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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032553
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】リーン車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 21/00 20060101AFI20240305BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240305BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20240305BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20240305BHJP
   B62J 45/412 20200101ALI20240305BHJP
【FI】
B62K21/00
B62J45/00
B62J45/415
B62J45/413
B62J45/412
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136269
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】土屋 光生
(72)【発明者】
【氏名】原 進
【テーマコード(参考)】
3D013
【Fターム(参考)】
3D013CA05
(57)【要約】
【課題】外乱によるロール角の変化が生じた場合に、前後方向の移動を低減しつつ、リーン車両の姿勢の制御の応答性を高める。
【解決手段】リーン車両1の制御装置9は、リーン車両1の停止状態およびリーン車両1の走行状態の少なくとも一方において、外乱により車体フレーム5に付与されたと推定されるロール軸Xr回りの推定外乱ロールトルクTerと、リーン車両1の重量による重力と、に基づいて推定される外乱によるロール角φの変化分Δφを、目標ロール角φgから引いた外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクおよび/または操舵トルクを制御する姿勢制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの前輪および前記少なくとも1つの前輪よりも車両前後方向における後方向に配置される少なくとも1つの後輪を含む複数の車輪と、
前記複数の車輪を車軸線回りに回転可能に支持し、前記少なくとも1つの前輪を操舵軸線回りに回転可能に支持し、右旋回時に前記少なくとも1つの前輪の接地点の車両左右方向の中心および前記少なくとも1つの後輪の接地点の車両左右方向の中心を通る直線であるロール軸回りに車両右方向に傾斜し、左旋回時に前記ロール軸回りに車両左方向に傾斜する車体フレームと、
前記少なくとも1つの前輪および前記少なくとも1つの後輪の少なくとも一方に、前記車軸線回りの正および負の駆動トルクを付与するように構成された駆動トルク付与装置、および、前記少なくとも1つの前輪に、前記操舵軸線回りの操舵トルクを付与するように構成された操舵トルク付与装置の少なくとも一方を含むトルク付与装置と、
前記トルク付与装置が付与する前記駆動トルクおよび前記操舵トルクの少なくとも一方を制御して、前記リーン車両の姿勢を制御する制御装置と、
を備えるリーン車両であって、
前記制御装置は、前記リーン車両の停止状態および前記リーン車両の走行状態の少なくとも一方において、
外乱により前記車体フレームに付与されたと推定される前記ロール軸回りの推定外乱ロールトルクと、前記リーン車両の重量による重力と、に基づいて推定される、前記車体フレームの車両上下方向に対する前記車両左右方向の傾斜角であるロール角の外乱による変化分を、目標ロール角から引いた外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを制御する姿勢制御を実行して、
外乱による前記ロール角の変化に対する応答性を高くするように、前記リーン車両の姿勢を制御することを特徴とするリーン車両。
【請求項2】
前記車体フレームの前記ロール角に関連するロール角検出情報を検出するロール角関連情報検出装置と、
前記いずれか1つの前記前輪の前記操舵軸線回りの回転角度である操舵角に関連する操舵角検出情報を検出する操舵角関連情報検出装置と、
いずれか1つの前記車輪の前記車軸線回りの回転速度である車輪速度に関連する車輪速度検出情報を検出する車輪速度関連情報検出装置と、を有し、
前記制御装置は、前記姿勢制御において、
前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを含む指令トルクと、当該指令トルクが付与された直後に前記ロール角関連情報検出装置、前記操舵角関連情報検出装置、および前記車輪速度関連情報検出装置によってそれぞれ検出された前記ロール角検出情報、前記操舵角検出情報、および前記車輪速度検出情報とに基づいて前記推定外乱ロールトルクを推定することを特徴とする請求項1のリーン車両。
【請求項3】
前記リーン車両をモデル化した順モデルと逆の入出力関係を持ち、前記ロール角関連情報検出装置によって検出された前記ロール角検出情報から得られる前記ロール角に関連するロール角情報、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角検出情報から得られる前記操舵角に関連する操舵角情報、および前記車輪速度関連情報検出装置によって検出された前記車輪速度検出情報から得られる前記車輪速度に関連する車輪速度情報が入力され、前記指令トルクと、外乱により前記車体フレームに付与されると推定される前記推定外乱ロールトルクとを含む実効トルクが出力されるモデルを前記リーン車両の逆モデルとした場合に、
前記推定外乱ロールトルクは、
前記ロール角情報、前記操舵角情報、および前記車輪速度情報を前記逆モデルに入力したときに前記逆モデルから出力される前記実効トルクと、前記指令トルクとの差から得られる値であることを特徴とする請求項2に記載のリーン車両。
【請求項4】
前記制御装置は、少なくとも前記リーン車両が0km/hより高く10km/h以下の車速で走行する低速走行状態において、前記姿勢制御を実行するように構成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のリーン車両。
【請求項5】
前記車体フレームに取り付けられて、前記制御装置によって制御され、前記車体フレームを前記ロール軸回りに傾斜させるロールトルクを付与するロールトルク付与装置を備えないことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のリーン車両。
【請求項6】
前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記ロール角関連情報検出装置、前記操舵角関連情報検出装置、および前記車輪速度関連情報検出装置によってそれぞれ検出された前記ロール角検出情報、前記操舵角検出情報、および前記車輪速度検出情報に基づいて設定された前記目標ロール角から、推定された外乱による前記ロール角の変化分を引いた前記外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを制御すること、前記目標ロール角を設定することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のリーン車両。
【請求項7】
前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記リーン車両が平衡状態になるように設定された前記目標ロール角から、推定された外乱による前記ロール角の変化分を引いた前記外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを制御することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のリーン車両。
【請求項8】
前記制御装置は、前記リーン車両がライダーによって運転されずに自律運転するときに、前記姿勢制御を実行することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリーン車両。
【請求項9】
前記制御装置は、前記リーン車両がライダーによって運転されているときに、前記姿勢制御を実行することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のリーン車両。
【請求項10】
前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび前記操舵トルクの両方を制御することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のリーン車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、右旋回時に右方向に傾斜し、左旋回時に左方向に傾斜するリーン車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リーン車両おいて、ライダーによる車両左右方向の重心移動、車体に対する車両左右方向の風、路面状況、遠心力等の外乱によりロール角の変化が生じた場合にリーン車両の姿勢を制御する技術がある。例えば、特許文献1では、走行中に、外乱によりロール角の変化が生じたと制御装置が判断した場合、制御装置がステアリングアクチュエータを駆動させて、外乱によりロール角が増加した側への操舵力が操舵機構に付与される。それにより、車体を起こす作用が生じる。特許文献1では、ロール角の増加速度が予め定めた値以上であり、かつハンドルへの入力が予め定めた閾値未満であるとき、制御装置は外乱によりロール角の変化が生じたと判断し、ステアリングアクチュエータを駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-158067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような姿勢の制御が行われるリーン車両において、外乱によるロール角の変化が生じた場合に、リーン車両の前後方向の移動を低減しつつ、姿勢制御の応答性を高めることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、外乱によるロール角の変化が生じた場合に、前後方向の移動を低減しつつ、姿勢制御の応答性を高めることができるリーン車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有する。
