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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032480
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】エッチング液組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240305BHJP
   C23F 1/16 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01L21/308 F
C23F1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136153
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木村 陽介
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA11
4K057WB01
4K057WB03
4K057WB04
4K057WB05
4K057WB08
4K057WB20
4K057WE02
4K057WE04
4K057WE11
4K057WE12
4K057WE14
4K057WE30
4K057WF06
4K057WF10
4K057WN01
5F043AA24
5F043AA26
5F043AA29
5F043BB16
5F043BB18
5F043BB25
5F043DD07
5F043DD10
5F043GG02
5F043GG04
(57)【要約】
【課題】一態様において、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング液組成物を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であって、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記金属膜は、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜である、エッチング液組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であって、
リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、エッチング抑制剤、及び水を含有し、
前記金属膜は、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜である、エッチング液組成物。
【請求項2】
前記水溶性有機溶媒は、モノアルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、スルホキシド、アミド、エステル、ケトン、エーテルの少なくとも1種である、請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
前記エッチング抑制剤は、有機アミン化合物である、請求項1又は2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
前記エッチング抑制剤は、ポリアルキレンイミン、ジアリルアミン由来の構成単位を含むポリマー、ポリアルキレンポリアミン、及びアミノ酸から選ばれる少なくとも1種の有機アミン化合物である、請求項1から3のいずれかに記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
前記有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、サリチル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかに記載のエッチング液組成物。
【請求項6】
前記水溶性有機溶媒の配合量は、0.1質量%以上50質量%以下である、請求項1から5のいずれかに記載のエッチング液組成物。
【請求項7】
前記水溶性有機溶媒の配合量の前記エッチング抑制剤の配合量に対する質量比(水溶性有機溶媒/エッチング抑制剤)は、0.02以上5000以下である、請求項1から6のいずれかに記載のエッチング液組成物。
【請求項8】
過酸化水素を含まない、請求項1から7のいずれかに記載のエッチング液組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のエッチング液組成物を用いて、少なくとも1種の金属を含む金属膜をエッチングする工程を含む、エッチング方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載のエッチング液組成物を用いて、基板上に形成された金属膜をエッチングする工程を含み、
前記基板は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング液組成物及びこれを用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程において、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウム等の少なくとも1種の金属を含む被エッチング膜をエッチングして所定のパターン形状に加工する工程が行われている。
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められており、パターンの加工技術やエッチング液に対する要求も高まりつつあり、様々なエッチング方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属単層膜又は積層膜用のエッチング液として、アゾール、硝酸、過酸化物及び水溶性有機溶媒を含むエッチング液が提案されている。同文献には、エッチング液がリン酸、有機酸等をさらに含んでもよいことが記載されている。
特許文献2には、モリブデン膜を含む積層膜をエッチングするエッチング液として、酸化剤(例えば、硝酸)と触媒(例えば、リン酸、グリコール類)と水分調整剤(例えば、有機酸、有機溶媒)とを含むエッチング液が提案されている。
特許文献3には、薄膜トランジスタ製造用エッチング液として、リン酸と硝酸と酢酸と水及びエチレングリコール又はグリセリンよりなるエッチング液が提案されている。
特許文献4には、タングステン含有金属及びTiN含有材料の両方に好適なエッチング液として、水と、酸化剤(例えば、リン酸、硝酸)と、フッ素含有エッチング化合物、有機溶媒、キレート化剤、腐食防止剤(例えば、ポリエチレンイミン)及び界面活性剤から選択される1種又は2種以上の成分と、を含んでなるエッチング液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-195311号公報
