(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032579
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】グラフェン光センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20240305BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01L31/10 E
G01J1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136303
(22)【出願日】2022-08-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】乘松 正明
(72)【発明者】
【氏名】林 賢二郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
【テーマコード(参考)】
2G065
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AB02
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(57)【要約】
【課題】ドレイン電流対ゲート電圧特性の変動が抑制されたグラフェン光センサの製造方法を提供する。
【解決手段】基板の上にグラフェン層と、前記グラフェン層に接続される一対の電極を形成し、前記基板に、前記グラフェン層に所定のバイアス電圧を印加するゲート電極を形成し、前記グラフェン層に電子線を30kV以下の加速電圧で照射する。電子線の照射により、ドレイン電流対ゲート電圧特性の変動が抑制され、かつ、光入射のない状態でドレイン電流を最小にするゲート電圧(ディラックポイント)を0Vに近づけることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上にグラフェン層と、前記グラフェン層に接続される一対の電極を形成し、
前記基板に、前記グラフェン層に所定のバイアス電圧を印加するゲート電極を形成し、
前記グラフェン層に電子線を30kV以下の加速電圧で照射する、
グラフェン光センサの製造方法。
【請求項2】
前記電子線の照射時間は10分以下である。
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項3】
前記加速電圧は1kV以上30kV以下であり、前記電子線の照射時間は60分以下である、
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項4】
前記加速電圧は10kV以下、好ましくは5kV以下であり、前記電子線の照射時間は10分以下である、
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項5】
前記電子線が照射された前記グラフェン層を覆って、検出対象の光の波長に対して透明な保護層を形成する、
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項6】
前記保護層は、感光性エポキシ樹脂の塗布、またはAl2O3の原子層堆積により形成される、
請求項5に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項7】
電子線照射前の前記グラフェン層の移動度に対する電子線照射後の前記グラフェン層の移動度の変化は10%以内である、
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項8】
前記ゲート電極を前記基板の裏面に形成し、
前記グラフェン層と前記一対の電極で形成されるセンサ構成に非対称性をもたせる、
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【請求項9】
前記ゲート電極を、前記基板の前記グラフェン層と同じ面に形成し、前記ゲート電極を一対の電極に対して非対称性な配置構成とする、
請求項1に記載のグラフェン光センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェン光センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素原子で構成される2次元材料であるグラフェンは、その特徴的なエネルギーバンド構造により、紫外域からテラヘルツ帯におよぶ広い波長範囲の光を吸収する。グラフェンに50keVの加速電圧で電子線を照射して、グラフェンの半導体的性質を修飾する方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。グラフェンはまた、高いキャリア移動度を持つ。グラフェンをチャネルに用いたグラフェントランジスタとその製造方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0003】
