(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032651
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】電池用包装材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/122 20210101AFI20240305BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240305BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240305BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M50/122
H01M50/117
H01M50/121
H01M50/131
B32B27/20 Z
H01M50/129
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108176
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2022135592
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】川北 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】甲田 直也
【テーマコード(参考)】
4F100
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA02A
4F100AA07A
4F100AA08A
4F100AA17A
4F100AA19A
4F100AA20A
4F100AC10A
4F100AK01A
4F100AK01D
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK12A
4F100AK17A
4F100AK18A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK51A
4F100AT00B
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA13A
4F100CA13B
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4F100CB00E
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4F100EJ91A
4F100GB15
4F100GB41
4F100JD02C
4F100JK01A
4F100JK06
4F100JK12A
4F100JK13A
4F100JL01
4F100JL10E
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4F100YY00A
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK00
5H011KK02
(57)【要約】
【課題】電池用包装材の表面に、保護テープが不本意に剥がれず、かつテープの粘着剤を残さずに剥離できる、という相反する特性を付与する。
【解決手段】基材層13と、熱融着性樹脂層15と、これら両層間に配設されたバリア層11と、前記基材層13の外側に最外層として基材保護層20を有する電池用包装材21であって、前記基材保護層20は、バインダー樹脂21と、固体微粒子22として軟質樹脂微粒子22a、硬質樹脂微粒子22bおよび無機微粒子22cを含み、JIS Z 8844:2019に基づいて測定した、前記軟質樹脂微粒子21aの変形強度が2MPa以上20MPa未満であり、前記硬質樹脂微粒子22bの変形強度が20MPa~100MPaであり、前記無機微粒子22cの破壊強度が500MPa~2000MPaであり、前記基材保護層20中の固体微粒子22の合計含有率が30質量%~50質量%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、熱融着性樹脂層と、これら両層間に配設されたバリア層と、前記基材層の外側に最外層として基材保護層を有する電池用包装材であって、
前記基材保護層は、バインダー樹脂と、固体微粒子として軟質樹脂微粒子、硬質樹脂微粒子および無機微粒子を含み、
JIS Z 8844:2019微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法に基づいて測定した、前記軟質樹脂微粒子の変形強度が2MPa以上20MPa未満であり、前記硬質樹脂微粒子の変形強度が20MPa~100MPaであり、前記無機微粒子の破壊強度が500MPa~2000MPaであり、
前記基材保護層中の固体微粒子の合計含有率が30質量%~50質量%であることを特徴とする電池用包装材。
【請求項2】
前記軟質樹脂微粒子の平均粒径が5μm~20μmであり、前記硬質樹脂微粒子の平均粒径が1μm~15μmであり、前記無機微粒子の平均粒径が1μm~5μmである請求項1に記載の電池用包装材。
【請求項3】
前記基材保護層中の軟質樹脂微粒子の含有率が1質量%~10質量%であり、硬質樹脂微粒子の含有率が1質量%~20質量%、無機微粒子の含有率が20質量%~40質量%である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項4】
前記軟質樹脂微粒子が、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズのうちから選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項5】
前記硬質樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アクリル樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズのうちから選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項6】
前記無機微粒子が、シリカ、アルミナ、カオリン、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウムのうちから選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項7】
前記バインダー樹脂が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、テトラフルオロオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項8】
前記基材保護層および/または基材層に着色剤が含まれている請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項9】
前記バリア層と基材層が接着剤層を介して積層され、前記基材保護層、基材層、接着剤層のうちの少なくとも一つの層に着色剤が含まれている請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項10】
前記基材保護層と基材層の間および/または前記基材層とバリア層の間に着色層を有する請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項11】
