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特開2024-3253抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003253
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20231228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/4515 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/4152 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/554 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61K31/5415
A61K31/4515
A61K31/553
A61K31/454
A61K31/4152
A61K31/496
A61K31/5513
A61K31/554
A61K31/519
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023195803
(22)【出願日】2023-11-17
(62)【分割の表示】P 2021032320の分割
【原出願日】2015-02-06
(31)【優先権主張番号】61/937,223
(32)【優先日】2014-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】398005054
【氏名又は名称】ニューロクライン バイオサイエンシーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ロジャー ジェシー ホーア
(57)【要約】
【課題】抗精神病化合物およびVMAT2阻害剤を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することによって、統合失調症および統合失調性感情障害を処置する新しい方法を提供すること。
【解決手段】本開示は、抗精神病薬およびVMAT2阻害剤の組合せが、治療相乗作用を示し、精神神経系障害、例えば統合失調症、統合失調性感情障害、双極性疾患、大うつ病性障害、および一般に抗精神病薬で処置される他の状態の処置における抗精神病薬の治療指数を改善するという発見に関する。本明細書では、抗精神病薬を現在受けている患者の疾患を処置する新しい方法、および統合失調症などの精神神経系障害の処置において有用な医薬組成物が提供される。より具体的には、本明細書に記載の方法は、抗精神病薬およびVMAT2阻害剤を組み合わせて投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書および図面に記載の物、方法またはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、抗精神病化合物およびVMAT2阻害剤を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することによって、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性疾患、大うつ病性障害、および一般に抗精神病薬で処置される他の状態を処置する方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
統合失調症は、成人集団のおよそ1%に影響を及ぼし、この障害がセルフケアおよび身体的健康に対して及ぼす影響、ならびに自殺によって、平均余命を平均20~25年短縮させている。現時点では、統合失調症の根本にある病原学的機構への理解は乏しい。統合失調症は、精神病の特徴的な症状、混乱およびいわゆる「陰性」症状(感情表出範囲が低減し、発話が低減し、意志力/動機づけが欠如する);疾病の持続;機能障害;ならびに自閉症および双極性障害などの他の障害の除外に基づいて臨床的に診断される。臨床医にとって、どの精神病患者が統合失調症を有するか同定するには、臨床的な洞察力およびDSM-IVまたはICD-10診断マニュアルに精通している必要がある(例えば、Corvin、BMC Biol. 2011年;9巻:77頁参照)。
【0003】
抗精神病薬物による治療は、統合失調症の処置における柱となっている。神経遮断薬としても公知のこれらの抗精神病薬物は、一般に、統合失調症の「陽性」症状、すなわち精神病、思考障害および混乱した挙動の低減を引き起こす。抗精神病薬は、一般に、動機づけおよび感情の欠如、引きこもり、日々の活動への関心の欠如、ならびに活動を計画または実行する能力の低下を含む、認知および疾患の「陰性」症状に対して及ぼす影響が少ない。
【0004】
第1世代または「定型」抗精神病薬は、統合失調症および他の精神障害の処置に50年間にわたって使用されてきた。最初に市販された抗精神病薬は、クロルプロマジンであった。他の定型抗精神病薬には、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、およびトリフロペラジンが含まれる。これらの定型抗精神病薬は、すべて、D2ドーパミン受容体拮抗作用を介してそれらの主要有効性を得、パーキンソニズム(振戦、硬直、動作緩慢および歩行不安定性)、ならびにジストニア、ジスキネジア(例えば、遅発性ジスキネジア)およびアカシジアを含む運動障害を引き起こす傾向がある。
【0005】
第2世代または「非定型」抗精神病薬が開発されたが、これらの薬物は、TDおよび長期間投与に伴う関係の運動障害を引き起こす危険性がより低い。これらの薬物には、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドンが含まれる。これらの非定型抗精神病薬は、すべて、D2ドーパミン受容体拮抗作用と、他の神経伝達物質の受容体に対する追加の効果を介して、それらの主要有効性を発揮する。これらの非定型抗精神病薬は、平均余命に影響を及ぼすのに十分な代謝性副作用と関連する。これらの副作用には、体重増加を誘発する傾向、ならびに高トリグリセリド血症および高血糖症などの関係する代謝障害が含まれる。クロザピンは、重症の精神疾病の処置として最も有効であると思われているが、この薬物を使用する要件として、患者の白血球数を頻繁にモニタリングする必要がある無顆粒球症の顕著な発生を含む、さらなる重篤な医学的副作用を有す。
【0006】
ある特定の抗精神病薬は、統合失調症および統合失調性感情障害の処置に加えて、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、および自閉症スペクトラム障害の処置として承認されている。特に、不安症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、認知症、うつ病、不眠症、強迫性障害(OCD)、外傷後ストレス障害、物質乱用、およびトゥーレット症候群を含む様々な状態の処置に使用される、非定型の適用外使用が普及している。
抗精神病薬の投与と関連する副作用は、患者の健康および福祉に著しい影響を及ぼすおそれがあるので、現在の治療の代替が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Corvin、BMC Biol. 2011年;9巻
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡潔には、本開示は、抗精神病薬およびVMAT2阻害剤の組合せが、治療相乗作用を示し、精神神経系障害、例えば統合失調症、統合失調性感情障害、双極性疾患、大うつ病性障害、および一般に抗精神病薬で処置される他の状態の処置における抗精神病薬の治療指数を改善するという発見に関する。本明細書では、抗精神病薬を現在受けている患者の疾患を処置する新しい方法、および統合失調症などの精神神経系障害の処置において有用な医薬組成物が提供される。より具体的には、本明細書に記載の方法は、抗精神病薬およびVMAT2阻害剤を組み合わせて投与することを含む。本開示は、以下の実施形態を提供する。
【0009】
一実施形態では、対象における精神神経系障害を処置するための方法であって、対象に(a)抗精神病薬物および(b)VMAT2阻害剤を投与するステップを含み、ここで対象に投与される抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少ない、方法が提供される。ある特定の実施形態では、精神神経系障害は、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である。特定の実施形態では、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤は、同時に投与される。他のある特定の実施形態では、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤は、同じ医薬組成物に製剤化される。別の具体的な実施形態では、抗精神病薬物は、第1の医薬組成物に製剤化され、VMAT2阻害剤は、第2の医薬組成物に製剤化される。ある特定の実施形態では、抗精神病薬物は、定型抗精神病薬物である。より具体的な一実施形態では、定型抗精神病薬物は、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである。さらに別の実施形態では、抗精神病薬物は、非定型抗精神病薬物である。具体的な一実施形態では、非定型抗精神病薬物は、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである。特定の一実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも10~90%少ない。一実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない。一実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない。特定の一実施形態では、VMAT2阻害剤は、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である。別の具体的な実施形態では、VMAT2阻害剤は、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、およびその前駆体である。さらに別の具体的な実施形態では、VMAT2阻害剤は、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、重水素化テトラベナジン、特に3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールまたはその前駆体である。
【0010】
一実施形態では、精神神経系障害の処置に使用するための、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物であって、VMAT2阻害剤の非存在下で使用される場合の治療量未満の量の抗精神病薬物を含む、医薬調製物が提供される。特定の一実施形態では、精神神経系障害は、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である。ある特定の実施形態では、抗精神病薬物は、定型抗精神病薬物である。ある特定の、特定の実施形態では、定型抗精神病薬物は、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである。別の特定の実施形態では、抗精神病薬物は、非定型抗精神病薬物である。より具体的な一実施形態では、非定型抗精神病薬物は、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである。別の実施形態では、抗精神病薬物は、第1の医薬組成物に製剤化され、VMAT2阻害剤は、第2の医薬組成物に製剤化される。特定の一実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも10~90%少ない。さらに別の具体的な実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない。さらに別の具体的な実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない。特定の一実施形態では、VMAT2阻害剤は、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である。さらに別の特定の実施形態では、VMAT2阻害剤は、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である。さらに別のある特定の実施形態では、VMAT2阻害剤は、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、重水素化テトラベナジン、特に3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールまたはその前駆体である。
【0011】
また本明細書の別の実施形態では、抗精神病薬物の有効性を増強する方法であって、対象に(a)抗精神病薬物および(b)VMAT2阻害剤の組合せを投与するステップを含む、方法が提供される。一実施形態では、抗精神病薬物の有効性の増強は、抗精神病薬物の治療上有効な量を低減することを含む。特定の一実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも10~90%少ない。具体的な一実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、抗精神病薬物が、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない。別の具体的な実施形態では、抗精神病薬物の治療上有効な量は、抗精神病薬物が、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない。一実施形態では、抗精神病薬物は、定型抗精神病薬物である。具体的な一実施形態では、定型抗精神病薬物は、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである。別の実施形態では、抗精神病薬物は、非定型抗精神病薬物である。より具体的な一実施形態では、非定型抗精神病薬物は、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである。別の具体的な実施形態では、VMAT2阻害剤は、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である。さらに別の具体的な実施形態では、VMAT2阻害剤は、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である。別の特定の実施形態では、VMAT2阻害剤は、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、重水素化テトラベナジン、特に3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールまたはその前駆体である。
