(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032547
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ICタグ成型体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240305BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20240305BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240305BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G06K19/077 148
G06K19/077 144
G06K19/077 200
B29C65/48
B29C45/14
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136255
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
【テーマコード(参考)】
4F206
4F211
5F061
【Fターム(参考)】
4F206AD08
4F206AD19
4F206AD34
4F206AG05
4F206AH37
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JL02
4F206JQ81
4F211AA11
5F061AA02
5F061CA21
5F061CB02
5F061DA01
5F061DA11
(57)【要約】
【課題】使用環境によらずICタグの劣化を防止する。
【解決手段】ICタグ成型体1は、ICタグインレット2と、ICタグインレットを挟み込むと共に、その周囲を覆う第1樹脂部10及び第2樹脂部20と、を有し、第1樹脂部は、第1支持部と、第1支持部の周囲を囲い第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、第1凹部の周囲を囲い第1凹部に対して突出する第2凸部と、を有し、第2樹脂部は、第2支持部と、第1凹部に対向して当接し、且つ、第2支持部の外周を囲い第2支持部に対して突出する第3凸部と、第2凸部に対向して当接し、且つ、第3凸部の周囲を囲い第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグインレットと、
前記ICタグインレットを挟み込むと共に、その周囲を覆う第1樹脂部及び第2樹脂部と、
を有し、
前記第1樹脂部は、
前記ICタグインレットの一方の主面を支持する第1支持部と、
前記第1支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、
前記第1凹部の周囲を囲うように設けられて、前記第1凹部に対して突出する第2凸部と、
を有し、
前記第2樹脂部は、
前記ICタグインレットの前記一方の主面とは逆に他方の主面を支持する第2支持部と、
前記第1凹部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第2支持部に対して突出する第3凸部と、
前記第2凸部に対向して当接し、且つ、前記第3凸部の周囲を囲うように設けられて、前記第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、
を有する、ICタグ成型体。
【請求項2】
前記ICタグインレットは、フィルム状の基材と、前記基材上に設けられたアンテナと、前記基材上に設けられ、前記アンテナと接続されたICチップとを含む、請求項1に記載のICタグ成型体。
【請求項3】
前記ICタグインレットは、前記アンテナ及び前記ICチップを覆う第2フィルムを有する、請求項2に記載のICタグ成型体。
【請求項4】
前記第1支持部と、前記ICタグインレットとの間に第1接着層を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のICタグ成型体。
【請求項5】
前記第2支持部と、前記ICタグインレットとの間に第2接着層を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のICタグ成型体。
【請求項6】
前記第1支持部と前記第1凹部との間に設けられ、前記第1支持部に対して突出する第1凸部と、
前記第1凸部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部と前記第3凸部との間に設けられて、前記第2支持部よりも低い位置にある第2凹部と、
を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のICタグ成型体。
【請求項7】
ICタグインレットを第1金型に固定して、前記第1金型内に樹脂を導入して固化することによって、前記ICタグインレットの一方の主面を支持する第1支持部と、前記第1支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して突出する第2凸部と、を有する第1樹脂部と前記ICタグインレットとが一体化された第1成型体を成型することと、
前記第1成型体を第2金型に対して固定して、前記第2金型内に樹脂を導入して固化することによって、前記ICタグインレットの前記一方の主面とは逆に他方の主面を支持する第2支持部と、前記第1凹部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第2支持部に対して突出する第3凸部と、前記第2凸部に対向して当接し、且つ、前記第3凸部の周囲を囲うように設けられて、前記第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、を有する第2樹脂部と、前記第1成型体とを一体化することと、
を含む、ICタグ成型体の製造方法。
【請求項8】
前記ICタグインレットはフィルム状であって、
前記第1成型体を成型することにおいて、前記ICタグインレットを前記第1金型に対して吸引固定する、請求項7に記載のICタグ成型体の製造方法。
