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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032468
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】基板生産システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240305BHJP
   B41F 15/08 20060101ALI20240305BHJP
   B41F 15/12 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H05K3/34 505D
B41F15/08 303E
B41F15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136139
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一之
【テーマコード(参考)】
2C035
5E319
【Fターム(参考)】
2C035AA07
2C035FA22
2C035FA26
2C035FB25
2C035FB28
2C035FC08
2C035FD01
2C035FD42
5E319AA03
5E319AC01
5E319BB05
5E319CC33
5E319CD29
5E319GG01
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】印刷処理に長期的な待機時間が発生することを抑制可能な基板生産システムを提供する。
【解決手段】基板生産システム1は、基板Pにハンダの印刷処理を行う印刷装置2(印刷部)と、基板Pに部品を実装する部品実装装置5(作業部)とを、基板Pの搬送ラインに沿って備える。印刷装置2は、部品実装装置5の実装CT(作業サイクルタイム)に関する情報を取得する印刷通信部30(情報取得部)と、取得した前記情報に基づく実装CTに応じて、印刷装置2の印刷CTを調整する調整処理を実行する制御部2Bと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布材を印刷する印刷処理を行う印刷部と、塗布材が印刷された基板に対して所定処理を実行する作業部とが、基板の搬送方向に沿って備えられた基板生産システムであって、
前記作業部における基板の搬入から搬出までの時間である作業サイクルタイムに関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記情報に基づく前記作業サイクルタイムに応じて、前記印刷部における基板の搬入から搬出までの時間である印刷サイクルタイムを調整する調整処理を実行する制御部と、を備えることを特徴とする基板生産システム。
【請求項2】
請求項1に記載の基板生産システムにおいて、
前記調整処理は、前記印刷処理の完了時点から基板の搬出開始時点までの時間である搬出前インターバルの変更、及び/又は前記印刷部における基板の搬送速度の変更である、ことを特徴とする基板生産システム。
【請求項3】
請求項2に記載の基板生産システムにおいて、
基板の生産前に、基板の生産計画情報に基づき目標印刷サイクルタイムを求める演算部をさらに備え、
前記制御部は、前記演算部が求めた前記目標印刷サイクルタイムと、前記印刷サイクルタイムの基準値であって予め定められた基準印刷サイクルタイムとを比較し、当該基準サイクルタイムと前記目標サイクルタイムとに差がある場合には、前記基準印刷サイクルタイムが前記目標サイクルタイムと等しくなるように、前記搬出前インターバル、及び/又は、基板の前記搬送速度を初期設定する処理を基板の生産前に実行する、ことを特徴とする基板生産システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の基板生産システムにおいて、
前記印刷部から搬出された基板を前記作業部への搬入前にストックすることが可能な基板ストック部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記基板ストック部における基板のストック数に関する情報をさらに取得し、
前記制御部は、前記情報取得部が取得した前記ストック数に関する情報に応じて、前記調整処理をさらに実行する、ことを特徴とする基板生産システム。
【請求項5】
請求項4に記載の基板生産システムにおいて、
前記制御部は、前記ストック数が、当該ストック数の上限値未満であってかつ予め設定された設定数以上になると、その後の前記印刷サイクルタイムがそれ以前よりも長くなるように前記調整処理を実行する、ことを特徴とする基板生産システム。
【請求項6】
請求項4に記載の基板生産システムにおいて、
前記印刷部の所定の計画停止期間中に、前記作業部において前記所定処理を継続的に実行するために前記基板ストック部にストックしておくことが必要な最低ストック数を推定する推定部をさらに備え、
前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づく前記ストック数が前記最低ストック数未満の場合には、前記計画停止期間の開始時点までに前記最低ストック数の基板が前記基板ストック部にストックされるように前記調整処理を実行する、ことを特徴とする基板生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板等の基板にハンダ等の塗布材を印刷する印刷部と、塗布材が印刷された基板に対して部品実装処理等の作業を行う作業部とを備えた基板生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の基板にハンダ等の塗布材を印刷する印刷装置(印刷部)と、塗布材が印刷された基板に対して部品実装処理を実行する部品実装装置(作業部)とを備えた基板生産システムが公知である。
【0003】
代表的な印刷装置として、スクリーン印刷装置が知られている。スクリーン印刷装置は、基板に重ねられるマスクと、マスクの上面に沿って摺動するスキージ(ヘラ部材)とを備え、マスク上面に供給された塗布材をスキージで移動させながら、マスクに形成されたパターン孔を介して塗布材を基板に印刷するように構成される。
【0004】
