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特開2024-32629アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下からなる合金で造られていることを特徴とするボイラー
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  • 特開-アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下からなる合金で造られていることを特徴とするボイラー 図1
  • 特開-アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下からなる合金で造られていることを特徴とするボイラー 図2
  • 特開-アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下からなる合金で造られていることを特徴とするボイラー 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032629
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下からなる合金で造られていることを特徴とするボイラー
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/00 20060101AFI20240305BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F23M5/00 B ZAB
F23C99/00 317
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022146588
(22)【出願日】2022-08-29
(71)【出願人】
【識別番号】710006150
【氏名又は名称】水口 政義
(72)【発明者】
【氏名】水口 政義
【テーマコード(参考)】
3K065
【Fターム(参考)】
3K065TC01
3K065TD05
3K065TM02
3K065TP08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料とする火力発電所において、使用するボイラーを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部を補修することなく、長期にわたってボイラーを継続的に使用する、すなわち、火力発電所を長期間にわたって操業することを可能とする。
【解決手段】ボイラーを構成するボイラー管(水管)やその溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下の合金で造られたボイラーにすることにより、アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させた際、アンモニア分解ガス中に極めて活性の強い窒素原子が生成しても、ボイラー管(水管)及び、その溶接部に、穴あき(ピンホール)や割れの起因となる脆弱な鉄系の窒化物を形成しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質が、ニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下からなる合金で造られていることを特徴とするボイラー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を火力発電所などのボイラーで燃焼させて蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回転させて電気を造る火力発電所などのボイラーに関わる分野
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化対策として二酸化炭素を削減することが世界各国で求められている。二酸化炭素の発生源の一つとして挙げられているのが、化石燃料を燃料源としてボイラーで燃焼させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回転させることにより電気を造る火力発電所である。この火力発電所においてボイラーを加熱するために使用する化石燃料を燃焼させた際、発生する二酸化炭素をいかに削減するかが求められている。
【0003】
火力発電所などでは二酸化炭素の削減をはかるために、化石燃料の代わりに、水素と窒素からなるアンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料をボイラーで燃焼させることなどにより電気を造るアンモニア発電と称する火力発電を導入する機運が高まっている。
【0004】
このアンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を熱源とするボイラーは燃焼後、水と窒素しか排ガスに生成せず、二酸化炭素を全く発生しないために、地球温暖化に寄与すると近年注目が集まっている。
【0005】
しかしながら、アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を火力発電所などのボイラーで燃焼する際、発生するアンモニア分解ガス中に極めて活性の強い遊離した窒素原子が生成するために、ボイラーを使用するうちに、ボイラーを構成する鉄系金属で造られたボイラー管(水管)及び、その溶接部にいずれも鉄系窒化物の形成による腐食、即ち、穴あき(ピンホール)や割れ等が生じることが判った。
【0006】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)やその溶接部の材質を変え、腐食状況をいろいろと調べた。その結果、鉄(Fe)を40~70%含む既存のステンレス系の材質を使用したとしても、ボイラーを使用するうちに、いずれの材質もボイラー管(水管)及び、その溶接部に穴あき(ピンホール)や割れなどの原因となる脆弱な鉄系の窒化物が生じることが判った。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はアンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させる火力発電所などのボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下の合金で造られたことを特徴とするボイラーにある。
【0008】
