(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032418
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】亜鉛負極二次電池、及び、亜鉛負極二次電池の正極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20240305BHJP
H01M 4/583 20100101ALI20240305BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20240305BHJP
H01M 10/38 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M10/36 Z
H01M4/583
H01M4/42
H01M10/36 A
H01M10/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136065
(22)【出願日】2022-08-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「電気自動車用革新型蓄電池開発/フッ化物電池の研究開発、亜鉛負極電池の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】藤本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正晃
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌行
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK08
5H029AL11
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ15
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA08
5H050CA16
5H050CB13
5H050FA16
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】充放電特性に優れた亜鉛負極二次電池を提供する。
【解決手段】本開示の亜鉛負極二次電池は、比表面積が1400m2/g以上3500m2/g以下の活性炭を含む正極と、亜鉛負極と、水系電解質と、を備える。本開示の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法は、炭素材料を薬剤賦活するステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が1400m2/g以上3500m2/g以下の活性炭を含む正極と、
亜鉛負極と、
水系電解質と、
を備えた、亜鉛負極二次電池。
【請求項2】
前記活性炭は、薬剤賦活された活性炭である、請求項1に記載の亜鉛負極二次電池。
【請求項3】
前記水系電解質は、KOH、ZnCl2、ZnSO4からなる群から選ばれた少なくとも一種又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の亜鉛負極二次電池。
【請求項4】
活性炭を含む正極と、亜鉛負極と、水系電解質と、を備えた、亜鉛負極二次電池の正極の製造方法であって、前記方法は、
炭素材料を薬剤賦活するステップを含む、
亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【請求項5】
前記薬剤賦活に用いられる薬剤は、KOH、NaOH,CsOH、ZnCl2、H3PO4、P2O5、K2SO4、K2CO3、及び、K2Sからなる群から選ばれた少なくとも一種又はそれらの組み合わせである、請求項4に記載の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【請求項6】
前記薬剤賦活に用いられる薬剤は、KOH、ZnCl2、及び、H3PO4からなる群から選ばれた少なくとも一種又はそれらの組み合わせである、請求項4に記載の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【請求項7】
前記薬剤賦活に用いられる炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズである、請求項4に記載の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【請求項8】
前記メソカーボンマイクロビーズの平均粒径は、0.1μm以上100μm以下である、請求項7に記載の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【請求項9】
