(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032652
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】消臭剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61L9/01 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109393
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022135626
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502365265
【氏名又は名称】株式会社坂田信夫商店
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋田 諭
(72)【発明者】
【氏名】小松 進一
(72)【発明者】
【氏名】青木 和雄
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA05
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA13
4C180AA19
4C180AA20
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB08
4C180BB11
4C180BB12
4C180BB15
4C180CB01
4C180CC15
4C180EC01
4C180FF01
4C180GG06
(57)【要約】
【課題】 アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対して消臭効果を有する新たな消臭剤を提供する。
【解決手段】本発明は、乾燥しょうがを有効成分として含有し、
粉末またはフレークの形態である、動物の悪臭に対して用いられるための消臭剤、およびこの消臭剤を含む動物の悪臭処理材を提供する
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥しょうがを有効成分として含有し、
粉末またはフレークの形態である、動物の悪臭に対して用いられるための消臭剤。
【請求項2】
前記動物が、ヒト又はネコである、請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の消臭剤を含む、動物の悪臭処理材。
【請求項4】
動物の悪臭の消臭方法であって、
前記悪臭に乾燥しょうがを含有し、粉末またはフレークの形態である消臭剤を接触させることを含む、消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤に関し、より詳細には、動物の悪臭のために用いられる消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヌおよびネコ等のペットを室内で飼うことが多く、ペットの排泄物の臭いを抑えて良好な室内環境を維持するためのペット用トイレおよび消臭剤の需要が高まっている。
【0003】
ペットの中でも、ネコの排泄物の臭いはネコ特有であり、軽減することは困難であった。ネコの尿等の排泄物には、ネコ特有の臭いの原因物質である3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールが含まれていることが知られている。3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールは、ネコ科の動物に特異的に存在するアミノ酸の一種である「フェリニン」が分解されることによって生じる。フェリニンは、ネコの尿に含まれる「コーキシン」と呼ばれるネコ特有の酵素によって合成されることが知られている。
【0004】
ネコの排泄物にはまた、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールだけでなくアンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、酢酸およびイソ吉草酸などが臭いの原因物質であることが知られている。これらすべてを消臭することは困難であった。
【0005】
このようなネコ特有の排泄物臭を効率よく消臭することができる消臭剤の開発が強く求められている。
【0006】
従来、ネコの排泄物を処理するために、猫砂が用いられている。猫砂は、猫がその上で排泄を行い、排泄物がかかった部分のみを廃棄することにより、排泄物処理を容易にするものである。猫砂には、ネコの排泄物臭を処理するための消臭剤が配合されたものもある。
【0007】
たとえば、特許文献1には、亜塩素酸塩を0.01~0.5質量%含有し、有機物を主原料とした猫砂が開示されている。この猫砂は、アンモニア、トリメチルアミンおよびメチルメルカプタンに対して消臭効果を有することが記載されている。しかし、この猫砂は、ネコの排泄物特有の臭いの原因物質である3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する消臭効果は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、ネコの排泄物には、特有の臭いの原因物質である3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールが含まれている。しかし、従来の猫砂では、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する十分な消臭効果が得られていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む種々の臭いの原因物質に対して消臭効果を有する新たな消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、しょうがの乾燥フレークおよび乾燥粉末が、ネコの排泄物臭特有の原因物質である3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する十分な消臭作用を有することを見出した。また、しょうがの乾燥フレークおよび乾燥粉末が、その他の悪臭の原因物質であるアンモニア、酢酸およびイソ吉草酸をも消臭できることを確認した。本発明は、これらの知見に基づきなされた。
