(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032460
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】フェライトコア内蔵コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/7197 20110101AFI20240305BHJP
H01R 13/7193 20110101ALI20240305BHJP
【FI】
H01R13/7197
H01R13/7193
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136127
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 侑希
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
(72)【発明者】
【氏名】木村 章夫
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA04
5E021FA11
5E021FB20
5E021FC11
5E021FC19
5E021MA14
(57)【要約】
【課題】フェライトコアの損傷を抑制して、使用する樹脂材料の選択自由度にも優れる、フェライトコア内蔵コネクタを開示する。
【解決手段】フェライトコア内蔵コネクタ10が、第1接続部22と第2接続部24が帯板状の中間部26で連結されてなる複数の端子金具12と、複数の端子金具12の中間部26の周囲を一括で囲って配置されるフェライトコア14と、複数の端子金具12の第1接続部22および第2接続部24を除く部位とフェライトコア14を埋設状態で収容するコネクタハウジング16と、を備え、複数の端子金具12の中間部26が、板厚方向で相互に隙間31を隔てて且つ板厚方向の投影で相互にオーバラップした状態で配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接続部と第2接続部が帯板状の中間部で連結されてなる複数の端子金具と、
複数の前記端子金具の前記中間部の周囲を一括で囲って配置されるフェライトコアと、
複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位と前記フェライトコアを埋設状態で収容するコネクタハウジングと、を備え、
複数の前記端子金具の前記中間部が、板厚方向で相互に隙間を隔てて且つ前記板厚方向の投影で相互にオーバラップした状態で配置されている、
フェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項2】
複数の前記端子金具の少なくとも1つは、前記中間部の前記第1接続部側の端部から前記中間部の板幅方向へ延び出す連結部を備えており、前記連結部によって前記中間部と連結された前記第1接続部が前記板幅方向において前記連結部の延長からずれた位置に配置されており、
前記中間部において前記板厚方向にオーバラップされた複数の前記端子金具の前記第1接続部は、前記連結部によって前記板幅方向で相互に隙間を隔てて並列配置されている、請求項1に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項3】
前記連結部を有する前記端子金具の少なくとも1つは、前記板厚方向でクランク状に屈曲する段差状部を前記連結部に有し、前記段差状部の両側に設けられた前記中間部と前記第1接続部が前記板厚方向で相互にずれた高さ位置に配置されており、
前記中間部において前記板厚方向にオーバラップされた複数の前記端子金具の前記第1接続部は、前記段差状部によって前記板厚方向の同じ高さ位置に配置されている、請求項2に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項4】
前記コネクタハウジングが、PVCよりも高耐熱性の樹脂材料で設けられている、請求項1または請求項2に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項5】
前記コネクタハウジングは、複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位を埋設状態で保持する端子保持部と、前記端子保持部と一体成形されて前記フェライトコアを埋設状態で保持するコア保持部と、を有している、請求項1または請求項2に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項6】
前記コネクタハウジングは、複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位を埋設状態で保持する第1樹脂部と、前記第1樹脂部とは別成形されて前記第1樹脂部および前記フェライトコアを埋設状態で保持する第2樹脂部と、を有している、請求項1または請求項2に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項7】
前記コネクタハウジングが、前記フェライトコアを露出させる露出孔を含んでいる、請求項1または請求項2に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【請求項8】
各前記端子金具の前記第1接続部と前記第2接続部は、筒状の前記フェライトコアの軸方向両側において前記コネクタハウジングからそれぞれ突出して露出している、請求項1または請求項2に記載のフェライトコア内蔵コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェライトコア内蔵コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータとインバータ間等、交流回路から直流回路に切り替わる車載機器間の送電におけるノイズを抑制する目的から、特許文献1に開示の如く、端子金具の周囲にフェライトコアを配置したフェライトコア内蔵コネクタが用いられている。ところで、フェライトコアを端子金具とともにインサート成形により合成樹脂製のコネクタハウジング内に埋設してコネクタを形成すると、樹脂硬化の際の収縮力の影響により、フェライトコアが損傷するおそれがあった。そこで、特許文献2に開示のジョイントコネクタでは、コネクタハウジングよりも軟質の樹脂材からなる保護部により予め包囲されたコア成形体に端子金具を組み付けたものをインサート品としてコネクタハウジングを成形する対策が提案されている。これによれば、フェライトコアがコネクタハウジングよりも軟質な樹脂材からなる保護部により包囲されていることから、コネクタハウジングの成形時におけるコネクタハウジングの収縮力が保護部により吸収されて、フェライトコアの損傷を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-295340号公報
