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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032554
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】釣竿、及び、継合構造の形成方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/02 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A01K87/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136272
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】松尾 孝洋
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA10
(57)【要約】
【課題】大径竿杆と小径竿杆の継合部分でガタや鳴きが生じることが低減され、寸法精度が良い釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿は、大径部3Aの内周面に小径部5Aの外周面を挿入して両者を継合させる継合構造10を有する。継合構造10は、ストレート合わせ部10Aと、小径部5Aの端部に圧入され、軸方向に突出する継合部20Bを具備した弾性部材20と、を備えており、小径部5Aの外周面と継合部20Bの外周面は一体的にセンタレス加工されている。継合部20Bの外周面20aは、センタレス加工寸法(小径竿杆の外周面5aの径D)に対してφ0.03mm~φ0.06mm大径であることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部の内周面に小径部の外周面を挿入して両者を継合させる継合構造を有する釣竿において、
前記継合構造は、ストレート合わせ部と、前記小径部の端部に圧入され、軸方向及び径方向に突出する継合部を具備した弾性部材と、を有しており、
前記小径部の外周面と前記継合部の外周面は一体的にセンタレス加工されており、前記継合部の外周面は、センタレス加工寸法に対してφ0.03mm~φ0.06mm大径であることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記弾性部材は、円筒形状の中実構造、又は、中空構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記弾性部材は中空構造であり、その内側空洞部に芯材を接着固定した、ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項4】
前記小径部の端部に圧入される弾性部材には、前記小径部の内周面との間で塗布される接着剤の接着剤溜まりが形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項5】
前記継合構造は、前記ストレート合わせ部の軸方向両側で、前記小径部と大径部の継合が成されることを特徴とする、請求項1に記載の釣竿。
【請求項6】
釣竿を構成する複数の竿杆の内、隣接する竿杆の大径部の内周面に小径部の外周面を挿入して両者を継合させる継合構造の形成方法において、
前記小径部の端部に、軸方向及び径方向に突出する継合部を具備した弾性部材を圧入して接着する弾性部材接着工程と、
前記小径部、及び、前記軸方向に突出する継合部を、所定の外径寸法にセンタレス加工する表面処理工程と、
を有することを特徴とする、継合構造の形成方法。
【請求項7】
前記センタレス加工を施した後、前記継合部の外径は、センタレス加工寸法に対してφ0.03mm~φ0.06mm大径に加工されている、ことを特徴とする請求項6に記載の継合構造の形成方法。
【請求項8】
前記弾性部材は中空構造であり、前記センタレス加工を施した後、その内側空洞部に芯材を接着固定する、ことを特徴とする請求項6に記載の継合構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する大径竿杆と小径竿杆との間の継合構造に特徴を有する釣竿、及び、継合構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数本の竿杆を備えた釣竿は、隣接する竿杆同士を継合構造によって継合するようになっている。継合構造としては、並継式、逆並継式、インロー式、振出式が知られており、継合状態にすることで釣竿の全長を長くすることができ、継合状態を解除することで釣竿の仕舞寸法を短くすることができる。
