(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032575
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ブロック共重合体又はその水添物、粘接着剤組成物、アスファルト改質用組成物、及び熱可塑性樹脂改質用組成物。
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20240305BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240305BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
C08L95/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136297
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】000228109
【氏名又は名称】日本エラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】亀田 一平
(72)【発明者】
【氏名】山田 将士
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002AE05Y
4J002AG00X
4J002BP01W
4J002EA016
4J002FD026
4J002FD02Y
4J002GJ00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GQ00
4J026HA06
4J026HA26
4J026HA32
4J026HA39
4J026HA49
4J026HB14
4J026HB26
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB48
4J026HE02
(57)【要約】
【課題】加工性及び機械強度が改善されたブロック共重合体又はその水添物を提供すること。
【解決手段】ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCとを有し、重量平均分子量が8万~50万であり、分子量分布(Mw/Mn)Aが1.5~2.2であり、高分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Hが1.2~1.4であり、低分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Lが1.0~1.1である、ブロック共重合体又はその水添物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCとを有し、
重量平均分子量が8万~50万であり、
分子量分布(Mw/Mn)Aが1.5~2.2であり、
高分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Hが1.2~1.4であり、
低分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Lが1.0~1.1であり、
前記高分子量成分とは、基準分子量以上の分子量を有する重合体成分であり、
前記低分子量成分とは、基準分子量未満の分子量を有する重合体成分であり、
前記基準分子量とは、分子量ピークXと分子量ピークYとの間のボトムピークのうち、最も低分子量側に位置するボトムピークにおける分子量であり、
前記分子量ピークXとは、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて得られる分子量ピークのうち、重量平均分子量が2万以上の分子量ピークの中で最も低分子量側に位置するピークであり、
分子量ピークYとは、前記分子量ピークXと隣接し、その高分子量側に位置する分子量ピークである、
ブロック共重合体又はその水添物。
【請求項2】
ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて得られる前記高分子量成分の最大ピーク分子量が、前記低分子量成分の最大ピーク分子量の2.5~4.0倍であり、
前記高分子量成分が、前記低分子量成分の前記最大ピーク分子量の10倍以上の分子量を有する超高分子量成分を含み、
前記超高分子量成分の含有量が、前記ブロック共重合体の総量に対して1~10質量%である、
請求項1に記載のブロック共重合体又はその水添物。
【請求項3】
前記低分子量成分の最大ピーク分子量が3万~20万である、
請求項1に記載のブロック共重合体又はその水添物。
【請求項4】
前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体の総量に対して10~50質量%であり、
前記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合を有し、
前記ビニル結合の量が、前記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~90mol%である、
請求項1に記載のブロック共重合体又はその水添物。
【請求項5】
前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体の総量に対して10~50質量%であり、
前記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、前記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~50mol%であり、
水添率が、水添前の前記ブロック共重合体が有する不飽和二重結合の総量に対して0~60mol%であり、
前記低分子量成分の最大ピーク分子量が3万~10万である、
請求項1に記載のブロック共重合体又はその水添物。
【請求項6】
請求項5に記載のブロック共重合体又はその水添物と、
前記ブロック共重合体100質量部に対して50~400質量部の粘着付与剤と、
前記ブロック共重合体100質量部に対して10~150質量部の軟化剤と、を含む、
粘接着剤組成物。
【請求項7】
前記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体の総量に対して20~50質量%であり、
前記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、前記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~50mol%であり、
前記ブロック共重合体の重量平均分子量が15万~40万であり、
前記低分子量成分の最大ピーク分子量が5万~15万である、
請求項1に記載のブロック共重合体又はその水添物。
【請求項8】
請求項7に記載のブロック共重合体又はその水添物の含有量が、アスファルトの総量に対して0.5~30質量%である、
アスファルト改質用組成物。
【請求項9】
ビニル芳香族単量単位の含有量が、前記ブロック共重合体の総量に対して10~65質量%であり、
前記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、前記共役ジエン単量体単位の総量に対して30~90mol%であり、
水添率が、前記ブロック共重合体が有する不飽和二重結合の総量に対して80~100mol%であり、
前記低分子量成分の最大ピーク分子量が5万~20万である、
請求項1に記載のブロック共重合体又はその水添物。
【請求項10】
請求項9に記載のブロック共重合体又はその水添物を含み、
前記ブロック共重合体100質量部に対して20~500質量部の熱可塑性樹脂と、
前記ブロック共重合体100質量部に対して10~250質量部の軟化剤と、を含む、
熱可塑性樹脂改質用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体又はその水添物、粘接着剤組成物、アスファルト改質用組成物、及び熱可塑性樹脂改質用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるブロック共重合体は、加硫をしなくても加硫された天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温にて有し、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の成型加工性を有していることから、履物、プラスチック改質、アスファルト改質、粘接着材等の分野、家庭用製品、家電・工業部品等の包装材料、玩具等において広く利用されている。また、前記ブロック共重合体の水添物は、耐候性、耐熱性に優れていることから、上述した用途分野以外に、自動車部品や医療器具等にも幅広く使用されている。
【0003】
一般的にこれら多くの用途における共通の課題として、加工性と機械強度のバランスを向上させることがあげられる。これらを解決するために、一般的に高分子量成分と低分子量成分をブレンドしたり、分岐化されたブロック共重合体が使用される。すなわち、高分子量成分と低分子量成分量を調整することで、加工性と機械強度を高度に両立する試みがなされている。特許文献1には、粘接着剤組成物において、加工性と剥離接着力及び剪断接着破壊温度のバランスを向上させることを目的に、多官能性のカップリング剤を用いたラジアル構造のブロック共重合体が開示されている。また、特許文献2には、アスファルト組成物において、加工性と軟化点やタフネス、テナシティー等の機械的強度のバランスを向上させることを目的に低分子量成分と高分子量成分を共存させたアスファルト改質用ブロック共重合体組成物が開示されている。また、特許文献3には、流動性、圧縮永久ひずみ性、柔軟性、耐候性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を得ることを目的に、多官能性のカップリング剤を用いたラジアル構造の水添ブロック共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4130983号
【特許文献2】特許第4069389号
【特許文献3】特許第5815239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、種々使用用途において、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるブロック共重合体又はその水添物(以下、単にブロック共重合体ともいう。)は加工性と機械強度のバランスを向上させる試みがなされている。
【0006】
しかし、低分子量成分と高分子量成分の共存には着目されつつも、十分な機械強度と加工性を示すブロック共重合体やその水添物は知られておらず、機械強度と加工性については更なる改善が期待できることがわかってきた。
【0007】