少なくとも1つの前輪および前記少なくとも1つの前輪よりも車両前後方向における後方向に配置される少なくとも1つの後輪を含む複数の車輪と、前記複数の車輪を車軸線回りに回転可能に支持し、前記少なくとも1つの前輪を操舵軸線回りに回転可能に支持し、右旋回時に前記少なくとも1つの前輪の接地点の車両左右方向の中心および前記少なくとも1つの後輪の接地点の前記車両左右方向の中心を通る直線であるロール軸回りに車両右方向に傾斜し、左旋回時に前記ロール軸回りに車両左方向に傾斜する車体フレームと、前記少なくとも1つの前輪および前記少なくとも1つの後輪の少なくとも一方に、前記車軸線回りの正および負の駆動トルクを付与するように構成された駆動トルク付与装置、および、前記少なくとも1つの前輪に、前記操舵軸線回りの操舵トルクを付与するように構成された操舵トルク付与装置の少なくとも一方を含むトルク付与装置と、前記トルク付与装置が付与する前記駆動トルクおよび前記操舵トルクの少なくとも一方を制御して、前記リーン車両の姿勢を制御する制御装置と、を備えるリーン車両であって、前記制御装置は、前記リーン車両の停止状態および前記リーン車両の走行状態の少なくとも一方において、外乱により前記車体フレームに付与されたと推定される前記ロール軸回りの推定外乱ロールトルクと、前記リーン車両の重量による重力と、に基づいて推定される、前記車体フレームの車両上下方向に対する前記車両左右方向の傾斜角であるロール角の外乱による変化分を、目標ロール角から引いた外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを制御する姿勢制御を実行して、外乱による前記ロール角の変化に対する応答性を高くするように、前記リーン車両の姿勢を制御する。
【0007】
この構成によると、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、リーン車両の姿勢を制御するための姿勢制御が実行される。姿勢制御において、制御装置は、外乱により車体フレームに付与されると推定される推定外乱ロールトルクと、リーン車両の重量による重力とに基づいて、外乱によるロール角の変化分を推定する。具体的には、例えば、推定外乱ロールトルクと、リーン車両に作用する重力によるリーン車両を傾斜させるロールトルクが打ち消しあうように車体フレームが傾斜したと仮定した場合のロール角から、外乱によるロール角の変化分が推定される。制御装置は、姿勢制御において、推定された外乱によるロール角の変化分を目標ロール角から引いた外乱補償目標ロール角に基づいてトルク付与装置を制御する。トルク付与装置により駆動トルクおよび/または操舵トルクが付与されることで、推定外乱ロールトルクとリーン車両に作用する重力によってリーン車両を傾斜させるロールトルクとが打ち消し合うようなロール角にすることができ、外乱によるロール角速度の変化を抑制できる。これにより、ライダーによる車両左右方向の重心移動、車体に対する車両左右方向の風、路面状況(例えば路面の凹凸)、遠心力等の外乱があった場合も、リーン車両のロール角を目標ロール角(例えば、0°)付近とし、外乱に対抗することができる。そのため、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、リーン車両の車速や操舵角の変化を最小限にするように制御できる。つまり、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角の変化が生じた場合でも、前後方向の移動を低減しつつ、より早くリーン車両の姿勢を制御することができる。従って、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【0008】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記車体フレームの前記ロール角に関連するロール角検出情報を検出するロール角関連情報検出装置と、前記いずれか1つの前記前輪の前記操舵軸線回りの回転角度である操舵角に関連する操舵角検出情報を検出する操舵角関連情報検出装置と、いずれか1つの前記車輪の前記車軸線回りの回転速度である車輪速度に関連する車輪速度検出情報を検出する車輪速度関連情報検出装置と、を有し、前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを含む指令トルクと、当該指令トルクが付与された直後に前記ロール角関連情報検出装置、前記操舵角関連情報検出装置、および前記車輪速度関連情報検出装置によってそれぞれ検出された前記ロール角検出情報、前記操舵角検出情報、および前記車輪速度検出情報とに基づいて前記推定外乱ロールトルクを推定する。
【0009】
この構成によると、制御装置は、トルク付与装置によって付与された駆動トルクおよび/または操舵トルクと、3つの検出装置により検出された情報から推定外乱ロールトルクを推定する。これにより、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角の変化が生じた場合でも、3つの検出装置により検出された情報を用いて、より早くリーン車両の姿勢を制御することができる。従って、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【0010】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記リーン車両をモデル化した順モデルと逆の入出力関係を持ち、前記ロール角関連情報検出装置によって検出された前記ロール角検出情報から得られる前記ロール角に関連するロール角情報、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角検出情報から得られる前記操舵角に関連する操舵角情報、および前記車輪速度関連情報検出装置によって検出された前記車輪速度検出情報から得られる前記車輪速度に関連する車輪速度情報が入力され、前記指令トルクと、外乱により前記車体フレームに付与されると推定される前記推定外乱ロールトルクとを含む実効トルクが出力されるモデルを前記リーン車両の逆モデルとした場合に、前記推定外乱ロールトルクは、前記ロール角情報、前記操舵角情報、および前記車輪速度情報を前記逆モデルに入力したときに前記逆モデルから出力される前記実効トルクと、前記指令トルクとの差から得られる値である。
【0011】
この構成によると、推定外乱ロールトルクは、3つの検出装置から得られた情報をリーン車両の逆モデルに入力した場合に逆モデルから出力される実効トルクと、指令トルクとの差から得られる値である。そのため、ロール軸回りの推定外乱ロールトルクをより精度良く推定することができるため、より早くリーン車両の姿勢を制御することができる。従って、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性をより高めることができる。
【0012】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記制御装置は、少なくとも前記リーン車両が0km/hより高く10km/h以下の車速で走行する低速走行状態において、前記姿勢制御を実行するように構成される。
【0013】
この構成によると、車速が少なくとも10km/h以下のときに姿勢制御が実行される。車速が10km/h以下の低速走行状態では、車速が10km/hより高い走行状態と比較して、外乱によってリーン車両の姿勢が変化しやすい。低速走行状態で姿勢制御が実行されることで、低速走行状態において、リーン車両の車速や操舵角の変化を最小限にするように制御できる。つまり、少なくとも低速走行状態において、外乱によるロール角の変化が生じた場合でも、より早くリーン車両の姿勢を制御することができる。従って、少なくとも低速走行状態において、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【0014】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記車体フレームに取り付けられて、前記制御装置によって制御され、前記車体フレームを前記ロール軸回りに傾斜させるロールトルクを付与するロールトルク付与装置を備えない。
【0015】
この構成によると、リーン車両はロールトルク付与装置を備えない。ロールトルク付与装置は、前輪に操舵トルクを付与することなく、車体フレームを直接車両左右方向に傾斜させるロールトルクを付与する装置である。仮に、リーン車両がロールトルク付与装置を備える場合、制御装置は、推定した推定外乱ロールトルクを打ち消すようにロールトルク付与装置からロールトルクを付与できる。本発明のリーン車両はロールトルク付与装置を備えないため、このような制御はできない。しかし、本発明のリーン車両の制御装置は、推定した推定外乱ロールトルクを外乱によるロール角の変化分に変換して外乱補償目標ロール角を設定する。そのため、リーン車両は、ロールトルク付与装置を備えなくても、トルク付与装置から、推定した推定外乱ロールトルクを打ち消すように駆動トルクおよび/または操舵トルクを付与することができる。