【特許文献2】特開2015-53202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献2の対策では、保護部をコネクタハウジングよりも軟質の樹脂材により形成する必要がある。それゆえ、例えば、高い耐熱性が要求される場合には、保護部の樹脂材料により、耐熱要求を満たせない場合も起こり得る。
【0005】
そこで、フェライトコアの損傷を抑制して、使用する樹脂材料の選択自由度にも優れる、フェライトコア内蔵コネクタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のフェライトコア内蔵コネクタは、第1接続部と第2接続部が帯板状の中間部で連結されてなる複数の端子金具と、複数の前記端子金具の前記中間部の周囲を一括で囲って配置されるフェライトコアと、複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位と前記フェライトコアを埋設状態で収容するコネクタハウジングと、を備え、複数の前記端子金具の前記中間部が、板厚方向で相互に隙間を隔てて且つ前記板厚方向の投影で相互にオーバラップした状態で配置されている、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フェライトコアの損傷を抑制して、使用する樹脂材料の選択自由度にも優れる、フェライトコア内蔵コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るフェライトコア内蔵コネクタを、コネクタハウジングを透過状態で示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたフェライトコア内蔵コネクタにおける正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたフェライトコア内蔵コネクタの断面図であって、
図4のIII-III断面に相当する図である。
【
図6】
図6は、
図1に示されたフェライトコア内蔵コネクタを構成する端子金具を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係るフェライトコア内蔵コネクタを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係るフェライトコア内蔵コネクタを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態4に係るフェライトコア内蔵コネクタにおける縦断面図であって、
図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のフェライトコア内蔵コネクタは、
(1)第1接続部と第2接続部が帯板状の中間部で連結されてなる複数の端子金具と、複数の前記端子金具の前記中間部の周囲を一括で囲って配置されるフェライトコアと、複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位と前記フェライトコアを埋設状態で収容するコネクタハウジングと、を備え、複数の前記端子金具の前記中間部が、板厚方向で相互に隙間を隔てて且つ前記板厚方向の投影で相互にオーバラップした状態で配置されている、ものである。
【0010】
本開示のフェライトコア内蔵コネクタによれば、帯板状とされた複数の端子金具の中間部が板厚方向で相互に隙間を隔てて且つ板厚方向の投影で相互にオーバラップした状態で配置されている。さらに、ノイズ除去用のフェライトコアが、板厚方向で隙間を隔ててオーバラップして配列させた各端子金具の中間部を一括で囲って配置されている。これにより、板幅方向に隙間を隔てて並列配置された中間部をフェライトコアで囲う場合に比して、板厚方向で積層配置された複数の中間部を囲むフェライトコアの周長を短くすることができ、フェライトコアの小型化を図ることができる。その結果、端子金具の中間部とフェライトコアをコネクタハウジングに埋設状態となるようにコネクタハウジングを射出成形する際に、フェライトコアの周囲に配設される樹脂量を低減することができる。これにより、樹脂硬化時にフェライトコアに及ぼされる樹脂の収縮力を低減して、コネクタハウジングの成形時におけるフェライトコアの損傷を抑制することができる。それゆえ、フェライトコアをコネクタハウジングよりも軟質な樹脂材によって包囲する特許文献2に記載の如き構造を採用する必要がない。耐熱性が要求される場合には、耐熱性に優れた比較的硬質の樹脂材(例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の耐熱性が高い材料)でコネクタハウジングを成形しても、フェライトコアの損傷のリスクを低減することが可能となり、コネクタハウジング用の樹脂材料の選択自由度の向上も図ることができる。
【0011】
しかも、フェライトコアの周長(磁路長)が短くされていることにより、フェライトコアのインピーダンス性能(ノイズ抑制性能)を維持しながら、フェライトコアの磁路断面積を小さくすることもできる。これにより、フェライトコアの更なる小型化が可能であり、フェライトコアに作用するコネクタハウジングの硬化時の収縮力が低減され、フェライトコアの損傷をより効果的に防ぐことができる。
【0012】
(2)(1)において、複数の前記端子金具の少なくとも1つは、前記中間部の前記第1接続部側の端部から前記中間部の板幅方向へ延び出す連結部を備えており、前記連結部によって前記中間部と連結された前記第1接続部が前記板幅方向において前記連結部の延長からずれた位置に配置されており、前記中間部において前記板厚方向にオーバラップされた複数の前記端子金具の前記第1接続部は、前記連結部によって前記板幅方向で相互に隙間を隔てて並列配置されている、ことが好ましい。
【0013】
すなわち、相手方端子の形状に基づく制約により、複数の端子金具の第1接続部を、板幅方向で相互に隙間を隔てて並列配置することが求められる場合もある。このような場合でも、中間部と第1接続部との間に中間部から板幅方向へ延び出す連結部を設けて、第1接続部を中間部の延長から板幅方向でずれた位置に配置することにより、複数の端子金具の中間部を板厚方向で相互にオーバラップさせることができる。これにより、複数の端子金具の第1接続部が板幅方向で並列配置された構造であっても、本開示のフェライトコアの小型化によるコネクタハウジングの樹脂量の削減効果や短い磁路長によるインピーダンス性能の維持といった効果を享受することができる。
【0014】