そこで、本発明の課題は、加工性及び機械強度が改善されたブロック共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、所定の単量体単位と、所定の重量平均分子量と、所定の分子量分布を有するブロック共重合体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCとを有し、
重量平均分子量が8万~50万であり、
分子量分布(Mw/Mn)Aが1.5~2.2であり、
高分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Hが1.2~1.4であり、
低分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Lが1.0~1.1であり、
上記高分子量成分とは、基準分子量以上の分子量を有する重合体成分であり、
上記低分子量成分とは、基準分子量未満の分子量を有する重合体成分であり、
上記基準分子量とは、分子量ピークXと分子量ピークYとの間のボトムピークのうち、最も低分子量側に位置するボトムピークにおける分子量であり、
上記分子量ピークXとは、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて得られる分子量ピークのうち、重量平均分子量が2万以上の分子量ピークの中で最も低分子量側に位置するピークであり、
分子量ピークYとは、上記分子量ピークXと隣接し、その高分子量側に位置する分子量ピークである、
ブロック共重合体又はその水添物。
[2]
ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて得られる上記高分子量成分の最大ピーク分子量が、上記低分子量成分の最大ピーク分子量の2.5~4.0倍であり、
上記高分子量成分が、上記低分子量成分の上記最大ピーク分子量の10倍以上の分子量を有する超高分子量成分を含み、
上記超高分子量成分の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して1~10質量%である、
[1]に記載のブロック共重合体又はその水添物。
[3]
上記低分子量成分の最大ピーク分子量が3万~20万である、
[1]又は[2]に記載のブロック共重合体又はその水添物。
[4]
上記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して10~50質量%であり、
上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合を有し、
上記ビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~90mol%である、
[1]~[3]に記載のブロック共重合体又はその水添物。
[5]
上記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して10~50質量%であり、
上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~50mol%であり、
水添率が、水添前の上記ブロック共重合体が有する不飽和二重結合の総量に対して0~60mol%であり、
上記低分子量成分の最大ピーク分子量が3万~10万である、
[1]~[4]に記載のブロック共重合体又はその水添物。
[6]
[5]に記載のブロック共重合体又はその水添物と、
上記ブロック共重合体100質量部に対して50~400質量部の粘着付与剤と、
上記ブロック共重合体100質量部に対して10~150質量部の軟化剤と、を含む、
粘接着剤組成物。
[7]
上記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して20~50質量%であり、
上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~50mol%であり、
上記ブロック共重合体の重量平均分子量が15万~40万であり、
上記低分子量成分の最大ピーク分子量が5万~15万である、
[1]~[4]に記載のブロック共重合体又はその水添物。
[8]
[7]に記載のブロック共重合体又はその水添物の含有量が、アスファルトの総量に対して0.5~30質量%である、
アスファルト改質用組成物。
[9]
ビニル芳香族単量単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して10~65質量%であり、
上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して30~90mol%であり、
水添率が、上記ブロック共重合体が有する不飽和二重結合の総量に対して80~100mol%であり、
上記低分子量成分の最大ピーク分子量が5万~20万である、
[1]~[4]に記載のブロック共重合体又はその水添物。
[10]
[9]に記載のブロック共重合体又はその水添物を含み、
上記ブロック共重合体100質量部に対して20~500質量部の熱可塑性樹脂と、
上記ブロック共重合体100質量部に対して10~250質量部の軟化剤と、を含む、
熱可塑性樹脂改質用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所定の単量体単位と、所定の重量平均分子量と、所定の分子量分布を有することで、加工性が良好で、かつ、機械強度の向上したブロック共重合体、粘接着剤組成物、アスファルト組成物、及び熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のブロック共重合体又はその水添物は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB及び/又はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックCとを有し、重量平均分子量が8万~50万であり、分子量分布(Mw/Mn)Aが1.5~2.2であり、高分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Hが1.2~1.4であり、低分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Lが1.0~1.1であり、上記高分子量成分とは、基準分子量以上の分子量を有する重合体成分であり、上記低分子量成分とは、基準分子量未満の分子量を有する重合体成分であり、上記基準分子量とは、分子量ピークXと分子量ピークYとの間のボトムピークのうち、最も低分子量側に位置するボトムピークにおける分子量であり、上記分子量ピークXとは、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて得られる分子量ピークのうち、重量平均分子量が2万以上の分子量ピークの中で最も低分子量側に位置するピークであり、分子量ピークYとは、上記分子量ピークXと隣接し、その高分子量側に位置する分子量ピークである。
【0012】
なお、「ビニル芳香族単量体単位」とは、ビニル芳香族炭化水素化合物を重合させた結果生じるビニル芳香族炭化水素化合物1つ分に対応する構造を示す。
【0013】
ビニル芳香族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン;p-メトキシスチレン等のアルコキシスチレン;ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でも、ビニル芳香族炭化水素としては、スチレンが好ましい。ビニル芳香族炭化水素化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
「共役ジエン単量体単位」とは、共役ジエン化合物を重合させた結果生じる構造において、共役ジエン化合物一つ分に対応する構造を示す。
【0015】
共役ジエン化合物としては、共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性等の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。さらに、耐熱老化性及び耐光性に優れる傾向があるため、1,3-ブタジエンがより好ましい。共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
(ブロックA)
「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックA」とは、重合体ブロックAの総量に対するビニル芳香族単量体単位の質量割合が90質量%超である重合体ブロックであり、該質量割合は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である。
【0017】
(ブロックB)
「共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックB」とは、重合体ブロックBの総量に対する共役ジエン単量体単位の割合が90質量%超である重合体ブロックであり、該割合は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは98質量%以上である。
【0018】
(ブロックC)
「ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックC」とは、重合体ブロックCが、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位のみを含み、該共役ジエン単量体単位と該ビニル芳香族単量体単位の質量比が10:90~90:10の範囲にあるものをいう。また、共重合体ブロック中Cのビニル芳香族単量体単位は均一に分布していてもよく、テーパー状に分布していてもよい。また、該共重合体ブロックC部分には、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらに、該共重合体ブロックC部分には、ビニル芳香族単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存してもよい。
【0019】
なお、ブロック共重合体に組み込まれているビニル芳香族単量体単位のブロック率の測定は、四酸化オスミウムを触媒としてターシャリーブチルハイドロパーオキサイドによりブロック共重合体を酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素重合体ブロック成分(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、下記式から求めることができる。
ビニル芳香族炭化水素のブロック率(質量%)
=(ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位の質量)/(ブロック共重合体の総量)
