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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032462
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】戸開走行保護装置用の安全制御回路
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20240305BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B66B5/02 S
B66B1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136132
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】522216329
【氏名又は名称】株式会社OMCテクニカ
(71)【出願人】
【識別番号】522216330
【氏名又は名称】大道 俊幸
(71)【出願人】
【識別番号】307043120
【氏名又は名称】サノシーテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516172042
【氏名又は名称】佐野 達広
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】大道 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 達広
【テーマコード(参考)】
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F304BA26
3F304EA29
3F304EB04
3F304ED06
3F304ED13
3F502KA23
3F502MA42
3F502MA48
3F502NA07
3F502NA28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロープ式エレベータの制御系部品の交換やカスタマイズの自由度を高める。
【解決手段】通常の運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、交換装着可能に一枚の基板上に形成されているものであり、1複数の入力用接続部と出力用接続部と、戸開走行判定論理プログラムを含む予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、動作異常判定論理プログラムに従って、受信信号を処理して異常判定を行うと共に該異常判定に基づいて電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器及びブレーキ用電磁接触器に電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し出力させる安全制御用演算処理装置と、が含まれ、安全制御用演算処理装置は、異常判定が成された際に、異常判定の種類毎に対応する異常信号を作成して出力するものとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時作動型の電磁式二重ブレーキを備えた巻上機によるかごの昇降と、かご戸及び各階の乗場戸の開閉とが、予め定められた運転制御プログラムに従って運転制御されるロープ式エレベータの戸開走行保護装置用の安全制御回路において、
前記予め定められた運転制御プログラムに従った運転制御を行うための運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されているものであり、
前記1モジュールには、
外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部と、
予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、
前記動作異常判定論理プログラムに従って、前記入力用接続部からその入力部を介して受信した信号を処理して異常判定を行うと共に、該異常判定に基づいて、前記巻上機のモータへの電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器及び前記電磁式二重ブレーキへの電力供給回路に接続されたブレーキ用電磁接触器に電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し、該かご制止指令信号をその出力部から出力させる機能を備えた安全制御用演算処理装置と、が含まれ、
前記複数の入力用接続部は、前記かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号が入力されるために設定された接続部と、前記かごが予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部と、有し、
前記複数の出力用接続部は、前記モータ用電磁接触器と前記ブレーキ用電磁接触器とへ前記かご制止指令信号が出力されるためにそれぞれ設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラムの一つとして戸開走行判定論理プログラムが含まれており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記戸開走行判定論理プログラムに従って予め定められた一定時間ごとに前記特定距離感知装置からの信号と前記かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号とを処理し、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態で前記かごの一定距離以上の走行が検知された際に、戸開走行異常判定を行うと共に該戸開走行異常判定に基づいて前記かご制止指令信号を作成して出力する機能を備え、
前記安全制御用演算処理装置は、さらに、各動作異常判定論理プログラムに従って異常判定が成された際に、前記戸開走行異常判定を含む異常判定の種類毎に対応する異常信号を作成して出力する機能を備え、前記出力用接続部は、前記異常信号を種類別に外部へ出力するように設定された異常信号出力用の接続部を有することを特徴とする戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【請求項2】
前記モータ用電磁接触器へ前記かご制止指令信号が出力されるための接続部と、前記ブレーキ用電磁接触器へ前記かご制止指令信号が出力されるための接続部とのそれぞれには、前記モータ用電磁接触器への電力供給と、前記ブレーキ用電磁接触器とへの電力供給を直接的にオン・オフ制御可能な電磁接触器が各々設けられていることを特徴とする請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【請求項3】
前記入力用接続部は、前記かごの周辺に設けられたエンコーダからのパルス信号が入力されるための接続部を有し、
前記安全制御用記憶部には、前記パルス信号を処理するためのエンコーダ信号処理プログラムとエンコーダ信号処理プログラム用データが格納されており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記エンコーダ信号処理プログラムに従って、前記接続部から入力部を介して受信された前記パルス信号をカウントし、そのカウント数と前記エンコーダ信号処理プログラム用データに含まれている1パルス当たりの前記かごの移動距離あるいは前記エンコーダの一回転相当のパルス数単位の前記かごの移動距離に基づいて、前記かごの移動速度を演算する機能を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【請求項4】
前記入力用接続部は、前記電磁式二重ブレーキの各ブレーキ動作感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラムの一つとして前記電磁式二重ブレーキに対するブレーキ異常判定論理プログラムが含まれており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記ブレーキ異常判定論理プログラムに従って、予め定められた一定時間ごとに前記接続部から入力部を介して受信された前記各ブレーキ動作感知装置からの信号を処理し、少なくとも一方のブレーキに異常を検知した際にブレーキ異常判定を行い、該ブレーキ異常判定に基づいて前記かご制止指令信号を作成して出力すると共にブレーキ異常信号を作成して出力する機能をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【請求項5】
前記戸開走行保護装置への実装後の起動から予め定められた経過年数に達した時点で点検・交換の時期を示すための表示ランプをさらに備え、
前記安全制御用記憶部は、前記安全制御回路の前記点検・交換の時期を判定するための点検・交換用プログラムを格納しており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記点検・交換用プログラムに従って、前記安全制御回路の起動時から経過年数を加算計測し、前記予め定められた経過年数に達した時点で前記表示ランプを点灯させる指令信号を出力する機能をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【請求項6】
前記表示ランプは、LED7セグメント表示器を備えており、
前記安全制御用演算処理装置は、予め定められた経過年数より前の加算年数から前記LED7セグメント表示器に表示させる機能をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【請求項7】
前記運転制御回路用とは別のエラー表示手段と、少なくとも前記戸開走行判定論理プログラムの予め定められた一定時間ごとにの稼働を監視する監視手段とを備え、
前記安全制御用演算処理装置は、少なくとも前記戸開走行判定論理プログラムが予め定められた一定時間ごとの正常稼働を示す信号を出力するものであり、