【0016】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記ロール角関連情報検出装置、前記操舵角関連情報検出装置、および前記車輪速度関連情報検出装置によってそれぞれ検出された前記ロール角検出情報、前記操舵角検出情報、および前記車輪速度検出情報に基づいて設定された前記目標ロール角から、推定された外乱による前記ロール角の変化分を引いた前記外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを制御する。
【0017】
この構成によると、目標ロール角を例えばリーン車両が平衡状態となるように設定することができる。
【0018】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記リーン車両が平衡状態になるように設定された前記目標ロール角から、推定された外乱による前記ロール角の変化分を引いた前記外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび/または前記操舵トルクを制御する。
【0019】
この構成よると、リーン車両が平衡状態になるように目標ロール角を設定するため、外乱によるロール角の変化が生じた場合でも、前後方向の移動を低減しつつ、より早くリーン車両の姿勢を制御することができる。従って、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性をより高めることができる。
【0020】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記制御装置は、前記リーン車両がライダーによって運転されずに自律運転するときに、前記姿勢制御を実行する。
【0021】
この構成によると、リーン車両がライダーによって運転されずに自律運転するときに、リーン車両の姿勢を制御することができる。そして、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【0022】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記制御装置は、前記リーン車両がライダーによって運転されているときに、前記姿勢制御を実行する。
【0023】
この構成よると、リーン車両がライダーによって運転されているときに、リーン車両の姿勢を制御することができる。そして、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【0024】
本発明の一実施形態のリーン車両は、以下の構成を有してもよい。
前記制御装置は、前記姿勢制御において、前記外乱補償目標ロール角に基づいて、前記トルク付与装置から付与される前記駆動トルクおよび前記操舵トルクの両方を制御する。
【0025】
この構成によると、姿勢制御において、外乱補償目標ロール角に基づいて駆動トルクのみまたは操舵トルクのみを制御する場合に比べて、より早くリーン車両の姿勢を制御することができる。従って、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性をより高めることができる。
【0026】
本発明および実施の形態における車両上下方向とは、路面に垂直な方向である。より詳細には、車輪の接地位置に垂直な方向である。本発明および実施の形態における車両前後方向とは、車体フレームに固定される方向であって、リーン車両が直進している時のリーン車両の進行方向である。本発明および実施の形態における車両左右方向とは、車両前後方向と車両上下方向に直交する方向である。リーン車両にライダーが乗車する場合、車両左右方向は、ライダーにとっての左右方向である。
【0027】
本発明および実施の形態において、少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を含む複数の車輪は、1つの前輪と1つの後輪を含んでもよく、1つの前輪と複数の後輪を含んでもよく、複数の前輪と1つの後輪を含んでもよい。本発明および実施の形態において、リーン車両は、二輪車(two-wheeled vehicle)でもよく、三輪車(three-wheeled vehicle)でもよい。リーン車両は、自動二輪車(motorcycle)または自動三輪車(motor tricycle)でもよい。自動二輪車には、スクータとモペットも含まれる。リーン車両は、二輪または三輪の自転車でもよい。
本発明および実施の形態におけるリーン車両は、制御装置が姿勢制御を実行する時に、ライダーが乗車していてもよいし、乗車していなくてもよい。本発明および実施の形態におけるリーン車両は、姿勢制御を行わないモードと、姿勢制御を行うモードに切り換え可能に構成されていてもよい。本発明および実施の形態におけるリーン車両は、制御装置が姿勢制御を実行する時に、ライダーによって運転される状態でもよく、運転されていない状態でもよい。なお、リーン車両がライダーによって運転されていない状態であるとは、リーン車両が自律運転状態であることを意味する。本発明および実施の形態におけるリーン車両は、ライダーが操舵角を維持または変更するために操作するハンドルユニットを有してもよく、有さなくてもよい。本発明および実施の形態におけるリーン車両は、ライダーが車速を維持または変更するために操作する少なくとも1つの操作子(例えばアクセル操作子、ブレーキ操作子、自転車のペダルなど)を有してもよく、有さなくてもよい。
【0028】
本発明および実施の形態において、複数の車輪を車軸線回りに回転可能に支持するとは、複数の車輪を車輪ごとの車軸線回りに回転可能に支持することを意味する。本発明および実施の形態において、前輪の数が複数の場合、少なくとも1つの前輪を操舵軸線回りに回転可能に支持するとは、複数の前輪を前輪ごとの操舵軸線回りに回転可能に支持することを意味する。本発明および実施の形態において、車輪(前輪または後輪)とは、タイヤと、タイヤを保持するホイール本体とを含む。
【0029】
本発明および実施の形態において、ロール軸は、少なくとも1つの前輪の接地点の車両左右方向の中心および少なくとも1つの後輪の接地点の車両左右方向の中心を通る直線である。一般的に、自動二輪車の後輪の接地点を通り、車両左右方向に見て操舵軸線に直交する軸線を自動二輪車のロール軸と呼ぶ場合があるが、本発明および実施形態におけるロール軸の定義はこれとは異なる。本発明および実施の形態において、ロール軸は、車体フレームに固定されない。操舵角が0°の時のロール軸は車両前後方向と平行である。操舵角が大きい場合、ロール軸は車両前後方向に対して僅かに傾斜する。本発明および実施の形態において、ロール角は、車体フレームの車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角である。ロール角は、車両前後方向の軸回りの車体フレームの回転角度でもよい。ロール角は、車両左右方向に直交し車両左右方向に見て操舵軸線に直交する軸線回りの車体フレームの回転角度でもよい。ロール角は、ロール軸回りの車体フレームの回転角度でもよい。ロール軸回りの車体フレームの回転角度、車両前後方向の軸回りの車体フレームの回転角度、および車両左右方向に直交し車両左右方向に見て操舵軸線に直交する軸線回りの車体フレームの回転角度の違いはわずかである。
【0030】
本発明および実施の形態において、ロール角関連情報検出装置によって検出されるロール角に関連する情報は、ロール角、ロール角の時間変化率であるロール角速度、およびロール角速度の時間変化率であるロール角加速度の少なくとも1つを含んでよい。ロール角関連情報検出装置は、例えばIMU(慣性計測装置:Inertial Measurement Unit)でもよい。
【0031】
本発明および実施の形態において、操舵角関連情報検出装置によって検出される操舵角に関連する情報は、操舵角、操舵角の時間変化率である操舵角速度、および操舵角速度の時間変化率である操舵角加速度の少なくとも1つを含んでよい。本発明において、操舵角とは、いずれか1つの前輪の操舵軸線回りの回転角度である。但し、いずれか1つの前輪という記載は、前輪の数が複数であることを限定する意図ではない。リーン車両が有する前輪の数は1つでもよい。前輪の数が複数の場合、リーン車両は、複数の前輪の操舵軸線回りの回転角度が常に同じになるように構成されてもよい。前輪の数が複数の場合、リーン車両は、複数の前輪の操舵軸線回りの回転角度をわずかに異ならせることができるように構成されてもよい。この場合、いずれか1つの前輪の操舵軸線回りの回転角度は、残りの前輪の操舵軸線回りの回転角度に関連する。操舵角関連情報検出装置は、前輪を車軸線回りに回転可能に支持し、車体フレームに操舵軸線回りに回転可能に支持されるステアリングシャフトの回転角度を検出するセンサでもよい。操舵角関連情報検出装置は、操舵トルク付与装置が有する電動モータの回転角度を検出するセンサでもよい。
【0032】
本発明および実施の形態において、車輪速度関連情報検出装置によって検出される車輪速度に関連する情報は、前輪の車軸線回りの回転速度、前輪の車軸線回りの回転加速度、前輪の車軸線回りの回転量(回転数または回転角度)、後輪の車軸線回りの回転速度、後輪の車軸線回りの回転加速度、後輪の車軸線回りの回転量、車速(リーン車両の車両前後方向の速度)、リーン車両の車両前後方向の加速度の少なくとも1つを含んでよい。本発明において、車輪速度とは、いずれか1つの車輪の車軸線回りの回転角度である。1つの車輪の車軸線回りの回転速度は、残りの車輪の車軸線回りの回転速度に関連する。車軸線回りの回転速度は、単位時間あたりの回転数または回転角度である。車輪速度関連情報検出装置は、車輪に設けられたセンサでもよい。車輪速度関連情報検出装置は、GNSS(全地球航法衛星システム)を利用してリーン車両の車輪速度に関連する情報を検出する装置でもよい。制御装置は、前輪の車軸線回りの回転速度と操舵角から車速を算出してもよい。制御装置は、後輪の車軸線回りの回転速度から車速を算出してもよい。
【0033】