【0003】
継合構造として、隣接する大径竿杆と小径竿杆の端部に、それぞれ異なるテーパ率のテーパ面を形成し、それぞれのテーパ面同士を継合させることが知られている。このような継合構造は、嵌合力が十分でなく、緩みやガタが生じ易いことがあるため、例えば、特許文献1に開示されているように、小径竿杆の端部に弾性部材(ゴム栓)を取着した継合構造が知られている。この継合構造は、弾性部材を小径竿杆の端部から軸方向に突出し、その突出部分にフランジを形成して径方向外面を大径竿杆の内面に圧接させることで、隣接する竿杆同士を継合して弛緩防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-109767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示された継合構造は、小径竿杆の端部に弾性部材を取着しているが、弾性部材の公差は1/10mmオーダであるため、継合構造に用いる際、寸法管理を精度よく行なうことはできない。一般的に、並継式の継合構造では、小径竿杆の外周面と大径竿杆の内周面との間のクリアランスは、0.02mm以上になると、ガタ、鳴きが発生することから、上記した弾性部材の公差では、そのようなガタや鳴きが発生しないように寸法管理することが難しい。すなわち、弾性部材を形成する際の公差では、継合部分の寸法を、製品として問題が生じない程度にコントロールすることができないため、検品した際、後加工が必要になる等、製造の手間がかかると共にコストも高くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、大径竿杆(大径部)と小径竿杆(小径部)の継合部分でガタや鳴きが生じることが低減され、寸法精度が良い継合構造を備えた釣竿、及び、そのような継合構造の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、大径部の内周面に小径部の外周面を挿入して両者を継合させる継合構造を有しており、前記継合構造は、ストレート合わせ部と、前記小径部の端部に圧入され、軸方向及び径方向に突出する継合部を具備した弾性部材と、を有しており、前記小径部の外周面と前記継合部の外周面は一体的にセンタレス加工されており、前記継合部の外周面は、センタレス加工寸法に対してφ0.03mm~φ0.06mm大径であることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の釣竿では、小径部の外周面と、小径部に圧入される弾性部材の継合部(フランジ)の外周面を、一体的にセンタレス加工している。両者を一体的にセンタレス加工すると、弾性部材の継合部の部分が、加工時の押圧力によって軸方向に延ばされる力を受けながら、小径部の外周面と同じ外周面となるように切削加工される。そして、センタレス加工を終了すると、軸方向に伸びた状態にある継合部は、弾性力によって元に戻ろうとしつつ径方向に膨らむようになる。この継合部の径方向の膨らみについては、センタレス加工寸法(小径部の外周面の寸法)に対して、φ0.03mm~φ0.06mm大径にすることができるので、1/100mmオーダで精密な寸法管理を行なうことができ、小径部と大径部の継合時に、ガタや鳴きが生じることが低減される。また、センタレス加工するだけで、精密な寸法管理を行なうことが可能であるため、後加工等をすることが抑制され、加工コストを低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、釣竿を構成する複数の竿杆の内、隣接する竿杆の大径部の内周面に小径部の外周面を挿入して両者を継合させる継合構造の形成方法を提供するのであり、この形成方法は、前記小径部の端部に、軸方向及び径方向に突出する継合部を具備した弾性部材を圧入して接着する弾性部材接着工程と、前記小径部、及び、前記軸方向に突出する継合部を、所定の外径寸法にセンタレス加工する表面処理工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
このような形成方法では、小径部と一体的にセンタレス加工される弾性部材の継合部の外径の寸法を精密に寸法管理することができることから、弾性部材が圧入された小径部と大径部を嵌合した際、ガタや鳴きが生じることが低減される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大径竿杆(大径部)と小径竿杆(小径部)の継合部分でガタや鳴きが生じることはなく、寸法精度が良い釣竿、及び、そのような継合構造を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る釣竿の一実施形態の主要部を示す図。