(3)(1)または(2)において、前記連結部を有する前記端子金具の少なくとも1つは、前記板厚方向でクランク状に屈曲する段差状部を前記連結部に有し、前記段差状部の両側に設けられた前記中間部と前記第1接続部が前記板厚方向で相互にずれた高さ位置に配置されており、前記中間部において前記板厚方向にオーバラップされた複数の前記端子金具の前記第1接続部は、前記段差状部によって前記板厚方向の同じ高さ位置に配置されている、ことが好ましい。
【0015】
すなわち、相手方端子の形状に基づく制約により、複数の端子金具の第1接続部を、板幅方向で相互に隙間を隔てて並列配置するだけでなく、板厚方向で同じ高さ位置に配置することが求められる場合もある。このような場合でも、端子金具の連結部に段差状部を設けて、中間部と第1接続部を相互に異なる高さ位置に配置することにより、複数の端子金具の中間部を板厚方向で相互にオーバラップさせることができる。これにより、複数の端子金具の第1接続部が板厚方向の同じ高さ位置で板幅方向に並列的に配置された構造であっても、本開示のフェライトコアの小型化によるコネクタハウジングの樹脂量の削減効果や短い磁路長によるインピーダンス性能の維持といった効果を享受することができる。
【0016】
(4)(1)~(3)の何れか一つにおいて、前記コネクタハウジングが、PVCよりも高耐熱性の樹脂材料で設けられている、ことが好ましい。板厚方向で積層配置された複数の中間部を囲うフェライトコアの小型化が図られて、フェライトコアの周囲に配設される樹脂量が低減されていることから、PVC(ポリ塩化ビニル)よりも高耐熱性の樹脂材料でコネクタハウジングを設けても、フェライトコアの損傷を抑制することができる。それゆえ、特許文献2のようにフェライトコアをコネクタハウジングよりも軟質な樹脂材(PVC等)で包囲する必要がなく、PVCよりも高耐熱性の樹脂材料でコネクタハウジングを成形することが可能となる。その結果、コネクタの耐熱性への要求に有利に対応することができる。PVCよりも高耐熱性の樹脂材料には、好ましくは、PBT,PPS(ポリフェニレンスルファイド),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PAI(ポリアミドイミド)等の熱可塑性樹脂やPI(ポリイミド樹脂)等の熱硬化性樹脂等が含まれる。
【0017】
(5)(1)~(4)の何れか一つにおいて、前記コネクタハウジングは、複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位を埋設状態で保持する端子保持部と、前記端子保持部と一体成形されて前記フェライトコアを埋設状態で保持するコア保持部と、を有している、ことが好ましい。
【0018】
端子保持部とコア保持部とを一体成形することにより、コネクタハウジングを一次モールド成形品として形成することができて、射出成形を複数回にわたって行う必要がなく、製造工程の簡素化による短時間での製造等が実現可能になる。特に、樹脂の成形後収縮時の作用応力に起因するフェライトコアの損傷が発生し難いことから、コア保持部を端子保持部と同じ硬質樹脂で一体成形しても、フェライトコアの損傷が回避される。
【0019】
(6)(1)~(4)の何れか一つにおいて、前記コネクタハウジングは、複数の前記端子金具の前記第1接続部および前記第2接続部を除く部位を埋設状態で保持する第1樹脂部と、前記第1樹脂部とは別成形されて前記第1樹脂部および前記フェライトコアを埋設状態で保持する第2樹脂部と、を有している、ことが好ましい。
【0020】
コネクタハウジングが、複数の端子金具を埋設状態で保持する第1樹脂部と、第1樹脂部およびフェライトコアを埋設状態で保持する第2樹脂部に分けて成形されている。それゆえ、端子金具を埋設状態で保持する第1樹脂部を一次モールド成形品として形成した後、一次モールド成形品とフェライトコアをインサート品として第2樹脂部を射出成形することにより、フェライトコア内蔵コネクタを二次モールド成形品として形成することができる。これにより、フェライトコアをインサート品として含む二次モールド成形品における樹脂量を第1樹脂部の分だけ削減できることから、第2樹脂部の樹脂材料の硬化時にフェライトコアに加えられる収縮力をさらに低減して、フェライトコアの損傷を一層有利に防止または抑制することができる。
【0021】
(7)(1)~(6)の何れか一つにおいて、前記コネクタハウジングが、前記フェライトコアを露出させる露出孔を含んでいる、ことが好ましい。露出孔によりコネクタハウジングの樹脂量が削減されて、コネクタハウジングの樹脂材料の硬化時における収縮力によりフェライトコアの損傷を一層有利に防止または抑制できるからである。
【0022】
(8)(1)~(7)の何れか一つにおいて、各前記端子金具の前記第1接続部と前記第2接続部は、筒状の前記フェライトコアの軸方向両側において前記コネクタハウジングからそれぞれ突出して露出している、ことが好ましい。これにより、例えば、第1接続部を相手方コネクタと接続可能に配置できる一方、第2接続部を車載機器等の内部回路や車載機器から延びる電線端末に接続させることができる。
【0023】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のフェライトコア内蔵コネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のフェライトコア内蔵コネクタ10について、
図1から
図6を用いて説明する。フェライトコア内蔵コネクタ10は、例えばモータとPCU(パワーコントロールユニット)とを接続するコネクタであり、フェライトコア内蔵コネクタ10における端子金具12の一端が図示しないモータに電気的に接続されるとともに、端子金具12の他端が図示しないPCUに電気的に接続されるようになっている。なお、フェライトコア内蔵コネクタ10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは
図1中の上方、下方とは
図1中の下方、前方とは
図4中の左方、後方とは
図4中の右方、左方とは
図2中の左方、右方とは
図2中の右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0025】
<フェライトコア内蔵コネクタ10>
フェライトコア内蔵コネクタ10は、端子金具12と、端子金具12の周囲を囲って配置されるフェライトコア14と、端子金具12とフェライトコア14とを収容するコネクタハウジング16と、を備えている。なお、
図1では、コネクタハウジング16が内部の部材を透視可能な状態で示されている。
【0026】
<端子金具12>