前記バリア層と基材層が接着剤層を介して積層され、前記基材保護層と基材層の間、前記基材層と接着剤層の間、前記接着剤層とバリア層の間のうちの少なくとも一つの層間に、着色層を有する請求項1または2に記載の電池用包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の製造工程で、ケース材料である包装材の表面に傷がつくと製品の外観を損なう。このような製造過程における外観不良の発生を防止するために、包装材に保護テープを貼り付けておき、製造工程完了後に保護テープを剥がす、という方策が取られている。前記保護テープは製造工程中に剥がれない密着性が求められるが、強く接着されていると剥離後に保護テープの粘着剤が包装材に残ることがある。また、表面にカーボンブラックを含有する着色層が積層された包装材では、保護テープとともに着色層も剥離することがある。
【0003】
このような保護テープに関する問題点に対し、従来は、保護テープの剥離後の糊残りに対しては保護テープの粘着力で対応していた(特許文献1参照)。また、着色層の剥離に対しては着色層を強化する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-155364号公報
【特許文献2】特開2006-206805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は包装材における糊残りの防止対策ではない。また、特許文献2の技術は、最外層がカーボンブラック含有の着色層ではない包装材については糊残りの問題の解決にはならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した背景技術に鑑み、本発明は、電池用包装材の表面に、保護テープが不本意に剥がれず、かつテープの粘着剤を残さずに剥離できる、という相反する特性を付与することと、テープの粘着剤残りによる見映えが悪くなることを防止することを目的とする。
【0007】
即ち、本発明は、下記[1]~[11]に記載の構成を有する。
【0008】
[1]基材層と、熱融着性樹脂層と、これら両層間に配設されたバリア層と、前記基材層の外側に最外層として基材保護層を有する電池用包装材であって、
前記基材保護層は、バインダー樹脂と、固体微粒子として軟質樹脂微粒子、硬質樹脂微粒子および無機微粒子を含み、
JIS Z 8844:2019微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法に基づいて測定した、前記軟質樹脂微粒子の変形強度が2MPa以上20MPa未満であり、前記硬質樹脂微粒子の変形強度が20MPa~100MPaであり、前記無機微粒子の破壊強度が500MPa~2000MPaであり、
前記基材保護層中の固体微粒子の合計含有率が30質量%~50質量%であることを特徴とする電池用包装材。
【0009】
[2]前記軟質樹脂微粒子の平均粒径が5μm~20μmであり、前記硬質樹脂微粒子の平均粒径が1μm~15μmであり、前記無機微粒子の平均粒径が1μm~5μmである前項1に記載の電池用包装材。
【0010】
[3]前記基材保護層中の軟質樹脂微粒子の含有率が1質量%~10質量%であり、硬質樹脂微粒子の含有率が1質量%~20質量%、無機微粒子の含有率が20質量%~40質量%である前項1または2に記載の電池用包装材。
【0011】
[4]前記軟質樹脂微粒子が、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズのうちから選ばれた少なくとも1種である前項1~3のいずれかに記載の電池用包装材。
【0012】
[5]前記硬質樹脂粒子が、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アクリル樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズのうちから選ばれた少なくとも1種である前項1~4のいずれかに記載の電池用包装材。
【0013】
[6]前記無機微粒子が、シリカ、アルミナ、カオリン、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウムのうちから選ばれた少なくとも1種である前項1~5のいずれかに記載の電池用包装材。
【0014】
[7]前記バインダー樹脂が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、テトラフルオロオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種である前項1~6のいずれかに記載の電池用包装材。
【0015】
[8]前記基材保護層および/または基材層に着色剤が含まれている前項1~7のいずれかに記載の電池用包装材。
【0016】
[9]前記バリア層と基材層が接着剤層を介して積層され、前記基材保護層、基材層、接着剤層のうちの少なくとも一つの層に着色剤が含まれている前項1~7のいずれかに記載の電池用包装材。
【0017】
[10]前記基材保護層と基材層の間および/または前記基材層とバリア層の間に着色層を有する前項1~7のいずれかに記載の電池用包装材。
【0018】
[11]前記バリア層と基材層が接着剤層を介して積層され、前記基材保護層と基材層の間、前記基材層と接着剤層の間、前記接着剤層とバリア層の間のうちの少なくとも一つの層間に、着色層を有する前項1~7のいずれかに記載の電池用包装材。
【発明の効果】
【0019】
上記[1]に記載の電池用包装材は、基材保護層がバインダー樹脂と、固体微粒子として硬さの異なる軟質樹脂微粒子、硬質樹脂微粒子、無機微粒子を含んでいるので、その表面は、バインダー樹脂が存在する部分と3種類の硬さの異なる固体微粒子が存在する部分とで形成されている。バインダー樹脂が存在する部分は保護テープの粘着剤が接触しやすく接着力が強く、固体微粒子が存在する部分は粘着剤が接触しにくく接着力が弱い。さらに、固体微粒子は硬さの異なる3種類が存在するから固体微粒子によっても接着力の強弱が生じる。また、前記固体微粒子の合計含有率が30質量%~50質量%に規定されているので、接着力の強い部分の面積と弱い部分の面積のバランスがとれて、保護テープは必要時に接着力を保ちつつ用済み後は容易に剥離することができ、剥離後の糊残りが発生しにくくなる。
【0020】
また、電池用包装材が電池製造の養生工程で加熱加圧されると、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子はその変形強度に応じて軟化して偏平に変形し、保護テープ密着性が高くなり、剥離しにくくなる。一方、無機微粒子はその破壊強度により非常に硬く殆ど変形しないので、易剥離効果を維持し、かつ軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の著しい変形を防ぐとともに、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子のバインダー樹脂への埋没を抑制する。硬さの異なる3種類の固体微粒子を用いることにより、加熱加圧による密着力の上昇を抑えて易剥離性を維持することができる。
【0021】
上記[2]に記載の電池用包装材によれば、3種類の固体微粒子の平均粒径が規定されているので、粘着剤が剥がれるタイミングがずれて粘着剤の凝集破壊が起こりにくく、糊残りが発生しにくくなる。
【0022】
上記[3]に記載の電池用包装材によれば、3種類の固体微粒子の含有率が規定され、無機微粒子が多く配合されているので、加熱加圧時において保護テープの粘着剤とバインダー樹脂との接触を阻害する効果が大きく、糊残りの発生を抑制することができる。
【0023】
上記[4]に記載の電池用包装材によれば、選択された軟質樹脂微粒子が加熱加圧時の温度で軟化して変形し易くなるので、保護テープの粘着剤に対して適切な剥離強度が得られる。
【0024】
上記[5]に記載の電池用包装材によれば、選択された硬質樹脂微粒子が加熱加圧時の温度と圧力との相乗効果を受けて僅かに変形するので、保護テープの粘着剤との接触面積が僅かに増えて剥離強度に寄与する。
【0025】
上記[6]に記載の電池用包装材によれば、選択された無機微粒子が加熱加圧時に変形しにくいので、保護テープの粘着剤と適切な剥離強度が得られる。
【0026】
