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  • 特開-動力伝達装置及び調理ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032459
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】動力伝達装置及び調理ロボット
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/00 20060101AFI20240305BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20240305BHJP
   F16H 1/32 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
A47J43/00
B25J17/00 E
F16H1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136126
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
【テーマコード(参考)】
3C707
3J027
4B053
【Fターム(参考)】
3C707AS34
3C707BS11
3C707CX01
3C707CX03
3C707EW18
3J027FA21
3J027FA37
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC08
4B053AA01
4B053BA20
4B053BL20
(57)【要約】
【課題】調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置において、調理熱への対策を実現できる技術を提供すること。
【解決手段】調理アタッチメントを搭載する調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置22-1であって、動力伝達装置22-1の他の部材90よりも熱伝導率の低い材料により構成される出力部材70-1を備える動力伝達装置22-1。これにより、動力伝達装置の出力部材に調理アタッチメント側から伝達される調理熱を出力部材によりできるだけ遮断でき、出力部材から動力伝達装置の他の箇所に熱伝導により調理熱を伝達させ難くできる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理アタッチメントを搭載する搭載部を備える調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置であって、
前記動力伝達装置の他の部材よりも熱伝導率の低い材料により構成される出力部材を備える動力伝達装置。
【請求項2】
前記他の部材及び前記出力部材は、樹脂系材料により構成される請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記他の部材は、炭素繊維を母材樹脂に含有する繊維強化樹脂により構成され、
前記出力部材は、炭素繊維以外の強化繊維を母材樹脂に含有する繊維強化樹脂、又は、前記強化繊維を含有しない樹脂系材料により構成される請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記出力部材及び前記他の部材は、母材樹脂が同じ繊維強化樹脂により構成される請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記他の部材と前記出力部材とを連結する連結部材と、
前記出力部材よりも被駆動部材側において露出する前記連結部材の一部を被覆する被覆部材と、を備え、
前記被覆部材は、前記連結部材よりも熱伝導率の低い材料により構成される請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記ロボットは、前記動力伝達装置が固定され前記動力伝達装置を支持する被固定部材を備え、
前記動力伝達装置は、前記出力部材に連結される被連結部材と、前記被連結部材から前記被固定部材に至る一つの伝熱経路上に設けられる少なくとも一つの伝熱経路部材と、を備え、
前記一つの伝熱経路上にある全ての前記伝熱経路部材は、前記出力部材よりも熱伝導率が高い材料により構成される請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
調理アタッチメントを搭載する搭載部を備える調理ロボットであって、
前記調理ロボットにおいて前記搭載部に近い第1駆動部に組み込まれる第1動力伝達装置と、
前記調理ロボットにおいて前記第1駆動部よりも前記搭載部から遠い第2駆動部に組み込まれる第2動力伝達装置と、を備え、
前記第1動力伝達装置は、請求項1から6のいずれかに記載の動力伝達装置であり、
前記第2動力伝達装置は、前記第1動力伝達装置の出力部材である第1出力部材よりも熱伝導率の高い材料により構成される第2出力部材を備える調理ロボット。
【請求項8】
前記第1動力伝達装置は、前記第1動力伝達装置の前記他の部材と前記第1出力部材とを連結する第1連結部材と、前記第1出力部材よりも前記第1出力部材により駆動される第1被駆動部材側において露出する前記第1連結部材の一部を被覆する被覆部材と、を備え、
前記第2動力伝達装置は、前記第2動力伝達装置の前記第2出力部材と他の部材とを連結する第2連結部材を備え、