前記監視手段は、前記正常稼働を示す信号が一定時間すぎても通知されない場合に、エラー発生を判定し、該判定に基づいて前記エラー表示手段にエラー表示を指示する信号を出力すると共に、予め定められた異常時処理を実行させる指令信号を出力する機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ式エレベータの戸開走行保護装置用の安全制御回路に関するものであり、詳しくは、通常の運転制御回路が設けられたエレベータ制御盤とは別体に形成され、別製品として取り扱い可能な戸開走行保護装置用の安全制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種建造物や施設の乗用、荷物用エレベータとして広く普及しているのはロープ式である。ロープ式エレベータは、かご室とつり合いおもり(カウンターウエイト)を連結するワイヤーロープがつるべ式に綱車(シーブ)にかけられ、ロープとシーブとの間の摩擦力(トラクション)を利用して電動式の巻上機で効率よく昇降させる方式である。また、巻上機は、モータの加速・減速、停止を供給電力の周波数の可変制御によって行うインバーター制御方式とすることで、省エネルギー効果を図ったものも増えている。
【0003】
通常、エレベータの運転制御は、運転制御回路が、乗場戸横の操作ボタン及びかご内の壁面操作盤でのボタン操作で発生した信号に応じて、巻上機の駆動部への制御指令を発信することによって行われる。即ち、運転制御回路は、予め定められた各箇所でのセンサからの検出出力、例えば、かごの位置検出、かご戸と乗場戸各々の開閉状態の検出結果に基づいて、かごの上昇・下降移動、指定階でのかご停止、及びかご戸、乗場戸の開閉、を適切に制御するものである。
【0004】
また、近年では、新設のエレベーターに関して戸開走行保護装置(UCMP:Unintended Car Movement Protection)の設置が、義務化されている。この戸開走行保護装置(以降、UCMPとも記す)とは、エレベータの駆動部や制御部の故障によってかご戸及び乗場戸が全て閉じる前にかごが動いてしまうことを回避して事故発生を防止するための安全装置である。その構成は、2つの機械的に独立したブレーキ(二重ブレーキ)と通常運転用とは別の独立した安全制御回路を備え、少なくともいずれかの戸が開いた状態でかごが乗場から一定距離以上動くと直ちに巻上機のモータを制止させる機構である。
【0005】
この機構においては、2つのブレーキの一方のブレーキが何らかの原因で制動力がなくなってしまった場合でも、もう1つのブレーキでかごを保持できると共に、通常の運転制御プログラムが故障してしまった場合でも、UCMP用の制御回路で安全にかごを制止させることができる。即ち、戸開走行保護装置は、ブレーキと制御に対して二重の安全を備えた装置である。ロープ式エレベータでは、常時作動型二重ブレーキとして、ディスク式又はドラム式のダブルブレーキが採用されている。
【0006】
この戸開走行保護装置では、かごが規定された乗場位置(床レベル)から予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置を備えており、安全制御回路が、特定距離感知装置からの検出信号とかご戸又は乗場戸の開状態の検出信号とから、かごの戸開走行を検知し、直ちにかごを制止させるものである。
【0007】
具体的には、通常運転においては、かごが停止階の着床レベルから上下方向に一定の距離範囲以内、いわゆるドアゾーン内にあるときのみ、かご戸及び乗場戸の開閉装置は作動可能で、それ以外の位置ではかご戸及び乗場戸の開閉装置が作動しないよう制御される。かごがその一定の距離範囲内にあるかどうかを検出するのが特定距離感知装置である。
【0008】
特定距離感知装置は、かごに固定された光検出器と、各階の所定位置に設置された遮蔽部材とで構成される光電式のものが一般的である。通常、各階で二組とし、一方に障害が生じても対応可能としている。この光電式の特定距離感知装置では、遮蔽部材の上下幅が前記ドアゾーンに相当し、この遮蔽部材に対する光検出器の相対位置関係に応じて信号が出力される。
【0009】
通常の運転制御回路においては、予め定められた運転制御プログラムに従って、特定距離感知装置からの信号を処理し、かごがドアゾーン内にあるかドアゾーン外へ出たかが検知されてかごの位置が判断される。このかご位置とかご戸及び乗場戸の開閉状態とに基づいて、乗り降りのためのかご戸及び乗場戸の開閉やかご昇降移動が駆動制御される。
【0010】
戸開走行保護装置の安全制御回路においても、特定距離感知装置からの信号と、かご戸及び乗場戸からの信号が受信され、異常判定の論理プログラムに従って各信号が処理される。そして、かご戸及び乗場戸の少なくともいずれかの開状態でのかごのドアゾーン外への移動が検知されると、戸開走行であることが判定され、予め定められた処理が実行される(例えば、特許文献1、特許文献2を参照。)。
【0011】
なお、かごの走行を直ちに停止させるには、まず、巻上機の駆動源であるモータの回転を制止させる。即ち、モータへの電力供給を遮断すれば良いが、モータ駆動がインバータによって制御されている場合は、インバータへの電力供給を遮断する。一方、二重ブレーキとしては、緊急時の制動・保持用に適した無励磁作動型、即ち、通電遮断時にブレーキとして機能する電磁式ブレーキが多く採用されている。従って、戸開走行保護装置においては、二重ブレーキが無励磁作動型である場合、戸開走行異常判定時には、モータ側への電力供給の遮断と同時にブレーキへの電力供給も遮断する構成となっていることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012-126558号公報
【特許文献2】特許第5741746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
なお、戸開走行保護装置(UCMP)は、国土交通大臣認定の対象であり、大臣認定を取得しなければ実際にエレベータに実装できない。この大臣認定は、UCMPの各構成要素の全てにおいて適正評価を得る必要がある。例えば、ブレーキや特定距離感知装置の各構成部品の仕様はもちろん、制御盤、さらには各検出プログラムについても同様である。
【0014】
しかしながら、一般的に、エレベータの制御回路は、制御ボックス内に制御盤として配置されており、UCMP用の安全制御回路も、通常の運転制御回路と共に同じ制御盤に設けられており、制御盤自体が一体的な製品形態として扱われている。従って、制御盤と共にエレベータの主要部である巻上機のメーカーがUCMP回路内蔵型制御盤を対象とした大臣認定の取得を行っていることが多い。このため、このような制御盤に設けられているいずれかの部品を変更する場合、それが本体側の性能に影響するものであったり、例えばインバータの交換など、認定取得時の型番と相違するものである場合には、改めて制御盤単位で大臣認定を再取得する必要があった。これは、非常に手間やコストがかかる面倒な方式であるため、部品のカスタマイズや部分的な改良開発を行うことが困難であった。
【0015】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、ロープ式エレベータの制御系における部品の交換やカスタマイズの自由度を高めることに寄与し、国土交通大臣認定の取得及び再取得が従来より容易になる戸開走行保護装置用の安全制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、常時作動型の電磁式二重ブレーキを備えた巻上機によるかごの昇降と、かご戸及び各階の乗場戸の開閉とが、予め定められた運転制御プログラムに従って運転制御されるロープ式エレベータの戸開走行保護装置用の安全制御回路において、
前記予め定められた運転制御プログラムに従った運転制御を行うための運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されているものであり、
前記1モジュールには、
外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部と、
予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、
前記動作異常判定論理プログラムに従って、前記入力用接続部からその入力部を介して受信した信号を処理して異常判定を行うと共に、該異常判定に基づいて、前記巻上機のモータへの電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器及び前記電磁式二重ブレーキへの電力供給回路に接続されたブレーキ用電磁接触器に電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し、該かご制止指令信号をその出力部から出力させる機能を備えた安全制御用演算処理装置と、が含まれ、
前記複数の入力用接続部は、前記かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号が入力されるために設定された接続部と、前記かごが予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部と、有し、
前記複数の出力用接続部は、前記モータ用電磁接触器と前記ブレーキ用電磁接触器とへ前記かご制止指令信号が出力されるためにそれぞれ設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラムの一つとして戸開走行判定論理プログラムが含まれており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記戸開走行判定論理プログラムに従って予め定められた一定時間ごとに前記特定距離感知装置からの信号と前記かご戸及び全乗場戸の開閉状態を示す信号とを処理し、前記かご戸及び全乗場戸のうちの少なくとも一つが開状態で前記かごの一定距離以上の走行が検知された際に、戸開走行異常判定を行うと共に該戸開走行異常判定に基づいて前記かご制止指令信号を作成して出力する機能を備え、
前記安全制御用演算処理装置は、さらに、各動作異常判定論理プログラムに従って異常判定が成された際に、前記戸開走行異常判定を含む異常判定の種類毎に対応する異常信号を作成して出力する機能を備え、前記出力用接続部は、前記異常信号を種類別に外部へ出力するように設定された異常信号出力用の接続部を有することを特徴とするものである。
【0017】