【請求項9】
前記ICタグインレットにおける前記第1支持部との対向面に、第1接着層が設けられている、請求項7または8に記載のICタグ成型体の製造方法。
【請求項10】
前記ICタグインレットにおける前記第2支持部との対向面に、第2接着層が設けられている、請求項7または8に記載のICタグ成型体の製造方法。
【請求項11】
前記第1樹脂部は、前記第1支持部と前記第1凹部との間に設けられ、前記第1支持部に対して突出する第1凸部を有し、
前記第2樹脂部は、前記第1凸部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部と前記第3凸部との間に設けられて、前記第2支持部よりも低い位置にある第2凹部を有する、請求項7または8に記載のICタグ成型体の製造方法。
【請求項12】
前記第2樹脂部と、前記第1成型体とを一体化することにおいて、前記第2金型内に導入された前記樹脂が、前記第1成型体の前記第1凹部を満たした後、前記第1凸部を乗り越えて前記ICタグインレットの表面を覆うように流入させる、請求項11に記載のICタグ成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ICタグ成型体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンテナ付きICチップを用いた非接触ICタグを用いた技術が種々検討されていて、その用途に応じてICタグ自体の加工方法の種々検討されている。例えば、特許文献1では、ICタグを金型内にインサートして樹脂によりインモールド成型する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ICタグの用途の拡大によって、高温多湿な環境など過酷な条件でのICタグの使用が想定され得る。しかしながら、従来検討されているICタグ成型体は、過酷な条件での使用が想定されておらず、ICタグの劣化が速くなる可能性がある。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、使用環境によらずICタグの劣化を防止することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係るICタグ成型体は、ICタグインレットと、前記ICタグインレットを挟み込むと共に、その周囲を覆う第1樹脂部及び第2樹脂部と、を有し、前記第1樹脂部は、前記ICタグインレットの一方の主面を支持する第1支持部と、前記第1支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲うように設けられて、前記第1凹部に対して突出する第2凸部と、を有し、前記第2樹脂部は、前記ICタグインレットの前記一方の主面とは逆に他方の主面を支持する第2支持部と、前記第1凹部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部の外周を囲うように設けられて、前記第2支持部に対して突出する第3凸部と、前記第2凸部に対向して当接し、且つ、前記第3凸部の周囲を囲うように設けられて、前記第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、を有する。
【0007】
上記のICタグ成型体によれば、ICタグインレットの一対の主面は第1樹脂部及び第2樹脂部によって覆われると共に、ICタグインレットの周囲は、第1樹脂部及び第2樹脂部によって内側から外側へ向けて凹凸が形成される。このように、第1樹脂部及び第2樹脂部の界面が凹凸によって形成されているため、水、水蒸気、ガス等の、ICタグとしての機能に影響を与える異物が外部から侵入することを防ぐことができる。したがって、上記のICタグ成型体によれば、使用環境によらずICタグの劣化を防止することが可能となる。
【0008】
前記ICタグインレットは、フィルム状の基材と、前記基材上に設けられたアンテナと、前記基材上に設けられ、前記アンテナと接続されたICチップとを含む態様であってもよい。フィルム状の基材にアンテナ及びICチップが設けられたICタグインレットを用いることでICタグ成型体の小型化が可能となることに加えて、基材が可撓性を有することで、外部から受ける応力を受けて基材が破損すること等を防ぐことができる。
【0009】
前記ICタグインレットは、前記アンテナ及び前記ICチップを覆う第2フィルムを有する態様であってもよい。上記のように第2フィルムを有することで、アンテナ及びICチップの破損をさらに防ぐことができる。
【0010】
前記第1支持部と、前記ICタグインレットとの間に第1接着層を有する態様であってもよい。上記のように、第1支持部とICタグインレットとの間に第1接着層を設けることで、第1樹脂部とICタグインレットとの間の密着性が高まり、ICタグの劣化を防止することができる。
【0011】
前記第2支持部と、前記ICタグインレットとの間に第2接着層を有する態様であってもよい。上記のように、第2支持部とICタグインレットとの間に第2接着層を設けることで、第2樹脂部とICタグインレットとの間の密着性が高まり、ICタグの劣化を防止することができる。
【0012】
前記第1支持部と前記第1凹部との間に設けられ、前記第1支持部に対して突出する第1凸部と、前記第1凸部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部と前記第3凸部との間に設けられて、前記第2支持部よりも低い位置にある第2凹部と、を有する態様であってもよい上記のように、第1凸部及び第2凹部をさらに有することによって、外部からの異物の侵入をさらに防ぐことができるため、ICタグの劣化をさらに防止することが可能となる。
【0013】