実施形態1では、複数の端子金具12が設けられており、第1端子金具12a、第2端子金具12b、第3端子金具12cの3つがある。各端子金具12(第1~第3端子金具12a~12c)は、それぞれバスバーにより構成されており、例えば銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金等の導電性を有する金属により形成されている。第1~第3端子金具12a~12cは、全体として前後方向に延びる帯板状とされており、上下方向が板厚方向とされ、左右方向が板幅方向とされている。帯板状とされた第1~第3端子金具12a~12cは、板厚寸法が板幅寸法よりも小さくされている。第1~第3端子金具12a~12cは、全体として略一定の長さ方向寸法(前後方向寸法)を有しており、第1~第3端子金具12a~12cの前端および後端が前後方向で同じ位置で左右方向に並んで位置している。また、第1~第3端子金具12a~12cは、後述する連結部28a,28cの形成部分を除く部位において、幅方向寸法(左右方向寸法)が相互に略同じとされている。
【0027】
第1~第3端子金具12a~12cにおける前端部には、それぞれを板厚方向(上下方向)で貫通する略円形の前方貫通孔18が形成されている。また、第1~第3端子金具12a~12cの後端部には、それぞれを板厚方向(上下方向)で貫通する略円形の後方貫通孔20が形成されている。これにより、第1~第3端子金具12a~12cにおける一方の端部である前端部において第1接続部22(それぞれ第1接続部22a~22c)が構成されており、第1接続部22a~22cが図示しないモータに電気的に接続されるようになっている。また、第1~第3端子金具12a~12cにおける他方の端部である後端部においてそれぞれ第2接続部24(それぞれ第2接続部24a~24c)が構成されており、第2接続部24a~24cが図示しないPCUに電気的に接続されるようになっている。そして、第1~第3端子金具12a~12cにおいて各第1接続部22と各第2接続部24との前後方向中間部分が、中間部26(それぞれ中間部26a~26c)とされている。このように、各端子金具12は、第1接続部22と第2接続部24が中間部26で連結された構造を有している。各端子金具12は、少なくとも中間部26において、板厚寸法が板幅寸法よりも小さく前後方向に延びる帯板状とされている。実施形態1では、中間部26の板幅寸法が、第1,第2接続部22,24の板幅寸法よりも小さくされており、中間部26の周囲を囲んで配されるフェライトコア14の磁路長をより短く設定することが可能になる。中間部26の板幅寸法は、第1,第2接続部22,24と同じであってもよいし、第1,第2接続部22,24より大きくてもよい。
【0028】
第1端子金具12aにおける中間部26aの前後両側には、中間部26aの前後両端部から左方へ突出する連結部28aがそれぞれ設けられている。そして、前側の連結部28aの左端部から前方へ向けて第1接続部22aが延び出しているとともに、後側の連結部28aの左端部から後方へ向けて第2接続部24aが延び出している。これにより、第1接続部22aは、中間部26aの前方への延長に対して左方にずれた位置に配置されており、第2接続部24aは、中間部26aの後方への延長に対して左方にずれた位置に配置されている。
【0029】
各連結部28aには、
図5,6に示すように、板厚方向でクランク状に屈曲して延びる段差状部30aが設けられている。段差状部30aは、連結部28aにおける中間部26a側の端部に設けられており、連結部28aにおける中間部26aとの連接端から下方へ突出している。したがって、前方の段差状部30aの両側に配された第1接続部22aと中間部26aは、板厚方向(上下方向)で相互にずれた高さ位置に配置されており、第1接続部22aが段差状部30aによって中間部26aよりも下方に位置している。同様に、後方の段差状部30aの両側に配された第2接続部24aと中間部26aは、板厚方向(上下方向)で相互に異なる高さ位置に配置されており、第2接続部24aが段差状部30aによって中間部26aよりも下方に位置している。
【0030】
なお、前後の連結部28a,28aの中間部26aから左方への突出長さは、相互に略同じとされている。また、前後の段差状部30a,30aの中間部26aから下方への突出長さは、相互に略同じとされている。したがって、第1接続部22aと第2接続部24aは、上下方向および左右方向において、互いに略同じ位置に配置されて、前後両側に位置している。
【0031】
また、第3端子金具12cには、中間部26cの前後両端部から右方へ突出する連結部28cがそれぞれ設けられている。そして、前側の連結部28cの左端部から前方へ向けて第1接続部22cが延び出しているとともに、後側の連結部28cの左端部から後方へ向けて第2接続部24cが延び出している。これにより、第1接続部22cは、中間部26cの前方への延長に対して左方にずれた位置に配置されており、第2接続部24cは、中間部26cの後方への延長に対して左方にずれた位置に配置されている。
【0032】
各連結部28cには、
図5,6に示すように、板厚方向でクランク状に屈曲して延びる段差状部30cが設けられている。段差状部30cは、連結部28cにおける中間部26c側の端部に設けられており、中間部26cとの連接端から上方へ突出している。したがって、前方の段差状部30cの両側に配された第1接続部22cと中間部26cは、板厚方向(上下方向)で相互に異なる高さ位置に配置されており、第1接続部22cが段差状部30cによって中間部26cよりも上方に位置している。同様に、後方の段差状部30cの両側に配された第2接続部24cと中間部26cは、板厚方向(上下方向)で相互に異なる高さ位置に配置されており、第2接続部24cが段差状部30cによって中間部26cよりも上方に位置している。
【0033】
なお、前後の連結部28c,28cの中間部26cから右方への突出長さは、相互に略同じとされている。また、前後の段差状部30c,30cの中間部26cから上方への突出長さは、相互に略同じとされている。したがって、第1接続部22cと第2接続部24cは、上下方向および左右方向において、互いに略同じ位置に配置されて、前後両側に位置している。
【0034】
また、第2端子金具12bは、連結部28や段差状部30を備えておらず、前後方向に直線的に延びる平板状とされている。
【0035】
そして、第1~第3端子金具12a~12cは、
図6に示すように、第1端子金具12aの中間部26aと第3端子金具12cの中間部26cが、第2端子金具12bの中間部26bに対して、上下方向の両側に位置して上下方向の投影においてオーバラップした状態で配置されている。中間部26a~26cは、上下方向視において相互に略同じ形状とされており、全体が上下方向の投影においてオーバラップしている。相互にオーバラップした状態で配された中間部26a~26cは、中間部26aと中間部26bの対向面間と中間部26bと中間部26cの対向面間とにそれぞれ所定の隙間31が設けられており、上下方向で相互に離隔した状態で重なって配されている。隙間31の上下寸法(上下方向で隣り合う中間部26,26の距離)は、実施形態1では中間部26の板厚寸法と略同じとされているが、例えば電気絶縁性等を考慮して適宜に変更され得る。