グラフェンの高い移動度と広い光吸収帯域を利用した赤外線センサの研究開発が進められている。赤外線センサは、熱をもつ物体が発する赤外線を検知するセンサであり、自動ドア、監視カメラ、インフラ点検等、広範な分野に適用されている。グラフェンを受光層に用いることで、小型、かつ室温で動作する光センサを作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0114821号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/017592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なグラフェンセンサは、グラフェン層の両端に電極を配置したトランジスタ構造を有する。グラフェンに光が入射し吸収されることで発生するキャリアを、電気信号として読み出す。読み出しは、光ゲート効果や光熱電効果等を介して実現され限定されない。トランジスタ構造のグラフェンセンサで、光入射がないときのドレイン電流対ゲート電圧特性は、環境や気候の変化にかかわらず変動が少ないことが求められる。光入射がないときにドレイン電流対ゲート電圧特性自体が変化すると、光入射の有無に応じたドレイン電流の変化特性が変動し、受光量を正しく検出できなくなるからである。
【0006】
一つの側面では、ドレイン電流対ゲート電圧特性の変動が抑制されたグラフェン光センサの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、グラフェン光センサの製造方法は、
基板の上にグラフェン層と、前記グラフェン層に接続される一対の電極を形成し、
前記基板に、前記グラフェン層に所定のバイアス電圧を印加するゲート電極を形成し、
前記グラフェン層に電子線を30kV以下の加速電圧で照射する。
【発明の効果】
【0008】
ドレイン電流対ゲート電圧特性の変動が抑制されたグラフェン光センサが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】環境の変化によるドレイン電流対ゲート電圧特性の変動を示す図である。
【
図1B】光入射の有無によるドレイン電流対ゲート(バイアス)電圧特性の変化を示す図である。
【
図2】異なる移動度でのドレイン電流対ゲート電圧特性の変化を示す図である。
【
図3】グラフェン光センサの製造過程での電子線照射を示す模式図である。
【
図4】
図3のグラフェン光センサの製造プロセスのフローチャートである。
【
図6B】比較として電子線照射がないときのディラックポイントを示す図である。
【
図7】電子線照射の移動度への影響がほとんどないことを示す図である。
【
図8A】真空中での電子線の適切な加速電圧の範囲を示す図である。
【
図8B】大気開放下での電子線の適切な加速電圧の範囲を示す図である。
【
図9A】電子線照射時間と移動度の関係示す図である。
【
図9B】電子線照射時間と移動度の関係を示す図である。
【
図10】加速電圧1kVのときの電子線照射の効果を示す図である。
【
図11】加速電圧5kVのときの電子線照射の効果を示す図である。
【
図12】加速電圧1kVでの電子線照射前後のラマンスペクトルである。
【
図13】加速電圧5kVでの電子線照射前後のラマンスペクトルである。
【
図14】グラフェン光センサの変形例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で、図面を参照して実施形態を説明する。図中の同じ構成要素に同じ参照符号を付けて、重複する説明を省略する場合がある。実施例で示される構成と手順は、発明の理解を容易にするための例示であって、本開示を限定するものではない。
【0011】
グラフェンを用いた光センサ、特に赤外線センサは、屋内外での多様な使用態様が想定される。そのような赤外線センサでは、環境や気候の変化にかかわらず、光入射がないときのドレイン電流対ゲート電圧特性が安定的に維持されることが求められる。
図1Aは、環境の変化によるドレイン電流対ゲート電圧特性の変化を示す。光入射のない状態で、グラフェン光センサのドレイン電流対ゲート電圧特性を真空中と大気中とで測定する。サンプルを150℃で1時間真空アニールすることで、デバイス表面を水分量が少ない状態にする。この状態でドレイン電流対ゲート電圧特性を測定した後に大気開放する。大気開放されたサンプルは、大気中の水分や汚染物質を吸着し、矢印で示すように、ドレイン電流対ゲート電圧特性がゲート電圧のプラス方向に大きくシフトしている。光入射がない状態でドレイン電流対ゲート電圧特性それ自体が変化すると、光センサのダイナミックレンジが狭くなる。