本開示の一形態に係るICタグ成型体の製造方法は、ICタグインレットを第1金型に固定して、前記第1金型内に樹脂を導入して固化することによって、前記ICタグインレットの一方の主面を支持する第1支持部と、前記第1支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲うように設けられて、前記第1凹部に対して突出する第2凸部と、を有する第1樹脂部と前記ICタグインレットとが一体化された第1成型体を成型することと、前記第1成型体を第2金型に対して固定して、前記第2金型内に樹脂を導入して固化することによって、前記ICタグインレットの前記一方の主面とは逆に他方の主面を支持する第2支持部と、前記第1凹部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部の外周を囲うように設けられて、前記第2支持部に対して突出する第3凸部と、前記第2凸部に対向して当接し、且つ、前記第3凸部の周囲を囲うように設けられて、前記第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、を有する第2樹脂部と、前記第1成型体とを一体化することと、を含む。
【0014】
上記のICタグ成型体の製造方法によれば、ICタグインレットの一対の主面は第1樹脂部及び第2樹脂部によって覆われると共に、ICタグインレットの周囲は、第1樹脂部及び第2樹脂部によって内側から外側へ向けて凹凸が形成される。このように、第1樹脂部及び第2樹脂部の界面が凹凸によって形成されているため、外部から水、水蒸気、ガス等、ICタグとしての機能に影響を与える異物が外部から侵入することを防ぐことができる。したがって、上記のICタグ成型体の製造方法によれば、使用環境によらずICタグの劣化が防止されたICタグ成型体を製造することが可能となる。
【0015】
前記ICタグインレットはフィルム状であって、前記第1成型体を成型することにおいて、前記ICタグインレットを前記第1金型に対して吸引固定する態様であってもよい。このような構成とすることで、フィルム状のICタグを第1樹脂部と一体化する際に、皺の発生を抑制することができる。
【0016】
前記ICタグインレットにおける前記第1支持部との対向面に、第1接着層が設けられている態様であってもよい。上記の構成とすることで、第1支持部とICタグインレットとの間に第1接着層が設けられるため、第1樹脂部とICタグインレットとの間の密着性が高まり、ICタグの劣化を防止することができる。
【0017】
前記ICタグインレットにおける前記第2支持部との対向面に、第2接着層が設けられている態様であってもよい。上記の構成とすることで、第2支持部とICタグインレットとの間に第2接着層が設けられるため、第2樹脂部とICタグインレットとの間の密着性が高まり、ICタグの劣化を防止することができる。
【0018】
上述の製造方法によって製造されるICタグ成型体は、前記第1支持部と前記第1凹部との間に設けられ、前記第1支持部に対して突出する第1凸部と、前記第1凸部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部と前記第3凸部との間に設けられて、前記第2支持部よりも低い位置にある第2凹部と、を有する態様であってもよい上記のように、第1凸部及び第2凹部をさらに有するICタグ成型体では、外部からの異物の侵入をさらに防ぐことができるため、ICタグの劣化をさらに防止することが可能となる。
【0019】
前記第2樹脂部と、前記第1成型体とを一体化することにおいて、前記第2金型内に導入された前記樹脂が、前記第1成型体の前記第1凹部を満たした後、前記第1凸部を乗り越えて前記ICタグインレットの表面を覆うように流入させる態様であってもよい。このような構成とすることで、樹脂によってICタグインレットが移動することを防ぐように、樹脂の流速を調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、使用環境によらずICタグの劣化を防止することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)、
図1(b)は、ICタグ成型体の形状を説明する図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib矢視図及びIc-Ic矢視図に対応する。
【
図2】
図2(a)、
図2(b)は、ICタグ成型体の形状を説明する図である。
【
図3】
図3は、ICタグ成型体の製造方法を説明するフロー図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(f)は、ICタグ成型体の製造方法を模式的に示す図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(f)は、ICタグ成型体の製造方法を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るICタグ成型体の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、説明のために、
図1及び
図2ではXYZ直交座標系を示している。
【0023】
[ICタグ成型体]
図1はICタグ成型体の形状を説明する図である。
図1(a)及び
図1(b)に示されるようにICタグ成型体1は、ICタグインレット2と、第1樹脂部10と、第2樹脂部20と、を含んで構成される。
【0024】
ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification)において使用される。ICタグは、ICチップとアンテナとを含んで構成されていて、例えば、RFIDリーダーのアンテナから電波を送信すると、ICタグのアンテナがこの電波を受信することによって、ICチップが駆動する。そして、ICチップ内の情報がアンテナから信号として送信され、RFIDリーダーがこれを受信することで、ICチップ内の情報がRFIDリーダーへ受け渡される。同様にアンテナを介した情報の送受信を行うことで、RFIDライターによってICチップに保持される情報を書き換えることもできる。このようにICタグは、RFIDにおいて、情報を保持する媒体として使用され得る。ICタグ成型体1は、このICタグとしての機能を有する成型体である。ICタグ成型体1は、厚さが1mm~5mm程度の平板状である。本実施形態では、ICタグ成型体1が、長手方向90mm(X方向)×短手方向50mm(Y方向)の長方形の主面を有する場合について説明する。ただし、この形状は一例であり、特に限定されない。
【0025】