請求項2に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記モータ用電磁接触器へ前記かご制止指令信号が出力されるために設定された接続部と、前記ブレーキ用電磁接触器へ前記かご制止指令信号が出力されるために設定された接続部とのそれぞれには、前記モータ用電磁接触器への電力供給と、前記ブレーキ用電磁接触器とへの電力供給を直接的にオン・オフ制御可能な電磁接触器が各々設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記入力用接続部は、前記かごの周辺に設けられたエンコーダからのパルス信号が入力されるために設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部には、前記パルス信号を処理するためのエンコーダ信号処理プログラムとエンコーダ信号処理プログラム用データが格納されており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記エンコーダ信号処理プログラムに従って、前記接続部から入力部を介して受信された前記パルス信号をカウントし、そのカウント数と前記エンコーダ信号処理プログラム用データに含まれている1パルス当たりの前記かごの移動距離あるいは前記エンコーダの一回転相当のパルス数単位の前記かごの移動距離に基づいて、前記かごの移動速度を演算する機能を更に備えていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記入力用接続部は、前記電磁式二重ブレーキの各ブレーキ動作感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部を有し、
前記安全制御用記憶部に格納されている前記動作異常判定論理プログラムの一つとして前記電磁式二重ブレーキに対するブレーキ異常判定論理プログラムが含まれており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記ブレーキ異常判定論理プログラムに従って、予め定められた一定時間ごとに前記接続部から入力部を介して受信された前記各ブレーキ動作感知装置からの信号を処理し、少なくとも一方のブレーキに異常を検知した際にブレーキ異常判定を行い、該ブレーキ異常判定に基づいて前記かご制止指令信号を作成して出力すると共にブレーキ異常信号を作成して出力する機能をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記戸開走行保護装置への実装後の起動から予め定められた経過年数に達した時点で点検・交換の時期を示すための表示ランプをさらに備え、
前記安全制御用記憶部は、前記安全制御回路の前記点検・交換の時期を判定するための点検・交換用プログラムを格納しており、
前記安全制御用演算処理装置は、前記点検・交換用プログラムに従って、前記安全制御回路の起動時から経過年数を加算計測し、前記予め定められた経過年数に達した時点で前記表示ランプを点灯させる指令信号を出力する機能をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、請求項5に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記表示ランプは、LED7セグメント表示器を備えており、
前記安全制御用演算処理装置は、予め定められた経過年数より前の加算年数から前記LED7セグメント表示器に表示させる機能をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7に記載の発明に係る戸開走行保護装置用の安全制御回路は、請求項1に記載の戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記運転制御回路用とは別のエラー表示手段と、少なくとも前記戸開走行判定論理プログラムの予め定められた一定時間ごとに稼働を監視する監視手段とを備え、
前記安全制御用演算処理装置は、少なくとも前記戸開走行判定論理プログラムが予め定められた一定時間ごとの正常稼働を示す信号を出力するものであり、
前記監視手段は、前記正常稼働を示す信号が一定時間すぎても通知されない場合に、エラー発生を判定し、該判定に基づいて前記エラー表示手段にエラー表示を指示する信号を出力すると共に、予め定められた異常時処理を実行させる指令信号を出力する機能を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明による戸開走行保護装置用の安全制御回路は、通常の運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、該制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されているものであるため、その基板単位で一製品としての形態をとることができ、流通及び交換、また部品の変更やカスタマイズについて、安全制御回路の基板側だけで取り扱いが容易に済む。これによって運転制御回路側からの影響もまた運転制御回路へ影響することもなく、部品変更等に伴う大臣認定の再取得も、関連する側だけで済むことから、両者ともに従来よりも容易になるという効果がある。また、本発明の安全制御回路は、運転制御回路側と物理的に別体であるため、戸開走行判定等の動作異常判定論理プログラムの稼働において、通常の運転制御プログラムの影響を受けることがないため、その分、異常判定における誤作動の可能性は低減される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例による戸開走行保護装置用の安全制御回路をエレベータシステムに組み込まれた形で示す概略回路図である。
図2図1のエレベーターシステムにおけるかご戸スイッチと乗場戸スイッチのスイッチ回路図であり、(a)は各かご戸スイッチ・乗場戸スイッチが強制開離構造である場合、(b)は各かご戸スイッチ・乗場戸スイッチが強制開離構造でない場合をそれぞれ示す。
図3図1の安全制御回路による戸開走行異常判定の動作処理過程を示すフローチャート図である。
図4図3における戸開走行異常判定の後のかご制止を解除するための動作処理過程を示すフローチャート図である。
図5図1の安全制御回路によるブレーキ又はブレーキ動作感知装置又はRUN信号の異常判定の動作処理過程を示すフローチャート図である。
図6図1の実施例による安全制御回路が組み込まれたエレベータシステムの変形例であり、かごが上下戸タイプである場合の概略回路図である。
図7図1の安全制御回路における異常判定の種類と異常出力信号の対応を例示する相対表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明においては、常時作動型二重ブレーキを備えた巻上機によるかごの昇降と、かご戸及び各階の乗場戸の開閉とが、予め定められた運転制御プログラムに従って運転制御されるロープ式エレベータの戸開走行保護装置用の安全制御回路において、前記予め定められた運転制御プログラムに従った運転制御を行うための運転制御回路が設置されている制御盤とは別体の独立した1モジュールとして、前記制御盤に対して交換装着可能に一枚の基板上に形成されているものであり、前記1モジュールには、外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部と、予め定められた複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データが格納されている安全制御用記憶部と、前記動作異常判定論理プログラムに従って、前記入力用接続部からその入力部を介して受信した信号を処理して異常判定を行うと共に、該異常判定に基づいて、前記巻上機のモータへの電力供給回路に接続されたモータ用電磁接触器及び前記電磁式二重ブレーキへの電力供給回路に接続されたブレーキ用電磁接触器に電力供給を遮断させるかご制止指令信号を作成し、該かご制止指令信号をその出力部から出力させる機能を備えた安全制御用演算処理装置と、が含まれているものである。従って、本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路は、その基板単位で交換可能な一製品形態をとることができる。
【0026】
即ち、本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路は、エレベータの動作異常判定によりかごを制止させる安全制御に必要な要素である、戸開走行異常判定を含む複数の異常判定を運転制御回路を介することなく行い、各異常判定に基づいてかご制止指令信号の出力を行う機能を備えた安全制御用演算処理装置を始め、安全制御用記憶部と外部からの各種信号入力電線が結線される複数の入力用接続部及び外部への各種信号出力電線が結線される複数の出力用接続部が、同一基板上にまとめて構成されている。
【0027】
以上の構成により、本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路は、当該基板を通常運転制御に必要な他の回路等を備えた制御盤に装着するだけで、エレベータの安全制御システムが容易に構築できるものである。したがって、この一枚の基板が、通常運転用の運転制御回路が形成されている制御盤に対して独立した個別の製品形態として取り扱うことが可能となり、実質的に基板単位で一製品形態として流通や交換等が行える。そして、戸開走行保護装置用の異常判定を行う安全制御に関わる領域について、国土交通大臣認定を通常運転制御回路とは別に独自に取得することになる。このため、制御盤側の運転制御回路におけるの部品交換やカスタマイズによる変更等に影響されることがないため、大臣認定の再取得も独自ですみ、従来より容易となる。例えば、通常の運転制御回路側のインバータを別の型式のものに交換する場合、本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路には何ら影響はなく、大臣認定の再取得の対象とならずに済む。これは、装着対象の制御盤側から見ても同様である。よって本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路が形成された基板が装着される制御盤側の設計に高い自由度が与えられることにもなる。
【0028】
また、本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路は、上記のように運転制御回路とは物理的に離れており、運転制御回路用の演算処理装置と別個の安全制御用演算処理装置によって、戸開走行判定論理プログラムを含む動作異常判定論理プログラムは、通常の運転制御回路を介することなく、そして通常の運転制御プログラムに影響されることなく稼働されるため、異常判定において誤作動が生じ難くなる。
【0029】
なお、本発明においては、戸開走行異常判定のための構成として、複数の入力用接続部のうちの一部が、前記かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号が入力されるための接続部として、前記かごが予め定められた一定距離以上移動したことを感知する特定距離感知装置からの信号が入力されるための接続部としてそれぞれ設定され、複数の出力用接続部のうちの一部が、前記モータ用電磁接触器と前記ブレーキ用電磁接触器とへ前記かご制止指令信号が出力されるための接続部としてそれぞれ設定されている。
【0030】