【特許文献2】特開2021-114569号公報
【特許文献3】特開2002-231706号公報
【特許文献4】特開2019-165225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエッチング方法では、タングステン等の金属を含む被エッチング膜が高速でエッチングされると、不均一なエッチングが進行して光沢度が失われることがあった。特に、光沢度が損なわれるとレーザー散乱測定機などに支障をきたし、表面清浄性、形状など正確に測定できないことがあった。半導体ウエハの製造過程において、生産性、収率の観点から、光沢度が損なわれにくいエッチング液が求められている。
【0006】
そこで、本開示は、一態様において、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング液組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であって、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記金属膜は、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜である、エッチング液組成物に関する。
【0008】
本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物を用いて、少なくとも1種の金属を含む金属膜をエッチングする工程を含む、エッチング方法に関する。
【0009】
本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物を用いて、基板上に形成された金属膜をエッチングする工程を含み、前記基板は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である、基板処理方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一態様において、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング液組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、一態様において、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、エッチング抑制剤、及び水を含むエッチング液を用いることで、エッチングによる金属膜の光沢度の低下を抑制できるという知見に基づく。
【0012】
本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチングするためのエッチング液組成物であって、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記金属膜は、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜である、エッチング液組成物(以下、「本開示のエッチング液組成物」ともいう)に関する。
本開示のエッチング液組成物によれば、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング液組成物を提供できる。
【0013】
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
本開示では、エッチング抑制剤が被エッチング膜である金属膜の表面を隙間なく被覆又は厚みのある保護膜を形成することで、金属膜の表面を保護しながら緩やかにエッチングできると考えられる。そのため、不均一なエッチングの進行が抑制され、エッチングによる金属膜の光沢度の低下を抑制できると考えられる。
また、本開示では、エッチング抑制剤と水溶性有機溶媒とを併用することで、エッチング液組成物の金属膜への濡れ性を高め、エッチング抑制剤の金属膜への均一な濡れ広がりが促進されると考えられる。これにより、不均一なエッチングの進行がより抑制され、エッチングによる金属膜の光沢度の低下をより抑制できると考えられる。
以上のことから、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいと考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0014】
[リン酸]
本開示のエッチング液組成物中のリン酸の配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中のリン酸の配合量は、10質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上70質量%以下がより好ましく、30質量%以上60質量%以下が更に好ましい。
【0015】
[硝酸]
本開示のエッチング液組成物中の硝酸の配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、1.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の硝酸の配合量は、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上7質量%以下が更に好ましい。
【0016】
[有機酸]
本開示のエッチング液組成物に含まれる有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、サリチル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。光沢度の低下抑制の観点から、有機酸としては、炭素数1~10の1価の有機酸が好ましく、炭素数1~10の1価のカルボン酸がより好ましく、酢酸を含むことが更に好ましく、酢酸がより好ましい。有機酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本開示のエッチング液組成物中の有機酸の配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の有機酸の配合量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上40質量%以下がより好ましく、3質量%以上30質量%以下が更に好ましい。有機酸が2種以上の組合せである場合、有機酸の配合量はそれらの合計配合量である。
【0018】