ICタグインレット2(ICタグインレイ)は、一対の主面2a,2bを有していて、
図1(a)に示すようにアンテナ2cとICチップ2dとがフィルム状の基材2e上で接続されたものである。ICタグインレット2の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる。具体的には基材2eの表面にアンテナ2c及びIC(集積回路)がICチップ2dとして固定され、これらが接続されることで、ICタグインレット2が形成される。ICタグインレット2は、例えば、厚さが0.1mm程度の薄膜状であり、基材2eは可撓性を有したフィルムであってもよい。本実施形態では、ICタグインレット2の一対の主面2a,2bは、長手方向57mm(X方向)×短手方向25mm(Y方向)の長方形である場合について説明する。なお、ICタグインレット2の大きさは特に限定されない。
【0026】
第1樹脂部10及び第2樹脂部20は、ICタグインレット2の一対の主面2a,2bを挟み込むように構成される。第1樹脂部10は、図示上方(Z軸正方向)の主面2a側を覆うように設けられ、第2樹脂部20は、図示下方(Z軸負方向)の主面2b側を覆うように設けられる。すなわち、ICタグインレット2を挟んで第1樹脂部10と第2樹脂部20とが対向して配置される。
図1(a)に示すように、第1樹脂部10及び第2樹脂部20の内部にICタグインレット2が封入された状態とされる。
【0027】
図1(b)及び
図2(a)を参照しながら第1樹脂部10について説明する。
図2(a)は、ICタグ成型体1から第2樹脂部20を除去した状態を示す図である。第1樹脂部10は、主面が長方形の板状の部材である。一対の主面のうち、図示上方の主面10aは平坦面である。一方、主面10aとは反対側の主面には、第1支持部11と、第1凸部12と、第1凹部13と、第2凸部14と、が形成されている。
【0028】
第1支持部11は、ICタグインレット2の主面2aに対向するように設けられる。第1支持部11は主面2aと同一形状となっている。第1支持部11は、主面10aと同様にXY平面に沿って広がっている。XY平面は、ICタグ成型体1の一対の主面となる、第1樹脂部10の主面10a、及び、第2樹脂部20の主面20aの延在方向に相当する。
【0029】
第1凸部12は、第1支持部11の外方に設けられて、第1支持部11の全周を囲うように環状に形成されている。第1凸部12は、第1支持部11に対して下方(Z軸負方向)に突出した位置に設けられ、XY平面に沿って広がっている。第1支持部11と第1凸部12との間には、側壁面19aが形成される。
【0030】
第1凹部13は、第1凸部12の外方に設けられて、第1凸部12の全周を囲うように環状に形成されている。第1凹部13は、その高さ位置が第1凸部12及び外周側の第2凸部14に対して上方(Z軸正方向)、すなわち、第1凸部12及び第2凸部14との間に溝が形成されるように構成されている。溝となる第1凹部13は、XY平面に沿って広がっている。第1凸部12と第1凹部13との間には側壁面19bが形成される。
【0031】
第2凸部14は、第1凹部13の外方に設けられて、第1凹部13の全周を囲うように環状に形成されている。第2凸部14は、第1凹部13に対して下方(Z軸負方向)に突出した位置に設けられ、XY平面に沿って広がっている。第1凹部13と第2凸部14との間には側壁面19cが形成される。第2凸部14は第1樹脂部10の最外周に設けられ、第2凸部14の外縁は第1樹脂部10の外縁と一致する。
【0032】
上記のように、第1樹脂部10は、ICタグインレット2と接する第1支持部11を囲うように、環状の第1凸部12、第1凹部13及び第2凸部14が内周から外周へ向けてこの順に配置されている。なお、側壁面19a~19cは、第1支持部11等が延在するXY平面に対して直交する方向に延びていてもよいが、垂直方向(Z軸方向)に対して僅かに(例えば、数°~20°程度)傾斜していてもよい。一例として、側壁面19a~19cは、それぞれXY平面に対して10°傾いて形成されていてもよい。
【0033】
上記の第1樹脂部10及び第2樹脂部20を構成する樹脂は特に限定されず、一般的な樹脂材料を用いることができる。ただし、後述の製造方法のように、ICタグ成型体1は、ICタグインレット2を金型の内部に固定したインサートモールド成型によって製造される。したがって、ICタグインレット2自体が破損しない温度(例えば、260℃以下)で成型が可能な樹脂が選択される。
【0034】
また、上記の第1樹脂部10及び第2樹脂部20を構成する樹脂としては、ICタグ成型体1の破損等を防ぐ目的から、耐衝撃性、耐熱性、剛性等が高い材料を選択することが考えられる。また、ICタグ成型体1を屋外に設置する場合などには、紫外線等による劣化が起きにくい材料を選択してもよい。一例として、ICタグ成型体1の第1樹脂部10と第2樹脂部20として、ブロックポリプロピレン樹脂を用いることができる。なお、第1樹脂部10と第2樹脂部20とは、互いに異なる樹脂材料によって構成されていてもよいが、同一種類の樹脂材料を用いる場合、第1樹脂部10と第2樹脂部20との密着性が向上すると考えられる。
【0035】
次に、
図1(b)及び
図2(b)を参照しながら第2樹脂部20について説明する。
図2(b)は、ICタグ成型体1から第1樹脂部10を除去した状態を示す図である。第2樹脂部20は、主面が長方形の板状の部材である。一対の主面のうち、図示下方の主面20aは平坦面である。一方、主面20aとは反対側の主面には、第2支持部21と、第2凹部22と、第3凸部23と、第3凹部24と、が形成されている。
【0036】
第2支持部21は、ICタグインレット2の主面2aに対向するように設けられる。第2支持部21は主面2aと同一形状となっている。すなわち、第2支持部21と第1支持部11とは同一形状である。
【0037】
第2凹部22は、第2支持部21の外方に設けられて、第2支持部21の全周を囲うように環状に形成されている。第2凹部22は、第2支持部21に対して下方(Z軸負方向)に位置し、XY平面に沿って広がるように構成されている。第2凹部22の幅は、第1凸部12と同一である。第2支持部21と第2凹部22との間には、側壁面29aが形成される。
【0038】