上記[7]に記載の電池用包装材によれば、選択されたバインダー樹脂と保護テープの粘着剤の接着適性が良好であるので、バインダー樹脂が存在する部分と固体微粒子が存在する部分とで接着力に差を付けることができる。
【0027】
上記[8][9][10][11]に記載の電池用包装材は着色剤により着色することで、保護テープの糊残り部分の視認性が向上し、糊残りの判定がしやすくなる。また、意匠性も付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の電池用包装材の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、保護テープを貼り付けた電池用包材の加熱加圧時の状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の電池用包装材の他の例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の電池用包装材のさらに他の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の電池用包装材のさらに他の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の電池用包装材のさらに他の例を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、電池用包装材のテープ密着性評価に用いる試験片および粘着テープの平面図である。
【
図7B】
図7Bは、電池用包装材のテープ密着性評価の試験方法の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1の電池用包装材1は、バリア層11の一方の面に第1接着剤層12を介して基材層13が貼り合わされ、他方の面に第2接着剤層14を介して熱融着性樹脂層15が貼り合わされ、さらに前記基材層13に基材保護層20が積層されている。
【0030】
(電池製造工程における保護テープの使用)
電池ケースは、電池用包装材1を立体成形して凸部を形成し、熱融着性樹脂層15同士を向かい合わせに配置することにより作製される。前記ケース内に電池素子および電解液を充填し、凸部の周囲をヒートシールし、さらに養生し、ガス抜きをして電池が完成する。電池用包装材1の成形からガス抜きまでに工程において、電池用包装材1の保護を目的として、凸部の天面および非ヒートシール部に保護テープが貼付され、貼付したままで養生およびガス抜きが行われる。前記養生は、50℃~80℃に加熱し、積層方向に0.3M~Pa0.7MPaに加圧した状態を1h~24h保持することにより行われる。
図2は、保護テープ50を貼り付けた電池用包材1の加熱加圧時の状態を示している。前記保護テープ50は基材51の片面に粘着剤52が塗布されたシートである。
【0031】
養生およびガス抜きが完了した電池は、保護テープ50を剥離して出荷される。
【0032】
従って、電池用包装材1の外側表面は、貼り付けた保護テープ50が不本意に剥がれることなくしっかりと付いている必要があるが、保護テープ50が不要になれば粘着剤52を残さず、かつ貼り付けた面を傷つけることなくきれいに剥がすことができる、という相反する特性が求められる。
【0033】
(基材保護層)
基材保護層20は、電池用包装材の表面に良好な滑り性を付与して成形性を向上させるとともに、優れた耐電解液性、耐薬品性、耐溶剤性、耐摩耗性を付与する層である。
【0034】
前記基材保護層20は、バインダー樹脂21と後述する3種類の固体微粒子22を含む樹脂組成物の硬化膜である。硬化膜中の固体微粒子22の一部はバインダー樹脂21中に埋もれているが、一部は表面から外方に突出して突出部30を形成している。従って、基材保護層20の表面は、バインダー樹脂21による極微細な凹凸のみならず、突出部30による大きな凹凸が形成されている。
【0035】
前記基材保護層20の表面において突出部30は高く突出しているので、保護テープの粘着剤は突出部30の頂上部分に接触するがその周囲の傾斜部分には接触しにくい。一方、突出部30を除く部分は突出部30よりも平滑であるから粘着剤が接触し易い。粘着剤が接触しにくい部分は粘着剤の接触量が少ないので接着力(密着性)が弱くなり、接触し易い部分は粘着剤の接触量が多くなるので接着力が強くなる。このように、基材保護層20の表面において粘着剤の接触量の多い部分と少ない部分が微細に混在する状態が生じることによって、必要時に接着力を保ちつつ用済み後は容易に剥離することができ、剥離後
の糊残りが発生しにくくなる。
【0036】
基材保護層20には保護テープの必要時の接着力と用済み後の易剥離性のバランスが求められる。このバランスは基材保護層20を構成する樹脂組成物の組成および使用する固体微粒子の特性に影響を受け、これらを規定することにより適正なバランスを得ることができる。
【0037】
前記基材保護層20を構成する樹脂組成物は、バインダー樹脂21と、固体微粒子22として軟質樹脂微粒子22a、硬質樹脂微粒子22bおよび無機微粒子22cの3種類を含んでいる。3種類の固体微粒子22は硬さが異なり、軟質樹脂微粒子22aが最も柔らかく、無機微粒子22cが最も硬い。
【0038】
本発明においては固体微粒子の硬軟をJIS Z 8844:2019微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法に基づいて測定した変形強度または破壊強度により規定する。前記軟質樹脂微粒子22aはその変形強度を2MPa以上20MPa未満とし、好ましい変形強度は3MPa~10MPaである。前記硬質樹脂微粒子22bはその変形強度を20MPa~100MPaとし、好ましい変形強度は20MPa~60MPaである。前記無機微粒子22cはその破壊強度を500MPa~2000MPaとし、好ましい破壊強度は800MPa~1900MPaである。
【0039】
上述したように、3種類の固体微粒子22は硬さが異なり、かつ3種類の固体微粒子22は硬化したバインダー樹脂21とも硬さが異なる。基材保護層20の表面には固体微粒子22による突出部30が形成されているので、基材保護層20の表面には、樹脂バインダー21と3種類の固体微粒子22による硬さの異なる部分が存在する。保護テープの粘着剤の離れ易さは貼付面の硬さによっても異なり、バインダー樹脂21が存在する部分は保護テープの粘着剤が接触しやすく接着力が強く、固体微粒子22が存在する部分は粘着剤が接触しにくく接着力が弱い。さらに、固体微粒子22は硬さの異なる3種類が存在するから固体微粒子22によっても接着力の強弱が生じる。そして、上述した表面をもつ基材保護層20から保護テープを剥がすと、硬さの異なる部分で粘着剤が剥がれるタイミングがずれて粘着剤にかかる力が分散されるため、粘着剤の凝集破壊が起こり難く、糊残りが発生しにくいと考えられる。
【0040】
また、
図2に示すように、電池の製造工程でヒートシール後に加熱加圧して行われる養生は電池用包装材1に保護テープ50を貼付した状態で行われる。電池用包装材1を加熱しながら積層方向に加圧すると、3種類の固体微粒子にそれぞれに特性に応じた変化が起きる。
【0041】
軟質樹脂微粒子22aは、加熱・加圧により軟化して偏平に変形し、粘着剤52との接触面積を増やして保護テープ50の密着性を向上させ、剥離しにくくなる。
【0042】
硬質樹脂微粒子22bも軟化するが軟質樹脂微粒子22aよりも変形の度合いは小さいので、粘着剤52との接触面積の増加量も相応であり、密着性を高める効果は軟質樹脂微粒子22aよりも小さい。
【0043】
無機微粒子22cは非常に硬く殆ど変形しない。このため、粘着剤52との接触面積にも変化がなく、突出した粒子(突出部30)による易剥離効果を維持する。また、無機微粒子22cは軟質樹脂微粒子22aおよび硬質樹脂微粒子22bの著しい変形を防ぐとともに、軟質樹脂微粒子22aおよび硬質樹脂微粒子22bのバインダー樹脂21への埋没を抑制する。
【0044】