本開示のエッチング液組成物中のリン酸、硝酸及び有機酸の合計配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中における酸の配合量は、30質量%以上95質量%以下が好ましく、40質量%以上90質量%以下がより好ましく、45質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0019】
[水溶性有機溶媒]
本開示のエッチング液組成物に含まれる水溶性有機溶媒は、一又は複数の実施形態において、光沢度の低下抑制の観点から、モノアルコール、多価アルコール、グリコールエーテル、スルホキシド、アミド、エステル、ケトン、エーテルの少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、光沢度の低下抑制の観点から、多価アルコール、グリコールエーテル及びケトンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。多価アルコールの炭素数としては、光沢度の低下抑制の観点から、2以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。多価アルコールの価数としては、光沢度の低下抑制の観点から、2以上4以下が好ましく、2以上3以下が好ましい。多価アルコールとしては、グリコール、トリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコールとしては、光沢度の低下抑制の観点から、炭素数2以上8以下の多価アルコールが好ましく、炭素数2以上6以下の多価アルコールがより好ましく、炭素数2以上6以下のグリコールが更に好ましい。炭素数2以上6以下のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。グリコールエーテルとしては、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。ケトンとしては、例えば、アセトンが挙げられる。水溶性有機溶媒は、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。本開示において、水溶性有機溶媒とは、25℃の水100mLに対する溶解量が10mL以上である有機溶媒をいう。
【0020】
本開示のエッチング液組成物中の水溶性有機溶媒の配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、光沢度の低下抑制の観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の水溶性有機溶媒の配合量は、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下が更に好ましい。水溶性有機溶媒が2種以上の組合せである場合、水溶性有機溶媒の配合量はそれらの合計配合量である。
【0021】
[エッチング抑制剤]
本開示のエッチング液組成物に含まれるエッチング抑制剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本開示におけるエッチング抑制剤は、光沢度の低下抑制の観点から、エッチング抑制率が20%以上であることが好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が更に好ましく、60%以上が更に好ましく、70%以上が更に好ましく、80%以上が更に好ましく、85%以上が更に好ましく、90%以上が更に好ましく、94%以上が更に好ましい。
【0023】
本開示において、エッチング抑制率とは、エッチング抑制剤を使用しない場合のエッチング速度に対するエッチング抑制剤を使用した場合のエッチング速度の減少率のことを示す。エッチング抑制率は、一又は複数の実施形態において、リン酸、硝酸、酢酸及び水からなり、前記リン酸、硝酸及び酢酸の配合量の質量比がエッチング液組成物におけるリン酸、硝酸及び酢酸の配合量の質量比と同じであり、前記リン酸、硝酸及び酢酸の合計配合量が49質量%である混酸水溶液のエッチング速度を100としたときの前記エッチング液組成物のエッチング速度の相対速度Aを、100から引いた値とすることができる。なお、混酸水溶液中の各成分の配合量の質量比は適宜設定することができる。エッチング抑制率は、一又は複数の実施形態において、温度等の実施条件をエッチングを行う条件に適合させて測定することができる。エッチング抑制率は、具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
エッチング抑制率の測定条件は、被エッチング層に含まれる金属によって異なり、エッチング抑制率を測定するときの温度及び時間の好ましい範囲としては、一又は複数の実施形態において、後述する本開示のエッチング工程におけるエッチング温度及びエッチング時間の好ましい範囲が挙げられる。例えば、エッチング抑制率の測定における所定温度及び所定時間は、測定に用いる金属板がタングステン板の場合は90℃で180分間、モリブデン板の場合は40℃で10分間、ニッケル板の場合は40℃で10分間とすることができる。測定に用いる金属板の形状は、例えば、縦2cm、横2cm、厚さ0.1mmの板状体とすることができる。エッチング抑制率は、具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0024】
本開示におけるエッチング抑制剤としては、一又は複数の実施形態において、有機アミン化合物が挙げられ、例えば、ポリアルキレンイミン、ジアリルアミン由来の構成単位を有するポリマー、ポリアルキレンポリアミン、及びアミノ酸から選ばれる少なくとも1種の有機アミン化合物が挙げられる。これらの中でも、エッチング抑制剤としては、一又は複数の実施形態において、光沢度の低下抑制の観点から、ポリアルキレンイミン及びポリアルキレンポリアミンが好ましい。
前記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、ポリエチレンイミン等が挙げられ、分岐状のポリエチレンイミンが好ましい。
前記ジアリルアミン由来の構成単位を含むポリマーとしては、例えば、ジアリルアミン/二酸化硫黄共重合体等が挙げられる。
ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン等が挙げられる。
アミノ酸としては、例えば、アルギニン、アスパラギン酸等が挙げられる。
【0025】
