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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032439
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】レゾネータ構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
F02M35/10 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136095
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 彬宏
(72)【発明者】
【氏名】保坂 敬道
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】増馬 鉄朗
(72)【発明者】
【氏名】桂 鳳云
(72)【発明者】
【氏名】富田 拓郎
(57)【要約】
【課題】厳しい公差の管理無しに、意図した騒音低減性能を得ること。
【解決手段】レゾネータ構造100は、吸気ダクト1と、吸気ダクト1の内部に収容され、上方に延在するレゾネータ2と、を備える。レゾネータ2は、吸気ダクト1の内面13に向かって突出する鍔22を含む。内面13および鍔22の少なくとも一方は、内面13と鍔22との間の隙間gにオイルを集めるための表面性状Txを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ダクトと、
前記吸気ダクトの内部に収容され、上方に延在するレゾネータと、
を備え、
前記レゾネータは、前記吸気ダクトの内面に向かって突出する鍔を含み、
前記内面および前記鍔の少なくとも一方は、前記内面と前記鍔との間の隙間にオイルを集めるための表面性状を含む、
レゾネータ構造。
【請求項2】
前記表面性状は、
前記内面において前記鍔と対向するように形成される第1領域と、
前記内面において前記第1領域の上方の領域および下方の領域に形成され、かつ、油滴に対する接触角および転落角の少なくとも一方が、前記第1領域と異なるように形成される、第2領域と、
を含む、
請求項1に記載のレゾネータ構造。
【請求項3】
前記第1領域における油滴に対する転落角が、前記第2領域における油滴に対する転落角よりも大きい、請求項2に記載のレゾネータ構造。
【請求項4】
前記表面性状は、
前記鍔において前記第1領域と対向するように形成され、かつ、前記接触角および前記転落角の前記少なくとも一方が、前記第1領域と同様であるように形成される、第3領域、
を含む、
請求項2に記載のレゾネータ構造。
【請求項5】
前記表面性状は、
前記鍔の上面に形成され、油滴に対して第1の接触角を有する、第4領域と、
前記鍔の上面に形成され、油滴に対して前記第1の接触角よりも小さい第2の接触角を有する、第5領域と、
を含む、請求項1に記載のレゾネータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾネータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンに接続される吸気ダクトは、空気の吸引に伴う騒音を低減するために、レゾネータを備える。例えば、特許文献1は、吸気通路と、吸気通路の内部に配置されるレゾネータと、を開示する。このレゾネータは、管状部材と、管状部材から吸気通路の内壁面に向かって突出する鍔状の壁部と、を備える。鍔状の壁部と、吸気通路の内壁面との間には、シール部材が配置される。代替的に、鍔状の壁部および吸気通路の内壁面がシール部材無しに良好にシールされる場合には、シール部材は配置されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-82306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
意図したように騒音を低減するためには、吸気ダクトとレゾネータとの間の隙間を、設計値から所定の範囲内に保つ必要がある。しかしながら、これは厳しい公差の管理を必要とし、製造コストの増加に繋がり得る。
【0005】
本発明は、厳しい公差の管理無しに、意図した騒音低減性能を得ることができる、レゾネータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るレゾネータ構造は、