前記薬剤賦活に用いられる炭素材料は、炭素繊維である、請求項4に記載の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【請求項10】
前記薬剤賦活するステップにおいては、前記炭素材料と、薬剤と、水とを混合して、400℃以上1200℃以下に加熱する、請求項4に記載の亜鉛負極二次電池の正極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、亜鉛負極二次電池、及び、亜鉛負極二次電池の正極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、薄型化、軽量化が進む中、電子機器の電源用の電池や、電子機器のバックアップ用電池として、高エネルギー密度で充電でき、高効率で放電できる二次電池が注目を集めている。二次電池は、電気自動車の動力源や、分散型の電力貯蔵用電池としての開発も行われている。しかしながら、現状の最も普及しているリチウムイオン二次電池では、有機電解液が使用されるため、電池が短絡した場合に、発煙、発火、爆発の危険性がある。こうしたことから、有機電解液を使用しない水系電池として、亜鉛を負極に用いた亜鉛負極二次電池の開発が活発に行われている。とりわけ、正極に炭素材料を用いた亜鉛―炭素電池は、軽量かつ低コストになるため、注目されている。正負極にそれぞれ炭素、亜鉛を用いた最近の二次電池の報告としては、非特許文献1が知られている。非特許文献1によれば、活性炭クロスを用いた炭素正極で硫酸亜鉛および過塩素酸亜鉛の電解系を用いた場合の容量はそれぞれ34、50Ah/kgである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Eskusson et. al., Journal of the Electrochemical Society, 2022 169 020512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に開示の亜鉛―炭素電池によれば、正極炭素材料の容量が、34、50Ah/kgの二次電池を得ることができる。しかしながら、実用化のためには、さらなる容量向上が求められる。その上、充放電サイクル特性、及び長期間にわたる高い充放電効率も求められている。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、高容量、充放電サイクル特性に優れ、長期間にわたり高い充放電効率を維持できる亜鉛―炭素電池の製作に有用な炭素材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、薬剤賦活によって製造される活性炭を正極材料にすることによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本開示の一態様は、活性炭を含む正極と、亜鉛負極と、水系電解質と、を備えた、亜鉛負極二次電池の正極の製造方法である。亜鉛負極二次電池の正極の製造方法は、炭素材料を薬剤賦活するステップを含む。
【0008】
炭素材料を薬剤賦活することにより、高容量、充放電サイクル特性に優れ、長期間にわたり高い充放電効率を維持できる亜鉛負極二次電池の正極を製造できる。
【0009】
前記薬剤賦活に用いられる薬剤(賦活助剤)は、KOH、NaOH,CsOH、ZnCl2、H3PO4、P2O5、K2SO4、K2CO3、及び、K2Sからなる群から選ばれた少なくとも一種又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0010】
前記薬剤賦活に用いられる炭素材料の一例は、メソカーボンマイクロビーズである。前記メソカーボンマイクロビーズの平均粒径は、0.1μm以上100μm以下であってもよい。
【0011】
前記薬剤賦活に用いられる炭素材料の他の例は、炭素繊維である。
【0012】
前記薬剤賦活するステップにおいては、前記炭素材料と、薬剤と、水とを混合して、400℃以上1200℃以下に加熱してもよい。
【0013】
本開示の別の一態様は、亜鉛負極二次電池である。亜鉛負極二次電池は、比表面積が1400m2/g以上3500m2/g以下の活性炭を含む正極と、亜鉛負極と、水系電解質と、を備える。
【0014】
前記活性炭は、薬剤賦活された活性炭である。
【0015】
前記水系電解質は、KOH、ZnCl2、ZnSO4からなる群から選ばれた少なくとも一種又はそれらの組み合わせであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る亜鉛負極電池の正極の製造方法によれば、炭素材料を薬剤賦活して活性炭を製造するので、高容量で、充放電サイクル特性に優れ、長期間にわたり高い充放電効率を維持できる亜鉛負極二次電池を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の亜鉛負極二次電池は、比表面積が1400m2/g以上3500m2/g以下の活性炭を含む正極と、亜鉛負極と、水系電解質と、を備えている。