【0012】
本発明は、しょうがを有効成分として含有する、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む悪臭物に対する消臭剤を提供する。
【0013】
本発明はまた、上記しょうがが、しょうがの抽出物または乾燥物(以下、乾燥しょうがとも言う)である消臭剤を提供する。
【0014】
本発明はまた、粉末またはフレークの形態である上記消臭剤を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明はまた、乾燥しょうがを有効成分として含有し、粉末またはフレークの形態である、動物の悪臭に対して用いられるための消臭剤を提供する。
【0016】
本発明はまた、ペットを含む動物の悪臭の消臭のために用いられる上記消臭剤を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明はまた、ヒト又はネコに対して用いられる、上記消臭剤を提供する。
【0018】
本発明はまた、上記消臭剤を含む、動物の悪臭処理材を提供する。
【0019】
本発明はまた、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む悪臭の消臭方法であって、上記悪臭にしょうがを含有する消臭剤を接触させることを含む、消臭方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、上記しょうがが、しょうがの抽出物または乾燥物である、消臭方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、上記消臭剤が、粉末またはフレークの形態である、消臭方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、上記悪臭物が動物の排泄物である、消臭方法を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明はまた、動物の悪臭の消臭方法であって、
前記悪臭に乾燥しょうがを含有し、粉末またはフレークの形態である消臭剤を接触させることを含む、消臭方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明を用いれば、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む種々の悪臭に対して消臭効果を有するため、動物の排泄物臭、特にネコの排泄物臭を効果的に消臭することができる、新たな消臭剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】アンモニアに対する、実施例1および実施例2の消臭剤を用いたときの消臭率(%)を示すグラフ。
【
図2】酢酸に対する、実施例1および実施例2の消臭剤を用いたときの消臭率(%)を示すグラフ。
【
図3】イソ吉草酸に対する、実施例1および実施例2の消臭剤を用いたときの消臭率(%)を示すグラフ。
【
図4】3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する、実施例1および実施例2の消臭剤を用いたときの消臭率(%)を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む種々の悪臭に対する消臭剤を提供する。
【0027】
本明細書において「消臭」とは、臭いの原因物質の少なくとも1つの低減または抑制を意味し、臭いを完全除去する場合に限られない。「消臭」は、たとえば臭いの原因物質の少なくとも1つの濃度を、消臭前の濃度と比較して30%以上減少させること、好ましくは50%以上減少させること、より好ましくは70%以上減少させること、さらに好ましくは80%以上減少させることをいう。
【0028】
悪臭は、特に限定されないが、例えば、動物の臭いが挙げられ、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール、アンモニア、酢酸およびイソ吉草酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む臭いに対して好ましく用いられ、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む臭いに対してより好ましく用いられる。このような動物の悪臭は、例えば動物の排泄物であってもよく、特にネコの排泄物に対して好ましく用いられる。
【0029】
3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールは、下記式(1)で表される化合物である。3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールは、ネコの尿に特異的に含まれ、ネコの尿特有の臭いの原因物質の1つとなっている。3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールは、ネコ科の動物に特異的に存在するアミノ酸の一種である「フェリニン」が分解されることにより生じることが知られている。
【0030】
【0031】
アンモニア、酢酸およびイソ吉草酸は、いずれも動物の排泄物や分泌物、特にネコの排泄物に含まれる臭いの原因物質である。
【0032】