塗布材の印刷品質は、スキージの移動速度や印圧(押付け圧力)などの印刷条件に左右される。この印刷条件は、塗布材の種類とスキージの種類との組み合わせにより相違する。特許文献1には、このような印刷条件の設定をより簡単な操作で行うことが可能なスクリーン印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-149147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既述の基板生産システムでは、部品補充やマシントラブルにより部品実装装置が停止すると、印刷装置の印刷処理に待機時間が発生する。マスク上に供給された塗布材は、空気に曝されることによって徐々に乾燥し、粘度が上昇する。塗布材の粘度が上昇し過ぎると、かすれ等、印刷不良の原因、ひいては実装部品の通電不良の原因となる。
【0007】
そこで、待機時間が一定時間を超える場合には、印刷装置において例えばローリング処理や試し刷りが定期的に実行される場合がある。ローリング処理とは、塗布材の粘度上昇を抑制するために、マスク上のパターン孔を避けたエリアで、塗布材をスキージによって往復移動させる処理である。
【0008】
しかし、ローリング処理や試し刷りは、基板の生産に直結しない予備的な処理である。そのため、不要な塗布材の消費や電力消費を避ける上では、当該処理を実行せずに済むのが望ましい。要するに、印刷処理に長期的な待機時間が発生することを抑制できることが望ましいが、特許文献1には、この点についての言及は見られない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷処理に長期的な待機時間が発生することを抑制できる基板生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一局面に係る基板生産システムは、基板に塗布材を印刷する印刷処理を行う印刷部と、塗布材が印刷された基板に対して所定処理を実行する作業部とが、基板の搬送方向に沿って備えられた基板生産システムであって、前記作業部における基板の搬入から搬出までの時間である作業サイクルタイムに関する情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記情報に基づく前記作業サイクルタイムに応じて、前記印刷部における基板の搬入から搬出までの時間である印刷サイクルタイムを調整する調整処理を実行する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この基板生産システムでは、情報取得部が作業サイクルタイムに関する情報を取得すると、その作業サイクルタイムに応じて、制御部により印刷サイクルタイムが調整される。この場合、作業サイクルタイムと印刷サイクルタイムとが等しくなるように、若しくは作業サイクルタイムと印刷サイクルタイムとの差が所定範囲内に収まるように印刷サイクルタイムが調整されることにより、作業サイクルタイムと印刷サイクルタイムとのバランスが保たれ、印刷部での印刷処理に長期的な待機時間が発生することが抑制される。従って、塗布材の劣化が抑制されるとともに、ローリング処理や試し刷りなど、塗布材の劣化を抑制すための予備的処理の実行頻度が低減される。
【0012】
この基板生産システムにおいて、前記調整処理は、前記印刷処理の完了時点から基板の搬出開始時点までの時間である搬出前インターバルの変更、及び/又は前記印刷部における基板の搬送速度の変更である。
【0013】
この構成によれば、実質的な印刷処理の条件(スキージの移動速度や印圧(押付け圧力)など)を変更することなく印刷サイクルタイムを調整することが可能となる。そのため、基板の印刷品質に影響を与えることなく、印刷サイクルタイムを調整することが可能となる。
【0014】
また、上記基板生産システムにおいては、基板の生産前に、基板の生産計画情報に基づき目標印刷サイクルタイムを求める演算部をさらに備え、前記制御部は、前記演算部が求めた前記目標印刷サイクルタイムと、前記印刷サイクルタイムの基準値であって予め定められた基準印刷サイクルタイムとを比較し、当該基準サイクルタイムと前記目標サイクルタイムとに差がある場合には、前記基準印刷サイクルタイムが前記目標サイクルタイムと等しくなるように、前記搬出前インターバル、及び/又は、基板の前記搬送速度を初期設定する処理を基板の生産前に実行するように構成されていてもよい。
【0015】
この構成によると、常に決まった印刷サイクルタイム(基準印刷サイクルタイム)で基板の生産が開始される場合に比べて、印刷サイクルタイムと実装サイクルタイムとのバランスが保たれ易くなる。そのため、印刷部での印刷処理に長期的な待機時間が発生することがより高度に抑制される。
【0016】
また、上記基板生産システムにおいては、前記印刷部から搬出された基板を前記作業部への搬入前にストックすることが可能な基板ストック部をさらに備えていてもよい。この場合、前記情報取得部は、前記基板ストック部における基板のストック数に関する情報をさらに取得し、前記制御部は、前記情報取得部が取得した前記ストック数に関する情報に応じて、前記調整処理をさらに実行するように構成される。
【0017】
この構成によると、印刷サイクルタイムに比べて作業サイクルタイムが長い場合に、基板を一時的にストック部にストックすることができ、これにより、印刷部での印刷処理に長期的な待機時間が発生することが抑制される。しかも、基板のストック数に関する情報に応じて、印刷サイクルタイムの調整処理がさらに実行されるため、ストック数が上限値に達してストック不能になることが効果的に抑制される。つまり、このストック不能により、印刷部での印刷処理に長期的な待機時間が発生することが抑制される。
【0018】
この場合、例えば前記制御部は、前記ストック数が、当該ストック数の上限値未満であってかつ予め設定された設定数以上になると、その後の前記印刷サイクルタイムがそれ以前よりも長くなるように前記調整処理を実行するように構成される。
【0019】
この構成によると、基板ストック部における基板のストック数が設定数(<上限値)に達すると、その後の印刷サイクルタイムが長くなり、印刷部からの基板の搬出タイミングが遅くなる。その結果、基板ストック部への基板のストックが抑制される。
【0020】
また、上記基板生産システムにおいては、前記印刷部の所定の計画停止期間中に、前記作業部において前記所定処理を継続的に実行するために必要な最低ストック数を推定する推定部をさらに備え、前記制御部は、前記情報取得部が取得した情報に基づく前記ストック数が前記最低ストック数未満の場合には、前記計画停止期間の開始時点までに前記最低ストック数の基板が前記基板ストック部にストックされるように前記調整処理を実行するように構成される。