【0018】
正極に用いられる活性炭は、炭素材料を薬剤賦活することによって、製造される。炭素材料の例は、メソカーボンマイクロビーズあるいは炭素繊維である。薬剤賦活とは、炭素材料の表面に賦活助剤を付与した後、賦活を行う。
【0019】
薬剤賦活される炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズであってもよい。メソカーボンマイクロビーズについては、「メソカーボンマイクロビーズの工業的製造法とその応用」、藤本宏之、炭素、No.241, p10-p14、2010、「Carboneous Mesophase: History and Prospects」, Hidemasa Honda, Carbon Vol. 26, No.2, pp. 139-156, 1988、等を参照できる。メソカーボンマイクロビーズの平均粒径は、0.1μm以上100μm以下が好ましい。メソカーボンマイクロビーズを、薬剤賦活される炭素材料(原料)として用いることにより、高い比表面積を有する活性炭を容易に製造することができる。
【0020】
薬剤賦活される炭素材料は、炭素繊維であってもよい。炭素繊維については、「ピッチ系炭素繊維」、山本巌、SEN-I GAKKAISHI (繊維と工業)vol.49, No.5, 1993を参照できる。炭素繊維を、薬剤賦活される炭素材料(原料)として用いることにより、高い比表面積を有する活性炭を容易に形成することができる。
【0021】
活性炭の原料となる炭素材料としては、メソカーボンマイクロビーズあるいは炭素繊維に限定されない。一般的な原料であるヤシ殻、木粉なども適用できる。活性炭の原料となる炭素材料は、適度の大きさ(粒径など)を有し、構造上の差異によって、薬剤賦活によって、部分的に炭素の酸化が進み、細孔が形成されるものであればよい。ここで、適度の大きさとは、炭素材料が粒状の場合は、0.1μm以上100μm以下であり、繊維状の場合は、直径が5μm以上20μm以下であり、ヤシ殻、木粉の場合は、1μm以上50μm以下である。
炭素材料を賦活する方法としては、薬剤賦活と水蒸気賦活がある。本開示では、薬剤賦活を用いる。
【0022】
薬剤賦活に用いられる薬剤(賦活助剤)としては、KOH、NaOH,CsOH、ZnCl2、H3PO4、P2O5、K2SO4、K2CO3、及び、K2Sなどが例示される。賦活助剤の付与量は、炭素材料重量の1~10倍量程度とすることが好ましい。賦活の程度は、賦活助剤の付与量にほぼ比例するので、該付与量により、活性炭の比表面積を調整することが可能である。
【0023】
活性炭の比表面積としては、500m2/g以上3500m2/g以下で調整可能である。活性炭の比表面積としては、1400m2/g以上3500m2/g以下とすることにより、高容量の亜鉛負極二次電池用正極材となる。
【0024】
なお、KOHの様な常温で固体の賦活助剤を使用する場合には、水溶液の形態で使用するが、H3PO4の様な常温で液体の賦活助剤を使用する場合には、水溶液とする必要は特にない。また、炭素材料に対する賦活助剤の“濡れ性”を改善するためには、表面活性剤として、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール等を併用しても良い。表面活性剤の使用量は、通常、炭素材料と賦活助剤又は賦活助剤を含む溶液との合計重量の5~10%程度とすることが好ましい。
【0025】
賦活は、賦活助剤を付与し炭素材料を400~1200℃程度に昇温することにより行う。昇温速度及び加熱保持時間は、特に限定されないが、通常上記の温度範囲に到達後ただちに冷却するかまたは同温度範囲内に最大限3時間程度保持することにより行う。賦活時の雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気であっても、水蒸気、-酸化炭素、酸素等が存在する酸化性雰囲気であっても良いが、不活性雰囲気による場合には、収率がより高くなる。不活性雰囲気中で賦活を行う場合には、賦活助剤を使用して、通常400~1200℃程度の温度まで300~600℃/時間程度の昇温速度で加熱し、同温度での保持時間を30分乃至1時間程度とすることがより好ましい。
【0026】
また、賦活助剤毎に最適賦活温度が存在している。KOH、K2SO4及びK2Sの場合には、800~1000℃程度、NaOH及びCsOHの場合には、600℃程度、ZnCl2の場合には、450℃程度である。賦活を終えた炭素材料は、室温まで冷却後、水洗により未反応の賦活助剤及び賦活助剤反応物を除去され、乾燥されて、正極用の活性炭となる。
【0027】
本開示においては、上記の賦活助剤は、炭素の酸化によるガス化を促進するものと推測される。すなわち、賦活助剤が、炭素六員環網面の炭素原子と反応して、これを一酸化炭素または二酸化炭素に変え、系外に排出する。
【0028】
