(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032450
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】契約書作成システム、契約書作成サーバープログラム及び契約書作成装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20240305BHJP
【FI】
G06Q50/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136112
(22)【出願日】2022-08-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 令和4年3月24日にウェブサイトにて公開 (2) 令和4年3月25日にウェブサイトにて公開 (3) 令和4年3月24日にWebサービスの提供開始
(71)【出願人】
【識別番号】520073519
【氏名又は名称】株式会社ソレクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン アレン
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC32
(57)【要約】
【課題】
法的な裏付けがあり、安全な契約締結を可能とする契約書作成システム等を提供することを目的とする。
【解決手段】
情報処理装置と組み合わされることによって契約書を作成するシステムを構成する契約書作成サーバーであって、ユーザープロファイル記憶手段と契約書面レンダリング手段を少なくとも備える契約書作成サーバーのコンピュータに、情報処理装置において初期設定された情報を受信するステップと、受信された初期設定情報に基づいて編集前の契約書条項の情報を送信するステップと、情報処理装置において入力された情報を受信するステップと、受信された入力情報に基づいて契約書面をレンダリング出力するステップを実行させることを特徴とする契約書作成サーバープログラムにおいて、初期設定される情報には、少なくとも、契約書タイプが含まれており、編集前の契約書条項の少なくとも一部は、法律監修がされていることにより、課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
請負契約又は準委任契約を選択して、業務委託契約に係る契約書を作成する契約書作成システムであって、
情報処理装置と、契約書作成サーバーを備え、
情報処理装置は、
請負契約又は準委任契約を選択するための契約書タイプ選択手段と、
管轄裁判所を選択するための管轄裁判所選択手段と、
契約書条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力、を可能とする修正操作手段と、
を少なくとも有し、
契約書作成サーバーは、ユーザープロファイル記憶手段と、
契約書条項が分類付けされて記憶される契約書条項記憶手段と、
契約書面レンダリング手段と、
を少なくとも有し、
契約書作成サーバーの契約書条項記憶手段から抽出される契約条項を、情報処理装置の修正操作手段により編集して契約書を作成する契約書作成システムにおいて、
契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれ、かつ、それぞれの分類は重複されて分類付けされることが許容されており、
第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、
第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、
第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものである
ことを特徴とする契約書作成システム。
【請求項2】
第一分類の契約条項は、自責文書となる旨の警告画面を表示させて、承認した後であれば、修正が可能となる
ことを特徴とする請求項1に記載の契約書作成システム。
【請求項3】
第二分類の契約条項は、追加可能又は置換可能な選択肢について法律監修がされている
ことを特徴とする請求項2に記載の契約書作成システム。
【請求項4】
第三分類の契約条項のフィールドに入力を行う際には、フィールドに入力されるべき情報の説明及び/又は商慣行上の通例の基準が表示される
ことを特徴とする請求項3に記載の契約書作成システム。
【請求項5】
情報処理装置と組み合わされることによって契約書を作成するシステムを構成する契約書作成サーバーであって、ユーザープロファイル記憶手段と契約書面レンダリング手段を少なくとも備える契約書作成サーバーのコンピュータに、
情報処理装置において初期設定された情報を受信するステップと、
受信された初期設定情報に基づいて編集前の契約書条項の情報を送信するステップと、
情報処理装置において入力された情報を受信するステップと、
受信された入力情報に基づいて契約書面をレンダリング出力するステップ
を実行させることを特徴とする契約書作成サーバープログラムであって、
初期設定される情報には、少なくとも、契約書タイプが含まれており、
編集前の契約書条項の少なくとも一部は、法律監修がされている
ことを特徴とする契約書作成サーバープログラム。
【請求項6】
契約書作成サーバーは、さらに、契約書条項記憶手段を備えるものであって、
契約書条項記憶手段には、契約書条項が分類付けされて記憶されており、
契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれ、かつ、それぞれの分類は重複されて分類付けされることが許容されており、
第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、
第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、
第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものである
ことを特徴とする請求項5に記載の契約書作成サーバープログラム。
【請求項7】
請負契約又は準委任契約を選択して、業務委託契約に係る契約書を作成する契約書作成装置であって、
