送信器230を備える投影システム1000について説明する。
【0048】
投影システム1000が備える投影装置101は、上述した実施の形態に係る投影装置100と同様の投影装置であり、その機能構成は
図1に示されるとおりである。ただし、投影装置101の記憶部120には、
図4に示すように、各プリセットポジション(プリセット番号)に対応するプリセットエリアの情報も記憶されている。
【0049】
測距装置210は、物体300までの距離を測定可能な装置であり、例えば3D(Dimensional)カメラである。また、測距装置210は通信機能を備え、他の装置(例えば制御装置220)から距離測定の指示を受信したり、他の装置に測定結果を送信したりすることができる。例えば、測距装置210は、制御装置220からの指示を受けて測距装置210(例えば3Dカメラ)から物体300までの距離を測定して、その測定結果(距離)を制御装置220に返すことができる。
【0050】
制御装置220は、測距装置210が測定した距離に基づいて投影装置101のプリセット番号を算出する装置であり、例えばPC(Personal Computer)である。
図6に示すように、制御装置220は、CPU等のプロセッサで構成される制御部221を備える。また、制御装置220は通信機能を備え、他の装置に指示を出したり、他の装置からデータを受信したりすることができる。例えば、制御装置220は、測距装置210に距離測定の指示を出したり、測距装置210から測定結果(距離)を受信したり、リモコン信号送信器230にリモコン信号送信の指示を出したりすることができる。
【0051】
リモコン信号送信器230は、制御装置220からプリセット番号を取得して、当該プリセット番号に対応するリモコン信号を投影装置101に送信する装置である。
【0052】
なお、投影システム1000は、必ずしも制御装置220を備えなくてもよく、例えば、制御装置220の代わりに、測距装置210が制御部221を備えてもよい。また、測距装置210又は制御装置220がリモコン信号送信機能を備えるなら、投影システム1000は、リモコン信号送信器230を備えなくてもよい。したがって、測距装置210が投影装置101に直接リモコン信号を送信して投影装置101を制御してもよい。
【0053】
図6に示す例では、様々な大きさの物体300が運搬装置400により上流側から下流側に移動している。物体300の上面が投影装置101の投影面になる。運搬装置400は、例えばベルトコンベアである。そして、投影装置101の位置より上流側に測距装置210が存在し、測距装置210が測定した投影面までの距離に基づいて投影装置101のフォーカスが調整される。
【0054】
すなわち、制御装置220は、測距装置210で取得した距離(測距装置210(例えば3Dカメラ)から物体300の投影面までの距離)に基づいて、投影装置101から物体300の投影面までの距離を算出し、当該距離に対応するプリセット番号を決定する。そして、リモコン信号送信器230で当該プリセット番号に対応するリモコン信号を投影装置101に送信する。投影装置101はリモコン信号を受け取ると、当該リモコン信号に基づいてフォーカスリングを駆動する。これにより、投影装置101が測距機能を備えていなくても、投影映像のオートフォーカスが実現される。
【0055】
この変形例を実現するための制御装置220の処理(リモコン信号送信処理)と投影装置101の処理(リモコン信号受信処理)について、それぞれ
図7と
図8を参照して説明する。これらの処理は、例えば
図6に示すような環境下で物体の運搬が開始される前に実行が開始される。
【0056】
図7を参照してリモコン信号送信処理について説明する。まず、制御部221は、測距装置210に、測距装置210から物体300までの距離を測定させる(ステップS201)。
【0057】
そして、制御部221は、通信機能により、測距装置210が測定した距離(測距装置210から物体300までの距離)を取得する(ステップS202)。
【0058】
そして、制御部221は、取得した距離に基づいて、投影装置101から物体300までの距離を算出する(ステップS203)。例えば運搬装置400の高さが一定で、測距装置210の3Dカメラの高さと投影装置101の投影レンズ154の高さが同じ場合には、ステップS202で取得した距離をそのまま投影装置101から物体300までの距離とする。また、例えば、測距装置210の3Dカメラの高さと投影装置101の投影レンズ154の高さに差異がある場合には、制御部221は、その差異の分を補正した値を投影装置101から物体300までの距離として算出する。
【0059】
そして、制御部221は、算出した距離に基づいてプリセット番号を取得する(ステップS204)。具体的には、例えば
図4に示すPA6が2.0m~2.6mで、PA5が2.5m~3.1mで、PA4が3.0m~3.6mであるとする。そして、算出した距離が3.0mであるなら、制御部221は算出した距離に最も適合するプリセット番号である「5」を取得する。なお、例えば算出した距離が3.05mのように、2つの隣り合うプリセットエリアのちょうど中間点である場合には、どちらのプリセット番号(この例では「5」又は「4」)を取得してもよい。
【0060】
そして、制御部221は、取得したプリセット番号に対応するリモコン信号をリモコン信号送信器230から投影装置101に送信させ(ステップS205)、ステップS201に戻る。
【0061】
次に
図8を参照してリモコン信号受信処理について説明する。まず、制御部110は、操作入力部130のリモコン信号受信部でプリセット番号を受信する(ステップS301)。
【0062】
そして、制御部110は受信したプリセット番号に対応するプリセットポジションの位置までフォーカスリングを移動させ(ステップS302)、ステップS301に戻る。
【0063】