【0012】
図1Bは、光入射の有無によるドレイン電流対ゲート(バイアス)電圧特性の変化を示す。横軸のVbgはゲート電極に印加されるバイアス電圧を表す。ゲート電極にバイアス電圧が印加された状態で、グラフェンに光が入射し吸収されると、キャリアが増加する。光入射によるキャリアの増大は、ドレイン電流の変化量ΔIphとして検知される。バイアス電圧は、光入射のない状態でドレイン電流が最小になるゲート電圧に設定される。ここではドレイン電流対ゲート電圧特性でドレイン電流が最小になるときのゲート電圧を「ディラックポイント」と呼ぶ。サークルBで示すように、ディラックポイントV
DPの近傍ではドレイン電流の変化の傾きが小さい。ゲート電極に印加されるバイアス電圧をディラックポイントに設定し、かつ、できるだけ0Vの近傍に設定することで、光入射がないときのドレイン電流の変動を小さくし、かつ、消費電力を低減することができる。
【0013】
実施形態では、グラフェンを用いた光センサを製造する際に、30kV以下の加速電圧で、グラフェンに電子線を照射する。グラフェンに電子線を照射することで、ディラックポイントを0Vに近づく方向に制御できる。後述するように、30kV以下の加速電圧はグラフェンに対するダメージが少なく、かつ、加速電圧1kVを除けばグラフェンのキャリア移動度の劣化が抑制される。キャリア移動度の劣化を抑制することで、光入射があるときとないときのドライン電流の変化量ΔIphを大きく保ち、検出感度を維持することができる。
【0014】
図2は、異なる移動度でのドレイン電流対ゲート電圧特性の変化を示す。
図2の(A)は移動度が大きい場合の特性図、(B)は移動度が小さい場合の特性図である。
図1Bと同様に、光入射により電気特性がシフトすると仮定している。キャリアの移動度が大きい場合、ドレイン電流対ゲート電圧特性の傾きが大きく、ディラックポイントでのゲート電圧で、光入射がオンのときとオフのときで流れるドレイン電流の変化量が大きい。これに対し、キャリア移動度が(A)の約60%に低下すると、光入射時のディラックポイントでのドレイン電流の変化量も、約60%に減少する。したがって、グラフェンのキャリア移動度の低下が抑制されることが望ましい。
【0015】
図3は、実施形態のグラフェン光センサの製造過程におけるグラフェンへの電子線照射を模式的に示す。グラフェン光センサ10はトランジスタ構造を有し、ゲート電極13と一対の電極14S及び14Dを有する。
図3の例で、ゲート電極13は半導体の基板111の裏面にバックゲートとして形成されているが、この構成に限定されず、絶縁膜112を介してグラフェンにゲート電圧を印加できる限り、基板11の表面側に設けられてもよい。
【0016】
基板111の表面の絶縁膜112の上に、所定形状のグラフェン層15が形成される。絶縁膜112は、基板111の上に別途形成してもよいし、絶縁膜付き基板11を利用してもよい。グラフェン層15の両端に電極14Sと14Dが接続される。一方の電極14Sはソース電極として機能し、他方の電極14Dはドレイン電極として機能する。グラフェン層15にポテンシャルの傾きを与えるために、電極14Sと14Dを異なる金属材料で形成してもよい。電極14Sと14Dを同じ金属材料で形成する場合は、グラフェン層15との界面の形状を電極14Sと14Dで非対称にするなど、なんらかの非対称性を与えればよい。
【0017】
グラフェン層15に、30kV以下の加速電圧で電子線を照射する。電子線を照射することで、水分、汚染物質等の影響を抑制し、かつ、ディラックポイントを0Vの近傍に近づける。電子線の加速電圧を30kV以下とすることで、グラフェン層15へのダメージを抑制し、かつ、移動度を高く保つことができる。加速電圧は、10kV以下、好ましくは5kV以下であってもよい。グラフェン層15への電子線照射により、グラフェン光センサ10の耐候性が向上し、光入射がない状態でのドレイン電流対ゲート電圧特性の変動を抑制することができる。耐候性は、一般的には屋外の自然環境とその変化に耐えうる性質をいうが、実施形態のグラフェン光センサにおいては、耐候性は、グラフェン光センサ10が用いられる環境が変わっても、ディラックポイントの変動が抑制されている性質を含む。
【0018】
電子線の照射により、グラフェン光センサ10の耐候性が改善され、ディラックポイントの変動が抑制されているので、
図3の状態で、グラフェン光センサ10を大気中で使用することも可能である。グラフェン光センサ10の耐候性をさらに確実にするために、グラフェン光センサ10の表面を保護層で覆ってもよい。その場合は、検出対象の光の波長に透明な材料で保護層を形成し、電極14S及び14Dに接続されるコンタクト配線を保護層に形成すればよい。
【0019】
図4は、
