(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032466
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】オイルの厚さの測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20240305BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20240305BHJP
【FI】
G01B15/02 H
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136137
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 豪男
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】日浦 祐樹
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067AA28
2F067CC02
2F067EE03
2F067EE04
2F067FF14
2F067GG01
2F067GG07
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067RR25
2F067RR41
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001JA08
2G001KA20
2G001LA04
2G001MA02
(57)【要約】
【課題】オイルの厚さを測定することが可能なオイルの厚さの測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】X線CTによって得られるCT(Computed Tomography)値の差とオイルの厚さとの関係を取得する第1取得部と、オイルのない状態での測定対象物のCT値とオイルのある状態での前記測定対象物のCT値との差を取得する第2取得部と、前記CT値の差と前記オイルの厚さとの関係、および前記オイルのない状態での前記測定対象物のCT値と前記オイルのある状態での前記測定対象物のCT値との差に基づいて、前記測定対象物におけるオイルの厚さを測定する測定部と、を具備するオイルの厚さの測定装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CTによって得られるCT(Computed Tomography)値の差とオイルの厚さとの関係を取得する第1取得部と、
オイルのない状態での測定対象物のCT値とオイルのある状態での前記測定対象物のCT値との差を取得する第2取得部と、
前記CT値の差と前記オイルの厚さとの関係、および前記オイルのない状態での前記測定対象物のCT値と前記オイルのある状態での前記測定対象物のCT値との差に基づいて、前記測定対象物におけるオイルの厚さを測定する測定部と、を具備するオイルの厚さの測定装置。
【請求項2】
規準器はオイルを貯留可能な容器であり、
第1取得部は、オイルのない状態での前記規準器のCT値とオイルのある状態での前記規準器のCT値とを取得し、前記規準器における前記CT値の差を取得し、前記CT値の差と前記オイルの厚さとの関係を取得する請求項1に記載のオイルの厚さの測定装置。
【請求項3】
前記規準器内の位置に応じて、前記規準器におけるオイルの厚さは変化し、
前記第1取得部は、前記規準器内の位置ごとに前記CT値の差を取得する請求項2に記載のオイルの厚さの測定装置。
【請求項4】
前記第1取得部は、前記規準器内の位置ごとに前記CT値の差のピークを取得し、前記CT値の差のピークと前記オイルの厚さとの関係を取得し、
前記測定部は、前記CT値の差のピークと前記オイルの厚さとの関係に基づいて、前記測定対象物におけるオイルの厚さを測定する請求項3に記載のオイルの厚さの測定装置。
【請求項5】
前記規準器の材料は前記測定対象物の材料と同一である請求項2に記載のオイルの厚さの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオイルの厚さの測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の動力伝達装置などには潤滑油(オイル)が用いられる(例えば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械的な構造物の内部にオイルが供給され、オイルの膜を形成する。しかし構造物の内部におけるオイルの厚さを測定することは困難であった。そこで、オイルの厚さを測定することが可能なオイルの厚さの測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、X線CTによって得られるCT(Computed Tomography)値の差とオイルの厚さとの関係を取得する第1取得部と、オイルのない状態での測定対象物のCT値とオイルのある状態での前記測定対象物のCT値との差を取得する第2取得部と、前記CT値の差と前記オイルの厚さとの関係、および前記オイルのない状態での前記測定対象物のCT値と前記オイルのある状態での前記測定対象物のCT値との差に基づいて、前記測定対象物におけるオイルの厚さを測定する測定部と、を具備するオイルの厚さの測定装置によって達成することができる。