【0021】
この構成によると、印刷部の計画停止期間の開始時点までに最低ストック数の基板を確実にストック部にストックしておくことが可能となる。そのため、ストック基板の不足により、印刷部の計画停止期間中に作業部が停止するようなことが抑制ないし防止される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の基板生産システムによると、印刷部での印刷処理に長期的な待機時間が発生することを効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る基板生産システムの一例を示すブロック図である。
図2】前記基板生産システムにおける印刷装置の一例を示すブロック図である。
図3】前記印刷装置の印刷装置本体を示す模式的な側面図である。
図4】前記印刷装置本体における基板搬送システムを示す模式的な正面図である。
図5】印刷サイクルタイムの時間構成の説明図である。
図6】前記基板生産システムにおける管理装置の一例を示すブロック図である。
図7】前記印刷装置における印刷サイクルタイムの調整処理制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0025】
[部品実装システムの構成]
図1は、本発明に係る基板生産システムの一例を示すブロック図である。基板生産システム1は、プリント配線基板等の基板に部品が搭載された部品実装基板を生産するシステムである。基板生産システム1は、印刷装置2、印刷検査装置3、基板ストッカ4、部品実装装置5及びこれらを統括的に制御する管理装置6を備える。
【0026】
印刷装置2は、基板のランド上にハンダ(塗布材の一例)を印刷する印刷処理を行う装置である。印刷検査装置3は、基板に印刷されたハンダの印刷状態を検査する検査処理を行う装置である。基板ストッカ4は、検査処理が終了した基板を一時的にストックする装置である。部品実装装置5は、ハンダが印刷された基板に対して部品を実装(搭載)する実装処理を行う装置である。
【0027】
印刷装置2、印刷検査装置3、基板ストッカ4及び部品実装装置5は、この順番で基板の搬送方向に一列に連結されることによって生産ラインを構成しており、基板は、この順番で各装置2~5により既述の処理を受ける。図示を省略しているが、生産ラインには、実装処理を受けた基板に加熱処理を行うリフロー炉や、加熱処理後の基板における部品の実装状態を検査する検査処理を行う基板検査装置などの装置も備えられ得る。
【0028】
印刷装置2、印刷検査装置3、基板ストッカ4、部品実装装置5は、管理装置6に対してデータ通信可能に接続されている。
【0029】
図2は、基板生産システム1における印刷装置2の一例を示すブロック図である。印刷装置2は、装置本体2Aと、制御部2Bと、印刷通信部30と、記憶装置31とを含む。
【0030】
装置本体2Aは、基板Pにハンダを印刷する印刷処理を行う。印刷通信部30は、管理装置6とデータ通信を行うためのインターフェースであり、各種のデータ及び情報を管理装置6との間で入出力する機能を有する。制御部2Bは、装置本体2Aによる印刷処理を制御するとともに、印刷通信部30のデータ通信を制御する。
【0031】
図3は装置本体2Aを示す模式的な側面図である。図1図3及び後記図4には、方向関係の明確化のために、X方向及びY方向を水平方向、Z方向を鉛直方向とするXYZ直角座標を示している。X方向は基板Pの搬送方向である。
【0032】
装置本体2Aは、基板Pのランドに対応するパターン孔を備えたマスク(スクリーン版)を用いてハンダを印刷するスクリーン印刷装置であり、装置本体2Aは、基板搬送ユニット10、マスク保持ユニット11、基板支持ユニット12、スキージユニット16、クリーニングユニット17及びカメラユニット18を備える。
【0033】
基板搬送ユニット10は、装置本体2Aにおいて基板Pを搬送する機能を有する。当例では、基板搬送ユニット10は、基板Pの両端を支持して搬送する一対のベルト式コンベアである。図4に示すように、基板搬送ユニット10は、搬入コンベア10a、作業コンベア10b及び搬出コンベア10cの3つのコンベアを含む。なお、図4は、基板搬送ユニット10を示す模式的な正面図である。
【0034】
搬入コンベア10a、作業コンベア10b及び搬出コンベア10cは、基板Pの搬送方向(X方向)に沿ってこの順で上流側から配置されている。搬入コンベア10aは、印刷処理前の基板Pを機内に搬入し、作業コンベア10bは、搬入コンベア10aから基板Pを受け取って所定の印刷作業位置に配置するとともに、印刷処理後の基板Pを搬出コンベア10cに受け渡す。搬出コンベア10cは、印刷処理後の基板Pを機外(印刷検査装置3)に搬出する。
【0035】
図3に戻って、マスク保持ユニット11は、基板搬送ユニット10の上方に配置されている。マスク保持ユニット11は、マスク113と、これを保持するクランプ部材111とを備える。マスク113は、その周縁に設けられたフレーム112がクランプ部材111によりクランプされることで、XY平面に沿って平行に配置されている。
【0036】
基板支持ユニット12は、マスク113に対して基板Pを位置決めするユニットであり、マスク保持ユニット11の下方に配置されている。基板支持ユニット12は、基板支持部13と、可動テーブル14と、テーブル駆動機構15とを含む。
【0037】
基板支持部13は、作業コンベア10bと共に可動テーブル14に組付けられている。基板支持部13は、複数のバックアップピン133が立設された昇降テーブル131と、この昇降テーブル131を可動テーブル14に対して昇降可能に支持するスライド支柱132とを備える。
【0038】
昇降テーブル131は、モータ等の駆動力により可動テーブル14に対して昇降する。この昇降テーブル131の昇降により、作業コンベア10bとバックアップピン133との間で基板Pが受け渡される。例えば、ホームポジションから昇降テーブル131が上昇すると、基板Pがバックアップピン133により作業コンベア10bから持ち上げられる。これにより、作業コンベア10bからバックアップピン133に基板Pが受け渡される。
【0039】