エッチング抑制剤がポリアルキレンイミンである場合、エッチング抑制剤の数平均分子量は、光沢度の低下抑制の観点から、300以上が好ましく、600以上がより好ましく、1,200以上が更に好ましく、そして、粘度の観点から、100,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましい。同様の観点から、エッチング抑制剤の数平均分子量は、300以上100,000以下が好ましく、600以上5,000以下がより好ましく、1,200以上3,000以下が更に好ましい。
エッチング抑制剤がジアリルアミン由来の構成単位を含むポリマーである場合、エッチング抑制剤の重量平均分子量は、光沢度の低下抑制の観点から、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、4,000以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましく、7,000以下が更に好ましい。同様の観点から、エッチング抑制剤の重量平均分子量は、2,000以上50,000以下が好ましく、3,000以上10,000以下がより好ましく、4,000以上7,000以下が更に好ましい。
エッチング抑制剤がポリアルキレンポリアミンである場合、エッチング抑制剤の数平均分子量又は分子量は、光沢度の低下抑制の観点から、50以上が好ましく、80以上がより好ましく、100以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1,000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。同様の観点から、エッチング抑制剤の数平均分子量又は分子量は、50以上1,000以下が好ましく、80以上500以下がより好ましく、100以上300以下が更に好ましい。
【0026】
本開示において平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
【0027】
本開示のエッチング抑制剤の平均分子量の測定方法の例を以下に示す。
<GPC条件(ポリアルキレンイミン)>
試料液:0.1wt%の濃度に調整したもの
装置/検出器: HLC-8320GPC(一体型GPC)東ソー(株)製
カラム:α―M+α―M(東ソー株式会社製)
溶離液:0.15mol/L Na2SO4,1% CH3COOH/水
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
試料液注入量:100μL
標準ポリマー:分子量が既知のプルラン(Shodex社 P-5、P-50,P-200、P-800)
<GPC条件(ジアリルアミン由来の構成単位を含むポリマー)>
試料液:0.1wt%の濃度に調整したもの
検出器:HLC-8320GPC(一体型GPC)東ソー(株)製
カラム:α―M+α―M(東ソー株式会社製)
溶離液:0.15mol/L Na2SO4,1% CH3COOH/水
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
試料液注入量:100μL
標準ポリマー:分子量が既知のプルラン(Shodex社 P-5、P-50,P-200、P-800)
【0028】
本開示におけるエッチング抑制剤としては、一又は複数の実施形態において、光沢度の低下抑制の観点から、エッチング抑制率が20%以上の有機アミン化合物であることが好ましい。
したがって、本開示は、一態様において、基板上に形成された金属膜をエッチング処理するためのエッチング液組成物であって、前記エッチング液組成物は、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、エッチング抑制剤、及び水を含有し、前記エッチング抑制剤は、下記条件で求められるエッチング抑制率が20%以上の有機アミン化合物である、エッチング液組成物に関する。
ここで、エッチング抑制率は、リン酸、硝酸、酢酸及び水からなり、前記リン酸、硝酸及び酢酸の配合量の質量比がエッチング液組成物におけるリン酸、硝酸及び酢酸の配合量の質量比と同じであり、前記リン酸、硝酸及び酢酸の合計配合量が49質量%である混酸水溶液のエッチング速度を100としたときの前記エッチング液組成物のエッチング速度の相対速度Aを、100から引いた値とする。
【0029】
本開示のエッチング液組成物中のエッチング抑制剤の配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中のエッチング抑制剤の配合量は、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が更に好ましい。エッチング抑制剤が2種以上の組合せである場合、エッチング抑制剤の配合量はそれらの合計配合量である。
本開示のエッチング液組成物における前記水溶性有機溶媒の配合量の前記エッチング抑制剤の配合量に対する質量比(水溶性有機溶媒/エッチング抑制剤)は、光沢度の低下抑制の観点から、0.02以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、1以上が更に好ましく、そして、光沢度の低下抑制の観点から、5000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、600以下が更に好ましく、100以下が更に好ましい。より具体的には、質量比(水溶性有機溶媒/エッチング抑制剤)は、0.02以上5000以下が好ましく、0.1以上1000以下がより好ましく、1以上600以下が更に好ましく、1以上100以下が更に好ましい。
【0030】
[水]
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、水を含む。本開示のエッチング液に含まれる水としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。
【0031】
本開示のエッチング液組成物中の水の配合量は、光沢度の低下抑制の観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、光沢度の低下抑制の観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示のエッチング液組成物中の水の配合量は、1質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上45質量%以下が更に好ましい。
【0032】
[その他の成分]
本開示のエッチング液組成物は、本開示の効果が損なわれない範囲で、その他の成分をさらに配合してなるものであってもよい。その他の成分としては、リン酸及び硝酸以外の無機酸、キレート剤、界面活性剤、可溶化剤、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0033】