前記第2連結部材は、前記第2出力部材よりも前記第2出力部材により駆動される第2被駆動部材側において被覆部材により被覆されていない請求項7に記載の調理ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットの用途が産業からサービス業に拡大し始めている。サービス業に用いられるサービスロボットとして、調理をサポートする調理ロボットが提案されている。この一例として、特許文献1は、調理アタッチメントを搭載する調理ロボットを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020/071150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調理ロボットは、調理アタッチメントを用いた調理時に、加熱器具等から調理熱(後述する)を付与され易い環境下にある。調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置において、このような調理熱との関係で対策を講じた技術は未だ提案されていない。
【0005】
本開示の目的の1つは、調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置において、調理熱への対策を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の動力伝達装置は、調理アタッチメントを搭載する搭載部を備える調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置であって、前記動力伝達装置の他の部材よりも熱伝導率の低い材料により構成される出力部材を備える。
【0007】
本開示のある態様の調理ロボットは、調理アタッチメントを搭載する搭載部を備える調理ロボットであって、前記調理ロボットにおいて前記搭載部に近い第1駆動部に組み込まれる第1動力伝達装置と、前記調理ロボットにおいて前記第1駆動部よりも前記搭載部から遠い第2駆動部に組み込まれる第2動力伝達装置と、を備え、前記第1動力伝達装置は、前記の態様の動力伝達装置であり、前記第2動力伝達装置は、前記第1動力伝達装置の出力部材である第1出力部材よりも熱伝導率の高い材料により構成される第2出力部材を備える調理ロボット。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置において、調理熱への対策を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の調理ロボットを示す模式図である。
図2】実施形態の第1動力伝達装置を示す側面断面図である。
図3】実施形態の第2動力伝達装置を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0011】
実施形態の動力伝達装置を想到するに至った背景を説明する。本願発明者は、調理ロボットに関して検討した結果、以下の新たな知見を得た。調理ロボットは、調理アタッチメントを用いた調理時に、調理熱を付与され易い環境下にある。調理熱は、例えば、コンロ、IHヒーター等の加熱器具の他、加熱器具により加熱された調理器具、食材等から付与される。ここでの調理熱とは、食材の加熱を伴う調理により外部から調理ロボット及び調理アタッチメントに付与される熱をいう。
【0012】
調理熱は、加熱器具、調理器具等に近づく調理アタッチメントにおいて特に付与され易い。調理アタッチメントに付与された調理熱は、調理ロボットにおいて調理アタッチメントを搭載する先端部(搭載部)から基端側に熱伝導により伝達される。この過程において、調理熱は、調理ロボットに組み込まれた動力伝達装置において、出力部材から先に伝達され、その後に出力部材から他の箇所に熱伝導により伝達される。本願発明者は、調理ロボットに組み込まれる動力伝達装置に特有の事情として、このような調理熱の伝わり方があることを新たに見出した。
【0013】
また、本願発明者は、調理ロボットに付与される調理熱への対策として、調理熱が先に伝達される出力部材を他の部材よりも熱伝導率の低い材料により構成するとよいことを新たに見出した。これにより、動力伝達装置に調理アタッチメント側から伝達される調理熱を出力部材によりできるだけ遮断でき、出力部材から動力伝達装置の他の箇所に調理熱を熱伝導により伝達させ難くできる。この結果、調理熱への対策を実現することができる。このように動力伝達装置の他の箇所への調理熱の伝達を避けることで、その他の箇所での過度の温度上昇に伴う悪影響の発生が抑制される。例えば、動力伝達装置が互いに噛み合う歯車対を備える場合、歯車対の噛合箇所での過度の温度上昇に伴う悪影響(低寿命化等)の発生が抑制される。ここでの歯車対とは、例えば、後述する外歯歯車と内歯歯車の組み合わせをいう。以下、実施形態の動力伝達装置の詳細を説明する。
【0014】
図1を参照する。調理ロボット10は、多関節ロボットである。本実施形態の調理ロボット10は、関節数を5個としているが、その関節数は特に限定されず、4個以下、6個以上等でもよい。調理ロボット10は、複数の関節部12-A~12-Eと、複数の関節部12-A~12-Eにより回動又は回転可能に直列に連結される複数のロボット部材14-A~14Fと、複数の関節部12-A~12-Eのそれぞれに組み込まれる複数の駆動部16-A~16Eと、調理アタッチメント18が搭載される搭載部20と、を備える。ここでは、複数の駆動部16-A~16-Eのうち、調理ロボット10において搭載部20に近いものから遠いものを順に1段目駆動部16-A、2段目駆動部16-B、3段目駆動部16-C・・・という。以下の動力伝達装置22も同様に、1段目動力伝達装置22-A、2段目動力伝達装置22-B、3段目動力伝達装置22-C・・・という。
【0015】