基板支持部13は、一対のクランププレート134を備えている。当該一対のクランププレート134は、作業コンベア10bの上方にY方向に間隔を空けて配置されており、エアシリンダ等の駆動力により接近位置と離間位置とに移動する。クランププレート134が接近位置に移動することにより、作業コンベア10bからバックアップピン133により持ち上げられた基板PがY方向両側から水平方向にクランプされる。この際、基板Pの上面と各クランププレート134との上面とは面一とされる。
【0040】
テーブル駆動機構15は、装置本体2Aの基台上に設置されるY軸テーブル151と、Y軸テーブル151の上面に設置されるX軸テーブル152と、X軸テーブル152の上面に設置されるR軸テーブル153と、R軸テーブル153に対して可動テーブル14を昇降可能に支持するスライド支柱154とを備える。Y軸テーブル151、X軸テーブル152、R軸テーブル153及び可動テーブル14は、各々、モータ等の駆動力により所定方向に移動する。具体的には、Y軸テーブル151は、装置本体2Aの基台に対してY方向に移動し、X軸テーブル152は、Y軸テーブル151に対してX方向に移動する。また、R軸テーブル153は、X軸テーブル152に対してR方向(Z方向と平行な軸線を中心とする回転方向)に移動し、可動テーブル14は、R軸テーブル153に対して昇降する。
【0041】
つまり、テーブル駆動機構15は、可動テーブル14に組付けられた、作業コンベア10b及び基板支持部13を、X、Y、Z、R方向に移動させ、基板支持部13に支持された基板P(クランププレート134にクランプされた基板P)をマスク113の下面に接触させる。これにより、基板Pがマスク113に重ね合わされる。
【0042】
スキージユニット16は、マスク保持ユニット11の上方に配置されている。スキージユニット16は、スキージヘッド161と、これに支持されたスキージ162とを備える。
【0043】
スキージヘッド161は、モータ等の駆動力によりY方向に水平移動するとともにマスク113(マスク保持ユニット11)に対して昇降する。スキージ162は、X方向に延在するプレート状のヘラ部材であり、X方向と平行な軸線を中心に、スキージヘッド161に対して揺動可能に支持されている。スキージ162は、モータ等の駆動力によりスキージヘッド161に対して揺動する。スキージ162は、所定の角度(アタック角度)及び印圧(押付け圧力)でマスク113の上面に当接され、スキージヘッド161と共にマスク113に沿って所定の速度(スキージ速度)で移動する。これにより、ハンダSをマスク113の上面に沿って移動させながらパターン孔を通じて基板Pに印刷する。
【0044】
クリーニングユニット17は、マスク113の直下に配置されている。クリーニングユニット17は、モータ等の駆動力によりマスク113の下面に沿ってY方向に移動する。クリーニングユニット17はクリーニングヘッド171を有しており、当該クリーニングユニット17に備えられたガーゼをマスク113の下面に押し当てながら移動する。これによりマスク113をクリーニングする。この際、クリーニングユニット17は、ガーゼに溶剤を含浸させてマスク113をクリーニングする湿式クリーニングと、溶剤を含浸させないでクリーニングする乾式クリーニングとを選択的に実行することができる。
【0045】
カメラユニット18は、バックアップピン133に支持された基板Pの上面及びマスク113の下面に各々付されたマークを撮像するユニットである。これらのマーク画像に基づき、マスク113及び基板Pの位置が認識される。
【0046】
カメラユニット18は、上下両側に各々カメラを備えている。カメラユニット18は、クリーニングユニット17と同様、マスク113の直下に配置されており、マスク113に重ね合わされる前の基板Pと、マスク113の下面との間をモータ等の駆動力によりY方向に移動する。これにより各マークを撮像する。
【0047】
装置本体2A(印刷装置2)における印刷処理の動作は次の通りである。まず、昇降テーブル131が下降端に配置された状態で、基板Pが基板搬送ユニット10(コンベア10a、10b)により機内に搬入されて、印刷作業位置に配置される。次に、昇降テーブル131が上昇し、基板搬送ユニット10(作業コンベア10b)から基板支持部13(バックアップピン133)に基板Pが受け渡され、さらにクランププレート134により当該基板Pがクランプされる。
【0048】
基板Pがクランプされると、カメラユニット18が所定の退避位置からマスク113と基板Pとの間に移動し、マスク113及び基板Pの各マークが撮像される。これらのマーク画像に基づき、マスク113及び基板Pの位置が認識される。
【0049】
その後、カメラユニット18が退避位置にリセットされ、テーブル駆動機構15の作動により、基板支持部13に支持された基板Pがマスク113の下面に重ね合わされる。この際、マスク113及び基板Pの上記位置認識結果に基づき、基板支持部13の位置がX、Y、R方向に調整される。この調整により、マスク113の所定位置に基板Pがずれ無く重ね合わされる。
【0050】
基板Pがマスク113に重ね合わされると、スキージユニット16が所定の移動開始位置に配置される。この位置でスキージヘッド161が下降することにより、スキージ162が所定の角度(アタック角度)及び印圧(押付け圧力)でマスク113の上面に押し当てられ、この状態で、スキージ162がスキージヘッド161と共に所定の速度(スキージ速度)でY方向に移動する。この移動に伴い、ハンダSがパターン孔を通じて基板Pに印刷される。
【0051】
スキージユニット16が移動終了位置まで移動すると、テーブル駆動機構15の作動により基板支持部13が元の位置にリセットされることにより、基板Pがマスク113から離版される。その後、クランププレート134による基板Pのクランプが解除され、昇降テーブル131が下降することにより、基板Pが基板支持部13(バックアップピン133)から基板搬送ユニット10(10b)に受け渡される。そして、当該基板搬送ユニット10(10b、10c)より、基板Pが機外に搬出される。これにより、装置本体2Aにおける一連の印刷処理が終了する。
【0052】
なお、予め設定された数の基板Pに対して印刷処理が実行されると、マスク113から基板Pが離版されたタイミングで、クリーニングユニット17がマスク113の下面に沿って往復移動する。これによりマスク113のクリーニングが行われる。
【0053】
図2に戻って、制御部2B及び記憶装置31について説明する。
【0054】