【0020】
重合体ブロックAと、重合体ブロックB及び/又はCの配列は、特に限定されないが、例えば、リニア構造であるA-B-A、A-C-A、B-A-B-A、B-A-C-A、A-B-C-Aや、カップリング構造である(A-B-)nX、(A-C-)nX、(B-A-B)nX、(B-A-C)nX等のAブロックを複数有する構造体が分子内に含まれることが、エラストマーとしてのゴム弾性を十分に発揮する観点から好ましい。
【0021】
ここで上記構造において各Aはそれぞれ独立して重合体ブロックAを表し、各Bはそれぞれ独立して重合体ブロックBを表し、各Cはそれぞれ独立して重合体ブロックCを表す。各nはそれぞれ独立して2以上の整数であり、各Xはそれぞれ独立してカップリング剤の残基を表す。
【0022】
(ビニル芳香族単量体単位の含有量)
本実施形態のブロック共重合体に含まれるビニル芳香族単量体単位の総量は、好ましくは、10~50質量%である。ビニル芳香族単量体単位の含有量が上記範囲にあることで、力学強度と伸びのバランスが向上する傾向にある。また、粘接着剤組成物における柔軟性と、溶融粘度、保持力、接着強度のバランスの観点からは、芳香族ビニル芳香族炭化水素含有量が10~50質量%が好ましく、アスファルト組成物における、軟化点と溶融粘度のバランスの観点からは、20~50質量%が好ましく、熱可塑性樹脂組成物における流動性と圧縮永久歪のバランスの観点からは、10~65質量%が好ましい。
【0023】
重合体組成物中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、本実施形態のブロック共重合体
の重合反応におけるビニル芳香族単量体の添加量を調整することにより制御することがで
きる。また、重合体組成物中のビニル芳香族単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
(ビニル結合量)
ビニル結合は、本実施形態のブロック共重合体の共役ジエン単量体単位に由来する結合である。ブロック共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により制御することができる。共役ジエンとして1,3-ブタジエンを使用する場合には、共役ジエン単量体単位の総量に対するビニル結合量(mol%)は、ブロック共重合体の耐熱性と柔軟性の観点から、好ましくは5~90mol%、より好ましくは10~80mol%、であり、粘接着剤組成物における柔軟性と耐熱性の観点からは、ビニル結合量が5~50mol%が好ましく、アスファルト組成物における、軟化点と溶融粘度のバランスの観点からは、5~50mol%が好ましく、熱可塑性樹脂組成物における流動性と耐熱性のバランスの観点からは、30~90mol%が好ましい。
【0025】
なお、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3-ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合の合計量をビニル結合量とする。ビニル結合量は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
(評価基準)
なお、ブロック共重合体又はその水添物の機械強度と加工性の評価方法は、後述の実施例内で詳細に説明するが、機械強度は引張強度ないし圧縮永久歪みを指標とし、加工性はトルエン溶液粘度(以下、トルエン粘度又はTVともいう。)を指標とすることができる。粘接着剤組成物においては、保持力又は粘着力を機械強度の指標とし、120℃溶融粘度を加工性の指標とすることができる。本実施形態のブロック共重合体を用いたアスファルト組成物においては、軟化点を機械強度の指標とし、180℃溶融粘度を加工性の指標とすることができる。本実施形態のブロック共重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物においては、圧縮永久歪みを機械強度の指標とし、MFRを加工性の指標とすることができる。
【0027】
これら機械強度と加工性は用途により好ましい範囲が異なり、機械強度と加工性のバランスで評価することが好ましい。すなわち一般的に機械強度を改善すると加工性が低下するが、これらのバランスが改善される観点から評価することが好ましいが、一般的に、粘接着組成物として使用される場合は、ブロック共重合体又はその水添物の引張強度は5.5MPa以上が好ましく、6.5MPa以上がさらに好ましく、15%TVは10~30mPa・sが好ましい。なお、機械強度と加工性のバランスを表す指標として、引張強度/15%TVの値が0.30以上であることが好ましい。
また、アスファルト組成物として使用される場合は、引張強度は10MPa以上が好ましく、5%TVは15mPa・s以下が好ましい。なお、機械強度と加工性のバランスを表す指標として、引張強度/5%TVの値は1.50以上であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物として使用される場合には、圧縮永久歪は28%以下が好ましく、25%以下がさらに好ましく、5%TVは30mPa・s以下が好ましい。なお、機械強度と加工性のバランスを表す指標として、圧縮永久歪×5%TVの値は800以下が好ましい。
【0028】
(ブロック共重合体の製造方法)
ブロック共重合体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、特公昭36-19286号公報、特公昭43-17979号公報、特公昭46-32415号公報、特公昭49-36957号公報、特公昭48-2423号公報、特公昭48-4106号公報、特公昭51-49567号公報、特開昭59-166518号公報、等に記載された方法が挙げられる。
【0029】
ブロック共重合体の製造に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
ブロック共重合体の製造に用いられる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、特に限定されないが、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。
【0031】
ブロック共重合体の製造時重合速度の調整、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の変更、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との反応性比の調整等の目的で極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、特に限定されないが、例えば、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。適当なエーテル類の例はジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジテトラヒドロフリルプロパン(DTHFP)、エチルテトラヒドロフルフリルエーテルである。アミン類としては第三級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第三級アミン等も使用できる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド等がある。
【0032】
ブロック共重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは-10~150℃、より好ましくは30~120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に好適には0.5~10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。さらに、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないようにすることが好ましい。
【0033】
(分子量分布)
本実施形態のブロック共重合体は、分子量分布(Mw/Mn)Aが1.5~2.2であり、高分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Hが1.2~1.4であり、低分子量成分の分子量分布(Mw/Mn)Lが1.0~1.1である。
【0034】
ここで、高分子量成分とは、基準分子量以上の分子量を有する重合体成分であり、低分子量成分とは、上記基準分子量未満の分子量を有する重合体成分であり、上記基準分子量とは、分子量ピークXと分子量ピークYとの間のボトムピークのうち、最も低分子量側に位置するボトムピークにおける分子量であり、上記分子量ピークXとは、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて得られる分子量ピークのうち、重量平均分子量が2万以上の分子量ピークの中で最も低分子量側に位置するピークであり、分子量ピークYとは、上記分子量ピークXと隣接し、その高分子量側に位置する分子量ピークである。
【0035】
上記のとおり本実施形態のブロック共重合体の分子量ピーク(以下、ピークトップともいう。)は、分子量2万以上に少なくとも2つ存在することを意味する。分子量2万未満の領域には、複数のブロックが形成する前に失活した重合体鎖のピークが現れる場合がある。分子量2万未満の領域に重合体鎖にピークが存在することに加えて、複数のピークトップが2万以上の領域に存在することは、複数のブロックを有する共重合体成分として低分子量体と高分子量体が含まれることを意味する。
【0036】
低分子量成分及び高分子量成分にはそれぞれ複数のピークが存在してもよい。例えば、重合反応時の途中失活により生成する分子量が2万より小さい微量失活成分は低分子量成分に含まれ、多官能性のカップリング剤や複数のカップリング剤を使用することにより得られる複数の分岐構造に由来する複数のピークは全て高分子量成分に含まれる。ブロック共重合体が、カップリング構造の場合は、未カップリング部が低分子量成分のピークトップを形成し、カップリング部が高分子量成分のピークトップを形成するように分子量を設定するのが好ましい。
【0037】
低分子量成分の分子量分布(以下、(Mw/Mn)Lともいう。)のピーク形状をシャープにすることで、ポリマーとして機械強度が高くなる傾向にある。カップリング構造の場合、重合原材料中の不純物が多く、重合時の途中失活が多い場合もしくは意図的に途中失活させる場合や、開始剤を分割投入することで(Mw/Mn)Lが1.1を超えることがあることを踏まえ、不純物量を低減した上で重合開始剤は一時に投入するのが(Mw/Mn)Lを1.1以下にしやすく好ましい態様である。その上で、ブロック共重合体のカップリング体に相当する高分子量成分の分子量分布(以下、(Mw/Mn)Hともいう。)は1.2~1.4に調整される。(Mw/Mn)Hを1.2以上にすることで、重合体全体として十分な機械強度を示しやすく、(Mw/Mn)Hを1.4以下にすることで加工性の良さを担保して、強度と加工性の両立を達成し得る。