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、アゾールを実質的に含まないものとすることができる。本開示のエッチング液組成物中のアゾールの配合量は、好ましくは0.005質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含有しないこと)である。
【0034】
本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、フッ素含有化合物を実質的に含まないものとすることができる。本開示のエッチング液組成物中のフッ素含有化合物の配合量は、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.001質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含有しないこと)である。
【0035】
本開示のエッチング液組成物は、光沢度の低下抑制の観点から、過酸化水素を含まないことが好ましい。ここで、「過酸化水素を含まない」とは、一又は複数の実施形態において、過酸化水素を含まないこと、実質的に過酸化水素を含まないこと、又は、エッチング結果に影響を与える量の過酸化水素を含まないこと、を含む。本開示のエッチング液組成物中における過酸化水素の配合量は、特に限定されないが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%(すなわち、含有しないこと)である。
【0036】
[エッチング液組成物の製造方法]
本開示のエッチング液組成物は、一態様において、リン酸と、硝酸と、有機酸と、水溶性有機溶媒と、エッチング抑制剤と、水と、所望により上述した任意成分とを公知の方法で配合することにより得られる。したがって、本開示は、一態様において、少なくとも、リン酸と、硝酸と、有機酸と、水溶性有機溶媒と、エッチング抑制剤と、水とを配合する工程を含む、エッチング液組成物の製造方法(以下、「本開示のエッチング液製造方法」ともいう)に関する。
本開示において「少なくとも、リン酸と、硝酸と、有機酸と、水溶性有機溶媒と、エッチング抑制剤と、水とを配合する」とは、一又は複数の実施形態において、リン酸と、硝酸と、有機酸と、水溶性有機溶媒と、エッチング抑制剤と、水と、必要に応じて上述した任意成分とを同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は、特に限定されなくてもよい。前記配合は、例えば、プロペラ型撹拌機、ポンプによる液循環撹拌、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。
本開示のエッチング液製造方法において各成分の好ましい配合量は、上述した本開示のエッチング液組成物中の各成分の好ましい配合量と同じとすることができる。
【0037】
本開示において「エッチング液組成物中の各成分の配合量」とは、一又は複数の実施形態において、エッチング工程に使用される、すなわち、エッチング処理への使用を開始する時点(使用時)でのエッチング液組成物中の各成分の配合量をいう。
本開示のエッチング液組成物中の各成分の配合量は、一又は複数の実施形態において、本開示のエッチング液組成物中の各成分の含有量とみなすことができる。ただし、中和の影響を受ける場合は、配合量と含有量が異なる場合がある。
【0038】
本開示のエッチング液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。2液型のエッチング液組成物としては、水が第1液と第2液とに分かれており、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、及びエッチング抑制剤がそれぞれ、第1液及び第2液のうちのいずれか一方又は双方に含まれており、使用時に第1液と第2液とが混合されるものが挙げられる。第1液及び第2液はそれぞれ必要に応じて上述した任意成分を含有してもよい。
【0039】
本開示のエッチング液組成物のpHは、光沢度の低下抑制の観点から、1以下が好ましく、0以下がより好ましく、0未満が更に好ましく、-1程度が更に好ましい。なお、本開示のエッチング液組成物のpHは、好ましくは-5以上、より好ましくは-3以上とすることができる。本開示において、エッチング液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0040】
本開示のエッチング液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて適宜希釈してエッチング工程で使用することができる。希釈割合は例えば、3~100倍とすることができる。
【0041】
[キット]
本開示は、その他の態様において、本開示のエッチング液組成物を製造するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。
本開示のキットとしては、一又は複数の実施形態において、第1液と第2液とを相互に混合されない状態で含み、リン酸、硝酸、有機酸、水溶性有機溶媒、及びエッチング抑制剤がそれぞれ、第1液及び第2液のうちのいずれか一方又は双方に含まれており、使用時に第1液と第2液とが混合されるキット(2液型エッチング液)が挙げられる。第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて希釈されてもよい。第1液又は第2液には、エッチング液の調製に使用する水の全量又は一部が含まれていてもよい。第1液及び第2液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示のキットとしては、例えば、水溶性有機溶媒及びエッチング抑制剤を含む溶液(第1a液)と、リン酸、硝酸及び有機酸を含む酸水溶液(第2a液)とを相互に混合されない状態で含み、これらが使用時に混合されるキット(2液型エッチング液)が挙げられる。第1a液と第2a液とが混合された後、必要に応じて水又は酸水溶液を用いて希釈されてもよい。第1a液又は第2a液には、エッチング液の調製に使用する水の全量又は一部が含まれていてもよい。第2a液に含まれる酸は、エッチング液の調製に使用する酸の全量でもよいし、一部でもよい。第1a液は、酸を含んでいてもよい。第1a液及び第2a液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。
本開示のキットによれば、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング液が得られうる。
【0042】
[被エッチング膜]