制御部2Bは、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部2Bは、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、装置本体2Aの各構成要素の動作を制御するとともに、印刷通信部30のデータ通信動作を制御する。
【0055】
制御部2Bは、主たる機能構成として、演算処理部20、基板搬送制御部21、スキージ制御部22、基板支持制御部23、クリーニング制御部24、撮像制御部25及び通信制御部26を含む。
【0056】
演算処理部20は、装置本体2Aによる一連の印刷処理の動作に伴う各種演算処理や判定処理を実行する。基板搬送制御部21は、基板搬送ユニット10(コンベア10a~10c)による基板Pの搬送動作を制御する。スキージ制御部22は、スキージユニット16による印刷処理の動作を制御する。基板支持制御部23は、基板支持ユニット12による基板Pの支持動作を制御する。クリーニング制御部24は、クリーニングユニット17によるマスク113のクリーニング動作を制御する。撮像制御部25は、カメラユニット18によるマークの撮像動作を制御する。通信制御部26は、印刷通信部30を制御することにより、印刷装置2と管理装置6との間のデータ通信を制御する。
【0057】
記憶装置31には、装置本体2Aにおける各部の制御に際して参照される各種情報が記憶されている。各種情報には、基板データD11、印刷条件情報D12、印刷CT調整情報D13、クリーニング情報D14、段取り情報D15及び予備処理情報D16などが含まれる。
【0058】
基板データD11は、生産される基板P(部品搭載基板)に関する情報であり、生産予定の基板Pの品種(ID)、各品種の基板Pにおける印刷位置(パッドやランドの座標)、印刷処理に使用されるマスク113の品種(ID)などの情報を含む。
【0059】
印刷条件情報D12は、印刷処理時のスキージ162のアタック角度、印圧(押付け圧力)、移動速度(スキージ速度)などの情報を含む。前記スキージ制御部22は、当該印刷条件情報D12に基づきスキージユニット16による印刷処理の動作を制御する。
【0060】
印刷CT調整情報D13は、装置本体2Aにおける印刷処理のサイクルタイム(印刷CTという)を制御するための情報である。
【0061】
ここで、印刷CTとは、図4に示すように、装置本体2Aの搬入口に配置された搬入センサ101により基板Pの後端が検知されてから、装置本体2Aの搬出口に配置された搬出センサ102により当該基板Pの後端が検知されるまでの時間、すなわち、一枚の基板Pが装置本体2Aに搬入され、スキージユニット16による印刷処理が実行された後、装置本体2Aから搬出されるまでの時間である。
【0062】
詳しくは、図5に示すように、印刷CTは、「基板搬送時間T1」と、「印刷処理時間T2」と、「搬出前インターバルT3」との合計時間で規定される。
【0063】
「基板搬送時間T1」は、基板搬送ユニット10により、基板Pが機内に搬入されて印刷作業位置に配置されるのに要する時間と印刷作業位置に配置された基板Pが機外に搬出されるのに要する時間との合計値である。
【0064】
「印刷処理時間T2」は、印刷作業位置(作業コンベア10b上)に搬入された基板Pが基板支持ユニット12によりマスク113に重ね合わされ、スキージユニット16による印刷処理後、マスク113から離版されて作業コンベア10b上に戻されるまでの時間である。この「印刷処理時間T2」は、基板Pのサイズや印刷条件の影響を受けるため、基板Pの品種により多少相違する。
【0065】
「搬出前インターバルT3」は、印刷処理の完了時点、すなわち基板Pが作業コンベア10b上に戻された時点から当該基板Pの搬出開始時点までの待機時間(搬出前待機時間)である。
【0066】
前記印刷CT調整情報D13は、基板Pの品種毎の印刷CTデータの基準値(「基準印刷CTデータ」という)と、基板Pの搬送速度の基準値(「基準搬送速度データ」という)と、搬出前インターバルの基準値(「基準搬出前インターバルデータ」)とが含まれており、前記基板搬送制御部21は、この印刷CT調整情報D13に基づき基板搬送ユニット10を制御する。なお、基準印刷CTデータは、基準搬送速度データと基準搬出前インターバルデータに基づき設定されている。
【0067】
クリーニング情報D14は、マスク113の品種(ID)毎に、クリーニング時期やクリーニングの種類(乾式、湿式)を定めた情報であり、クリーニング時期は、例えば基板Pの処理枚数(印刷処理の回数)で規定されている。クリーニング制御部24は、このクリーニング情報D14に基づきスキージユニット16を制御することによりマスク113のクリーニング処理を実行する。
【0068】
段取り情報D15は、印刷処理に使用されるハンダ、クリーニング処理に使用されるガーゼ・溶剤などの消耗品の品種やその量に関する情報や、印刷処理やクリーニング処理1回当たりの消耗品の消費量に関する情報が含まれる。
【0069】
これらの消耗品は、適当なタイミングで補給することが必要であり、前記演算処理部20は、この段取り情報D15と後述する生産計画情報D21とに基づき、消耗品の補給時刻(すなわち、段取り作業の開始時刻)の算出処理を実行する。また、演算処理部20は、当該段取り作業の開始時刻(時点)までに基板ストッカ4にストックしておくべき最低ストック数の算出処理を実行する。「最低ストック数」とは、段取り作業による印刷装置2の停止期間(本発明の「計画停止期間」に相当する)中に、部品実装装置5による部品実装処理を継続的に実行するために、基板ストッカ4にストックしておくことが必要な基板Pのストック数である。
【0070】
予備処理情報D16は、ローリング処理の実行条件を定めた情報である。ローリング処理とは、ハンダの粘度上昇を抑制するために、マスク113上のパターン孔を避けたエリア内で、ハンダをスキージ162により往復移動させる処理である。
【0071】
ローリング処理の実行条件は、印刷処理の待機時間、すなわち、スキージユニット16による先行基板Pの印刷処理完了時点からスキージユニット16による後続基板Pの印刷開始時点までの待機時間で規定される。スキージ制御部22は、この待機時間が前記実行条件として設定された時間に達すると、スキージユニット16を制御してローリング処理を実行する。
【0072】