複数のロボット部材14-A~14Fのうち最も基端側のロボット部材14-Fは、調理ロボット10の他の部材を支持するベース24となり、それ以外のロボット部材14-A~14Eはアーム部材となる。本実施形態において、隣り合うロボット部材14-A~14-Fのうち先端側のロボット部材14-A~14-Eは、関節部12-A~12-Eにおいて、基端側のロボット部材14-B~14-Fに対して回転可能に連結される。なお、ここでの「先端側」は、調理ロボット10において搭載部20側をいい、「基端側」は、調理ロボット10においてベース24側をいう。
【0016】
駆動部16-A~16-Eは、自身に組み込まれる動力伝達装置22-A~22-Eを通して伝達される動力により、関節部12-A~12-Eにおいて連結される二つのロボット部材14-A~14-Fのうち先端側のロボット部材14-A~14-Eを駆動する。本実施形態の駆動部16-A~16-Eは、先端側のロボット部材14-A~14-Eを回転(回動)させるように駆動する。
【0017】
搭載部20は、複数のロボット部材14-A~14-Fのうちの最も先端側のロボット部材14-Aに設けられる。搭載部20は、調理アタッチメント18を着脱可能に搭載していてもよい。
【0018】
調理アタッチメント18は、食材30の調理又は調理の補助のために用いられる。これを実現するうえで、本実施形態の調理アタッチメント18は、調理器具26を用いて食材30を調理する。この他にも、調理アタッチメント18は、調理用媒体(調味料、水、熱、冷気等)を供給することで食材30を調理してもよい。この他にも、調理アタッチメント18は、調理後の調理器具26に洗浄媒体(水、洗剤等)を供給することで調理器具26を洗浄したり、調理に伴い発生した不要物を廃棄スペースに廃棄することで、調理を補助してもよい。このように、調理アタッチメント18により実現される調理、調理の補助の具体例は特に限定されない。
【0019】
調理器具26を用いて食材30を調理するうえで、調理アタッチメント18には、調理アタッチメント18とは別体の調理器具26を分離可能に支持する調理器具支持部28、又は、調理器具26そのものが組み込まれる。ここでは、前者の例として、調理器具26がへらであり、調理器具支持部28が調理器具26を把持する把持部(グリッパ)である例を示す。また、ここでは、加熱器具32により加熱されている鍋34内の食材30をへらによりかき混ぜるように、調理ロボット10により調理器具26を移動させることで食材30を調理する例を示す。このように、調理器具26を用いて食材30を調理する場合、調理ロボット10により調理器具26を移動させることで食材30が調理される。
【0020】
調理器具26の具体例は特に限定されず、この他にも、例えば、鍋、フライパン、やかん、ボウル、調理網(油こし網、湯切り網、フライバスケット等)、菜箸、トング、お玉、スプーン、フォーク、マッシャー等が用いられてもよい。調理器具支持部28の具体例は特に限定されず、この他にも、例えば、負圧、磁力等により調理器具26を吸着する吸着部、調理器具26を掬い上げる掬い部等により構成されてもよい。
【0021】
調理ロボット10は、不図示の制御部による制御に従い調理アタッチメント18を用いて食材30を調理する。調理ロボット10は、例えば、不図示の保管スペースに保管された複数の調理アタッチメント18のなかから、食材30の調理内容に応じた調理アタッチメント18に交換し、その調理アタッチメント18を用いて食材30を調理してもよい。この他にも、調理ロボット10は、専用の調理アタッチメント18を用いて、調理アタッチメント18に対応する特定の調理のみを繰り返し行ってもよい。この他にも、調理ロボット10は、例えば、他の調理ロボット10又はユーザと協働して食材30を調理してもよい。
【0022】
以上の調理ロボット10は、調理ロボット10において搭載部20に近い第1駆動部16-1に組み込まれる第1動力伝達装置22-1と、調理ロボット10において第1駆動部16-1よりも搭載部20から遠い第2駆動部16-2に組み込まれる第2動力伝達装置22-2と、を備える。ここでの「近い」とは、調理ロボット10において、第2駆動部16-2よりも先端側に第1駆動部16-1があることを意味する。本実施形態において、第1駆動部16-1は、複数の駆動部16のうち最も搭載部20に近い1段目駆動部16-Aにより構成される。また、第2駆動部16-2は、調理ロボット10において1段目駆動部16-Aよりも基端側にある2段目駆動部16-B~5段目駆動部16-Eのそれぞれにより構成される。また、第1動力伝達装置22-1は、1段目動力伝達装置22-Aにより構成され、第2動力伝達装置22-2は、2段目動力伝達装置22-A~5段目動力伝達装置22-Eのそれぞれにより構成される。
【0023】
図2図3を参照する。以下、第1動力伝達装置22-1、第2動力伝達装置22-2を説明する。これらは多くの構成要素が共通している。以下、これらに共通する構成要素から先に説明する。第1動力伝達装置22-1、第2動力伝達装置22-2を区別せずに総称する場合、単に「動力伝達装置22」という。また、第1動力伝達装置22-1、第2動力伝達装置22-2に共通する構成要素を区別する場合、その構成要素の冒頭に「第1」、「第2」を付し、その符号の末尾に「-1」、「-2」を付す。これに対して、この共通する構成要素を区別せずに総称する場合、その区別するための用語(第1等)を省略する。例えば、共通する構成要素として出力部材70がある場合、第1動力伝達装置22-1と第2動力伝達装置22-2で区別する場合、「第1出力部材70-1」、「第2出力部材70-2」と記載する。これに対して、これらを区別しない場合、単に「出力部材70」と記載する。
【0024】