【0012】
別の実施形態では、精神神経系障害を処置するのに有効な、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物であって、ここで、抗精神病薬物の量は、VMAT2阻害剤の非存在下で精神神経系障害を処置するために単独で使用される場合の抗精神病薬物の治療量と比較して、治療量未満である、医薬調製物が提供される。別の実施形態では、相乗的に有効な量の抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物が提供される。調製物の特定の実施形態では、抗精神病薬物は、定型抗精神病薬物である。具体的な実施形態では、定型抗精神病薬物は、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである。他の特定の実施形態では、抗精神病薬物は、非定型抗精神病薬物である。より具体的な実施形態では、非定型抗精神病薬物は、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである。さらにより具体的な実施形態では、VMAT2阻害剤は、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である。他の特定の実施形態では、VMAT2阻害剤は、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である。さらに他の特定の実施形態では、VMAT2阻害剤は、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、重水素化テトラベナジン、特に3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールまたはその前駆体である。調製物の他のある特定の実施形態では、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、同じ医薬組成物に製剤化される。さらに他の特定の実施形態では、抗精神病薬物は、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、第1の医薬組成物に製剤化され、VMAT2阻害剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、第2の医薬組成物に製剤化される。ある特定の実施形態では、精神神経系障害は、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である。
【0013】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明を参照すると明らかになる。この目的のために、本明細書では、ある特定の背景情報、手順、化合物および/または組成物についてより詳細に記載している様々な参考文献を記載しており、これらは、参照によってそれらの全体が本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0014】
本明細書で具体的に定義されていない用語には、本開示および文脈に照らして当業者に理解され得る意味が与えられるものとする。しかし本明細書で使用される場合、そうでないことが明記されない限り、用語は、示された意味を有する。
【0015】
本明細書を通して、「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、その実施形態と関連して記載される特定の特色、構造または特徴が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所に出現する「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という句は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているとは限らない。さらに、特定の特色、構造または特徴は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な方式で組み合わせることができる。
【0016】
また、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、内容が明らかに別のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「1匹の非ヒト動物」への言及は、1匹もしくは複数の非ヒト動物、または複数のこのような動物を指すことができ、「1つの細胞」または「その細胞」への言及は、1つまたは複数の細胞、および当業者に公知のその等価物等(例えば複数の細胞)への言及を含む。方法のステップが、記載されまたは特許請求され、ステップが、特定の順序で起こるものとして記載される場合、第2のステップ「に先立って」(すなわち前に)生じる(または実施される)第1のステップの説明は、第2のステップが、第1のステップ「の後」に生じる(または実施される)ことを述べるように書き換えられるならば、同じ意味を有する。「約」という用語は、数または数値範囲に言及する場合、言及される数または数値範囲は、実験的変動性内(または統計的実験誤差内)の近似であることを意味し、したがって、数または数値範囲は、記載の数または数値範囲の1%~15%で変わり得る。「または」という用語は、内容が明らかに別のことを示さない限り、「および/または」を含むその意味で一般に用いられることにまた留意されたい。「少なくとも1つ」という用語は、例えば、少なくとも1つの化合物または少なくとも1つの組成物に言及する場合、「1つまたは複数の」という用語と同じ意味を有し、そのように理解される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
対象における精神神経系障害を処置するための方法であって、前記対象に(a)抗精神病薬物および(b)VMAT2阻害剤を投与するステップを含み、ここで前記対象に投与される前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少ない、方法。
(項目2)
前記精神神経系障害が、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗精神病薬物および前記VMAT2阻害剤が、同時に投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記抗精神病薬物および前記VMAT2阻害剤が、同じ医薬組成物に製剤化されている、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記抗精神病薬物が、第1の医薬組成物に製剤化されており、前記VMAT2阻害剤が、第2の医薬組成物に製剤化されている、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも10~90%少ない、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
精神神経系障害の処置に使用するための、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物であって、前記VMAT2阻害剤の非存在下で使用される場合の治療量未満の量の前記抗精神病薬物を含む、医薬調製物。
(項目19)
前記精神神経系障害が、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である、項目18に記載の医薬調製物。
(項目20)
前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、項目18に記載の医薬調製物。
(項目21)
前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、項目20に記載の医薬調製物。
(項目22)
前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、項目18に記載の医薬調製物。
(項目23)
前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、項目22に記載の医薬調製物。
(項目24)
前記抗精神病薬物が、第1の医薬組成物に製剤化されており、前記VMAT2阻害剤が、第2の医薬組成物に製剤化されている、項目18に記載の医薬調製物。
(項目25)
前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも10~90%少ない、項目18に記載の医薬調製物。
(項目26)
前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない、項目18に記載の医薬調製物。
(項目27)
前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない、項目18に記載の医薬調製物。
(項目28)
前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、項目18から27のいずれか一項に記載の医薬調製物。
(項目29)
前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、項目18から27のいずれか一項に記載の医薬調製物。
(項目30)
前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、項目18から27のいずれか一項に記載の医薬調製物。
(項目31)
前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、項目18から27のいずれか一項に記載の医薬調製物。
(項目32)
前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、項目18から27のいずれか一項に記載の医薬調製物。
(項目33)
抗精神病薬物の有効性を増強するための方法であって、対象に(a)前記抗精神病薬物および(b)VMAT2阻害剤の組合せを投与するステップを含む、方法。
(項目34)
前記抗精神病薬物の有効性の増強が、前記抗精神病薬物の治療上有効な量を低減することを含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記抗精神病薬物が投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも10~90%少ない、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記抗精神病薬物が投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない、項目33に記載の方法。
(項目37)
前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記抗精神病薬物が投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない、項目33に記載の方法。
(項目38)
前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、項目33に記載の方法。
(項目39)
前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、項目33に記載の方法。
(項目41)
前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、請求33から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、項目33から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、項目33から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、項目33から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、項目33から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
精神神経系障害の処置に有効な、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物であって、前記抗精神病薬物の量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記精神神経系障害を処置するために単独で使用される場合の前記抗精神病薬物の治療量と比較して治療量未満である、医薬調製物。
(項目48)
相乗的に有効な量の抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む、医薬調製物。
(項目49)
前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目50)
前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、項目49に記載の医薬組成物。
(項目51)
前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目52)
前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、項目51に記載の医薬組成物。
(項目53)