なお、ローリング処理は、基板Pの生産に直結しない予備的な処理であり、不要な電力消費等を伴うため、出来るだけ実行されないのが望ましい。一方、既述のような、印刷処理の待機時間は、印刷装置2の下流側に配置される例えば部品実装装置5における部品実装処理の進捗状況、特に、マシントラブル等による部品実装処理のサイクルタイム(実装CTと称す)の変動や、基板ストッカ4における基板Pのストック状況に起因して発生し得る。
【0073】
そこで、この印刷装置2では、スキージユニット16による印刷処理に待機時間が発生することを抑制するために、部品実装装置5の実装CTや、基板ストッカ4における基板Pのストック状況に応じて、印刷装置2の印刷CTを調整する調整処理(印刷CT調整処理)が実行される。この調整処理については後に詳述する。
【0074】
次に管理装置6の構成について説明する。管理装置6は、各装置2~5とデータ通信可能に接続された、例えばパーソナルコンピュータからなる。図6は、管理装置6の構成を示すブロック図である。管理装置6は、制御部60、管理通信部61、及び記憶部62を備える。
【0075】
管理通信部61は、各装置2~5とデータ通信を行うためのインターフェースである。管理通信部61は、各装置2~5から各々入力される管理データD22を取得する。例えば、管理通信部61は、印刷装置2による各基板Pの印刷処理結果、印刷検査装置3による各基板Pの検査結果、部品実装装置5による各基板Pの部品実装処理結果などの履歴情報を管理データとして取得する。また、管理通信部61は、印刷検査装置3における基板毎の印刷検査処理のサイクルタイム(検査CTと称す)、部品実装装置5における基板毎の実装CTデータ、及び基板ストッカ4における基板Pのストック数データを管理データD22として取得する。なお、印刷検査装置3及び部品実装装置5には、例えば印刷装置2と同様に、基板Pの搬入口及び搬出口に各々センサが備えらており、これらセンサによる基板Pの検知に基づき検査CT及び印刷CTが検出されて管理装置6に送信される。
【0076】
記憶部62は、生産計画情報D21や、管理通信部61により取得された管理データD22を記憶する。生産計画情報D21は、生産が予定されている基板Pの種類を示す基板名、各種類の基板Pの生産順序、各種類の基板Pの生産数などの情報である。
【0077】
制御部60は、管理通信部61を制御することにより、各装置2~5と管理装置6との間のデータ通信を制御する。
【0078】
[印刷CTの調整処理制御]
次に、印刷装置2における前記印刷CT調整処理の制御について説明する。図7は、印刷装置2における印刷CT調整処理制御の一例を示すフローチャートである。
【0079】
このフローチャートがスタートすると、制御部2B(演算処理部20)は、印刷通信部30を介して管理装置6から生産計画情報D21を取得し、この生産計画情報D21に基づき目標印刷CTを算出する(ステップS1、S2)。例えば、1時間に300枚の基板Pを生産する生産計画の場合、目標印刷CTは12秒(=3600秒/300)である。
【0080】
次に、制御部2Bは、記憶装置31の印刷CT調整情報D13を参照し、生産対象の基板Pに対応する基準印刷CTが前記目標印刷CTと等しいか否かを判定し、等しくない場合には、さらに、基準印刷CT>目標印刷CTか、又は基準印刷CT<目標印刷CTかを判定する。
【0081】
ステップS3の処理で基準印刷CT=目標印刷CTと判定した場合には、制御部2Bは、処理をステップ6に移行し、「基準搬送速度データ」の速度(基準搬送速度という)を目標搬送速度の初期値として設定するとともに、「基準搬出前インターバルデータ」の時間(基準搬出前インターバルという)を目標搬出前インターバルの初期値として設定する。
【0082】
一方、ステップS3の処理で基準印刷CT>目標印刷CT、又は基準印刷CT<目標印刷CTと判定した場合には、制御部2Bは、基準印刷CTが目標印刷CTと等しくなるような基板搬送速度又は搬出前インターバルを算出する。具体的には、基準印刷CT>目標印刷CTと判定した場合には、制御部2Bは、基準搬送速度をベースとしてそれよりも速い速度を算出し(ステップS4)、逆に基準印刷CT<目標印刷CTと判定した場合には、制御部2Bは、基準搬出前インターバルをベースとしてそれよりも長いインターバルを算出する(ステップS5)。その後、制御部2Bは、処理をステップS6に移行する。
【0083】
ステップS4の処理を経てステップS6の処理に移行した場合、制御部2Bは、ステップS4の処理で算出した速度を目標搬送速度の初期値として設定するとともに、基準搬出前インターバルを目標搬出前インターバルの初期値として設定する。他方、ステップS5の処理を経てステップS6の処理に移行した場合、制御部2Bは、基準搬送速度を目標搬送速度の初期値として設定するとともに、ステップS5の処理で算出したインターバルを目標搬出前インターバルの初期値として設定する。
【0084】
その後、制御部2Bは、処理をステップS7に移行し、装置本体2Aの各部を制御することにより、基板Pの生産(既述の一連の印刷処理動作)を開始する。この場合、制御部2Bは、ステップS6で設定した目標搬送速度及び目標搬出前インターバル(初期値)に基づき基板搬送ユニット10を制御する。
【0085】
基板Pの生産が開始されると、制御部2Bは、印刷通信部30を介して部品実装装置5の実装CTの情報を管理装置6から取得する(ステップS8)。そして、実装CTと印刷装置2の印刷CTとが等しいか否かを判定し、等しくない場合には、さらに、印刷CT>実装CTか、又は印刷CT<実装CTかを判定する(ステップS9)。なお、印刷装置2の印刷CTは、既述の搬入センサ101及び搬出センサ102による基板Pの検知に基づき検出することができる。
【0086】
ステップS9の処理で印刷CT=実装CTと判定した場合には、制御部2Bは処理をステップS12に移行する。一方、ステップS9の処理で印刷CT>実装CT、又は印刷CT<実装CTと判定した場合には、制御部2Bは、印刷CTと実装CTとの差が解消されるように、基板搬送速度又は搬出前インターバルを変更する。
【0087】
具体的には、ステップS9の処理で印刷CT>実装CTと判定した場合には、制御部2Bは、基板Pの搬送速度が早くなるように前記目標搬送速度を変更し(ステップS10)、逆に印刷CT<実装CTと判定した場合には、制御部2Bは、搬出前インターバルが長くなるように目標搬出前インターバルを変更する(ステップS11)。
【0088】
このようなステップS9~S11の処理が実行されることにより、印刷CTと実装CTとのバランスが保たれる。