吸気ダクトと、
前記吸気ダクトの内部に収容され、上方に延在するレゾネータと、
を備え、
前記レゾネータは、前記吸気ダクトの内面に向かって突出する鍔を含み、
前記内面および前記鍔の少なくとも一方は、前記内面と前記鍔との間の隙間にオイルを集めるための表面性状を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、厳しい公差の管理無しに、意図した騒音低減性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るレゾネータ構造を示す斜視図である。
図2図2は、図1のレゾネータ構造を示す分解斜視図である。
図3図3は、アッパーダクトが取り外された図1のレゾネータ構造を示す斜視図である。
図4図4は、中心軸線に沿って得られる図1のレゾネータ構造の断面図である。
図5図5は、中心軸線に沿って得られる他の実施形態に係るレゾネータ構造の断面図である。
図6図6は、中心軸線に垂直な図5のレゾネータ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、明細書および図面において、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係るレゾネータ構造100を示す斜視図である。図2は、図1のレゾネータ構造100を示す分解斜視図である。
【0011】
図1を参照して、レゾネータ構造100は、吸気ダクト1に適用される。吸気ダクト1は、不図示のエンジンの吸気口に接続される。レゾネータ構造100が適用される区間では、吸気ダクト1は、上方に向かって、具体的には、鉛直方向に対して平行に延在する。吸気ダクト1は、概ね流路に沿って2つの部分に分割されており、ロワーダクト11と、アッパーダクト12と、を含む。ロワーダクト11およびアッパーダクト12は、互いに組み付けられる。
【0012】
図2を参照して、レゾネータ構造100は、吸気ダクト1、具体的には、吸気ダクト1の一区間と、レゾネータ2と、を備える。
【0013】
レゾネータ2は、吸気ダクト1の内部に収容される。具体的には、レゾネータ2は、ロワーダクト11およびアッパーダクト12の間の空間に配置される。レゾネータ2は、空気が外部から吸気ダクト1内に吸引されるときに発生する騒音を低減する。レゾネータ2は、本体21と、1つまたは複数の鍔22と、を含む。本実施形態では、レゾネータ2は、6つの鍔22を含む。
【0014】
本体21は、概ね円筒形状を有する。本体21は、本体21の中心軸線Xが、上方に向かって、具体的には、鉛直方向に対して平行に延在するように配置される。本開示において、本体21(レゾネータ2)の中心軸線Xを基準とした径方向および円周方向は、単に「径方向」および「円周方向」と称され得る。本体21は、複数の孔23を含む。孔23は、本体21を径方向に貫通する。
【0015】
複数の鍔22は、中心軸線Xに沿って配置される。鍔22は、概ね円環形状を有する。鍔22は、本体21の外面から吸気ダクト1の内面13に向かって、径方向外側に突出する。本実施形態では、鍔22は、水平方向に対して平行に突出する。
【0016】
図3は、アッパーダクト12が取り外された図1のレゾネータ構造100を示す斜視図である。各鍔22は、1つまたは複数の突起22aを含む。吸気ダクト1は、突起22aに対応する位置に切欠き11aを含む。突起22aは、切欠き11aに挿入される。レゾネータ2は、切欠き22aによって、吸気ダクト1の内部に位置決めされる。鍔22は、突起22a以外の位置においては、吸気ダクト1の内面13から離間している。
【0017】
図4は、中心軸線Xに沿って得られる図1のレゾネータ構造100の断面図である。図4では、より良い理解のために、中心軸線Xに対してレゾネータ構造100の片側のみが示され、2つの鍔22を含む範囲のみが示される。上記のように、鍔22は、突起22a(図4において不図示)以外の位置においては、吸気ダクト1の内面13から離間する。したがって、鍔22と内面13との間には、隙間gが形成される。
【0018】
吸気ダクト1には、揮発したエンジンオイルおよび燃料を含むオイルミストが、エンジンから逆流する場合がある。レゾネータ構造100では、吸気ダクト1の内面13および鍔22の少なくとも一方が、隙間gにオイルミストを集めるための表面性状Txを含む。
【0019】