請負契約又は準委任契約を選択するための契約書タイプ選択手段と、
管轄裁判所を選択するための管轄裁判所選択手段と、
契約書条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力、を可能とする修正操作手段と、
ユーザープロファイル記憶手段と、
契約書条項が分類付けされて記憶される契約書条項記憶手段と、
契約書面レンダリング手段と、
を少なくとも有し、
契約書条項記憶手段から抽出される契約条項を、修正操作手段により編集して契約書を作成し、
契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれ、かつ、それぞれの分類は重複されて分類付けされることが許容されており、
第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、
第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、
第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものである
ことを特徴とする契約書作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等のネットワークを利用した契約書作成システム、契約書作成サーバープログラム及び契約書作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2018年の副業解禁以降、専門スキルを持つ外部人材を活用する企業が増え、広義のフリーランス人口は、2021年には600万人増加したとも言われる。一方で、4割近くのフリーランスが取引先とのトラブルを経験しているとの報告もある。その原因の多くが適正な契約が締結されていないことに起因する。中には、契約書と呼べるような書類が全く存在しないケースもある。このようなことから、企業側も外部人材の活用効果を実感する一方、煩雑な契約業務が足枷となり、フリーランス採用に二の足を踏んでいることも少なくない。
ところで、契約については、近年、電子契約の有効性が注目されている。すなわち、令和2年5月12日、政府の規制改革推進会議は、立会人型のクラウド上での電子契約は、電子署名法第3条に規定される「真正に成立したものと推定する」という署名鍵を署名者全員が購入するローカル署名型の電子署名と同等の推定効は働きえないとの見解を示していたものの、一転して、令和2年9月4日、総務省・法務省・経済産業省は、三省連名で、「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A」を公表し、立会人型(事業者署名型)であっても、一定の条件を満たす場合には、電子署名法第3条の推定効が及び得るとの政府見解を示した。これによって、署名鍵をサービス提供事業者が提供するクラウド型の電子署名について、「当事者間の合意の下で真正に成立したものと推定される」法的根拠が事実上、保証されたことになる。
しかしながら、署名の真正性が確保されれば全ての問題が解決するという訳ではない。一般的な契約書作成支援ツールで作成された文書自体の法的な裏付け、例えば、公序良俗違反、強行法規違反、その他の契約無効となるような内容を含んでいないか等については、何ら保証の限りではないからである。例えば、個人が、ネット検索で適当にダウンロードした契約書の雛形を使って編集した上で、クラウド上にアップし、サービス提供事業者が当該個人の指示を受けて電子署名を行いつつ、取引先に契約書を送信した場合に、悪意のある取引先が契約無効ともなり得るような内容を含んでいることを認識した場合であっても、自己に有利な内容であると取引先が思えば、確信犯的に契約を締結してしまうかもしれない。つまり、契約書自体の法的な裏付けが何もない状態であるにも関わらず、契約が結ばれてしまう虞がある。無効になるような契約ならば、裁判で争えば良いという問題ではない。フリーランスと企業の力関係についてみれば、説明する迄も無いことであろう。
このような中、データベースに契約書作成のための雛形及びその改訂履歴を蓄積して、新規契約書作成のために、後に議論となる可能性のあるポイントについての目安を与えるようにした契約書作成支援システムがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の契約書作成支援システムは、言うなれば、経験則に基づいて、問題となる箇所を類推するだけのものであり、法的な裏付けが無いことに関しては、ネット検索でダウンロードした契約書の雛形から適当に加工して作成した契約書と大差ない。契約書作成の根本的な問題は、「個々の具体的なビジネスに寄り添った契約書」を法的に適合させた上で、如何に作成できるかという点に存する。この課題を解決できている企業は、実は、日本のリーガルテック分野において殆ど存在せず、法務担当がいるような大企業であっても、書類作成にかかる時間がボトルネックとなり、新規の雇用や業務委託契約までに1か月以上かかるということも珍しくない。弁護士等を活用することで一定程度の解決が見られるものの、資金も時間もないスタートアップ企業や個人事業主にあっては、弁護士を雇うことは不可能に近い。その結果、ネット上で契約書のテンプレートを検索し個人でカスタマイズするフリーランスに対して、企業側もそれを殆どチェックしないままで、契約を締結した結果、法的に効果のない危険な契約となってしまうことすらある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、確たる法的な裏付けがあり、安全な契約締結を可能とする契約書作成システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請負契約又は準委任契約を選択して、業務委託契約に係る契約書を作成する契約書作成システムであって、情報処理装置と、契約書作成サーバーを備え、情報処理装置は、請負契約又は準委任契約を選択するための契約書タイプ選択手段と、管轄裁判所を選択するための管轄裁判所選択手段と、契約書条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力、を可能とする修正操作手段と、を少なくとも有し、契約書作成サーバーは、ユーザープロファイル記憶手段と、契約書条項が分類付けされて記憶される契約書条項記憶手段と、契約書面レンダリング手段と、を少なくとも有し、契約書作成サーバーの契約書条項記憶手段から抽出される契約条項を、情報処理装置の修正操作手段により編集して契約書を作成する契約書作成システムにおいて、契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれ、かつ、それぞれの分類は重複されて分類付けされることが許容されており、第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものであることを特徴とする契約書作成システムにより、課題を解決した。
