(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032463
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】人形用義眼及び人形
(51)【国際特許分類】
A63H 3/38 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A63H3/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136133
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】399110362
【氏名又は名称】株式会社ボークス
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】重田 茜理
(72)【発明者】
【氏名】椿 拓也
(72)【発明者】
【氏名】元橋 賢彦
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150BC02
2C150CA04
(57)【要約】
【課題】瞳模様層を変更できる人形用義眼において、透明体越しに余計な構造線が見え難い人形用義眼を提供する。
【解決手段】義眼の前面を構成する一方面と反対面に凹部が形成された透明体と、前記透明体の凹部に着脱可能に篏合する義眼本体と、前記凹部底面と前記義眼本体との間に介在する瞳模様層とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
義眼の前面を構成する一方面と反対面に凹部が形成された透明体と、
前記透明体の凹部に着脱可能に篏合する義眼本体と、
前記凹部底面と前記義眼本体との間に介在する瞳模様層とを備えていることを特徴とする人形用義眼。
【請求項2】
前記凹部が、柱状をなしている請求項1記載の人形用義眼。
【請求項3】
前記凹部の内側周面に前記義眼本体と係合する係合機構が設けられている請求項1記載の人形用義眼。
【請求項4】
前記義眼本体が、柱状をなすものであり、
前記係合機構が、前記凹部の内側周面又は前記義眼本体の外側周面のいずれか一方に形成された係合凸部と他方に形成された係合凹部とを備えている請求項2記載の人形用義眼。
【請求項5】
前記透明体が、前記義眼本体よりも軟質の素材によって形成されている請求項1記載の人形用義眼。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された人形用義眼を備えた人形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形用義眼及び人形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、彩光シートを自分好みに交換できる人形用義眼が開示されている。この人形用義眼は、眼球体の上部に設けられた凹陥部に彩光シートを納めた後、その凹陥部に半球状の凸レンズを篏合する構造になっており、眼球体から凸レンズを取り外すことで彩光シートを交換できる。
【0003】
この種の人形用義眼は、人形頭内に取り付けて使用される。具体的には、人形頭は、内部空間を有し、目の位置にその内部空間を外部と連通させる開口が形成されている。そして、人形用義眼は、人形頭の外部から開口を通して凸レンズ越しに彩光が見えるように内部空間に保持される。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された人形用義眼は、眼球体に設けられた凹陥部に凸レンズを篏合した構造になっているため、凸レンズ越しに眼球体と凸レンズとの篏合構造が見え不格好となるという問題がある。なお、この問題は、凸レンズの外径を、開口の内径に比べて大幅に大きくすれば解消できるが、この場合、義眼全体が大きくなり、例えば目が大きく小顔のキャラクターを模した人形頭内に納まらなくなるという別の問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、瞳模様層を変更できる人形用義眼において、透明体越しに余計な構造線が見え難い人形用義眼を提供することを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る人形用義眼は、義眼の前面を構成する一方面と反対面に凹部が形成された透明体と、前記透明体の凹部に着脱可能に篏合する義眼本体と、前記凹部底面と前記義眼本体との間に介在する瞳模様層とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成であれば、透明体の凹部から義眼本体を取り外すことで瞳模様層を変更できる。また、透明体の裏面に形成された凹部に義眼本体を篏合するので、例えば前記人形頭内に取り付けた人形用義眼を外部から見た場合、透明体と義眼本体との篏合構造が瞳模様層の後ろに隠れる。これにより、透明体越しに篏合構造が殆ど見えなくなる。また、透明体の外径を大きくしても、それに合わせて義眼本体の外径を大きくする必要がないので、小型化できる。これにより、例えば目が大きく小顔のキャラクターを模した人形頭内にも無理なく納めることができる。
【0009】
また、前記凹部が、柱状をなしているものであってもよい。このような構成によれば、凹部の内側周面が底面から直交方向へ延びるので、透明体越しに嵌合構造がより見え難くなる。
【0010】
また、前記凹部の内側周面に前記義眼本体と係合する係合機構が設けられているものであってもよい。このような構成であれば、義眼本体が凹部から不用意に外れ難くなる。
【0011】