以上の、リモコン信号送信処理及びリモコン信号受信処理により、
図6に示すような環境において、物体300の大きさが様々に変わっても、投影装置101は物体300にフォーカスの合った映像を投影することができる。
【0064】
なお、投影装置101の制御部110が制御装置220の制御部221を兼ねてもよい。この場合、制御装置220及びリモコン信号送信器230は不要になり、投影システム1000は、測距部(測距装置210)を備える投影装置101となる。そして、リモコン信号送信処理(
図7)とリモコン信号受信処理(
図8)は結合した形で処理される。具体的には、制御部110は、リモコン信号送信処理(
図7)のステップS204の次にリモコン信号受信処理(
図8)のステップS302に進み、その後リモコン信号送信処理のステップS201に戻る形になる。
【0065】
また、変形例においては、投影距離の範囲は、投影装置101の本来の投影距離の範囲(全範囲)よりも狭くなることが多い。例えば、投影装置101の最遠端の投影距離が10mだったとしても、
図6に示すような変形例においては投影装置101から運搬装置400までの距離(例えば2m)以下の投影距離だけを想定すればよい。つまり、変形例においては、
図4に示すようなプリセットポジションを、投影距離の全範囲において用意する必要はなく、(例えば2m以下の)所定の範囲において用意すればよい。
【0066】
したがって、投影装置101では、投影装置100と同じ被写界深度で投影する場合には、プリセットポジションの数を投影装置100よりも減らすことが可能である。また、投影装置101では、被写界深度を狭くしても(許容錯乱円のサイズを小さくしても)プリセットポジションの数を抑えることができるので、投影装置100と同じプリセットポジション数を用意した場合には、よりはっきりした(許容錯乱円のサイズが小さい)映像を物体300に投影することが可能である。
【0067】
なお、
図6に示すような投影システム1000においては、プリセット番号を用いずに、測距装置210が測定した距離に基づいて、制御装置220が投影装置101のフォーカスを、投影装置101から物体300までの距離に合うよう制御すれば良いのではないかとも考えられる。
【0068】
しかし、距離を制御装置220から投影装置101に送信する場合には、単純なリモコン信号の送受信とは異なり、かなり煩雑な処理が必要になる。例えば、プリセット番号の送信であれば、元々存在するフォーカスプリセットボタンのリモコン信号の送信と同じなので、投影装置101は投影装置100に何も変更を加える必要はない。しかし、距離をリモコン信号送信器230で送信する場合には、投影システム1000は、距離を送受信するための信号を定義して、その信号に対応したリモコン信号送信器230及びリモコン信号受信部(操作入力部130)を備える必要がある。また、単純なリモコン信号と比較して、距離を送受信するための信号は、データ量も増えるため、工場等の過酷な環境下においては、通信エラーや通信遅延による悪影響を受けやすくなる。
【0069】
それに対し、変形例のような投影システム1000は、上述の投影装置100をそのまま投影装置101として使用でき、また測距装置210や制御装置220も他の目的のために用意されていたものをそのまま使用することができる。したがって、コストを増大させることなく、投影装置101での投影のオートフォーカスを実現することができる。
【0070】
(その他の変形例)
なお、投影装置100,101は、投影装置100,101単体からなる装置に限らず、PC等のコンピュータと投影部とを組み合わせたシステムとしても実現することができる。具体的には、上記実施の形態では、制御部110が実行するフォーカス調整処理等のプログラムが、記憶部120に予め記憶されているものとして説明した。しかし、プログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical disc)、メモリカード、USBメモリ等の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータに読み込んでインストールすることにより、上述の各処理を実行することができるコンピュータを構成してもよい。
【0071】
また、投影制御装置200としては、制御部110と記憶部120を備えたコンピュータであれば任意のコンピュータを用いることができる。投影制御装置200は、例えばワンボードマイコンでもよい。
【0072】
さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の各処理を実行できるように構成してもよい。
【0073】
また、制御部110は、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、マルチコアプロセッサ等の任意のプロセッサ単体で構成されるものの他、これら任意のプロセッサと、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられて構成されてもよい。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。
【符号の説明】
【0075】
100,101…投影装置、110,221…制御部、120…記憶部、130…操作入力部、140…映像入力部、150…投影部、151…光源、152…投影デバイス、153…レンズユニット、154…投影レンズ、155…フォーカス調整部、156…ズーム調整部、200…投影制御装置、210…測距装置、220…制御装置、230…リモコン信号送信器、300…物体、400…運搬装置、1000…投影システム、1300…リモコン、1301,1302,1303,1304,1305,1306,1311,1312,1313,1314,1315,1316,1317,1318…ボタン