本開示のエッチング液組成物を用いてエッチング処理される被エッチング膜は、一又は複数の実施形態において、少なくとも1種の金属を含む金属膜である。ここで、金属としては、本開示の効果の奏する限り特に限定されるものではないが、例えば、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、窒化チタン、アルミナ、アルミニウム及びイリジウムから選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられる。これらの中でも、本開示のエッチング液組成物は、一又は複数の実施形態において、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属膜のエッチングに用いられることが好ましく、一又は複数の実施形態において、タングステン膜、モリブデン膜、又はニッケル膜のエッチングに好適に用いられる。すなわち、被エッチング膜は、一又は複数の実施形態において、タングステン膜、モリブデン膜又はニッケル膜である。
【0043】
[エッチング方法]
本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物を用いて、少なくとも1種の金属を含む金属膜をエッチングする工程(以下、「本開示のエッチング工程」ともいう)を含む、エッチング方法(以下、「本開示のエッチング方法」ともいう)に関する。本開示のエッチング方法によれば、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング方法を提供できる。
【0044】
本開示のエッチング工程において、エッチング処理方法としては、例えば、浸漬式エッチング、枚葉式エッチング等が挙げられる。
【0045】
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がタングステン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、光沢度の低下抑制の観点から、0℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、そして、150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。同様の観点から、一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がタングステン膜の場合、エッチング温度は、0℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上130℃以下がより好ましく、70℃以上110℃以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がモリブデン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、光沢度の低下抑制の観点から、0℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましく、そして、80℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。同様の観点から、一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がモリブデン膜の場合、エッチング温度は、0℃以上80℃以下が好ましく、15℃以上65℃以下がより好ましく、25℃以上50℃以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がニッケル膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング液組成物の温度(エッチング温度)は、光沢度の低下抑制の観点から、0℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましく、そして、80℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。同様の観点から、一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がニッケル膜の場合、エッチング温度は、0℃以上80℃以下が好ましく、15℃以上65℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下が更に好ましい。
【0046】
本開示のエッチング工程において、エッチング時間は、例えば、1分以上180分以下に設定できる。
【0047】
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がタングステン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング速度は、生産性向上及び光沢度の低下抑制の観点から、0.0001mg/分以上が好ましく、0.0005mg/分以上がより好ましく、0.001mg/分以上が更に好ましく、そして、光沢度の低下抑制の観点から、10mg/分以下が好ましく、1mg/分以下がより好ましく、0.1mg/分以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がモリブデン膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング速度は、生産性向上及び光沢度の低下抑制の観点から、0.01mg/分以上が好ましく、0.03mg/分以上がより好ましく、0.05mg/分以上が更に好ましく、そして、光沢度の低下抑制の観点から、10mg/分以下が好ましく、3mg/分以下がより好ましく、1mg/分以下が更に好ましい。
一又は複数の実施形態において、被エッチング膜がニッケル膜の場合、本開示のエッチング工程におけるエッチング速度は、生産性向上及び光沢度の低下抑制の観点から、0.001mg/分以上が好ましく、0.005mg/分以上がより好ましく、0.01mg/分以上が更に好ましく、そして、光沢度の低下抑制の観点から、10mg/分以下が好ましく、1mg/分以下がより好ましく、0.5mg/分以下が更に好ましい。
【0048】