電池用包装材1を加熱加圧すると保護テープ50の密着力が高まるが、硬さの異なる3種類の固体微粒子を用いることにより、加熱加圧による密着力の上昇を抑えて易剥離性を維持することができる。
【0045】
前記基材保護層20中の固体微粒子22の合計含有率は30質量%~50質量%とする。固体微粒子22の合計含有率が30質量%未満では、基材保護層20の表面の突出部30が低く少なくなるので保護テープの密着性が高くなって、剥離強度が高くなって糊残りが発生し易くなる。一方、固体微粒子の合計含有率が50質量%を超えると、糊残りが発生しにくくなるが、その反面保護テープの密着性が低下するのでハンドリング中に不本意な剥離が起こり易くなる。特に好ましい合計含有率は35質量%~45質量%である。
【0046】
前記基材保護層20中の各微粒子の好ましい含有率は、軟質樹脂微粒子22aが1質量%~10質量%であり、硬質樹脂微粒子22bが1質量%~20質量%であり、無機微粒子22cの含有率が20質量%~40質量%である。特に好ましい各微粒子の含有率は、軟質樹脂微粒子22aが2質量%~8質量%であり、硬質樹脂微粒子22bが3質量%~12質量%であり、無機微粒子22cが25質量%~35質量%である。
【0047】
軟質樹脂微粒子22aと硬質樹脂微粒子22bは、加熱・加圧により変形して、保護テープ粘着剤との接触面積を増やし、密着性を向上させるため、1質量%以上の含有率であることが好ましい。一方で軟質樹脂微粒子22aが10質量%を超え、硬質樹脂微粒子22bが20質量%を超えると、これら樹脂微粒子22a,22bと粘着剤との接触面積が多くなりすぎて、保護テープ剥離時に粘着剤の糊残りが発生しやすくなるため、軟質樹脂微粒子22aは10質量%以下、硬質樹脂微粒子22bは20質量%以下であることが好ましい。
【0048】
無機微粒子22cは、加熱・加圧によってほとんど変形せず、微小凹凸(微小空隙)を形成して、保護テープ粘着剤との接触面積を抑制し、易剥離性を維持するため、20質量%以上の含有率であることが好ましい。一方で無機微粒子22cが40質量%を超えると微小凹凸(微小空隙)が多くなりすぎて接着性が低下し、不本意な剥離が発生しやすくなるため、無機微粒子22cは40質量%以下であることが好ましい。
【0049】
また、3種類の固体微粒子の含有率の関係は、無機微粒子22cが軟質樹脂微粒子22aと硬質樹脂微粒子22bの合計よりも大きいことが好ましい。無機微粒子22cを多く配合することにより、加熱加圧時において保護テープの粘着剤とバインダー樹脂との接触を阻害する効果が大きく、糊残りの発生を抑制することができる。
【0050】
なお、前記固体微粒子22の合計含有率および各固体微粒子の含有率は、バインダー樹脂21と固体微粒子22の合計に対する比率であり、塗工時の粘度調整に用いる溶剤は含まない。基材保護層20中の固体微粒子22の含有率は30質量%~50質量%に規定されているので、バインダー樹脂21の含有率は50質量%~70質量%である。
【0051】
軟質樹脂微粒子22aは、加熱・加圧により変形して保護テープ粘着剤との接触面積を増加させる役割があり、変形後に効果的に面積増加させるため、3種類の微粒子の中で最も粒径が大きいことが好ましい。硬質樹脂微粒子22bは、変形度合いは軟質樹脂微粒子22aより小さいが、相応に変形して接触面積に寄与する役割があり、軟質樹脂微粒子22aに次ぐ粒径であることが好ましい。無機微粒子22cは易剥離性を維持するために、変形せず、微粒子の突出部を維持して微小な空隙(微小凹凸)により粘着剤との接触面積を少なくする役割があり、最も粒径が小さいことが好ましい。
【0052】
以上の観点から、前記軟質樹脂微粒子22aの平均粒径は5μm~20μmが好ましく、硬質樹脂微粒子22bの平均粒径は1μm~15μmが好ましく、無機微粒子22cの平均粒径は1μm~5μmが好ましい。特に好ましい平均粒径は、軟質樹脂微粒子22aが6μm~18μm、硬質樹脂微粒子22bが3μm~12μm、無機微粒子22cが1μm~3μmである。固体微粒子の粒径によって保護テープの粘着剤との接触面積が異なり密着力が異なるので、3種類の固体微粒子の平均粒径を上記の範囲とすることにより、粘着剤が剥がれるタイミングがずれて粘着剤の凝集破壊が起こりにくく、糊残りが発生しにくくなる。
【0053】
また、3種類の固体微粒子の平均粒径は、軟質樹脂微粒子22a≧硬質樹脂微粒子22b>無機微粒子22cの関係を満たしていることが好ましい。上述したように電池養生のための加熱加圧により、軟質樹脂微粒子22aおよび硬質樹脂微粒子22bは偏平に変形して保護テープの粘着剤との接触面積が増えて粘着力が高まり、無機微粒子22cは変形しないことで2種類の樹脂微粒子の変形を抑制する効果があり、3種の固体微粒子の平均粒径が上記の関係を満たす場合に、粘着力と易剥離性のバランスが良好となり、糊残りの発生が抑制される。
【0054】
前記固体微粒子22は、軟質樹脂微粒子22a、硬質樹脂微粒子22b、無機微粒子22cの各カテゴリーから少なくとも1種を含有していることが要件であり、1つのカテゴリーから2種以上を含有してもよい。また、各カテゴリーに属する微粒子として下記のものを挙げることができる。
【0055】
前記軟質樹脂微粒子22aとして、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズを例示できる。これらのワックスまたは樹脂ビーズは、その変形強度により保護テープの粘着剤に対して適切な剥離強度が得られる。上記の軟質樹脂微粒子22aのなかでも、ポリエチレンワックス、ポリエチレン樹脂ビーズはガラス転移点Tgおよび融点が低く、またポリエチレンの軟化点が85~120℃であるため、養生時の加熱加圧工程の温度(50℃~80℃)付近で軟化し変形しやすくなるので、保護テープの粘着剤との剥離強度を向上させやすい点で推奨できる。
【0056】
前記硬質樹脂微粒子22bとして、ポリテトラフルオロエチレンワックス、アクリル樹脂ビーズ、ポリスチレン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズを例示できる。これらのワックスまたは樹脂ビーズは、その変形強度により保護テープの粘着剤に対して適切な剥離強度が得られる。また、これらのワックスまたは樹脂ビーズはいずれもガラス転移点Tgが100℃近辺であり、保護テープ貼付後の養生のための加熱加圧工程の温度(50℃~80℃)では軟化しにくいが、圧力との相乗効を受けて僅かに変形し、保護テープの粘着剤との接触面積が僅かに増えて剥離強度に寄与する。
【0057】
また、上記の硬質樹脂微粒子のなかでもポリテトラフルオロエチレンワックスは耐熱性が優れており、ヒートシール後の変形が少ないので、ヒートシール後のグロスの変化が少なく、滑り性の低下も小さくすることができるため、好ましい。
【0058】
前記無機微粒子22cとして、シリカ、アルミナ、カオリン、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウムを例示できる。これらの無機微粒子22cはいずれも上述した軟質樹脂微粒子22aおよび硬質樹脂微粒子22bよりも硬く、その破壊強度により加熱加圧工程において変形しにくく、保護テープの粘着剤と適切な剥離強度が得られる。また、これらの無機微粒子22cのうちでも、シリカは平均粒子径の小さいグレードが揃っており所期する平均粒径の微粒子の入手が容易であり、かつ種々のバインダー樹脂への分散が容易である点で推奨できる。
【0059】
前記バインダー樹脂21としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、テトラフルオロオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を用いることが好ましい。これらの樹脂は保護テープの粘着剤との接着適性が良好であるので、バインダー樹脂21が存在する部分と固体微粒子22が存在する部分とで接着力に差を付けることができる。また、これらの樹脂は高い耐薬品性、耐溶剤性を有しているため、樹脂の劣化などによる固体微粒子22の脱落が起こりにくくなる。