【0036】
板状とされた3つの中間部26a~26cが板厚方向の投影で相互にオーバラップした状態で配置されることにより、中間部26a~26cの上下方向の外寸(中間部26aの上面から中間部26cの下面までの距離)と、中間部26の左右方向の外寸(中間部26の板幅寸法)との比が、3つの中間部を板幅方向で並列配置する場合に比して、より1に近くなっている。
【0037】
このような第1~第3端子金具12a~12cの配置状態において、第1接続部22a~22cは、左右方向で相互に所定の距離を隔てて並列配置されており、左方から第1接続部22a、第1接続部22b、第1接続部22cとされている。同様に、第2接続部24a~24cは、左右方向で相互に所定の距離を隔てて並列配置されており、左方から第2接続部24a、第2接続部24b、第2接続部24cとされている。第1接続部22a~22cは、前方の段差状部30a,30cによって上下方向の高さ位置が相互に同じとされており、1つの水平面上に配置されている。同様に、第2接続部24a~24cは、後方の段差状部30a,30cによって上下方向の高さ位置が相互に同じとされて、何れも1つの水平面上に配置されており、実施形態1では、第1接続部22a~22cと第2接続部24a~24cが1つの水平面上に位置している。
【0038】
<フェライトコア14>
図3,4にも示されるように、フェライトコア14は、全体として前後方向を軸方向とする筒状とされている。フェライトコア14の内部空間32は、最大左右方向寸法が最大上下方向寸法よりも僅かに大きくされた横長の断面を有している。内部空間32の最大左右方向寸法は、内部空間32の最大上下方向寸法に対して1.8倍以下とされていることが望ましく、より好適には1.5倍以下とされている。また、フェライトコア14は所定の前後方向寸法を有しており、フェライトコア14の前後方向寸法が、各端子金具12における中間部26の前後方向寸法よりも小さく、実施形態1では前方の連結部28a(28c)と後方の連結部28a(28c)との前後方向の離隔距離よりも小さくされている。フェライトコア14としては従来公知の材質が採用されるが、実施形態1では、フェライトコア14がMn-Zn系フェライトにより形成されている。
【0039】
このフェライトコア14は、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cの周囲を一括で囲って配置されている。すなわち、フェライトコア14は、最も上側に位置する中間部26aの上方を覆う上方部34と、最も下側に位置する中間部26cの下方を覆う下方部36とを、備えている。また、フェライトコア14は、第1端子金具12aの前後の連結部28a,28aの間に挿し入れられて中間部26a~26cの左方を覆う左方部38と、第3端子金具12cの前後の連結部28c,28cの間に挿し入れられて中間部26a~26cの右方を覆う右方部40とを、備えている。
【0040】
実施形態1では、フェライトコア14が上下方向で分割可能とされており、フェライトコア14が、上側に位置する上部フェライトコア42と下側に位置する下部フェライトコア44とによって構成されている。すなわち、上部フェライトコア42と下部フェライトコア44は何れも半割筒形状であり、上部フェライトコア42と下部フェライトコア44におけるそれぞれの周方向両端面が上下方向で相互に重ね合わされることで、それぞれの開口部が相互に覆われて略角丸矩形状の内部空間32が構成されている。
【0041】
要するに、上部フェライトコア42および下部フェライトコア44における周方向中間部分により、それぞれ所定の左右方向寸法を有するフェライトコア14の上方部34および下方部36が構成されている。また、上部フェライトコア42および下部フェライトコア44におけるそれぞれの左方の周方向端部が重ね合わされることでフェライトコア14の左方部38が構成されている。同様に、上部フェライトコア42および下部フェライトコア44におけるそれぞれの右方の周方向端部が重ね合わされることでフェライトコア14の右方部40が構成されている。
【0042】
<コネクタハウジング16>
コネクタハウジング16は、端子保持部46とコア保持部48とを備えている。実施形態1において、端子保持部46とコア保持部48は、一体形成されている。コネクタハウジング16を形成する合成樹脂の材質は限定されるものではないが、何れも高耐熱性の樹脂材料で形成されることが好ましい。実施形態1では、コネクタハウジング16を構成する端子保持部46とコア保持部48が、何れも、PVC(ポリ塩化ビニル)よりも高耐熱性を有する樹脂材料であるPBT(ポリブチレンテレフタレート)により形成されている。なお、PVCよりも高耐熱性の樹脂材料としては、例えばPBT,PPS(ポリフェニレンスルファイド),PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PAI(ポリアミドイミド)等の熱可塑性樹脂やPI(ポリイミド樹脂)等の熱硬化性樹脂等が挙げられて、コネクタハウジング16の材質として、これらの材質が好適に採用され得る。
【0043】
<端子保持部46>
図6に示されるように、端子保持部46は、第1~第3端子金具12a~12cにおける第1接続部22a~22cおよび第2接続部24a~24cを除く部位を埋設状態で保持している。具体的には、第1~第3端子金具12a~12cにおける前後方向中間部分(中間部26a~26c)を略全面的に覆っている。換言すれば、第1~第3端子金具12a~12cの第1接続部22a~22cが端子保持部46から前方に突出しているとともに、第2接続部24a~24cが端子保持部46から後方に突出している。実施形態1では、
図3,5にも示されるように、端子保持部46が、中間部26a~26cに加えて、第1端子金具12aの連結部28aと、第3端子金具12cの連結部28cも覆って設けられている。
【0044】
また、端子保持部46の後方部分における左右方向の両側には、左右方向の外方に突出する脚部50,50が設けられている。脚部50は、第1端子金具12aおよび第3端子金具12cよりも左右方向の外方にそれぞれ設けられており、上下方向に貫通するボルト挿通孔52を有する金属製のカラー54をそれぞれ備えている。要するに、それぞれボルト挿通孔52を有する一対のカラー54,54が、端子保持部46の後方部分に設けられた脚部50,50に固着されて、第1端子金具12aおよび第3端子金具12cよりも左右方向の外方に保持されている。そして、各ボルト挿通孔52に挿通される図示しないボルトによって、フェライトコア内蔵コネクタ10が、第1~第3端子金具12a~12cの第1接続部22a~22cまたは第2接続部24a~24cに接続されるモータまたはPCU、あるいはこれらの間に配置される車載部品等に固定されるようになっている。なお、コネクタハウジング16は、カラー54,54を備えた一体成形品として形成される。