また、本発明は、情報処理装置と組み合わされることによって契約書を作成するシステムを構成する契約書作成サーバーであって、ユーザープロファイル記憶手段と契約書面レンダリング手段を少なくとも備える契約書作成サーバーのコンピュータに、情報処理装置において初期設定された情報を受信するステップと、受信された初期設定情報に基づいて編集前の契約書条項の情報を送信するステップと、情報処理装置において入力された情報を受信するステップと、受信された入力情報に基づいて契約書面をレンダリング出力するステップを実行させることを特徴とする契約書作成サーバープログラムであって、初期設定される情報には、少なくとも、契約書タイプが含まれており、編集前の契約書条項の少なくとも一部は、法律監修がされていることを特徴とする契約書作成サーバープログラムにより、課題を解決した。
また、本発明は、請負契約又は準委任契約を選択して、業務委託契約に係る契約書を作成する契約書作成装置であって、請負契約又は準委任契約を選択するための契約書タイプ選択手段と、管轄裁判所を選択するための管轄裁判所選択手段と、契約書条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力、を可能とする修正操作手段と、ユーザープロファイル記憶手段と、契約書条項が分類付けされて記憶される契約書条項記憶手段と、契約書面レンダリング手段と、を少なくとも有し、契約書条項記憶手段から抽出される契約条項を、修正操作手段により編集して契約書を作成し、契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれ、かつ、それぞれの分類は重複されて分類付けされることが許容されており、第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものであることを特徴とする契約書作成装置により、課題を解決した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る契約書作成システムのシステム構成兼機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る契約書作成システムにおける契約書作成処理を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る契約書作成システムにおける契約書編集のサブルーチン処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る契約書作成システムのシステム構成図兼機能ブロック図である。情報処理装置1(汎用PC)と契約書作成サーバー2とがネットワークで接続されたシステム構成となっている。情報処理装置1や契約書作成サーバー2内のハードウェア構成は、CPU、CPUとバス接続されたメモリ(ROM及びRAM)、ストレージデバイス、表示手段、通信手段、操作入力手段といった汎用PCやサーバーが通常に備えるシステム構成にすぎないため、ここでは図示を省略し、機能ブロック図として示している。
【0010】
(システム全体の構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る契約書作成システムは、情報処理装置1、契約書作成サーバー2から構成され、情報処理装置1と契約書作成サーバー2とは携帯電話通信網及び/又はインターネット通信網で接続されている。契約書作成サーバー2は、作成された契約書を蓄積するクラウドストレージ(不図示)ともインターネット通信網で接続されている。なお、作成された契約書を蓄積記憶する領域を契約書作成サーバー2内に設けるようにしてもよい。
【0011】
情報処理装置1は、
図1に示される例としてはパーソナルコンピュータ(汎用PC)が想定されているが、スマートフォン、タブレット端末等の携帯通信端末であってもよいし、情報処理装置1はサーバーに接続される複数の端末と位置付けられるところ、汎用PCとスマートフォン等が併用される態様であっても良い。
【0012】
契約書作成サーバー2は、情報処理装置1やクラウドストレージ(不図示)から必要な情報を受け取り、契約書作成及び編集処理等を行うと共に、情報処理装置1に必要な情報を送信し、情報処理装置1の表示装置に契約書編集画面や、作成完了契約書のPDFファイルを表示させるための事前処理を行うためのものである。
【0013】
(情報処理装置の構成)
情報処理装置1は、
図1において機能ブロックとして示されるように、契約書タイプ選択手段11、管轄裁判所選択手段12、契約書編集画面表示手段13、契約書表示手段14、修正操作手段15、警告画面表示手段16、商慣行表示手段17、電子署名手段18から構成される。なお、ここで、各表示手段と記載しているものは、それぞれの表示制御を実行する表示制御手段を意味するのであって、ディスプレイ等のハードウェア構成を意味するものではない。
【0014】
契約書タイプ選択手段11は、委託者が指定した物を受託者が完成させることを約束する契約である請負契約と、委託者に依頼した行為を受託者が行うことを約束する契約である準委任契約の別を選択する手段である。契約書タイプの選択を行うに際しては、それぞれの契約の性質を示す説明を表示させる機能も併せて有するものである。なお、この契約書タイプの選択は、後記する契約書編集処理に移行した後の段階では、契約書の内容にエラーが生じるリスクを排除するためにできないようにされている。実際の委任契約業務の場面においても、請負と準委任の混在する書面が存在し、これが問題となることが時折見られるところ、そのようなリスクを完全に排除することが意図されている。