【0006】
規準器はオイルを貯留可能な容器であり、第1取得部は、オイルのない状態での前記規準器のCT値とオイルのある状態での前記規準器のCT値とを取得し、前記規準器における前記CT値の差を取得し、前記CT値の差と前記オイルの厚さとの関係を取得してもよい。
【0007】
前記規準器内の位置に応じて、前記規準器におけるオイルの厚さは変化し、前記第1取得部は、前記規準器内の位置ごとに前記CT値の差を取得してもよい。
【0008】
前記第1取得部は、前記規準器内の位置ごとに前記CT値の差のピークを取得し、前記CT値の差のピークと前記オイルの厚さとの関係を取得し、前記測定部は、前記CT値の差のピークと前記オイルの厚さとの関係に基づいて、前記測定対象物におけるオイルの厚さを測定してもよい。
【0009】
前記規準器の材料は前記測定対象物の材料と同一でもよい。
【発明の効果】
【0010】
オイルの厚さを測定することが可能なオイルの厚さの測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)はオイルの厚さの測定装置を例示する模式図である。
図1(b)は制御部のハードウェア構成を例示する模式図である。
図1(c)は制御部の機能を例示するブロック図である。
【
図2】
図2(a)は規準器を例示する平面図である。
図2(b)は
図2(a)の線A-Aに沿った断面図である。
図2(c)はオイルを入れた状態の規準器を例示する断面図である。
【
図3】
図3は制御部が実行する処理を例示するフローチャートである。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は規準器におけるCT値を例示する図である。
図4(c)はCT値の差を例示する図である。
【
図5】
図5はオイルの厚さとCT値の差との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(a)はオイルの厚さの測定装置100を例示する模式図である。測定装置100は、CT(Computed Tomography)装置10、制御部20を有する。CT装置10は、物体にX線を照射する。測定対象物は例えば車両の部品であり、内燃機関の部品、変速機の部品などである。
【0013】
制御部20はコンピュータを有し、CT装置10を制御し、CT装置10からデータを取得する。制御部20は、CT装置10によるX線測定から得られるCT値を取得し、CT値に基づいてオイルの厚さを測定する。CT値はX線の吸収係数を表す数値である。
【0014】
図1(b)は制御部20のハードウェア構成を例示する模式図である。制御部20はCPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)30、RAM(Random Access Memory)32、ROM(Read Only Memory)34、記憶装置36、インタフェース(I/F)38を有する。CPU30、RAM32、ROM34、記憶装置36、およびI/F38は、バスによって互いに接続されている。
【0015】
記憶装置36は例えばハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶媒体である。記憶装置36は、後述の規準器のCT値、CT値と厚さとの関係などを記憶する。I/F38は、CT装置10などの外部の機器に接続される。
【0016】
RAM32にはROM34や記憶装置36に記憶されたプログラムが一時的に格納される。RAM32に格納されたプログラムをCPU30が実行することにより、CPU30は後述する各種の機能を実現し、また、後述する各種の処理を実行する。プログラムは後述するフローチャートに応じたものとすればよい。
【0017】
図1(c)は制御部20の機能を例示するブロック図である。制御部20は第1取得部40、第2取得部42、測定部46として機能する。第1取得部40は、オイルのない状態での規準器のCT値およびオイルを入れた状態での規準器のCT値を取得し、CT値の差を取得する。第1取得部40は、規準器におけるCT値の差とオイルの厚さとの関係を取得する。第2取得部42は、オイルのない状態での測定対象物のCT値およびオイルを入れた状態での測定対象物のCT値を取得し、CT値の差を取得する。測定部46は測定対象物におけるオイルの厚さを測定する。制御部20の各部は回路などのハードウェアでもよい。