図3のグラフェン光センサの製造プロセスのフローチャートである。絶縁膜112が形成された半導体の基板111の裏面、すなわち、絶縁膜112と反対側の面に、ゲート電極13を形成する(S11)。バックゲート構成を採用しない場合は、基板111の裏面ではなく、絶縁膜112の上にゲート電極が形成されることになるが、その場合の構成例は後述する。
【0020】
基板111の表面の絶縁膜112上に所定形状のグラフェン層15を形成する(S12)。グラフェン層15は、酸化グラフェン分散溶液や、グラフェン粒子をバインダ結合したグラフェン塗布ペースト等を直接絶縁膜112上に塗布し、パターニングしてもよい。または、別の成長基板上に形成されたグラフェン層を機械的剥離法、転写法などで、絶縁膜112の上に配置してもよい。あるいは、絶縁膜112上に、触媒金属をスパッタリングで堆積し、CVD法により絶縁膜112上に直接、グラフェンを成長してもよい。このとき、触媒金属を周期構造の形状にパターニングしておくことで、所定のパターン形状のグラフェン層15が得られる。
【0021】
グラフェン層15に接続される一対の電極14Sと14Dを形成する(S13)。電極材料として金(Au)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、白金(Pt)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0022】
次に、グラフェン層15に30kV以下の加速電圧で電子線を照射する(S14)。任意で、グラフェン光センサ10の全体を覆う保護層を形成してもよい(S15)。この場合、保護層は、検出対象の光、たとえば赤外光に対して透明な絶縁材料で形成される。保護層に電極14S及び14Dに達するコンタクトホールを形成し、コンタクトホール内に電極14S及び14Dと接続される電気配線を形成する。保護層を形成する場合、保護層の形成後に電子線を照射してもよい。保護層をたとえば、低密度、かつ水分透過性が低い耐水性の樹脂で形成する場合、上述した加速電圧の範囲内で、保護層を介してグラフェン層15に電子線を照射することができる。
【0023】
<グラフェン光センサの製造工程>
図5Aから
図5Fは、
図3に示したグラフェン光センサの具体的な製造工程図である。
図5Aで、熱酸化膜付きシリコン基板11Aを準備する。基板111の熱酸化膜112Aと反対側の面(裏面)に、バックゲート13Aを形成する。熱酸化膜付きシリコン基板11Aの裏面の熱酸化膜を除去し、基板111の裏面に露出したシリコンの結晶面に、金属を電子ビーム(EB)蒸着してバックゲート13Aを形成する。バックゲート13Aを、たとえば、TiとAuの2層構造で形成してもよい。
【0024】
図5Bで、熱酸化膜112Aの上に、電極パッド141と142を、たとえばリフトオフ法で形成する。電極パッド141と142はAuとTiの2層構造としてもよい。
【0025】
図5Cで、所定の形状のグラフェン層15を形成する。たとえば、電極パッド141と142が形成された基板の全面にグラフェンを塗布する。グラフェンと基板の密着性を高めるために、グラフェンの塗布後に150℃から200℃でアニールしてもよい。グラフェンを所定の形状にパターニングしてグラフェン層15を得る。グラフェンを残したい箇所をレジストで保護し、酸化アッシング、または酸素を用いたイオンビームでパターニングする。
【0026】
図5Dで、電極パッド141と142を覆って、グラフェン層15と電気的に接続される電極膜143と144を形成し、一対の電極14Sと14Dを得る。電極膜143と144は、Au、Ti、Pd、Cr、Pt、これらの組み合わせ等により形成される。
【0027】
図5Eで、グラフェン層15に電子線EBを照射する。電子線の加速電圧は30kV以下が望ましい。30kVを超える加速電圧で、直接グラフェン層15に電子線を照射すると、グラフェン層15にダメージが生じ、ドレイン電流対ゲート電圧特性が0Vから離れる方向にシフトするおそれがある。換言すると、30keVを超える加速エネルギーをもつ電子線で照射されることで、グラフェン中に正孔キャリアとして振る舞う欠陥が生じ、これによりディラックポイントがプラス側にシフトするおそれがある。
【0028】
必要に応じて、
図5Fで、グラフェン層15が形成された面の全体を保護層16で覆って、電極14Sと14Dに達するコンタクトホール161を形成する。これにより光センサ10Aが得られる。保護層16を設ける場合は、保護層16の密度と厚さに応じて、50kV未満の加速電圧で、保護層16を介してグラフェン層15に電子線を照射してもよい。すなわち、グラフェン層15に届く時点で電子線の加速エネルギーが30keV以下になっていればよい。
【0029】
保護層16として、検出対象の光の波長に透明な絶縁材料を用いる。保護層16を、検出対象の光の波長に透明、かつ、密着性が良好で、数ミクロンの厚さに塗布できる樹脂材料で形成してもよい。これらの条件を満たす樹脂として、感光性のエポキシ樹脂、たとえば、Kayaku Advanced Materials社製のSU-8 3000ドライフィルムレジストを用いてもよい。このトライフィルムレジストはネガ型のレジストなので、たとえば、保護層16をマスクアライナ露光装置でパターニングしてコンタクトホール161を形成することができる。