管轄裁判所選択手段12は、不幸にも契約について契約者間で争いが起こってしまったときに、第一審となる裁判所を取り決めておくために、管轄となる裁判所を選択する手段である。
本実施形態は、契約期間の入力を行う手段(不図示)も有しており、契約書タイプ、管轄裁判所、契約期間の設定が完了した後に、契約書作成及び編集の作業に移行するように構成されている。
【0015】
契約書編集画面表示手段13は、契約書作成サーバー2から受信した情報を基に、契約書を作成するための編集画面を描画して表示するものであり、契約書の文面と、各種設定や編集を行うためのプルダウンメニューやテキストボックス等の操作子の表示も実行するものである。なお、本発明の実施形態に係る契約書作成システムが提供する契約書の文面の殆どは、弁護士や法学者といった法律家が監修し、十分にチェックされた文面となっており、後記する自責文書となることを了承した上で編集作成した契約書でなければ、十分な法的裏付けのある契約書が作成完了するように構成されている。
契約書表示手段14は、作成が完了した契約書をブラウザ上で確認するために表示するものであり、操作者は、この画面を確認した後、契約書のPDFデータをダウンロードし、プリントアウトして、紙ベースでの契約書を作成することができる。
【0016】
修正操作手段15は、汎用PCのキーボードやマウス、タブレット等のタッチパネル等の入力手段からの情報を基に、編集中の契約書に必要な修正を行うものである。この修正には、後記するように、契約条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力といった範疇が存在する。契約条項自体の追加や、一の契約書中での法律事項の追加や置換については、トグルボタンの操作により行われる。数値や文字の入力は、プルダウンメニューやテキストボックスを利用して行われる。
【0017】
警告画面表示手段16は、原則として、修正が想定されていない契約条項を編集しようとする際に、契約書作成システム提供者の免責、つまり、操作者の自責文書となることを確認させて、編集を許可する旨を表示するものである。当該表示と共に、確認の意思を尋ねるチェックボックスの表示も行う。
【0018】
本発明の実施形態に係る契約書作成システムは、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有している。そうしたところ、商慣行表示手段17は、当該フィールドに入力を行う際に、商慣行上の通例の基準を表示し、操作者が入力する上での目安を与えることができるように構成されている。
【0019】
電子署名手段18は、操作者の指示によりサービス提供事業者が実行する電子署名を有効とする手段である。署名と署名に必要な暗号鍵をサーバーに保管し、全ての手続きをクラウド上で行うものであり、本人確認等はメールアドレスや二段階認証を活用して行われる。冒頭でも述べたように、近年注目されている既知の技術手段であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
(契約書作成サーバーの構成)
契約書作成サーバー2は、
図1において機能ブロックとして示されるように、ユーザープロファイルDB21、契約条項DB22、契約書面DB23、書面レンダリング手段24から構成される。ここで、説明のため、契約書面DB23も契約書作成サーバー2内に配置されているように描かれているが、図示されないクラウドストレージに記憶領域を確保するようにしてもよい。
【0021】
ユーザープロファイルDB21には、本発明の実施形態に係る契約書作成システムに登録されているフリーランス、副業ワーカー、企業の氏名、ビジネスネーム、ビジネス上の住所、職種、能力、保有資格等の情報が記憶されている。本発明の実施形態に係る契約書作成システムは、契約書作成サービス以外に、図示は省略するが、フリーランスと企業とのマッチアップを支援するサービスも提供しており、本システムに事前に登録したフリーランスや企業の登録情報が蓄積記憶されるようになっている。また、契約書作成システムは、事前登録をしなければ利用できないように構成されている。
【0022】
契約条項DB22は、請負契約及び準委任契約に関して取り決めるべき条項が格納されている。具体的には、基本的な条項として、契約の性質、契約期間、解約条件、委託料、成果物の対価、再委託、知的財産権の帰属、秘密保持義務、解除、存続条項、準拠法及び管轄裁判所、協議事項等の条項があり、オプションとして追加できる条項として、延滞料金、危険の負担、契約不適合責任、費用負担、実績掲載許可、不可抗力等の条項がある。これら基本的な条項及びオプションの条項は、いずれも、弁護士等の法律家が監修し、十分にチェックされた文面から構成されている。 また、契約条項DB22には、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換が可能な条項も蓄積されている。例えば、準委任契約における契約期間については、自動更新との法律事項を追加できるようにされているし、再委託については、デフォルトとして再委託許可であるのに対して、再委託許可禁止との法律事項に置換できるようにされている。これら追加や置換される法律事項についても、弁護士等の法律家が監修し、十分なチェックがされている。
さらに、契約条項DB22には、一の契約書条項中での数値及び文字入力が許容ないし設定要求される条項も蓄積されている。ここで入力される数値や文字は、特段、法律家のチェックを要しない事項であるが、操作者が確定入力する場合に、どのような数値や文字を入力して良いか迷うことの無いように、商慣行上の基準、相場を、入力フォーム等と併せて表示できるように、説明文書も記憶されている。
本明細書においては、これらの条項についての三つの性質の違いを、説明した順に、第一分類、第二分類及び第三分類と呼ぶ。ただし、これらの分類は、完全に排他的な分類ではなく、重複して分類付けされることが許容されている。例えば、第二分類であって、第三分類でもある条項、すなわち、法律事項の追加及び/又は置換が可能であると共に、数値又は文字が入力可能な条項というものは存在する。第一分類についても例外ではない。
【0023】