前記係合機構の具体的な態様としては、前記義眼本体が、柱状をなすものであり、前記係合機構が、前記凹部の内側周面又は前記義眼本体の外側周面のいずれか一方に形成された係合凸部と他方に形成された係合凹部とを備えているものであってもよい。
【0012】
人形用義眼は、小さい部品であるため、義眼本体を透明体から取り外し難い。そこで、前記透明体が、前記義眼本体よりも軟質の素材によって形成されているものであってもよい。
【0013】
このような構成によれば、透明体を変形されることで、義眼本体を透明体から容易に取り外すことができる。これにより、瞳模様層の変更が容易となる。
【0014】
また、本発明に係る人形は、前記いずれかの人形用義眼を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明に係る人形用義眼であれば、透明体越しに余計な構造線が見え難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る人形用義眼を模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】実施形態に係る人形用義眼を模式的に示す断面図である。
【
図3】実施形態に係る人形頭を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】実施形態に係る人形頭を模式的に示す一部省略斜視図である。
【
図5】他の実施形態に係る人形用義眼を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る人形用義眼及び人形について
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0018】
<実施形態> 本実施形態の人形用義眼E(以下、「義眼E」ともいう)は、
図1及び
図2に示すように、透明体10と、義眼本体20と、係合機構30と、瞳模様層40とを備えている。本実施形態では、義眼Eが目視する方向(
図1及び
図2中、矢印で示す方向)を前方とし、その前方と反対方向を後方とする。また、人形とは、人型のものに限らず、動物型やロボット型なども含まれる。
【0019】
前記透明体10は、義眼Eの前部を構成する部材である。本実施形態の透明体10は、円柱状をなし、前方を向く一方面10aが凸球面状に形成されており、後方を向く他方面10bが平坦状に形成されている。つまり、透明体10は、全体として凸レンズ状をなしている。そして、透明体10の他方面10b中央には、凹部11が形成されている。また、透明体10の外側周面10cには、径方向へ向かって突出する操作部12が設けられている。なお、透明体10は、義眼本体20よりも軟質の素材で形成されており、使用者が外力を加えることで弾性変形するようになっている。透明体10は、無色透明のものであるが、有色透明のものであってもよい。
【0020】
前記凹部11は、
図2に示すように、円柱状をなし、一方面10aと反対方向を向く底面11aと、底面11aから直交方向へ延びる内側周面11bとを有している。そして、底面11aは、後方へ向かって僅かに凸球面状に形成されている。
【0021】
前記義眼本体20は、透明体10の凹部11に着脱可能に嵌め込まれるものである。本実施形態の義眼本体20は、円柱状をなし、凹部11に嵌め込まれた状態で一端面20aがその凹部11の底面11aと対向し、この一端面20aと底面11aとの間に瞳模様層30が保持されるように構成されている。義眼本体20は、その外径が凹部11の内径と略同一の長さになっており、その軸方向の長さが凹部11の深さよりも長くなっている。義眼本体20は、非透明のものである。本実施形態の義眼本体20は、白色であり、その一端面20aが白目を構成するようになっている。
【0022】
前記係合機構30は、凹部11に嵌め込まれた義眼本体20の抜脱方向への移動を規制するものである。本実施形態の係合機構30は、凹部11の内側周面11bと義眼本体20との間に介在している。具体的には、係合機構30は、凹部11の内側周面11bの全周に亘って形成された環状の係合凸部31と、義眼本体20の外側周面20cの全周に亘って設けられた環状の係合凹部32とを備えている。そして、係合凸部31の内径は、義眼本体20の外径よりも小さく形成されている。したがって、係合凸31は、義眼本体20が凹部11に嵌め込まれる途中で押し広げられ、義眼本体20が凹部11に嵌め込まれた後復元して係合凹部32に係合するように構成されている。
【0023】
前記瞳模様層40は、虹彩又は瞳孔のいずれか一方又は双方を構成するものである。本実施形態の瞳模様層40は、シール状のものであり、その一方面に虹彩及び瞳孔の模様が描かれている。瞳模様層40は、義眼本体20の一端面20aに納まる大きさに形成されており、本実施形態では、一端面20aよりも小さく形成されている。そして、瞳模様層40は、この一端面20aに貼り付けられる。
【0024】
次に、本実施形態に係る人形用義眼Eの組み立て方を説明する。
【0025】
人形用義眼Eを組み立てる場合、先ず、使用者は、好みのキャラクターの瞳模様が描かれた瞳模様層40を構成するシールを義眼本体20の一端面20aに貼り付ける。次に、使用者は、義眼本体20をその一端面20aが底面11aと対向するように凹部11に嵌め込む。この時、使用者は、義眼本体20を凹部11の周壁を弾性変形させて押し広げながら嵌め込む。これにより、係合凸部31は、周壁と共に押し広げられた後、義眼本体20が凹部11の奥まで嵌まり込むと復元して係合凹部32と係合する。なお、瞳模様層40を交換する場合、操作部12を前方へ押圧して弾性変形させた透明体10と義眼本体20との間に指を差し込み、その義眼本体20を後方へ引っ張って取り外す。そして、義眼本体20に貼り付けた瞳模様層40を剥がして張り替える。