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に、半導体ウエハの製造工程において、金属をエッチングするために用いることができる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板の作製に好適に用いることができる。すなわち、本開示は、一態様において、本開示のエッチング液組成物又は本開示のエッチング方法を用いて、基板上に形成された金属膜をエッチングする工程を含み、前記基板は、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板から選ばれる少なくとも1種の基板である、基板処理方法(以下、「本開示の基板処理方法ともいう」)に関する。本開示の基板処理方法によれば、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいため、生産性、収率を向上できる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、電子デバイス、特に、NAND型フラッシュメモリを含む不揮発性メモリ等の半導体メモリの製造工程において、電極をエッチングするために用いることができる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、一又は複数の実施形態において、三次元構造を有するパターンの作製に好適に用いることができる。これにより、大容量化されたメモリ等の高度なデバイスを得ることができる。
本開示のエッチング液組成物及び本開示のエッチング方法は、例えば、特開2020-145412号公報に開示されるようなエッチング方法に用いることができる。
【実施例0049】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
1.エッチング液の調製(実施例1~13、比較例1~5)
リン酸、硝酸、表1に示す有機酸、表1に示す水溶性有機溶媒、表1に示すエッチング抑制剤及び水を配合し、実施例1~13及び比較例1~5のエッチング液(pH:0~-2)を調製した。調製したエッチング液における各成分の配合量(質量%、有効分)を表1に示した。なお、表1中の水の配合量には、酸水溶液等に含まれる水の配合量も含まれている。
【0051】
エッチング液の調製には、下記成分を用いた。
リン酸[燐化学工業社製、濃度85%]
硝酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度70%]
(有機酸)
酢酸[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度100%]
(水溶性有機溶媒)
ジプロピレングリコール[AGC株式会社、濃度100%]
エチレングリコール[株式会社 日本触媒、濃度100%]
トリエチレングリコールモノメチルエーテル[東京化成工業株式会社 濃度100%]
アセトン[富士フイルム和光純薬株式会社、濃度100%]
(エッチング抑制剤)
ポリエチレンイミン[数平均分子量1,800、株式会社日本触媒製の「エポミンSP-018」]
ジエチレントリアミン[分子量103、東ソー株式会社の「DETA」]
(水)
水[栗田工業株式会社製の連続純水製造装置(ピュアコンティ PC-2000VRL型)とサブシステム(マクエース KC-05H型)を用いて製造した超純水]
【0052】
2.エッチング液のpHの測定方法
エッチング液の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した値であり、pHメータの電極をエッチング液へ浸漬して1分後の数値である。
【0053】
3.エッチング液の評価
[タングステン板のエッチング速度及びエッチング抑制率の評価]
各組成に調製したエッチング液(実施例1~13及び比較例1~5)に、予め重量を測定した縦2cm、横2cm、厚み0.1mmタングステン板を浸漬させ、タングステン板は90℃で180分間エッチングさせた。その後、水洗浄した後に再度、タングステン板の重量を測定し、その差分をエッチング量とした。重量の測定には、精密天秤を用いた。
そして、下記式によりエッチング速度を求めた。
エッチング速度(mg/分)=エッチング量(mg)/エッチング時間(分)
タングステン板のエッチング速度の結果を、表1に示した。また、比較例1のタングステン板のエッチング速度を100とした各実施例の相対速度を100から引いた値をエッチング抑制率(%)とし、表1に示した。
[ニッケル板のエッチング速度及びエッチング抑制率の評価]
前記タングステン板の代りに縦2cm、横2cm、厚み0.1mmニッケル板を用いたこと、及び、エッチング条件をエッチング温度40℃、エッチング時間10分に変更しこと以外は、前記タングステンのエッチング方法と同様にしてニッケル板のエッチングを行い、ニッケル板のエッチング速度を測定した。ニッケル板のエッチング速度の結果を、表1に示した。また、比較例1のニッケル板のエッチング速度を100とした各実施例の相対速度を100から引いた値をエッチング抑制率(%)とし、表1に示した。
[モリブデン板のエッチング速度及びエッチング抑制率の評価]
前記タングステン板の代りに縦2cm、横2cm、厚み0.1mmモリブデン板を用いたこと、及び、エッチング条件をエッチング温度40℃、エッチング時間10分に変更したこと以外は、前記タングステンのエッチング方法と同様にしてモリブデン板のエッチングを行い、モリブデン板のエッチング速度を測定した。モリブデン板のエッチング速度の結果を、表1に示した。また、比較例1のモリブデン板のエッチング速度を100とした各実施例の相対速度を100から引いた値をエッチング抑制率(%)とし、表1に示した。
【0054】
[光沢度の評価]
各エッチング液を用いたエッチング後のタングステン板、ニッケル板及びモリブデン板の外観を目視で確認し、エッチング後の光沢度を下記評価基準に基づいて行い、結果を表1に示した。
<評価基準>
5:板全面が鏡面状態
4:板の大部分が鏡面状態だが、一部腐食痕が見られる
3:板の半分が鏡面状態だが、半分は腐食痕が見られる
2:板の大部分は腐食痕が見られる
1:板全面が曇り鏡面が全くない
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示されるように、水溶性有機溶媒及びエッチング抑制剤が配合されている実施例1~13のエッチング液は、水溶性有機溶媒及びエッチング抑制剤が配合されていない比較例1、水溶性有機溶媒は配合されているがエッチング抑制剤が配合されていない比較例2~5に比べて、タングステン板、ニッケル板及びモリブデン板のエッチングによる光沢度の低下が抑制されており、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいエッチング組成物であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示のエッチング液組成物は、エッチング後に金属膜の光沢度が損なわれにくいため、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、及び太陽電池用基板上の金属膜のエッチングに有用である。