調理ロボット10は、動力伝達装置22が固定され動力伝達装置22を支持する被固定部材40と、動力伝達装置22により駆動される被駆動部材42と、を備える。被固定部材40は、第1動力伝達装置22-1を支持する第1被固定部材40-1と、第2動力伝達装置22-2を支持する第2被固定部材40-2とがある。被駆動部材42は、第1動力伝達装置22-1の第1出力部材70-1により駆動される第1被駆動部材42-1と、第2動力伝達装置22-2の第2出力部材70-2により駆動される第2被駆動部材42-2とがある。被駆動部材42は、不図示のボルト等を用いて出力部材70に連結される。被固定部材40、被駆動部材42は、前述したロボット部材14(アーム部材及びベース部材のいずれか)である。
【0025】
本実施形態の動力伝達装置22は、駆動装置44から入力された動力を伝達する従動装置となる。本実施形態の駆動装置44はモータであるが、この他にもギヤモータ、エンジン等でもよい。駆動装置44は、被固定部材40に設けられる中空部40aに収容される。
【0026】
本実施形態において、従動装置となる動力伝達装置22は歯車装置である。この歯車装置は、筒型の撓み噛合い型歯車装置である。この撓み噛合い型歯車装置は、駆動装置44から回転が入力される起振体軸46と、起振体軸46により撓み変形される外歯歯車48と、外歯歯車48と噛み合う変速用内歯歯車50及び出力用内歯歯車52と、を備える。この他に、この歯車装置は、ケーシング54、入力側カバー56、反入力側カバー58を備える。以下、動力伝達装置22の出力部材70(後述する)の回転中心線に沿った軸方向のうちの駆動装置44側を入力側といい、それとは反対側を反入力側という。
【0027】
起振体軸46は、外歯歯車48を撓み変形させる起振体46aと、起振体46aの軸方向両側に設けられる軸部46bと、を備える。起振体軸46は、駆動装置44から回転が入力される入力軸の一例となる。起振体軸46の中央部には軸方向に貫通するホロー部46cが形成される。起振体46aの軸方向に直交する断面において、起振体46aの外周形状は楕円状をなし、軸部46bの外周形状は円状をなす。ここでの「楕円」とは、幾何学的に厳密な楕円に限定されず、略楕円も含まれる。
【0028】
外歯歯車48は可撓性を有する筒状部材である。外歯歯車48の外周部には外歯が設けられる。外歯歯車48は、起振体軸受60を介して起振体46aに相対回転自在に支持される。外歯歯車48の軸方向両側には外歯歯車48の軸方向移動を規制する規制部材62が配置される。
【0029】
変速用内歯歯車50の内周部には、外歯歯車48の入力側部分の外歯と噛み合う内歯が設けられる。出力用内歯歯車52の内周部には、外歯歯車48の反入力側部分の外歯と噛み合う内歯が設けられる。変速用内歯歯車50は、外歯歯車48の外歯数(例えば、100)とは異なる内歯数(例えば、102)を持ち、出力用内歯歯車52は、外歯歯車48の外歯数と同数の内歯数を持つ。
【0030】
ケーシング54は、入力側ケーシング部材54aと反入力側ケーシング部材54bと、を備える。入力側ケーシング部材54aと反入力側ケーシング部材54bとはボルトB1により連結される。入力側ケーシング部材54aは、変速用内歯歯車50を兼ねている。反入力側ケーシング部材54bは、出力用内歯歯車52の径方向外側に配置される。
【0031】
反入力側ケーシング部材54bと出力用内歯歯車52との間には主軸受64が配置される。ここでの主軸受64は玉軸受を示すが、その具体例は特に限定されず、ローラ軸受、クロスローラ軸受、アンギュラ玉軸受、テーパ軸受等でもよい。入力側ケーシング部材54a及び反入力側ケーシング部材54bは、主軸受64の外輪の軸方向両側に配置され、その軸方向移動を規制する外輪用の軸受押さえとして機能する。出力用内歯歯車52及び反入力側カバー58は、主軸受64の内輪の軸方向両側に配置され、その軸方向移動を規制する内輪用の軸受押さえとして機能する。なお、ここでは主軸受64が専用の外輪及び内輪を備える例を示すが、外輪及び内輪の少なくとも一方は他部材(ケーシング54、出力用内歯歯車52等)が兼ねていてもよい。
【0032】
入力側カバー56は、外歯歯車48に対して軸方向入力側に配置され、外歯歯車48を入力側から覆っている。入力側カバー56は、変速用内歯歯車50とボルトB2により連結される。反入力側カバー58は、外歯歯車48に対して軸方向反入力側に配置され、外歯歯車48を反入力側から覆っている。入力側カバー56及び反入力側カバー58と起振体軸46の軸部46bとの間には入力軸受66が配置される。
【0033】
ここで、動力伝達装置22は、出力部材70と、出力部材70が連結される被連結部材72と、外部の被固定部材40に固定される固定部材74と、を備える。
【0034】
出力部材70は、調理ロボット10の被駆動部材42に動力(ここでは回転)を出力することで被駆動部材42を駆動する。出力部材70は、ケーシング54及び反入力側カバー58の一方であり、本実施形態では反入力側カバー58である。この他にも、出力部材70は、ケーシング54であってもよい。
【0035】
本実施形態の被連結部材72は、連結部材76を用いて出力部材70に連結される出力用内歯歯車52である。本実施形態の連結部材76はボルトであるが、リベット等でもよい。本実施形態の連結部材76は、出力部材70に設けられる挿通孔78(無ねじ孔)に挿通されるとともに被連結部材72に設けられる雌ねじ孔80にねじ込まれることで、出力部材70及び被連結部材72を連結する。連結部材76は、出力部材70と被連結部材72が接触した状態で両者を連結する。
【0036】