図2図1に示した釣竿の継合構造の小径部(小径竿杆)の端部と、その端部の開口に圧入される弾性部材を模式的に示した図(センタレス加工前)。
図3】(a)~(c)は、図2に示した継合部分の加工工程を順に説明する図。
図4】弾性部材の第2実施形態を示す図。
図5】弾性部材の第3実施形態を示す図。
図6】(a)は、図5に示す弾性部材と、小径竿杆及び大径竿杆の関係を示す図、(b)は、小径竿杆に弾性部材を接着固定した状態を示す図。
図7】弾性部材の第4実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態の主要部を示す図である。
本実施形態に係る釣竿1は、複数の竿杆を並継式で継合する構造となっており、元竿杆3、中竿杆5、及び穂先竿杆7の各竿杆同士は、その端部領域Pにおいて、継合構造10によって継合される。この場合、中竿杆の本数(全体の継本数)については限定されることはなく、元竿杆3に直接、穂先竿杆7を継合する2本継ぎの構成であっても良い。
また、釣竿は、リールが装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドが取り付けられた構造であっても良い。
【0014】
前記元竿杆3及び中竿杆5は、繊維強化樹脂製の管状体で形成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し加熱工程を経た後、脱芯する等、定法に従って成形されている。また、穂先竿杆7は、元竿杆3及び中竿杆5と同様、管状体として形成されていても良いし、中実体、或いは、管状体と中実体で形成されていても良い。
【0015】
次に、上記した釣竿1の継合構造10について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、隣接する元竿杆3と中竿杆5との継合構造10の内、中竿杆5側の継合構造を模式的に示した図であり、図3(a)~(c)は、図2に示した継合部分の加工工程を順に説明する図である。この場合、元竿杆と中竿杆は、隣接して継合され、先細構造となることから、以下の説明では、元竿杆3については大径竿杆、中竿杆5については小径竿杆とも称する。
【0016】
本実施形態では、継合構造10として並継式を用いている。このため、小径竿杆5の端部(小径部5Aとも称する)がオス側となって、大径竿杆3の端部(大径部3Aとも称する)であるメス側に挿入、嵌合される。すなわち、大径部3Aは、円筒状に形成され、その内周面3aに小径部5Aの外周面5aを挿入して両者を継合させる構造となっている(図3(b)において、継合構造10の軸方向における合わせ長さを符号Lで示す)。
【0017】
隣接して継合される大径竿杆3及び小径竿杆5は、上記したように、プリプレグシートを巻回することで形成されており、少なくとも前記合わせ長さLの部分には、補強用のプリプレグシートが巻回されていることが好ましい。また、各竿杆を構成するプリプレグシートは、強化繊維が軸方向に指向されたもの、周方向に指向されたもの、傾斜方向に指向されたもの、織布状に編成されたものが用いられ、これらが適宜、組み合わせて使用される。
【0018】
前記継合構造10は、軸方向における合わせ長さLの範囲内において、ストレート合わせ部10Aを備えている。図3(c)において、ストレート合わせ部10Aの軸方向の合わせ長さが符号L1で示されている。
本実施形態では、ストレート合わせ部10Aの軸方向両側で小径部5Aと大径部3Aの継合が成されるように構成されている。前記ストレート合わせ部10Aでは、小径竿杆5の外周面5aと大径竿杆3の内周面3aとの間に、継合時において隙間Gが生じるようになっており、その軸方向両側で以下のような継合がなされる。
【0019】
このように、継合構造にストレート合わせ部10Aを設け、その軸方向両側の2個所(A点、B点)で継合を行なうことにより、ストレート合わせ部の領域にテーパを形成して継合する構造と比較して、継合部分が軸方向に離間した2個所となり、1個所での継合と比べると、継合力の向上が図れる。
勿論、継合構造は、弾性部材が配設されるA点のみで構成されていても良い。
【0020】
前記A点における継合構造は、以下のように構成される。
小径竿杆5の小径部5Aの端部開口5bには、弾性部材(ゴム栓)20が圧入され、接着固定される。弾性部材20は、例えば、シリコン、ニトリルゴム(NBR)等を金型に注入することで一体成形されており、中実の円柱部20Aと、その端部に径方向に突出するように形成された継合部(フランジ)20Bとを備えている。この継合部20Bは、弾性部材を小径部5Aの端部開口5bに接着した際、軸方向に突出する。また、硬度については材料にもよるが、あまり柔らか過ぎると継合部において十分な継合力が発揮されず、逆に硬すぎると、大径竿杆と継合する際に大きな抵抗になって摺動し難くなる可能性があるため、好ましくは、JIS規格(JIS K 6253)で60°~80°程度の硬さのものが適している。