【0089】
ステップS13に移行すると、制御部2Bは、管理装置6を介して基板ストッカ4における基板Pのストック数情報を取得する(ステップS13)。図示を省略しているが、基板ストッカ4は、例えば、基板Pを水平姿勢で収納可能な複数段の収納棚を備えた収納ラックを備える。この収納ラックに基板Pがストック(収納)されながら、部品実装装置5からの搬出要求信号の入力に応じて、先にストックされた基板Pから順に部品実装装置5に基板Pが搬出される。基板ストッカ4から管理装置6へは、基板Pのストック数情報が逐次出力されており、制御部2Bは、このストック数情報を取得する。
【0090】
ストック数情報を取得すると、制御部2Bは、基板Pのストック数が設定数(閾値)以上か否かを判定する(ステップS14)。なお、設定数は、ストック数の上限値の例えば2分の1、又は3分の2程度に設定される。
【0091】
ステップS14の処理でYesと判定した場合、制御部2Bは、搬出前インターバルが長くなるように目標搬出前インターバルを変更し(ステップS15)、処理をステップS16に移行する。つまり、制御部2Bは、印刷装置2の印刷CTが長くなるように、換言すれば、基板ストッカ4における基板Pの搬出ピッチに対して搬入ピッチが小さくなるように目標搬出前インターバルを変更する。この場合、制御部2Bは、例えば、一定時間だけ目標搬出前インターバルを長くする、又はストック数と設定数との差に応じて、この差が大きい程インターバルが長くなるように目標搬出前インターバルを変更する。但し、制御部2Bは、変更後の目標搬出前インターバルが、予備処理情報D16(ローリング処理の実行条件)で定められた設定時間(待機時間)を超ない範囲で目標搬出前インターバルを変更する。これは目標搬出前インターバルが変更されることによりローリング処理が実行されるのを回避するためである。
【0092】
このようなステップS13~S15の処理が実行されることにより、基板ストッカ4のストック数が上限値に達してストック不能となることが抑制される。
【0093】
ステップ14の処理でNoと判定した場合には、制御部2Bは、ステップS15をスキップしてステップS16に処理を移行する。これは、基板Pのストック数が設定数以下の場合、基板ストッカ4がストック不能にはる傾向が無いためである。
【0094】
ステップS16では、制御部2Bは、消耗品の補給時刻、すなわち段取り開始時刻を算出済みか否か判定する(ステップS16)。ここで、Noと判定した場合、制御部2Bは、ステップS1の処理で取得した印刷条件情報D12と段取り情報D15とに基づき、段取り開始時刻を算出し(ステップS17)、この段取り開始時刻が、現時点から設定時間以内か否かを判定する(ステップS18)。ここで、Noと判定した場合、制御部2Bは、処理をステップS23に移行する。なお、ステップS17の処理で求められた段取り開始時刻は、図外の表示装置に画像表示される。このように表示された段取り開始時刻に基づきオペレータが段取り作業を開始する。
【0095】
一方、ステップS18でYesと判定した場合、すなわち段取り開始時刻が現時点から設定時間以内と判定した場合、制御部2Bは、段取り開始時刻までに基板ストッカ4にストックしておくべき最低ストック数を算出し(ステップS19)、さらに、印刷通信部30を介して基板ストッカ4のストック数情報を管理装置6から取得し、基板ストッカ4のストック数が最低ストック数以上か否かを判定する(ステップS20)。なお、最低ストック数とは、既述の通り、段取り作業による印刷装置2の停止期間中に、現在の実装CTを維持しながら部品実装装置5が部品実装処理を継続的に実行するために必要な基板Pのストック数である。
【0096】
ステップS20の処理でYesと判定した場合、すなわち、基板ストッカ4のストック数が最低ストック数以上の場合、制御部2Bは、処理をステップS23に移行する。一方、ストック数が最低ストック数未満と判定した場合(ステップS20でNo)には、制御部2Bは、段取り開始時刻までに最低ストック数の基板Pが基板ストッカ4にストックされるために必要となる印刷CTの目標値(目標CT)を算出し、さらに現在(実際)の印刷CTが目標CTとなるように基板Pの目標搬送速度を変更する(ステップS22)。具体的には、制御部2Bは、基板Pの搬送速度が速くなるように基板Pの目標搬送速度を変更する。その後、処理をステップ23に移行する。
【0097】
このようなステップS17~S22の処理が制御部2Bにより実行されることにより、段取り開始時刻までに最低ストック数の基板Pが確実に基板ストッカ4にストックされる。
【0098】
処理がステップS23に移行されると、制御部2Bは、計画された数の基板Pの印刷処理が完了したか否かを判定し(ステップS23)、ここでNoと判定した場合には、制御部2Bは、処理をステップS8に移行し、既述のステップS8~S23の処理を繰り返す。そして、最終的に、ステップ23の処理でYesと判定すると、制御部2Bは、印刷CT調整処理の制御を終了する。
【0099】
なお、上述した実施形態では、印刷装置2、基板ストッカ4及び部品実装装置5が、本発明の「印刷部」、「基板ストック部」及び「作業部」に相当する。また、印刷装置2の印刷通信部30が本発明の「情報取得部」に相当し、演算処理部20が本発明の「演算部」及び「推定部」に相当し、演算処理部20及び基板搬送制御部21が本発明の「制御部」に相当する。
【0100】
[作用効果]
以上説明した通り、この実施形態の基板生産システム1は、基板Pに印刷処理を行う印刷装置2と、ハンダが印刷された基板Pに対して部品実装処理を実行する部品実装装置5とが基板の搬送ラインに沿って備えられている。そして、部品実装装置5の実装CTに応じ、当該実装CTと印刷CTとに差がある場合には、その差が解消するように、印刷装置2における、基板Pの搬送速度(目標搬送速度)又は搬出前インターバル(目標搬出前インターバル)が変更される(図7のステップS8~S11の処理)。つまり、印刷装置2の印刷CTを調整する調整処理が実行される。
【0101】
従って、印刷CTと実装CTとのバランスが保たれ、印刷装置2において、スキージユニット16による印刷処理に長期的な待機時間が発生することが抑制される。これにより、当該待機時間に起因するハンダの劣化が抑制されるとともに、ハンダの劣化を抑制すためのローリング処理(予備的処理)の実行頻度が低減される。
【0102】