前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目54)
前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目55)
前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目56)
前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目57)
前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目58)
前記抗精神病薬物および前記VMAT2阻害剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、同じ医薬組成物に製剤化されている、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目59)
前記抗精神病薬物が、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、第1の医薬組成物に製剤化されており、前記VMAT2阻害剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、第2の医薬組成物に製剤化されている、項目47または48に記載の医薬調製物。
(項目60)
前記精神神経系障害が、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である、項目47または48に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、抗精神病活性の指標としての、条件回避応答(CAR)モデルの逃避回数を示す図である。ビヒクル、リスペリドン(0.1mg/kg)単独、R,R,R DHTBZ単独(0.15mg/kg)、およびリスペリドン0.1mg/kg)とR,R,R DHTBZ(0.15mg/kg)との組合せを投与し、逃避回数を測定した。
図2図2は、ラットモデルにおいてVMAT2阻害剤R,R,R DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせて投与した場合の、抗精神病薬リスペリドンのED50(逃避応答)の低下を示す図である。
図3図3は、抗精神病活性の指標としての、条件回避応答(CAR)モデルの回避応答を示す図である。ビヒクル、オランザピン単独(0.6mg/kg)、R,R,R DHTBZ単独、およびオランザピン(0.6mg/kg)とR,R,R DHTBZ(0.15mg/kg)との組合せを投与し、逃避回数を測定した。
図4図4は、ラットモデルにおいてVMAT2阻害剤R,R,R DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせて投与した場合の、抗精神病薬オランザピンのED50(逃避応答)の低下を例示する図である。
図5図5は、抗精神病活性の指標としての、条件回避応答(CAR)モデルの逃避回数を示す図である。ビヒクル、リスペリドン(0.1mg/kg)単独、化合物5-1単独(0.3mg/kg)、およびリスペリドン0.1mg/kg)と化合物5-1(0.3mg/kg)(化合物5-1)との組合せを投与し、逃避回数を測定した。
図6図6は、ラットモデルにおいてVMAT2化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせて投与した場合の、抗精神病薬リスペリドンのED50(逃避応答)の低下を示す図である。
図7図7は、抗精神病活性の指標としての、条件回避応答(CAR)モデルの回避応答を示す図である。ビヒクル、オランザピン単独(0.6mg/kg)、化合物5-1(0.3mg/kg)(化合物5-1)単独、およびオランザピン(0.6mg/kg)と化合物5-1(0.3mg/kg)との組合せを投与し、逃避回数を測定した。
図8図8は、ラットモデルにおいてVMAT2阻害剤化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせて投与した場合の、抗精神病薬オランザピンのED50(逃避応答)の低下を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
統合失調症および一般に抗精神病薬(神経遮断薬とも呼ばれる)で処置される他の状態を処置する上での主な欠点は、抗精神病薬による治療の投与から生じる遅発性ジスキネジア(TD)が発生することである。定型抗精神病薬物(第1世代の抗精神病薬とも呼ばれる)は、遅発性ジスキネジア(TD)を含む錐体外路性副作用の発生率が高い。第2世代の抗精神病薬物(非定型抗精神病薬とも呼ばれる)は、TDを引き起こす可能性は低いが、体重増加および代謝障害などの他の有害効果を有する。定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬との有効性を比較する近年の研究は、第2世代の非定型抗精神病薬の使用が、定型抗精神病薬の現在の使用を大幅に上回っているが、精神病の効果的な処置にはほとんど差異がないことを示している。
【0019】
本明細書で開示される通り、予想外に、VMAT2阻害剤が抗精神病薬物と共に投与される場合、投与される抗精神病薬の量は、抗精神病薬およびVMAT2阻害剤の相乗的な組合せに起因して、一般に対象に投与される抗精神病薬の量よりも低減することができる。この組合せを投与すると、抗精神病薬物が単独で同じ用量で投与される場合に観測されるよりも強力な抗精神病活性が得られる。この用量の低減により、特に定型抗精神病薬を投与する場合、抗精神病薬物と関連する遅発性ジスキネジアが発生する危険性を低減することができる。非定型薬剤をVMAT2阻害剤と組み合わせることによって、非定型抗精神病薬剤の投与用量を低減することにより、これらの薬剤に伴ってしばしば見られる代謝性副作用(例えば、体重増加)の発生可能性を低下もしくは低減し、発症回数を低下もしくは低減し、かつ/または重症度を低下もしくは低減することができる。したがって、TDを発症した患者では、抗精神病薬物の用量の低減は、強力なVMAT2阻害剤の存在と共に、TDの処置に有用となると同時に、より高用量の抗精神病薬が単独で投与される場合に観測される抗精神病有効性に見合う抗精神病有効性を維持することができる。
【0020】
本明細書に記載の方法、使用、および組成物は、広範な治療上の適用にわたって実用性を有することができ、対象(すなわち、患者、個体)における様々な精神神経系の状態を処置するために使用することができる。例えば、このような状態には、精神神経系の状態(例えば、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性疾患、大うつ病性障害(MDD)、躁うつ性障害、精神病的特色を有するうつ病、妄想障害および他の精神病状態、幻覚および妄想の症状)、および遅発性ジスキネジアが含まれる。本明細書において、特定の一実施形態では、精神神経系の状態(例えば、統合失調症または統合失調性感情障害)を処置するための方法が提供される。また、統合失調症または統合失調性感情障害を含む前述の精神神経系の状態の処置に有用な医薬組成物が提供される。他のある特定の実施形態では、医薬組成物は、精神神経系の状態および遅発性ジスキネジアの処置に有用である。
【0021】
抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤
1952年、最初に市販された抗精神病薬は、クロルプロマジンであった。この定型抗精神病薬の後、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、およびトリフロペラジンなどを含む、他の定型が使用された。これらの定型抗精神病薬は、すべて、D2ドーパミン受容体拮抗作用を介してそれらの主要有効性を得、パーキンソニズム(振戦、硬直、動作緩慢および歩行不安定性)、ならびにジストニア、ジスキネジアおよびアカシジアを含む運動障害を引き起こす傾向がある。
【0022】
大規模コホート研究では、遅発性ジスキネジア(TD)は、第1世代の抗精神病薬によって長期的に処置されている、5人のうち少なくとも1人、おそらく3人のうち1人もの患者に、影響を及ぼすことが示されている。TDの新しい発症(発生率)は、1年間の処置につきおよそ3%~5%であり、これらの率は、高齢の患者では5倍にも上る(例えば、Lenczら、Dialogues Clin Neurosci. 2009年12月;11巻(4号):405頁参照)。
【0023】
遅発性ジスキネジアは、ほとんどの場合、口、舌、顔面筋肉、ならびに程度はより少ないが胴体および四肢に関する不随意運動によって特徴付けられる、神経系の慢性障害である。TDのほとんどの症例は、抗精神病薬物の長期間の使用によって引き起こされる。この状態は、数カ月、数年またはさらには永久に存続する場合がある。TDの存在は、身体的不快感および社会的烙印に加えて、生活の質の低下、精神病理の増大、および死亡率の増大に関連する。TDの病因は未知であるが、抗精神病薬物は、それらのドーパミン拮抗作用を介してTDを引き起こすと仮定されている。
【0024】
第2世代または非定型抗精神病薬が開発された。これらの薬物は、長期的に投与されるとTDおよび関係する運動障害を引き起こす危険性がより低いと思われる。これらの薬物によるTDの発生率は、定型神経遮断薬を用いるよりも80%も低い。しかし、非定型抗精神病薬は、体重増加、ならびに高トリグリセリド血症および高血糖症などの関係する代謝障害を含む副作用を引き起こす。非定型抗精神病薬物の例として、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドンが挙げられる。これらの非定型抗精神病薬は、すべて、D2ドーパミン受容体拮抗作用と、他の神経伝達物質の受容体に対する追加の効果を介して、それらの主要有効性を発揮する。
【0025】
表1は、定型抗精神病薬の例、ならびに統合失調症を有する中程度の症候性の成人男性の参照症例に対する推奨の出発1日用量、標的1日用量、および最大1日用量の範囲の一覧である。表2は、非定型抗精神病薬の例、ならびに統合失調症を有する中程度の症候性の成人男性の参照症例に対する推奨の出発1日用量、標的1日用量、および最大1日用量の範囲の一覧である(例えば、Gardnerら、Am. J. Psychiatry
2010年:167巻:686~693頁参照)。
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
本明細書に記載の方法および組成物で使用するために、抗精神病薬物(または生理的に許容されるその塩)は、定型抗精神病薬物(すなわち、第1世代の抗精神病薬物)であってもよい。定型抗精神病薬物は、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンのいずれか1つであり得る。他の実施形態では、抗精神病薬物(または生理的に許容されるその塩)は、非定型抗精神病薬物(すなわち、第2世代の抗精神病薬物)であってもよい。非定型抗精神病薬物は、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンのいずれか1つであり得る。
【0028】
TDを防止するための唯一の選択肢は、抗精神病薬物の使用を回避することである。統合失調症の処置のように抗精神病薬の使用が必要な場合、可能な最小用量の抗精神病薬を、可能な最短期間使用することが、望ましい選択肢である。しかしいずれの選択肢も、TDを発症し、抗精神病薬による治療を受け続けなければならない多くの統合失調症患者にとって、現在利用不可能である。これらのTD患者の処置は、現在の抗精神病薬による治療を変更または制限することを含む。例えば、第1世代の薬物は、TDを引き起こす危険性がより低い第2世代の薬物で置き換えることができる。また、TDを引き起こす薬剤の用量をより低く切り替えることは、症状を軽減する助けとなり得る。しかし、薬物を変更し、または第1世代の抗精神病薬の用量を低減することは、対象の根本的な統合失調症を増悪することなく行われなければならない。
【0029】
本明細書に記載の通り、抗精神病薬物をVMAT2阻害剤と組み合わせて投与することは、相乗効果を有し、したがって、薬物が単独で投与される場合と同じまたは類似の有効性を観測するのに投与することが必要な抗精神病薬物が、より少なくて済む。VMAT2阻害剤(および生理的に許容されるその塩)は、小胞モノアミン輸送体アイソフォーム2(VMAT2)を阻害することによって、中枢神経系へのモノアミンの供給を低減することができる。本明細書に記載の方法で使用できるVMAT2阻害剤およびモノアミン枯渇剤(depletor)の例として、例えば、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン、TBZ)が挙げられる。TBZは、ハンチントン病と関連する舞踏病の処置に承認されている。TDおよび様々な運動過剰障害の処置にテトラベナジンを使用することについても記載されている。テトラベナジンは、投与されると、ジヒドロテトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール、DHTBZ)に容易に代謝され、DHTBZのR,R,R立体異性体は、最も活性な代謝産物であると考えられる。ある特定の実施形態では、精神神経系障害を処置するための本明細書に記載の方法は、抗精神病薬物および(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(本明細書ではR,R,R-DHTBZとも呼ばれる)またはその前駆体を投与するステップを含む。本明細書に記載の方法および組成物で使用できる他のVMAT2阻害剤には、TBZ類似体および代謝産物、レセルピン、ロベリンおよび類似体、ならびに米国特許第8,039,627号、同第8,357,697号および同第8,524,733号に記載の化合物が含まれる。一実施形態では、VMAT2阻害剤は、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである(米国特許第8,039,627号参照)。別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)である。さらに別の実施形態では、VMAT阻害剤は、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール(本明細書では化合物5-1とも呼ばれる)、またはその前駆体(例えば、化合物5-1のプロドラッグ)である。さらに別の実施形態では、VMAT2阻害剤は、テトラベナジンまたは重水素化テトラベナジンである。重水素化テトラベナジンには、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)が含まれる。本明細書に記載の通り、VMAT2阻害剤のいずれか1つを、医薬組成物を形成するための薬学的に許容される添加剤、担体、および/または賦形剤と組み合わせることができる。