【0038】
なお、後述するが、一般的に用いられるカップリング剤を単独又は、複数種組み合わせて使用する場合は、(Mw/Mn)Hは1.2以上にはならないため、分岐数に分布のある(例えば官能基数の幅が4以上)カップリング剤を使用してカップリング体の分岐数に幅を持たせるのが好ましい。さらに、(Mw/Mn)Aは1.5~2.2に調整される。(Mw/Mn)Aは、(Mw/Mn)Lと(Mw/Mn)Hと、高分子量成分と低分子量成分の重量比により決まる。高分子量成分と低分子量成分の重量比は任意に調整してよく、好ましくは10:90~90:10である。この比率に調整することで目的の(Mw/Mn)Aを得ることが可能となり、機械強度と加工性のバランスを高度に両立することが可能となる。
【0039】
また、好ましくは(Mw/Mn)Hと(Mw/Mn)Lの差が0.11以上であり、より好ましくは0.12以上であり、さらに好ましくは0.15以上である。すなわち、低分子量分と比較し、高分子量成分が十分にブロードであることが好ましい。また、本発明で得られるブロック共重合体は、高分子量成分の最大ピーク分子量が低分子量成分の最大ピーク分子量の2.5~4.0倍の範囲にあり(以下、この比率をジャンプ率ともいう。)、かつ、低分子量成分の最大ピーク分子量の10倍以上の分子量を持つ超高分子量成分を、ブロック共重合体全体の1~10質量%含むことが好ましい。超高分子量成分の下限はブロック共重合体全体の1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましく、2.5質量%以上が特に好ましい。すなわち、高分子量成分の主となる成分は比較的低分子量であるにもかかわらず、超高分子量成分を一定量含むことで、粘接着剤組成物として使用した場合は、低粘度かつ、高保持力又は高接着力を達成でき、アスファルト瀬生物として使用した場合は、低粘度かつ高軟化点を達成できる。また、熱可塑性樹脂組成物として使用した場合は、低粘度かつ低圧縮永久歪を達成することができる。すなわち、分子量分布曲線の形状は、超高分子量側に裾を引く形状が好ましい。
【0040】
また、制御された分子量分布を有することに加え、ブロック共重合体全体の重量平均分子量(以下、単にMw、ともいう。)が8万~50万の範囲にあることで、実用的に使用可能な範囲で、加工性と機械強度のバランスを高度に両立することが可能である。特に、粘接着剤組成物における溶融粘度、保持力又は接着力のバランスの観点からは、ブロック共重合体全体のMwは8~20万の範囲にあることが好ましく、アスファルト改質用途における溶融粘度、軟化点のバランスの観点からは、ブロック共重合体全体のMwは15~40万の範囲にあることが好ましい。
【0041】
また、本発明で得られるブロック共重合体の低分子量成分の最大ピーク分子量は製造容易性の観点から、3万~20万の範囲にあることが好ましく、粘接着剤組成物における溶融粘度、保持力のバランスの観点からは、3~10万の範囲にあることが好ましく、アスファルト改質用途における溶融粘度、軟化点のバランスの観点からは、5~15万の範囲にあることが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物における流動性と圧縮永久歪のバランスの観点からは、5~20万の範囲にあることが好ましい。
【0042】
これらの分子量分布を持つブロック共重合体を得る方法としては、特に限定されないが、リビングアニオン重合の重合末端にカップリング剤を添加して、高分子量成分と低分子量成分を同時に得ることが好ましい。カップリング構造とすることで、低分子量成分と高分子量成分のミクロ構造が同等となり、他樹脂やアスファルト等との混合時に低分子量成分と高分子量成分の間に相溶性の差が生じにくく、均一性が向上、組成物とした際の機械強度が低下しにくい。すなわち、複数種のポリマーをブレンドして、本発明の分子量分布を得ることも可能ではあるが、カップリング構造の方がより好ましい。より具体的には、高分子量成分と低分子量成分のビニル芳香族炭化水素含有量の差は3質量%以内が好ましく、1質量%以内がさらに好ましい。また、ビニル結合量も同様に、3質量%以内が好ましく、1質量%以内がさらに好ましい。
【0043】
カップリング剤としては、特に限定されないが、安定して上記分子量分布を得られる観点から、ジビニルベンゼンを構成単位として含むカップリング剤であることが好ましい。より具体的には、ジビニルベンゼンの重合体であり、分子内に複数のビニル基を持つ。さらに、カップリング剤は任意に共役ジエンやビニル芳香族炭化水素等の別のモノマーを共重合させても良く、任意の官能基を導入してもよい。ジビニルベンゼン重合体は、分子内の平均ビニル基数が3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
ここで、平均ビニル基数とは、カップリング剤1mol中の平均反応性ビニル結合数、ここでは、ジビニルベンゼンに由来する残存ビニル基数をmol数で表したものであり、核磁気共鳴装置(NMR)により定量することが可能である。
【0044】
平均ビニル基数は、カップリング剤中の残存ビニル基数の平均値であり、すなわち、ビニル基数自体には分布を持つと理解される。例えば、ジビニルベンゼン重合体がビニル基数1~10程度の重合体の混合物であって、そのビニル基数を平均すると3以上又は5以上であるのが、高分子量成分の分子量分布を広くする観点で、カップリング剤の好ましい態様の一つである。カップリング剤自体も広い分子量分布を有しており、具体的には、Mw/Mnは1.3~5.0の範囲にあることが好ましい。
【0045】
該カップリング剤は当業者が調整し、カップリング剤として使用してもよい。カップリング剤の調製方法としては特に限定されないが、例えば特開平10-158315公報を参考に調製されたアニオン重合開始剤をメタノール等で失活させることで容易に得ることが可能である。
【0046】
このように、事前に調製したカップリング剤を使用することで、目的とする分子量分布が再現性良く得られるだけでなく、ゲル成分の生成も抑制することが可能である。
単にジビニルベンゼンをカップリング剤として使用した場合は、カップリング反応中のジビニルベンゼン同士による架橋反応を制御することが困難であり、分子量分布曲線の再現が困難であるだけでなく、ジャンプ率が高くなり、しばしば溶媒に不溶なゲル成分を生成する。一方、カップリング剤として一般的に使用される、2~4官能性のアルコキシシラン化合物や、四塩化ケイ素等のハロゲン系の化合物をカップリング剤として用いることで、3分岐成分や4分岐成分を主体とするカップリング構造を得られ、またこれらを任意の組み合わせで併用することも可能である。しかし、官能基数が2~4官能のカップリング剤を併用した態様について、本発明者が高分子量成分の分子量分布を調べたところ、得られたブロック共重合体の高分子量成分の分子量分布は1.2未満であり、全体の分子量分布は1.1~1.5であることから、目的とする分子量分布を得ることが困難である。すなわち、高度に加工性と機械強度を両立することができない。仮に、重合開始剤の分割添加等によって未カップリング分の分子量分布を広げれば、カップリング体側の高分子量成分の分布も広がるものの、その場合は低分子量成分の分布を満たさなくなる。なお、複数のカップリング剤を併用する場合は、2~4程度の現実的な数の併用では目的とする分子量分布を得られないことに加え、反応の制御の煩雑さ、それにより生じる生産効率の低下に加え、分子量分布曲線の再現性の視点からも好ましくない。
【0047】
ブロック共重合体は、該ブロック共重合体中の不飽和二重結合に対して水素添加(以下、単に水添ともいう。)されていてもよい。水添触媒としては、特に制限されず、例えば、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物があげられる。
【0048】
チタノセン化合物としては、特開平8-109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0049】
水添反応は好ましくは0~200℃、より好ましくは30~150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaが推奨される。また、水添反応時間は好ましくは3分~10時間、より好ましくは10分~5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0050】
ブロック共重合体がその水添物の場合、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率(以下、水添率、ともいう。)は、目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。例えば、加工・成型時又は使用時に耐熱性が求められる場合は、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水添率は、70mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましく、さらに好ましくは90mol%以上である。また、例えば他の樹脂等との相溶性制御や架橋速度の制御を目的に一部のみが水添されていてもよい。一部のみを水添する場合には、水添率が10mol%以上70mol%未満、或いは15mol%以上65mol%未満、所望によっては20mol%以上60mol%未満にすることが推奨される。さらに、水素添加ブロック共重合体において、水素添加前の共役ジエンにもとづくビニル結合の水添率が、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上であることが、熱安定性に優れた樹脂組成物を得る上で推奨される。
【0051】
粘接着剤組成物においては、粘着付与樹脂との相溶性及び耐熱性の観点から、水添率は0~60mol%の範囲にあることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物においては、圧縮永久歪み、耐熱性、耐候性の観点から、80~100mol%の範囲にあることが好ましい。
【0052】
ここで、ビニル結合の水添率とは、ブロック共重合体中に組み込まれている水素添加前の共役ジエンにもとづくビニル結合のうち、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
なお、水添率は上記ブロック共重合体に対して添加する水素の量を変化させることにより調製することができ、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、好ましくは50mol%以下、より好ましくは30mol%以下、さらに好ましくは20mol%以下が推奨される。水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により知ることができる。