本発明の消臭剤は、しょうがを有効成分として含有する。
【0033】
本発明に用いるしょうがは、ショウガ科の多年草であるショウガ(Zingiber officinale)であることができる。しょうがの品種は、特に限定されず、金時生姜、谷中生姜、三州生姜、近江生姜、黄生姜および黄金生姜等が例示されるが、しょうがの品種によらず本発明の効果は発揮され得る。
【0034】
本発明に用いるしょうがは、しょうがそのものであってもよく、例えば、しょうがの根茎をそのまま用いてもよい。また、しょうがは、例えば、しょうがを加工したもの(加工物)であることができる。本発明に用いるしょうがは、例えばしょうがの粉砕物、搾汁物、抽出物および乾燥物などであることができる。これらの加工物は、当業者に公知の方法によって製造されることができ、あるいは市場に流通しているものを用いることができる。限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、本発明に用いるしょうがは、しょうがの乾燥物である乾燥しょうがを用いることが好ましい。
【0035】
乾燥物は、特に限定されないが、しょうがまたはその切裁物、圧搾物、抽出物もしくは濃縮物を乾燥させたものであることができる。乾燥させる方法には、たとえば凍結乾燥、低温除湿乾燥、噴霧乾燥および平板乾燥等の方法を用いることができる。本発明に用いるしょうがの乾燥物は、特に限定されないが、例えば、フレーク状に乾燥させたもの(乾燥フレーク)および粉末状に乾燥させたもの(乾燥粉末)等であることができる。粉砕させる方法には、例えば、気流粉砕機、ハンマーミル、ボールミルおよび石臼式粉砕機等を用いる方法を用いることができる。
【0036】
抽出物は、特に限定されないが、例えば、しょうがに溶媒を加えて抽出した抽出物、しょうがを圧搾して得られる圧搾液、およびしょうがを圧搾した後の残渣に溶媒を加えて抽出した抽出物などであることができる。抽出物は、さらに濃縮または乾固させてから使用してもよい。濃縮する方法には、例えば、減圧濃縮、限外濾過および凍結濃縮等の方法を用いることができる。
【0037】
抽出溶媒には、例えば、水、メタノール、無水エタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、アセトン、エチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル、キシレン、ベンゼンおよびクロロホルム等を用いることができる。抽出溶媒として、上述した溶媒を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
本発明の消臭剤は、しょうが以外の成分をさらに含んでもよい。本発明の消臭剤は、しょうがに加えて、例えば、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、防カビ剤、pH調整剤、香料および他の消臭剤等を含むことができる。本発明の消臭剤は、例えば、おから、大鋸屑、ならびに天然由来の消臭、抗菌、防腐および/または防カビ効果を有する素材等をさらに含むことができる。
【0039】
本発明の消臭剤は、特に限定されないが、粉末、フレーク、固形、液体、ペースト、スプレー、ゲル、ジェル、クリームおよび顆粒等の形態であることができ、好ましくは粉末またはフレークの形態であることができる。
【0040】
特に限定されないが、本発明の消臭剤が粉末の形態である場合、Tyler標準フルイにおいて、18メッシュを通過する粒子径であることが好ましい。Tyler標準フルイにおける18メッシュは、JIS(日本産業規格)フルイにおける目開きが、約1mmであるため、平均粒子径が1mm以下の粉末の形態が好ましく用いられる。
【0041】
本発明の消臭剤は、限定はされないが、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む悪臭の消臭のために用いることが好ましい。本発明の消臭剤は、有効成分としてしょうがを含有するため、実施例にて後述するように、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールだけでなく、アンモニア、酢酸およびイソ吉草酸をも消臭することができる。そのため、本発明の消臭剤は、動物の排泄物臭等の悪臭の消臭のために用いることができる。ペットには、例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、ハムスター、フェレット、リス、モモンガ、サルおよび小動物等が含まれる。本発明の消臭剤は、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを消臭することができるため、特にネコの排泄物臭の消臭に有用である。
【0042】
別の実施形態においては、本発明の消臭剤は、例えば、インコ、オウム、フクロウ、ミミズク等の鳥類の排泄物臭に対して用いることも可能である。さらに別の実施形態においては、本発明の消臭剤は、例えば、牛、水牛、鹿、めん羊、山羊、馬、鶏等の家畜の排泄物臭に対して用いることも可能である。
【0043】
さらに別の実施形態においては、本発明の消臭剤は、例えば、昆虫類の排泄物臭に対して用いることも可能であり、このような昆虫類としては、例えば、コオロギ、カブトムシ、クワガタムシ、コガネムシ、トンボ、テントウムシ、カマキリ、ダンゴムシ、カタツムリ、バッタ等が挙げられる。本発明の消臭剤を用いることにより、ペット、家畜、昆虫類等の飼育環境を改善することに繋がる。
【0044】
さらに別の実施形態においては、本発明の消臭剤は、例えば、害獣の排泄物臭に対して用いることも可能であり、このような害獣としては、例えば、ネズミ、ハクビシン、アライグマ、イタチ、イノシシ、シカ、カラス、野良犬、サル、オオカミ、タヌキ、キツネ、モグラ、コウモリ、トラ、ライオン、ヒョウ、ゾウ等が挙げられる。
【0045】