【0030】
VMAT2阻害剤の活性の特徴付けは、当技術分野および本明細書に記載のin vitro法および動物モデルを使用して容易に決定することができる(例えば、Tengら、J. Neurochem. 71巻、258~65頁、1998年;Near(1986年)、Near(1986年)、Mol. Pharmacol. 30巻:252~57頁参照)。抗精神病薬物が所望の治療効果を有する能力は、本明細書に記載のものなどの、当業者によく知られているin vivo動物モデルを使用して決定することができる。条件回避応答(CAR)試験は、化合物の抗精神病活性を評価するための、有効な、信頼のおける前臨床モデルであることが示されている。数々の研究によって、定型および非定型抗精神病薬物が、CARを選択的に抑制することが示されており、したがってCARは、抗精神病化合物をスクリーニングし、特徴付けるための理想的なアッセイとなっている(例えば、Wadenbergら、Biobehav. Rev. 1999年、23巻:851~62頁参照)。
【0031】
当業者には、このようなアッセイおよび技法が、適切な陰性対照(例えば、ビヒクルだけ、賦形剤だけ等)および適切な陽性対照を使用して実施されることが容易に理解される。特定のin vitroアッセイのための条件には、アッセイで使用される試験薬剤および試薬の完全性を維持し、当業者によく知られており、かつ/または容易に決定され得る、温度、緩衝剤(塩、カチオン、媒体を含む)、および他の構成成分が含まれる。動物モデルにおける抗精神病薬物の有効性を決定することは、典型的には、当業者によく知られている1つまたは複数の統計的分析を使用して実施される。例として、2元分散分析(ANOVA)、フィッシャーの正確確率検定、および/またはボンフェローニ試験などの統計的分析を、動物群間差異の統計的有意性を決定するために使用することができる。
【0032】
本明細書に記載の化合物は、そのあらゆる多形、プロドラッグ、異性体(光学異性体、幾何異性体および互変異性体を含む)、塩、溶媒和物および同位体を含む。立体異性体に関して、抗精神病薬およびVMAT2阻害剤は、キラル中心を有する場合があり、ラセミ体、ラセミ混合物、および個々の鏡像異性体またはジアステレオマーとして生じることができる。それらの混合物を含む、このようなあらゆる異性体形態が含まれる。本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、具体的に示されない限り、所与の化学式または名称は、それらの互変異性体、ならびにあらゆる立体異性体、光学異性体および幾何異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、E/Z異性体等)およびラセミ体、ならびに異なる割合の別個の鏡像異性体の混合物、ジアステレオマー混合物、またはこのような異性体および鏡像異性体が存在する場合には先の形態のいずれかの混合物、ならびに薬学的に許容されるその塩を含むそれらの塩、およびそれらの溶媒和物、例えば遊離化合物の溶媒和物または化合物の塩の溶媒和物を含む水和物などを包含するものとする。
【0033】
本明細書で使用される場合、薬学的に(または生理的に)許容される塩は、親化合物が、その酸塩または塩基塩を作製することによって修飾されている記載の化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例として、塩基性残基、例えばアミンの無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩等が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、このような塩には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物/臭化水素酸塩、Ca-エデト酸塩/エデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物/塩酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エタンジスルホン酸塩、エストレート(estolate)、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルスニレート(glycollylarsnilate)、ヘキシルレゾルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン、ヒドロキシマレイン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩 塩基性酢酸塩、コハク酸塩、スルファミド、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリエチオジド、アンモニウム、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミンおよびプロカインが含まれる。薬学的に許容されるさらなる塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等のような金属からのカチオンを用いて形成することができる。(また例えば、Pharmaceutical Salts、Birge、S.M.ら、J. Pharm. Sci.、(1977年)、66巻、1~19頁参照)。
【0034】
さらに本明細書に記載の化合物に関しては、プロドラッグも含まれる。プロドラッグは、このようなプロドラッグが患者に投与されるとin vivoで化合物を放出する、共有結合によって結合した任意の担体である。プロドラッグは、一般に、ありふれた操作またはin vivoのいずれかによって修飾が切断されて親化合物を生じるような様式で、官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグとして、例えば、ヒドロキシ、アミンまたは酸基が、対象に投与されると切断されて、ヒドロキシ、アミンまたは酸基を形成する任意の基に結合している、本明細書に記載の化合物が挙げられる。したがって、プロドラッグの代表例として、化合物のアルコールおよびアミン官能基の酢酸誘導体、ギ酸誘導体および安息香酸誘導体が挙げられる(しかし、それに限定されるものではない)。さらに、カルボン酸(-COOH)の場合、メチルエステル、エチルエステルなどのエステルを用いることができる。
【0035】
本明細書に記載の化合物は、完全に非晶質なものから完全に結晶性のものにわたる一連の固体状態で存在することができる。さらに、化合物の結晶形の一部は、多形として存在することができる。さらに、一部の化合物は、水または他の有機溶媒と共に溶媒和物を形成することもできる。溶媒和物という用語は、本明細書では、化合物および1つまたは複数の薬学的に許容される溶媒分子を含む分子複合体を説明するために使用される。
【0036】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数の原子が、原子番号は同じであるが原子質量は異なっている原子によって置き換えられている、同位体的に標識された薬学的に許容される化合物である。例として、水素についてはH(重水素)およびH(トリチウム)、炭素については11C、13Cおよび14C、塩素については36Cl、フッ素については18F、ヨウ素については123Iおよび125I、窒素については13Nおよび15N、硫黄については35Sが挙げられる。また例として、Hについて重水素の置換が挙げられ、この場合、重水素(複数可)が分子に選択的に付加されて薬物の代謝を変え、その結果、半減期の増大などの一部の特性が増強される。
【0037】
処置方法および医薬調製物および組成物
本明細書では、非限定的な例として、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、および自閉症、躁うつ性障害、精神病的特色を有するうつ病、妄想障害および他の精神病状態、ならびに幻覚および妄想の症状を含む、抗精神病薬で現在処置される障害のいずれかを処置するための方法が提供される。本明細書では、第1世代(すなわち、定型)または第2世代(すなわち、非定型)の抗精神病薬物(例えば、化合物)をVMAT2阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによって、これらの障害を処置する方法が提供される。ある特定の実施形態では、対象が、運動障害(例えば、遅発性ジスキネジア)を発症している、または運動障害の少なくとも1つの症状を有している場合、VMAT2阻害剤を抗精神病薬と組み合わせて投与するステップを含む方法は、運動障害(例えば、遅発性ジスキネジア)を処置するのに有用である。VMAT2阻害剤は、運動障害などの状態または障害を防止し(すなわちその発生の可能性を低減し)、その進行を緩徐し、遅延し、または処置することができる。
【0038】
本明細書に開示される通り、驚くべきことに、また予想外に、精神神経系障害(例えば、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、および自閉症、躁うつ性障害、精神病的特色を有するうつ病、妄想障害および他の精神病状態、ならびに幻覚および妄想の症状)を処置するために、抗精神病薬物を、VMAT2阻害剤と組み合わせて投与する場合、これらの方法で使用される抗精神病薬の用量は、今までに説明されているこれらの障害を有効に処置するための薬物単独の投与量範囲よりも少ない(すなわち、その量が低減され、減らされ、その量未満になる)。ある特定の実施形態では、VMAT2阻害剤と組み合わされる場合の投与される抗精神病薬物の用量は、単独で投与される場合(すなわち、VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合)には、精神障害を有効に処置できない。換言すれば、VMAT2阻害剤および抗精神病薬物の組合せは、障害の処置において相乗的に作用する。抗精神病薬物は、VMAT2阻害剤と組み合わせて使用される場合、単独で投与されると精神神経系障害の処置にほとんどまたは全く有効性がない用量で使用することができ、すなわち抗精神病薬物の用量は、治療量未満である。すなわち、VMAT2阻害剤を、治療量未満の用量の抗精神病薬物と組み合わせることによって、抗精神病薬物の有効性は増強される。例として、精神神経系障害またはその症状の処置は、それらが障害の症状に該当する場合、不安および激越をより大きく緩解することができる。
【0039】
抗精神病薬物の用量の低減は、抗精神病薬物の1つまたは複数の副作用の強度を低減し、または副作用を防止する(すなわち、発生の可能性または危険性を低減する)有益な効果を有する。一実施形態では、例えば、定型抗精神病薬物が障害を処置するために使用される場合、遅発性ジスキネジアおよび他の遅発性運動障害の発生の可能性を低減することができ、運動障害の重症度もしくは強度を低減もしくは低下することができ、または運動障害(またはその症状)の発生頻度を低減することができる(すなわち、低減し、低下する)。別の実施形態では、例えば、非定型薬物が精神神経系障害またはその症状を処置するためにVMAT2阻害剤と組み合わせて使用される場合、代謝障害、例えば体重増加、耐糖能障害の発生可能性または重症度、およびアテローム硬化性心血管疾患の危険性を低減することができる。他の実施形態では、抗精神病薬(非定型または定型抗精神病薬のいずれか)を、VMAT阻害剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することによって低減され得る副作用には、鎮静、口内乾燥、性機能障害、および心不整脈の1つまたは複数が含まれる。
【0040】
医学分野の当業者に理解される通り、「処置する」および「処置」という用語は、対象(すなわち患者)の疾患、障害、または状態の医学的管理を指す(例えば、Stedman’s Medical Dictionary参照)。「処置」および「処置すること」という用語は、防止的、すなわち予防的処置、または治療的、すなわち根治的および/もしくは緩和的処置の両方を包含する。したがって、「処置」および「処置すること」という用語は、状態を、特に顕在化した形態で既に発症している患者の治療的な処置を含む。治療的な処置は、特定の徴候の症状を緩解するための対症処置、あるいは徴候の状態を逆転させもしくは部分的に逆転させ、または疾患の進行を停止もしくは緩徐するための原因処置であり得る。したがって、本明細書に記載の組成物および方法は、例えば、ある期間にわたる治療的な処置として、ならびに長期治療のために使用することができる。さらに「処置」および「処置すること」という用語は、予防処置、すなわち本明細書で既に記載した状態を発症する危険性のある患者の処置を含み、そうすることで危険性を低減する。
【0041】
本明細書に記載の組成物および方法を必要とする対象には、医学分野および精神医学分野の当業者によって、精神神経系障害(例えば、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症)を有すると診断された対象が含まれる。処置を受ける対象(または患者)は、ヒトまたは非ヒト霊長類を含む哺乳動物であり得る。哺乳動物は、ネコまたはイヌなどの家庭内動物であってもよい。
【0042】