本実施形態の固定部材74は、他の連結部材82を用いて被固定部材40に連結されるケーシング54である。本実施形態の連結部材82はボルトであるが、リベット等でもよい。連結部材82は、ケーシング54(入力側ケーシング部材54a、反入力側ケーシング部材54b)に設けられる挿通孔84(無ねじ孔)に挿通されるとともに被固定部材40に設けられる雌ねじ孔86にねじ込まれる。連結部材82は、固定部材74と被固定部材40が接触した状態で両者を連結する。
【0037】
動力伝達装置22は、被連結部材72から調理ロボット10の被固定部材40に至る一つの伝熱経路87A上に設けられる少なくとも一つの伝熱経路部材88を備える。ここでの「伝熱経路87A」とは、被連結部材72から被固定部材40に至る熱伝導による伝熱経路をいう。ここでの伝熱経路87A、87Bとして、本実施形態では、被連結部材72→主軸受64→ケーシング54→被固定部材40の順にある第1伝熱経路87Aと、被連結部材72(出力用内歯歯車52)→外歯歯車48→変速用内歯歯車50→ケーシング54→被固定部材40の順にある第2伝熱経路87Bとがある。ここでは第1伝熱経路87A上の部材が伝熱経路部材88である例を説明する。つまり、本実施形態の伝熱経路部材88は、主軸受64、ケーシング54(入力側ケーシング部材54a、反入力側ケーシング部材54b)である。この他にも、他の伝熱経路(例えば、第2伝熱経路87B)上の部材が伝熱経路部材88であってもよい。伝熱経路部材88は、被連結部材72の熱を熱伝導により被固定部材40まで伝熱する。
【0038】
以上の動力伝達装置22(歯車装置)の動作を説明する。起振体軸46の起振体46aが回転すると、起振体46aの形状に合わせた楕円状をなすように外歯歯車48が撓み変形される。このように外歯歯車48が撓み変形すると、外歯歯車48と内歯歯車50、52の噛合位置が起振体46aの回転方向に変化する。このとき、異なる歯数を持つ外歯歯車48と変速用内歯歯車50の噛合位置が一周する毎に、これらの噛み合う歯が周方向にずれていく。この結果、これらのうちの一方(本実施形態では外歯歯車48)が自転し、その自転成分が出力回転として出力部材70により取り出される。本実施形態において、外歯歯車48と出力用内歯歯車52は、互いに同じ歯数を持つため同期し、外歯歯車48の自転成分は、外歯歯車48と同期する出力用内歯歯車52を通して、出力部材70としての反入力側カバー58により取り出される。このとき、起振体軸46に入力された入力回転に対して、外歯歯車48と変速用内歯歯車50の歯数差に応じた変速比で変速(ここでは減速)された出力回転が出力部材70により取り出される。
【0039】
ここから、第1動力伝達装置22-1の特徴を説明する。図2を参照する。第1出力部材70-1は、第1動力伝達装置22-1の他の部材90よりも熱伝導率の低い材料により構成される。この「他の部材90」は、調理ロボット10に組み込む前に、提供者(例えば、第1動力伝達装置22-1の販売者)から出荷等により第1動力伝達装置22-1として提供されるときに、第1動力伝達装置22-1に組み込まれている部材をいう。この「他の部材90」は、第1動力伝達装置22-1として提供されるときに存在せず、調理ロボット10に組み込まれるときに追加される部材は含まない。ここでの「他の部材90」は、本実施形態では第1被連結部材72-1をいうが、その具体例は特に限定されず、それ以外の部材(例えば、第1固定部材74-1、第1連結部材76-1等)であってもよい。
【0040】
本実施形態において第1出力部材70-1及び他の部材90は樹脂系材料により構成される。詳しくは、第1出力部材70-1及び他の部材90は、樹脂系材料としての繊維強化樹脂により構成される。ここでの樹脂系材料とは、樹脂を主材とする材料をいう。この樹脂系材料は、主材となる樹脂のみによって構成されてもよいし、主材となる母材樹脂と他部材との複合材料によって構成されてもよい。ここでの複合材料は、例えば、繊維強化樹脂の他に、布ベーク、紙ベーク等をいう。このように第1出力部材70-1及び他の部材90を樹脂系材料により構成することで、これらを金属系材料により構成する場合と比べ、第1動力伝達装置22-1の軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0041】
第1出力部材70-1及び他の部材90を繊維強化樹脂により構成する場合、第1出力部材70-1よりも他の部材90の熱伝導率を高くするうえで、次の(1)、(2)の少なくとも一方の手段を採用してもよい。(1)の手段は、他の部材90の強化繊維として、第1出力部材70-1の強化繊維よりも熱伝導率の高い強化繊維を採用することである。(2)の手段は、他の部材90の母材樹脂として、第1出力部材70-1の母材樹脂よりも熱伝導率の高い母材樹脂を採用することである。本実施形態では、(1)、(2)のうち(1)のみを採用している。つまり、第1出力部材70-1及び他の部材90の両方を母材樹脂が同じ繊維強化樹脂により構成し、他の部材90の強化繊維として、第1出力部材70-1の強化繊維よりも熱伝導率の高い強化繊維を採用している。これにより、第1出力部材70-1と他の部材90とで強化繊維の種類を変更するだけで、第1出力部材70-1と他の部材90の強度を確保しつつ、第1出力部材70-1よりも他の部材90の熱伝導率を高くすることができる(言い換えると、第1出力部材70-1の熱伝導率を他の部材90の熱伝導率より低くすることができる)。
【0042】