契約書面DB23は、作成途中及び/又は作成済みの契約書データを保存しておくものである。操作者は、途中の段階まで行った契約書作成を当該段階から再開したり、過去に作成した契約書の内容を利用して、新規契約書を作成したりすることができる。契約条項DB22に蓄積保存されるデータも、見直し等で増加することはあったとしても、増加率は一定程度に止まるものであるため、大規模ストレージ等は必要ない。DBといっても特別な構成のものではなく、サーバー内の普通の記憶領域を一部確保したにすぎないものである。それに対して、契約書面DB23に保存されるデータは登録者数が激増した場合などに、蓄積データ量が一挙に増えることになるため、クラウドストレージ(不図示)に格納領域を設けておくことが望ましい。
【0024】
書面レンダリング手段24は、情報処理装置1において、契約書編集を行うための画面表示を行うために必要な情報や、プリントアウト用の作成完了済み契約書の画面表示を行うために必要な情報を生成するためのものである。
【0025】
(契約書作成処理のメインルーチン)
本発明の実施形態に係る契約書作成システムにおける契約書作成処理のメインルーチンについて説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る契約書作成システムにおいて、情報処理装置1及び契約書作成サーバー2により実行される処理のメインルーチンを示すフローチャートである。ここで、ステップS101~ステップS108までの処理は、契約書編集を行うエディター画面を生成するための事前処理である。
ステップS101において、契約書名の入力を促す画面が表示される。例えば、「契約書に名前をつけましょう。こえは契約書のタイトルとしても使用されます。」といったメッセージが表示され、これを受け、操作者のテキストボックスへの入力により、契約書名が入力確定される。
【0026】
ステップS102からの処理は、当事者選定のための一連の処理である。この処理によって、フリーランス又は副業ワーカーである受託者の氏名と、通常は企業である委託者の氏名とが確定される。自身の氏名等は、デフォルト表示される。例えば、契約書を作成している者がフリーランスであれば、事前に登録されているフリーランスの氏名又はビジネスネームが抽出されて、受託者の欄にデフォルトで表示される。契約書の作成者が企業である場合には、委託者の氏名等がデフォルト表示されることになるが、このまま、契約書作成者がフリーランスである受託者であるものとして、ここでの説明を続ける。
【0027】
委託者の欄には、ステップS103において、プルダウンメニューにカーソルを当てると、契約書作成サーバー2のユーザープロファイルDB21に照会するべく、情報処理装置1は、照会要求信号を契約書作成サーバー2に向けて送出する。
契約書作成サーバー2は、ステップS201において、ユーザープロファイルDB21を検索して、契約書を作成しているフリーランスに対する企業が登録されているのであれば、リクエストに対する応答として、企業情報を返信する。これを受けた情報処理装置1は、プルダウンメニューに候補を表示できるようになる。
次いで、ステップS105において、契約書作成者は、候補を選択する。ステップS103において、候補がないのであれば、ステップS104で新規企業についての設定を行う。具体的には、新規取引先の登録を行った上で、これを選択する。この情報は、契約書作成サーバー2にも伝えられ(図における矢印等は不図示)、ユーザープロファイルDB21に蓄積保存される。
【0028】
ステップS106において、契約書のタイプが選択される。具体的には、委任形態として、準委任か請負のどちらかを選択させるためのラジオボタンが表示される。併せて、それぞれの委任形態の性質や適した職種について説明する表示がされる。準委任については、例えば、「準委任は成果物に関わらず委託を受けた業務を行った分だけ報酬を得る契約です。SNSの運用やコンサルティングなどの業務ではこの契約が結ばれます。」といった説明が、請負については、例えば、「請負は成果物を完成させないと報酬をもらえない契約です。発注者から指定された成果物を納品する場合は請負の契約を、それ以外は準委任の契約を締結するのが良いでしょう。LPや記事の製作、ロゴ、アプリの開発などで結ばれることが多い契約です。」といった説明が、それぞれ付される。
【0029】
ステップS107では、契約の開始日と終了日について、カレンダー表示における選択ボタンによって設定処理がなされる。併せて、ワンポイントアドバイスとして、「契約期間の変更が必要になった場合は、双方合意の上で変更しましょう。」とのメッセージが表示される。
【0030】
ステップS108では、管轄裁判所について、地方裁判所と簡易裁判所をプルダウンメニューから選択する処理が実行される。併せて、ワンポイントアドバイスとして、「すぐに通うことができる裁判所を選択するのが良いでしょう。」とのメッセージが表示される。
【0031】
契約書名、当事者、契約書タイプ、契約期間、管轄裁判所の設定入力が終了すると、設定入力された項目情報が契約書作成サーバー2に送信される。
契約書作成サーバー2は、ステップS202おいて、受信した項目情報に応じた必要最低限の契約条項や関連情報を契約条項DB22から抽出し、エディター画面を表示するための情報を生成する。この情報は、契約条項自体の文字情報と、それに付随する情報(例えば、一の契約書条項中にて追加や置換される法律事項の文字情報)とから成る。
具体的に、例えば、請負契約であれば、請負契約に適した規定振りの条項が、準委任契約であれば、準委任契約に適した規定振りの条項が、それぞれ抽出され、それぞれの契約に応じた条項のみで契約書の初期ドラフトの情報が生成されることになる。これまでは、契約書を作成する者が、適宜に入手した契約書雛形を複数用意し、自身が思ったままに、それを継ぎ接ぎして、契約書の形とするということが非常に多かった。その結果、請負契約についての規定振りと準委任契約についての規定振りとが混在する書面が出来てしまうことになる。法的には、問題を抱える文書であるにも関わらず、フリーランス側は勿論のこと、企業側でも、これを十分にチェックする能力も時間もなく、瑕疵のある契約が締結される原因となっていた。本発明の実施形態に係る契約書作成システムにおいては、このような事態が生じないように、事前処理において、契約書タイプが選択されるのである。
【0032】