【0030】
保護層16として、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)で形成されたAl2O3層を用いてもよい。この場合、原子層堆積装置にウェハを入れてAl2O3層の成膜前にウェハ全体を加熱してもよい。これにより、ウェハ表面に付着した水分や汚れを除去できALD層が緻密化する。
【0031】
図5Aから
図5Fでは、ひとつの素子であるグラフェン光センサ10Aに着目して製造工程を説明したが、シリコンウェハ上に多数のグラフェン光センサ10Aを同時に形成して、光センサアレイとしてもよい。
【0032】
<特性評価>
所定の加速電圧で電子線照射されたグラフェン層15を有する光センサ10の特性を評価する。
図6Aは、絶縁膜112としてALD法でアルミナを20nm堆積した構造の素子の電子線照射による効果を示す。
図6Aで、複数のサンプルに対して電子線を照射し、照射後に電子顕微鏡から取り出し、真空プローバ中で真空アニールして真空中に維持して常温に冷却した状態と、その後に大気開放した状態で、それぞれディラックポイントを測定する。これらのサンプルの電子線照射前の状態での測定結果を併せて示す。
図6Bは、比較例として、別のサンプルグループで、電子線照射を行わずに真空中に維持した状態と、その後に大気開放した状態で測定したディラックポイントを示す。いずれも、縦軸は頻度、横軸はディラックポイント、すなわち、光入射のない状態でドレイン電流が最小になるときのゲート電圧である。
【0033】
図6Aで同じロットで作製された同じサンプルグループに属する2種類の形状の各18素子(合計36個)のサンプルを用いて、真空プローバ中で真空アニールして常温に冷却後に真空中でディラックイントを測定する。この時点でゲートリークした1素子を除外した。その後、電子顕微鏡中で17個のサンプルだけに電子線を照射した。真空プローバ中で真空アニールして常温に冷却後に35個のサンプルのディラックイントを測定し、そのまま大気開放してディラックイントを測定した。電子線は、日立ハイテクノロジーズ株式会社製の電界放出型走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)S-4800を用いて、加速電圧1kVで2.5分間、照射する。
【0034】
電子線の照射前は、斜線バーで示すように、ディラックポイントは4.8V~5.6Vの間にある。これは、グラフェン層15を形成した時点で、グラフェン中に一定程度の正孔キャリアが存在するからと考えられる。電子線を照射することで、白色バーで示すように、ディラックポイントは0Vに近づく方向にシフトする。ディラックポイントに相当するゲート電圧をバイアスとして印加しておくことで、光入射により増加するドレイン電流の変化を検知することができる。光入射がないときのディラックポイントを0Vに近づけることで、グラフェン光センサの消費電力を低減できる。
【0035】
電子線を照射したサンプルでは、照射後に12/17のサンプルでディラックポイントが減少し、その後に真空チャンバーを大気に開放した後も、2.8~6.1V(平均1.5Vの増加)にとどまっている。ディラックポイントがプラス側にシフトしているのは、大気中の水分や汚染物資がグラフェン層15に吸着したためと考えられる。この意味で、グラフェン層15に電子線を照射した後にグラフェンが形成された面の全体を保護層16で覆うのが望ましい場合がある。
【0036】
図6Bは上述した電子線を照射しなかった18個のサンプルの測定結果である、真空アニール後の真空中ではディラックポイントは4.3V~6.2Vの範囲にある。その後大気に開放すると、すべてのサンプルで、ディラックポイントが5.6V以上に増大する。初期状態からのディラックポイントの変化量の平均値は、電子線照射なしのサンプルで1.5V、電子線照射ありのサンプルで-0.8Vであった。
【0037】
図6の結果から、グラフェン層に所定の加速電圧で電子線を照射することで、環境の影響(水分、汚染物質等)の影響を抑制し、かつ、ディラックポイントが0Vに近づくことが確認される。
【0038】
図7は、電子線照射の移動度への影響がほとんどないことを示す図である。
図6Aと同じ17個のサンプルで、真空中で電子線照射前の状態、真空中で電子線照射後の状態、及び、電子線照射後に大気に開放した状態のそれぞれで、移動度を測定する。真空中で電子線を照射する前の状態(斜線バー)の平均移動度は、924cm
2/Vsである。真空中で電子線を照射した後の状態(白バー)の平均移動度は、980cm