本実施形態では、表面性状Txは、第1領域Ar1と、第2領域Ar2と、第3領域Ar3と、を含む。なお、図4では、より良い理解のために、第1領域Ar1、第2領域Ar2および第3領域Ar3は誇張されており、図4に描かれているものよりも薄くてもよい。また、図4では、より良い理解のために、第1領域Ar1および第3領域Ar3は、クロスハッチングで示される。
【0020】
第1領域Ar1は、内面13において、鍔22と径方向に対向する位置に形成される。例えば、第1領域Ar1は、円環形状を有してもよく、円周方向に連続していてもよい。代替的に、第1領域Ar1は、後述するように隙間gにオイルが十分に集められる限りにおいて、円周方向に断続的であってもよい。
【0021】
本実施形態では、レゾネータ2の延在方向、すなわち、中心軸線Xに平行な方向において、第1領域Ar1の幅d1は、鍔22の厚さd2と等しい。他の実施形態では、幅d1は、厚さd2より小さくてもよく、または、厚さd2よりも大きくてもよい。
【0022】
第2領域Ar2は、内面13において、第1領域Ar1の上方の領域および下方の領域に形成される。別の観点では、第2領域Ar2は、中心軸線Xに平行な方向において、鍔22の間に設けられてもよい。例えば、第2領域Ar2は、最も上方の鍔22の上方の領域には設けられてもよく、または、設けられなくてもよい。同様に、例えば、第2領域Ar2は、最も下方の鍔22の下方の領域には設けられてもよく、または、設けられなくてもよい。例えば、第2領域Ar2は、円筒形状を有してもよく、円周方向に連続してもよい。代替的に、第2領域Ar2は、隙間gにオイルが十分に集められる限りにおいて、円周方向に断続的であってもよい。
【0023】
第3領域Ar3は、鍔22において、第1領域Ar1と径方向に対向する位置、すなわち、鍔22の外周面に形成される。第1領域Ar1と第3領域Ar3との間に、隙間gが形成される。例えば、第3領域Ar3は、円環形状を有してもよく、円周方向に連続していてもよい。代替的に、第3領域Ar3は、隙間gにオイルが十分に集められる限りにおいて、円周方向に断続的であってもよい。本実施形態では、鉛直方向において、第3領域Ar3の幅d3は、鍔22の厚さd2と等しい。他の実施形態では、幅d3は、厚さd2より小さくてもよい。
【0024】
なお、表面性状Txは、第3領域Ar3を含まなくてもよい。
【0025】
第1領域Ar1および第2領域Ar2は、油滴に対する「接触角」および「転落角」の少なくとも一方が、互いに異なるように形成される。
【0026】
例えば、本実施形態では、第1領域Ar1および第2領域Ar2は、油滴に対する「転落角」が互いに異なるように形成される。具体的には、第1領域Ar1における転落角は、第2領域Ar2における転落角よりも大きい。
【0027】
「転落角」は「滑落角」とも称され、対象表面の液滴除去性を表す指標である。例えば、「転落角」は、以下の手順で測定されることができる。まず、一定量の油滴を、水平に設置された対象表面上に形成する。続いて、対象表面を徐々に傾ける。続いて、油滴が対象表面上を滑り始めるときの、水平方向と対象表面との間の角度を測定する。このようにして、転落角が測定される。すなわち、より大きな転落角を有する表面は、オイルを良く保持することができる。
【0028】
本実施形態では、上記のように、第1領域Ar1における転落角は、第2領域Ar2における転落角よりも大きい。したがって、第1領域Ar1は、第2領域Ar2に比べて、オイルを良く保持することができる。言い換えると、第2領域Ar2は、第1領域Ar1に比べて、オイルを保持することができない。このような構成によれば、第2領域Ar2に付着したオイルミストは、下方の第1領域に向かって、下向きに落下する。第1領域Ar1は、オイルを良く保持することができるので、第2領域Ar2から落下したオイルは、第1領域Ar1に保持される。第1領域Ar1は鍔22と対向するので、オイルは、鍔22と内面13との間の隙間gに集められる。したがって、隙間gは、集められたオイルによって塞がれる。このような構成によれば、隙間gのサイズによらずに、隙間gが塞がれた状態で意図した騒音低減性能が得られるように、レゾネータ構造100を設計することができる。よって、隙間gの公差を厳しく管理することなく、意図した騒音低減性能を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、第3領域Ar3は、油滴に対する転落角が、第1領域Ar1と同様であるように形成される。したがって、第3領域Ar3は、第1領域Ar1と同様に、オイルを良く保持することができる。このように、互いに対向する第1領域Ar1および第3領域Ar3がオイルを良く保持することができるので、より多くのオイルを隙間gに集めることができる。