本発明および実施の形態において、操舵トルク付与装置は、操舵トルクを生成し、生成された操舵トルクを少なくとも1つの前輪に付与する。本発明および実施の形態において、前輪に操舵軸線回りの操舵トルクを付与するように構成されるとは、前輪を車軸線回りに回転可能に支持し、車体フレームに操舵軸線回りに回転可能に支持されるステアリングシャフトに操舵トルクを付与するように構成されることを意味する。操舵トルク付与装置は、このステアリングシャフトを含む操舵機構と、操舵機構に付与される操舵トルクを生成するステアリングアクチュエータとを含む。リーン車両が有する前輪の数が複数の場合、複数の前輪に付与される操舵トルクの値は同じでよく、異なっていてもよい。本発明において、操舵トルクという用語は、1つの前輪に付与される操舵トルクを意味するか、複数の前輪にそれぞれ付与される複数の操舵トルクの総称を意味する。操舵トルク付与装置に含まれるステアリングアクチュエータは、例えば、電動モータまたは油圧式のアクチュエータである。リーン車両が有する前輪の数が複数の場合、操舵トルク付与装置が有するステアリングアクチュエーの数は1つでもよく、前輪の数と同じでもよい。リーン車両が電動パワーステアリング装置を有する場合、電動パワーステアリング装置においてライダーが入力する操舵力をアシストするアシストモータ(電動モータ)が、本発明の操舵トルク付与装置のステアリングアクチュエータとして機能してもよい。また、リーン車両は、操舵トルク付与装置を含むステアバイワイヤシステムを有してもよい。
【0034】
本発明および実施の形態において、駆動トルク付与装置は、駆動トルクを生成し、生成された駆動トルクを少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪の少なくとも一方に付与する。駆動トルク付与装置は、少なくとも1つの前輪にのみ駆動トルクを付与するように構成されてもよく、少なくとも1つの後輪にのみ駆動トルクを付与するように構成されてもよく、少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪の両方に駆動トルクを付与するように構成されてもよい。駆動トルク付与装置が少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪の両方に駆動トルクを付与するように構成される場合、必ずしも、少なくとも1つの前輪と少なくとも1つの後輪に同時に駆動トルクが付与されなくてもよい。複数の車輪に同時に駆動トルクが付与される場合、いずれか1つの車輪に付与される駆動トルクの値は、残りの車輪に付与される駆動トルクの値と同じでもよく異なってもよい。本発明において、駆動トルクという用語は、1つの車輪に付与される駆動トルクを意味するか、複数の車輪にそれぞれ付与される複数の駆動トルクの総称を意味する。
【0035】
本発明および実施の形態において、正および負の駆動トルクを付与するように構成されるとは、1つの車輪に対して異なるタイミングで正の駆動トルクと負の駆動トルクを付与できるように構成されることを意味する。正の駆動トルクは、リーン車両が車両前方向に進むように車輪を正方向に回転させるトルクである。車輪が正方向に回転している時に負の駆動トルクが付与されると、車輪の正方向の回転が減速する。本発明および実施の形態において、駆動トルク付与装置は、負の駆動トルクとして、車輪を負方向に回転させるトルクを生成できるように構成されてもよく、構成されなくてもよい。
【0036】
本発明および実施の形態において、駆動トルク付与装置は、1つの車輪に対してそれぞれトルクを付与する複数の装置を有してもよい。この場合、1つの車輪に同時に付与される複数のトルクの合成トルクが、本発明の駆動トルクに相当する。また、この場合、駆動トルク付与装置は、1つの車輪に対して正のトルクと負のトルクを同時に付与できるように構成されてもよい。本発明および実施の形態において、駆動トルク付与装置は、エンジンおよび電動モータの少なくとも一方を含んでもよい。駆動トルク付与装置は、ブレーキ装置を含んでもよい。ブレーキ装置は、例えば油圧式のブレーキ装置でもよい。リーン車両は、駆動トルク付与装置に含まれるブレーキ装置を有さず、駆動トルク付与装置に含まれないブレーキ装置を有してもよい。姿勢制御の実行中に、制御装置が、ロール角関連情報検出装置、操舵角関連情報検出装置、および車輪速度関連情報検出装置によって検出された情報に基づいてリーン車両の姿勢の制御のためにブレーキ装置を制御しない場合、ブレーキ装置は駆動トルク付与装置に含まれない。
【0037】
本発明および実施の形態において、トルク付与装置は、駆動トルク付与装置および操舵トルク付与装置の両方を含んでもよく、駆動トルク付与装置のみを含んでもよく、操舵トルク付与装置のみを含んでもよい。
【0038】
本発明および実施の形態において、リーン車両の停止状態とは、リーン車両が走行していない状態であり、リーン車両が車両前後方向にほとんど移動することがない状態を意味する。リーン車両の停止状態は、例えば、リーン車両の発進直前の状態を含む。リーン車両の停止状態は、例えば、交通信号機の信号が青色に変わるのを待っている状態を含む。リーン車両の停止状態は、操舵角が大きい状態で、車輪に正または負の駆動トルクが付与されている状態を含んでよい。操舵角が大きい状態で前輪および後輪が正方向または負方向に回転した場合、リーン車両は車両前後方向にほとんど移動しない。本発明および実施の形態において、リーン車両の停止状態において姿勢制御を実行するとは、車速が0または0付近の状態において姿勢制御を実行することを意味する。
【0039】
本発明および実施の形態において、制御装置は、姿勢制御において、少なくとも外乱補償目標ロール角に基づいて、トルク付与装置から付与される駆動トルクおよび/または操舵トルクを制御する。トルク付与装置が駆動トルク付与装置および操舵トルク付与装置の両方を含む場合、制御装置は、姿勢制御において、外乱補償目標ロール角に基づいて駆動トルクおよび操舵トルクの少なくとも一方を制御する。トルク付与装置が駆動トルク付与装置および操舵トルク付与装置の両方を含む場合、姿勢制御において外乱補償目標ロール角に基づいて制御されるトルクの種類は、駆動トルクのみでもよく、操舵トルクのみでもよく、駆動トルクおよび操舵トルクの両方でもよい。姿勢制御において外乱補償目標ロール角に基づいて制御されるトルクが操舵トルクのみの場合、制御装置は、姿勢制御の実行中に、外乱補償目標ロール角に基づかずに、駆動トルクを制御してもよい。例えば、制御装置は、ライダーによるアクセル操作子またはブレーキ操作子の操作に応じて、駆動トルクを制御してもよい。また、トルク付与装置が駆動トルク付与装置および操舵トルク付与装置の両方を含む場合、姿勢制御において外乱補償目標ロール角に基づいて制御されるトルクの種類は、姿勢制御が実行されるたびに同じとは限らない。例えば、制御装置は、制御装置に入力された情報に基づいて、姿勢制御において外乱補償目標ロール角に基づいて制御されるトルクの種類を決定してもよい。制御装置に入力された情報は、使用者による操作によって制御装置に入力された情報でもよく、リーン車両の挙動を示す情報でもよく、その両方を含んでいてもよい。使用者による操作は、ライダーがリーン車両を運転するための操作でもよく、使用者(ライダーを含む)がリーン車両の停止中に行う操作でもよい。姿勢制御の開始から終了までの間に、外乱補償目標ロール角に基づいて駆動トルクおよび操舵トルクの両方が制御される場合、外乱補償目標ロール角に基づいて制御された駆動トルクを付与するタイミングと、外乱補償目標ロール角に基づいて制御された操舵トルクを付与するタイミングは同じでもよく、異なってもよい。制御装置は、車速に基づいて姿勢制御を開始するか否かを判断してもよい。制御装置は、推定された推定外乱ロールトルクの大きさに基づいて姿勢制御を開始するか否かを判断してもよい。制御装置は、ライダーによる所定の操作に基づいて姿勢制御を開始するか否かを判断してもよい。制御装置は、これらの条件を組み合わせて姿勢制御を開始するか否かを判断してもよい。制御装置は、これら以外の条件で姿勢制御を開始するか否かを判断してもよい。
【0040】
本発明および実施の形態において、外乱補償目標ロール角とは、目標ロール角から、制御装置によって推定された外乱によるロール角の変化分を引いた値である。本発明および実施の形態において、推定された外乱によるロール角の変化分を目標ロール角から引くとは、推定された外乱によるロール角の変化分を打ち消す値を目標ロール角に加えることを意味する。外乱によるロール角の変化分は、推定外乱ロールトルクと、リーン車両に作用する重力によるリーン車両を傾斜させるロールトルクが釣り合うようなロール角から推定される。制御装置は、外乱補償目標ロール角、目標操舵角および目標車速に基づいて、姿勢制御を行ってよい。
【0041】
本発明および実施の形態において、制御装置は、リーン車両の姿勢を制御するために、姿勢制御を実行する。姿勢制御では、リーン車両に対して外乱があったとしても、リーン車両のロール角が目標ロール角になるようにトルク付与装置が制御される。制御装置は、目標ロール角、目標操舵角および目標車速に基づいて、姿勢制御を行ってよい。姿勢制御では、リーン車両が平衡状態になるようにトルク付与装置が制御されてよい。この場合、リーン車両が平衡状態となるように目標ロール角が設定される。リーン車両が平衡状態となるように目標ロール角が設定されるとは、例えば、目標ロール角と目標操舵角と目標車速の値の組み合わせが、リーン車両の平衡状態を示すロール角と目標操舵角と目標車速の値の組み合わせである状態を意味する。リーン車両の平衡状態を示すロール角と目標操舵角と目標車速の値の組み合わせとは、仮に操舵角と車速をその値で維持して走行した場合に、ロール角が変化せずに維持されるような、ロール角と操舵角と車速の値の組み合わせである。つまり、リーン車両の平衡状態とは、ロール角と操舵角と車速の値の組み合わせが、操舵角と車速を維持して走行した場合にロール角が変化することなく維持されるような組み合わせである状態である。リーン車両の平衡状態を示すロール角と操舵角と車速の値の組み合わせの集合は、ロール角と操舵角と車速を3軸としたグラフにおいて1つの曲面で表される。リーン車両の平衡状態のロール角と操舵角と車速の値の組み合わせは、リーン車両の重量、リーン車両の重心高さ、ホイールベース、キャスター角、およびタイヤのクラウン半径などのリーン車両の諸元に応じて異なる。