生成されたエディター画面を表示するための情報が、契約書作成サーバー2から情報処理装置1へ伝えられると、情報処理装置1は、ステップS109において、後記する契約書編集のためのサブルーチン処理を実行する。契約書編集が完了した後は、紙媒体ベースでの契約を行うか、電子契約を行うかに応じて、契約書作成者が、PDF出力要求(ステップS110)若しくは電子署名作成要求(ステップS113)を行う。
PDF出力要求は、契約書作成サーバー2に伝えられ、契約書作成サーバー2は、PDF作成のための情報を生成し、情報処理装置1へ返信する。情報処理装置1では、ブラウザ上でPDFの表示がされ(ステップS111)、その後、PDFファイルをダウンロードし(ステップS112)、必要に応じて印刷出力して、処理を終える。
電子署名作成要求の後には、情報処理装置1と契約書作成サーバー2との協働により、有効な電子署名作成のための処理工程へ進むが、本発明の本旨ではないため、説明は割愛する。
【0033】
(契約書編集処理のサブルーチン)
後記するとした契約書編集のためのサブルーチン処理について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る契約書作成システムの情報処理装置1において、主として契約書作成者の判断及び操作入力を介して実行される契約書編集処理を示すフローチャートである。
契約書編集処理は、ステップS301からステップS318までの処理が、必要とされる全ての契約条項について検討し終え、確定処理(不図示)がされるまで、繰り返し実行される。
【0034】
ステップS302~ステップS304で実行される処理は、第三分類に属する条項(法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有する条項)についての処理である。ステップS302では、条項中に設定入力すべき数値や文字情報が未入力であるかの判断処理が行われ、未入力があれば、ステップS303において、「設定してください」といった設定を促す表示や設定ボタンの表示が行われる。設定のボタンを操作すると、文字を入力するテキストボックスや、数値を入力できるプルダウンメニュー(勿論、テキストボックスを兼ね備えていてもよい)が表示される。例えば、委託業務の条項であれば、成果物の内容の文字入力が求められ、請求書の発行期限の条項であれば、請求書発行期限の数値入力が求められる。その際、適宜、ワンポイントアドバイスが表示される。例えば、「この契約期間中にフリーランス・副業の方(受託者)が納品する成果物の内容を記入してください。」との説明や、「成果物の検収完了後、受託者がいつまでに請求書を発行する必要があるか設定してください。」との説明が表示される。また、単なる説明ではなく、例えば、違反の対処期間であれば、「一般的には5~10営業日とされることが多いです。設定に迷っている場合は、専門家に相談するか、デフォルトの数値のままにしておくのが良いでしょう。」といった商慣行上の通例の基準や相場を表示するようにしても良い。
ステップS304において、契約書作成者がテキストボックスやプルダウンメニューを操作することによって、必要な数字や文字の設定入力が行われる。
【0035】
ステップS305~ステップS307で実行される処理は、第二分類に属する条項(法律監修がされているものの、追加可能な文面等を提示可能な条項)についての処理である。第二分類に属する条項とは、換言すれば、条項の本文は、弁護士等の法律家が監修し、十分なチェックがされており、かつ、追加される但し書き等の文面についても、弁護士等の法律家が監修し、十分なチェックがされている条項ということになる。
ステップS305では、条項中に、但し書きといった追加すべき文面があるか否かの判断処理が行われ、追加すべき文面があれば、ステップS306において、追加すべき文面や項目についての説明が表示され、ステップS307において、契約書作成者の操作により、文面の追加が行われ、必要に応じて数値を入力できるプルダウンメニュー(テキストボックスを兼ね備えていてもよい)が表示される。
準委任契約における契約期間の条項であれば、自動更新についての但し書きを追加することが可能であり、例えば、「ただし、契約期間終了前の(設定1)前までに、委託者・受託者いずれも相手方に対して何ら連絡を行わないときは、本契約は同条件でさらに(設定2)継続されるものとし、以後も同様とされる。」との文面を追加することができる。ここで、「(設定1)」や「(設定2)」には、プルダウンメニューの操作によって、設定入力される数値が表示されることになる。このことから、この条項は、第二分類に属するものであって、かつ、第三分類にも属するものといえる。なお、請負契約における契約期間の条項には、当然ながら、自動更新についての但し書きが追加されることはない。
【0036】
ステップS308~ステップS310で実行される処理は、第二分類に属する別の条項(法律監修がされているものの、置換可能な文面等を提示可能な条項)についての処理である。第二分類に属する条項とは、換言すれば、デフォルトで表示される文面は、弁護士等の法律家が監修し、十分なチェックがされており、かつ、置換される選択候補の文面についても、弁護士等の法律家が監修し、十分なチェックがされている条項ということになる。
ステップS308では、条項中に、代替される置換文面があるか否かの判断処理が行われ、置換すべき文面があれば、ステップS309において、置換すべき文面や項目についての説明が表示され、ステップS310において、契約書作成者の操作により、文面の置換が行われ、必要に応じて数値を入力できるプルダウンメニュー(テキストボックスを兼ね備えていてもよい)が表示される。
再委託可否に関する条項であれば、デフォルトとしては、再委託を許可する規定、例えば、「受託者は、委託者の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。」との規定が表示されているが、当該規定は、「再委託を許可しない」を選択設定することによって、「受託者は、本業務の全部又は一部を第三者に再委託することができない。」との規定に置換される。
また、知的財産権の帰属等の条項において、成果物の著作権譲渡等について規定する場合に、「すべての著作権」とのフリーランス側に有利に振られた項目を、「著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)」というように、企業側に有利に振られた項目に置換することが可能である。これとは逆に、著作権譲渡が規定されている文面を、著作権利用許諾(ライセンス)を規定する文面に置換するように構成しても良い。いずれにせよ、これらの置換候補の全ては、弁護士等の法律家が監修し、十分にチェック済みのものである。