2/Vsである。電子線の照射後に大気に開放した状態(黒バー)の移動度は、885cm
2/Vsである。電子線の照射による移動度の増加は大きくはないが、少なくとも大気開放の後でも移動度の劣化は抑制されることがわかる。
【0039】
図8Aと
図8Bは、電子線の適切な加速電圧の範囲を示す図である。横軸は加速電圧(kV)、縦軸は、電子線照射後240分(4時間)経過した時点でのディラックポイントの変化量(V)を表す。
図8Aは真空中での測定結果を示し、
図8Bは大気開放後の測定結果を示す。黒点がデータ点、破線は、各加速電圧での平均値を結ぶ線である。加速電圧0Vでのデータ点は、電子線照射を行っていないサンプルのディラックポイントの変化量を示す。ディラックポイントの変化量のマイナス値は、電子線照射前のディラックポイントからマイナス側への変化を示す。
【0040】
図8Aではディラックポイントは加速電圧2kVまではマイナス側へ、5kV以上では最初の値に近づいている。
図8Bでは全体的にプラス側に動いている。加速電圧1kVで移動量が小さいのは、電子線照射の影響が効いているためである。
図8Aで、1kVのときに他の電圧値と比べてディラックポイントがマイナス側に大きく動いているが、真空中から大気開放するとディラックポイントは加速電圧によらず増加しているので結果的に変化量が小さくなっている。加速電圧30kV以下でグラフェンに電子線を照射することで、ディラックポイントのマイナス側へのシフトが実現される。1kV以下でのディラックポイントの振る舞いは異なっていることが分かる。グラフェンに電子線を照射することで、水分、汚染物質等の影響によるディラックポイントのプラス側へのシフトを抑制できることがわかる。
【0041】
図9Aと
図9Bは、電子線照射時間と移動度の関係を示す図である。
図9Aは、電子線の加速電圧が0.5kV、1.0kV、5.0kVのときの移動度の変化、
図9Bは電子線の加速電圧が10kV、15kV、20kV、25kV、30kVのときの移動度の変化を示す。
図9Aを参照すると、加速電圧が1.0kV未満のときに、照射時間が長いと移動度が低下するが、照射時間を10分以内とすることで、移動度の低下を10%以内に抑制することができる。加速電圧が1.0kVのときは、照射時間の増大とともに移動度は低下するが、照射時間を60分以内にすることで、移動度比は0.9以上、すなわち移動度の低下は10%以内に維持される。加速電圧が5.0kVのときは、照射時間が長くなっても移動度の劣化は少なく、照射時間が60分以内の場合、移動度比は0.95以上(移動度の低下が5%以内)に維持される。
【0042】
図9Bを参照すると、加速電圧が10kV以上30kV以下の範囲で、加速電圧5kVの時と同様に、移動度の劣化は少ない。特に、照射時間を60分以内とすることで、移動度比は0.95以上に維持される。加速電圧が20kV以上30kV以下のときは、10分程度の短時間の照射とすることで、移動度の低下をさらに小さくすることができる。
図9Aと
図9Bの結果から、以下の事項が導かれる。
(1)加速電圧30kV以下の全範囲で、電子線の照射時間は10分以内とすることで、移動度の低下を10%以内に抑えることができる。
(2)加速電圧が1.0kV以上30kV以下の範囲では、電子線照射時間が60分以内で移動度の低下は10%以内に抑制され、10分以内の照射では、移動度の低下を5%以内に抑制できる。
(3)
図8のディラックポイントのシフト効果と合わせると、電子線の加速速度は20kV以下、好ましくは5kVであるが、加速速度20kVを超える場合でも、照射時間を短くすることで、ディラックポイントのプラス側への変動を抑制し、かつ移動度の劣化を抑制できる。
【0043】
図10は、加速電圧1kVのときの電子線照射の効果を示す。電子線を照射する前の初期状態(A)から、照射時間を10分(B)、60分(C)、120分(D)、180分(E)、240分(F)と変化させる。ディラックポイントは、マイナス方向にシフトし、240分の照射で初期から1.4V減少する。この中でディラックポイントを0Vに近づける観点から、1kVの加速電圧での電子線照射は、10分間の照射が効果的である。照射時間が60分を超えると、ディラックポイントシフトの効果が飽和する一方で、ドレイン電流対ゲート電圧特性の曲線の傾きが緩やかになって、移動度が低下する。
【0044】
図11は、加速電圧5kVのときの電子線照射の効果を示す。電子線を照射する前の初期状態(A)から、照射時間を10分(B)、60分(C)、120分(D)、180分(E)、240分(F)と変化させる。ディラックポイントは、0.6V~1.2Vの間に収まって安定している
【0045】
図12は、加速電圧1kVでの電子線照射前後のラマンスペクトルである。
図12の(A)と(B)は、同じロットから無作為に抽出されたサンプルIとサンプルIIの大気中でのラマン分光の結果である。サンプルIとサンプルIIのそれぞれで、電子線照射前のラマンスペクトルを実線で示し、1kVで100分電子線を照射した後のラマンスペクトルを点線で示す。1580cm