不活性雰囲気中での賦活の場合には、反応に関与しなかった部分は、炭素化が進むので、反応部分と未反応部分との構造上の差異が大きくなって、細孔が形成される。この場合、炭素材料(たとえば、メソカーボンマイクロビーズあるいは炭素繊維などの炭素材料)が有している規則的な層状構造の為に、生成される孔は、20オングストロ一ム未満のミクロポアーとなる。また、反応雰囲気が、不活性雰囲気である場合には、表面ガス反応の選択性が高くなり、収率も著しく高められる。
【0029】
このようにして製造された薬剤賦活された活性炭を、亜鉛負極二次電池用正極材として使用すると、高容量、優れたサイクル特性と高い充放電効率を維持することができる。
【0030】
例えば、薬剤賦活された活性炭、正極形成用バインダーなどを含む混合物を成形する方法により亜鉛負極二次電池用正極を形成することができる。具体的には、薬剤賦活された活性炭、有機溶媒、バインダーなどを含むペーストを調製し、このペーストを正極集電体にドクターブレードなどの塗布手段によって塗布することで、任意形状の亜鉛負極二次電池用正極を形成できる。正極集電体は、特に制限されず、公知の集電体、例えば、銅などの導電体を使用することができる。有機溶媒としては、通常、正極形成用バインダーを溶解又は分散可能な溶媒が使用され、例えば、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒が例示される。有機溶媒の使用量は、ペースト状となる限り特に制限されず、例えば、薬剤賦活された活性炭100重量部に対して、60~150重量部とすることができ、好ましくは80~100重量部である。
【0031】
正極形成用バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素含有樹脂やスチレンブタジエン樹脂などが例示できる。正極形成用バインダーの使用量(分散液の場合には、固形分換算の使用量)は、特に限定されず、その下限値は、薬剤賦活された活性炭100重量部に対して通常、3重量部以上、好ましくは5重量部以上である。正極形成用バインダーの使用量の上限は、薬剤賦活された活性炭100重量部に対して通常、20重量部以下(例えば、15重量部以下)、好ましくは10重量部以下である。より具体的には、バインダーの使用量は固形分換算で、例えば、薬剤賦活された活性炭100重量部に対して3~20重量部、好ましくは5~15重量部、より好ましくは5~10重量部である。ペーストの調製方法は、特に制限されず、例えば、正極形成用バインダーと有機溶媒との混合液又は分散液と薬剤賦活された活性炭とを混合する方法などを例示することができる。
【0032】
なお、上述の製造方法で得られた薬剤賦活された活性炭と導電材(炭素質材料や導電性炭素材も含む)とを併用して、正極を製造してもよい。
【0033】
導電材の使用割合は特に制限されないが、活性炭と導電材の総量に対して、1~10重量%程度とすることができ、好ましくは1~5重量%程度である。
【0034】
導電材を併用することにより、電極としての導電性を向上させることができ、さらに亜鉛負極二次電池の放電容量とサイクル特性も向上させることができる。このような導電材としては、例えば、アセチレンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックなどを使用できる。導電材は、1種のみを使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。導電材は、例えば、活性炭と溶媒とを含むペーストに混合してもよい。ペーストの正極集電体への塗布量は特に制限されないが、通常は5~15mg/cm2とすることができ、好ましくは7~13mg/cm2である。
【0035】
上記の亜鉛負極二次電池用正極(以下、単に「正極」と略記することがある)を使用して、亜鉛負極二次電池を製造できる。
【0036】
上記亜鉛負極二次電池は、負極と、正極と、非水電解質とを少なくとも備えて構成される。より詳しくは、負極、正極、電解液、セパレータなどを用いて、常法により亜鉛負極二次電池を製造することができる。
【0037】
電解液は、特に制限されず、公知の材料を用いることができる。例えば、電解液として、水に電解質を溶解させた溶液を用いれば、水系亜鉛負極二次電池を製造できる。電解質としては、例えば、KOH、ZnCl2、ZnSO4などを例示することができ、その濃度は0.01M以上15M以下が好ましい。
【0038】
セパレータは、特に制限されず、公知のセパレータ、例えば、多孔質ポリプロピレン製不織布、多孔質ポリエチレン製不織布などのポリオレフイン系の多孔質膜などが例示できる。
【0039】
亜鉛負極二次電池は、本開示の薬剤賦活された活性炭を含む正極、亜鉛負極および電解液の他に、例えば、通常当該分野において使用されるガスケット、封口板、ケースなどをさらに備えていてもよい。
【0040】
亜鉛負極二次電池の形状に特に制限はないが、円筒型、角型、ボタン型など任意の形態とすることができる。
【0041】