治療上および/または予防上の利益には、例えば、臨床転帰、治療的処置および予防的または防止的尺度の両方の改善が含まれ、その目的は、望ましくない生理的変化もしくは障害を防止もしくは緩徐もしくは遅延(低減)することであり、またはこのような障害の拡大もしくは重症度を防止もしくは緩徐もしくは遅延(低減)することである。本明細書で論じる通り、対象の処置から得られる有益なまたは所望の臨床結果には、処置を受ける疾患、状態もしくは障害から生じるもしくはそれらと関連する症状の、寛解、低減もしくは軽減;症状の発生の低減;生活の質の改善;疾患がない状態の期間をより延長すること(すなわち、疾患の診断を行う基礎に基づいて、対象が症状を呈する可能性または傾向を低減すること);疾患の程度の縮小;疾患の状態の安定化(すなわち悪化させないこと);疾患の進行の遅延もしくは緩徐;病状の回復もしくは緩和;ならびに検出可能であろうとなかろうと、(部分または完全)寛解、ならびに/または全生存が含まれるが、それらに限定されない。また「処置」は、対象が処置を受けていない場合に予測される生存期間と比較した場合に、生存期間を延長することを意味することができる。処置を必要とする対象には、状態または障害を既に有する対象、ならびに疾患、状態または障害(例えば、統合失調症または統合失調性感情障害、TD、または本明細書に記載の他の状態もしくは障害)を有する傾向がある、または発症する危険性がある対象、およびその対象の疾患、状態または障害が防止されるべき(すなわち、疾患、障害または状態の発生の可能性を低減する)対象が含まれる。
【0043】
「治療上有効な量」は、一般に、本明細書に記載の(i)特定の疾患もしくは状態を処置もしくは防止し、(ii)特定の疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状を減弱、回復、もしくは排除し、または(iii)特定の疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状の発症を防止もしくは遅延する、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤などの処置剤の量を指す。最適な用量は、一般に、実験モデルおよび/または臨床治験を使用して決定することができる。最適な用量は、対象のボディマス、体重、または血液量に依存し得る。一般に、1日に適用できるVMAT2阻害剤である化合物の用量範囲は、通常、1日5.0~150mgであり、ある特定の実施形態では、1日10~100mgである。抗精神病薬も含む組成物または調製物に含まれるVMAT2阻害剤の用量は、TDなどの運動障害を処置するのに十分である(すなわち、用量は、運動障害を処置し、防止し(すなわちその発生の可能性を低減し)、その進行を緩徐し、遅延するための治療上有効な用量である)。
【0044】
抗精神病薬およびVMAT2阻害剤のそれぞれは、精神神経系障害を処置するのに適した時間および頻度で投与され、VMAT2阻害剤は、運動障害を処置または防止するのに適した時間および頻度で、適切な方式で投与される。VMAT2阻害剤は、1日1回、2回、または3回投与することができる。抗精神病薬物は、VMAT2阻害剤と独立に、または一緒に、1日1回、2回または3回投与することができる。他の実施形態では、抗精神病薬は、毎週、2週間毎(1カ月当たりおよそ2回)、3週間毎、4週間毎(1カ月当たりおよそ1回)、6週間毎、または8週間毎に投与される。
【0045】
統合失調症の成人男性対象のための、単独で(すなわちVMAT2阻害剤の非存在下で)投与される場合に適用できる1日当たりの定型および非定型抗精神病薬の経口用量範囲は、表1および2、製品添付文書、または当技術分野に見出すことができる。これらの推奨用量は、時として、女性、高齢者、子どもおよび青年などの異なる患者集団、ならびに統合失調症以外の疾患の処置に合わせて増大または低減される。したがって、医学/精神医学分野の当業者は、対象に治療上の利益をもたらす定型抗精神病薬または非定型抗精神病薬の用量が、性別、健康状態、年齢、他の医学的または精神医学的な状態または疾患の存在、投与経路、および投与される薬物の製剤、ならびに当業者に明らかである他の因子に依存して、表1および表2に示されている量と比較して調整される必要があり得ることを理解する。本明細書に記載の通り、対象に投与される抗精神病薬物の用量は、抗精神病薬物がVMAT2阻害剤と組み合わせて投与される場合に、表1および表2に示され、当技術分野で説明されているような量と比較して、著しく低減することができる。抗精神病薬物がVMAT2阻害と組み合わせて投与される場合に、抗精神病薬による治療上の利益を有するのに必要なその薬物の用量における低減(すなわち、治療量未満の用量の抗精神病薬物)は、特定の対象(例えば、性別、健康状態、年齢、他の医学的または精神医学的な状態または疾患の存在、投与経路、および投与される薬物の製剤、ならびに当業者に明らかである他の因子)に合わせて適宜調整することができる。特定の実施形態では、VMAT2阻害剤と組み合わせて使用される抗精神病薬物の用量は、単独で使用される場合よりも、少なくとも約10%少なく、少なくとも約20%少なく、少なくとも約25%少なく、少なくとも約30%少なく、少なくとも約35%少なく、少なくとも約40%少なく、少なくとも約45%少なく、少なくとも約50%少なく、少なくとも約55%少なく、少なくとも約60%少なく、少なくとも約65%少なく、少なくとも約70%少なく、少なくとも約75%少なく、少なくとも約80%少なく、少なくとも約85%少なく、または少なくとも約90%少なくてもよい。他のある特定の実施形態では、VMAT2阻害剤と組み合わせて使用される場合の抗精神病薬物の用量は、抗精神病薬物が単独で使用される場合よりも10~90%少なく、10~20%少なく、10~25%少なく、20~30%少なく、25%~30%少なく、25%~40%少なく、25%~50%少なく、25%~60%少なく、25%~75%少なく、25%~80%少なく、30~40%少なく、30~60%少なく、40~50%少なく、40~60%少なく、50~60%少なく、50~75%少なく、60~70%少なく、60~75%少なく、70%~80%少なく、または80~90%少なくてもよい。本明細書に記載されるように、定型(すなわち、第1世代)抗精神病薬物の例として、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、およびトリフロペラジンが挙げられる。非定型(すなわち、第2世代の抗精神病薬物の例として、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、およびジプラシドンが挙げられる。
【0046】
有効に治療し、毒性を最小限に抑えるのに十分な最小用量が、通常好ましい。対象は、一般に、臨床的評価および精神医学的評価によって、ならびに処置または防止される状態に適したアッセイを使用することによって、治療有効性についてモニタリングされ得る。このアッセイは、当業者によく知られており、本明細書に記載されている。対象に投与される化合物のレベルは、生物学的体液、例えば血液、血液画分(例えば、血清)、および/または尿、および/または対象から得られる他の生物学的試料における化合物のレベルを決定することによってモニタリングされ得る。化合物を検出するために当技術分野で実施される任意の方法を使用して、治療レジメン過程中の化合物のレベルを測定することができる。
【0047】
統合失調症または統合失調性感情障害、または関係する疾患もしくは障害、TD、または本明細書に記載の他の状態もしくは障害を処置するための、本明細書に記載の抗精神病薬およびVMAT2阻害剤を含む組成物の用量は、対象の状態、すなわち疾患の段階、疾患によって引き起こされる症状の重症度、全体的な健康状態、ならびに年齢、性別および体重、ならびに医学分野および精神医学分野の当業者に明らかである他の因子に依存し得る。同様に、各化合物の用量は、当業者に理解され、本明細書に記載のパラメータに従って決定され得る。
【0048】
抗精神病化合物の少なくとも1つを含む本明細書に記載の医薬組成物、および本明細書に記載のVMAT2阻害剤化合物の少なくとも1つを含む本明細書に記載の医薬組成物は、有効量の各化合物を有効に送達するいくつかの経路のいずれか1つによって、必要とする対象に投与することができる。このような投与経路には、例えば、経口、非経口、経腸、直腸、鼻腔内、頬側、舌下、筋肉内、および経皮が含まれる。これらの投与経路等によって投与される組成物は、本明細書により詳細に記載されている。抗精神病薬およびVMAT2阻害剤は、同じ組成物に製剤化されない場合、同じまたは異なる経路によって投与することができる。
【0049】
ある特定の実施形態では、VMAT2阻害剤(または生理的もしくは薬学的に許容されるその塩)および抗精神病薬物(または生理的もしくは薬学的に許容されるその塩)は、単一組成物を形成するように、一緒に製剤化される。他の実施形態では、本明細書で言及される医薬調製物は、抗精神病薬物を含む医薬組成物、およびVMAT2阻害剤を含む医薬組成物を含み、これらは本明細書では、便宜上、第1の医薬組成物および第2の医薬組成物と呼び得る。調製物の医薬組成物は、同時にまたは逐次的にいずれかの順序で対象に投与して、所望の治療効果(複数可)をもたらすことができる。記載の通り、「第1の医薬組成物」および「第2の医薬組成物」への言及は、単に便宜上のものであり、投与順序を記載することを企図していない。
【0050】
各医薬調製物および医薬組成物は、少なくとも1つの生理的に(または薬学的に)許容される、または適切な添加剤をさらに含むことができる。医薬組成物において使用するための、当業者に公知の任意の生理的にまたは薬学的に適切な添加剤または担体(すなわち、活性成分(複数可)の活性を妨害しない、非毒性の材料))は、本明細書に記載の組成物および調製物において用いることができる。例示的な添加剤には、それぞれの化合物の安定性および完全性を維持する賦形剤および担体が含まれる。
【0051】
薬学的に許容される添加剤は、医薬分野で周知であり、例えば、Roweら、Handbook of Pharmaceutical Excipients: A Comprehensive Guide to Uses, Properties, and Safety、第5版、2006年、およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro、第21版、Mack Pub. Co.、Easton、PA(2005年))に記載されている。薬学的に許容される例示的な添加剤として、生理的pHの滅菌生理食塩水およびリン酸緩衝食塩水が挙げられる。保存剤、安定剤、染料、緩衝剤等を、医薬組成物中に提供することができる。さらに、抗酸化剤および懸濁化剤を使用することもできる。
【0052】
医薬組成物は、溶液の形態であってもよい。溶液は、生理食塩水または滅菌水を含むことができ、任意選択で、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および他の一般的な添加物を含むことができる。あるいは、医薬組成物は、散剤、錠剤、丸剤などの固体の形態であってもよい。本明細書に記載の化合物のいずれか1つを含む組成物は、持続放出または緩慢放出のために製剤化することができる。このような組成物は、一般に、周知の技術を使用して調製することができ、例えば、経口、直腸もしくは皮下移植によって、または所望の標的部位への移植によって投与することができる。持続放出製剤は、担体マトリックス中に分散した、および/または速度制御膜に取り囲まれたリザーバー内に含有された化合物を含有することができる。このような製剤中で使用するための添加剤は、生体適合性があり、生分解性であってもよく、好ましくは、製剤は、相対的に一定のレベルで活性な構成成分を放出する。持続放出製剤に含有されている活性化合物の量は、移植部位、放出速度および期待される放出期間、ならびに処置または防止する状態の性質に依存する。
【0053】
経口製剤では、本明細書に記載の化合物の少なくとも1つは、単独で、または錠剤、散剤、顆粒剤もしくはカプセル剤を作成するのに適した添加物、例えば分散化剤および表面活性剤;従来の添加物、例えばラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはバレイショデンプン;結合剤;崩壊薬;滑沢剤;ならびに所望に応じて、賦形剤、緩衝化剤、湿潤剤、保存剤、着色剤、および香味剤と組み合わせて使用することができる。化合物は、胃環境の低pHからの化合物の保護を提供するための緩衝化剤および/または腸溶コーティングを用いて製剤化することができる。組成物に含まれる化合物は、経口送達のために、香味剤を用いて(例えば、液体、固体もしくは半固体製剤中で)、かつ/または腸溶コーティングを用いて製剤化することができる。経口製剤は、ゼラチンカプセルとして提供することができ、これは、活性化合物を、粉末化担体、例えば、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等と共に含有することができる。類似の担体および賦形剤を使用して、圧縮錠剤を作成することができる。
【0054】
抗精神病薬は、一般に、1日1回または1日2回投与される経口組成物として投与される。急速に崩壊するバッカル錠および単回投与注射剤も、市販されている。長時間作用性の薬物治療は、服薬順守の改善において、毎日の薬物治療を上回る潜在的な利点があり、そうすることで入院および再発率が低減される。一般に、2週間または4週間の持続的な有効性をもたらす筋肉内デポー注射剤は、アリピプラゾール、フルフェナジン、ハロペリドール、オランザピン、パリペリドンおよびリスペリドンについて利用可能である。非限定的な例として、抗精神病薬物は、典型的には、各時間に与えられる単一の丸剤を用いて1日1回または1日2回のスケジュール(または所望の場合それよりも多い回数)で、本明細書に記載の方法に従って投与することができる。ある特定の具体的な実施形態では、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤は、経口投与のための同じ錠剤または丸剤に製剤化される。他の実施形態では、VMAT2阻害剤および抗精神病薬物のそれぞれは、異なる丸剤または錠剤に、別個に製剤化される。
【0055】
また、VMAT2阻害剤および抗精神病薬物のそれぞれの1つまたは複数の単位用量を含むキットが提供される。このようなキットの非限定的な例として、ブリスターパックが挙げられる。別の実施形態では、抗精神病薬は、長時間作用性の筋肉内注射として投与することができ、VMAT2阻害剤は、別個の毎日スケジュールで投与することができる。
【0056】