【0037】
ステップS311~ステップS313で実行される処理は、第一分類に属する条項(法律監修がされており、かつ、修正が想定されていない条項)に関する処理のうち、条項を追加するための処理である。契約書作成サーバー2が生成した契約書の初期ドラフトには、必要最低限の条項が標準の表示で示されるが、これに加えて、追加できる条項についての簡単な説明が薄い表示で示される。また、条項を追加することのメリットやデメリットを説明するワンポイントアドバイスも表示される。これらの説明を読んだ契約書作成者は、自身にとって、必要な或いは有効な規定であると判断したならば、当該条項を追加することが可能である。先ず、ステップS311では、契約書作成者が条項の追加の操作をしたか否かの判断処理が行われる。追加要求の有無は、トグルボタンの操作がされたか否かで判断される。
ステップS312では、実際の追加条項が標準の表示で示されると共に、全ての条項についての条文番号が振り直されて、新たな番号が表示される。また、必要に応じて、ステップS313において、「設定してください」といった設定を促す表示や設定ボタンの表示が行われる。設定ボタンを操作すると、文字を入力するテキストボックスや、数値を入力できるプルダウンメニュー(テキストボックスを兼ね備えていてもよい)が表示され、契約書作成者がテキストボックスやプルダウンメニューを操作することによって、必要な数字や文字の設定入力が行われる。
【0038】
ステップS314~ステップS316で実行される処理は、第一分類に属する条項(法律監修がされており、かつ、修正が想定されていない条項)に関する処理のうち、例外的に条項の文面を修正する処理である。契約書作成サーバー2が生成した契約書の初期ドラフトの各条項は、弁護士等の法律家が監修し、十分にチェック済みのものであり、これを用い、条文の文面を維持したままで契約書を作成することによって、法的に十分な裏付けがある契約書を作成できるという点に、本発明の技術的意義が存するところではある。一方で、法的な知識を十分に有した者が、契約書文面を変更したいと考えることはあり得ることであり、自由契約の意義もそこにある。そこで、本発明の実施形態に係る契約書作成システムは、そのような要求にも対応できるように構成されている。ただし、契約書作成システム提供者の免責、つまり、操作者の自責文書となることを、契約書作成者に十分に理解させた上で操作が実行される工夫がされている。
ステップS314では、契約書作成者が条項の文面の修正命令の操作をしたか否かの判断処理が行われる。修正命令は、「編集」ボタンをクリックすることを以て実行されたことになる。ステップS315では、警告画面(編集についての注意書き)が表示される。例えば、「この業務委託契約書のテンプレートは、弁護士の監修のもと作成されています。内容を編集することで、契約にリスクが生じたり、無効になる可能性があります。編集はご自身の責任の上で行ってください。」との表示が行われる。この表示と共に、「私は上記を理解し、自身の責任の下で編集を行います。」との表記を付したチェックボックスが表示される。
ステップS316において、契約書作成者がチェックボックスにレ点を入れて、さらに、「編集」のボタンをクリックすると、注意書きを承認したものと判断され、条文の固定表示が修正を許容するエディター表示に切り替わる。ステップS317において、自由な入力がされて条文の編集が実行されることになる。
【0039】
その後は、完了を示す命令が実行されるまで、ステップS301からステップS318までの処理が繰り返し実行されることになる。そして、
図2に示されるメインルーチン処理のステップS109に戻り、PDFのダウンロードや電子署名作成といった必要な処理が継続されることになる。
【0040】
<別の実施形態>
これまでに説明した本発明の実施形態は、ユーザープロファイルDB21、契約条項DB22、契約書面DB23、書面レンダリング手段24にて行われる処理がWebシステム上で実行されるものであり、さらにいえば、
図1の機能ブロックとして、情報処理装置1側に示した契約書編集画面表示手段13、契約書表示手段14、警告画面表示手段16、商慣行表示手段17による処理も、Webブラウザを介しての操作となるものである。しかし、これらの処理の一部ないし全部についての処理実行プログラムを用意して、情報処理装置1にダウンロード、インストールさせて、情報処理装置1で殆どの処理を完結できるように構成することも可能である。つまり、
図1に示したSaaS(Software as a Service)として観念されるシステム構成は、クライアントサーバモデルとしても構築し得る。別の実施形態は、契約書作成装置の操作を、Webブラウザを介して行うのではなく、プラットフォームがPC内に実装されるモデルとして構築するのである(不図示)。情報処理装置1に実装される(条項DB記憶領域を含む)プラットフォームによって、通信環境が不安定な状況でも、安定した処理を実行できるようになる。ただし、契約書面のバックアップ等を格納しておく領域をクラウドストレージに設けておくと便利である。
【0041】
本発明の実施形態及び別の実施形態によれば、次に挙げるような効果が見込まれる。
これまで「契約書ツール」と呼ばれるものにおいて、法的なバックアップはAIによるリーガルチェックが提唱されるに止まるところ、実効性としては不十分であった。本発明の実施形態によれば、法的な裏付けのある契約書作成を簡易な構成で実現できる。結果として、簡単な設問に答えていくだけで、5~10分といった時間で契約書作成を完了することができる。簡易な構成故に、操作性も良好であり、直感的に操作できるUIを備えたシステムを提供できる。契約というタスクを完遂できる成功率、相互操作性の速度、インタフェースで説明される事項の理解度ないし納得度から推し量ることができるように、極めて高いUXが期待できる。