上述の亜鉛負極二次電池は、充放電サイクル特性に優れ、長期間にわたり高い充放電効率容量を維持できる。従って、分散型、可搬性電池として、電子機器、電気機器、自動車、電力貯蔵などの電源や補助電源として利用できる。
【0042】
以上のように、上述した製造方法で得た薬剤賦活された活性炭を亜鉛負極二次電池の正極に適用すれば、亜鉛負極二次電池の充放電特性及びサイクル特性を改善することが可能である。
【0043】
本開示の亜鉛負極二次電池の製造方法は、使用する賦活助剤が安価であり、収率も高いので、活性炭の製造コストは、著しく低減される。また、使用する賦活助剤の使用量を変えることにより、500~3000m2/gという広い範囲内で比表面積を調整することが出来るので、充放電容量を制御することができる。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1、2,3,4)
実施例1~4では、炭素材料としてメソカーボンマイクロビーズ10g(メソカーボンマイクロビーズの製造方法については、上記文献、藤本宏之、炭素、No.241, p10-p14、2010を参照。)と所定量の水酸化カリウムKOH(薬剤賦活に用いられる薬剤、賦活助剤)との混合物に水とアセトンを加え、均一に混合して、スラリーとした。ここで、水酸化カリウムの重量は、実施例1では、1.5g、実施例2では、2g、実施例3では、3g、実施例4では、4gである。次いで、該スラリーを窒素ガス雰囲気中で室温から850℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、同温度に1時間保持した後、反応生成物を100℃以下に冷却し、水洗し、乾燥させた。
【0046】
得られた賦活処理メソカーボンマイクロビーズ(活性炭)と、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVDF)のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とを混合してペーストを調製した。このペーストを、グラファイトシート上に10mg/cm2の塗布量で塗布することにより電極(正極)を作製した。なお、バインダーの割合は、賦活処理メソカーボンマイクロビーズ100重量部に対して8重量部とした。
【0047】
上記のように作製した電極と、対極として金属亜鉛箔、電解液として酸化亜鉛を飽和させた4M-KOH溶液を用い、二極式密閉セルを組み立て、充放電試験を行った。充放電試験においては、0.2mA/grの定電流で、電圧範囲0.5~1.5Vの範囲で充放電サイクル試験を行った。
【0048】
(実施例5)
実施例2において、賦活助剤のKOHをZnCl2に置き換える以外は実施例2と同様の方法で賦活メソカーボンマイクロビーズを調製し、電解液に4M塩化亜鉛水溶液を用いて亜鉛負極電池を調製し、充放電試験を行った。
【0049】
(実施例6)
実施例2において、賦活助剤のKOHをH3PO4に置き換える以外は実施例2と同様の方法で賦活メソカーボンマイクロビーズを調製し、電解液に2M硫酸亜鉛水溶液を用いて亜鉛負極電池を調製し、充放電試験を行った。
【0050】
(実施例7)
実施例1において、賦活助剤のKOHをK2CO3に置き換える以外は実施例1と同様の方法で賦活メソカーボンマイクロビーズを調製し、電解液に4M-KOH溶液を用いて亜鉛負極電池を調製し、充放電試験を行った。
【0051】
(実施例8)
実施例1において、炭素材料のメソカーボンマイクロビーズを炭素繊維に置き換える(炭素繊維の製造方法は、上記文献、山本巌、SEN-I GAKKAISHI (繊維と工業)vol.49, No.5, 1993を参照。)以外は実施例1と同様の方法で賦活炭素繊維を調製し、電解液に4M塩化亜鉛水溶液を用いて亜鉛負極電池を調製し、充放電試験を行った。
【0052】
(比較例1)
実施例1において、賦活助剤を混合せずに、熱処理雰囲気を水蒸気に変更すること以外は実施例1と同様の方法で水蒸気賦活メソカーボンマイクロビーズ(活性炭)を調製し、電解液に4M-KOH溶液を用いて亜鉛負極電池を調製し、充放電試験を行った。
【0053】
以下、表1に、実施例1~8、比較例1についての実験結果をまとめて示す。表1は、各実施例又は比較例について、左から右へ順に、炭素材料:賦活助剤(重量比)、比表面積(m2/g)、第2サイクルにおける放電容量(Ah/kg)、第2サイクルにおける充放電効率(%)を示す。
【0054】
表1に示すように実施例1~8の薬剤賦活した活性炭の比表面積は1480m2/g~3000m2/gであり、比較例1の水蒸気賦活した活性炭の比表面積は1200m2/gである。つまり、実施例1~8の薬剤賦活した活性炭の比表面積は、比較例1の水蒸気賦活した活性炭の比表面積よりも大きい。また実施例1~8の薬剤賦活した活性炭を正極として用いた亜鉛二次電池の第2サイクルにおける放電容量は、比較例1の水蒸気賦活した活性炭を正極として用いた亜鉛二次電池の第2サイクルにおける放電容量に比べて大きい。
【0055】