【0045】
端子保持部46は、
図3に示されているように、上下方向で相互にオーバラップして配された中間部26a~26cを埋設状態で保持している。すなわち、端子保持部46は、フェライトコア14の内部空間32に充填されており、中間部26a~26cの周囲を囲んで中間部26a~26cとフェライトコア14との間に介在している。また、端子保持部46は、上下方向で離隔して対向配置された中間部26a,26b間の隙間31および中間部26b,26c間の隙間31にも充填されており、各中間部26a~26cの周囲をそれぞれ囲むように設けられている。そして、端子保持部46が中間部26a~26cを埋設状態で保持していることによって、中間部26a~26cが上下方向で相互に離隔した状態でオーバラップした所定の配置に位置決めされている。また、中間部26a~26cの隙間31に電気絶縁性の樹脂で構成された端子保持部46が充填されていることにより、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cにおける導通(短絡)が防止されている。
【0046】
<コア保持部48>
フェライトコア14の表面は、コア保持部48によって覆われている。コア保持部48は、端子保持部46と一体形成されており、フェライトコア14の外周面および前後端面を覆って設けられることにより、フェライトコア14を埋設状態で保持している。なお、コネクタハウジング16におけるフェライトコア14の内周面を覆う部分は、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cを埋設状態で保持する端子保持部46であると同時に、フェライトコア14を埋設状態で保持するコア保持部48でもある。
【0047】
実施形態1では、コネクタハウジング16を構成する端子保持部46とコア保持部48が、一体形成されている。特に、コネクタハウジング16の成形時に第1~第3端子金具12a~12cとフェライトコア14とカラー54,54とがインサートされることにより、フェライトコア内蔵コネクタ10を一次モールド成形品(フェライトコア14とカラー54,54とを備える一体成形品)として一度の射出成形で得ることができる。したがって、複数回の射出成形工程を要する場合に比して、製造工程数を少なくすることができて、製造工程の簡略化や製造時間の短縮が図られる。
【0048】
フェライトコア内蔵コネクタ10は、コネクタハウジング16の端子保持部46とコア保持部48がPVCよりも硬質の樹脂材料によって一体成形されていても、コネクタハウジング16の成形後の収縮に起因する作用応力によるフェライトコア14の損傷が回避される。
【0049】
すなわち、筒状のフェライトコア14に挿通された第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cは、板厚寸法が板幅寸法よりも小さくされた板状とされており、板厚方向で相互にオーバラップした状態で配置されている。それゆえ、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cに装着するために必要となるフェライトコア14の内周長さが短くされており、フェライトコア14の磁路長を短くすることが可能とされている。その結果、コネクタハウジング16のコア保持部48で覆われるフェライトコア14の表面積を小さくして、コア保持部48の樹脂量を少なくすることができ、コア保持部48の成形後の収縮によってフェライトコア14に及ぼされる応力が低減される。それゆえ、コネクタハウジング16の形成材料は、成形収縮によるフェライトコア14の損傷を防ぐ必要性によって制限され難く、例えば成形収縮による作用応力が小さいPVC等に限定されることなく、大きな自由度で選択することができる。したがって、第1~第3端子金具12a~12cを埋設状態で保持する端子保持部46と、フェライトコア14を埋設状態で保持するコア保持部48とを、強度や耐久性の観点からハウジングとして好適な比較的に硬質の樹脂材料によって一体成形することができる。特に、自動車への適用等によって耐熱性が要求される場合などには、PVCよりも耐熱性に優れたPBT等の樹脂材料を選択して、耐熱性に優れるフェライトコア内蔵コネクタ10を提供することも可能となる。
【0050】
また、フェライトコア14の磁路長が短くされることにより、フェライトコア14のインピーダンス性能(ノイズ除去性能)を維持しながら、フェライトコア14の磁路断面積を小さくすることも可能であり、それによってフェライトコア14の更なる小型化と、それに伴うコネクタハウジング16の成形収縮による作用応力の更なる低減が実現される。すなわち、フェライトコア14のインピーダンス性能(インダクタンス)は、以下の数式1によって算出されるが、実施形態1のフェライトコア14は数式1における磁路長lが小さく設定されている。したがって、必要なインピーダンス性能(L)を維持しながら磁路断面積Sを小さくすることが可能であり、磁路断面積Sを小さくすることによるフェライトコア14の更なる小型化を、インピーダンス性能(L)を維持しながら実現することができる。なお、数式1において、Lはフェライトコア14のインダクタンス、μはフェライトコア14の透磁率、Sはフェライトコア14の磁路断面積、Nはフェライトコア14に巻き付けられる導体の巻き数、lはフェライトコア14の磁路長である。
【0051】
【0052】
このような実施形態1のフェライトコア内蔵コネクタ10は、第1接続部22が図示しないモータに対して電気的に接続されるとともに、第2接続部24が図示しないPCUに対して電気的に接続される。第1接続部22は、コネクタハウジング16からフェライトコア14の軸方向である前方へ向けて突出して露出しており、第2接続部24は、コネクタハウジング16から後方へ向けて突出して露出していることから、フェライトコア内蔵コネクタ10の前後両側に配された機器(モータおよびPCU)に対して第1,第2接続部22,24を接続し易い。
【0053】
また、第1~第3端子金具12a~12cに連結部28a~28cが設けられていることにより、中間部26a~26cが上下方向で相互にオーバラップして配置された状態で、第1接続部22a~22cが板幅方向である左右方向において相互に隙間を隔てて並列配置されている。これにより、第1接続部22a~22cにおいてモータ側の接続構造に対応しつつ、中間部26a~26cに外挿状態で取り付けられるフェライトコア14の小型化を図ることができる。
【0054】
また、第1,第3端子金具12a,12cの前方の連結部28a,28cには、上下各一方へ突出する段差状部30a,30cが設けられており、中間部26a~26cが上下方向で相互にオーバラップした状態で、第1接続部22a~22cが上下方向で相互に同じ高さ位置に配置されている。これにより、第1接続部22a~22cにおいてモータ側の接続構造に対応しつつ、中間部26a~26cに外挿状態で取り付けられるフェライトコア14の小型化を図ることができる。