【0042】
本発明および実施の形態における指令トルクは、トルク付与装置から付与される駆動トルクおよび/または操舵トルクを含む。指令トルクは、トルク付与装置から付与されるトルクの総称である。トルク付与装置はロールトルクを付与しないため、指令トルクは、0のロールトルクを含む。
【0043】
本発明および実施形態において、リーン車両の逆モデルとは、リーン車両をモデル化した順モデルとは入出力関係が逆のモデルである。リーン車両の順モデルの入力は、トルク付与装置から付与される駆動トルクおよび/または操舵トルクを含む指令トルクと、外乱により車体フレームに付与されるロール軸回りの外乱ロールトルクとを含む。リーン車両の順モデルの入力は、複数の車輪に付与される車輪軸線回りのトルクと、少なくとも1つの前輪に付与される操舵軸線回りのトルクと、車体フレームに付与されるロール軸回りのトルクとを含む。リーン車両の順モデルの出力は、ロール角に関連するロール角情報、操舵角に関連する操舵角情報、および車輪速度に関連する車輪速度情報である。リーン車両の逆モデルの入力は、ロール角情報、操舵角情報および車輪速度情報を含む。リーン車両の逆モデルの出力は、実効トルクである。逆モデルの出力である実効トルクは、トルク付与装置から付与された指令トルク(駆動トルクおよび/または操舵トルク)と、外乱により車体フレームに付与されたと推定されるロール軸回りの推定外乱ロールトルクとを含む。リーン車両の逆モデルの出力である実効トルクに含まれる指令トルクは、0のロール軸回りのトルクを含む。リーン車両の逆モデルの出力である実効トルクは、推定外乱ロールトルクに加えて、外乱により少なくとも1つの車輪に付与されると推定される車軸線回りの推定外乱駆動トルクおよび/または外乱により少なくとも1つの前輪に付与されると推定される操舵軸線回りの推定外乱操舵トルクを含んでもよい。推定外乱駆動トルクは0でもよい。推定外乱操舵トルクは0でもよい。推定外乱ロールトルクは、逆モデルから出力された実効トルクと指令トルクとの差から得られる外乱によるトルクの1つである。本発明および実施の形態において、推定外乱ロールトルクが逆モデルから出力される実効トルクと指令トルクとの差から得られる値である場合、制御装置は、必ずしも実効トルクと指令トルクとの差を算出する処理を行っていなくてもよい。推定外乱ロールトルクが逆モデルから出力される実効トルクと指令トルクとの差から得られる値である場合に、制御装置は、逆モデルを用いて実効トルクを算出する処理を行わずに、推定外乱ロールトルクを推定してもよい。制御装置は、リーン車両の逆モデルの情報を記憶していてもよい。なお、制御装置は、有線又は無線で通信する複数の機器で構成されてもよく、1つの機器で構成されてもよい。リーン車両の順モデルは、例えば、伝達関数G(s)で表されてもよい。リーン車両の順モデルが伝達関数G(s)で表される場合、リーン車両の逆モデルは、逆伝達関数G-1(s)で表される。逆モデルの入力であるロール角情報は、例えば、ロール角およびロール角速度を含む。ロール角情報は、ロール角関連情報検出装置によって検出されるロール角検出情報と同じでもよく、異なってもよい。逆モデルの入力である操舵角情報は、例えば、操舵角および操舵角速度を含む。操舵角情報は、操舵角関連情報検出装置によって検出される操舵角検出情報と同じでもよく、異なってもよい。逆モデルの入力である車輪速度情報は、例えば、前輪(または後輪)の車軸線回りの回転量(回転数または回転角度)、および前輪(または後輪)の車軸線回りの回転速度を含む。車輪速度情報は、車輪速度関連情報検出装置によって検出される車輪速度検出情報と同じでもよく、異なってもよい。
【0044】
リーン車両の制御装置が、リーン車両の停止状態において、本発明の姿勢制御を実行したか否かは、例えば、下記のようにして推定できる。リーン車両が停止しているときに、例えば、車両左方向または車両右方向にライダーの重心が移動するようにライダーの姿勢を変化させることで、車体フレームに車両左方向または右方向に外力を加えてロール角を変化させる。このとき、トルク付与装置から付与される駆動トルクおよび/または操舵トルクが変化することで、操舵角および/またはリーン車両の停止位置がわずかに変化した数秒後、操舵角および/またはリーン車両の停止位置が変化せず、リーン車両の停止状態が維持されれば、上記姿勢制御が行われたと推定できる。また、リーン車両の制御装置が、リーン車両の低速走行状態において、本発明の姿勢制御を実行したか否かは、例えば、下記のようにして推定できる。リーン車両が車速2km/h程度の一定の速度で直進走行しているときに、車両左方向および車両右方向にライダーの重心が移動するようにライダーの姿勢の変化を1Hz程度の頻度で繰り返すことで、車体フレームに車両左方向および車両右方向に外力を加えてロール角を変化させる。このとき、トルク付与装置から付与される駆動トルクおよび/または操舵トルクが変化することで、ロール角がライダーによる重心移動に対して逆方向に増加し、リーン車両の車速の変化が小さければ、上記姿勢制御が行われたと推定できる。
【0045】
本発明および実施の形態において、回転は、360°以上の回転に限定されない。本発明および実施の形態における回転は、360°未満の回転も含む。
【0046】
本発明および実施の形態において、Aに基づいて制御するとは、制御に使用される情報をAだけに限定する意図ではない。Aに基づいて制御するとは、AとA以外の情報に基づいて制御する場合を含む。
【0047】
本発明および実施の形態における「複数の選択肢のうちの少なくとも1つ(一方)」とは、複数の選択肢から考えられる全ての組み合わせを含む。複数の選択肢のうちの少なくとも1つ(一方)とは、複数の選択肢のいずれか1つであっても良く、複数の選択肢の全てであっても良い。例えば、AとBとCの少なくとも1つとは、Aのみであっても良く、Bのみであっても良く、Cのみであっても良く、AとBであっても良く、AとCであっても良く、BとCであっても良く、AとBとCであっても良い。本発明および実施の形態におけるAおよび/またはBとは、Aでもよく、Bでもよく、AおよびBの両方でもよいことを意味する。
【0048】
請求の範囲において、ある構成要素の数を明確に特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される場合、本発明は、この構成要素を、複数有しても良い。また本発明は、この構成要素を1つだけ有しても良い。
【0049】
本発明および実施の形態において、含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語は、列挙されたアイテム及びその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。
【0050】
本発明および実施の形態において「取り付けられた(mounted)、接続された(connected)、結合された(coupled)、支持された(supported)という用語」は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続、結合、支持だけでなく、間接的な取付、接続、結合および支持も含む。さらに、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的又は機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
【0051】
他に定義されない限り、本明細書および請求範囲で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0052】
なお、本発明および実施の形態において「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、請求項1の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「しても良い」という用語は非排他的なものである。「しても良い」は、「しても良いがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「しても良い」と記載された構成は、少なくとも、請求項1の構成により得られる上記効果を奏する。
【0053】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、後述する実施形態以外の実施形態でも可能である。本発明は、後述する実施形態に様々な変更を加えた実施形態でも可能である。
【発明の効果】
【0054】
本発明のリーン車両によると、リーン車両の停止状態およびリーン車両の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角の変化が生じた場合に、前後方向の移動を低減しつつ、外乱によるロール角の変化に対するリーン車両の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の第1実施形態のリーン車両の構成を説明する図である。
図2】本発明の第2実施形態のリーン車両の構成を説明する図である。
図3】(a)は本発明の第3実施形態のリーン車両の制御系を示すブロック線図であり、(b)は本発明の第4実施形態のリーン車両の制御系を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
<方向の定義>
図の中において、Uはリーン車両の車両上方向、Dはリーン車両の車両下方向、Lはリーン車両の車両左方向、Rはリーン車両の車両右方向、Fはリーン車両の車両前方向、Reはリーン車両の車両後方向を示す。