また、本発明においては、かご戸及び乗場戸とが、引き戸タイプである場合にも上下戸タイプである場合にも対応可能とする。上下戸タイプでは、かご戸として上下に開閉する一対の上下戸を備えると共に、乗場戸として上下に開閉する一対の上下戸を備えるため、その開閉状態を監視する対象の戸が引き戸タイプの倍である。従って、上下戸タイプでは、各戸用に設置される開閉スイッチ及び各スイッチからの受信すべき信号も倍である。よって、各スイッチからの開閉状態を示す信号を受信するために設定される接続部も引き戸タイプより多くなるため、本発明の入力用接続部は、上下戸タイプ用を想定した接続部を含むものとする。
【0031】
本発明においては、戸開走行異常判定だけでなく、安全制御用演算装置によって、安全制御用記憶部に格納された複数の動作異常判定論理プログラム及び各動作異常判定論理プログラム用データを用いた、安全制御に必要な各種異常判定が行われるものである。そして、本発明の安全制御用演算装置は、異常判定が成された際に、戸開走行異常判定を含む異常判定の種類毎に対応する異常信号を作成して出力する機能を備え、これら異常信号は、出力用接続部のうち、種類別に外部へ出力するように設定された異常信号出力用の接続部を有するものである。したがって、本発明による基板が装着された制御盤において。前記異常信号出力用の接続部に配線をつなげれば、各種異常判定が成されたとき、その異常信号を通常の運転制御回路側で受信して異常の発生を確認でき、また該異常信号を別途利用することも可能である。
【0032】
種類別に異常信号を出力するための異常信号出力用の接続部としては、全種類分の接続部を備える必要はなく、複数個の異常信号の数と組合せで多数種類の異常信号に対応させることができる。例えば、第1~第5の5つの電磁リレーを用いて、これらのうちの予め定めた一つ以上のリレーのオン信号の組合せによって、エレベータの安全制御において行われる二十種類以上の異常判定に対応させることができる。
【0033】
本発明による戸開走行保護装置用の安全制御回路において、一枚の基板上で1モジュールを構成する各具体的な要素の例としては、安全制御用演算処理装置としての専用のCPU(Central Processing Unit)と、安全制御用記憶部としての専用のROM(Read Only Memory)とRAM(Randam Access Memory)とを搭載し、各信号を受信してCPUへ入力するための入力部とCPUからの信号が出力される出力部を設けたものが主として挙げられる。また、各信号の入力部及び出力部は、入力側インターフェース(I/F)回路と、出力側インターフェース(I/F)回路として設けられる。
【0034】
また、入力用及び出力用の各接続部としては、基板用スクリューレス端子台を例えば入力用を基板上側、出力用を基板下側に配置し、各入力用電線及び各出力用電線の棒端子をワンタッチ式で結線できる構成が簡便で望ましい。
【0035】
なお、安全制御用演算処理装置の入力用接続部は、対象信号がON-OFF検知信号である場合には電磁リレーを介在させ、そのコイル接点の開閉によりオン信号又はオフ信号として安全制御用演算処理装置の入力部に受信される構成とする。例えば、かご戸及び各乗場戸の開閉状態を示す信号としてのかご戸スイッチ及び各乗場戸スイッチからのオン・オフ信号が受信され、かごが予め定められた一定距離以上移動したかどうかを特定距離感知装置からのオン・オフ信号として受信するものとする。
【0036】
入力側インターフェース(I/F)回路を介してCPUに入力された各信号はCPUで処理され、制御信号が作成されて、出力側インターフェース(I/F)回路を介して出力される。CPUは、RAMを作業領域としながら、ROMに格納された論理プログラムに従って、ROMに記憶された格納されたデータに基づいて、入力信号を処理し、異常動作判定を行うことができる。
【0037】
従って、ROMに戸開走行判定論理プログラムと該論理プログラム用データを格納しておくことによって、CPUにおいて、その戸開走行判定論理プログラムに従って、前記データを用いて入力信号を処理し、かご戸や乗場戸が開状態のままでかごが走行しているかどうかを判定する戸開走行判定の動作処理が稼働される。戸開走行判定論理プログラムと共に格納される当該論理プログラム用データとしては、各種判定基準、例えば、特定距離感知装置からの信号に対する異常判定の基準となる特定移動距離の値や、戸開走行判定論理プログラムの信号処理動作のサイクルタイム等が含まれる。
【0038】
本発明における巻上機の二重ブレーキが、それぞれ無励磁作動型の電磁式ブレーキである場合には、本発明の安全制御回路において、かご制止指令信号の出力に基づいて、各電磁式ブレーキの電力供給回路に接続された電磁接触器(コンタクタ)への通電が停止されて消磁されると、各電磁式ブレーキへの電力供給が遮断されることによって、各電磁式ブレーキは無励磁状態となってバネ付勢力による制動力がブレーキ回転軸に対して作用し、かごは制止される。また、かご制止指令信号の出力に基づいて、モータの電力供給回路に接続された電磁接触器(コンタクタ)への通電が停止されて消磁されると、モータへの電力供給が遮断されてモータ駆動が停止し、かごは制止される。
【0039】
モータへの電力供給遮断は、インバータを介してモータ駆動を制御している場合、インバータの上流位置で電力供給を遮断することによっても、またインバータとモータとの間で電力遮断することによっても可能である。そこで、両位置にそれぞれ電磁接触器を配置して同時に通電・消磁の制御を行えば、異常判定時にモータに対して二系統でより確実に停止制御を行える。
【0040】
なお、モータ用電磁接触器へかご制止指令信号が出力されるために設定された接続部と、ブレーキ用電磁接触器へかご制止指令信号が出力されるために設定された接続部とのそれぞれに、電磁接触器(電磁リレー)を介在させることによって、モータ用電磁接触器への電力供給と、ブレーキ用電磁接触器とへの電力供給を直接的にオン・オフ制御できる。これによって、異常判定時のブレーキ及びモータへの電力遮断がより速やかに行える。
【0041】
また、多くのエレベータシステムにおいては、かごの速度監視のために、その速度を検出するロータリーエンコーダがかご周辺に設けられている。例えば、かごは、走行時に左右に揺れることがないように、かご四隅のガイドローラを介してガイドレールに沿って昇降されるが、このようなガイドローラの回転軸にロータリーエンコーダを装着すれば、かごの上下走行に連動してロータリーエンコーダが回転し、回転数に応じたパルス信号が出力される。このパルス信号をカウントして単位時間当たりの回転数に基づいて、かごの速度が算出できるため、通常運転制御においては、かご速度の検出結果に基づくインバータ20によるモータ25駆動のフィードバック制御を行うことによって、かごをスムーズに加速、減速又は停止させることができる。
【0042】
本発明の安全制御回路においても、このようなロータリーエンコーダからのパルス信号を通常の運転制御回路とは別に受信してかご速度を検出する構成としても良い。この場合、入力用接続部のうちの一部を、ロータリーエンコーダからのパルス信号が入力されるための接続部として設定し、安全制御用記憶部には、前記パルス信号を処理するためのエンコーダ信号処理プログラムとエンコーダ信号処理プログラム用データを格納しておけば良い。安全制御用演算処理装置は、エンコーダ信号処理プログラムに従って、受信されたパルス信号をカウントし、そのカウント数とエンコーダ信号処理プログラム用データに含まれている1パルス当たりのかごの移動距離あるいはロータリーエンコーダの一回転相当のパルス数単位のかごの移動距離に基づいて、かご速度を演算するものとする。このかご速度は、速度異常を判定する速度監視にも利用できる。また、従来の速度監視では、運転制御回路におけるインバータによるモータ駆動制御のための電気的出力を利用してモータの回転速度を検知することも行われていたが、本発明の構成においては、このような運転制御回路を介してインバータ用の信号を速度監視に利用する必要はない。
【0043】
また、本発明の安全制御回路は、戸開走行以外の各種異常判定も行うものである。この場合、各種異常判定のための複数の動作異常判定論理プログラムと当該論理プログラム用データが安全制御用記憶部に格納されており、該異常判定に必要な信号が入力されるように構成されていれば、安全制御用演算処理装置は、当該異常判定論理プログラムに従って信号を処理し、異常判定を行い、その異常判定の種類に応じた異常信号を出力するが、同時に該判定に応じた処理を実行するための指令信号を出力することもできる。
【0044】
例えば、本発明の安全制御回路において行う異常判定としては、戸開走行判定をかご戸と乗場戸のいずれかあるいは双方かの開戸別での異常判定や、二重ブレーキ異常(どちらのブレーキ故障かの区別あり)、各電気供給回路の電磁接触器のオン故障(開路したままオフにならない)、2つの特定距離感知装置の一致不一致異常、CPU・RAM・ROMの内部異常、各入力部インターフェース異常、1日1回のテスト異常、ウォッチドッグタイマー(WDT)異常、かご速度異常、速度監視装置故障、などが挙げられる。
【0045】
それぞれ、対応する動作異常判定論理プログラムと、判定基準等の当該論理プログラム用データを安全制御用記憶部に格納しておけば、各プログラムに従って、安全制御用演算処理装置が各種異常判定を行うことができる。例えば、例えば二重ブレーキ異常判定を行う構成とする場合、入力用接続部の内の一部を二重ブレーキの各ブレーキ動作感知装置からの信号が入力されるために設定された接続部とし、安全制御用記憶部に動作異常判定論理プログラムの一つとして、二重ブレーキに対するブレーキ異常判定論理プログラムも必要なデータと共に格納しておけば良い。この場合、安全制御用演算処理装置は、当該ブレーキ異常判定論理プログラムに従って、予め定められた一定時間ごとに各ブレーキ動作感知装置からの信号を処理し、少なくとも一方のブレーキに異常を検知した際に、ブレーキ異常判定を行うと共に該ブレーキ異常判定に基づいてかご制止指令の出力を行うものとする。
【0046】
なお、エレベータの制御回路は、安全のため、予め定められた経過年数毎に交換することが規定されている。本発明の戸開走行保護装置用の安全制御回路は、通常の運転制御回路が形成されている制御基板とは独立したものであるため、独自に所定の年数経過時点で取り替えることができる。そこで、したがって、戸開走行保護装置への実装後の起動から予め定められた経過年数に達した時点で点検・交換の時期を示すための表示ランプを専用に設けておくことが好ましい。
【0047】