【0030】
例えば、油滴に対してより大きな転落角を有する第1領域Ar1および第3領域Ar3は、数μm、十数μmまたは数十μmの凹凸を含む表面であることができる。このような表面は、例えば、ブラスト加工等の表面処理、または、コーティングによって形成されてもよい。代替的に、例えば、第1領域Ar1および第3領域Ar3の表面パターンが、吸気ダクト1およびレゾネータ2のプレス加工に使用される金型に付与されてもよい。例えば、第1領域Ar1および第3領域Ar3における転落角は、90度~180度であってもよい。
【0031】
例えば、油滴に対してより小さな転落角を有する第2領域Ar2は、第1領域Ar1および第3領域Ar3よりも小さな凹凸を含む表面であることができる。例えば、第2領域Ar2は、第1領域Ar1および第3領域Ar3を形成するための加工無しの表面であることができる。例えば、第2領域Ar2は、機械加工後またはプレス加工後の表面であることができる。例えば、第2領域Ar2における転落角は、0度~90度であってもよい。
【0032】
以上のようなレゾネータ構造100は、吸気ダクト1と、吸気ダクト1の内部に収容され、上方に延在するレゾネータ2と、を備える。レゾネータ2は、吸気ダクト1の内面13に向かって突出する鍔22を含む。内面13および鍔22の少なくとも一方は、内面13と鍔22との間の隙間gにオイルを集めるための表面性状Txを含む。このような構成によれば、隙間gは、表面性状Txによって集められるオイルによって塞がれる。したがって、隙間gのサイズによらずに、隙間gが塞がれた状態で意図した騒音低減性能が得られるように、レゾネータ構造100を設計することができる。よって、隙間gの厳しい公差の管理無しに、意図した騒音低減性能を得ることができる。
【0033】
また、レゾネータ構造100では、表面性状Txは、内面13において鍔22と対向するように形成される第1領域Ar1と、内面13において第1領域Ar1の上方の領域および下方の領域に形成され、かつ、油滴に対する転落角が、第1領域Ar1と異なるように形成される、第2領域Ar2と、を含む。具体的には、第1領域Ar1における転落角は、第2領域Ar2における転落角よりも大きい。このような構成によれば、吸気ダクト1の内面13に形成される第1領域Ar1および第2領域Ar2によって、内面13に付着するオイルを隙間gに集めることができる。
【0034】
また、レゾネータ構造100では、レゾネータ2の延在方向において、第1領域Ar1の幅d1は、鍔22の厚さd2と等しい。このような構成によれば、隙間gにわたって第1領域Ar1が形成されるので、隙間gを十分に塞ぐことができる。
【0035】
また、レゾネータ構造100では、表面性状Txは、鍔22において第1領域Ar1と対向するように形成され、かつ、転落角が、第1領域Ar1と同様であるように形成される、第3領域Ar3を含む。このような構成によれば、第1領域Ar1と対向する第3領域Ar3が、転落角において第1領域Ar1と同様に形成される。したがって、第1領域Ar1と第3領域Ar3との間の隙間gに、より多くのオイルを集めることができる。
【0036】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0037】
図5は、中心軸線Xに沿って得られる他の実施形態に係るレゾネータ構造100Aの断面図である。図4と同様に、図5では、より良い理解のために、中心軸線Xに対してレゾネータ構造100Aの片側のみが示され、2つの鍔22を含む範囲のみが示される。
【0038】
レゾネータ構造100Aは、鍔22の形状および表面性状Txの位置において、上記のレゾネータ構造100と異なる。その他の点については、レゾネータ構造100Aはレゾネータ構造100と同じであってもよい。
【0039】
本実施形態では、鍔22は、吸気ダクト1の内面13に近付くにつれて、下向き傾けられる。また、各鍔22は、中心軸線Xに対して放射状に配置される複数のリブ22bを含む。なお、図5では、各鍔22に対して、単一のリブ22bのみが示される。リブ22bは、鍔22の上面22cから上方に突出する。リブ22bは、鍔22と本体21との間の接続箇所から径方向外側に延在する。リブ22bは、鍔22の外周縁から離間するように形成される。