なお、特許請求範囲でボイラー管(水管)やその溶接部の材質としてニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下の合金としたのは、鉄(Fe)の含有量が15%を超えるとボイラーを使用するうちに、ボイラー管(水管)及び、その溶接部に穴あき(ピンホール)や割れなどの原因となる脆弱な鉄系の窒化物の生成が認められたからである。
【発明の効果】
【0009】
火力発電所などの蒸気ボイラーにおいてアンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させる際、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質がニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とし、鉄(Fe)の含有量が15%以下の合金で造られたものは、ボイラーを長期間使用しても、アンモニア分解に伴う極めて活性の強い遊離した窒素原子の生成により、ボイラー管(水管)及び、その溶接部において、穴あき(ピンホール)や割れなどの腐食の原因となる脆弱な鉄系の窒化物を形成しないことが判明した。
【00010】
このため、アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料とする火力発電所において、使用するボイラーを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部を補修することなく、長期にわたってボイラーを継続的に使用する、すなわち、火力発電所を長期間にわたって操業することが可能となる。
【0011】
このことはボイラー以外にもアンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させる装置全てに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ボイラーを構成する簡単な立体図の一例
図2図1のボイラーを上から見た図
図3】ボイラー管(水管)の溶接部の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質として、ニッケル(Ni)8%、クロム(Cr)18%、鉄(Fe)70%を主成分とするステンレス鋼を使用したボイラーを3カ月連続使用したところ、ボイラー管(水菅)及び、その溶接部に脆弱な鉄系の窒化物の生成が認められた。
【実施例0014】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質として、ニッケル(Ni)22%、クロム(Cr)26%、鉄(Fe)40%を主成分とするステンレス鋼を使用したボイラーを6カ月連続使用したところ、ボイラー管(水菅)及び、その溶接部に脆弱な鉄系の窒化物の生成が認められた。
【実施例0015】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質として、ニッケル(Ni)70%、クロム(Cr)15%、鉄(Fe)6%を主成分とするニッケル合金を使用したボイラーを12カ月連続使用しても、ボイラー管(水菅)及び、その溶接部には脆弱な鉄系の窒化物の生成が全く認められなかった。
【実施例0016】
アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質として、ニッケル(Ni)65%、クロム(Cr)17%、鉄(Fe)10%を主成分とするニッケル合金を使用したボイラーを12カ月連続使用しても、ボイラー管(水菅)及び、その溶接部には脆弱な鉄系の窒化物の生成が認められなかった。
【実施例0017】
しかしながら、アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質として、ニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とした合金中の鉄(Fe)の含有量が15%を超えると、長期間(12ヶ月)ボイラーを使用していくうちに、ボイラー管(水菅)及び、その溶接部に脆弱な鉄系の窒化物の生成がわずかに認められた。
【0018】
このことよりアンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、ボイラー管(水菅)及び、その溶接部に脆弱な鉄系の窒化物の生成がなく、長期間(12ヶ月)ボイラーを安定的に使用するには、ボイラーを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部の材質として、ニッケル(Ni)やクロム(Cr)または、その両方の金属を主成分とした合金中の鉄(Fe)の含有量が15%を超えないことが重要である。
【実施例0019】
また、アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるボイラーにおいて、それを構成するボイラー管(水管)及び、その溶接部に金属チタン(Ti)やチタン(Ti)合金を使用した場合、当該ボイラーを長期間(12ヶ月)使用したとしても、ボイラー管(水管)及び、その溶接部には穴あき(ピンホール)や割れなど腐食の原因となる脆弱な鉄系の窒化物の生成は認められなかった。しかしながら、金属チタン(Ti)やチタン(Ti)合金はボイラー管(水管)に加工することが容易でなく、ボイラー管(水管)などに使用する材料としては実用性に欠ける。
【産業上の利用の可能性】
【0020】
ガソリン自動車に代わり、アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させて動力を駆動させるアンモニア燃料自動車やタービンが将来実用化された際にも、脆弱な鉄系の窒化物を形成しない材料として利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0021】
1:ボイラーを構成するボイラー管(水管)を示す図
2:アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させる燃焼機器を示す図
3:アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を燃焼させるために必要な空気を供給する箇所を示す図
4:アンモニアまたは、アンモニアを主成分とする燃料を供給する箇所を示す図
5:ボイラーに水を供給する箇所を示す図
6:ボイラー管(水管)に水を供給するために水を溜めている所を示す図
7:蒸気と水とを分離する装置を示す図
8:蒸気と水とが混合している所を示す図
9:蒸気管を示す図
10:生成した蒸気を示す図
11:ボイラーの基盤を示す図
12:ボイラー管(水管)をボイラー基盤に溶接した所を示す図
図1
図2
図3