【0060】
また、前記バインダー樹脂21は、上述した少なくとも1種の樹脂を含む主剤樹脂とこの主剤樹脂を硬化させる硬化剤とであっても良い。
【0061】
主剤樹脂としては、アクリルポリオール樹脂、ウレタンポリオール樹脂、ポリオレフィンポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、フェノキシ系樹脂、テトラフルオロオレフィンとカルボン酸ビニルエステルの共重合体、テトラフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体を例示でき、これらは1種でもよく複数種の併用でもよい。これらのうちで好ましい主剤樹脂は、ウレタンポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、アクリルポリオール樹脂、フェノキシ系樹脂である。ただし、電解液付着による外観不良防止を優先する場合は、テトラフルオロオレフィンとカルボン酸ビニルエステルの共重合体、テトラフルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの共重合体が望ましい。
【0062】
硬化剤は特に限定されるものではなく、主剤樹脂に応じて適宜選択すればよい。硬化剤として、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物、あるいはこれらのイソシアネート化合物の変性体を挙げることができる。
【0063】
前記硬化剤は前記主剤樹脂100質量部に対して5質量部~30質量部を配合することが好ましい。5質量部未満では基材層13への密着性および耐溶剤性が低下するおそれがある。また、30質量部を超えると、基材保護層20が硬くなって成形性が低下するおそれがある。
【0064】
また、前記基材保護層20には、バインダー樹脂21および固体微粒子22の他に、滑剤および/または界面活性剤が添加されていてもよい。滑剤および界面活性剤は保護テープの粘着剤の粘着力を低下させる効果があり、これらが基材保護層20の表面に析出することにより、保護テープの剥がれ性が良くなり糊残りを発生しにくくする。
【0065】
前記滑剤として、以下の各種アミドを挙げることができる。
【0066】
飽和脂肪酸アミドとして、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0067】
不飽和脂肪酸アミドとして、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドを挙げることができる。
【0068】
置換アミドとして、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドを挙げることができる。
【0069】
メチロールアミドとして、メチロールステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0070】
飽和脂肪酸ビスアミドとして、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドを挙げることができる。
【0071】
不飽和脂肪酸ビスアミドとして、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドを挙げることができる。
【0072】
脂肪酸エステルアミドとして、ステアロアミドエチルステアレートを挙げることができる。
【0073】
芳香族系ビスアミドとして、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸、アミド、N,N’-システアリルイソフタル酸アミドを挙げることができる。
【0074】
また、前記界面活性剤として、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を挙げることができる。
【0075】
前記基材保護層20の好ましい厚さは1μm~12μmであり、特に好ましい厚さは2μm~10μmである。
【0076】
前記電池用包装材1において基材保護層20以外の層の好ましい材料は以下のとおりである。
【0077】
(バリア層)
前記バリア層11は、電池用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記バリア層11としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、クラッド箔等の金属箔が挙げられる。前記バリア層11としては、アルミニウム箔を好適に用いることができる。特に、0.7質量%~1.7質量%のFeを含有するAl-Fe系合金箔は優れた強度と展延性を有し、良好な成形性を得られる。前記バリア層11の厚さは、20μm~100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記バリア層11の特に好ましい厚さは30μm~80μmである。
【0078】
また、前記バリア層11は前記金属箔の少なくとも熱融着性樹脂層15側の面に、化成処理が等の下地処理が施されていることが好ましい。このような化成処理が施されていることによって内容物(電池の電解質等)による金属箔表面の腐食を十分に防止できる。
【0079】
(基材層)
前記基材層13には電池用包装材1をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂フィルムを用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層15を構成する樹脂の融点より10℃以上、好ましくは20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いる。この条件を満たす樹脂として、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記基材層13としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。なお、前記基材層13は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0080】
前記基材層13の厚さは、9μm~50μmであるのが好ましく、包装材として十分な強度を確保でき、かつ張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記基材層13のさらに好ましい厚さは12μm~30μmである。
【0081】
(熱融着性樹脂層)
熱融着性樹脂層15は腐食性の強い電解質などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、電池用包装材1にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0082】
熱融着性樹脂層15を構成する樹脂は、プロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂の単層または多層フィルムが好ましく、無延伸フィルムが好ましい。前記プロピレン系樹脂として、共重合成分としてエチレンおよびプロピレンを含有するエチレン-プロピレン共重合体を例示できる。前記エチレン-プロピレン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。多層のエチレン-プロピレン共重合体フィルムとして、ランダム共重合体-ブロック共重合体-ランダム共重合体の3層フィルムを推奨できる。前記多層フィルムは共押出し等で作製することができる。
【0083】
前記熱融着性樹脂層15の厚さは20μm~100μmが好ましく、30μm~80μmであればなお一層好ましい。また、上述したランダム共重合体-ブロック共重合体-ランダム共重合体の3層フィルムの各層の厚みの割合は、1~3:4~8:1~3が好ましい。
【0084】