また、アンモニアは、動物の尿中に排泄され、アンモニア臭として知覚される。酢酸は、汗等に含まれ、酸っぱい臭いとして知覚される。さらに、イソ吉草酸は、動物の体臭や口臭、足の臭いの原因物質として知られており、一度発生すると臭いが消失し難い。実施例にて後述するように、本発明の消臭剤を用いることで、発生した後のアンモニア、酢酸、イソ吉草酸であっても、短時間で消臭できることが確認されている。
【0046】
後述の実施例にて確認されているように、別の実施形態において、本発明はヒトに起因する悪臭に対しても効果を奏する。よって、別の実施形態において、本発明は、乾燥しょうがを有効成分として含有し、粉末またはフレークの形態である、ヒトに起因する悪臭に対して用いられるための消臭剤を提供するものであってもよい。
【0047】
ヒトに起因する悪臭としては、例えば、ヒトの体臭、口臭、わきの臭い、汗の臭い、足の臭い、手の臭い、頭(耳の後ろを含む)の臭い、背中の臭い等が挙げられる。
【0048】
また、ヒトに起因する悪臭が付着する対象としては、衣服、靴下、下着、帽子、靴、シーツや布団や枕等の寝具、イスやソファ等の家具等が挙げられる。これらの対象が収納される観点や、接する観点から、クローゼット、寝室、下駄箱、玄関、タンス、トイレ、浴室、リビング、ダイニング等に対して、本発明の消臭剤を用いてもよい。
【0049】
本発明の消臭剤は、特に限定されないが、空間、衣類、家具、トイレ又はペット用品等に噴霧または塗布するためのスプレー剤または液剤等であってもよい。また、本発明の消臭剤は、排泄物や悪臭が知覚される部分に直接振りかけたり、トイレに敷き詰めたりするための粉末またはフレーク等であってもよい。本発明の消臭剤は、例えば、排泄用シート、使い捨ておむつおよびトイレ砂等に消臭効果を付与するために用いることができる。また、別の実施形態において、本発明の消臭剤は、例えば、消臭を目的とした洗濯用洗剤、入浴剤、洗顔剤、ボディソープ、シャンプー、リンス、デオドラント剤、石けん、マウスウォッシュ、口臭防止用サプリメント等に配合することも可能である。また、本発明の消臭剤は、例えば、消臭の目的を明記しない実施形態において、生姜湯、スープ類、清涼飲料、その他の飲食品に配合し、本発明の効果を発揮させることも可能である。
【0050】
本発明はまた、上述した消臭剤を含む、動物の悪臭処理材を提供する。本発明の動物の悪臭処理材は、例えば、排泄用シート、使い捨ておむつおよびトイレ砂等であることができ、例えば、猫砂であることができる。
【0051】
本明細書において「猫砂」とは、ネコの排泄物を処理するための砂状(粒子状)の処理材を意味する。猫砂は、ネコの排泄場所、例えば、ペット用トイレ等に設置され、ネコがその上で排泄した排泄物の処理を容易にすることができるものである。
【0052】
本発明の動物の悪臭処理材は、動物用トイレ砂または猫砂である場合、特に限定されず、従来公知の動物用トイレ砂および猫砂等に用いられている材料を用いることができる。本発明の動物の悪臭処理材は、例えば、消臭剤が担体に担持された形態であることができる。担体には、例えば、木粉およびパルプ等の植物由来の素材の粉砕物、ベントナイト系材料、シリカゲル系材料および鉱物系材料などを用いて成形(造粒成形)したものであることができる。悪臭処理材は、例えば、円筒、球、立方体および直方体等の任意の形状の粒状物であることができる。成形方法は、特に限定されず、圧縮成形法、打錠成形法、転動造粒法、押出造粒法および噴霧造粒法などを用いることができる。消臭剤は、悪臭処理材の成形前または成形後に添加されることができる。
【0053】
本発明の動物の悪臭処理材は、排泄用シートである場合、特に限定されず、従来公知の排泄用シートに用いられている材料を用いることができる。本発明の動物の悪臭処理材は、例えば、パルプ繊維、粘土鉱物系材料および高分子吸収材料等を含む材料をシート状または板状に成形した尿吸収シート等であることができる。消臭剤は、悪臭処理材の成形前または成形後に添加されることができる。
【0054】
本発明の動物の悪臭処理材は、従来公知の排泄物処理材に、本発明の消臭剤を添加したものであってもよい。
【0055】
また、本発明は、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む悪臭物の消臭方法を提供する。本発明の3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む悪臭物の消臭方法は、悪臭物にしょうがを含有する消臭剤を接触させることを含む。悪臭物は、特に限定されないが、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール、アンモニア、酢酸およびイソ吉草酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む悪臭物の臭いに対して好ましく用いられ、3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを含む悪臭物の臭いに対してより好ましく用いられる。このような悪臭物は、例えば動物の排泄物であってもよく、特にネコの排泄物に対して好ましく用いられる。
【0056】
本発明の消臭方法は、悪臭物にしょうがを含有する消臭剤を接触させることを含む。しょうがを含有する消臭剤には、上述した本発明の消臭剤を好適に用いることができる。
【0057】
悪臭物にしょうがを含有する消臭剤を接触させる方法には、例えば、消臭剤を悪臭に対して直接噴霧(スプレー)等することにより接触させる方法、および悪臭が生じると予想される場所または物品、例えば、悪臭を処理するための処理材等に消臭剤をあらかじめ設置することにより接触させる方法などが含まれる。消臭剤を設置する方法には、処理材の成形前に原料に混合する方法、および処理材の成形後に消臭剤を塗布、噴霧または付着させる方法などを用いることができる。
【0058】
別の実施形態において、本発明はまた、動物の悪臭の消臭方法であって、