【0057】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図1を参照しつつ説明する。第1実施形態のリーン車両1は、複数の車輪2、車体フレーム5、トルク付与装置10および制御装置9を有する。複数の車輪2は、少なくとも1つの前輪3と少なくとも1つの後輪4とを含む。少なくとも1つの後輪4は、少なくとも1つの前輪3よりも車両前後方向における後方向に配置される。なお、図1に示すリーン車両1は二輪車であるが、第1実施形態のリーン車両1は二輪車に限らない。車体フレーム5は、複数の車輪2を車軸線Xa回りに回転可能に支持し、少なくとも1つの前輪3を操舵軸線Xs回りに回転可能に支持する。車体フレーム5は、右旋回時にロール軸Xr回りに車両右方向に傾斜し、左旋回時にロール軸Xr回りに車両左方向に傾斜する。ロール軸Xrは、少なくとも1つの前輪3の接地点の車両左右方向の中心および少なくとも1つの後輪4の接地点の車両左右方向の中心を通る直線である。トルク付与装置10は、駆動トルク付与装置11および操舵トルク付与装置12の少なくとも一方を含む。駆動トルク付与装置11は、少なくとも1つの前輪3および少なくとも1つの後輪4の少なくとも一方に、車軸線Xa回りの正および負の駆動トルクTcaを付与するように構成される。なお、図1に示す駆動トルク付与装置11は、少なくとも1つの前輪3および少なくとも1つの後輪4の両方に駆動トルクTcaを付与するように構成されているが、第1実施形態の駆動トルク付与装置11は、少なくとも1つの前輪3にのみ駆動トルクTcaを付与するように構成されていてもよく、少なくとも1つの後輪4にのみ駆動トルクTcaを付与するように構成されていてもよい。少なくとも1つの前輪3および少なくとも1つの後輪4の両方に駆動トルクTcaを付与する場合、少なくとも1つの前輪3および少なくとも1つの後輪4にそれぞれ同じ大きさの駆動トルクTcaを付与するとは限らない。操舵トルク付与装置12は、少なくとも1つの前輪3に、操舵軸線Xs回りの操舵トルクTcsを付与するように構成される。複数の前輪3に操舵トルクTcsを付与する場合、複数の前輪3にそれぞれ同じ大きさの操舵トルクTcsを付与するとは限らない。制御装置9は、トルク付与装置10が付与する駆動トルクTcaおよび操舵トルクTcsの少なくとも一方を制御して、リーン車両1の姿勢を制御するように構成される。
【0058】
制御装置9は、リーン車両1の停止状態およびリーン車両1の走行状態の少なくとも一方において、姿勢制御を実行するように構成される。制御装置9は、姿勢制御によって、外乱によるロール角φの変化に対する応答性を高くするようにリーン車両1の姿勢を制御する。ロール角φは、車体フレーム5の車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角である。図1は、姿勢制御の処理手順を示すフローチャートを含む。図1を参照しつつ姿勢制御を説明する。制御装置9は、外乱により車体フレーム5に付与されるロール軸Xr回りの推定外乱ロールトルクTerを推定する(ステップS1)。制御装置9は、推定された推定外乱ロールトルクTerと、リーン車両1の重量による重力と、に基づいて、車体フレーム5のロール軸Xr回りの回転角度であるロール角φの外乱による変化分Δφを推定する(ステップS2)。なお、車両右方向のロール角φを正の値で表す場合、車両右方向の変化分Δφは正の値で表され、車両左方向の変化分Δφは負の値で表される。車両左方向のロール角φを正の値で表す場合、車両右方向の変化分Δφは負の値で表され、車両左方向の変化分Δφは正の値で表される。制御装置9は、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを目標ロール角φgから引いた外乱補償目標ロール角φfを設定する(ステップS3)。制御装置9は、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsを制御する(ステップS4)。
【0059】
ステップS2では、制御装置9は、推定外乱ロールトルクTerと、リーン車両1に作用する重力によるリーン車両1を傾斜させるロールトルクTgが打ち消しあうように、車体フレーム5が傾斜したと仮定した場合のロール角φから、外乱によるロール角φの変化分Δφを推定する。姿勢制御の実行中にライダーが乗車しない場合、外乱によるロール角φの変化分Δφを推定するために用いられるリーン車両1に作用する重力とは、リーン車両1の重量による重力である。姿勢制御の実行中にライダーが乗車する場合、外乱によるロール角φの変化分Δφを推定するために用いられるリーン車両1に作用する重力とは、リーン車両1の重量と一般的な体重のライダーの重量と合わせた重量による重力である。
【0060】
以下、図1を用いてステップS2の具体例についてより詳細に説明する。ロールトルクTer、Tgを、それぞれ、重心Gに掛かるロール軸Xr回りの力Fer、Fgとみなす。Fgは、質量と重力加速度の積である。姿勢制御の実行中にライダーが乗車する場合、重心Gは、ライダーがリーンウィズの姿勢でリーン車両1に乗車したと仮定した場合のリーン車両1の重心と一般的な体重のライダーの重心を合わせた合成重心とする。なお、姿勢制御が実行されるときの実際のライダーの乗車姿勢はリーンウィズに限らない。リーン車両1が直立状態のときの重心Gと接地面との車両上下方向の距離をHとすると、ロールトルクTerは、H×Ferであり、ロールトルクTgは、H×Fgである。図1では、Ferを、ロール軸Xrと重心Gを結ぶ直線に直交する方向の力とみなしているが、Ferを、水平方向の力とみなしてもよい。図1の左下の図は、外乱により推定外乱ロールトルクTerが付与されたことで、ロール角φが、外乱補償目標ロール角φfからΔφだけ変化することを示す模式図である。言い換えると、図1の左下の図は、外乱により推定外乱ロールトルクTerが付与されたことで、ロール角φが、仮に推定外乱ロールトルクTerが付与されない場合のロール角φ(φf)に対して、Δφだけ変化している状況を示す。制御装置9は、仮に推定外乱ロールトルクTerが付与されない場合のロール角φを0°と近似し、ロール角φを0°から-Δφだけ変化させたときに、力Ferと力Fgの合力の方向がロール軸Xrを通ると仮定する。力Ferと力Fgの合力の方向がロール軸Xrを通る状態では、ロール軸Xr回りにリーン車両1を傾斜させるロールトルクが発生せず、ロール軸Xr回りの角加速度が生じないからである。図1のようにFerをロール軸Xrと重心Gを結ぶ直線に直交する方向の力とみなした場合、この仮定において、Fer=Fg×sin(-Δφ)の式が成立する。図示は省略するが、Ferを水平方向の力とみなした場合、この仮定において、Fer=Fg×tan(-Δφ)の式が成立する。-Δφは小さいため、sin(-Δφ)とtan(-Δφ)との差は微小である。このように制御装置9は、Fer=Fg×sin(-Δφ)またはFer=Fg×tan(-Δφ)から、Δφを算出する。
【0061】
第1実施形態によると、外乱補償目標ロール角φfに基づいてトルク付与装置10から駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsが付与されることで、推定外乱ロールトルクTerとリーン車両1に作用する重力によってリーン車両1を傾斜させるロールトルクTgとが打ち消し合うようなロール角φにすることができ、外乱によるロール角速度の変化を抑制できる。これにより、ライダーによる車両左右方向の重心移動、車体に対する車両左右方向の風、路面状況、遠心力等による外乱があった場合も、リーン車両1のロール角φを目標ロール角φg(例えば、0°)付近とし、外乱に対抗することができる。そのため、リーン車両1の停止状態およびリーン車両1の走行状態の少なくとも一方において、リーン車両1の車速や操舵角の変化を最小限にするように制御できる。つまり、リーン車両1の停止状態およびリーン車両1の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角φの変化が生じた場合でも、前後方向の移動を低減しつつ、より早くリーン車両1の姿勢を制御することができる。従って、リーン車両1の停止状態およびリーン車両1の走行状態の少なくとも一方において、外乱によるロール角φの変化に対するリーン車両1の姿勢制御の応答性を高めることができる。
【0062】
なお、第1実施形態の制御装置9は、少なくともリーン車両1の停止状態において、姿勢制御を実行するように構成されてもよい。停止状態のリーン車両1は、走行状態のリーン車両1に比べて、外乱によってリーン車両1の姿勢が変化しやすい。リーン車両1の停止状態において姿勢制御が実行されることで、リーン車両1の停止状態において、リーン車両の車速や操舵角の変化を最小限にするように制御できる。第1実施形態の制御装置9は、少なくともリーン車両1の走行状態において、姿勢制御を実行するように構成されてもよい。第1実施形態の制御装置9は、少なくともリーン車両1が0km/hより高く10km/h以下の車速で走行する低速走行状態において、姿勢制御を実行するように構成されてもよい。車速が10km/h以下の低速走行状態では、車速が10km/hより高い走行状態と比較して、外乱によってリーン車両の姿勢が変化しやすい。低速走行状態で姿勢制御が実行されることで、リーン車両1の低速走行状態において、リーン車両の車速や操舵角の変化を最小限にするように制御できる。第1実施形態の制御装置9は、少なくともリーン車両1の停止状態と低速走行状態において、姿勢制御を実行するように構成されてもよい。
【0063】