【0040】
図6は、中心軸線Xに垂直な図5のレゾネータ構造100Aの断面図であり、鍔22を上方から見る。本実施形態では、表面性状Txは、第4領域Ar4と、第5領域Ar5と、を含む。図5,6では、より良い理解のために、第4領域Ar4は、クロスハッチングで示される。
【0041】
第4領域Ar4は、鍔22の上面22cにおいて、複数のリブ22bの間の領域に設けられる。すなわち、第4領域Ar4は、複数の扇状の部分を含む。第4領域Ar4は、鍔22の外周縁から離間するように形成される。図5を参照して、第4領域Ar4は、リブ22bの側面にも形成される。
【0042】
図6を参照して、第5領域Ar5は、鍔22の上面22cにおいて、第4領域Ar4以外の領域に形成される。具体的には、第5領域Ar5は、リブ22bの上面に形成される。また、第5領域Ar5は、径方向において、第4領域Ar4と鍔22の外周縁との間の円環形状の領域に設けられる。
【0043】
第4領域Ar4および第5領域Ar5は、油滴に対する「接触角」が互いに異なるように形成される。具体的には、第4領域Ar4における接触角(第1の接触角)は、第5領域Ar5における接触角(第2の接触角)よりも大きい。すなわち、第4領域Ar4は、撥油性を有し、第5領域Ar5は、親油性を有する。
【0044】
「接触角」は、対象表面の親油性および撥油性を表す指標である。接触角が大きいほど、撥油性が高く、親油性が低い。例えば、「接触角」は、JIS等の規格で定められる方法によって測定されてもよい。例えば、「接触角(静的接触角)」は、以下の手順で測定されることができる。まず、一定量の油滴を、水平に設置された対象表面上に形成する。続いて、対象表面と、油滴の外表面の最下点における接線との間に形成される角度を、例えばカメラまたは顕微鏡等の測定装置によって測定する。このようにして、接触角が測定される。
【0045】
また、図5を参照して、表面性状Txは、第6領域Ar6を含む。第6領域Ar6は、鍔22の下面22dの全域に設けられる。第6領域Ar6は、油滴に対して、第1の接触角よりも小さい第3の接触角を有する。本実施形態では、第6領域Ar6の第3の接触角は、第5領域Ar5の第2の接触角と同じである。すなわち、第6領域Ar6は、親油性を有する。
【0046】
図6を参照して、レゾネータ構造100Aでは、リブ22bの上面の第5領域Ar5に付着したオイルの一部は、リブ22bの間の第4領域Ar4に向かって流れ落ちる。また、リブ22bの上面の第5領域Ar5に付着したオイルの残りは、傾けられた鍔22による重力によって、円環形状の第5領域Ar5に向かって流れ落ちる。第4領域Ar4に付着したオイルは、撥油性を有する第4領域Ar4によってはじかれて、傾けられた鍔22による重力によって円環形状の第5領域Ar5に向かって流れ落ちる。したがって、鍔22の上面22cに付着したオイルは、鍔22の外周縁上の円環形状の第5領域Ar5に集められる。隙間gは、集められたオイルによって塞がれる。このような構成によれば、隙間gが塞がれた状態で意図した騒音低減性能が得られるように、レゾネータ構造100Aを設計することができる。なお、第4領域Ar4および第5領域Ar5のパターンは、図5,6に示されるものに限定されず、隙間gにオイルが十分に集められる限りにおいて、他のパターンが使用されてもよい。
【0047】
また、図5を参照して、本実施形態では、鍔22の下面22dの第6領域Ar6は、親油性を有する。したがって、第6領域Ar6に付着したオイルは、落下せずに、第6領域Ar6に沿って鍔22の外周縁まで流れ落ちる。よって、より多くのオイルを隙間gに集めることができる。
【0048】
撥油性を有する第4領域Ar4は、例えば、ブラスト加工等の表面処理、または、コーティングによって形成されてもよい。また、例えば、第4領域Ar4の表面パターンが、レゾネータ2のプレス加工に使用される金型に付与されてもよい。例えば、第4領域における第1の接触角は、150度~180度であってもよい。
【0049】
親油性を有する第5領域Ar5および第6領域Ar6は、例えば、撥油性を付与するための加工無しの表面であることができる。例えば、第5領域Ar5および第6領域Ar6は、機械加工後またはプレス加工後の表面であることができる。例えば、第5領域Ar5における第2の接触角および第6領域Ar6における第3の接触角は、0度~5度であってもよい。