この(1)の条件を満たすうえで、他の部材90の高熱伝導率を持つ強化繊維は、本実施形態では炭素繊維を採用している。また、(1)の条件を満たすうえで、第1出力部材70-1の低熱伝導率を持つ強化繊維は、炭素繊維以外の強化繊維が採用され、その一例として、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等を採用してもよい。また、この(1)の条件を満たすうえで、第1出力部材70-1及び他の部材90の母材樹脂は、好ましくは、耐熱性に優れた耐熱樹脂を採用するとよい。この耐熱樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックの場合、例えば、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)等を採用してもよい。また、この耐熱樹脂は、特殊エンジニアリングプラスチックの場合、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等を採用してもよい。なお、ここで挙げた材料は、主材となる樹脂のみによって樹脂系材料を構成する場合に、その樹脂として用いられてもよい。
【0043】
このように、第1出力部材70-1を他の部材90よりも熱伝達率の低い材料により構成することで、前述の通り、第1動力伝達装置22-1において調理アタッチメント側(第1被駆動部材42-1側)から伝達される調理熱を、第1出力部材70-1によりできるだけ遮断できる。ひいては、第1出力部材70-1から第1動力伝達装置22-1の他の箇所(例えば、他の部材90等)に調理熱を熱伝導により伝達させ難くすることができる。この結果、調理熱への対策を実現することができる。ここで、通常、調理ロボット10は人の近くで動作するため、人への接触時の衝撃を低減する意味でも、動力伝達装置22を含め、調理ロボット10の構成部材は軽量であることが望ましい。したがって、金属系材料よりも軽量である樹脂系材料が有用である。しかし、樹脂系材料は、金属系材料に比べて耐熱性に劣るため、調理熱が問題となり易い。本実施形態においては、第1出力部材70-1により調理熱の入熱を抑制できるため、樹脂系材料の利用を促進し、調理ロボット10の軽量化にも寄与できる。
【0044】
なお、他の部材90及び第1出力部材70-1を樹脂系材料により構成するうえで、他の部材90を炭素繊維強化樹脂により構成し、第1出力部材70-1を強化繊維を含有しない樹脂系材料(例えば、樹脂のみ)によって構成してもよい。
【0045】
一つの伝熱経路87A上にある全ての第1伝熱経路部材88-1は、第1出力部材70-1よりも熱伝導率が高い材料により構成される。ここでの「全て」とは、複数の第1伝熱経路部材88-1を備える場合は複数の第1伝熱経路部材88-1の全てを指し、単数の第1伝熱経路部材88-1を備える場合は、その単数の第1伝熱経路部材88-1のみを指す。この条件を満たすうえで、第1伝熱経路部材88-1となる第1主軸受64-1は、第1出力部材70-1よりも熱伝導率が高い金属系材料により構成される。また、第1伝熱経路部材88-1となる第1入力側ケーシング部材54a-1、第1反入力側ケーシング部材54b-1は、第1被連結部材72-1と同じ樹脂系材料により構成される。この他にも、ケーシング部材54a-1、54b-1は、第1被連結部材72-1と異なる樹脂系材料としつつ、第1出力部材70-1よりも熱伝導率が高い樹脂系材料により構成されてもよい。例えば、ケーシング部材54a-1、54b-1は、第1被連結部材72-1と異なる母材樹脂に、第1被連結部材72-1と同様に炭素繊維を含有させた樹脂系材料により構成してもよい。
【0046】
ここでの金属系材料とは、金属を主材とする材料をいう。この金属系材料は、主材となる金属(合金含む)のみによって構成されてもよいし、主材となる金属と他部材との複合材料(繊維強化金属等)によって構成されてもよい。ここで用いられる金属は、例えば、鋳鉄、鉄鋼等の鉄系材料、アルミニウム、アルミニウム合金等のアルミニウム系材料をいう。第1主軸受64-1は、例えば、金属系材料として、高炭素クロム軸受鋼等の鉄鋼材料により構成される。
【0047】
これにより、第1伝熱経路部材88-1を第1出力部材70-1よりも熱伝導率が低い材料により構成する場合と比べ、第1伝熱経路部材88-1を通して第1被連結部材72-1(他の部材90)の熱を積極的に第1被固定部材40-1まで逃がすことができる。ひいては、第1動力伝達装置22-1の外部にある第1被固定部材40-1を利用して第1被連結部材72-1及び第1伝熱経路部材88-1の熱を外部空間に効果的に放熱することができる。
【0048】
特に、第1被連結部材72-1(他の部材90)が噛み合いにより発熱する歯車(ここでは第1出力用内歯歯車52-1)により構成される場合、歯車の熱を第1被固定部材40-1まで逃がすことで、歯車の高温化に伴う悪影響(熱劣化等)の発生を抑制できる。ここでは、第1被連結部材72-1が内歯歯車である例を示すが、第1被連結部材72-1が外歯歯車である場合も同様の効果を得ることができる。つまり、第1被連結部材72-1は、外歯歯車及び内歯歯車のいずれかであればよいともいえる。
【0049】
第1出力部材70-1と第1被連結部材72-1を連結する第1連結部材76-1(ここではボルト)は、第1出力部材70-1よりも熱伝導率の高い材料により構成される。これを実現するうえで、第1連結部材76-1は、金属系材料、詳しくは、一般構造用圧延鋼、冷間圧造用炭素鋼、機械構造用炭素鋼等の鉄鋼材料により構成される。第1連結部材76-1は、第1出力部材70-1よりも熱伝導率の高い材料により構成される。
【0050】
第1動力伝達装置22-1は、第1出力部材70-1よりも軸方向の第1被駆動部材42-1側において露出する第1連結部材76-1の一部を被覆する被覆部材92を備える。被覆部材92は、第1被駆動部材42-1とは別体である。第1出力部材70-1は、第1連結部材76-1の頭部76a-1を収容する第1座ぐり孔70a-1を備える。本実施形態の被覆部材92は第1連結部材76-1の頭部76a-1を被覆するキャップである。本実施形態の被覆部材92は、第1座ぐり孔70a-1内に収まるように配置される。被覆部材92は、第1連結部材76-1の頭部76a-1の全体が露出しないように被覆している。被覆部材92は、例えば、接着、圧入等により第1連結部材76-1の一部に取り付けられる。また、被覆部材92は、第1座ぐり孔70a-1内に充填(モールド)されていてもよい。