-1近傍のGバンドでのピークがグラファイト由来のピークである。1350cm
-1近傍のDバンドは欠陥由来のピークである。サンプルIでは電子線照射によりDバンドのピークがわずかに増大しているが、サンプルIIでDバンドの変化はほとんどない。1kVの電子線照射はグラフェン層にほとんどダメージを与えないことがわかる。
【0046】
図13は、加速電圧5kVでの電子線照射前後のラマンスペクトルである。
図13の(A)と(B)は、同じロットから無作為に抽出されたサンプルIIIとサンプルIVの大気中でのラマン分光の結果である。サンプルIIIとサンプルIVのそれぞれで、電子線照射前のラマンスペクトルを実線で示し、5kVで100分電子線を照射した後のラマンスペクトルを点線で示す。サンプルIIIとIVの双方で、Dバンドのピークにほとんど変化はなく、5kVの電子線照射はグラフェン層にほとんどダメージを与えないことがわかる。
【0047】
以上の評価結果から、以下のことが確認される。
(a)グラフェン層に電子線を30kV以下の加速電圧で照射することで、ドレイン電流対ゲート電圧特性のプラス側への変動、すなわち、水分や汚染物質等の環境の影響を抑制することができる。
(b)30kV以下の加速電圧での電子線の照射により、光照射がないときのディラックポイントを0Vに近づけることができる。その結果、ゲート電圧に印加するバイアス電圧を小さくして、消費電力を低減できる。
(c)30kV以下の加速電圧での電子線の照射は、グラフェンに対するダメージはほとんどなく、グラフェンの移動度の劣化は抑制される。
(d)30kVの加速電圧での電子線の適切な照射時間は、上記の(1)、(2)から10分以内が望ましいが、加速電圧が1kV以上30kV以下であれば、60分以内の照射時間でも移動度の劣化が抑制される。電子線を60分以上照射しても、ディラックポイントを0Vに近づけるシフト効果は飽和し、移動度が徐々に低下する。
(e)電子線照射の効果をより確実にするために、グラフェン層が形成されたセンサ面に保護層を設けてもよい。
【0048】
これらの事項により、適切な加速電圧で電子線を照射することで、ドレイン電流対ゲート電圧特性の変動が抑制されたグラフェン光センサが実現される。なお、絶縁膜112にシリコン熱酸化膜を用いた素子についても、電子線を照射して測定した結果、真空中で同じ効果を確認した。
【0049】
<変形例>
図14は、変形例であるグラフェン光センサ10Bの模式図である。グラフェン光センサ10Bは、グラフェン層15が設けられるセンサ面と同じ側にゲート電極18が設けられる。必要に応じて、基板の裏面にバックゲート13Bを設けてもよい。この場合、グラフェン光センサ10Bへの電気配線の設計や駆動形態に応じて、ゲート電極18とバックゲート13Bのいずれを用いてもよい構成にできる。バックゲート13Bの使用が想定される場合は、グラフェン光センサ10Bにあらかじめ非対称性を与えてグラフェン層にポテンシャルの傾きを与えるのが望ましい。ゲート電極18を用いる場合は、ゲート電極18を電極14Sと14Dのいずれか一方の側に片寄らせて配置する、あるいは、電極14Sの側と電極14Dの側で平面形状を変える等して、センサ構成に非対称性を持たせてもよい。
【0050】
ゲート電極18は、基板11上の絶縁膜113の上に設けられ、絶縁膜114でゲート電極18を含む基板表面が覆われている。ゲート電極18をゲート電圧印加用の電極として用いる場合、絶縁膜114がゲート絶縁膜となる。ゲート電極18から絶縁膜114を介して、ディラックポイントに相当するゲート電圧(バイアス電圧)がグラフェン層15に印加される。絶縁膜113と114は同じ絶縁材料で形成されてもよいし、異なる絶縁材料で形成されてもよい。絶縁膜113として、熱酸化膜を利用してもよい。絶縁膜113が熱酸化膜の場合、
図14のゲート電極18の構成は、パーシャルゲート構造と呼ばれる。絶縁膜113が熱酸化膜でない場合、
図14のゲート電極18の構成は、グローバルゲート構造と呼ばれる。
【0051】
図14の構成でも、グラフェン層15に電子線が照射されているので、ディラックポイントの変動が抑制され、かつ、ディラックポイントが0Vの近傍に調整されている。グラフェン層15が形成されたセンサ面に保護層16を設けることで、グラフェン光センサ10Bの耐候性をより確実にしてもよい。
【0052】
図15Aから
図15Iは、グラフェン光センサ10Bの製造工程図である。
図15Aで半導体の基板11上に絶縁膜113を形成する。基板11としてシリコン基板、または熱酸化膜付きシリコン基板を用いる場合は、基板11の表面のシリコン熱酸化膜を除去して絶縁膜113を形成する。絶縁膜113として、たとえばAl
2O
3膜をALD法、マグネトロンスパッタリング法、電子ビーム蒸着法等で形成する。