【0053】
上記のようにして得られたブロック共重合体又はその水添物の溶液は、必要に応じて触媒残渣を除去し、重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば重合後又は水添後の溶液にアセトン又はアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、又は直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、本発明におけるブロック共重合体又はその水添物には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0054】
(粘接着剤組成物)
本実施形態の粘接着剤組成物は、上述した本実施形態のブロック重合体と、該ブロック重合体100質量部に対して、50~400質量部の粘着付与剤と、該ブロック重合体100質量部に対して10~150質量部の軟化剤と、を含有することが好ましい。これにより、本実施形態の粘接着剤組成物において、優れた粘着特性と溶融粘度のバランスが得られる。
【0055】
粘着付与剤の含有量は、本実施形態のブロック重合体100質量部に対して好ましくは100~380質量部であり、より好ましくは150~350質量部である。また、軟化剤の含有量は、ブロック重合体100質量部に対して好ましくは30~130質量部であり、より好ましくは70~120質量部である。
【0056】
上記それぞれの成分の含有量の比率は、粘着用組成物に用いる各成分の量を調整することにより任意に変更することができる。
【0057】
ここで、粘接着剤組成物に用いるブロック共重合体は、上述のとおり、上記ビニル芳香族単量体単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して10~50質量%であり、上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~50mol%であり、水添率が、上記ブロック共重合体が有する不飽和二重結合の総量に対して0~60mol%であり、上記低分子量成分の最大ピーク分子量が3万~10万であることが好ましい。
【0058】
また、ビニル芳香族単量体単位の含有量、共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量、水添率、低分子量成分の重量平均分子量の調整方法として上述の方法と同様の方法を用いることができる。
【0059】
(粘着付与材)
粘着付与剤は、得られる粘接着剤組成物の用途、要求性能によって、多種多様に選択することができる。粘着付与剤としては、以下に限定されないが、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体等が挙げられる。これらの粘着付与剤は、一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
粘着付与剤は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なも
のであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。水素化誘導体以外の粘着付与剤としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族樹脂、脂環式樹脂、ポリテルペン、天然及び変性ロジンエステル並びにそれらの混合物が好ましい。具体例としては、サートマー製の「Wingtack Extra」(商品名)、イーストマンケミカル社製の「Piccotac」(商品名)、エクソンモービルケミカル社製の「Escorez」(商品名)、アリゾナケミカル社製の「Sylvagum」(商品名)、「Sylvalite」(商品名)、及びアッシュランド製の「Piccolyte」(商品名)等が挙げられる。着色のし難さや臭気の低さの点で、粘着付与樹脂は、水素化誘導体が好ましい。このなかでも特に水素添加ジシクロペンタジエン系樹脂が好ましい。このような水素化誘導体としては、以下に限定されないが、例えば、荒川化学社製のアルコンP100(商品名)、アルコンM115(商品名)、ヤスハラケミカル社製のクリアロンP135(商品名)、エクソン社製のECR5400(商品名)等が挙げられる。 本実施形態の粘接着剤組成物において、高い接着性、接着強度の耐経時変化あるいはクリープ性能等が必要な場合には、粘接着剤組成物中に、ブロック共重合体の非ガラス相のブロック(通常は中間ブロック)と親和性のある粘着付与樹脂を20~75質量%、かつブロックポリマーのガラス相のブロック(通常は外側ブロック)に親和性のある粘着付与剤を3~30質量%含有することがより好ましい。ガラス相のブロックに親和性のある粘着付与剤としては、末端ブロックの粘着付与樹脂が好ましい。当該粘着付与樹脂としては、主として芳香族有する樹脂で、ビニルトルエン、スチレン、α-メチルスチレン、クマロン又はインデンを含有するホモポリマーあるいはコポリマーが挙げられる。さらに、これらの中で、α-メチルスチレンを有するKristalexやPlastolyn(イーストマンケミカル社製、商品名)が好ましい。末端ブロックの粘着付与剤の粘接着剤組成物中の含有量は、3~30質量%の範囲が好ましく、5~20質量%の範囲がより好ましく、6~12質量%の範囲がさらに好ましい。
高い初期接着力、高い濡れ性、粘接着剤組成物の低い溶融粘度あるいは高い塗工性、吐出安定性等が必要な場合には、粘接着剤組成物に用いる粘着付与剤はアロマ含有率が3~12質量%である石油樹脂が好ましい。アロマ含有率が4~10質量%がより好ましく、特に、水添の石油樹脂が好ましい。
【0061】
(軟化剤)
軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、オイル、可塑剤、液体粘着付与剤(30℃よりも低い環球式軟化点を有する)、合成液体オリゴマー、及びそれらの混合物が挙げられる。軟化剤は、特に限定されないが、例えば、公知のパラフィン系やナフテン系のプロセスオイル及びこれらの混合オイル等を使用することができる。 市販品として、特に限定されないが、例えば、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、プロセスオイルNS100(商品名)、KukdongOil&Chem社製のWhite OilBroom350(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)、PetroChinaCompany社製のKN4010(商品名)等が挙げられる。
【0062】
(その他成分)
本実施形態の粘接着剤組成物は、目的に応じ、任意にその他の成分を含有してもよい。そのようなその他の成分としては、特に限定されないが、例えば、他のポリマー、安定剤を含んでいてもよい。
【0063】
(アスファルト改質用組成物)
本実施形態のアスファルト改質用組成物においては、高軟化点性の観点から、アスファルトの総量に対して、本実施形態のブロック共重合体を、0.5質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、アスファルト組成物がより一層高軟化点性を有する観点から、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、3.5質量%以上が特に好ましい。一方で、本実施形態のアスファルト組成物において、ブロック共重合体(P)の含有割合は、アスファルト組成物がより一層低溶融粘度性を有する観点から、20質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましく、14質量%以下が特に好ましい。
【0064】
上記それぞれの成分の含有量の比率は、アスファルト改質用組成物に用いる各成分の量を調整することにより任意に変更することができる。
【0065】
ここで、アスファルト改質用組成物に用いるブロック共重合体は、上述のとおり、ビニル芳香族単量体単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して20~50質量%であり、共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して5~50mol%であり、上記ブロック共重合体の重量平均分子量が15万~40万であり、上記低分子量成分の最大ピーク分子量が5万~15万であることが好ましい。
【0066】
また、ビニル芳香族単量体単位の含有量、共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量、及びブロック共重合体の重量平均分子量の調整方法として上述の方法と同様の方法を用いることができる。
【0067】
(アスファルト)
本実施形態のアスファルト改質用組成物に用いるアスファルトとしては、以下に限定されないが、例えば、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、又は天然の産出物(天然アスファルト)として得られるアスファルト、又はこれらのアスファルトと石油類とを混合した混合物等が挙げられる。アスファルトは、通常、瀝青(ビチューメン)を主成分に含むことが多い。
【0068】
アスファルトとしては、以下に限定されないが、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、溶剤脱瀝アスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等が挙げられる。これらの中でも、入手性の観点から、アスファルトは、ストレートアスファルトであることが好ましい。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0069】
また、各種アスファルトに石油系溶剤抽出油、アロマ系炭化水素系プロセスオイルあるいはエキストラクト等の芳香族系重質鉱油等を添加してもよい。混合方法は、特に限定されないが、例えば、任意の混合機を用いて行うことができる。
【0070】
混合機としては、特に限定されないが、例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の溶融混練機、垂直インペラ、サイドアーム型インペラ等の攪拌機、乳化機を含むホモジナイザー、及びポンプが挙げられる。
【0071】
本実施形態のアスファルト組成物の製造方法において、特に限定されないが、例えば、アスファルト、ブロック共重合体、架橋剤、及び任意の添加剤を、140℃から220℃の範囲で、撹拌タンク等を用いて混合することが好ましい。
【0072】
(その他成分)