前記悪臭に乾燥しょうがを含有し、粉末またはフレークの形態である消臭剤を接触させることを含む、消臭方法を提供する。当該方法の詳細な形態は、上記の消臭剤や方法の記載に準じる。
【実施例0059】
〔実施例1:乾燥フレーク〕
本発明の一実施例として、しょうがの乾燥フレークを作製した。まず、高知県産の黄金しょうが(株式会社サカタより入手)の切裁物780kgを用い、異物および非可食部を取り退くために皮剥ぎおよび洗浄を行った。その後、サイズ調整として5mm厚基準にカットし、乾燥前のしょうがとして684kgを得た。このしょうがを、棚式乾燥機のトレイに適量を並べ、60℃2時間、70℃2時間、65℃2時間および60℃2時間の設定にて乾燥させることで43kgの乾燥フレークを得た。
【0060】
〔実施例2:乾燥粉末〕
本発明の別の実施例として、しょうがの乾燥粉末を作製した。実施例1で得た乾燥フレーク100kgを用いて、粉砕機で微粉末に加工後、粒子調整および異物除去を行い、97.4kgの乾燥粉末を得た。
【0061】
〔試験例1〕
実施例1の乾燥フレークおよび実施例2の乾燥粉末を用いて、悪臭をどの程度消臭するかの試験を行った。悪臭には、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを用いた。
【0062】
実施例1の乾燥フレーク1gまたは実施例2の乾燥粉末1gを1L三角フラスコ(試験容器)に入れ、所定の量のアンモニア(150ppm);酢酸(50ppm);イソ吉草酸(50ppm)または3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール(10ppm);を封入し、封入下で一定時間反応させた。反応後、容器内の悪臭の残存濃度を測定し、消臭率(%)を算出した。
【0063】
アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールのそれぞれの悪臭に対する、実施例1および実施例2の消臭剤を用いたときの消臭率(%)を表1および
図1~
図4に示す。
【0064】
実施例1の乾燥フレークおよび実施例2の乾燥粉末のいずれも、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対して強い消臭効果を示した。
【0065】
乾燥しょうがのフレーク形態においても、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの全てに対して、高い消臭効果が確認されたが、乾燥しょうがの粉末形態では、更に顕著な消臭効果が認められた。
【0066】
【0067】
〔試験例2〕
一般に市販されている中国産しょうが、国産しょうがを用い、実施例1又は2と同様の方法により、乾燥フレークと乾燥粉末を調製した。市販の国産しょうがとしては、大生姜、三州生姜、黄金生姜のミックス品(株式会社サカタより入手)を用いた。Tyler標準フルイにおいて、18メッシュの篩いを用いて、18メッシュの篩いを通過するもの(表中、18メッシュ以下と表記)と、18メッシュの篩いを通過しないもの(表中、18メッシュ以上と表記)とを分け、試験例1と同様の方法により、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸又は3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールのそれぞれの悪臭に対する、消臭剤を用いたときの消臭率(%)を評価した。コントロールとして、同じ種類のしょうがを用い、生のしょうがの粉砕物を調製した。
【0068】
中国産しょうが、又は、国産しょうがを用いたアンモニアに対する消臭率(%)の結果を、表1-1、表1-2にそれぞれ示す。
中国産しょうが、又は、国産しょうがを用いた酢酸に対する消臭率(%)の結果を、表2-1、表2-2にそれぞれ示す。
中国産しょうが、又は、国産しょうがを用いたイソ吉草酸に対する消臭率(%)の結果を、表3-1、表3-2にそれぞれ示す。
中国産しょうが、又は、国産しょうがを用いた3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールに対する消臭率(%)の結果を、表4-1、表4-2にそれぞれ示す。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
表1-1~表4-2に示される通り、中国産しょうが、国産しょうがであっても、品種を問わず、乾燥しょうがを用いることにより、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの全てに対して、高い消臭効果が確認された。
【0078】
また、表1-1~表4-2に示される通り、コントロールとして用いた生しょうがの粉砕物を用いた場合には、上記4種の悪臭に対して、消臭効果が認められなかったのに対して、乾燥しょうがを用いた場合には、フレーク形態又は粉末形態のいずれにおいても、高い消臭効果が確認された。
【0079】
乾燥しょうがのフレーク形態においても、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの全てに対して、高い消臭効果が確認されたが、乾燥しょうがの粉末形態では、更に顕著な消臭効果が認められた。乾燥しょうがの粉末形態における粒子径は、特に限定されないが、Tyler標準フルイにおける18メッシュを通過する粒子径(平均粒子径が1mm以下)であることが好ましいことが確認された。
本発明の消臭剤は、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸および3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールの全てに対して消臭効果を有するため、これらの1種又は2種以上を含む悪臭物を処理するための消臭剤や処理材などに好適に利用することができる。