【0021】
前記円柱部20Aは、小径部5Aの端部開口5bに圧入できる大きさに形成されており、接着剤を塗布して、圧入固定される(弾性部材接着工程;図3(a))。前記継合部20Bは、円柱部20Aが小径部5Aの端部開口5bの内周面に圧入して接着された際、軸方向に突出すると共に、小径部5Aの開口端縁5Bから径方向に突出する大きさに形成されている。具体的に、継合部20Bは、その外径D1が、円柱部20Aの外径D2に対して大きくなるように(0.5mm程度)形成されている(図2参照)。
【0022】
上記のように、弾性部材20が接着、固定された小径部5Aは、所定の外径寸法となるように、公知のセンタレス加工機を用いてセンタレス加工が施される(表面処理工程;図3(a)(b)参照)。この場合、センタレス加工は、小径部5Aの外周面5a´、及び、小径部5Aの端部開口5bの内面に接着された弾性部材20に対して一体的に行われる。このため、弾性部材20の継合部20Bの外周面20a´も、一体的に切削加工される。
このセンタレス加工は、小径部5Aの外周面5a´が所定の外径Dになるまで行われることから、併せて継合部20Bの外周面20a´についても同様な外径Dになるまで行われることとなる。
【0023】
上記したセンタレス加工が終了すると、継合部20Bの外周面20aは、加工が施された小径部5Aの外周面5aに対して、径方向に僅かに膨出する。すなわち、センタレス加工を施すと、継合部20Bの外周面20aは、外径Dになるのではなく僅かに膨出する。この僅かに膨出した膨出量については、センタレス加工後に膨出した外周面20aの外径をdとした場合、φ0.03mm~0.06mmの範囲内にすることができる((d-D)=0.03mm~0.06mm)。
【0024】
この膨出は、小径部5Aの外周面5a´と継合部20Bの外周面20a´を一体的にセンタレス加工することによって形成される。具体的には、継合部20Bの部分が、加工時の押圧力によって軸方向に延ばされる力を受けながら表面が切削されており、センタレス加工を終了すると、軸方向に伸びた状態にある継合部20Bが、その弾性力によって元に戻ろうとすることで形成される。すなわち、継合部20Bは、小径部5Aの開口端縁5Bで規制された状態となっているため、そのときの収縮力によって径方向に膨らみ、膨出部が形成される。
【0025】
この継合部20Bの膨らみについては、弾性部材20の硬度、大きさ等に依存するが、センタレス加工寸法(小径部5Aの外周面の寸法)に対して、φ0.03mm~φ0.06mm程度、大径にすることが容易に行える。すなわち、1/100mmオーダの公差で膨出させる(膨出部を形成する)ことを容易に行なうことができる。
なお、弾性部材20に対して、上記したセンタレス加工を施すと、その部分(継合部20Bの部分)は、径方向に膨出すると共に膨出した表面については、軸方向にストレート状に延出する。この場合、径方向に膨出した表面は、弾性部材20の構成に応じて、後端に向けて拡径する(テーパ状の表面になる)等、種々の形態になり得るが、本発明では、膨出部の表面形状(表面状態)については、特に限定されることはない。
【0026】
また、上記したセンタレス加工時には、併せて前記B点で継合が成されるように加工処理が施される。
具体的には、小径竿杆5のストレート合わせ部10Aの反対側の端部に、外周面5a´が前記A点から軸方向に離れるにしたがって、次第に拡径するようにテーパ5Cを形成することで、そのような継合部を形成することが可能である。
【0027】
小径竿杆5と大径竿杆3の継合構造10におけるストレート合わせ部10Aでは、大径竿杆3の内周面3aは、軸方向に同一径となるように形成されている。このため、大径竿杆3に上記した小径竿杆5を差し込むと、大径竿杆3の開口端縁3Aにテーパ5Cが当て付いて継合が成されると共に、小径竿杆5に取着された弾性部材20の継合部20Bが大径竿杆3の内周面3aと継合して、ストレート合わせ部10Aの両端側(A点、B点)で継合が成されるようになる(図3(c)参照)。
【0028】
上記した本実施形態の継合構造10について、具体的な寸法を挙げながら説明する。
内周面3aの内径D3の大径竿杆3に対し、外周面5aの外径Dの小径竿杆5を継合する場合、内径D3を10.00mm、外径Dを9.95mmで設計する。これにより、嵌合時における両竿杆の隙間Gは0.05mmに設定される。この場合、大径竿杆3の内周面3aは、上述したように、金属製の芯金によって形成されるので、公差が大きくなることはなく、大径竿杆3の内周面3aの内径D3は、10.0mm~10.01mm程度の範囲内で形成される。