【0026】
次に、人形頭Hの構成を
図3及び
図4に基づいて説明した上で、その人形頭Hに対する人形用義眼Eの取付方法を説明する。
【0027】
人形頭Hは、頭本体50と、義眼保持体60とを備えている。人形は、この人形頭Hに胴体(図示せず)を取り付けたものである。
【0028】
前記頭本体50は、中空状をなしており、顔側を構成する顔部材51と、頭側を構成する頭部材52とに分割可能になっている。顔部材51と頭部材52とは、互いに着脱可能になっている。したがって、頭本体50は、顔部材51から頭部材52を取り外すことにより、顔部材51の内部にアクセスできる。
【0029】
前記顔部材51は、少なくとも顔部51aと首付け根部51bとを有している。顔部材51には、左目及び右目の位置に開口51cが形成されている。また、顔部材51には、その内面の開口51cよりも首側に、義眼保持体60を取り付けるための嵌合穴51dが形成されている。
【0030】
前記義眼保持体60は、例えば全体として略T字状をなし、後方(後頭部側)へ向かって弾性変形可能なものである。本実施形態の義眼保持体60は、嵌合穴51dに嵌め込まれる軸体61と、軸体61に固定された弾性変形可能な保持アーム62とを備えている。軸体61は、断面矩形状をなし、嵌合穴51dにガタなく嵌り込む形状になっている。保持アーム62は、軸体61からその軸方向と直交方向へ延びる一対のアーム部63を有している。このアーム部63は、軸体61を中心軸としてその軸体61の周方向に撓むように弾性変形する。また、各アーム部63には、それぞれ先端部に保持面63sが形成されている。
【0031】
そして、前記義眼保持体60は、軸体61を嵌合穴51dに嵌め込むことにより、顔部材51に取り付けられる。この状態で、義眼保持体60は、顔部材51の首付け根部51bから頭側へ向かって立ち上がり、保持面63sを開口51cと間隔を空けて対向させるように配置される。したがって、保持面63sと開口51cとの間には、人形用義眼Eを保持するための保持スペースSが形成される。
【0032】
この人形頭Hに対して人形用義眼Eを取り付ける場合、先ず、頭本体50の顔部材51から頭部材52を取り外す。これにより、顔部材51の内部へその後頭部側の開口からアクセス可能となる。そして、人形用義眼Eを保持スペースSに嵌め込む。具体的には、人形用義眼Eの透明体10の一方面10aを開口51c側に向けて保持スペースSに嵌め込む。
【0033】
人形用義眼Eは、保持スペースSに嵌め込まれた状態において、透明体10の一方面10aが顔部材51の開口51c周辺の内面に当接するとともに義眼本体の他端面20bが保持面63sに当接し、義眼保持体60によって内面との間に挟まれて保持される。この状態において、透明体10は、開口51cの全部又は一部を塞ぐ。そして、人形用義眼Eは、頭本体50の外部から開口51cを通して透明体10越しに瞳模様層40に描かれた瞳模様が見える。
【0034】
本実施形態に係る人形用義眼Eによれば、例えば人形頭Hに取り付けた状態において、その人形頭Hの開口51cを通して見た場合、透明体10と義眼本体20との篏合構造が瞳模様層40及びその瞳模様層40を保持する義眼本体20の一端面20aの後側に隠れて見え難くなる。特に凹部11の内側周面11bと義眼本体20の外側周面20cとの間に介在する係合機構30は見え難くなる。したがって、好みのキャラクターの瞳模様を忠実に再現し易くなる。また、軟質の透明体10を弾性変形させることで容易に義眼本体10を取り外すことができる。これにより、瞳模様層40の交換が容易となる。
【0035】
<その他の実施形態> 前記実施形態では、透明体を円柱状としたが、これに限定されない。例えば透明体を四角柱状、半状、半楕円状としてもよい。また、透明体の前面を凸状としたが、例えば平坦状、凹状としてもよい。また、透明体は、軟質のものに限定されず、硬質のものであってもよい。
【0036】
前記実施形態では、義眼本体の一部が凹部に嵌まり込むように構成したが、義眼本体の全部が凹部に嵌まり込む構成してもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、瞳模様層40をシール状のもの単体で構成したが、例えば、瞳模様層40は、
図4に示すように、瞳模様が描かれたシールとビーズやスパンコールなどの装飾材を組み合わせて構成したものであってもよく、装飾材のみで構成したものであってもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、瞳模様層を義眼本体に貼り付けるように構成したが、瞳模様層は、透明体と義眼本体との間に介在するものであればよく、例えば透明体の凹部底面に貼り付けるように構成してもよい。また、透明体や義眼本体に必ずしも貼り付ける必要はない。この場合、瞳模様層を透明体の凹部底面と義眼本体の一端面との間に挟んで保持してもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、係合凸部を透明体に設け、係合凹部を義眼本体に設けたが、例えば、係合凹部を透明体に設け、係合凸部を義眼本体に設けてもよい。また、義眼本体の全部が凹部に嵌まり込む場合には、凹部の内側周面に係合凸部を設け、その係合凸部が凹部に嵌め込まれた義眼本体の他方面に引っ掛かるように構成してもよい。
【0040】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の一部同士の組み合わせや、変形等を行っても構わない。
【符号の説明】
【0041】
E :人形用義眼
10 :透明体
20 :義眼本体
30 :係合機構
40 :瞳模様層