他の実施形態では、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む調製物または組成物は、1つまたは複数の追加の治療剤、特に本明細書に記載の精神神経系の状態および疾患の処置および/または防止に適した治療剤をさらに含む。うつ病または双極性障害などの精神神経系障害を有する対象は、疾患の症状を制御するために複数の治療薬物で処置される。抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤と組み合わせるのに適し得る追加の治療剤には、例えば、うつ病、双極性障害、または他の障害を処置するのに有用な1つまたは複数の薬物が含まれる。したがって、ある特定の実施形態では、抗精神病薬物または生理的に許容されるその塩、およびVMAT2阻害剤または生理的に許容されるその塩、および1つまたは複数の追加の治療剤を、任意選択で1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤、担体および/または賦形剤と一緒に含む医薬調製物が提供される。
【0057】
以下の実施例は、例示目的で提供され、限定的なものではない。
【実施例0058】
(実施例1)
リスペリドン、R,R,R-DHTBZおよびそれらの組合せの抗精神病活性の条件回避応答アッセイ
条件回避応答(CAR)試験は、化合物の抗精神病活性を評価するための、有効な、信頼のおける前臨床モデルであることが示されている。CARパラダイムでは、ラットを、2つのチャンバのシャトルボックス内で、負の強化による条件刺激(聴覚)に応答するように訓練する。動物が、聴覚刺激の提示時に他方のチャンバに移動しない場合、ラットが位置する方のチャンバに穏やかなフットショックを適用する。ラットは、条件回避応答と呼ばれる聴覚シグナルの開始時に他方のチャンバに移動することによって、穏やかなフットショックを回避することを学ぶ。ショックを与えている間に他方のチャンバに渡ることを、逃避応答と呼ぶ。ラットが、フットショックを与えている際も他方のチャンバに移動しない場合、ラットは、逃避に失敗したとみなされる。数々の研究によって、定型および非定型抗精神病薬物が、CARを選択的に抑制することが示されており、したがってCARは、有望な抗精神病化合物をスクリーニングするための理想的なアッセイとなっている(例えば、Wadenbergら、Biobehav. Rev. 1999年.23巻:851~62頁参照)。
【0059】
ラットを、3週間~4週間、毎日訓練した。訓練セッションでは、ラットをCARの二方向シャトルボックスに入れ、20回の試練訓練期間を確保した。1回の試練は、80dBのホワイトノイズを10秒間提示した後、0.6mAのスクランブルフットショックを最大20秒間継続させることからなった。試練間隔は、20~60秒の範囲であった。ラットは、条件刺激が提示されると、一方の区画から他方の区画に移動することによってショックを回避することを学んだ(条件回避応答)。ラットは、条件刺激を提示された場合に20回の試練のうち少なくとも19回ショックを回避すれば、十分に訓練されたとみなされた。これらの基準に合格しなかったラットは、使用しなかった。
【0060】
試験当日、訓練した動物を、試験前30分間、試験室に順化させた。次に、動物に化合物を投与し、CARの二方向シャトルボックスに入れた。試験では、20回の試練を、各ラットに実施した。各試練では、条件刺激を適用し(80dBのホワイトノイズを10秒間提示)、その後フットショックを与えた(0.6mAのスクランブルフットショックを最大20秒間継続)。動物が、条件刺激の提示時に他方のチャンバに移動したら、条件回避応答として点数を付けた。フットショックの提示時に移動した場合、逃避として点数を付けた。フットショックの提示時に移動しなかったら、逃避失敗として点数を付けた。抗精神病有効性は、逃避回数の増大によって明白となる。データを、分散分析(ANOVA)によって分析した後、適切な場合にはボンフェローニ試験によって事後比較した。効果は、p<0.05である場合に有意とみなされる。平均を超えるまたは平均を下回る2つの標準偏差として定義される外れ値を検出し、すべての分析から除去した。結果を、逃避回数の平均±SEMとして記録する。
【0061】
動物:Harlan(Indianapolis、IN)のウィスター系雄性ラットを、研究で使用した。ラットを受け取ったら、固有の識別番号を割り当て、マイクロアイソレータフィルタートップを備えたポリカーボネートケージに、ケージ1つ当たりラット3匹を収容した。すべてのラットを、適切な健康および適合性を保証するために、研究の開始前に、調査し、取り扱い、秤量した。ラットを、6:00A.M.に点灯する12/12の明/暗サイクルに維持した。室温を20~23℃に維持し、相対湿度を約50%に維持した。固形飼料および水を、研究期間の間、自由に摂取させた。試験毎に、動物を無作為に処置群に割り当てた。各処置群は、試験時に動物10匹を含有していた。
【0062】
試験化合物:リスペリドン(0.03、0.1、0.3、および1mg/kg)を10%DMSOに溶解させ、試験の30分前に用量体積1ml/kgでi.p.投与した。(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(本明細書ではR,R,R-DHTBZと呼ばれる)(0.15mg/kg)を、滅菌水に溶解させ、試験の30分前に用量体積1ml/kgでp.o.投与し、その直後にリスペリドンまたはそのビヒクルを投与した。ビヒクル対照群には、10%DMSOを投与し(i.p.、30分間の前処理、1ml/kg)、その直後に滅菌水を投与した(p.o.、1ml/kg)。
【0063】
結果:リスペリドン(0.1mg/kg)またはR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)を単独で投与しても、ビヒクルと比較して逃避回数は増大しなかった。リスペリドン(0.1mg/kg)およびR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)の組合せは、単独で投与しても有効性を示さない用量で、ビヒクルと比較して逃避回数を有意に増大した。この知見は、リスペリドンおよびR,R,R-DHTBZの組合せを投与すると、抗精神病活性に対して相乗効果があることを強力に示唆している。
【0064】
さらに、R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)をリスペリドンに添加すると、抗精神病効果をもたらすのに必要なリスペリドンの量が低減された。単独で投与する場合、CARパラダイムにおいて抗精神病有効性を示すのに、用量0.3mg/kgのリスペリドンが必要であった。R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)をリスペリドンに添加すると、はるかに低用量のリスペリドン(0.03および0.1mg/kg)で抗精神病活性が得られた。この知見は、抗精神病活性に対して組合せの相乗効果があることを強力に示唆している。
【0065】
図1は、VMAT2阻害剤であるR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせた抗精神病薬リスペリドン(0.1mg/kg)の組合せに関する、条件回避試験における逃避の統計的に有意な著しい増大を表すグラフを示す。組合せで使用したのと同じ用量で単独で投与したリスペリドン(0.1mg/kg)およびR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)は、ビヒクルの結果と変わらなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0066】
図2は、ラットに単独で投与したリスペリドン(0.03、0.1、0.3および1.0mg/kg)と比較して、R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせて投与したリスペリドン(0.03、0.1、0.3および1.0mg/kg)のED50値の変化を示す。化合物に対する最大応答の50%をもたらすのに必要な化合物の用量としてフィッティングした曲線から算出したリスペリドンのED50値は、リスペリドンを単独で投与したときの0.14mg/kgの値から、リスペリドンをVMAT2阻害剤R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせて投与したときの0.024mg/kgまで、およそ6分の1に低下した。この6分の1までの低下は、リスペリドン用量の83%の低減に相当する。R,R,R DHTBZ(0.15mg/kg)は、ビヒクルに類似しており、単独で投与すると抗精神病活性を示さなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0067】
(実施例2)
オランザピン、R,R,R-DHTBZおよびそれらの組合せの抗精神病活性の条件回避応答アッセイ
実施例1のプロトコールを、非定型抗精神病薬オランザピンおよびR,R,R-DHTBZで実施した。
【0068】
試験化合物:オランザピン(0.3、0.6、1および3mg/kg)を10%DMSOに溶解させ、試験の30分前に用量体積1ml/kgでi.p.投与した。
【0069】
R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)を、滅菌水に溶解させ、試験の30分前に用量体積1ml/kgでp.o.投与し、その直後にオランザピンまたはそのビヒクルを投与した。10%DMSO(i.p.、30分間の前処理、1ml/kg)、その直後に滅菌水(p.o.、1ml/kg)を投与し、ビヒクル対照群として使用した。
【0070】
結果:オランザピン(0.6mg/kg)またはR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)を単独で投与すると、ビヒクルと比較して逃避回数は増大しなかった。オランザピン(0.6mg/kg)およびR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)の組合せは、単独で投与した場合に有効性を示さない用量で、ビヒクルと比較して逃避回数を有意に増大した。この知見は、組合せに起因して抗精神病活性に対する相乗効果があることを強力に示唆している。
【0071】
さらに、R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)をオランザピンに添加すると、抗精神病効果をもたらすのに必要なオランザピンの量が低減された。単独で投与する場合、CARパラダイムにおいて抗精神病有効性を示すのに、用量1mg/kgのオランザピンが必要であった。R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)をオランザピンに添加すると、より低用量のオランザピン(0.6mg/kg)で抗精神病活性が得られた。この知見は、組合せに起因して抗精神病活性に対する相乗効果があることを強力に示唆している。
【0072】
図3は、VMAT2阻害剤であるR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせた抗精神病薬オランザピン(0.6mg/kg)の組合せに関する、条件回避試験における逃避の統計的に有意な著しい増大を表すグラフを示す。組合せで使用したのと同じ用量で単独で投与したオランザピン(0.6mg/kg)およびR,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)は、ビヒクルの結果と変わらなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0073】
図4は、ラットに単独で投与したオランザピン(0.3、0.6、1.0、および3.0mg/kg)と比較して、R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせて投与したオランザピン(0.3、0.6、1.0、および3.0mg/kg)のED50値の変化を示す。化合物に対する最大応答の50%をもたらすのに必要な化合物の用量としてフィッティングした曲線から算出したオランザピンのED50値は、オランザピンを単独で投与したときの1.2mg/kgの値から、オランザピンをVMAT2阻害剤R,R,R-DHTBZ(0.15mg/kg)と組み合わせて投与したときの0.51mg/kgまで、およそ2分の1に低下した。この2分の1までの低下は、オランザピン用量の50%の低減に相当する。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0074】
(実施例3)
リスペリドン、化合物5-1およびそれらの組合せの抗精神病活性の条件回避応答アッセイ
実施例1のプロトコールを、非定型抗精神病薬リスペリドンおよび化合物5-1(化合物5-1の合成については実施例5を参照)で実施した。
【0075】
試験化合物:リスペリドン(0.1、0.3、および1mg/kg)を10%DMSOに溶解させ、試験の30分前に用量体積1ml/kgでi.p.投与した。化合物5-1(0.3mg/kg)を、滅菌水に溶解させ、試験の60分前、すなわちリスペリドンまたはそのビヒクルの投与の30分前に用量体積1ml/kgでp.o.投与した。ビヒクル対照群には、滅菌水を投与し(p.o.、1ml/kg)、その30分後に10%DMSOを投与した(i.p.、30分間の前処理、1ml/kg)。
【0076】
結果:リスペリドン(0.1mg/kg)または化合物5-1(0.3mg/kg)を単独で投与すると、ビヒクルと比較して逃避回数は増大しなかった。リスペリドン(0.1mg/kg)および化合物5-1(0.3mg/kg)の組合せは、単独で投与しても有効性を示さない用量で、ビヒクルと比較して逃避回数を有意に増大した。この知見は、リスペリドンおよび化合物5-1の組合せを投与すると、抗精神病活性に対して相乗効果があることを強力に示唆している。
【0077】
さらに、化合物5-1(0.3mg/kg)をリスペリドンに添加すると、抗精神病効果をもたらすのに必要なリスペリドンの量が低減された。単独で投与する場合、CARパラダイムにおいて抗精神病有効性を示すのに、用量0.3mg/kgのリスペリドンが必要であった。化合物5-1(0.3mg/kg)をリスペリドンに添加すると、はるかに低用量のリスペリドン(0.1mg/kg)で抗精神病活性が得られた。この知見は、抗精神病活性に対して組合せの相乗効果があることを強力に示唆している。
【0078】
図5は、VMAT2阻害剤化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせた抗精神病薬リスペリドン(0.1mg/kg)の組合せに関する、条件回避試験における逃避の統計的に有意な著しい増大を表すグラフを示す。組合せで使用したのと同じ用量で単独で投与したリスペリドン(0.1mg/kg)および化合物5-1(0.3mg/kg)は、ビヒクルの結果と変わらなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0079】