【0029】
次に、図3(a)に示す小径竿杆5の外周面5a´及びここに接着固定された弾性部材20の継合部20Bの外周面20a´に対して、上記したようにセンタレス加工を施す。この場合、小径竿杆5の外周面5aの外径Dを設計値として、9.95mmでセンタレス加工をすると、弾性部材20の継合部20Bの外周面20a´は、上記したセンタレス加工が施された後、その収縮によって、φ0.03mm~φ0.06mm程度、大径になっている(膨らんでいる)ため、その膨らみによって、外径dは、9.98mm~10.01mmの範囲で仕上がる。
【0030】
一般的に、大径竿杆と小径竿杆の継合構造では、両者のクリアランスが0.02mmより大きくなると、ガタや鳴きが発生するようになる。上記した実施形態では、弾性部材20の継合部20Bを、小径竿杆5の外周面と共にセンタレス加工することで、継合部20Bの外周面20aの外径dを、1/100mmのオーダで寸法管理することができる。すなわち、大径竿杆3の内周面3aの内径D3の10.0mm~10.01mm程度に対して、継合部20Bの外周面20aの外径dを9.98mm~10.01mmに仕上げることが可能となる。
このように、継合部20Bの外周面と大径竿杆の内周面との間のクリアランスを、0.02mm以下となるように寸法管理することが可能となるので、弾性部材20を用いても公差を考慮することなく、両竿杆を嵌合した際、継合部でガタや鳴きの発生を抑制することが可能となる。
【0031】
また、上記した継合構造の形成方法によれば、継合部20Bの寸法管理を1/100mmオーダで精密に行うことができるので、検品作業時等において、ガタや鳴きが生じたことを低減するための後加工をする作業工程が抑制され、加工コストを低減することが可能となる。
【0032】
また、上記した構成では、弾性部材20を端部開口5bに取着することから、竿杆を落下した場合の衝撃緩和効果が得られると共に、その内部に小径の竿杆を収納した場合の抜け防止効果が得られる。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
以下の実施形態では、上記した実施形態と同一の構成部分については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0034】
図4は、弾性部材の第2の実施形態を示す図である。
この実施形態では、弾性部材20を中実状にするのではなく、中空状(円筒部20A´)にしている。このように、弾性部材20の小径竿杆に接着される部分を中空状に形成することで、継合構造の軽量化を図ることが可能となる。
【0035】
図5から図7は、弾性部材の第3の実施形態を示す図である。
この実施形態では、第2実施形態と同様、弾性部材を中空状(円筒部20A´)に形成すると共に、円筒部20A´の外周面にリング状又は螺旋状に溝21を形成している。この溝21は、接着剤溜まりとしての機能を備えていることから、小径竿杆5と弾性部材20との間の接着力の向上が図れる。
【0036】
また、弾性部材20の軸方向長さである円筒部20A´の長さL3、及び、継合部20Bの長さL4については、以下のように設定することが好ましい。
まず、円筒部20A´の軸方向長さL3については、短すぎると十分な接着強度が得られず、長過ぎると、撓み性に影響を与えたり重量が増加するので、10.0mm~25.0mmの範囲で形成することが好ましい。また、継合部20Bの軸方向長さL4については、短すぎると十分な嵌合強度が得られず、長過ぎると、継合時の摺動性に影響を与えるため、3.0mm~5.0mmの範囲で形成することが好ましい。
【0037】
前記軸方向長さL3,L4については、円筒部20A´の外径(溝が形成されていない部分の外径)D2、及び、継合部20Bの加工前の外径D1に応じて形成すれば良い。具体的には、円筒部20A´の外径D2が10.0mm未満であれば、L3は20.0mm程度、外径D2が10.0mm以上であれば、L3は25.0mm程度にすれば良い。また、継合部20Bの外径D1が12.0mm未満であれば、L4は4.0mm程度、外径D1が12.0mm以上であれば、L4は5.0mm程度にすれば良い。
【0038】
図6(a)で示すように、弾性部材20を小径竿杆5に圧入して接着固定する場合、小径竿杆5の内周面5cの内径D4については、上述したように、金属製の芯金によって形成されるので、公差が大きくなることはなく、設計値に対して+0.01mm程度の範囲内で形成される。また、弾性部材20については、上記したように、接着剤溜まりとなる溝21が形成されており、ここに接着剤(シアノン721等)を塗布して小径竿杆5の内周面に圧入、接着するので、円筒部20A´の外径D2については、設計値として、小径竿杆5の内径D4に対して小径にする(内径D4に対して-0.05mm~-0.1mm程度、小径にする)のが好ましい。