この場合、安全制御用記憶部は、安全制御回路の点検・交換の時期を判定するための点検・交換用プログラムを格納しておく。そして安全制御用演算処理装置は、当該点検・交換用プログラムに従って、安全制御回路の起動時から経過年数を加算計測し、予め定められた経過年数に達した時点で、表示ランプを点灯させる指令信号を出力するものとする。したがって、基板の交換時期として、例えば10年が設定されている場合には、起動時から10年経過時点で、あるいは15年が設定されている場合には、起動時から15年経過時点で表示ランプが点灯することになる。
【0048】
またこの表示ランプは、交換時期としての予め定められた経過年数のみを示すだけでなく、それより数年前、例えば、10年設定では、そのまえの8年経過時点、9年経過時点を予告的に示すのに利用しても良い。例えば、断続的な点滅から常時点灯など、点灯形態を変更したり、表示色を変更する方式とすることで実施できる。
【0049】
また、表示ランプとしてLED7セグメント表示器を備えれば、予め定められた経過年数より前の予め定められた加算年数をから数字で表示させる構成とすれば、より視認しすくなる。例えば、10年設定の場合は、8、9、10と数字で表示させることができる。従って、管理者は、安全制御回路基板の取替えに関して時機を逸することなく準備することができる。そして、実際の交換時期に達した場合、本発明の安全制御回路は、他の運転制御回路等に何ら影響することなく制御盤から当該基板のみを取り外して新しい基板を装着するという基板単位での簡便な作業で交換が済む。
【0050】
また、本発明の安全制御回路は、少なくとも戸開走行論理プログラムが正常に稼働しない場合のエラーを示す専用のエラー表示手段を設けておくことが望ましい。この場合、戸開走行判定論理プログラムの予め定められた一定時間ごとの稼働を監視する監視手段を備え、安全制御用演算処理装置が、戸開走行判定論理プログラムが予め定められた一定時間ごとに正常稼働したことを示す信号を出力するものとし、監視手段は、正常稼働を示す信号が一定時間すぎても通知されない場合に、エラー発生を判定し、該判定に基づいてエラー表示手段にエラー表示を指示する信号を出力すると共に、予め定められた異常時処理を実行させる指令信号、例えば、電力供給を遮断させてかごを制止させる指令信号を出力するものとする。
【0051】
このようなエラーを検知する監視手段としては、例えばWDT(watchdog timer:ウォッチドッグタイマー)を採用するの簡便である。WDTは、安全制御用演算処理装置における戸開走行判定論理プログラムの処理動作異常を検出すると前記電磁接触器への通電を遮断する指令を出力するように設定しておけば、安全制御回路は、戸開走行異常判定時と同等の動作状態となるため、実施的にエレベータを制止状態にすることができる。管理者はエラー表示に基づいて、戸開走行保護装置が故障している可能性を視認し、実際的な点検作業を行うことができる。
【実施例0052】
本発明の一実施例としての戸開走行保護装置用の安全制御回路を示す概略構成図を、エレベータシステムに組み込まれた形で全体回路図として図1に示す。図中、破線で囲まれた領域100は、本実施例の安全制御回路10による制御が及ぶ関連部分を示すものである。なお、通常の運転制御に関連する部分についての詳細な図示は省いている。また、本実施例は、かご戸及び乗場戸が引き戸式である場合を例示している。
【0053】
本実施例による安全制御回路10が組み込まれたエレベータシステムは、かご1と釣合錘3とがメインロープ2によって連結され、該メインロープ2が、かごの昇降駆動装置としての巻上機7のシーブ8と方向転換プーリ4に巻き掛けられて、昇降路内でかご1と釣合錘3とがつるべ状に吊持されている。巻上機7のシーブ8がモータ25によって回転駆動されることによって、かご1と釣合錘3とが昇降路内で互いに上下逆向きの走行を行う。モータ25は、電源21に接続されたインバータ20を介して通常運転制御用の運転制御回路201によって駆動制御される。
【0054】
運転制御回路201では、通常運転制御用の演算処理装置(CPU)210によって予め定められた運転制御プログラムに従って各種入力信号が処理され、出力された制御信号によって各駆動部の通常運転に関わる制御が実行される。従って、運転制御回路201から出力される制御信号に応じて、インバータ20が、モータ25の起動、回転速度、停止を制御する。
【0055】
また、巻上機7には、モータ25の回転軸と同軸上に、制動装置としての常時作動型二重ブレーキを構成する第1のブレーキ9Aと第2のブレーキ9Bとが互いに機械的に独立して配置されている。これら第1と第2のブレーキ(9A,9B)は、それぞれ電源22に整流器(23A,23B)を介して接続されている。
【0056】
本実施例においては、第1と第2のブレーキ(9A,9B)は、無励磁作動型の電磁式ディスクブレーキとした。電磁式ディスクブレーキは、モータ回転軸の同軸上に固定された円盤状のブレーキディスクの両面に対してブレーキパッドあるいはライニング等の摩擦材で挟み込んで押圧する制動動作を行うものである。その制動動作及び解除動作は、ばねの付勢力とこれに抗する電磁駆動部の吸引力とを利用して行うものであり、無励磁作動型は、無励磁状態におけるばねの付勢力で制動状態を得るものである。
【0057】
そして、第1のブレーキ9Aと電源22との間の電力供給回路及び第2のブレーキ9Bと電源22との間の電力供給回路のそれぞれに、ブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)が配置されており、運転制御回路201による通常運転の間は、各ブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)は通電励磁によりコイル接点は閉じて各ブレーキ(9A,9B)に対して電力が供給された状態、即ちブレーキ釈放状態が維持される。一方、これらブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)への通電が停止されて無励磁にされると、各コイル接点が開かれ、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断され、第1と第2のブレーキ(9A,9B)は、それぞれ無励磁状態となって制動動作を行う。そしてこの2つのブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)を直列につないだ信号がRUN信号として安全制御回路10へ入力される。
【0058】
また、各階乗場の操作ボタンからの呼び信号及びかご1内の操作ボタンからの呼び信号、乗場戸スイッチHDSからの信号及びかご戸スイッチCDSからの信号、更にかご1が着床している階の平行配置された第1と第2の特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号等の各種信号が運転制御回路201において、入力側インターフェース回路202を介して通常運転制御用の演算処理装置210へ入力される。この演算処理装置(CPU)210は、運転制御プログラムに従って、各種入力信号を処理し、かご戸5及び乗場戸6の開閉状態と共に、かご1がどの階のドアゾーン内に位置しているか位置していないを判断しながらモータ駆動制御信号を作成し、出力側インターフェース回路203を介してインバータ20へ出力される。インバータ20は、これらモータ駆動制御信号に応じて、モータ駆動を制御することによって、各呼び信号が指示する階へのかご1の昇降移動と停止が制御され、かご停止状態においてかご戸5及び乗場戸6の開閉が制御される。
【0059】
以上の通常の運転制御を行うための運転制御回路201は、制御盤200内に設置されている。
【0060】
一方、本実施例による戸開走行保護装置用の安全制御回路10は、制御盤200とは別体の独立した1モジュールとして一枚の基板上に形成されたものであり、制御盤200に交換可能に装着されてエレベータシステムに組み込まれ、戸開走行異常判定を始め、各種異常判定を行う安全制御回路として機能する。即ち、安全制御回路10には、少なくともかご戸5又は乗場戸6が開いたままかご1が走行する戸開走行が発生した際に、このかご1の走行を制止させるための必要な機構が、運転制御回路201とは独立して搭載されている。
【0061】
本実施例の安全制御回路10では、異常判定論理プログラムの一つとして少なくとも戸開走行判定論理プログラムと該倫理プログラム用データが格納された安全制御用記憶部(ROM)14と、当該戸開走行判定論理プログラムに従って各信号を処理して戸開走行を判定する安全制御用演算処理装置(CPU)11および作業用メインメモリとしての安全制御用記憶部(RAM)15が同一基板上に搭載されている。また、基板の上側(図1の安全制御回路10では紙面に向かって左側に相当する)に各種入力信号を受信するために設定された入力用接続部を、基板の下側(図1の安全制御回路10では紙面に向かって右側に相当する)に、安全制御用演算処理装置(CPU)11からの信号を外部へ出力するために設定された出力用接続部がそれぞれ複数設けられている。各接続部に対する各種入力用電線及び出力用電線の結線は、棒端子を用いて各接続部としての基板用スクリューレス端子台にそれぞれワンタッチ式で行う構成とすることで、基板形態での本安全制御回路10のエレベータシステムへの組み込みが簡便に済む。
【0062】
なお、本実施例の安全制御回路10は、基板の10年での取替えを念頭とし、その起動から10年後の点検・交換の時期を判定するための10年点検用プログラムが安全制御用記憶部(ROM)14に格納されている。そして10年経過を示すための点灯を行う表示ランプ17を備えるものとした。本実施例では、表示ランプ17をLED7セグメント表示器で構成した。従って、安全制御用演算処理装置11は、当該プログラムに従って安全制御回路10の起動時から経過年数を加算計測し、8年経過時点から、9年、10年経過時点で、その年数を点灯表示させる指令信号を出力するものとした。
【0063】
また、本実施例による安全制御回路10において、基板の入力用接続部の一部の接続部にて、各階の2つの第1と第2特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの電線が結線され、第1と第2の特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号(DZ1-1,DZ1-2,DZ2-1,DZ2-2)は、基板上の入力側インターフェース回路12を介して、安全制御用演算処理装置(CPU)11へ通常の運転制御回路201とは別に入力される。本実施例では、第1と第2のブレーキ(9A,9B)の各ブレーキ動作感知装置からの信号(BKS1,BKS2)も通常の運転制御回路201の入力部とは別の専用の入力用接続部から入力側インターフェース回路12を介して安全制御用演算処理装置(CPU)11に入力される。
【0064】