スピードや簡便性の効果と同時に成立させることが一見難しいと思われる汎用性ないし対応性の向上も、本発明の実施形態及び別の実施形態により実現される。具体的に、条項の追加や変更が可能であることから、「個々の具体的なビジネスに寄り添った契約書」に対応できるようにするべく、約3000通り以上のカスタマイズが、本発明の実施形態及び別の実施形態により実現できる。それにも関わらず、本明細書で説明したことから理解されるように、自責文書に係る編集をしない限りにおいては、契約書の法的な裏付けは、かなりの確度で保証されたものとなる。
これらのことからの二次的効果として、これまで契約書不要で見積ベースでの取引をしていた、スポットのライティングやデザインなどのスモールビジネスにとって、本発明の実施形態及び別の実施形態は、保険の意味で気軽に使えるうってつけのサービスを提供するものである。コンプライアンスを重視する企業にとって、個人事業主に直接委託することは難しかったところ、スモールビジネス間や、二次的請負が三次や四次の請負間で展開されるといったケースも容易に設定できるようになる。これらのトータルの効果として、本発明は、日本のビジネスのスピードを上げ、イノベーションを加速させるものである。
【0042】
以上、契約書作成システム等について説明したが、法的な裏付けのある契約書作成は、フリーランスや副業ワーカーが主人公となる業務委託契約において顕著な効果を発揮するものの、それ以外の契約態様においても、法的な裏付けのある契約書作成が価値あるものであることは、説明するまでもないであろう。すなわち、本発明の技術的思想は、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用といった契約態様の契約作成システムにおいても同様に適用し得るものである。
【0043】
[付記]
上記したように、本発明の技術的思想は、より広範な場面で採用し得るものであるところ、贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用といった契約態様一般として技術的思想を化体させた場合の発明思想(態様)を以下に示しておく。
【0044】
(付記1)
(1)契約の種類を選択して契約書を作成する契約書作成システムであって、情報処理装置と、契約書作成サーバーを備え、情報処理装置は、契約書タイプ選択手段と、管轄裁判所を選択するための管轄裁判所選択手段と、契約書条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力、を可能とする修正操作手段と、を少なくとも有し、契約書作成サーバーは、ユーザープロファイル記憶手段と、契約書条項が分類付けされて記憶される契約書条項記憶手段と、契約書面レンダリング手段と、を少なくとも有し、契約書作成サーバーの契約書条項記憶手段から抽出される契約条項を、情報処理装置の修正操作手段により編集して契約書を作成する契約書作成システムにおいて、契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれており、第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものであることを特徴とする契約書作成システム。
【0045】
(付記2)
(2)情報処理装置と組み合わされることによって契約書を作成するシステムを構成する契約書作成サーバーであって、ユーザープロファイル記憶手段と契約書条項記憶手段と契約書面レンダリング手段を少なくとも備える契約書作成サーバーのコンピュータに、情報処理装置において初期設定された情報を受信するステップと、受信された初期設定情報に基づいて編集前の契約書条項の情報を送信するステップと、情報処理装置において入力された情報を受信するステップと、受信された入力情報に基づいて契約書面をレンダリング出力するステップを実行させることを特徴とする契約書作成サーバープログラムであって、初期設定される情報には、少なくとも、契約書タイプが含まれており、編集前の契約書条項の少なくとも一部は、法律監修がされていることを特徴とする契約書作成サーバープログラム。
【0046】
(付記3)
(3)契約の種類を選択して契約書を作成する契約書作成装置であって、契約書タイプ選択手段と、管轄裁判所を選択するための管轄裁判所選択手段と、契約書条項自体の追加、一の契約書条項中での法律事項の追加及び/又は置換、一の契約書条項中での数値及び文字入力、を可能とする修正操作手段と、ユーザープロファイル記憶手段と、契約書条項が分類付けされて記憶される契約書条項記憶手段と、契約書面レンダリング手段と、を少なくとも有し、契約書条項記憶手段から抽出される契約条項を、修正操作手段により編集して契約書を作成し、契約書条項には、第一分類、第二分類及び第三分類が含まれており、第一分類は、法律監修がされており、かつ、修正が想定されておらず、第二分類は、法律監修がされているものの、追加可能又は置換可能な一つ以上の選択肢が候補として提示可能なものであり、第三分類は、法律監修の有無に関わらず、自由に追記できるフィールドを有するものであることを特徴とする契約書作成装置。
【0047】
以上、本発明の実施形態に係る契約作成システムについて、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、契約書作成をする操作者を、フリーランスや副業ワーカーとして説明を行ってきたが、操作者が個人事業主や企業であることを排除するものではない。これらの者も、法的な裏付けを望むことには変わりがない。すなわち、企業間での契約の書類作成に対しても本発明は妥当するものである。
法律監修等がなされている雛形等は世に数多く存在するかもしれないが、それを勝手気ままに編集してしまうことで、法的な裏付けが損なわれてしまうということに、本発明者らは着目したのである。本発明の技術的思想の根幹は、法的根拠を崩さずに維持したままでの編集を行えるシステムを提案するという、大所高所からの立場に立脚し、契約を巡る様々なシーンにおいて適用できるという処に位置するものであることは、明確に理解されるべきである。
【符号の説明】
【0048】
1 情報処理装置
11 契約書タイプ選択手段
12 管轄裁判所選択手段
13 契約書編集画面表示手段
14 契約書表示手段
15 修正操作手段
16 警告画面表示手段
17 商慣行表示手段
18 電子署名手段
2 契約書作成サーバー
21 ユーザープロファイルDB
22 契約条項DB
23 契約書面DB
24 書面レンダリング手段