第3凸部23は、第2凹部22の外方に設けられて、第2凹部22の全周を囲うように環状に形成されている。第3凸部23は、第2凹部22に対して上方(Z軸正方向)に突出するように構成されている。第3凸部23の幅は、第1凹部13と同一となる。第2凹部22と第3凸部23との間には、側壁面29bが形成される。
【0039】
第3凹部24は、第3凸部23の外方に設けられて、第3凸部23の全周を囲うように環状に形成されている。第3凹部24は、第3凸部23に対して下方(Z軸負方向)に位置し、XY平面に沿って広がるように構成されている。第3凹部24の幅は、第2凸部14と同一である。第3凸部23と第3凹部24との間には、側壁面29cが形成される。
第3凹部24は第2樹脂部20の最外周に設けられ、第3凹部24の外縁は第2樹脂部20の外縁と一致する。
【0040】
上記のように、第2樹脂部20は、ICタグインレット2と接する第2支持部21を囲うように、環状の第2凹部22、第3凸部23及び第3凹部24が内周から外周へ向けてこの順に配置されている。側壁面29a~29cは、ICタグ成型体1ではそれぞれ側壁面19a~19cと当接した状態となるので、側壁面19a~19cと同じ傾斜角を持つことになる。
【0041】
ICタグ成型体1としては、第1樹脂部10と第2樹脂部20とがICタグインレット2を挟んだ状態で一体化されている。このとき、
図1(b)等に示すように、第1凸部12と第2凹部22とが接した状態となり、第1凹部13と第3凸部23とが接した状態となり、第2凸部14と第3凹部24とが接した状態となる。
図1(b)に示すように、第1凸部12と第2凹部22とが対向する位置は、ICタグインレット2よりも図示下方(Z軸負方向)となり、その外周の第1凹部13と第3凸部23とが対向する位置は、ICタグインレット2よりも図示上方(Z軸正方向)となる。さらに、その外周の第2凸部14と第3凹部24とが対向する位置は、ICタグインレット2よりも図示下方(Z軸負方向)となる。このように、第1樹脂部10と第2樹脂部20とが直接接する面の高さ位置は、ICタグインレット2の周縁から外周縁へ向かうにつれて、ICタグインレット2が保持されている位置に対して上下方向に変化している。そのため、第1樹脂部10と第2樹脂部20との境界面を伝って、水分またはガス等の異物が侵入しにくい構造となっている。
【0042】
[ICタグ成型体の製造方法]
次に、
図3~
図5を参照しながら、ICタグ成型体1の製造方法について説明する。
図3は、ICタグ成型体1の製造方法を説明するフロー図である。ICタグ成型体1は、ICタグインレット2を金型内に収容した状態で樹脂部分を成型するインサートモールド成型を2段階行うことによって製造される。
図4及び
図5は、製造工程の途中の状態を示す図である。なお、
図4(a)と
図4(b)とは同じタイミングにおける金型の断面図と上面図とを示している。同様に、
図4(c)及び
図4(d)、
図4(e)及び
図4(f)、
図5(a)及び
図5(b)、
図5(c)及び
図5(d)、
図5(e)及び
図5(f)は、それぞれ同じタイミングを示している図である。
【0043】
図3に示す製造方法のうち、ステップS01~ステップS03は、第1金型を用いた1段階目のインサートモールド成型に係る手順である。まず、ステップS01では、第1金型91を準備し、ICタグインレット2を第1金型91に対して固定する。
図4(a)に示すように、第1金型91は、例えば、下金型92と上金型93とによって構成される。また、下金型92は、第2樹脂部20の第2支持部21、第2凹部22、第3凸部23、及び、及び、第3凹部24に対応する凹凸として、平坦部92a、第1溝部92b、第1突出部92c、及び、第2溝部92dが形成されている。
図4(b)にも示されるように、第1溝部92b、第1突出部92c、及び、第2溝部92dの形状は、第2樹脂部20と同様にそれぞれ環状に形成されている。また、第2溝部92dの周囲は、第1樹脂部10の外形に対応するように下金型92が配置されているが、その一部が切り欠かれていて、内部に樹脂を導入するための導入口94が形成されている。導入口94は、第2溝部92dの外周側、つまり、下金型92の側面の一部を切り欠くように形成される。なお、導入口94の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の導入口94を設ける場合、下金型92の周囲に分散するように、つまり成型後の第1樹脂部10を囲むように分散して設けられていてもよい。
【0044】
平坦部92aには、ICタグインレット2を吸引固定するための吸引孔92fが設けられる。吸引孔92fに対して吸引装置(図示せず)が接続される。吸引孔92fは、第1金型91の内部の所定位置に薄膜状のICタグインレット2を安定して固定するための配置となっていればよく、例えば、平面視(
図4(b)参照)において、長方形のICタグインレット2の4つの頂点の近傍に配置されていてもよい。また、ICタグインレット2の大きさによっては、例えば、長手方向に複数(例えば、2~5個程度)の吸引孔92fを配置する構成としてもよい。
【0045】
上金型93は、第1樹脂部10の主面10aに対応する位置に設けられる。平坦部92aに対してICタグインレット2を吸引固定した状態で、下金型92の上方に上金型93を配置することで、内部が第1樹脂部10に対応した形状の空間となる。なお、
図4(a)では上金型93を示しているが、以降の図面では上金型93を省略している。なお、成型方法によっては、上金型93を使用せず下金型92のみで成型を行う構成としてもよい。
【0046】
図4(a)に示されるように、平坦部92a上にICタグインレット2を配置した状態で、吸引装置により下金型92内部の空気を吸引することで、平坦部92a上のICタグインレット2を平坦部92aに対して吸引固定することができる。吸引装置によるICタグインレット2の吸引固定は、第1金型91を用いた成型が完了するまで継続される。
【0047】
次に、ステップS02では、第1金型91内に第1樹脂部10を形成する樹脂を導入する。
図4(a)に示すように、導入口94から樹脂Rを流し込む。このとき、樹脂Rは、