また、かご戸スイッチCDS及び乗場戸スイッチHDSからの信号も専用の入力用接続部から入力側インターフェース回路12を介して安全制御用演算処理装置11へ入力される。本実施例では、かご戸スイッチ1用リレーCDR1及びかご戸スイッチ2用リレーCDR2を介して、それぞれCDR1常開接点信号CD1及びCDR2常開接点信号CD2が入力される。また乗場戸スイッチ1用リレーHDR1及び乗場戸スイッチ2用リレーHDR2を介して、HDR1常開接点信号HD1及びHDR2常開接点信号HD2が入力される。なお、これらのリレー(CDR1,CDR2,HDR1,HDR2)は、基板へのかご戸スイッチCDS及び乗場戸スイッチHDSからの電線の結線の際に、適宜介在させれば良い。
【0065】
なお、本実施例においては、図2(a)に示すように、かご戸スイッチCDSは、かご戸が閉状態でオン信号となり、かご戸スイッチ1用リレーCDR1及びかご戸スイッチ2用リレーCDR2からの出力をオン信号とする。そしてかご戸が開状態においてかご戸スイッチCDSはオフ信号となり、かご戸スイッチ1用リレーCDR1及びかご戸スイッチ2用リレーCDR2からの出力をオフ信号とする。一方、乗場戸スイッチHDSは、各階乗場戸スイッチが全て直列に接続されて成るものであり、全ての乗場戸が閉状態で全乗場戸スイッチがオンの時に乗場戸スイッチHDSとしてオン信号となり、乗場戸スイッチ1用リレーHDR1及び乗場戸スイッチ2用リレーHDR2からの出力をオン信号とする。また乗場戸の一つでも開状態でその乗場戸スイッチがオフであれば、乗場戸スイッチHDSとしてオフ信号となり、乗場戸スイッチ1用リレーHDR1及び乗場戸スイッチ2用リレーHDR2からの出力をオフ信号とする。また、通常、新規エレベータでは、かご戸スイッチ及び各階乗場戸スイッチは、接点に溶着や接触不良を生じないように改良された強制開離構造を採っているが、既存エレベータでは強制開離構造に対応していない場合がある。この場合、図2(b)に示すような二重スイッチ回路として安全を担保する。
【0066】
さらに、本エレベータシステムにおいて、モータ25を駆動制御するインバータ20への電力供給回路に接続された第1のモータ電源遮断用コンタクタS1と、インバータ20とモータ25との間の電力供給開路に接続された第2のモータ電源遮断用コンタクタS2とが備えられ、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給回路の整流器より上流側に接続された第1のブレーキ電源遮断用コンタクタBD1及び第2のブレーキ電源遮断用コンタクタBD2とが直列に設けられている。本実施例では、第1のモータ電源遮断用コンタクタS1と第2のモータ電源遮断用コンタクタS2及びブレーキ電源遮断用コンタクタ(BR1,BR2)とに対する通電のオン・オフを、それぞれ基板に設けられたリレー(S1y,S2y,BDy)を介して直接制御する構成とした。
【0067】
そして、安全制御回路10の安全制御用演算処理装置(CPU)11から出力側インターフェース回路13を介して出力されかご制止指令信号に基づいて、第1モータ電源遮断コンタクタS1用リレーS1yと、第2のモータ電源遮断コンタクタS2用リレーS2yと、ブレーキ電源遮断用コンタクタ(BR1,BR2)用リレーS3yとがオフにされ、各コンタクタ(S1,S2,BR1,BR2)への通電が停止して消磁され、各コンタクタのコイル接点が開いてインバータ20及びモータ25への電力供給が遮断されてモータ25は動力を無くし、同時に、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給も遮断されて、それぞれ無励磁状態となって制動動作状態となり、モータ25の回転軸の回転を止める。結果として、モータ25駆動の停止と第1と第2のブレーキ(9A,9B)の作動との作用によって、かご1の走行は制止される。
【0068】
また、本実施例においては、各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)は、主接点がオン状態である場合に補助接点がオフしていることが保証されているミラーコンタクト機能を備えたものであり、各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)からのミラーコンタクト常閉接点信号が出力されるものとした。即ち、S1用ミラーコンタクト常閉接点信号S1BとS2用ミラーコンタクト常閉接点信号S2B、及びBD1用ミラーコンタクト常閉接点信号BD1BとBD2用ミラーコンタクト常閉接点信号BD2Bとが、それぞれ安全制御回路10の安全制御用演算処理装置(CPU)11へ入力されるものである。従って、通常運転の間は、これらコンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)からのミラーコンタクト常閉接点信号(S1B,S2B,BD1B,BD2B)は、各コンタクタの通電励磁による主(コイル)接点のオン状態でオフ信号として入力されるが、各コンタクタの消磁による主(コイル)接点のオフ状態でオン信号として入力される。
【0069】
さらに、通常の運転制御回路201によって開閉制御される第1と第2のブレーキ(9A,9B)それぞれに対するブレーキ釈放用コンタクタ(BR1,BR2)からの直列接続した常開接点信号RUNが別途、安全制御回路10へ入力される構成としたが、この信号RUNのオン信号入力中は、通常の運転制御プログラムに従った運転中であることが示される。また、手動作業中であることを示す手動信号INS及びテスト中であることを示すテスト信号TESTもそれぞれ安全制御回路10へ入力される構成とした。これら手動運転信号INS,テスト信号TESTの入力中は、戸開走行判定動作を行わない設定とする。
【0070】
本実施例の安全制御回路10には、少なくとも戸開走行判定論理プログラムによる戸開走行判定の論理処理動作が正常に行われているかどうかを監視する監視手段を備えたものである。具体的には、WDT(ウォッチドッグタイマー)16によって、予め定められたサイクルタイムで戸開走行判定の論理処理動作が終了した時点毎に出力される終了信号を検知し、一定の時間を経過しても終了信号が検知されない場合に、処理動作異常としてかご制止指令信号に相当するエラー信号を出力する。これにより、安全制御回路10は、戸開走行異常判定時と同じ動作状態となり、電源遮断指令が出力され、各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)を無通電にして消磁させ、コイル接点を開ける。結果、モータ25及び第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断され、かご1は制止される。本実施例の安全制御回路10では、WDT16からのエラー信号によって点灯するエラー表示ランプ18を備えている。
【0071】
以上の構成を備えた安全制御回路10は、各構成要素が1モジュールとして一枚の基板上に形成されるものであるが、本実施例において、縦横幅が90mm×210mmの基板上に収められた、非常に小型な製品形態を実現できた。従って、例えば当該安全制御回路をPLC(Programmable Logic Controller)で構成した場合に比べて格段に小型であり、装着される制御盤での占有面積も小さくて済む。よって、制御盤側は、従来より小さい制御箱で済むことにもなる。
【0072】
以下に、本実施例による安全制御回路10において、戸開走行判定論理プログラムの実行による戸開走行異常判定の動作処理の過程を図3のフローチャートに沿って説明する。本実施例では、例えばかご戸5が閉じている場合、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)はオン、かご戸5が開いている場合、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)はオフとなる設定とした。そして、乗場戸6が全て閉じている場合、乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)はオン、全ての乗場戸6のうち一つでも開いている場合には乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)はオフとなる設定とした場合を示す。
【0073】
また、第1の特定距離感知装置DZ1からの信号(DZ1-1,DZ1-2)及び第2の特定距離感知装置DZ2からの信号(DZ2-1,DZ2-2)は、かご床面がドアゾーン内にある場合はそれぞれオン信号であり、かご床面がドアゾーン外で基準面から予め定められた一定距離以上離れた場合にオフ信号となる設定とした。
【0074】
図3のフロチャート図に示すように、本実施例による安全制御回路10の安全制御用演算処理装置11において、戸開走行判定論理プログラムに従って戸開走行異常判定の動作処理が開始されると、まず、入力信号に基づいて、かご戸スイッチCDSからの信号(CD1,CD2)及び乗場戸スイッチHDSからの信号(HD1,HD2)のうちいずれかでもオフがあるかどうか、即ちいずれかの戸が開状態であるか否かを判定する(S101)。ここで、オフ信号がなく、全てがオン信号であれば戸開走行異常判定の動作処理は終了となる。
【0075】
しかし少なくともいずれかの信号がオフであり、その信号元のかご戸5又は乗場戸6あるいは両方が開状態あると判定されると、次に、第1の特定距離感知装置DZ1からの信号(DZ1-1,DZ1-2)及び第2の特定距離感知装置DZ2からの信号(DZ2-1,DZ2-2)のいずれかでもオフがあるかどうか、即ち、少なくともどちらかの特定距離感知装置によってかご1が予め定められた一定距離以上移動したことが検知されたか否かを判定する(S102)。
【0076】
ここで双方の特定距離感知装置(DZ1,DZ2)からの信号が共にオンであれば、戸開走行判定の動作処理は終了となる。しかし、少なくともどちらかの信号がオフであり、かご1が一定距離以上移動したことが検知されると、これはかご戸5又は乗場戸6が開いたままの戸開走行であり、戸開走行異常判定が成される(S103)。
【0077】
従って、安全制御用演算処理装置11では、かご制止指令信号が出力され(S104)、これに基づいてリレー(S1y,S2y)によって2つのモータ電源遮断用コンタクタ(S1,S2)への通電が直接オフされてこれらコンタクタ(S1,S2)が消磁されてコイル接点が開かれ、モータ25への電力供給が遮断されて(S105)、モータ駆動が停止状態となる(S106)。同時に、かご制止指令信号に基づいて、リレーS3yによって、第1と第2のブレーキ電源遮断用コンタクタ(BD1,BD2)への通電が直接オフされて両コレクタ(BD1,BD2)が消磁されてコイル接点が開かれ、第1と第2のブレーキ(9A,9B)への電力供給が遮断されて(S107)、第1と第2のブレーキ(9A,9B)は無励磁作動状態となる(S108)。なお、この第1と第2のブレーキ(9A,9B)の無励磁作動状態においては、各ブレーキの動作感知装置からの信号(BKS1、BKS2)がオン信号として安全制御回路10へ入力される。