【0053】
図15Bで、必要に応じて、基板11の裏面にバックゲート13Bを形成する。バックゲート13Bを使用しない場合は、
図15Bの工程を省略してもよい。バックゲート13Bを形成する場合は、基板11の裏面の熱酸化膜を除去し、電子ビーム蒸着によりバックゲート13Bを形成する。
【0054】
図15Cで、絶縁膜113上にリフトオフ法等によりゲート電極18を形成し、
図15Dで、ウェハの全面を絶縁膜114で覆う。ゲート電極18は、たとえばAuとTiの2層構造としてもよい。絶縁膜114は、Al
2O
3、SiO2、SiN、SiON、BN、HfO
2、La
2O
3、ZrO
2、Ta
2O
5等で形成してもよい。
【0055】
図15Eで、絶縁膜114の上に電極パッド141と142を、たとえばリフトオフ法で形成する。電極パッド141と142はAuとTiの2層構造としてもよい。
【0056】
図15Fで、絶縁膜114上の電極パッド141と142の間の領域に、所定の形状のグラフェン層15を形成する。たとえば、電極パッド141と142が形成された基板の全面にグラフェンを塗布する。グラフェンと基板の密着性を高めるために、グラフェンの塗布後に150℃から200℃でアニールしてもよい。ウェハの全面に塗布したグラフェンを所定の形状にパターニングして、グラフェン層15を得る。グラフェンを残したい箇所をレジストで保護し、酸化アッシング、または酸素を用いたイオンビームでパターニングする。
【0057】
図15Gで、電極パッド141と142を覆って、グラフェン層15と電気的に接続される電極膜143と144を形成し、一対の電極14Sと14Dを得る。電極膜143と144は、Au、Ti、Pd、Cr、Pt、これらの組み合わせ等により形成される。
【0058】
図15Hで、グラフェン層15に電子線EBを照射する。電子線の加速電圧は30kV以下が望ましい。30kV以下の電子線の照射は10分以下であることが望ましい。特に1kV以下の加速電圧で電子線を照射する場合は、10分以下の照射にして移動度の劣化を抑制することが望ましい。1kV以上、30kVの加速電圧で電子線照射する場合は、60分間照射しても移動度の劣化を抑制できるが、製造時間の短縮化と移動度を高くたもつ観点から、10分以下の照射としてもよい。
【0059】
必要に応じて、
図15Iで、グラフェン層15が形成された面の全体を保護層16で覆って、電極14Sと14Dに達するコンタクトホール161を形成する。これにより光センサ10Bが得られる。保護層16を設ける場合は、保護層16を介してグラフェン層15に電子線を照射してもよい。保護層16の密度と厚さに応じて、グラフェン層15に到達する電子線のエネルギーが30keV以下となる適切な加速電圧を選択してもよい。保護層16として、検出対象の光の波長に透明、かつ、密着性が良好で、数ミクロンの厚さに塗布できる感光性のエポキシ樹脂を用いてもよいし、ALD法で形成されたAl
2O
3層を用いてもよい。
【0060】
図15Aから
図15Iでは、ひとつの素子であるグラフェン光センサ10Bに着目して製造工程を説明したが、シリコンウェハ上に多数のグラフェン光センサ10Aを同時に形成して、光センサアレイとしてもよい。
図15Bのバックゲート13Bの形成を省略する場合は、基板11のセンサ面側にすべての電極が設けられるので、集積回路の作製が可能になる。
【0061】
本開示の方法は、受光層としてグラフェンを用いるどのような構成の光センサにも適用可能である。グラフェン層15にダメージを与えない加速エネルギーで電子線を照射することで、30kV以下の以上、特定の例に基づいて本開示を説明してきたが、本開示は、上述した例に限定されない。各実施例を互いに組み合わせてもよい。たとえば、
図11及び12の埋め込みゲート電極の構成に、第2実施形態の孔あきのグラフェン層15を組み合わせてもよい。グラフェン層15の形状(幅、長さを含む)、層数は、適切に設計され得る。グラフェン層15に孔151を形成する場合、孔151は円形孔に限定されず、多角形、楕円等の孔であってもよい。孔151の配置は、
図8のマトリクス状の配置に限定されず、互い違いの配置、または細密配置であってもよい。
【0062】
樹脂層25は、エポキシ樹脂を主成分として、重量%で数%~10%の紫外線(UV)硬化樹脂と、1~5%程度の接着促進剤を添加したものであってもよい。少なくともグラフェン層15の受光領域155を樹脂層25で保護することで、耐候性の改善と、pドーピングの効果による感度の向上が見込まれる。
【符号の説明】
【0063】
10、10A、10B グラフェン光センサ
11 基板
111 シリコン基板
112、113,114 絶縁膜
112A 熱酸化膜
13、18 ゲート電極
13A、13B バックゲート
14S、14D 電極
141、142 電極パッド
15 グラフェン層
16 保護層
161 コンタクトホール