図4(b)に示すように、外周側の環状の第2溝部92dを満たすように移動し、第2溝部92dの凹部を樹脂Rで満たした後に内側の第1突出部92cを乗り越えるように広がる。その次に、環状の第1突出部92cの内側に設けられた環状の第1溝部92bを満たすように樹脂Rが広がる。その後、第1溝部92bの凹部を満たした後に、樹脂Rは、
図4(c)及び
図4(d)に示すように、平坦部92a上に吸引固定されたICタグインレット2の上面を埋めるように広がる。第1溝部92bの凹部を満たした後に樹脂Rが内側へ広がる場合、
図4(d)に示すように、樹脂RはICタグインレット2の外周の全周から中心へ広がるように広がっていき、最終的には
図4(e)及び
図4(f)に示すように、ICタグインレット2の上方の全てが樹脂Rによって覆われる。このように、樹脂RがICタグインレット2の周囲から均等にICタグインレット2の中央へ向けて広がるように、樹脂Rの粘度等を制御することで、樹脂Rの移動に伴ってICタグインレット2の一部が移動したり変形したりする可能性を低減することができる。
【0048】
次に、ステップS03では、
図4(e)及び
図4(f)に示すように、下金型92内に導入された樹脂Rによって第1樹脂部10に対応する領域が満たされた後に、樹脂Rを硬化させる。その後、
図4(f)に示すように、導入口94の樹脂Rと、下金型92内の樹脂Rとをカッター99で切断することで、第1樹脂部10とICタグインレット2とによって形成された第1成型体1’が得られる。第1成型体1’は、
図2(a)に示すようにICタグ成型体1から第2樹脂部20が除去された形状となっている。
【0049】
次に、ステップS04~ステップS06に示す、第2金型を用いた2段階目のインサートモールド成型を行う。まず、ステップS04では、第2金型95を準備し、第1成型体1’を第2金型95に対して固定する。
図5(a)に示すように、第2金型95は、例えば、下金型96と上金型97とによって構成される。また、下金型96は、第1成型体1’を収容することが可能な凹部96aを有している。
【0050】
凹部96aの底面には、第1成型体1’を吸引固定するための吸引孔96fが設けられる。吸引孔96fに対して吸引装置(図示せず)が接続される。吸引孔96fは、第2金型の薄膜状のICタグインレット2を安定して固定するための配置となっていればよく、例えば、平面視(
図5(b)参照)において、第1成型体1’の4つの頂点の近傍に配置されていてもよい。この点は、第1金型91の下金型92における吸引孔92fと同様である。
【0051】
上金型97は、第2樹脂部20の主面20aに対応する位置に設けられる。凹部96a内に第1成型体1’を吸引固定した状態で、下金型96の上方に上金型97を配置することで、内部が第2樹脂部20に対応した形状の空間となる。なお、
図5(a)では上金型97を示しているが、以降の図面では上金型97を省略している。また、成型方法によっては、上金型97を使用せず下金型96のみで成型を行う構成としてもよい。
【0052】
図5(a)に示されるように、凹部96a内に第1成型体1’を収容した状態で、吸引装置により下金型96内部の空気を吸引することで、凹部96a内の第1成型体1’を凹部96aに対して吸引固定することができる。吸引装置による第1成型体1’の吸引固定は、第2金型95を用いた成型が完了するまで継続される。
【0053】
次に、ステップS05では、第2金型95内に第2樹脂部20を形成する樹脂を導入する。
図5(a)に示すように、導入口98から樹脂Rを流し込む。このとき、樹脂Rは、
図5(b)に示すように、第1成型体1’における、外周側の環状の第2凸部を乗り越えて第1凹部13に入り込む。樹脂Rは、第1凹部13を満たすように移動し、第1凹部13を樹脂Rで満たした後に内側の第1凸部12を乗り越え、ICタグインレット2の上面を埋めるように広がる。第1溝部92bの凹部を満たした後に樹脂Rが内側へ広がる場合、
図5(c)及び
図5(d)に示すように、樹脂Rは、第1成型体1’の上面に位置するICタグインレット2の外周の全周から中心へ広がるように広がっていき、最終的には
図5(e)及び
図5(f)に示すように、ICタグインレット2の上方の全てを含む、第1成型体1’の上面が樹脂Rによって覆われる。このように、樹脂RがICタグインレット2の周囲から均等にICタグインレット2の中央へ向けて広がるように、樹脂Rの粘度等を制御することで、樹脂Rの移動に伴ってICタグインレット2の一部が移動したり変形したりする可能性を低減することができる。
【0054】
図5(e)及び
図5(f)に示すように、樹脂Rが下金型96内に導入されて、第2樹脂部20に対応する領域が樹脂Rによって満たされた後に、樹脂Rを硬化させる。その後、
図6(f)に示すように、導入口98の樹脂Rと、下金型96内の樹脂Rとをカッター99で切断することで、第1成型体1’に対してさらに第2樹脂部20が一体化されたICタグ成型体1が得られる。
【0055】
[作用]
上記のICタグ成型体1及びその製造方法によれば、ICタグインレット2の一対の主面2a,2bは第1樹脂部10及び第2樹脂部20によって覆われる。また、ICタグインレット2の周囲は、第1樹脂部10及び第2樹脂部20によって内側から外側へ向けて凹凸が形成される。このように、第1樹脂部10及び第2樹脂部20の界面が凹凸によって形成されているため、水、水蒸気、ガス等、ICタグとしての機能に影響を与える異物が外部から侵入することを防ぐことができる。したがって、上記のICタグ成型体によれば、使用環境によらずICタグの劣化を防止することが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態で説明したICタグ成型体1であれば、第1樹脂部10又は第2樹脂部20を介して外部装置(リーダまたはライタ)と情報の送受信を行う。本実施形態で説明したICタグ成型体1は、ICタグと外部装置との間に、金属・水等の通信に影響を与える物質が介在する可能性を低減させることができるため、例えば、HF帯のような近距離通信(例えば、数cm~数十cm程度)での使用に限定されず、UHF帯のように比較的長距離の通信(例えば、数cm~数m程度)での使用も可能である。
【0057】