【0051】
被覆部材92は、第1連結部材76-1よりも熱伝導率の低い材料により構成される。また、被覆部材92は、第1出力部材70-1と同様、第1被連結部材72-1(他の部材90)よりも熱伝導率の低い材料により構成されてもよい。これを実現するうえで、本実施形態の被覆部材92は樹脂系材料を採用しているが、金属系材料を採用してもよい。例えば、被覆部材92は、炭素繊維よりも熱伝導率の低い強化繊維を含有する樹脂系材料により構成してもよい。
【0052】
これにより、第1連結部材76-1よりも熱伝導率の高い材料により被覆部材92を構成する場合と比べ、第1連結部材76-1の近くにある第1被駆動部材42-1から第1連結部材76-1への対流による熱移動を、被覆部材92により効果的に遮断できる。よって、第1出力部材70-1により遮断されることなく第1連結部材76-1を通して第1被連結部材72-1へ伝達しようとする調理熱の熱移動を抑制できる。ひいては、第1出力部材70-1及び第1被連結部材72-1から第1動力伝達装置22-1の他の箇所への調理熱の伝達を避けることができる。
【0053】
なお、第1被駆動部材42-1は、第1起振体軸46-1の第1ホロー部46c-1の内部空間を反入力側から覆い塞ぐように配置されている。これにより、第1起振体軸46-1の内部空間と外部空間との間でのエアの流通が第1被駆動部材42-1により遮断される。よって、第1起振体軸46-1の近傍に第1被駆動部材42-1があったとしても、第1起振体軸46-1の内部空間での対流が生じ難くなり、両者の間での対流による熱移動が生じ難くなる。
【0054】
出力部材70-1、70-2以外の構成要素は、第1動力伝達装置22-1と第2動力伝達装置22-2とで共通する構成要素は同じ材料が用いられる。例えば、第2被連結部材72-2は、第1被連結部材72-1と同様、前述した繊維強化樹脂が用いられる。また、次に説明する構成要素は、第1動力伝達装置22-1、第2動力伝達装置22-2のいずれも同じ材料となる。詳しくは、起振体軸46、外歯歯車48、起振体軸受60、規制部材62、ボルトB1~B2等は、第1連結部材76-1と同様、第1出力部材70-1よりも熱伝達率の高い金属系材料により構成される金属部材となる。また、変速用内歯歯車50、入力側カバー56は、第1出力部材70-1よりも熱伝達率の高い樹脂系材料により構成される樹脂部材となる。本実施形態では、この樹脂系材料として、第1被連結部材72-1(他の部材90)と同様の繊維強化樹脂が採用される。このように動力伝達装置22の構成部材の一部を樹脂部材とすることで、金属部材にする場合と比べて、動力伝達装置22の軽量化、低コスト化を図ることができる。ただし、これに限定されるものではなく、第1動力伝達装置22-1と第2動力伝達装置22-2とで共通する構成要素であっても、異なる材料が用いられてもよい。
【0055】
また、調理ロボット10の第1被固定部材40-1、第2被固定部材40-2、第1被駆動部材42-1、第2被駆動部材42-2は、第1出力部材70-1よりも熱伝導率の高い金属系材料及び樹脂系材料のいずれかにより構成される。
【0056】
図3を参照する。次に、第2動力伝達装置22-2の特徴を説明する。第2動力伝達装置22-2の第2出力部材70-2は、第1動力伝達装置22-1の第1出力部材70-1よりも熱伝導率の高い材料により構成される。これを実現するうえで、本実施形態の第2出力部材70-2は、例えば、第1動力伝達装置22-1の第1被連結部材72-1(第1出力用内歯歯車52-1)と同じ材料、つまり、前述した樹脂系材料としての炭素繊維強化樹脂により構成される。なお、第2出力部材70-2の材料は、第1被連結部材72-1(第1出力用内歯歯車52-1)と同じ材料に限定されるものではなく、第1出力部材70-1よりも熱伝導率の高い材料であれば、各種材料を採用可能である。
【0057】
前述の通り、調理アタッチメント18に付与される調理熱は、調理ロボット10において先端部(搭載部20)から基端側に向けて熱伝導により伝達される。第2動力伝達装置22-2の第2出力部材70-2は、第1動力伝達装置22-1の第1出力部材70-1よりも調理ロボット10の先端部にある搭載部20から遠くなる。搭載部20に近い第1動力伝達装置22-1では、第1出力部材70-1により調理熱の伝達ができるだけ遮断されている。これに対して、搭載部20から遠い第2動力伝達装置22-2では、すでに第1動力伝達装置22-1でできるだけ調理熱が遮断されているうえ、搭載部20から遠いこともあり、調理熱を遮断する必要性が低い。
【0058】
第2動力伝達装置22-2の内部では、歯車対の噛み合い等により第2被連結部材72-2に作用する内部熱が生じ得る。第2動力伝達装置22-2の第2出力部材70-2の熱伝達率を第1出力部材70-1よりも高くすることで、第2被連結部材72-2に作用する内部熱を、第2出力部材70-2を通して第2被駆動部材42-2に逃がし易くなる。ひいては、第1出力部材70-1により調理熱の伝達を遮断しつつ、第2動力伝達装置22-2の内部熱を第2被駆動部材42を利用して外部空間に効果的に放熱できるようになる。また、通常、熱伝導率の低い材料よりも熱伝導率の高い材料の方が、強度、寿命等の点で優れていることが多い。例えば、熱伝導率の低い樹脂よりも熱伝導率の高い金属の方が強度や寿命に優れていることが多い。また、熱伝導率の低いガラス繊維強化樹脂よりも熱伝導率の高い炭素繊維強化樹脂の方が、強度や寿命に優れ、動力伝達装置の性能上好ましいことが多い。したがって、調理熱を遮断する必要性の低い第2出力部材70-2については、第1出力部材70-1よりも熱伝達率の高い材料を採用することで、第2動力伝達装置22-2の性能を向上できる。