なお、第1実施形態の制御装置9は、姿勢制御において、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび操舵トルクTcsの両方を制御してもよい。制御装置9は、リーン車両1の停止状態での姿勢制御において、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび操舵トルクTcsの両方を制御してもよい。制御装置9は、リーン車両1の低速走行状態での姿勢制御において、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび操舵トルクTcsの両方を制御してもよい。第1実施形態の制御装置9は、姿勢制御において、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaのみまたは操舵トルクTcsのみを制御してもよい。制御装置9は、リーン車両1の停止状態での姿勢制御において、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaのみまたは操舵トルクTcsのみを制御してもよい。制御装置9は、リーン車両1の低速走行状態での姿勢制御において、外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaのみまたは操舵トルクTcsのみを制御してもよい。
【0064】
なお、第1実施形態のリーン車両1は、車体フレーム5に取り付けられて、制御装置9によって制御され、車体フレーム5をロール軸Xr回りに傾斜させるロールトルクを付与するロールトルク付与装置を備えなくてよい。
【0065】
なお、第1実施形態の制御装置9は、リーン車両1がライダーによって運転されずに自律運転するときに、姿勢制御を実行してもよい。第1実施形態の制御装置9は、リーン車両1がライダーによって運転されているときに、姿勢制御を実行してもよい。第1実施形態のリーン車両1は、自律運転しない車両でもよく、自律運転のみを行う車両でもよい。
【0066】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態のリーン車両1について説明する。第2実施形態のリーン車両1は、第1実施形態のリーン車両1の特徴を全て有する。図2に示すように、第2実施形態のリーン車両1は、ロール角関連情報検出装置6、操舵角関連情報検出装置7、および車輪速度関連情報検出装置8を有する。ロール角関連情報検出装置6は、車体フレーム5のロール角φに関連するロール角検出情報を検出する。操舵角関連情報検出装置7は、いずれか1つの前輪3の操舵軸線Xs回りの回転角度である操舵角θに関連する操舵角検出情報を検出する。なお、図2では操舵角θを模式的に表現している。車輪速度関連情報検出装置8は、いずれか1つの車輪2の車軸線Xa回りの回転速度である車輪速度Sに関連する車輪速度検出情報を検出する。
【0067】
第2実施形態の制御装置9は、姿勢制御において、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsを含む指令トルクTcと、当該指令トルクが付与された直後にロール角関連情報検出装置6、操舵角関連情報検出装置7、および車輪速度関連情報検出装置8によってそれぞれ検出されたロール角検出情報、操舵角検出情報、および車輪速度検出情報と基づいて、推定外乱ロールトルクTerを推定する。これにより、推定外乱ロールトルクTerをより精度良く推定することができるため、より早くリーン車両1の姿勢を制御することができる。従って、外乱によるロール角φの変化に対するリーン車両1の姿勢制御の応答性をより高めることができる。以下、図2のブロック線図を参照して具体例を説明する。
【0068】
図2のブロック線図では、制御装置9は、外乱ロールトルク推定部20と、ロール角変換部22と、指令トルク算出部23を有する。図2の検出情報yは、3つの検出装置6~8によってそれぞれ検出されたロール角検出情報、操舵角検出情報、および車輪速度検出情報を含む。外乱ロールトルク推定部20は、指令トルクTcと検出情報yに基づいて推定外乱ロールトルクTerを推定する。指令トルクTcは、トルク付与装置10から付与されるトルクの総称である。指令トルクTcは、駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsを含む。指令トルクTcは、0のロール軸Xr回りの指令ロールトルクTcrを含む。ロール角変換部22は、外乱ロールトルク推定部20によって推定された推定外乱ロールトルクTerと、リーン車両1の重量による重力とに基づいて、外乱によるロール角φの変化分Δφを推定する。指令トルク算出部23は、ロール角変換部22によって推定された外乱によるロール角φの変化分Δφに基づいて指令トルクTcを設定する。指令トルク算出部23は、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを目標ロール角φgから引いて外乱補償目標ロール角φfを設定し、外乱補償目標ロール角φfに基づいて指令トルクTcを設定する。
【0069】
図2のブロック線図に示すプラントPは、制御対象である。プラントPは、トルク付与装置10、ロール角関連情報検出装置6、操舵角関連情報検出装置7、および車輪速度関連情報検出装置8を含む。プラントPには、指令トルクTcと、外乱により車体フレーム5に付与されるロール軸Xr回りの外乱ロールトルクTdrが入力される。プラントPには、外乱により少なくとも1つの車輪2に付与される車軸線Xa回りの外乱駆動トルクが入力(付与)される場合がある。また、プラントPには、外乱により少なくとも1つの前輪3に付与される操舵軸線Xs回りの外乱操舵トルクが入力(付与)される場合がある。
【0070】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態のリーン車両1について説明する。第3実施形態のリーン車両1は、第2実施形態のリーン車両1の特徴を全て有する。制御装置9は、姿勢制御において、推定外乱ロールトルクTerの推定のため、ロール角関連情報検出装置6、操舵角関連情報検出装置7、および車輪速度関連情報検出装置8によってそれぞれ検出されたロール角検出情報、操舵角検出情報、および車輪速度検出情報に基づいて、実効トルクTeを推定する。実効トルクTeは、トルク付与装置10から付与されたと推定される駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsと、外乱により車体フレーム5に付与されたと推定される推定外乱ロールトルクTerとを含む。そして、制御装置9は、推定された実効トルクTeと、指令トルクTcとの差から推定外乱ロールトルクTerを取得する。以下、図3(a)のブロック線図を参照して具体例を説明する。
【0071】
外乱ロールトルク推定部20は、リーン車両1の逆モデル21を用いて実効トルクTeを推定する。リーン車両1の逆モデル21は、リーン車両1をモデル化したリーン車両1の順モデルとは逆の入出力関係を持つモデルである。図3(a)に示すプラントPは、制御対象である。プラントPをモデル化したものが、リーン車両1の順モデルである。
【0072】
逆モデル21の入力は、検出情報yである。図3(a)の検出情報yは、図2の検出情報yと同じであってもよく異なってもよい。図3(a)の検出情報yは、ロール角関連情報検出装置6によって検出されたロール角検出情報から得られるロール角φに関連するロール角情報を含む。ロール角情報は、ロール角検出情報そのものでもよく、ロール角検出情報に基づいて制御装置9(外乱ロールトルク推定部20)によって算出される情報でもよい。例えば、ロール角検出情報がロール角速度で、ロール角情報がロール角速度から算出されたロール角φを含んでいてもよい。また、図3(a)の検出情報yは、操舵角関連情報検出装置7によって検出された操舵角検出情報から得られる操舵角θに関連する操舵角情報を含む。操舵角情報は、操舵角検出情報そのものでもよく、操舵角検出情報に基づいて制御装置9(外乱ロールトルク推定部20)によって算出される情報でもよい。また、図3(a)の検出情報yは、車輪速度関連情報検出装置8によって検出された車輪速度検出情報から得られる車輪速度Sに関連する車輪速度情報を含む。車輪速度情報は、車輪速度検出情報そのものでもよく、車輪速度検出情報に基づいて制御装置9(外乱ロールトルク推定部20)によって算出される情報でもよい。
【0073】
リーン車両1の逆モデル21は、実効トルクTeを出力する。逆モデル21から出力される実効トルクTeは、複数の車輪2に付与される車輪軸線Ta回りの全てのトルクと、少なくとも1つの前輪3に付与される操舵軸線Ts回りの全てのトルクと、車体フレーム5に付与されるロール軸Xr回りの全てのトルクとを含む。したがって、実効トルクTeは、指令トルクTcと推定外乱ロールトルクTerを含む。実効トルクTeは、指令トルクTcと推定外乱ロールトルクTerに加えて、外乱により少なくとも1つの車輪2に付与されたと推定される車輪軸線Ta回りの推定外乱駆動トルクTea(図示なし)と、外乱により少なくとも1つの前輪3に付与されたと推定される操舵軸線Ts回りの推定外乱操舵トルクTes(図示なし)とを含んでもよい。
【0074】
外乱ロールトルク推定部20は、検出情報yを逆モデル21に入力したときに逆モデル21から出力される実効トルクTeと、指令トルクTcとの差から推定外乱ロールトルクTerを取得する。上述したように、指令トルクTcは、0のロール軸Xr回りの指令ロールトルクTcrを含む。そのため、実効トルクTeと指令トルクTcとの差から推定外乱ロールトルクTerを取得できる。推定外乱ロールトルクTerは、プラントPに入力(付与)された外乱ロールトルクTdrとほぼ同じである。そして、制御装置9(ロール角変換部22および指令トルク算出部23)は、推定外乱ロールトルクTerから外乱によるロール角φの変化分Δφを推定し、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsの設定に使用する。外乱により付与されるトルクのうちロール軸Xr回りのトルクに着目したことで、ロールトルク付与装置を備えなくても、外乱によるロール角φの変化分Δφを打ち消すようにリーン車両1の姿勢を制御することできる。
【0075】
なお、第3実施形態のリーン車両1は、図3(a)中二点鎖線で示したローパスフィルタ25を有してもよい。ローパスフィルタ25は、リーン車両1の逆モデル21から出力された実効トルクTeと、指令トルクTcとの差に含まれるノイズ等の高周波成分を除去する。