本実施形態のアスファルト組成物は、目的に応じ、任意にその他の成分を含有してもよく、特に限定されないが、例えば、各種フィラー、シランカップリング剤、安定剤を含んでも良く、アスファルト組成物は加硫されていてもよい。
【0073】
(熱可塑性樹脂組成物)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本実施形態のブロック重合体100質量部に対して、20~500質量部の熱可塑性樹脂と、10~250質量部の軟化剤と、を含む。これにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、優れた流動性と圧縮永久歪のバランスが得られる。熱可塑性樹脂の含有量は、本実施形態のブロック重合体100質量部に対して好ましくは30~250質量部であり、より好ましくは50~230質量部である。また、軟化剤の含有量は、好ましくは20~150質量部であり、より好ましくは30~120質量部である。
【0074】
上記それぞれの成分の含有量の比率は、熱可塑性樹脂組成物に用いる各成分の量を調整することにより任意に変更することができる。
【0075】
ここで、熱可塑性樹脂組成物に用いるブロック共重合体は、上述のとおり、上記ビニル芳香族単量単位の含有量が、上記ブロック共重合体の総量に対して10~65質量%であり、上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量が、上記共役ジエン単量体単位の総量に対して30~90mol%であり、水添率が、上記ブロック共重合体が有する不飽和二重結合の総量に対して80~100%であり、上記低分子量成分の重量平均分子量が5万~20万である、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0076】
また、ビニル芳香族単量単位の含有量、上記共役ジエン単量体単位に由来するビニル結合量、水添率、及び低分子量成分の重量平均分子量の調整方法としては、上述の方法と同様の方法を用いることができる。
【0077】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合樹脂、ビニル芳香族化合物の重合体、ビニル芳香族化合物と他のビニルモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブチレ ン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等との共重合樹脂、ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、メタクリル酸エステル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(MBS)、オレフィン系重合体、エチレン-ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体、ポリアクリレート系樹脂、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体、これらのアクリロニトリル系モノマーを50質量%以上含有する他の共重合可能なモノマーとの共重合体であるニトリル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホン等の熱可塑性ポリスルホン、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリケトン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。その中でもポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系重合体が好適である。
【0078】
(軟化剤)
熱可塑性樹脂組成物に配合される軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、公知のパラフィン系やナフテン系のプロセスオイル及びこれらの混合オイル等を使用することができる。そのような市販品としては、特に限定されないが、例えば、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、プロセスオイルNS100(商品名)、KukdongOil&Chem社製のWhite OilBroom350(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)、PetroChinaCompany社製のKN4010(商品名)等が挙げられる。
【0079】
(その他成分)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、目的に応じ、任意にその他の成分を含有してもよい。例えば、各種フィラー、安定剤を含んでも良く、熱可塑性樹脂組成物は架橋されていてもよい。
【実施例0080】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0081】
1.ブロック共重合体又はその水添物の特性
(1)スチレン含有量
一定量の熱可塑性エラストマーをクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV-2450)にて測定し、ビニル芳香族化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
【0082】
(2)ビニル結合量及び水添率
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定した。
【0083】
(3)分子量分布曲線、基準分子量、最大ピーク分子量、ジャンプ率、分子量分布
GPC(装置は東ソー社製HLC-8320GPC EcoSECであり、付属のRI検出器を使用した。カラムはPLgel Column MiniMix-Cを3本である。また、溶媒はテトラヒドロフランを使用し、測定条件は、温度40℃、流速0.4mL/分、試料濃度0.1質量%、注入量30μLである。)で測定した。得られたクロマトグラムを、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用し、微分分子量分布として描かれる曲線を分子量分布曲線とした。その際、両端のMwが1000と1000万になるように直線を引き、ベースラインとした。Mwが2万以上の最も低分子量側のピークと、その次に分子量の大きいピークとの間の最も低分子量側のボトムピークで分子量分布曲線を垂直に2分割することで低分子量成分と高分子量成分とした。この際、ボトムピークの分子量を基準分子量とした。低分子量成分と高分子量成分のそれぞれについて、最大ピーク分子量をそれぞれPMwL及びPMwH、並びに分子量分布をそれぞれ(Mw/Mn)L及び(Mw/Mn)Hとして求めた。また、PMwLに対するPMwHの比をジャンプ率とした。ジャンプ率は小数点以下第二位を四捨五入し、小数点以下第一位の数値として表した。また、分割前の分子量分布曲線について、分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnを求めた。各Mw/Mnは、小数点以下第三位を四捨五入し、小数点以下第二位の数値として表した。
【0084】
(4)超高分子量成分の含有量
前述した方法で得られた分子量分布曲線において、PMwLの10倍の分子量で垂直分割し、高分子量成分のうち、より高分子量に存在する成分を超高分子量成分とした。分子全体の総面積に対する超高分子量成分の面積比を超高分子量成分の含有量とした。超高分子量成分の含有量は小数点以下第二位を四捨五入し、小数点以下第一位の数値として表した。
【0085】
(5)15%トルエン粘度
ブロック共重合体の加工性の指標として、15%トルエン粘度を測定した。この値が小さい、すなわち、低粘度であるほど加工性が良好である。
なお、測定は、ブロック共重合体が15質量%となるように、トルエンに十分溶解させたのち、キャノン-フェンスケ粘度管を用いて、25℃の温度 に管理された恒温槽中で測定した。
【0086】
(6)5%トルエン粘度
ブロック共重合体の加工性の指標として、5%トルエン粘度を測定した。この値が小さい、すなわち、低粘度であるほど加工性が良好である。
なお、測定は、ブロック共重合体が5質量%となるように、トルエンに十分溶解させたのち、キャノン-フェンスケ粘度管を用いて、25℃の温度 に管理された恒温槽中で測定した。
【0087】
(7)引張強度
ブロック共重合体の機械強度の指標として、引張強度を測定した。この値が大きいほど機械強度に優れる。なお、測定はJIS K6251の引張試験法に準じて行い、破断時の強度を測定した。
【0088】
(8)圧縮永久歪み
ブロック共重合体の強度の指標として、圧縮永久歪みを測定した。この値が小さいほど、ブロック共重合体の機械強度に優れる。なお、測定はJIS K6301圧縮永久歪み試験に準拠して、ブロック共重合体の70℃圧縮永久歪みを以下のとおり求めた。ブロック共重合体の2mm厚プレスシートを直径29mmの円形に打ち抜いて6枚重ねたものを試験片とした。6枚重ねた試験片の初期の厚みを23℃で測定した。その後、試験片を25%圧縮した状態で70℃のオーブン中に22時間放置した。その後、試験片をオーブンから取り出し、圧縮を解放後、23℃で30分放置した後の試験片における歪残率(70℃圧縮永久歪み)を下記式により求めた。
70℃圧縮永久歪み=(t0-t1)/(t0×0.25)×100
t0:試験片の初期の厚み(mm)
t1:圧縮を解放後、23℃で30分放置した後の試験片の厚み(mm)
【0089】
ここで、ブロック共重合体又はその水添物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、引張強度、及び引張強度を15%TVの値で除した値(引張強度/15%TV)(MPa/mPa・s)を用いることができる。
そのため、以下の評価基準によりブロック共重合体又はその水添物の機械強度と加工性のバランス(以下、単にバランス、ともいう。)を評価した。その結果を表1~2に示す。
[評価基準]
〇:引張強度が5.5MPa以上であり、かつ引張強度/15%TVが0.3(MPa/mPa・s)超である。
×:引張強度が5.5MPa未満であり、又は引張強度/15%TVが0.3(MPa/mPa・s)以下である。
【0090】
また、ブロック共重合体又はその水添物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、引張強度、及び引張強度を5%TVで除した値(引張強度/5%TV)(MPa/mPa・s)を上記評価基準に代えて用いることもできる。
そのため、以下の評価基準によりブロック共重合体又はその水添物の機械強度と加工性のバランスを評価した。その結果を表1~2に示す。
[評価基準]
〇:引張強度が5.5MPa以上であり、かつ引張強度/5%TVが1.5(MPa/mPa・s)以上である。