【0018】
図2(a)は規準器50を例示する平面図である。
図2(b)は
図2(a)の線A-Aに沿った断面図であり、オイルを入れていない状態の規準器50を図示している。X軸方向は規準器50の延伸する方向である。Z軸方向は規準器50の深さ方向であり、X軸方向に直交する。規準器50の材料は測定対象物の材料と同一である。規準器50および測定対象物は例えば金属で形成されてもよいし、樹脂で形成されてもよい。
【0019】
図2(a)および
図2(b)に示すように、規準器50は凹部52を有する。
図2(b)に示すように、規準器50のX軸方向の1つの端部からもう1つの端部に向けて、凹部52の底面の高さが変化する。規準器50は、階段状に並ぶ複数の底面を有する。底面の段数は例えば5個以上、8個以上、10個以上である。底面の段に応じた凹部52の内部の位置を、X1からX8とする。位置X1からX8のうち位置X1は規準器50のX軸方向の1つの端部に最も近い。位置X1からX8のうち位置X8は規準器50のもう1つの端部に最も近い。位置X1からX8にかけて、凹部52は深くなる。
【0020】
図2(c)はオイル54を入れた状態の規準器50を例示する断面図である。ハッチングは省略している。規準器50の凹部52にオイル54が貯留される。底面の高さに応じて、オイル54の厚さはT1からT8まで変化する。具体的には、凹部52の位置X1においてオイル54の厚さはT1である。位置X2において厚さはT2である。同様に、位置に応じてオイル54の厚さが変化する。厚さT1は厚さT1からT8のうち最も小さい。厚さT8は厚さT1からT8のうち最も大きい。厚さの関係は、T1<T2<T3<T4<T5<T6<T7<T8である。
【0021】
図3は制御部20が実行する処理を例示するフローチャートである。CT装置10は、オイルのない状態の規準器50にX線CT計測を行う。制御部20の第1取得部40はCT値を取得する(ステップS10)。制御部20は、規準器50の位置X1からX8それぞれにおけるCT値を取得し、記憶装置36に記憶する。計測後、規準器50にオイルを入れる。CT装置10は、オイルを入れた状態の規準器50にX線CT計測を行う。第1取得部40はCT値を取得する(ステップS12)。
図2(c)に示すように、オイルは複数の厚さを有する。厚さに応じた複数のCT値が検出される。制御部20は、オイルの厚さごとのCT値を取得し、記憶装置36に記憶する。
【0022】
第1取得部40は、オイルのない状態におけるCT値と、オイルを入れた状態におけるCT値との差を計算する。第1取得部40は、CT値の差とオイルの厚さとの関係を取得し、記憶装置36に記憶する(ステップS14)。
【0023】
CT装置10は、オイルのない状態における測定対象物にX線CT計測を行う。第2取得部42は、オイルのない状態における測定対象物のCT値を取得する(ステップS16)。CT装置10は、オイルのある状態における測定対象物にX線CT計測を行う。第2取得部42は、オイルのある状態における測定対象物のCT値を取得する(ステップS18)。第2取得部42は、測定対象物におけるCT値の差を算出する(ステップS20)。測定部46は測定対象物におけるオイルの厚さを測定する(ステップS22)。以上で
図3の処理は終了する。
【0024】
図4(a)および
図4(b)は規準器50におけるCT値を例示する図である。
図4(a)および
図4(b)の横軸は凹部52の深さを表す。縦軸はCT値を表す。
図4(a)および
図4(b)において、四角はオイルがない状態(オイルなし)でのCT値を表す。円はオイルを入れた状態(オイルあり)でのCT値を表す。
【0025】
図4(a)は規準器50の位置X1におけるCT値を表す。規準器50にオイルを入れたとき、位置X1におけるオイルの厚さはT1である。
図4(b)は位置X3におけるCT値を表す。規準器50にオイルを入れたとき、位置X3におけるオイルの厚さはT3である。
図4(a)および
図4(b)に示すように、オイルなしのCT値とオイルありのCT値とは異なる。
【0026】
図2(b)に示すように、オイルのない状態では規準器50は空気に露出する。空気のCT値に比べて規準器50(金属または樹脂など)のCT値は高い。
図2(c)に示すように、オイルのある状態では、下から順に規準器50、オイル、空気が並ぶ。こうした配置を反映して、
図4(a)および
図4(b)において深さが大きくなるほどCT値は高くなる。しかし、CTスキャンでは、空気とオイルとの境界、およびオイルと規準器50との境界は不鮮明である。
図4(a)および