また、ICタグ成型体1は、例えば、内部のICタグインレット2に破損が生じない限り、長期間の使用が可能である。また、第1樹脂部10及び第2樹脂部20によってICタグインレット2が覆われているため、ICタグインレット2自体が高温または低温環境に晒される可能性も減らすことができる。したがって、より過酷な環境でもICタグを使用することが可能となる。
【0058】
また、ICタグ成型体1は、第1樹脂部10及び第2樹脂部20として不透明な材料を使用することで、外見からはICタグインレット2が導入されているか否か、またはどの場所にICタグインレット2が導入されているかを特定することができない。したがって、悪意ある第三者によってICタグインレット2が取り出される可能性を低くすることができる。従来のICタグを封入した部材は、ICタグの封入場所が分かりやすくされている場合が多いためICタグが盗難される事例もあった。これに対して、上記のICタグ成型体1によれば、ICタグインレット2が取り出される可能性を低減することができる。
【0059】
ICタグインレット2は、フィルム状の基材2eと、基材2e上に設けられたアンテナ2cと、基材2e上に設けられ、アンテナ2cと接続されたICチップ2dとを含んでいてもよい。フィルム状の基材2eにアンテナ2c及びICチップ2dが設けられたICタグインレット2を用いることで、ICタグ成型体1の小型化が可能となる。さらに、基材2eが可撓性を有することで、外部から受ける応力を受けて基材が破損すること等を防ぐことができる。
【0060】
また、上記のICタグ成型体1の製造方法では、環状の凸部及び凹部を形成するために、ICタグ成型体1の外周となる、金型(第1金型91または第2金型95)の外周から樹脂Rを導入し、第1樹脂部10及び第2樹脂部20における凹凸形状に対応した凹凸を樹脂が乗り越えながら、中央のICタグインレット2の上面まで到達するように設計されている。一方、ICタグインレット2またはICタグインレット2と一体化された第1成型体1’は金型に対して吸引固定され、この状態で樹脂Rが金型内に導入される。そのため、流動性を有する樹脂RがICタグインレット2を変形させることも防がれるため、ICタグ成型体1の歩留まりも向上し得る。
【0061】
[変形例]
本開示に係るICタグ成型体は、上記で説明した構成に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0062】
図6参照しながら、変形例に係るICタグ成型体1Xについて説明する。ICタグ成型体1Xは、ICタグインレット2と樹脂部との間に接着層を形成している点がICタグ成型体1と相違する。ICタグ成型体1Xは、第1樹脂部10とICタグインレット2の主面2aとの間に、第1接着層31が設けられていて、第2樹脂部20とICタグインレットの主面2bとの間に第2接着層32が設けられている。第1接着層31及び第2接着層32としては、例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)からなる接着層を用いることができる。また、第1接着層31及び第2接着層32を設ける場合、例えば、ICタグインレット2の表面に接着層を事前に積層しておくことで、ICタグインレット2と第1樹脂部10または第2樹脂部20との間に接着層を形成することができる。一例として、ICタグインレット2の表面に2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、CPPからなる接着層を貼り合わせることで接着層をICタグインレット2の表面に形成することができる。
【0063】
また、第1接着層31及び第2接着層32としては、第1樹脂部10または第2樹脂部20に熱溶着可能なもの、例えば、オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる接着層を用いることができる。一例として、オレフィン系樹脂を溶解や分散したコーティング液を準備し、ICタグインレット2の表面に塗布した後に、これを乾燥することで、接着層をICタグインレット2の表面に形成することができる。第1接着層31および第2接着層32を形成する方法としては、上記方法に限定されるものではなく、例えば、ウェットコーティング、エクストルーダー、ホットメルトコート、ドライラミネート、スプレーコート、カーテンコートなどが挙げられる。
【0064】
上記のICタグ成型体1Xのように、第1接着層31または第2接着層32を含む構成とする場合、ICタグインレット2と第1樹脂部10との間、または、ICタグインレット2と第2樹脂部20との間の密着性を更に高めることができる。なお、第1接着層31または第2接着層32のいずれか一方のみを設けてもよく、その場合、第1接着層31を設けることが好ましい。さらに、第1接着層31は、ICタグインレット2との接着強度が、第1樹脂部10との接着強度よりも強いほうが好ましい。これにより、ICタグインレット2におけるアンテナ2cとICチップ2dの形状を維持したまま取り出すことが困難となり、ICタグインレット2の不正な再利用を防止することができる。
【0065】
また、ICタグインレット2は上記の構成とは別の構成としてもよい。例えば、上記実施形態ではフィルム状の基材2e上に、アンテナ2cとICチップ2dとが積層された設けられた例を示しているが、アンテナ2c及びICチップ2dをさらにもう1つのフィルム(フィルム)で挟みこむことで、アンテナ2c及びICチップ2dを保護する構成としてもよい。また、アンテナ2c及びICチップ2dの配置等は適宜変更することができる。
【0066】
ICタグ成型体1の第1樹脂部10及び第2樹脂部20に形成される凹凸の形状は適宜変更することができる。例えば、第1樹脂部10に着目すると、第1凸部12、第1凹部13、及び第2凸部14は、それぞれ環状に形成されているが、例えば、環状の第1凸部12または第2凸部14の一部が切り欠かれるような形状であってもよい。また、第1凹部13についても、全周にわたって同じ深さまで低い位置になっていなくてもよく、周方向に沿って凹凸が形成されていてもよい。この場合、対向する第2樹脂部20の第2凹部22、第3凸部23及び第3凹部24の形状は、第1樹脂部10の第1凸部12、第1凹部13、及び第2凸部14の形状に対応して変更される。また、第1凸部12及び第2凹部22は設けられていなくてもよい。