前記熱融着性樹脂層15には滑剤を含有させることができる。滑剤の種類は上述した基材保護層20に添加するものに準じ、特に脂肪酸アミドが好ましい。また、熱融着性樹脂層15中の滑剤濃度は500ppm~3000ppmが好ましい。一般に、電池用包装材1の製造工程では全ての層を積層した後にロールに巻き取ってエージングがなされる。熱融着性樹脂層15中の滑剤はエージングによって表面に析出し基材保護層20に転写され、保護テープの糊残りの発生抑制に寄与する。
【0085】
(第1接着剤層)
前記第1接着剤層12としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液硬化型接着剤により形成された接着剤層等が挙げられる。前記2液硬化型接着剤としては、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液(主剤)と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤などが挙げられる。中でも、ポリエステル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤を用いるのが好ましい。前記第1接着剤層12の好ましい厚さは2μm~5μmである。
【0086】
(第2接着剤層)
前記第2接着剤層14としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー系樹脂、フッ素系樹脂、酸変性ポリプロピレン樹脂のうちの1種以上を含む接着剤を推奨できる。中でも、酸変性ポリオレフィンを主剤とするポリウレタン複合樹脂からなる接着剤が好ましい。前記第2接着剤層14の好ましい厚さは2μm~5μmである。
【0087】
前記第1接着剤層12および第2接着剤層14は必須の層ではなく、基材層13が直接バリア層11に貼り合わされていてもよく、また熱融着性樹脂層15が直接バリア層11に貼り合わされていてもよい。
【0088】
(着色剤および着色層)
電池用包装材は、上述した既存の層に着色剤を添加するか、あるいは新たに着色層を設けることによって、バリア層の金属色を隠蔽して所望の色に着色し、包装材に意匠性を付与でき、また保護テープの粘着剤残りを発見しやすくできる。
【0089】
既存の層を着色する場合は、基材保護層、基材層、第1接着剤層のうちの少なくとも一つの層に着色剤を添加する。なお、第1接着剤層を持たない電池用包装材においては、基材保護層および/または基材層に着色剤を添加する。着色剤は顔料、染料のいずれでもよく、1種類でもよいし2種類以上の着色剤を併用することもできる。具体的な着色剤として、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、アルミニウム粉、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料等を例示できる。各層における着色剤濃度は0.5質量%以上5質量%未満の範囲が望ましい。
【0090】
新たに着色層を設ける場合は、基材保護層と基材層の間、基材層と第1接着剤層の間、第1接着剤層とバリア層の間の少なくとも一つの層間に着色層を設ける。なお、第1接着剤層を持たない電池用包装材においては、基材保護層と基材層の間および/または基材層とバリア層の間に着色層を設ける。前記着色層の厚さは1μm~10μmとすることが好ましい。また、前記着色層は、ジアミン、ポリオール等の主剤および硬化剤からなるベース樹脂に上記の着色剤を添加した着色樹脂組成物で構成されていることが好ましい。また、この着色樹脂組成物における着色剤濃度は5質量%以上50質量%以下の範囲が望ましい。
【0091】
図3の電池用包装材2は基材層13と第1接着剤層12の間に着色層16を設けたものである。
図4の電池用包装材3は基材保護層20と基材層13の間に着色層16を設けたものである。
図5の電池用包装材4は第1接着剤層12とバリア層11の間に着色層16を設けたものである。
【0092】
図6の電池用包装材5は第1接着剤層12を有しておらず、バリア層11と基材層13の間に着色層16を設けたものである。なお、第1接着剤層を有さない電池用包装材においても、基材保護層と基材層の間に着色層を設けることができる。
【実施例0093】
実施例および比較例として、
図3に示す構造の電池用包装材2を作製した。各例に共通の材料は下記のとおりである。
【0094】
(共通材料)
バリア層11として、厚さ40μmのA8021-Oからなるアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成したものを使用した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/m2である。
【0095】
基材層13として厚さ15μmの二軸延伸6ナイロンフィルムを用いた。
【0096】
着色層16として、前記基材層13の片面に、カーボンブラック、ジアミン、ポリエステル系ポリオールおよび硬化剤を含む着色樹脂組成物を塗布し、40℃環境下で1日間放置することにより、乾燥とともに架橋反応を進行させて、厚さ3μmの黒色着色層を設けた。即ち、着色層16と基材層13を一体にして2層フィルムとして、これを他の層と貼り合わせた。
【0097】
熱融着性樹脂層15として、滑剤としてエルカ酸アミドを3000ppmを含有する厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用いた。
【0098】
第1接着剤層12として2液硬化型ウレタン系接着剤を用いた。
【0099】
第2接着剤層14として、2液硬化型マレイン酸変性プロピレン接着剤を用いた。
【0100】
基材保護層20の樹脂組成物に加える溶剤として、メチルエチルケトン50質量部とトルエン50質量部の混合物を用いた。
【0101】
(実施例1)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0102】
ポリエステルポリオール樹脂を主剤樹脂とし、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とのアダクト体(表1において「A」と記載する)を硬化剤とし、主剤樹脂49質量部に対して硬化剤11質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0103】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレンワックス、硬質樹脂微粒子としてアクリル樹脂ビーズ、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0104】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0105】
そして、前記バリア層11の一方の面に、厚さ3μmの第1接着剤層12を形成し、この第1接着剤層12を介して着色層16付き基材層13(2層フィルム)の着色層16の面を重ねてドライラミネートした。次に、前記バリア層11の他方の面に、厚さ3μmの第2接着剤層14を形成し、この第2接着剤層14を介して熱融着性樹脂層15を重ね合わせ、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートした。これにより、外側から内側へ順に、基材層13、着色層16、第1接着剤層12、バリア層11、第2接着剤層14、熱融着性樹脂層
15が積層された6層フィルムとなった。
【0106】
次に、前記6層の積層フィルムの基材層13の表面に、基材保護層20用の塗工用組成物を塗布して乾燥させてロールに巻き取り、40℃で10時間エージングした。エージング後の基材保護層20の厚みは2.5μmであり、これにより、7層構造の電池用包装材2となった。
【0107】
(実施例2)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0108】