【0055】
実施形態1では、第2接続部24a~24cについても、第1接続部22a~22cと同様に、左右方向で相互に離れて並列配置され、且つ上下方向で相互に同じ高さ位置に配置されている。これにより、第2接続部24a~24cにおいてPCU側の接続構造に対応しつつ、中間部26a~26cに外挿状態で取り付けられるフェライトコア14の小型化を図ることができる。
【0056】
<実施形態2>
以下、本開示の実施形態2のフェライトコア内蔵コネクタ60について、
図7を用いて説明する。実施形態2のフェライトコア内蔵コネクタ60は、実施形態1のフェライトコア内蔵コネクタ10と同様の構造であるが、コネクタハウジング62のコア保持部64がフェライトコア14を露出させる露出孔66を有している点で異なっている。なお、以下の説明において、実施形態1と実質的に同一の部材および部位には、図中に、実施形態1と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。
【0057】
具体的には、コア保持部64におけるフェライトコア14の外周面を覆う周壁部に、上下方向または左右方向で貫通する露出孔66が形成されている。実施形態2では、略長円形断面とされた複数の露出孔66が形成されており、複数の露出孔66が、前後方向で2列に並んでコア保持部64の周方向の複数箇所に相互に離れて配置されている。そして、これら複数の露出孔66を通じて、フェライトコア14の外周面が外部に露出している。
【0058】
なお、コア保持部64においてフェライトコア14の左方部(38)および右方部40を左右方向外方から覆う部分には、側面視において略長円形とされた各2つの露出孔66,66がコア保持部64を左右方向で貫通して形成されている。また、コア保持部64においてフェライトコア14の上方部34および下方部(36)を上下方向外方から覆う部分には、平面視において略長円形とされた各2つの露出孔66,66がコア保持部64を上下方向で貫通して形成されている。また、コア保持部64を左右方向で貫通する露出孔66とコア保持部64を上下方向で貫通する露出孔66との周方向間にも各1つの露出孔66が形成されている。
【0059】
実施形態2のフェライトコア内蔵コネクタ60においても、実施形態1と同様に、フェライトコア14の小型化によってコネクタハウジング62を形成する樹脂材料の量を少なくすることができて、コネクタハウジング62の成形後の収縮でフェライトコア14に作用する応力を低減することができる。それに加えて、実施形態2では、複数の露出孔66がコア保持部64の周壁部に設けられており、これにより、フェライトコア14の外側に設けられるコア保持部64の樹脂材料の量を更に減少させることができる。この結果、コア保持部64の成形時において、樹脂材料の収縮等によるフェライトコア14の損傷のおそれが一層低減され得る。
【0060】
また、フェライトコア14の外周面が複数の露出孔66を通じて外部に露出していることから、ノイズ吸収時においてフェライトコア14が発熱する場合にも複数の露出孔66を通じて外部空間に熱を放熱することができて、熱性能に優れるフェライトコア内蔵コネクタ60を提供することができる。
【0061】
<実施形態3>
以下、本開示の実施形態3のフェライトコア内蔵コネクタ70について、
図8を用いて説明する。実施形態3のフェライトコア内蔵コネクタ70は、実施形態2のフェライトコア内蔵コネクタ60と同様に、コネクタハウジング72のコア保持部74の周壁部においてフェライトコア14を露出させる露出孔76を有している。これにより、実施形態3のフェライトコア内蔵コネクタ70は、実施形態2のフェライトコア内蔵コネクタ60と同様の効果を発揮することができる。
【0062】
なお、実施形態2では略長円形断面の露出孔66が設けられていたが、実施形態3では、略矩形断面の露出孔76が設けられている。実施形態2の露出孔66は、前後方向で2列に並んで設けられていたが、実施形態3の露出孔76は、前後方向で1列とされており、コア保持部74の周方向の複数箇所に設けられている。実施形態3における露出孔76は、1つあたりの断面積が実施形態2における露出孔66よりも大きくされており、複数の露出孔76の断面積の総和が、実施形態2における複数の露出孔66の断面積の総和よりも大きくされている。これにより、コア保持部74の周壁部の樹脂材料が、実施形態2におけるコア保持部64の周壁部よりも少なくされており、この結果、コア保持部74の成形時における樹脂材料の収縮等によるフェライトコア14の損傷のおそれがより一層低減され得る。
【0063】
<実施形態4>
以下、本開示の実施形態4のフェライトコア内蔵コネクタ80について、
図9を用いて説明する。実施形態4のフェライトコア内蔵コネクタ80は、コネクタハウジング82が、端子金具12を埋設状態で保持する第1樹脂部84と、第1樹脂部84とフェライトコア14を埋設状態で保持する第2樹脂部86とを、有している。
【0064】
第1樹脂部84は、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cと、第1端子金具12aの前後の連結部(28a,28a)と、第3端子金具12cの前後の連結部(28c,28c)とを、それぞれ埋設状態で保持している。第1樹脂部84は、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cの外周を覆っているとともに、それら中間部26a~26cの上下方向の対向面間に充填されている。
【0065】
第2樹脂部86は、第1樹脂部84とは別成形されており、フェライトコア14の表面を覆っている。第2樹脂部86は、フェライトコア14の外周面および前後両側の軸方向端面を被覆する外面被覆部88と、フェライトコア14の内周面と第1樹脂部84との対向面間を充填する内周充填部90とを、一体的に備えている。第2樹脂部86は、内周充填部90において第1樹脂部84と溶着されていてもよい。第1樹脂部84と第2樹脂部86は、別成形されることから、相互に異なる樹脂材料で形成することもできる。
【0066】
実施形態4のフェライトコア内蔵コネクタ80は、第2樹脂部86の成形品である二次モールド成形品(94)として形成される。以下に、実施形態4のフェライトコア内蔵コネクタ80の製造方法について、簡単に説明する。
【0067】
先ず、第1樹脂部84の射出成形金型に第1~第3端子金具12a~12cとカラー54,54をセットした状態で第1樹脂部84を射出成形する。これにより、第1~第3端子金具12a~12cとカラー54,54をインサート品とする一次モールド成形品92が形成される。