【0076】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態のリーン車両1について説明する。第4実施形態のリーン車両1は、第1実施形態のリーン車両1の特徴を全て有する。第4実施形態のリーン車両1は、第2実施形態または第3実施形態のリーン車両1の特徴を有してもよい。第4実施形態のリーン車両1は、第2実施形態と同様に、ロール角関連情報検出装置6、操舵角関連情報検出装置7、および車輪速度関連情報検出装置8を有する(図2参照)。第4実施形態の制御装置9は、姿勢制御において、ロール角関連情報検出装置6、操舵角関連情報検出装置7、および車輪速度関連情報検出装置8によってそれぞれ検出されたロール角検出情報、操舵角検出情報、および車輪速度検出情報に基づいて設定された目標ロール角φgから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いた外乱補償目標ロール角φfに基づいて、トルク付与装置10から付与される駆動トルクTcaおよび/または操舵トルクTcsを制御する。第4実施形態の制御装置9は、リーン車両1が平衡状態になるように目標ロール角φgを設定してもよい。つまり、第4実施形態の制御装置9は、3つの検出装置6~8によって検出されたロール角検出情報、操舵角検出情報、および車輪速度検出情報に基づいて、リーン車両1が平衡状態になるように目標ロール角φgを設定してもよい。以下、図3(b)のブロック線図を参照して具体例を説明する。
【0077】
図3(b)は、第4実施形態のリーン車両1が、第2実施形態の図2(a)の構成を全て有する場合のリーン車両1の制御系を示すブロック線図である。図3(b)の外乱ロールトルク推定部20は、第3実施形態の図3(a)の外乱ロールトルク推定部20と同じでもよい。図3(b)では、制御装置9は、目標値情報rと、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφと、検出情報yとに基づいて外乱補償目標ロール角φfを設定する。
【0078】
図3(b)の検出情報yは、ロール角関連情報検出装置6によって検出されたロール角検出情報から得られるロール角φに関連する情報と、操舵角関連情報検出装置7によって検出された操舵角検出情報から得られる操舵角θに関連する情報と、車輪速度関連情報検出装置8によって検出された車輪速度検出情報から得られる車輪速度Sに関連する情報とを含む。図3(b)の検出情報yは、図2の検出情報yと同じでもよい。また、図3(b)の検出情報yは、図2の検出情報yに含まれるロール角検出情報、操舵角検出情報および車輪速度検出情報に加えて、3つの検出装置6~8の少なくとも1つによって検出された情報に基づいて制御装置9によって算出された情報を含んでいてもよい。図3(b)の外乱ロールトルク推定部20が、図3(a)の外乱ロールトルク推定部20と同じである場合、図3(b)の検出情報yは、図3(a)の検出情報yと同じでもよく、図3(a)の検出情報yに含まれるロール角情報、操舵角情報および車輪速度情報に加えて、3つの検出装置6~8の少なくとも1つによって検出された情報に基づいて制御装置9によって算出された情報を含んでいてもよい。つまり、検出情報yのうち逆モデル21に入力される情報と、検出情報yのうち外乱補償目標ロール角φfの設定に使用される情報は、同じでもよく、異なってもよい。目標値情報rは、制御装置9に記憶されている。
【0079】
目標値情報rは、ロール角φに関連する情報の目標値と、操舵角θに関連する情報の目標値と、車輪速度Sに関連する情報の目標値を含む。目標値情報rにおいて、ロール角φに関連する情報の目標値は、操舵角θに関連する情報の目標値および車輪速度Sに関連する情報の目標値に対応付けられている。目標値情報rは、例えば、リーン車両1が平衡状態であるときのロール角φと操舵角θと車速(または車輪速度S)の組み合わせのデータを含んでいてもよい。ロール角φに関連する情報の目標値は、例えば、ロール角φの目標値と、ロール角速度の目標値の両方を含んでいてもよい。操舵角θに関連する情報の目標値は、例えば、操舵角θの目標値と、操舵角速度の目標値の両方を含んでいてもよい。車輪速度Sに関連する情報の目標値は、例えば、前輪3の回転量の目標値と、前輪3の回転速度の目標値の両方を含んでいてもよい。
【0080】
制御装置9は、外乱によるロール角φの変化分Δφを推定すると、目標値情報rにおける全てのロール角φから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いて、ロール外乱補償目標値情報r´を作成する。制御装置9は、ロール外乱補償目標値情報r´と検出情報yに基づいて、外乱補償目標ロール角φfを設定する。制御装置9は、検出情報yに含まれるロール角φに関連する情報と操舵角θに関連する情報と車輪速度Sに関連する情報の組み合わせと、ロール外乱補償目標値情報r´におけるロール角φに関連する情報と操舵角θに関連する情報と車輪速度Sに関連する情報の組み合わせとの差に基づいて、外乱補償目標ロール角φfを設定する。具体的には、例えば、制御装置9は、ロール外乱補償目標値情報r´において、検出情報yに含まれる操舵角θおよび車速(または車輪速度S)と同じ操舵角θおよび車速(または車輪速度S)に対応付けられたロール角φを抽出してもよい。そして、制御装置9は、抽出したロール角φを、外乱補償目標ロール角φfとして設定してもよい。このようにロール外乱補償目標値情報r´から検出情報yに基づいてロール角φを外乱補償目標ロール角φfに設定することは、目標値情報rから検出情報yに基づいて設定される目標ロール角φgから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いた値を、外乱補償目標ロール角φfに設定することと実質的に同じである。目標値情報rが、リーン車両1が平衡状態であるときのロール角φと操舵角θと車速(または車輪速度S)の組み合わせのデータを含む場合、実質的に、制御装置9は、リーン車両1が平衡状態になるように目標ロール角φgを設定していることになる。
【0081】
制御装置9は、ロール外乱補償目標値情報r´と検出情報yに基づいて、外乱補償目標ロール角φfと目標操舵角と目標車速(または目標車輪速度)を設定してもよい。制御装置9は、ロール外乱補償目標値情報r´と、検出情報yと、これら以外の制御装置9に入力された情報に基づいて、外乱補償目標ロール角φfと目標操舵角と目標車速(または目標車輪速度)を設定してもよい。制御装置9に入力された情報は、例えば、リーン車両1を運転するためのライダーの操作によって制御装置9に入力された情報でもよい。制御装置9は、外乱補償目標ロール角φfと目標操舵角と目標車速(または目標車輪速度)を、ロール外乱補償目標値情報r´におけるロール角φと操舵角θと車速(または車輪速度S)の値の組み合わせとなるように設定してもよい。このようにロール外乱補償目標値情報r´と検出情報yに基づいて外乱補償目標ロール角φfを設定することは、目標値情報rから検出情報yに基づいて設定される目標ロール角φgから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いた値を、外乱補償目標ロール角φfに設定することと実質的に同じである。目標値情報rが、リーン車両1が平衡状態であるときのロール角φと操舵角θと車速(または車輪速度S)の組み合わせのデータを含む場合、実質的に、制御装置9は、リーン車両1が平衡状態になるように目標ロール角φgと目標操舵角と目標車速(または目標車輪速度)を設定していることになる。
【0082】
図3(b)のブロック線図では、指令トルク算出部23は、指令トルク決定部24を含む。指令トルク決定部24は、外乱補償目標ロール角φfに基づいて指令トルクTcを設定する。指令トルク決定部24は、外乱補償目標ロール角φfと目標操舵角と目標車速(または目標車輪速度)に基づいて指令トルクTcを設定してもよい。
【0083】
なお、図3(b)のブロック線図では、目標値情報rのロール角φから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いてから、検出情報yを用いて、外乱補償目標ロール角φfが設定されているが、目標値情報rと、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφと、検出情報yとに基づいて、外乱補償目標ロール角φfを設定する方法は、これに限らない。制御装置9は、目標値情報rと検出情報yとに基づいて目標ロール角φgを設定した後、設定した目標ロール角φgから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いて、外乱補償目標ロール角φfを設定してもよい。制御装置9は、目標値情報rと検出情報yとに基づいて目標ロール角φgと目標操舵角と目標車速(または目標車輪速度)を設定した後、設定した目標ロール角φgから、推定された外乱によるロール角φの変化分Δφを引いて、外乱補償目標ロール角φfを設定してもよい。
【0084】
なお、第2実施形態および第4実施形態の外乱ロールトルク推定部20の具体例は、第3実施形態の外乱ロールトルク推定部20に限らない。外乱ロールトルク推定部20は、実効トルクTeを算出することなく、指令トルクTcと3つの検出装置6~8によって検出された情報に基づいて推定外乱ロールトルクTerを推定してもよい。この場合、外乱ロールトルク推定部20は、ローパスフィルタ25と同様に、高周波成分を除去するローパスフィルタを含んでいてもよい。つまり、第2実施形態および第4実施形態の外乱ロールトルク推定部20は、指令トルクTcと3つの検出装置6~8によって検出された情報とローパスフィルタを用いて推定外乱ロールトルクTerを推定してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1:リーン車両、2:車輪、3:前輪、4:後輪、5:車体フレーム、6:リーン角関連情報検出装置、7:操舵角関連情報検出装置、8:車輪速度関連情報検出装置、9:制御装置、10:トルク付与装置、11:駆動トルク付与装置、12:操舵トルク付与装置、21:逆モデル
図1
図2
図3