特に、印刷CTの調整処理は、既述の通り、基板Pの搬送速度又は搬出前インターバルが変更されることにより実現されており、印刷処理条件(スキージ162のアタック角度、印圧(押付け圧力)、移動速度(スキージ速度)など)の変更を伴わない。そのため、基板Pの印刷品質に影響を与えることなく、印刷CTと実装CTとのバランスを保つことができる。
【0103】
なお、実施形態の基板生産システム1では、印刷装置2と部品実装装置5との間に基板ストッカ4が介設されているため、実装CTと印刷CTとに多少の差が生じても、基板Pがストックされることによりその差が吸収される。よって、印刷装置2への影響は少ないとも言える。しかし、既述のように、印刷CTの調整処理が実行されて印刷CTと実装CTとのバランスが保たれていることで、基板ストッカ4の収納余力を十分に確保しておくことが可能となる。従って、マシントラブル等による部品実装装置5の停止時などに、スキージユニット16による印刷処理に長期的な待機時間が発生することをより確実に抑制することが可能となる。
【0104】
また、上記実施形態では、基板Pの生産前に、生産計画情報D21に基づき目標印刷CTが求められ、この目標印刷CTと基準印刷CTとに差がある場合には、基準印刷CTが目標印刷CTと等しくなるような、基板Pの搬送速度又は搬出前インターバルが算出され、算出された速度又はインターバルが目標搬送速度又は目標搬出前インターバルの初期値として設定される(図7のステップS1~ステップS5の処理)。従って、常に決まった印刷CT(つまり、基準印刷CT)で基板Pの生産が開始される場合に比べて、印刷CTと実装CTとのバランスをより良好に保つことが可能となる。
【0105】
また、上記実施形態では、基板ストッカ4のストック数に応じて、印刷装置2の印刷CTが調整される。具体的には、既述の通り、基板Pのストック数が設定数(閾値)を超えると、印刷装置2の印刷CTが長くなるように目標搬出前インターバルが変更される(図7のステップS13~S15)。従って、基板Pのストック数が上限値に達して、基板ストッカ4がストック不能となること、ひいては、印刷装置2においてスキージユニット16による印刷処理に長期的な待機時間が発生することが抑制される。
【0106】
また、実施形態では、印刷装置2の段取り作業中に部品実装装置5の部品実装処理を継続的に実行するために必要な最低ストック数が事前に算出(推定)され。基板ストッカ4のストック数がこの最低ストック数未満の場合には、段取り開始時刻までに最低ストック数の基板Pがストックされるように印刷CTが調整される。具体的には、基板Pの搬送速度が早くなるように基板Pの目標搬送速度が変更される(図7のステップS17~S22)。従って、印刷装置2の段取り作業中に、部品実装装置5に搬入される基板Pが不足して部品実装装置5がストップするといった不都合が未然に防止される。
【0107】
[変形例等]
既述の基板生産システム1は、本発明の好ましい実施形態の例示であり、具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、以下のような構成も採用可能である。
【0108】
(1)実施形態では、基板Pの搬送速度(目標搬送速度)又は搬出前インターバル(目標搬出前インターバル)の何れか一方を変更することにより印刷CTを調整しているが、搬送速度と搬出前インターバルの双方を変更するようにしてもよい。
【0109】
(2)実施形態では、既述の通り、基板搬送時間T1と、印刷処理時間T2と、搬出前インターバル(搬出前待機時間)T3との合計時間で印刷CTが規定されており、基板Pの搬送速度の変更(基板搬送時間T1の変更)又は搬出前インターバルT3を変更することによって印刷CTが調整されている。
【0110】
ここで、実施形態では、印刷処理時間T2は、印刷作業位置(作業コンベア10b上)に搬入された基板Pが基板支持ユニット12によりマスク113に重ね合わされ、スキージユニット16による印刷処理後、マスク113から基板Pが離版されて作業コンベア10b上に戻されるまでの時間としている。しかし、実際にスキージユニット16が作動することによって基板Pに印刷処理が施される時間のみを印刷処理時間T2と規定し、その余の時間を基板搬送時間T1に含めてもよい。具体的には、印刷作業位置の基板Pがマスク113に重ね合わされるまでの時間、及び基板Pがマスク113から基板Pが離版されて作業コンベア10b上に戻されるまでの時間を基板搬送時間T1に含めてもよい。
【0111】
つまり、印刷CTを調整する際の基板Pの搬送速度の変更は、基板搬送ユニット10による基板Pの搬送速度に加えて、基板支持ユニット12による基板Pの搬送速度(マスク113に対して基板Pを重ね合わせる際及び離版させる際の当該基板Pの移動速度)をさらに変更するようにしてもよい。この場合には、演算処理部20、基板搬送制御部21及び基板支持制御部23が本発明の「制御部」として機能する。
【0112】
(3)実施形態では、印刷装置2(制御部2B)が生産計画情報D21に基づき目標印刷CTを算出し(ステップS1、S2)、また、基板ストッカ4の最低ストック数を算出するように構成されている。しかし、これら目標印刷CT及び最低ストック数は、管理装置6(制御部60)が算出するように構成されていれもよい。この場合には、管理装置6の制御部60が、本発明の「演算部」、「推定部」として機能する。
【0113】
(4)実施形態では、本発明の「作業サイクルタイム」として、部品実装装置5の実装CTに応じて印刷CTの調整処理が実行される例について説明したが、印刷検査装置3の検査CTに応じて印刷CTの調整処理が実行されるようにしてもよい。また、基板生産システム1に複数の部品実装装置5が含まれる場合には、個々の部品実装装置5の印刷CTに応じて印刷CTの調整処理が実行される、若しくは複数の部品実装装置5を一つの「作業部」と捉えてその作業サイクルタイムに応じて、印刷CTの調整処理が実行されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 基板生産システム
2 印刷装置
2A 装置本体
2B 制御部
3 印刷検査装置
4 基板ストッカ
5 部品実装装置
6 管理装置
20 演算処理部(演算部、推定部、制御部)
21 基板搬送制御部(制御部)
22 スキージ制御部
23 基板支持制御部
24 クリーニング制御部
25 撮像制御部
26 通信制御部
30 印刷通信部(情報取得部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7