図4(b)において、CT値は急峻に変化せず、なだらかに変化する。一方、オイルありのCT値はオイルなしのCT値とは異なる。そこで、第1取得部40は、位置X1からX8ごとに、CT値の差を算出する。具体的には、同一の深さにおけるオイルありのCT値からオイルなしのCT値を引いて、差を取得する。
【0027】
図4(c)はCT値の差を例示する図である。横軸は凹部52の深さを表す。縦軸はCT値の差を表す。
図4(c)中の四角は、規準器50の位置X1(オイル厚さT1)でのCT値の差を表す。円は、規準器50の位置X8(オイル厚さT8)でのCT値の差を表す。
図4(c)では位置X1およびX8の例だけを図示しているが、第1取得部40は位置X1からX8のすべてにおいてCT値の差を取得する。
【0028】
位置X1のCT値の差は、深さZ1においてピークの値を有する。位置X8のCT値の差は、深さZ2においてピークの値を有する。第1取得部40は各位置におけるCT値の差のピークを取得する。
【0029】
図5はオイルの厚さとCT値の差との関係を例示する図である。横軸はオイルの厚さを表す。オイルの厚さは、規準器50の位置X1からX8に対応している。縦軸はCT値の差を表しており、
図4(c)の例におけるCT値の差のピークである。
図5に示すように、オイルの厚さが大きいほど、CT値の差は大きくなる。第1取得部40は、
図5のようなデータを取得し、記憶装置36に記憶する(
図3のステップS14)。
【0030】
第2取得部42は、オイルありの測定対象物のCT値からオイルなしの測定対象物のCT値を引いて、測定対象物におけるCT値の差を算出する(ステップS20)。CT値の差と、
図5の関係とに基づいて、測定部46は測定対象物におけるオイルの厚さを測定する。例えば測定対象物におけるCT値の差がΔ5ならば、オイルの厚さはT6である。
【0031】
本実施形態によれば、制御部20の第1取得部40は、オイルの厚さとCT値の差との関係を取得する(例えば
図5)。測定部46は、
図5のような関係、および測定対象物におけるCT値の差に基づいて、測定対象物におけるオイルの厚さを測定する。
【0032】
X線は測定対象物の外壁を透過し、内部まで到達する。測定対象物の内部にCT計測を行い、CT値を検出することができる。測定対象物の内部のオイルの厚さも測定することができる。駆動させた状態の測定対象物にCT計測を行うことで、駆動状態でのオイルの厚さを測定することができる。CT値の差を用いてオイルの厚さが測定されるため、CTスキャンの画像が不鮮明であっても精度の低下は抑制される。測定対象物のうち複数個所でCT値を測定してもよい。測定対象物の位置ごとのオイルの厚さを測定することができる。
【0033】
第1取得部40は、オイルのない状態での規準器50のCT値とオイルのある状態での規準器50のCT値との差を取得する。第1取得部40は、規準器50におけるCT値の差とオイルの厚さとの関係を取得する。第2取得部42は、測定対象物におけるCT値の差を、CT値の差とオイル厚さとの関係に当てはめることで、オイルの厚さを測定することができる。
【0034】
規準器50にCT計測を行った後に、測定対象物にCT計測を行う。CT装置10に配置する物品を規準器50から測定対象物に入れ替えればよい。工程が簡単である。CT装置10および測定対象物を改良しなくてよい。例えば、測定対象物の外壁をクリアケースなどにしなくてよい。コストの増加が抑制される。
【0035】
図2(a)から
図2(c)に示すように、規準器50は凹部52を有する。凹部52の深さは位置X1からX8ごとに変わる。このため
図2(c)に示すように、オイルの厚さも変化する。
図4(a)および
図4(b)に示すように、第1取得部40は、位置ごと(オイルの厚さごと)にCT値の差を取得する。1つの規準器50に対して、オイルなしの状態およびオイルありの状態でCT計測を行う。複数のオイル厚さに対応するCT値の差を取得することができる。コストの増加を抑制でき、かつ工程が簡単である。測定対象物におけるCT値の差がわかれば、オイルの厚さも測定することができる。
【0036】
第1取得部40は、
図4(c)におけるCT値の差のピークを用いて、
図5のような関係を取得する。ピークの値を用いることで、CT値の差が大きくなる。厚さの測定精度が向上する。
【0037】
規準器50の材料は測定対象物の材料と同一とする。材料に応じてCT値が変わる。材料を同一とすることで、規準器50におけるCT値の差が、測定対象物におけるCT値の差に近くなる。オイル厚さの測定精度が向上する。材料は例えば金属および樹脂などである。
【0038】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 CT装置
20 制御部
30 CPU
32 RAM
34 ROM
36 記憶装置
38 インタフェース
40 第1取得部
42 第2取得部
46 測定部
50 規準器
52 凹部
54 オイル
100 測定装置