【0078】
以上のように、モータ25への電源遮断によりモータ駆動停止及び/又はブレーキ側への電源遮断によるモータ25の制止によって、かご1は制止され(S109)、戸開走行異常判定の動作処理は終了となる。なお、異常の動作処理は、戸開走行の異常判定が成されない限り、エレベータの稼働中は常に予め定められたサイクルタイムで繰り返される。この一定のサイクルタイムでの戸開走行異常判定の動作処理が完了する毎に完了信号が出力され、該信号が監視手段としてのWDT16に検知されることによって、戸開走行判定の動作処理の正常稼働が監視される。
【0079】
上記の通り、本実施例による戸開走行防止装置用の安全制御回路10においては、通常の運転制御回路201が出力する制御信号にかかわらず、戸開走行の異常判定に基づいてかご1を制止させることができる。しかも、安全制御回路10は、通常の運転制御回路201が形成されている制御盤200とは別個の物理的に独立して離れた基板上に形成されているため、運転制御回路201における運転制御プログラムの稼働に影響されることなく、動作異常判定の論理プログラムを良好に稼働させることができる。
【0080】
また、以上の戸開走行の異常判定によるかご制止状態は、安全制御用記憶部14に格納された解除プログラムに従って、図4のフローチャート図に示す動作処理手順で解除される。ここで、本実施例の安全制御回路10は、専用のリセットボタン(不図示)を備えるものとする。
【0081】
かご制止解除の動作処理は、安全制御用演算処理装置11において、かご制止指令が出力中であることを確認(S111)した上で行われる。即ち、かごの制止状態において、まず、エレベータの駆動系に関して、手動操作への切替えが行われる(S112)。そして、手動信号INSがオンであるか否かが判定され(S113)、INS信号がオンであれば、手動操作への切替えが完了されたものと判定される。その後、必要な手動運転を行い、異常原因の排除が行われる(S114)。
【0082】
異常原因が排除された後、リセットボタンが所定時間押され(S115)、リセット信号RSTが出力される。ただし、安全制御用演算処理装置11は、リセット信号が予め定められた時間、例えば2秒間オンであるか否かを判定する(S116)。即ち、確実なリセットのためには、リセットボタンが2秒以上押し続けられなければ成らない設定とされている。したがって、安全制御用演算処理装置11は、リセット信号RSTが2秒間オンであることが判定されれば、異常リセット指令を出力する(S117)する。
【0083】
この異常リセット指令により、モータ用電源遮断信号及びブレーキ用電源遮断信号の出力が解除される(S118)。これによって、2つのモータ電源遮断用コンタクタ(S1,S2)及び2つのブレーキ電源遮断用コンタクタ(BD1,BD2)は再び通電されて励磁状態となり、各コネクタ接点は閉じられる。これにより各コンタクタ(S1,S2,BD1,BD2)からのS1常閉接点信号S1BとS2常閉接点信号S2B及びBD1常閉接点信号BD1BとBD2常閉接点信号BD2Bとは、それぞれオンとなる。従って、安全制御用演算処理装置11は、これらの信号(S1B,S2B,BD1B,BD2B)が全てオンであるか否かを判定し(S119)、全てオンであることが判定されれば、かご制止状態が解除されたものとして、解除動作処理を終了とする。
【0084】
なお、上記動作処理工程において、戸開走行異常判定が成された(S103)際には、安全制御用演算処理装置11によって戸開走行の異常信号が出力される(S110)。この異常信号は、異常信号出力用に設定された接続部から外部へ出力されるが、本実施例においては、5つのリレーを介在して異常判定の種類別に異常信号が出力されるものとした。即ち、5つのリレーのオン信号をその数と組合せで作られる複数種の信号に、それぞれに異常判定の種類を割り当てた。例えば、図7の相対表に示すように、種類別の異常判定(Y1~Y26)に対して、第1~第5のオン信号(X20~X24)の各種組合せを信号の種類を対応させた。
【0085】
具体的には、かご戸5及び乗場戸6が共に開状態での戸開走行(かご戸スイッチ信号CD1・CD2:オフ,乗場戸スイッチHD1・HD2:オフ,第1と第2の特定距離感知装置信号DZ1-1,2・DZ2-1,2:少なくともどちらかがオフ)を異常判定Y1として、異常信号X20(第1リレー:オン)のみの出力を割り当てた。異常判定Y2は、かご戸5のみが開状態での戸開走行(かご戸スイッチ信号CD1・CD2:オフ,乗場戸スイッチHD1・HD2:オン,第1と第2の特定距離感知装置信号DZ1-1,2・DZ2-1,2:少なくともどちらかがオフ)として異常信号X21(第2リレー:オン)のみの出力を割り当てた。異常判定Y3は、乗場戸6のみが開状態での戸開走行(かご戸スイッチ信号CD1・CD2:オン,乗場戸スイッチHD1・HD2:オフ,第1と第2の特定距離感知装置信号DZ1-1,2・DZ2-1,2:少なくともどちらかがオフ)として異常信号X20とX21(第1・第2リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0086】
また、各モータ電源遮断用コンタクタ(S1,S2)に対する1日1回のテスト入力、例えば各コイル電源を4秒間オフにした場合に、S1用ミラーコンタクト常閉接点信号S1Bがオフである場合を、モータ電源遮断用コンタクタS1の、コイル接点の融着等により閉じたままオンにならないオン故障の異常判定Y4として異常信号X22(第3リレー:オン)のみの出力を割り当てた。またS2用ミラーコンタクト常閉接点信号S2Bがオフである場合を、モータ電源遮断用コンタクタS2のオン故障の異常判定Y5として異常信号X20とX22(第1・第3リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0087】
また、各ブレーキ電源遮断用コンタクタ(BD1,BD2)に対する1日1回のテスト入力、例えば各コイル電源を4秒間オフにした場合に、BD1用ミラーコンタクト常閉接点信号BD1Bがオフである場合を、ブレーキ電源遮断用コンタクタBD1のオン故障の異常判定Y7として異常信号X20とX21とX22(第1と第2と第3リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。またBD2用ミラーコンタクト常閉接点信号BD2Bがオフである場合を、ブレーキ電源遮断用コンタクタBD2のオン故障の異常判定Y8として異常信号X23(第4リレー:オン)のみの出力を割り当てた。
【0088】
また、オン信号入力によって通常運転中であることを示すRUN信号についての異常判定にも異常信号を割り当てた。即ち、RUN信号のオン故障(ブレーキ動作感知操作信号BKS1・BKS2:オン,RUN信号:オン)を異常判定Y9として異常信号X20とX23(第1・第4リレー:オン)の組合せ出力を割り当て、また閉路しないオフ故障(ブレーキ動作感知操作信号BKS1・BKS2:オフ,RUN信号:オフ)を異常判定Y10として異常信号X21とX23(第2・第4リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0089】
第1の特定距離感知装置DZ1と第2の特定距離感知装置DZ2とについていずれかの故障を示唆する一致不一致異常についても異常信号を割り当てた。即ち、第1の特定距離感知装置DZ1がオフでありながら第2の特定距離感知装置DZ2がオンである場合に、第1の特定距離感知装置DZ1側オフ不一致を異常判定Y11として異常信号X20とX21とX23(第1・第2・第4リレー:オン)の組合せ出力を割り当て、第1の特定距離感知装置DZ1がオンでありながら第2の特定距離感知装置DZ2がオフである場合に、第2の特定距離感知装置DZ2側オフ不一致を異常判定Y12として異常信号X22とX23(第3・第4リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0090】
さらに、第1と第2のブレーキ(9A,9B)あるいは各ブレーキ動作感知装置の故障を示唆する一致不一致異常についても以下の通り異常信号を割り当てた。即ち、第1のブレーキ動作感知装置信号BKS1がオフでありながら第2のブレーキ動作感知装置信号BKS2がオンである場合に、第1のブレーキ動作感知装置側オフ不一致を異常判定Y13として異常信号X20とX22とX23(第1・第3・第4リレー:オン)の組合せ出力を割り当て、第1のブレーキ動作感知装置信号BKS1がオンでありながら第2のブレーキ動作感知装置信号BKS2がオフである場合に、第2のブレーキ動作感知装置側オフ不一致を異常判定Y14として異常信号X21とX22とX23(第2・第3・第4リレー:オン)の組合せ出力を割り当てた。
【0091】
本実施例においては、5つのリレー信号を用いているため、その他にも、1日1回行われる必要な各テストに関して、それぞれの異常判定毎に、さらなる別の異常信号の組合せ信号を割り当てることができる。例えば、本実施例では、異常判定Y15を異常信号X20とX21とX22とX23(第1・第2・第3・第4リレー:オン)の組合せ出力でCPU・RAM・ROMの内部異常に割り当てた。また、異常判定Y16を異常信号X24(第5リレー:オン)のみの出力でかご戸スイッチ信号の入力インターフェース異常に、異常判定Y17を異常信号X20とX24(第1・第5リレー:オン)の組合せ出力で乗場戸スイッチ信号入力インターフェース異常に、異常判定Y18を異常信号X21とX24(第2・第5リレー:オン)の組合せ出力で第1の特定距離感知装置信号DZ1の入力インターフェース異常に、異常判定Y19を異常信号X20とX21とX24(第1・第2・第5リレー:オン)の組合せ出力で第2の特定距離感知装置信号DZ2の入力インターフェース異常に、それぞれ割り当てた。
【0092】
さらに、速度感知装置としてのロータリーエンコーダによってかご速度を感知して異常速度を判定する場合に、異常判定Y20を異常信号X22とX24(第3・第5リレー:オン)の組合せ出力で割り当て、またエンコーダー異常に基づく速度感知装置のオフ故障を異常判定Y21として異常信号X20とX22とX24(第1・第3・第5リレー:オン)の組合せ出力で割り当てることもできる。
【0093】