【0059】
第2動力伝達装置22-2は、第2出力部材70-2と他の部材(第2被連結部材72-2)とを連結する第2連結部材76を備える。第2連結部材76は、第1連結部材76-1と同様、金属系材料により構成される。第2連結部材76は、第1連結部材76-1とは異なり、第2出力部材70-2よりも軸方向で第2被駆動部材42側において、第2被駆動部材42とは別体の被覆部材により被覆されずに露出している。
【0060】
前述の通り、搭載部20から遠い第2動力伝達装置22-2では、第1動力伝達装置22-1と異なり、調理熱を遮断する必要性が低い。このような第2動力伝達装置22-2において、第1動力伝達装置22-1のような被覆部材を省略することで、調理ロボット10のコスト削減を図ることができる。
【0061】
この他の点において、第1動力伝達装置22-1と第2動力伝達装置22-2の構成は共通となる。ここまで説明した各部材の材料は一例であり、熱伝導率の大小に関する条件を満足していれば、その具体例はこれらに限定されるものではない。例えば、金属部材となる部材は、金属系材料に替えて樹脂系材料により構成してもよいし、樹脂部材となる部材は、樹脂系材料に替えて金属系材料により構成してもよい。
【0062】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0063】
動力伝達装置22は、駆動装置44と従動装置を組み合わせたアクチュエータ(電動アクチュエータ、流体アクチュエータ等)でもよい。また、動力伝達装置22は、従動装置に替えて駆動装置44としてもよい。また、動力伝達装置22は、トラクションドライブを備えてもよい。なお、動力伝達装置22-A~22-Eは、同じ種類の動力伝達機構(例えば、同じ種類の歯車伝達機構)を有してもよいし、異なる種類の動力伝達機構を有してもよい。
【0064】
動力伝達装置22が歯車装置を備える場合、歯車装置の具体的な種類は特に限定されない。歯車装置は、撓み噛合い型歯車装置の他に、単純遊星歯車装置、偏心揺動型歯車装置、平行軸歯車装置、直交軸歯車装置等でもよい。撓み噛合い型歯車装置の場合、その具体的な種類は特に限定されず、筒型の他、カップ型、シルクハット型でもよい。また、起振体により撓み変形する撓み歯車は、外歯歯車48に替えて内歯歯車としてもよい。偏心揺動型歯車装置の場合、その具体的な種類は特に限定されない。この種類として、出力部材70の回転中心にクランク軸が配置されるセンタークランクタイプの他に、出力部材70の回転中心からオフセットした位置にクランク軸が配置される振り分けタイプでもよい。
【0065】
ここまで第1出力部材70-1の材料は、樹脂系材料である例を説明したが、第1動力伝達装置22-1の他の部材90(例えば、第1被連結部材72-1)よりも熱伝達率が低い材料であればよく、その具体例は特に限定されない。例えば、第1出力部材70-1は金属系材料により構成されてもよい。
【0066】
第1出力部材70-1及び他の部材90(例えば、第1被連結部材72-1)の両方を炭素繊維強化樹脂により構成してもよい。この場合、炭素繊維強化樹脂に含有される母材樹脂の熱伝導率及び母材樹脂に対する強化繊維の割合のいずれかを調整することで、第1出力部材70-1の熱伝導率を他の部材90よりも低くしてもよい。
【0067】
第1動力伝達装置22-1は被覆部材92を備えていなくともよい。第2動力伝達装置22-2は、第2連結部材76の第2被駆動部材42側の一部を被覆する被覆部材を備えていてもよい。
【0068】
第1伝熱経路部材88-1の一部は、第1出力部材70-1よりも熱伝導率が低い材料により構成されてもよい。
【0069】
第1動力伝達装置22-1は、1段目動力伝達装置22-Aを例に説明したが、1段目動力伝達装置22よりも基端側にある他の動力伝達装置22-B~22-Eであってもよい。第2動力伝達装置22-2は、調理ロボット10に組み込まれる複数の動力伝達装置22のうちの2つ以上の動力伝達装置22のそれぞれにより構成される例を説明したが、単数の動力伝達装置のみにより構成されてもよい。
【0070】
第2動力伝達装置22-2の第2出力部材70-2の熱伝達率は、第1動力伝達装置22-1の第1出力部材70-1の熱伝達率以下であってもよい。
【0071】
最もベース側にある動力伝達装置22(図1では5段目動力伝達装置22-E)は、調理ロボット10において他の動力伝達装置22よりも大荷重が作用するため、要求される耐荷重が大きくなる。このため、動力伝達装置22において樹脂部材となる箇所を、樹脂系材料に替えて金属系材料により構成してもよい。このような金属系材料により構成するうえで、熱伝達率の優れたアルミニウム系材料により構成してもよい。これにより、要求される耐荷重を確保しつつ、動力伝達装置22の熱を大体積のベース24に向けて積極的に逃がすことができるようになる。
【0072】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。
【符号の説明】
【0073】
10…調理ロボット、16-1…第1駆動部、16-2…第2駆動部、18…調理アタッチメント、20…搭載部、22-1…第1動力伝達装置、22-2…第2動力伝達装置、42-1…第1被駆動部材、42-2…第2被駆動部材、70-1…第1出力部材、70-2…第2出力部材、72…被連結部材、74-1…第1連結部材、74-2…第2連結部材、88…伝熱経路部材、90…他の部材、92…被覆部材。
図1
図2
図3