【0067】
なお、上記のICタグ成型体1の製造方法で説明したように、第2樹脂部20を形成する際には、第1樹脂部10の凹凸に沿って樹脂Rが移動する。したがって、第2金型95内に樹脂Rを導入した際に、第1樹脂部10と一体化されているICタグインレット2が樹脂Rの流れによって移動することを防ぐように、第1樹脂部10の形状を設計することで、ICタグ成型体1の歩留まりが向上すると考えられる。上記の観点で、ICタグインレット2の周囲が第1凸部12で囲まれるように第1凸部12及び第2凹部22を設けることによって、樹脂Rの流れによるICタグインレット2の移動または変形が防がれる。
【0068】
また、ICタグ成型体1の第1樹脂部10及び第2樹脂部20によって、ICタグインレット2の外周に形成される凹凸の数は増やしてもよい。凹部と凸部が交互に設けられて形成される凹凸の数を増やすことで、外部からの異物の進入をさらに抑制することができる。
【0069】
[付記]
本開示は以下の構成を含む。
[1]ICタグインレットと、
前記ICタグインレットを挟み込むと共に、その周囲を覆う第1樹脂部及び第2樹脂部と、
を有し、
前記第1樹脂部は、
前記ICタグインレットの一方の主面を支持する第1支持部と、
前記第1支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、
前記第1凹部の周囲を囲うように設けられて、前記第1凹部に対して突出する第2凸部と、
を有し、
前記第2樹脂部は、
前記ICタグインレットの前記一方の主面とは逆に他方の主面を支持する第2支持部と、
前記第1凹部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部の外周を囲うように設けられて、前記第2支持部に対して突出する第3凸部と、
前記第2凸部に対向して当接し、且つ、前記第3凸部の周囲を囲うように設けられて、前記第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、
を有する、ICタグ成型体。
[2]前記ICタグインレットは、フィルム状の基材と、前記基材上に設けられたアンテナと、前記基材上に設けられ、前記アンテナと接続されたICチップとを含む、[1]に記載のICタグ成型体。
[3]前記ICタグインレットは、前記アンテナ及び前記ICチップを覆う第2フィルムを有する、請求項2に記載のICタグ成型体。
[4]前記第1支持部と、前記ICタグインレットとの間に第1接着層を有する、[1]~[3]のいずれかに記載のICタグ成型体。
[5]前記第2支持部と、前記ICタグインレットとの間に第2接着層を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のICタグ成型体。
[6]前記第1支持部と前記第1凹部との間に設けられ、前記第1支持部に対して突出する第1凸部と、
前記第1凸部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部と前記第3凸部との間に設けられて、前記第2支持部よりも低い位置にある第2凹部と、
を有する、[1]~[5]のいずれかに記載のICタグ成型体。
[7]ICタグインレットを第1金型に固定して、前記第1金型内に樹脂を導入して固化することによって、前記ICタグインレットの一方の主面を支持する第1支持部と、前記第1支持部の周囲を囲うように設けられて、前記第1支持部に対して低い位置にある第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲うように設けられて、前記第1凹部に対して突出する第2凸部と、を有する第1樹脂部と前記ICタグインレットとが一体化された第1成型体を成型することと、
前記第1成型体を第2金型に対して固定して、前記第2金型内に樹脂を導入して固化することによって、前記ICタグインレットの前記一方の主面とは逆に他方の主面を支持する第2支持部と、前記第1凹部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部の外周を囲うように設けられて、前記第2支持部に対して突出する第3凸部と、前記第2凸部に対向して当接し、且つ、前記第3凸部の周囲を囲うように設けられて、前記第3凸部よりも低い位置にある第3凹部と、を有する第2樹脂部と、前記第1成型体とを一体化することと、
を含む、ICタグ成型体の製造方法。
[8]前記ICタグインレットはフィルム状であって、
前記第1成型体を成型することにおいて、前記ICタグインレットを前記第1金型に対して吸引固定する、[7]に記載のICタグ成型体の製造方法。
[9]前記ICタグインレットにおける前記第1支持部との対向面に、第1接着層が設けられている、[7]または[8]に記載のICタグ成型体の製造方法。
[10]前記ICタグインレットにおける前記第2支持部との対向面に、第2接着層が設けられている、[7]~[9]のいずれかに記載のICタグ成型体の製造方法。
[11]前記第1樹脂部は、前記第1支持部と前記第1凹部との間に設けられ、前記第1支持部に対して突出する第1凸部を有し、
前記第2樹脂部は、前記第1凸部に対向して当接し、且つ、前記第2支持部と前記第3凸部との間に設けられて、前記第2支持部よりも低い位置にある第2凹部を有する、[7]~[10]のいずれかに記載のICタグ成型体の製造方法。
[12]前記第2樹脂部と、前記第1成型体とを一体化することにおいて、前記第2金型内に導入された前記樹脂が、前記第1成型体の前記第1凹部を満たした後、前記第1凸部を乗り越えて前記ICタグインレットの表面を覆うように流入させる、[11]に記載のICタグ成型体の製造方法。
【符号の説明】
【0070】
1,1X…ICタグ成型体、1’…第1成型体、2…ICタグインレット(ICタグインレイ)、2c…アンテナ、2d…ICチップ、2e…基材、10…第1樹脂部、11…第1支持部、12…第1凸部、13…第1凹部、14…第2凸部、20…第2樹脂部、21…第2支持部、22…第2凹部、23…第3凸部、24…第3凹部、31…第1接着層、32…第2接着層、91…第1金型、92,96…下金型、93,97…上金型、95…第2金型。