実施例1と同じ主剤樹脂と硬化剤を、主剤樹脂48質量部に対して硬化剤10質量部の割合で配合したものをバインダー樹脂とした。
【0109】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレンワックス、硬質樹脂微粒子としてポリスチレン樹脂ビーズ、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0110】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0111】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2.5μmである。
【0112】
(実施例3)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0113】
アクリルポリオールを主剤樹脂とし、実施例1と同じ硬化剤を用い、主剤樹脂46質量部に対して硬化剤9質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0114】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレン樹脂ビーズ、硬質樹脂微粒子としてポリテトラフルオロエチレンワックス、無機微粒子としてアルミナおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0115】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0116】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2μmである。
【0117】
(実施例4)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0118】
テトラフルオロオレフィンとカルボン酸ビニルエステルとの共重合体を主剤とし、実施例1と同じ硬化剤を用い、主剤樹脂43質量部に対して硬化剤8質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0119】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレン樹脂ビーズ、硬質樹脂微粒子としてポリテトラフルオロエチレンワックス、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0120】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0121】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは1.5μmである。
【0122】
(実施例5)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0123】
実施例1と同じ主剤樹脂と硬化剤を用い、主剤樹脂53質量部に対して硬化剤12質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0124】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレンワックス、硬質樹脂微粒子としてポリスチレン樹脂ビーズ、無機微粒子としてアルミナおよび炭酸カルシウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0125】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0126】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは3μmである。
【0127】
(実施例6)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0128】
ポリウレタンポリオール樹脂を主剤樹脂とし、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とのアダクト体と、トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネート(TDI)のアダクト体の等量混合物(表1において「B」と記載する)を硬化剤とし、主剤樹脂46質量部に対して硬化剤10質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0129】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてウレタン樹脂ビーズ、硬質樹脂微粒子としてアクリル樹脂ビーズ、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0130】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0131】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2μmである。
【0132】
(実施例7)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0133】
実施例1と同じバインダー樹脂を用いた。
【0134】
固体微粒子は、実施例1と同じ軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子を用い、無機微粒子としてシリカの3種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0135】
前記バインダー樹脂に3種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0136】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2.5μmである。
【0137】
(比較例1)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0138】
実施例1と同じ主剤樹脂と硬化剤を用い、主剤樹脂60質量部に対して硬化剤12質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0139】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリプロピレンワックス、硬質樹脂微粒子としてポリスチレン樹脂ビーズ、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0140】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0141】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは3μmである。
【0142】
(比較例2)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0143】
実施例3と同じ主剤樹脂と硬化剤を用い、主剤樹脂37質量部に対して硬化剤8質量部を配合したものをバインダー樹脂とした。
【0144】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレンワックス、硬質樹脂微粒子としてアクリル樹脂ビーズ、無機微粒子としてアルミナおよび硫酸バリウムの4種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0145】
前記バインダー樹脂に4種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0146】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2μmである。