×:引張強度が5.5MPa未満であり、又は引張強度/5%TVが1.5(MPa/mPa・s)未満である。
【0091】
さらに、ブロック共重合体又はその水添物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、圧縮永久歪みの値に5%TVを乗じた値(圧縮永久歪×5%TV)(mPa・s・%)を上記評価基準に代えて用いることもできる。
そのため、以下の評価基準によりブロック共重合体又はその水添物の機械強度と加工性のバランスを評価した。その結果を表1~2に示す。
[評価基準]
〇:圧縮永久歪み×5%TVが800(mPa・s・%)以下である。
×:圧縮永久歪み×5%TVが800(mPa・s・%)超である。
【0092】
2.粘接着剤組成物の特性
(粘接着剤組成物の作製)
表3に記載のとおりに、原料の各成分を均一に混合し、180℃、50rpm、30分間、加圧型ニーダー(型式:DR0.5-3MB-E、株式会社モリヤマ)で溶融混練し、均一なホットメルト型の粘接着剤組成物を得た。
【0093】
(1)溶融粘度
上記のとおり作製した粘接着剤組成物を120℃又は140℃で、ブルックフィールド型粘度計(ブルックフィールド社製 DV-III)により測定した。
この値が小さい、すなわち、低粘度であるほど加工性が良好である。
【0094】
(粘着テープの作製)
上記のとおり作製した粘接着剤組成物を室温まで冷却し、これをトルエンに溶かし、トルエン溶液を得た。得られたトルエン溶液をアプリケーターでポリエステルフィルム(東レ株式会社製 ルミラー S10 (厚さ50μm))にコーティングし、その後、室温で30分間、70℃のオーブンで7分間保持し、トルエンを完全に蒸発させて、粘着テープを作製した。なお、塗工厚さは50μm(基材厚さ50μm)とした。
【0095】
(2)保持力
作製した粘着テープを、SUS板(SUS304)に対し、接触面積:15mm×25mmで貼り付けた。 その後、粘着テープに対して、40℃又は50℃で、垂直方向に1kgの荷重を与えて粘着テープがずれ落ちるまでの保持時間を測定し、保持力を評価した。この値が大きいほど良好である。その結果を表3に示す。
【0096】
(3)粘着力
作製した粘着テープを、25mm幅に成形し、SUS板(SUS304)に貼り付け、引き剥がし速度300mm/minで180°剥離力を測定し、粘着力を評価した。この値が大きいほど良好である。その結果を表3に示す。
【0097】
ここで、粘接着剤組成物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、40℃保持力を120℃溶融粘度で除した値(40℃保持力/120℃溶融粘度)(分/Pa・s)を用いることができる。
そのため、以下の評価基準により粘接着剤組成物の機械強度と加工性のバランスを評価した。その結果を表3に示す。
[評価基準]
〇:40℃保持力/120℃溶融粘度が65(分/Pa・s)以上である。
×:40℃保持力/120℃溶融粘度が65(分/Pa・s)未満である。
【0098】
また、粘接着剤組成物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、上記の評価基準に代えて、50℃保持力を140℃溶融粘度で除した値(50℃保持力/140℃溶融粘度)(分/Pa・s)を用いることができる。
そのため、以下の評価基準により粘接着剤組成物の機械強度と加工性のバランスを評価した。その結果を表3に示す。
[評価基準]
〇:50℃保持力/140℃溶融粘度が0.22(分/Pa・s)以上である。
×:50℃保持力/140℃溶融粘度が0.22(分/Pa・s)未満である。
【0099】
3.アスファルト組成物の特性
(アスファルト組成物の作成)
表4に記載のとおりに、750mLの金属缶にアスファルト(ストレートアスファルト60-80(新日本石油社製)〕を350g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。次に、溶融状態のアスファルトに、各ブロック共重合体が4質量%又は10質量%となるように、攪拌しながら少量ずつ投入した。
各材料を完全に投入した後、3000rpmの回転速度で60分間攪拌し、アスファルト組成物を調製した。
【0100】
(アスファルト組成物の軟化点(リング&ボール法))
上記のとおり作製したアスファルト組成物に対して、JIS-K2207に準じて、アスファルト組成物の軟化点を測定した。
規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度(軟化点)を測定した。この値が大きいほど良好である。その結果を表4に示す。
【0101】
(アスファルト組成物の溶融粘度)
ブルックフィールド型粘度計により、180℃のアスファルト組成物の溶融粘度を測定した。この値が小さい、すなわち、低粘度であるほど加工性が良好である。その結果を表4に示す。
【0102】
ここで、アスファルト組成物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、180℃溶融粘度(Pa・s)と、軟化点を180℃溶融粘度で除した値(軟化点/180℃溶融粘度)を用いることができる。
そのため、以下の評価基準によりアスファルト組成物の機械強度と加工性のバランスを評価した。その結果を表4に示す。
[評価基準]
〇:180℃溶融粘度が400(Pa・s)未満かつ軟化点/180℃溶融粘度が0.30(分/Pa・s)以上、又は180℃溶融粘度が400(Pa・s)以上かつ軟化点/180℃溶融粘度が0.11(分/Pa・s)以上
×:180℃溶融粘度が400未満かつ軟化点/180℃溶融粘度が0.30(分/Pa・s)未満、又は180℃溶融粘度が400℃以上かつ軟化点/180℃溶融粘度が0.11(分/Pa・s)未満
【0103】
3.熱可塑性樹脂組成物の特性
(熱可塑性樹脂組成物の作製)
表5に記載の原料の各成分を均一に混合し、二軸押出機(日本製鋼所製「TEX-30αII」、シリンダー口径30mm)によって、設定温度230℃で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した。
【0104】
(1)MFR
JIS K 7210(230℃、2160g荷重)に準拠して、熱可塑性樹脂組成物のMFRを測定し、以下の評価基準によりMFR(g/10min)を評価した。この値が大きい、すなわち、低粘度であるほど加工性が良好である。その結果を表5に示す。
【0105】
(2)圧縮永久歪み
:JIS K6301に準拠し、熱可塑性樹脂組成物の圧縮永久歪みを測定した。試験片は6.3mm厚プレスシートを使用した。70℃×22時間の条件にて測定した。この値が小さいほど良好である。その結果を表5に示す。
【0106】
ここで、熱可塑性樹脂組成物の特性である機械強度と加工性のバランスを評価する指標として、MFRを圧縮永久歪みで除した値(MFR/圧縮永久歪み)(g/(10min・%))を用いることができる。
そのため、以下の評価基準により熱可塑性樹脂組成物の機械強度と加工性のバランスを評価した。その結果を表5に示す。
[評価基準]
〇:MFR/圧縮永久歪みが0.20g/(10min・%)以上である。
×:MFR/圧縮永久歪みが0.20g/(10min・%)未満である。
【0107】
4.水添触媒の調製
水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0108】
5.カップリング剤の調製
カップリング反応に用いたカップリング剤は下記の方法で調製した。
<カップリング剤1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して以下の手順に従い、カップリング剤を調製した。
第1ステップとして、シクロヘキサン1200g及び、ブタジエンモノマー200g、ジビニルベンゼン79.3g、テトラヒドロフラン22.5gを添加した。
第2ステップとして、容器内の溶液温度を40℃に調整した後、ノルマルブチルリチウムを26g添加し、内温を75℃に保った状態で60分間反応させた。
第3ステップとして、メタノールを、ノルマルブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、カップリング剤1を含むシクロヘキサン溶液を得た。一部を乾固させ、NMRによりカップリング剤1に含まれるジビニルベンゼン由来のビニル基の残量(平均反応性ビニル結合数)を定量した。平均反応性ビニル結合数は6.0であった。
【0109】
<カップリング剤2>
ジビニルベンゼン量を50gに変更した以外にはカップリング剤1と同様の手順で調製し、カップリング剤2を含むシクロヘキサン溶液を得た。平均反応性ビニル結合数は5.2であった。
<カップリング剤3>
ジビニルベンゼン量を30gに変更した以外にはカップリング剤1と同様の手順で調製し、カップリング剤3を含むシクロヘキサン溶液を得た。平均反応性ビニル結合数は4.1であった。
<カップリング剤4>
ジビニルベンゼン量を120gに変更した以外にはカップリング剤1と同様の手順で調製し、カップリング剤4を含むシクロヘキサン溶液を得た。平均反応性ビニル結合数は8.4であった。
<カップリング剤5>
ジビニルベンゼン量を20gに変更した以外にはカップリング剤1と同様の手順で調製し、カップリング剤5を含むシクロヘキサン溶液を得た。平均反応性ビニル結合数は2.4であった。
<カップリング剤6>
ジビニルベンゼン量を150gに変更した以外にはカップリング剤1と同様の手順で調製し、カップリング剤6を含むシクロヘキサン溶液を得た。平均反応性ビニル結合数は10.5であった。
<カップリング剤7~11>
また、カップリング剤7~11は以下のものを使用した。
カップリング剤7:ジメチルジクロロシラン
カップリング剤8:テトラメトキシシラン
カップリング剤9:四塩化ケイ素
カップリング剤10:フタル酸ジメチル
カップリング剤11:ジビニルベンゼン
【0110】
6.ブロック共重合体の調製
<実施例1:ブロック共重合体1の調製>
内容積が100Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して以下のとおりバッチ重合を行ってブロック共重合体を製造した。
第1ステップとして、シクロヘキサン38L及び、スチレンモノマー45.0質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入した。
第2ステップとして、容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.20質量部添加し、30分間重合した。
第3ステップとして、共役ジエン系モノマー(ブタジエンモノマー)55.0質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入し、その後さらに60分間、反応温度を80℃に調整しながら重合した。