図6は、ラットに単独で投与したリスペリドン(0.1、0.3および1.0mg/kg)と比較して、化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせて投与したリスペリドン(0.1mg/kg)の用量の変化を示す。8回の逃避を生じさせるのに必要な化合物の用量としてフィッティングした直線から算出したリスペリドンの用量は、リスペリドンを単独で投与したときの0.26mg/kgの値から、リスペリドンをVMAT2阻害剤である化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせて投与したときの0.038mg/kgまで、およそ7分の1に低下した。この7分の1までの低下は、リスペリドン用量の86%の低減に相当する。化合物5-1(0.3mg/kg)は、ビヒクルに類似しており、単独で投与すると抗精神病活性を示さなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0080】
(実施例4)
オランザピン、化合物5-1およびそれらの組合せの抗精神病活性の条件回避応答アッセイ
実施例1および2に記載のプロトコールを、非定型抗精神病薬オランザピンおよび化合物5-1(実施例5を参照)で実施した。
【0081】
試験化合物:オランザピン(0.6、1および3mg/kg)を10%DMSOに溶解させ、試験の30分前に用量体積1ml/kgでi.p.投与した。化合物5-1(0.3mg/kg)を、滅菌水に溶解させ、試験の60分前、すなわちオランザピンまたはそのビヒクルの投与の30分前に用量体積1ml/kgでp.o.投与した。ビヒクル対照群には、滅菌水を投与し(p.o.、1ml/kg)、その30分後に10%DMSOを投与した(i.p.、30分間の前処理、1ml/kg)。
【0082】
結果:オランザピン(0.6mg/kg)または化合物5-1(0.3mg/kg)を単独で投与すると、ビヒクルと比較して逃避回数は増大しなかった。オランザピン(0.6mg/kg)および化合物5-1(0.3mg/kg)の組合せは、単独で投与しても有効性を示さない用量で、ビヒクルと比較して逃避回数を有意に増大した。この知見は、オランザピンおよび化合物5-1の組合せを投与すると、抗精神病活性に対して相乗効果があることを強力に示唆している。
【0083】
さらに、化合物5-1(0.3mg/kg)をオランザピンと組み合わせると、抗精神病効果をもたらすのに必要なオランザピンの量が低減された。単独で投与する場合、CARパラダイムにおいて抗精神病有効性を示すのに、用量1mg/kgのオランザピンが必要であった。化合物5-1(0.3mg/kg)をオランザピンに添加すると、より低用量のオランザピン(0.6mg/kg)で抗精神病活性が得られた。この知見は、抗精神病活性に対して組合せの相乗効果があることを強力に示唆している。
【0084】
図7は、VMAT2阻害剤である化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせた抗精神病薬オランザピン(0.6mg/kg)の組合せに関する、条件回避試験における逃避の統計的に有意な著しい増大を表すグラフを示す。組合せで使用したのと同じ用量で単独で投与したオランザピン(0.6mg/kg)および化合物5-1(0.3mg/kg)は、ビヒクルの結果と変わらなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0085】
図8は、ラットに単独で投与したオランザピン(0.6、1および3mg/kg)と比較した場合の、化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせて投与したオランザピン(0.6mg/kg)の用量の変化を示す。5回の逃避を生じさせるのに必要な化合物の用量としてフィッティングした直線から算出したオランザピンの用量は、オランザピンを単独で投与したときの0.93mg/kgの値から、オランザピンをVMAT2阻害剤化合物5-1(0.3mg/kg)と組み合わせて投与したときの0.18mg/kgまで、およそ7分の1に低下した。この5分の1までの低下は、オランザピン用量の80%の低減に相当する。化合物5-1(0.3mg/kg)は、ビヒクルに類似しており、単独で投与すると抗精神病活性を示さなかった。これらの知見は、組合せの相乗作用に起因して抗精神病活性があることを強力に示唆している。
【0086】
(実施例5)
[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール
【化1】
【0087】
ステップ5A:(3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-カルボニトリル
3Lの三つ口丸底フラスコに、DMSO(1.1L)およびTOSMIC(104g、532.5mmol、1.3当量)を充填した。この混合物に、KO-t-Bu(119.5g、1.065mol)を、周囲温度(22℃)で1度に充填した。発熱を観測し、混合物の温度を39℃に増大させた。次に、テトラベナジン(130g、410mmol)のDMSO(500mL)懸濁液を、反応混合物に、25分間かけてゆっくり添加した(わずかな発熱が観測された)。この混合物にEtOH(10.5mL)を添加し、混合物を周囲温度で3時間撹拌した。混合物のLC-MS分析によって、約4:1の比の5aと出発材料との存在が明らかになった。混合物を冷水(9L)に注ぎ入れた。次に、混合物をEtAOc(4L)で抽出した。水層をEtOAc(2L)で抽出した。合わせた有機物をブライン(2L)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。残留物をアセトン(200ml)に溶解させ、シリカカラムにロードした(シリカゲル2Kg、ヘキサンでパッキング)。カラムを、最初にヘキサン(2.5L)で、その後ヘキサン中5~20%のアセトンで溶出した。5aおよび他の不純物を含有する画分を合わせ、濃縮して、オレンジ色の油(72g)を得、それをアセトン(100ml)に溶解させ、シリカカラムにロードした(シリカゲル1Kg、ヘキサンでパッキング)。カラムを、最初にヘキサン(1L)で、その後ヘキサン(2L)中5%のアセトン、ヘキサン(2L)中10%のアセトン、ヘキサン(2L)中15%のアセトン、およびヘキサン(2L)中20%のアセトンで溶出した。>90%純度を含有する画分を合わせ、濃縮して、(3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-カルボニトリル5aをオレンジ色の固体として得た(61g、m/z329.2[MH])。5aおよび出発材料の混合物を含有する画分を収集し、濃縮して、材料48gを得、先に示されているように、それをDMSO(50ml)に溶解させ、DMSO(250ml)中TOSMIC(25g)およびKO-t-Bu(28.7g)の混合物に添加した。残留物をアセトン(10ml)に溶解させ、シリカカラムにロードした(シリカゲル600g、ヘキサンでパッキング)。カラムを、最初にヘキサン(800ml)で、その後ヘキサン中5~20%のアセトンで溶出した。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、オレンジ色の固体5aを得た(33g)。
【0088】
ステップ5B:(3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-カルボン酸
1ガロンの圧力反応器に、5a(94g、286mmol)のメタノール(940ml)懸濁液および水(940ml)中のNaOH(343g、8.6mol)を充填した。この混合物を120℃(内部温度)で67時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、丸底フラスコに移した。混合物を、ロータリーエバポレーター内で約1Lに濃縮した。次に、混合物を冷却しながら、6NのHCl水溶液を使用してpH7に調整した。混合物をDCM(2×3Lおよび1×2L)で抽出した。合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濃縮して、暗色の残留物(88g)を得た。暗色の残留物をアセトニトリル(500ml)に溶かし、30分間撹拌した。混合物を濾過し、固体をアセトニトリル(50ml)で洗浄した。固体を真空下で2時間乾燥させて、薄褐色の固体を得た(42g、49%)。この固体を濾液と合わせ、濃縮して残留物を得た。残留物をDCM(150ml)に溶解させ、DCMでパッキングしたシリカカラムにロードした。カラムを、DCM中0~25%のメタノールで溶出した。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、(3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-カルボン酸5bを淡褐色の固体として得た(71g、収率71%、純度92%、m/z348.2[MH])。
【0089】
ステップ5C:[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール
3Lの丸底フラスコに、5b(73.5g、211.5mmol)およびTHF(1.48L)を充填した。この混合物を撹拌し、10℃(内部温度)に冷却した。この混合物に、20℃未満の温度を維持しながら、THF(423ml、423mmol)中1MのLAHを20分間かけてゆっくり添加した。冷却浴を取り除き、混合物を室温に温めた。混合物を55℃に加熱し、30分間撹拌した。混合物を室温に、次に10℃に冷却した。EtOAc(30ml)をゆっくり添加して、未反応のLAHをクエンチした後、エタノール(30ml)を添加した。次に、水(150ml)をこの混合物に添加した。次に、混合物を濃縮して、有機溶媒の大部分を除去した。次に、混合物を、水(700ml)およびDCM(1L)で希釈した。懸濁液を、セライトパッドを介して濾過した。濾過したケーキを、DCM(2×500ml)で洗浄した。合わせた濾液を分液漏斗に取り込み、層を分離した。水層をDCM(1L)で抽出した。合わせた有機物をNaSOで乾燥させ、濃縮して、暗色の残留物を得た。残留物を、シリカカラムにより、溶出液としてDCM中0~10%のメタノールを使用してクロマトグラフ処理した。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮して、発泡性のオレンジ色の残留物を得た。この残留物に、ヘキサン(100ml)を添加し、減圧下で45℃において2時間濃縮して、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール(5-1)(本明細書では化合物5-1とも呼ばれる)を淡褐色の固体として得た(51g、72%、220nmによるHPLC純度95%、m/z334.2[MH])。この材料を、シリカゲルクロマトグラフィーによって、溶出液としてDCMまたは酢酸エチル中0~10%のメタノールを使用してさらに精製することができる。
【0090】
ステップ5D:[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールHCl塩
2Lの丸底フラスコに、5-1(43g、129mmol)およびジエチルエーテル(860mL)を充填した。この混合物を撹拌し、15℃(内部温度)に冷却した。この混合物に、ジエチルエーテル(97ml、193mmol)中2MのHClを15分間かけてゆっくり添加した。白色の沈殿物が形成された。冷却浴を取り除き、混合物を室温に温めた。次に、混合物を45分間撹拌した。混合物を濾過し、濾過した固体を、ジエチルエーテル(100ml)、MTBE(100ml)、次にヘキサン(100ml)で洗浄した。次に、固体を、真空オーブン中で40℃において18時間乾燥させた。[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノールHCl塩(5-1HCl)を、オフホワイトの固体として単離した(44.7g、収率94%、m/z334.2[MH])。
【0091】
(実施例6)
化合物のVMAT2阻害活性を決定する方法
VMAT2を阻害する化合物の能力を決定する技法の例を、以下に提示する。
【0092】
手順は、過去に記載のものから採用する(例えば、Near(1986年)、Mol.
Pharmacol. 30巻:252~57頁;Tengら、J. Neurochem. 71巻、258~65頁、1998年参照)。ヒト血小板またはSprague-Dawley系ラットの前脳のホモジネートを、過去に記載の通りホモジナイゼーションによって調製し、次に遠心分離によって洗浄した(例えば、Hoareら、(2003年) Peptides 24巻:1881~97頁参照)。低結合96ウェルプレート(Corning番号3605)において、総体積0.2mLで、12種類の濃度の化合物5-1およびR,R,R-DHTBZを、6nMのH-ジヒドロテトラベナジン(American Radiolabeled Chemicals、Kd2.6nM)と、ラット前脳ホモジネート(1ウェル当たり膜タンパク質100μg)またはヒト血小板ホモジネート(1ウェル当たり膜タンパク質50μg)上、VMAT2結合バッファー(ダルベッコリン酸緩衝食塩水、1mMのEDTA、pH7.4)中で、競合させた。25℃で2時間インキュベートした後、結合した放射性リガンドを、GF/Bガラス繊維フィルター上で、Unifilter-96 Harvester(PerkinElmer)を使用して急速に濾過することによって収集した。フィルタープレートを、0.1%ポリエチレンイミンで10分間事前処理し、回収した後、フィルタープレートを、VMAT2結合バッファー800μlで洗浄した。結合した放射性リガンドを、シンチレーション計数によって、Topcount NXT(PerkinElmer)を使用して定量化した。競合結合研究の結果を、以下の表3および表4に提示する。
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
VMAT2を阻害する化合物の能力を決定するために普通に実施され得る別の技法を、以下に提示する。以下の手順は、過去に記載された方法から採用する(Tengら、J.