また、かご戸及び乗場戸が上下戸タイプの場合に対応できるように、かご上戸スイッチ信号に基づくかご全戸監視装置異常に、異常判定Y22を異常信号X21とX22とX24(第2・第3・第5リレー:オン)の組合せ出力で割り当て、乗場上戸スイッチ信号に基づく乗場全戸監視装置異常に、異常判定Y23を異常信号X20とX21とX22とX24(第1・第2・第3・第5リレー:オン)の組合せ出力で割り当てておくこともできる。
【0094】
また、通常、1日に1回のテストが行われる際に、前回から25時間超えてテスト信号TESTがオンにならない場合、テスト異常と判定されるため、本実施例においては、このテスト異常に異常判定Y24を異常信号X23とX24(第4・第5リレー:オン)の組合せ出力で割り当てた。また、ウォッチドッグタイマー(WDT)異常についても、異常判定Y25を異常信号X20とX23とX24(第1・第4・第5リレー:オン)の組合せ出力で割り当てた。
【0095】
本実施例による安全制御回路10においては、安全制御用記憶部(ROM)14に、論理プログラム及び該論理プログラム用データが格納され、安全制御用演算処理装置11によって当該論理プログラムが稼働可能であれば、戸開走行以外の各種異常判定が同様に、運転制御回路201を介することなく、通常の運転制御プログラムに影響されることなく良好に行うことができる。
【0096】
ここで、二重ブレーキを構成する第1のブレーキ9Aと第2のブレーキ9Bに対して、ブレーキ又はブレーキ動作感知装置又はRUN信号の異常判定を行う場合の動作処理過程の例を図7のフローチャートに沿って説明する。この異常判定場合、安全制御用記憶部(ROM)14には、第1のブレーキ9Aのブレーキ動作感知装置からの信号BKS1と第2のブレーキ9Bのブレーキ動作感知装置からの信号BKS2を受信するための入力部をそれぞれ入力側インターフェース回路12に備えている。
【0097】
本実施例においては、これらの信号(BKS1,BKS2)は、ブレーキ制動時にオン信号として、釈放時にオフ信号として安全制御用演算処理装置11へ入力されるものとした。そして、ブレーキ又はブレーキ動作感知装置の異常判定論理プログラムに従って、図5のフローチャート図に示す動作手順で、これらの信号を処理してブレーキとブレーキ動作感知装置との異常判定の動作処理を行うものである。
【0098】
即ち、まずテスト入力開始後、第1のブレーキ9Aのブレーキ動作感知装置からの信号BKS1と第2のブレーキ9Bのブレーキ動作感知装置からの信号BKS2とが一致しているか否かが判定される(S121)。ここで、一致していないと判定された場合、この不一致が判定されてから所定時間の経過、例えば2秒経過したか否かが判定され(S122)、2秒経過が確認されると、どちらかのブレーキ又はどちらかのブレーキ動作感知装置が異常であると判定される(S130)。この異常判定により、モータ用電源遮断信号が出力されて、モータ電源遮断用コンタクタ(S1,S2)が無通電消磁されて両コイル接点が開けられ、インバータ20への電力供給回路及びインバータ20とモータ25との間の電力供給回路が遮断される(S131)。これによってモータ25が制止されてかご制止が成される(S132)。
【0099】
一方、信号BKS1と信号BKS2とが一致している場合、RUN信号がオンであるか否かが判定される(S123)。これは、通常の運転制御回路201によって制御される第1と第2のブレーキ(9A,9B)のそれぞれに対するブレーキ釈放用コネクタ(BR1,BR2)からの信号を直列に入力されるものであり、このRUN信号がオンである場合には、両ブレーキは釈放状態であってかご1が通常の運転状態であることを示し、少なくともどちらかのブレーキが制動状態となった際にオフ信号となる。
【0100】
したがって、RUN信号がオンであることが判定された後は、まず、該判定から2秒以内について第1と第2のブレーキ(9A,9B)の各ブレーキ動作感知装置からの信号(BKS1,BKS2)がオフであるか否かが判定され(S126)、信号(BKS1,BKS2)がオフであることが判定されると、第1と第2のブレーキ(9A,9B)は釈放状態であり、通常運転状態として異常が検知されず異常判定動作は終了する。ただし、RUN信号がオンで信号(BKS1,BKS2)がオンである場合は、整合性がないため、ブレーキ又はブレーキ動作感知装置又はRUN信号の異常判定が成され(S130)、モータ電源が遮断され(S131)、かご制止が成される(S132)。
【0101】
一方、RUN信号がオンであると判定されなかった場合には、ブレーキ釈放用コネクタ(BR1,BR2)の少なくともどちらかのブレーキへの電源回路が遮断されてブレーキ制動状態への移行が判定されるが、この判定から2秒以内について第1のブレーキ9Aのブレーキ動作感知装置からの信号BKS1がオフか否かが判定される(S124)と共に、第2のブレーキ9Bのブレーキ動作感知装置からの信号BKS2がオフか否かが判定される(S125)。
【0102】
従って、信号BKS1と信号BKS2との少なくともどちらか一方の信号がオフである場合には、RUN信号によって少なくともどちらかのブレーキが制動状態であるとされているにもかかわらず、少なくともどちらかのブレーキ動作感知装置からの信号はそのブレーキが釈放状態であると示しているため、少なくともどちらかのブレーキ又はブレーキ動作感知装置が異常であるかあるいはRUN信号自体が異常であると判定される(S130)。この異常判定によって、モータ電源遮断用コンタクタ(S1,S2)が無通電消磁されて両コイル接点が開けられてモータ電源が遮断され(S131)、かご制止が成される(S132)。以上の異常判定によるかご制止が成されれば、ブレーキとブレーキ動作感知装置との異常判定の動作処理は終了される。
【0103】
なお、ブレーキ又はブレーキ動作感知装置又はRUN信号の居樹判定が成された場合、残戦制御用演算装置11は、その異常判定に対応する異常信号を出力する(S140)。本実施例においては、上記のように、異常信号に対応する異常出力(X20~X24)の組合せ出力として外部へ出力できる。
【0104】
以上のように、本発明の安全制御回路においては、必要な動作異常判定論理プログラムと該論理プログラム用データを有していれば、必要な種々の異常判定が通常の運転制御回路からの影響を受けることなく実行可能である。即ち、各種信号の組合せとその整合性異常を検知することによって、例えば、各コンタクタのオン故障や、各入力部の異常等の異常判定も。安全制御回路において専用に実行することが可能である。
【0105】
また、図1に示す実施例においては、かご戸及び乗場戸が引き戸である場合を示したが、本発明による戸開走行保護装置用の安全制御回路は、荷物や自動車昇降用に使われている上下戸の場合も同様に有効である。例えば図6に示すように、上下戸タイプのかご30の各かご戸及び乗場戸のスイッチからの信号入力部以外は、図1の引き戸の場合とほぼ同一の構成でエレベータシステムに組み込まれる。
【0106】
一般的な上下戸タイプのかご30は、かご戸として上下動可能な一対のかご板戸(35a,35b)を備えると共に、乗場戸として上下動可能な一対の乗場板戸(36a,36b)を備えたものである。乗場戸は、上側の乗場板戸36aを手動で上方に引き上げると、その乗場板戸36aに連動して下側の乗場板戸36bが下方に移動し、また上側の乗場板戸36aを下方に引き下げると、下側の乗場板戸36bがその上側の乗場板戸36aに連動して上方に移動し、これら乗場板戸(36a,36b)の上下移動で乗場側の出し入れ口が開閉される構造となっている。
【0107】
一方、かご戸は、一対のかご板戸(35a,35b)が、かご30の前面に取り付けられた枠体の内側で上下にスライド可能に配置されている。通常時には、上側のかご板戸35aの下端と下側のかご板戸35bの上端とが突き当たった閉状態によってかご30の前面開口が閉じられている。閉状態から上側のかご板戸35aを手動で上方に引き上げると、かご板戸35aにワイヤ等を介して連動する下側のかご板戸35bが自重で下方に移動することによって上下のかご板戸同士が離れて、かご30の開口が開放状態となる。
【0108】
また各かご板戸(35a,35b)と乗場板戸(36a,36b)に対して、それぞれの開閉状態を示す上側かご戸スイッチCDaS、下側かご戸スイッチCDbS、上側乗場戸スイッチHDaS、下側乗場戸スイッチHDbSとが設けられている。従って、本安全制御回路10は、当該基板において、入力用接続部の一部を、各スイッチからの電線の結線用に設定し、また安全制御用演算装置11の入力側インターフェース回路12において、各スイッチからの信号(CDO,CD1・CD2,HDO,HD1・HD2)を受信する入力部を設けておけば良い。
【0109】
ここで、これら各スイッチからの信号は、各かご板戸(35a,35b)と乗場板戸(36a,36b)がそれぞれ全開状態にてオフ信号として入力されるものとする。従って、安全制御用演算処理装置11では、これらの入力信号のオン、オフによってかご戸と乗場戸の開閉状態を判定でき、戸開走行の異常判定に利用できる。
【0110】
以上のように、本発明による戸開走行保護装置用の安全制御回路は、戸のタイプにかかわらず、ロープ式のエレベータシステムであれば組込み可能であり、いずれの場合も、通常の運転制御に影響されることなく、各種の動作異常判定を良好に行える。しかも、通常の運転制御回路が設置されている制御盤に対して基板単位で交換可能に装着されるものであるため、設定された交換時期での交換作業は非常に簡便に済む。
【符号の説明】
【0111】
1,30:かご
2:メインロープ
3:釣合錘
4:方向転換プーリ
5:かご戸
6:乗場戸
CDS:かご戸スイッチ
HDS:乗場戸スイッチ
7:巻上機
8:シーブ
9A:第1のブレーキ
9B:第2のブレーキ
10:安全制御回路(戸開走行保護装置用)
11:安全制御用演算処理装置(CPU)
12:入力側インターフェース回路
13:出力側インターフェース回路
14:安全制御用記憶部(ROM)
15:安全制御用記憶部(RAM)
16:WDT(ウォッチドッグタイマー)
17:表示ランプ
18:エラー表示ランプ
20:インバータ
21,22:電源
23A,23B:整流器
25:モータ
S1,S2:モータ電源遮断用コンタクタ
BD1,BD2:ブレーキ電源遮断用コンタクタ
DZ1,DZ2:特定距離感知装置
35a:上側かご板戸
35b:下側かご板戸
36a:上側乗場板戸
36b:下側乗場板戸
CDaS:上側かご戸スイッチ
CDbS:下側かご戸スイッチ
HDaS:上側乗場戸スイッチ
HDbS:下側乗場戸スイッチ
100:安全制御回路による制御が及ぶ領域
200:制御盤
201:運転制御回路
202:入力側インターフェース回路
203:出力側インターフェース回路
210:通常運転制御用の演算処理装置(CPU)
BR1,BR2:ブレーキ釈放用コンタクタ
S1y,S2y,BDy:リレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7