【0147】
(比較例3)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0148】
実施例1と同じバインダー樹脂を用いた。
【0149】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子を用いず、硬質樹脂微粒子としてアクリル樹脂ビーズ、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの3種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、硬質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0150】
前記バインダー樹脂に3種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0151】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2.5μmである。
【0152】
(比較例4)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0153】
実施例1と同じバインダー樹脂を用いた。
【0154】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレンワックス、硬質樹脂微粒子を用いず、無機微粒子としてシリカおよび硫酸バリウムの3種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0155】
前記バインダー樹脂に3種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0156】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2.5μmである。
【0157】
(比較例5)
基材保護層20形成用の樹脂組成物および塗工用組成物を以下の方法で調製した。
【0158】
実施例1と同じバインダー樹脂を用いた。
【0159】
固体微粒子は、軟質樹脂微粒子としてポリエチレンワックス、硬質樹脂微粒子としてアクリル樹脂ビーズ、無機微粒子として硫酸バリウムの3種類を用いた。前記各固体微粒子の平均粒径、軟質樹脂微粒子の変形強度、無機微粒子の破壊強度を表1に示す。
【0160】
前記バインダー樹脂に3種類の固体微粒子を表1に示す含有率で配合して樹脂組成物とし、さらに前記樹脂組成物50質量部と溶剤100質量部を混合して塗工用組成物を調製した。前記樹脂組成物における固体微粒子の合計含有率は表1に示すとおりである。
【0161】
前記基材保護層20用の樹脂組成物および塗工用組成物以外は実施例1と同じ手法で7層構造の電池用包装材2を作製した。エージング後の基材保護層20の厚みは2.5μmである。
【0162】
【0163】
表1において、主剤樹脂、軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の略号は以下のとおりである。
【0164】
(主剤樹脂)
PEs:ポリエステルポリオール樹脂、AC:アクリルポリオール樹脂
TFE:テトラフルオロエチレンとカルボン酸ビニルエステルとの共重合体
PUR:ポリウレタンポリオール樹脂
(軟質樹脂微粒子)
PEW:ポリエチレンワックス、PEB:ポリエチレン樹脂ビーズ
URB:ウレタン樹脂ビーズ、PPW:ポリプロピレンワックス
(硬質樹脂微粒子)
ACB:アクリル樹脂ビーズ、PTFE:ポリテトラフルオロエチレンワックス
PSB:ポリスチレン樹脂ビーズ
[固体微粒子の強度]
各例で用いた軟質樹脂微粒子および硬質樹脂微粒子の変形強度、および無機微粒子の破壊強度は、JIS Z 8844:2019 微小粒子の破壊強度及び変形強度の測定方法に準拠して、島津製作所製 ダイナミック超微小硬度計(型番:DUH-211)およびSHIMAZU MCTアプリケーション(ソフトウエア)を用いて測定した実測値である。
【0165】
測定は、サンプリングした1粒の粒子に、50μmΦの平面圧子で試験力:10mN、負荷速度:0.1463mN/sec、負荷保持時間:3secで連続的に荷重を与え、得られた荷重と変位の関係と、CMOSカメラ画像の簡易測長機能を用いて測定した粒子径から、変形強度および破壊強度を求めた。また、1種類の固体微粒子につき5回の測定を行い、平均値をその固体微粒子の強度とした。
【0166】
[電池用包装材の評価]
作製した各例の電池用包装材2について、下記の項目について測定し評価した。結果を表1に示す。
【0167】
(成形性)
作製した電池用包装材2から100mm×125mmの複数枚の試験片を切り出した、これらの試験片に対し、株式会社アマダ製の成形機(品番:TP-25C-XZ)を用い、天面寸法が33mm×54mm、コーナーR2mm、パンチ肩R1.3mmのパンチとダイス肩R1mmのダイスにより、深さを変えて深絞り成形を行った。
【0168】
深絞り成形品は、暗室にて光透過法でコーナー部のピンホールおよび割れの有無を調べ、ピンホールおよび割れが発生しない深さをその電池用包装材2の最大成形深さ(mm)とした。最大成形深さを下記判定基準に基づいて評価し、◎および〇を合格とした。
【0169】
◎:最大成形深さが5.5mm以上である
〇:最大成形深さが4.5mm~5.5mm未満である
×:最大成形深さが4.5mm未満である
(テープ密着性)
図7Aおよび
図7Bに試験方法の概略を示す。
【0170】
電池用包装材2から幅15mm×長さ150mmの試験片100を切り出した。この試験片100の基材保護層20に、試験片100の長手方向に沿って、幅5mm×長さ80mmで粘着力が13N/cmの粘着テープ(tesa 70415)101を貼り付けた。そして、この粘着テープ101上に重さ2kgfのハンドロール110を5往復走行させ、その後常温で1時間静置した。
【0171】
次いで、引張試験機として島津製作所製ストログラフ(AGS-5kNX)を用い、その一方のチャックで試験片100の端部を挟着固定するとともに、他方のチャックで粘着テープ101の端部を掴んだ。そして、JIS K6854-3(1999)に準拠して300mm/minの剥離速度で180°剥離させた時の剥離強度を測定し、この測定値が安定したところの値を試験片100と粘着テープ101との密着力(単位:N/5mm)とした。
【0172】
そして、試験片100と粘着テープ101との密着力について下記の基準で評価し、◎および〇を合格とした。
【0173】
◎:7N/5mm以上であり、密着性が非常に高い
〇:5N/5mm以上7N/5mm未満であり、密着性が高い
×:5N/5mm未満であり、密着性が低い
(糊残り)
電池用包装材2から幅50mm×長さ100mmの試験片を切り出した。この試験片の基材保護層20に、試験片の長手方向に沿って、幅40mm×長さ60mmで粘着力が0.1N/cmの粘着テープ(日東電工V420)を貼り付けた。そして、この粘着テープ上に重さ2kgfのハンドロールを5往復走行させた。次いで、上記の粘着テープを貼り付けた試験片を、80℃×0.5MPaの条件で3時間ヒートプレスした。
【0174】
そして、一連の処理が終わった試験片から粘着テープを手で素早く剥がし、剥がした表面を観察し、下記の基準で評価し、◎〇△を合格とした。
【0175】
◎:表面状態がシール貼り付け前と比べて全く変化なし
〇:軽く拭けば取れる程度の小さな断片の粘着剤が残っていた
△:拭けば取れるが、〇よりも大きい断片の粘着剤が残っていた
×:拭いても取れない程度の粘着剤がしっかりと残っていた
表1より、基材保護層の固体微粒子を規定することにより、保護テープの密着性が良く、かつ剥離時の糊残りを抑制できることを確認した。
本発明の電池用包装材は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用の包装材として好適に利用できる。