【0068】
次に、第2樹脂部86の射出成形金型に一次モールド成形品92とフェライトコア14をセットした状態で、第2樹脂部86を射出成形する。これにより、一次モールド成形品92とフェライトコア14をインサート品とする二次モールド成形品94として、フェライトコア内蔵コネクタ80が形成される。
【0069】
フェライトコア14は、内周面が一次モールド成形品92から離れた状態で、第2樹脂部86の射出成形金型にセットされる。これにより、フェライトコア14を一次モールド成形品92に対して適切な位置へ精度よく配置することができる。そして、フェライトコア14の内周面と一次モールド成形品92との対向面間に第2樹脂部86の内周充填部90が形成される。
【0070】
このように、コネクタハウジング82を構成する第1樹脂部84と第2樹脂部86とを、各別に成形することにより、コネクタハウジングの全体を一体成形する場合に比べて、フェライトコア14をインサート品に含む二次モールド成形品94(第2樹脂部86)の成形時の樹脂量を、第1樹脂部84の分だけ減らすことができる。それゆえ、第2樹脂部86の樹脂材料の硬化に際して、フェライトコア14に加えられる収縮力を更に低減して、フェライトコア14の損傷をより有利に防止することができる。
【0071】
また、第2樹脂部86がフェライトコア14の内周面と第1樹脂部84との対向面間を充填する内周充填部90を備えており、内周充填部90が外面被覆部88と一体的に形成されていることから、第1樹脂部84の周囲にフェライトコア14を安定して埋設状態で保持することができる。
【0072】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定され
るものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に
含まれる。
【0073】
(1)前記実施形態では、3つの端子金具12(第1~第3端子金具12a~12c)が設けられていたが、端子金具の数は複数であればよく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0074】
(2)例えば、端子金具における中間部の板幅寸法は、第1,第2接続部の板幅寸法と同じであってもよいし、第1,第2接続部の板幅寸法よりも大きくてもよい。また、端子金具は、中間部が帯板状とされていれば、必ずしも全体にわたって帯板状とされていなくてもよく、例えば第1,第2接続部がロッド状や円環板状、U字板状等の帯板状以外の形状とされていてもよい。
【0075】
(3)前記実施形態では、第1~第3端子金具12a~12cの中間部26a~26cが相互に全体にわたって上下方向の投影でオーバラップして配されている例を示したが、複数の端子金具の中間部は、上下方向の投影において部分的に相互にオーバラップしていてもよい。具体的には、例えば、前記実施形態における第1端子金具12aの中間部26aを第2端子金具12bの中間部26bに対して左方にずれた位置に配置して、中間部26aの右側部分が中間部26bと上下方向でオーバラップし、中間部26aの左側部分が中間部26bと上下方向でオーバラップしないようにすることもできる。
【0076】
(4)前記実施形態では、第2端子金具12bの中間部26bに対して、第1端子金具12aの中間部26aと第3端子金具12cの中間部26cが上下両側から挟み込むようにオーバラップしていたが、例えば、第1端子金具12aの中間部26aに対して、第2端子金具12bの中間部26bと第3端子金具12cの中間部26cが上下両側から挟み込むようにオーバラップして配置されていてもよい。この場合には、例えば、第1端子金具12aと第3端子金具12cに対して、中間部26a,26cから相互に同じ上下方向へ向けて突出して且つ突出量が相互に異なる段差状部30a,30cを設けたり、第1端子金具12aには段差状部を設けず、代わりに第2端子金具12bにおける中間部26bと第1接続部22bの間に段差状部を設けることにより、第1接続部22a~22cを板厚方向で相互に同じ高さ位置に配置することができる。
【0077】
(5)第1接続部は、板幅方向で相互に離れて並列配置されるものに限定されず、例えば、板幅方向で相互に同じ位置に配されて、板厚方向で相互に離れて並列配置されていてもよい。したがって、全ての端子金具において連結部が設けられない場合もあり得る。
【0078】
(6)複数の端子金具の第1接続部が板幅方向で相互に離れて並列配置されている場合に、それら第1接続部は必ずしも板厚方向で相互に同じ高さ位置に配置されていなくてもよい。したがって、少なくとも1つの端子金具に連結部が設けられていたとしても、連結部に段差状部が設けられることは必須ではない。
【0079】
(7)露出孔は、コア保持部におけるフェライトコアの外周面を覆う部分に代えてまたは加えて、コア保持部におけるフェライトコアの軸方向端面を覆う部分を貫通して形成されていてもよい。なお、コア保持部を貫通する露出孔の貫通方向は、特に限定されない。
【0080】
(8)前記実施形態2,3では、コネクタハウジング16のコア保持部48の外周壁部を貫通する複数の露出孔66,76を例示したが、例えば、コア保持部の外周壁部をなくして、コア保持部をフェライトコアの軸方向両端と内周面とを覆う壁部で構成された外周へ向けて開口する凹状断面とすることもできる。これによっても、コア保持部を形成する樹脂材料の量を減らすことができて、コア保持部の成形後収縮によるフェライトコアの損傷をより効果的に防ぐことができる。なお、コア保持部におけるフェライトコアの軸方向端面を覆う部分をなくして、コア保持部を軸方向に開口する凹状断面とすることもできる。
【符号の説明】
【0081】
10 フェライトコア内蔵コネクタ(実施形態1)
12 端子金具
12a 第1端子金具
12b 第2端子金具
12c 第3端子金具
14 フェライトコア
16 コネクタハウジング
18 前方貫通孔
20 後方貫通孔
22(22a~22c) 第1接続部
24(24a~24c) 第2接続部
26(26a~26c) 中間部
28(28a,28c) 連結部
30(30a,30c) 段差状部
31 隙間
32 内部空間
34 上方部
36 下方部
38 左方部
40 右方部
42 上部フェライトコア
44 下部フェライトコア
46 端子保持部
48 コア保持部
50 脚部
52 ボルト挿通孔
54 カラー
60 フェライトコア内蔵コネクタ(実施形態2)
62 コネクタハウジング
64 コア保持部
66 露出孔
70 フェライトコア内蔵コネクタ(実施形態3)
72 コネクタハウジング
74 コア保持部
76 露出孔
80 フェライトコア内蔵コネクタ(実施形態4)
82 コネクタハウジング
84 第1樹脂部
86 第2樹脂部
88 外面被覆部
90 内周充填部
92 一次モールド成形品
94 二次モールド成形品