第4ステップとして、カップリング剤1を含むシクロヘキサン溶液をノルマルブチルリチウムに対するカップリング剤1のモル比が0.06になるよう添加し、30分攪拌した後、メタノールを、ノルマルブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、スチレン-ブタジエンのブロック共重合体1を含むシクロヘキサン溶液を得た。
第5ステップとして、ブロック共重合体1、100質量部に対して、酸化防止剤(オクタデシル-3-(3,5-ジブチル-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.25質量部を添加し、ストリッピングによる脱溶剤後、熱風乾燥機で水分を除去し、ブロック共重合体1を得た。得られたブロック共重合体1の各物性及び特性について上記方法により測定した。製造条件及び測定結果を表1に示す。
【0111】
<実施例2~8、11、12:ブロック共重合体2~8、11、12の調製>
各種添加剤の種類、量を変更した以外は実施例1と同様に実施し、ブロック共重合体2~8、11、12を得た。各製造条件及び測定結果を表1に示す。
比較例1~9、12:ブロック共重合体17~25、28の調製
各種添加剤の種類、量を変更した以外は実施例1と同様に実施し、ブロック共重合体17~25、28を得た。各製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0112】
<比較例10:ブロック共重合体26の調製>
内容積が100Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して以下のとおりバッチ重合を行ってブロック共重合体を製造した。
第1ステップとして、シクロヘキサン38L及び、スチレンモノマー45.0質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入した。
第2ステップとして、容器内の溶液温度を40℃に調製した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.06質量部添加し、15分間重合した。15分の時点でノルマルブチルリチウムをさらに0.08質量部添加し、そこから30分間重合した。
第3ステップとして、共役ジエン系モノマー(ブタジエンモノマー)55.0質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入し、その後さらに60分間、反応温度を80℃に調整しながら重合した。
第4ステップとして、ジビニルベンゼンを含むシクロヘキサン溶液を全ノルマルブチルリチウムに対するカップリング剤1のモル比が0.20になるよう添加し、30分攪拌した後、メタノールを、全ノルマルブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、スチレン-ブタジエンのブロック共重合体22を含むシクロヘキサン溶液を得た。
第5ステップとして、ブロック共重合体22、100質量部に対して、酸化防止剤(オクタデシル-3-(3,5-ジブチル-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.25質量部を添加し、ストリッピングによる脱溶剤後、熱風乾燥機で水分を除去し、ブロック共重合体26を得た。得られたブロック共重合体26の各物性及び特性について上記方法により測定した。製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0113】
<実施例9:ブロック共重合体9の調製>
内容積が100Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換して以下のとおりバッチ重合を行ってブロック共重合体を製造した。
第1ステップとして、シクロヘキサン38L及び、スチレンモノマー15.0質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下「TMEDA」ともいう。)を第2ステップで投入するノルマルブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加した。
第2ステップとして、容器内の溶液温度を40℃に調整した後、全モノマー100質量部に対してノルマルブチルリチウムを0.14質量部添加し、30分間重合した。
第3ステップとして、共役ジエン系モノマー(ブタジエンモノマー)85.0質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入し、その後さらに60分間、反応温度を80℃に調整しながら重合した。
第4ステップとして、カップリング剤1を含むシクロヘキサン溶液をノルマルブチルリチウムに対するカップリング剤1のモル比が0.06になるよう添加し、30分攪拌した後、メタノールを、ノルマルブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、スチレン-ブタジエンのブロック共重合体を含むシクロヘキサン溶液を得た。
第5ステップとして、上述のようにして調製した水添触媒を用いて、得られたブロック重合体を95℃で連続的に水素添加し、ブロック共重合体9を含むシクロヘキサン溶液を得た。触媒量は50ppm、水添重合器内の水素圧は0.95MPa、平均滞留時間は120分であった。反応終了後に、ブロック共重合体、100質量部に対して、酸化防止剤(オクタデシル-3-(3,5-ジブチル-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.25質量部を添加し、ストリッピングによる脱溶剤後、熱風乾燥機で水分を除去し、ブロック共重合体9を得た。得られたブロック共重合体9の各物性及び特性について上記方法により測定した。製造条件及び測定結果を表1に示す。
【0114】
<実施例10、12、13~16:ブロック共重合体10、12、13~16の調製>
各種添加剤の種類、量を変更した以外は実施例9と同様に実施し、ブロック共重合体10、12、13~16を得た。各製造条件及び測定結果を表1に示す。
【0115】
<比較例11、13~15:ブロック共重合体27、29~31の調製>
各種添加剤の種類、量を変更した以外は実施例9と同様に実施し、ブロック共重合体27、29~31を得た。各製造条件及び測定結果を表2に示す。
【0116】
実施例1~16は目的の分子量分布が得られており、比較例との比較から、高度に15%TVと引張強度のバランス又は5%TVと圧縮永久歪のバランスが改良されている。また、比較例4~9のように、一般的なカップリング剤を用いるか、又は組み合わせるだけでは目的とする分子量分布が得られず、15%TVと引張強度のバランスが実施例と比較し劣ることが分かる。また、比較例10のように開始剤の分割添加により(Mw/Mn)Lが1.1を超えると引張強度が著しく低下していることも確認される。また、実施例1と比較例3の比較から、ブロック共重合体の全体分子量が8万以下の領域では引張強度が著しく低下することが分かり、実施例13と比較例15の比較から、ブロック共重合体の全体分子量が50万以上の領域では、5%TVは著しく上昇することが分かる。
すなわち、特定の分子量と分子量分布を持つことが加工性と機械強度のバランスを高度に発現する上で重要であることが示された。
【0117】
7.粘接着組成物の調製、粘着テープの作製、物性評価
上述のとおり、実施例17~26、比較例16,17について表3に示した配合に従い、粘接着剤組成物及び粘着テープを作製した。物性評価結果を表3に示す。
【0118】
実施例17~25より、本発明のブロック共重合体を使用した粘接着組成物は良好な保持力と溶融粘度バランスを発現することが確認できる。特に、実施例17と実施例20の比較から、ブロック共重合体の低分子量成分の分子量は3万以上であればよりバランスは改善され、実施例17と実施例21、22との比較から、ジャンプ率は2.5~4.0の範囲にあり、超高分子量成分は1~10質量%の範囲にあることがよりバランスが改良されることが確認できる。また、実施例17と実施例24及び、実施例25と実施例26の比較から、スチレン含有量は10~50質量%にあるとよりバランスが改良されることも確認できる。
【0119】
8.アスファルト組成物の調製、物性評価
上述のとおり、実施例27~30、比較例18~21について、表4に示した配合に従い、アスファルト組成物を作製した。物性評価結果を表4に示す。
【0120】
実施例27、29と比較例18、20の比較及び実施例28、30と比較例19、21の比較から、本発明のブロック共重合体を使用したアスファルト組成物は良好な軟化点と溶融粘度のバランスを発現していることが確認できる。
【0121】
9.熱可塑性樹脂組成物の作製、物性評価
上述のとおり、実施例31~34、比較例22、23について、表5に示した配合に従い、熱可塑性樹脂組成物を作製した。物性評価結果を表5に示す。
実施例31~34より、本発明のブロック共重合体を使用した熱可塑性樹脂組成物は良好な圧縮永久歪とMFRのバランスを発現することが確認できる。特に、実施例31と実施例32の比較から、ブロック共重合体の低分子量成分の分子量は20万以下であればよりバランスは改善され、実施例31と実施例33、34との比較から、ジャンプ率は2.5~4.0の範囲にあり、超高分子量成分は1~10質量%の範囲にあることがよりバランスが改良されることが確認できる。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
(成分)
表1~5中に記載の成分としては、以下のものを用いた。
・カップリング剤種1:調製した上記カップリング剤1
・カップリング剤種2:調製した上記カップリング剤2
・カップリング剤種3:調製した上記カップリング剤3
・カップリング剤種4:調製した上記カップリング剤4
・カップリング剤種5:調製したカップリング剤5
・カップリング剤種6:調製したカップリング剤6
・カップリング剤種7:ジメチルジクロロシラン
・カップリング剤種8:テトラメトキシシラン
・カップリング剤種9:四塩化ケイ素
・カップリング剤種10:フタル酸ジメチル
・カップリング剤種11:ジビニルベンゼン
・TF1:アルコンM100(荒川化学工業(株)製)
・TF2:クイントンR100(日本ゼオン(株)製)
・OIL1:ダイアナプロセスオイル PW-90(出光興産株式会社製)
・OIL2:ダイアナプロセスオイル NS-90(Shell社製)
・ストレートアスファルト60-80(新日本石油社製、針入度60~80)
・PP:プロピレン系ブロック共重合体(R-TPO)Q-100F(Basell社製)
・OIL:ダイアナプロセスオイル PW-90(出光興産株式会社製)
本発明のブロック共重合体又はその水添物を用いることにより、加工性及び機械強度に優れる粘接着剤、アスファルト、及び熱可塑性樹脂等を提供することができることから、工業的に極めて効果があり広く利用され得る。