Neurochem. 71巻、258~65頁、1998年参照)。
【0095】
ラット線条体小胞の調製:3匹のラットのラット線条体をプールし、0.32Mスクロース中でホモジナイズする。次に、ホモジネートを、2,000×gで4℃において10分間遠心分離し、得られた上清を、10,000×gで4℃において30分間遠心分離する。富化シナプトソーム画分(2mL)を含有する、得られたペレットを、蒸留HO 7mLを添加することによって浸透圧ショックに供し、その後、懸濁液をホモジナイズする。浸透圧濃度を、0.25MのHEPES 0.9mLおよび1.0Mの中性L-(+)-酒石酸二カリウム塩バッファー(pH7.5)0.9mLを添加することによって回復させ、その後20分間遠心分離する(20,000×g、4℃で)。次に、上清を60分間遠心分離し(55,000×g、4℃で)、得られた上清を、45分間遠心分離する(100,000×g、4℃で)。得られたペレットを、25mMのHEPES、100mMのL-(+)-酒石酸二カリウム塩、5mMのMgCl、10mMのNaCl、0.05mMのEGTA、pH7.5に再懸濁させて、タンパク質濃度を1~2mg/mLにし、-80℃で最長3週間保存しても、結合活性の喪失は認識されない。最終的なペレットを、使用直前に、結合バッファー(25mMのHEPES、100mMのL-(+)-酒石酸二カリウム塩、5mMのMgCl、10mMのNaCl、0.05mMのEGTA、0.1mMのEDTA、1.7mMのアスコルビン酸、pH7.4)に再懸濁させる。
【0096】
H]-ジヒドロテトラベナジン(DHTBZ)結合:一定分量の小胞懸濁液(0.16mL、タンパク質15μg/mL)を、競合化合物(10-6~10-12Mの範囲)および2nMの[H]-ジヒドロテトラベナジン(HTBZ;比活性:20Ci/mmol、American Radiolabeled Chemicals,Inc.)と共に、総体積0.5mLで室温において1時間インキュベートする。試料を、ワットマンGF/Fフィルター上で、Brandelセルハーベスターを使用して急速に濾過することによって、反応を終了させる。非特異的結合を、20μMテトラベナジン(TBZ)を使用して決定する。フィルターを、予め、氷冷したポリエチレンイミン(0.5%)に2時間浸しておく。フィルターを氷冷バッファーで3回洗浄した後、フィルターを、シンチレーションカクテル10mLを含むシンチレーションバイアルに入れる。結合放射活性を、シンチレーション分光法によって決定する。
【0097】
本明細書に記載の様々な実施形態は、組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。本明細書では、以下の例示的な実施形態が記載される。
【0098】
実施形態1。 対象における精神神経系障害を処置するための方法であって、前記対象に(a)抗精神病薬物および(b)VMAT2阻害剤を投与するステップを含み、ここで前記対象に投与される前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少ない、方法。
【0099】
実施形態2。 前記精神神経系障害が、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である、実施形態1に記載の方法。
【0100】
実施形態3。 前記抗精神病薬物および前記VMAT2阻害剤が、同時に投与される、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
【0101】
実施形態4。 前記抗精神病薬物および前記VMAT2阻害剤が、同じ医薬組成物に製剤化されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態5。 前記抗精神病薬物が、第1の医薬組成物に製剤化されており、前記VMAT2阻害剤が、第2の医薬組成物に製剤化されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態6。 前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態7。 前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、実施形態6に記載の方法。
【0105】
実施形態8。 前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態9。 前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、実施形態8に記載の方法。
【0107】
実施形態10。 前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも10~90%少ない、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態11。 前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態12。 前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態13。 前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、実施形態1から12のいずれか一つに記載の方法。
【0111】
実施形態14。 前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、実施形態1から12のいずれか一つに記載の方法。
【0112】
実施形態15。 前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、実施形態1から12のいずれか一つに記載の方法。
【0113】
実施形態16。 前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、実施形態1から12のいずれか一つに記載の方法。
【0114】
実施形態17。 前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、実施形態1から12のいずれか一つに記載の方法。
【0115】
実施形態18。 精神神経系障害の処置に使用するための、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物であって、前記VMAT2阻害剤の非存在下で使用される場合の治療量未満の量の前記抗精神病薬物を含む、医薬調製物。
【0116】
実施形態19。 前記精神神経系障害が、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である、実施形態18に記載の医薬調製物。
【0117】
実施形態20。 前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、実施形態18または実施形態19に記載の医薬調製物。
【0118】
実施形態21。 前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、実施形態20に記載の医薬調製物。
【0119】
実施形態22。 前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、実施形態18または実施形態19に記載の医薬調製物。
【0120】
実施形態23。 前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、実施形態22に記載の医薬調製物。
【0121】
実施形態24。 前記抗精神病薬物が、第1の医薬組成物に製剤化されており、前記VMAT2阻害剤が、第2の医薬組成物に製剤化されている、実施形態18~23のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0122】
実施形態25。 前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも10~90%少ない、実施形態18~24のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0123】
実施形態26。 前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない、実施形態18~24のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0124】
実施形態27。 前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で投与される場合の前記抗精神病薬物の前記治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない、実施形態18~24のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0125】
実施形態28。 前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、実施形態18から27のいずれか一つに記載の医薬調製物。
【0126】
実施形態29。 前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、実施形態18から27のいずれか一つに記載の医薬調製物。
【0127】
実施形態30。 前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、実施形態18から27のいずれか一つに記載の医薬調製物。
【0128】
実施形態31。 前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、実施形態18から27のいずれか一つに記載の医薬調製物。
【0129】
実施形態32。 前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、実施形態18から27のいずれか一つに記載の医薬調製物。
【0130】
実施形態33。 抗精神病薬物の有効性を増強するための方法であって、対象に(a)前記抗精神病薬物および(b)VMAT2阻害剤の組合せを投与するステップを含む、方法。
【0131】
実施形態34。 前記抗精神病薬物の有効性の増強が、前記抗精神病薬物の治療上有効な量を低減することを含む、実施形態33に記載の方法。
【0132】
実施形態35。 前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記抗精神病薬物が投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも10~90%少ない、実施形態33に記載の方法。
【0133】
実施形態36。 前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記抗精神病薬物が投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも25%少ない、実施形態33に記載の方法。
【0134】
実施形態37。 前記抗精神病薬物の治療上有効な量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記抗精神病薬物が投与される場合の前記抗精神病薬物の治療上有効な量よりも少なくとも50%少ない、実施形態33に記載の方法。
【0135】
実施形態38。 前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、実施形態33~37のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態39。 前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、実施形態38に記載の方法。
【0137】
実施形態40。 前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、実施形態33~37のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態41。 前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、実施形態40に記載の方法。
【0139】
実施形態42。 前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、請求33から41のいずれか一つに記載の方法。
【0140】
実施形態43。 前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、実施形態33から41のいずれか一つに記載の方法。
【0141】
実施形態44。 前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、実施形態33から41のいずれか一つに記載の方法。
【0142】
実施形態45。 前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、実施形態33から41のいずれか一つに記載の方法。
【0143】
実施形態46。 前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、実施形態33から41のいずれか一つに記載の方法。
【0144】
実施形態47。 精神神経系障害の処置に有効な、抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む医薬調製物であって、前記抗精神病薬物の量が、前記VMAT2阻害剤の非存在下で前記精神神経系障害を処置するために単独で使用される場合の前記抗精神病薬物の治療量と比較して治療量未満である、医薬調製物。
【0145】
実施形態48。 相乗的に有効な量の抗精神病薬物およびVMAT2阻害剤を含む、医薬調製物。
【0146】
実施形態49。 前記抗精神病薬物が、定型抗精神病薬物である、実施形態47または48に記載の医薬調製物。
【0147】
実施形態50。 前記定型抗精神病薬物が、フルフェナジン、ハロペリドール、ロキサピン、モリンドン、ペルフェナジン、ピモジド、スルピリド、チオリダジン、またはトリフロペラジンである、実施形態49に記載の医薬組成物。
【0148】
実施形態51。 前記抗精神病薬物が、非定型抗精神病薬物である、実施形態47または48に記載の医薬調製物。
【0149】
実施形態52。 前記非定型抗精神病薬物が、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、イロペリドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである、実施形態51に記載の医薬組成物。
【0150】
実施形態53。 前記VMAT2阻害剤が、テトラベナジン(3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン)である、実施形態47~52のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0151】
実施形態54。 前記VMAT2阻害剤が、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール(R,R,R DHTBZ)、またはその前駆体である、実施形態47~52のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0152】
実施形態55。 前記VMAT2阻害剤が、(S)-2-アミノ-3-メチル-酪酸(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イルエステルである、実施形態47~52のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0153】
実施形態56。 前記VMAT2阻害剤が、[(2R,3S,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-1H,2H,3H,4H,6H,7H,11bH-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-イル]メタノール、またはその前駆体である、実施形態47~52のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0154】
実施形態57。 前記VMAT2阻害剤が、3-イソブチル-9,10-d-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オン(d-TBZ)である、実施形態47~52のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0155】
実施形態58。 前記抗精神病薬物および前記VMAT2阻害剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、同じ医薬組成物に製剤化されている、実施形態47~57のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0156】
実施形態59。 前記抗精神病薬物が、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、第1の医薬組成物に製剤化されており、前記VMAT2阻害剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と共に、第2の医薬組成物に製剤化されている、実施形態47~58のいずれか1つに記載の医薬調製物。
【0157】
実施形態60。 前記精神神経系障害が、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、大うつ病性障害(MDD)、または自閉症である、実施形態47~59のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0158】
本明細書において言及され、かつ/または出願データシートに列挙されているあらゆる米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。2014年2月7日出願の米国特許出願第61/937,223号は、その全体が本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて様々な特許、特許出願および刊行物の概念を用いて改変して、なおさらなる実施形態を提供することができる。
【0159】
これらおよび他の変更は、先の詳細な説明に照らして実施形態に加えることができる。具体的な実施形態が、例示目的で本明細書に記載されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変を加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示されている具体的な実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、このような特許請求の範囲が権利を付与される等価物の完全な範囲と共に、あらゆる可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって制限されない。
図1
図2
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図5
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図7
図8
【外国語明細書】