【0050】
このようなレゾネータ構造100Aでは、上記のレゾネータ構造100と同様に、隙間gは、表面性状Txによって集められるオイルによって塞がれる。したがって、隙間gのサイズによらずに、隙間gが塞がれた状態で意図した騒音低減性能が得られるように、レゾネータ構造100Aを設計することができる。よって、隙間gの厳しい公差の管理無しに、意図した騒音低減性能を得ることができる。
【0051】
また、レゾネータ構造100Aでは、表面性状Txは、鍔22の上面22cに形成され、油滴に対して第1の接触角を有する、第4領域Ar4と、鍔22の上面22cに形成され、油滴に対して第1の接触角よりも小さい第2の接触角を有する、第5領域Ar5と、を含む。このような構成によれば、鍔22の上面22cに付着するオイルを、上面22cに形成される第4領域Ar4および第5領域Ar5によって、隙間gに集めることができる。
【0052】
また、レゾネータ構造100Aでは、表面性状Txは、鍔22の下面22dに形成され、油滴に対して第1の接触角よりも小さい第3の接触角を有する、第6領域を含む。このような構成によれば、鍔22の下面22dに付着するオイルを、下面22dに形成される第6領域Ar6によって、隙間gに集めることができる。
【0053】
また、レゾネータ構造100Aでは、第5領域Ar5は、鍔22の上面22cの外周縁を含む。このような構成によれば、隙間gに近い鍔22の外周縁に、親油性を有する第5領域Ar5が形成される。したがって、隙間gの近くにオイルを保持することができる。
【0054】
また、レゾネータ構造100Aでは、鍔22は、内面13に近付くにつれて下向き傾けられる。したがって、鍔22の傾きによる重力によって、オイルを隙間gに容易に集めることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、図4を参照して、レゾネータ構造100では、第1領域Ar1および第2領域Ar2は、油滴に対する「転落角」が互いに異なるように形成される。他の実施形態では、第1領域Ar1および第2領域Ar2は、油滴に対する「接触角」が互いに異なるように形成されてもよい。
【0057】
例えば、第1領域Ar1における接触角は、第2領域Ar2における接触角よりも大きくてもよい。言い換えると、第1領域Ar1は、撥油性を有してもよく、第2領域Ar2は、親油性を有してもよい。
【0058】
この場合、第2領域Ar2に付着したオイルミストは、下方の第1領域に向かって下向きに流れ落ちる。第1領域Ar1は撥油性を有するので、オイルは、第1領域Ar1に溜まる。第1領域Ar1は鍔22と対向するので、隙間gは、溜まったオイルによって塞がれる。
【0059】
この場合、第3領域Ar3は、油滴に対する接触角が、第1領域Ar1と同様であるように形成されてもよい。すなわち、第3領域Ar3は、第1領域Ar1と同様に、撥油性を有してもよい。このような構成によれば、対向する第1領域Ar1および第3領域Ar3の双方にオイルが溜まるので、より多くのオイルを隙間gに集めることができる。
【0060】
さらに他の実施形態では、第1領域Ar1における接触角は、第2領域Ar2における接触角よりも小さくてもよい。言い換えると、第1領域Ar1は、親油性を有してもよく、第2領域Ar2は、撥油性を有してもよい。
【0061】
この場合、第1領域Ar1に一度集められたオイルは、撥油性を有する下方の第2領域Ar2によってはじかれる。したがって、オイルは、第1領域Ar1に保持される。第1領域Ar1は鍔22と対向するので、隙間gは、保持されたオイルによって塞がれる。
【0062】
この場合、第3領域Ar3は、第1領域Ar1と異なってもよく、撥油性を有してもよい。このような構成によれば、撥油性を有する第3領域Ar3にはオイルが溜まるので、隙間gを塞ぐのに十分な量のオイルを内面13と鍔22との間に確保することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 吸気ダクト
2 レゾネータ
13 吸気ダクトの内面
22 鍔
22c 鍔の上面
22d 鍔の下面
100 レゾネータ構造
100A レゾネータ構造
Ar1 第1領域
Ar2 第2領域
Ar3 第3領域
Ar4 第4領域
Ar5 第5領域
Ar6 第6領域
d1 第1領域の幅
d2 鍔の厚さ
g 隙間
Tx 表面性状
図1
図2
図3
図4
図5
図6