すなわち、弾性部材20は、上記したように、公差が大きい(1/10mmオーダ)ものの、内径D4に対して、ある程度、小径の設計値にしておけば、接着剤溜まりとなる溝21があることで、実際の外径が小さい場合であっても十分な接着強度が得られ、また、逆に、実際の外径が大きい場合であっても、圧入時の抵抗が軽減され、弾性部材20を小径竿杆5に圧入、接着することができる。
【0039】
そして、弾性部材20を小径竿杆5の内周面5cに圧入、接着した後、上記したようなセンタレス加工が施される。このセンタレス加工によって、継合部20Bの外径dは、上述したように、加工後の小径竿杆5の外周面の外径Dよりもφ0.03mm~φ0.06mm程度、大径になっている(図6(b)参照)。
【0040】
このように、弾性部材20が接着固定されて、センタレス加工が施された小径竿杆5は、大径竿杆3に継合される(図6(a)参照)。このとき、大径竿杆3の内周面3aの内径D3は、設計値に対して、0~0.01mm程度の公差があるものの、継合部20Bの外周面20aの外径dについては、センタレス加工によって、小径竿杆の外周面Dとの間で、継合時に鳴きなどが生じないクリアランス(0.02mm程度)以下に形成することが可能となる。
【0041】
また、上記した構成の弾性部材20の円筒部20A´の内側空洞部22には、図7に示すように、芯材30を圧入、固定することが好ましい。この芯材30は、例えば、金属、樹脂、コルク等によって構成することができ、センタレス加工後に圧入、接着することで継合部20Bの外径を大きくことが可能である。すなわち、継合力が弱い場合、このような芯材30を圧入、接着することで、継合力を調整することが可能である。また、芯材30を圧入、接着することで、継合を解除する際に大きく変形し難くなり、図7のP1部分(継合部20Bと小径竿杆5の開口端縁5Bの接合部分)に亀裂が入ったり、嵌合部分がちぎれる等の不具合が生じることはない。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、継合構造を形成するに際し、竿杆の外周面と、その竿杆の端部開口に圧入された弾性部材を一体的にセンタレス加工することに特徴があり、それ以外の構成については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。
【0043】
本発明の継合構造は、小径部と大径部との間にストレート合わせ部があれば、具体的な構造は特定されることはない。このため、両竿杆の継合は、上記した弾性部材の部分のみで行うようにしても良い。また、弾性部材20の継合部(フランジ)については、金型でその大きさが形成されるが、センタレス加工がし易いように、円柱部20Aの外径D2に対して、0.5~1.0mm程度、大きく形成することが好ましい。
【0044】
また、本発明に係る釣竿の継合構造10は、上記した並継式以外にも、逆並継式、インロー式にも適用することが可能である。
すなわち、逆並継式の継合構造では、小径竿杆5の端部が大径部(メス側)となり、大径竿杆3の端部が小径部(オス側)となる。また、インロー式の継合構造では、大径竿杆3の端部にインロー(芯材)が圧入、固定された構成の場合、小径竿杆5の端部が大径部(メス側)、露出するインローが小径部(オス側)となり、小径竿杆3の端部にインロー(芯材)が圧入、固定された構成の場合、大径竿杆3の端部が大径部(メス側)となり、露出するインローが小径部(オス側)となる。
【0045】
また、上記した具体的な寸法は一例であり、釣竿の種別、小径部と大径部の太さ等によって適宜、変形することが可能である。この場合、センタレス加工後の弾性部材20,20´の継合部20Bの外周面の外径dについては、小径部(小径竿杆)の外周面よりも大径(実施形態ではφ0.03mm~φ0.06mm大径)とされたが、膨出量がそのような範囲内になるように、材料を選択すれば良い。さらに、膨出量については、φ0.03mm~φ0.06mmに限定されることはなく、釣竿の太さや種別等によって、適宜、変更することが可能である(φ0mmより大きく形成されていれば良い)。
【符号の説明】
【0046】
1 釣竿
3 元竿杆(大径竿杆)
3A 大径部
5 中竿杆(小径竿杆)
5A 小径部
10 継合構造
10A ストレート合わせ部
20 弾性部材
20B 継合部
30 芯材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7