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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032657
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】光測定装置及び光測定装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240305BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240305BHJP
   H01L 31/08 20060101ALI20240305BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20240305BHJP
   H01S 5/34 20060101ALI20240305BHJP
   H01S 5/02257 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
G01N21/3504
H01L31/02 D
H01L31/08 Z
H01S5/02253
H01S5/34
H01S5/02257
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118229
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2022135666
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023089901
(32)【優先日】2023-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】道垣内 龍男
【テーマコード(参考)】
2G059
5F149
5F173
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059GG01
2G059HH01
2G059JJ01
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059KK01
5F149BA25
5F149BB20
5F149DA32
5F149EA01
5F149EA14
5F149EA16
5F149JA14
5F149LA01
5F149XB24
5F149XB32
5F173AB13
5F173AF20
5F173AH03
5F173MF03
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】装置の簡素化及び小型化を図ることができる光測定装置及び当該光測定装置の製造方法を提供する。
【解決手段】分光測定装置1Aは、レーザ光L1を出射する光源部2と、レーザ光L1が入射するミラー面41aを有する平面ミラー41と、ミラー面41aと対向するミラー面42aを有する平面ミラー42と、を有し、ミラー面41aとミラー面42aとの間に測定対象物が導入されるミラー部4と、ミラー面41aとミラー面42aとの間で多重反射して折り返されたレーザ光L1を検出する光検出部3と、を備える。ミラー面41aとミラー面42aとは、ミラー面41aとミラー面42aとの間で多重反射しながらY軸方向に往復するレーザ光L1の光路OPが形成されるように、Z軸方向から見た場合に、互いに非平行に配置されている。ミラー面41aとミラー面42aとの間におけるレーザ光L1の光路OPは、Z軸方向に対して傾斜している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源部と、
前記光源部から出射された前記レーザ光が入射する第1ミラー面を有する第1平面ミラーと、前記第1ミラー面と対向する第2ミラー面を有する第2平面ミラーと、を有し、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間に測定対象物が導入されるミラー部と、
前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記レーザ光を検出する光検出部と、
を備え、
前記第1ミラー面と前記第2ミラー面とは、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射しながら前記第1ミラー面に直交する第1方向に直交する第2方向に往復する前記レーザ光の光路が形成されるように、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向から見た場合に、互いに非平行に配置されており、
前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間における前記レーザ光の光路は、前記第3方向に対して傾斜している、
光測定装置。
【請求項2】
前記第1ミラー面に最初に入射する前記レーザ光の光路は、前記第3方向に対して傾斜しており、
前記第1ミラー面及び前記第2ミラー面は、前記第3方向と平行である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項3】
前記第3方向から見た場合の前記第1ミラー面に最初に入射する前記レーザ光の前記第1ミラー面に対する入射角度は、前記第3方向から見た場合の第1ミラー面に対する前記第2ミラー面の傾斜角度の自然数倍となるように調整されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項4】
前記第1ミラー面に対して前記レーザ光が最初に入射する位置から前記レーザ光の往路方向における第1ミラー面の端部までの前記第2方向に沿った距離は、300mm以下である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項5】
前記第3方向における前記ミラー部の長さは、50mm以下である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項6】
前記レーザ光の復路方向における前記第1ミラー面の端部は、前記第2ミラー面の前記復路方向における端部よりも前記復路方向に突出している、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項7】
前記第3方向から見た場合の前記第1ミラー面に最初に入射する前記レーザ光の前記第1ミラー面に対する入射角度をθと表した場合、前記レーザ光の復路方向における前記第2ミラー面の端部から前記復路方向における前記第1ミラー面の前記端部までの前記第2方向に沿った距離は、前記第1方向に沿った前記第1ミラー面と前記第2ミラー面の前記端部との距離にtanθを乗じた値以上に設定されている、
請求項6に記載の光測定装置。
【請求項8】
前記復路方向における前記第2ミラー面の端部から前記復路方向における前記第1ミラー面の前記端部までの前記第2方向に沿った距離は、前記第1方向に沿った前記第1ミラー面と前記第2ミラー面の前記端部との距離にtanθを乗じた値に設定されている、
請求項7に記載の光測定装置。
【請求項9】
前記第3方向から見た場合の第1ミラー面に対する前記第2ミラー面の傾斜角度は、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間を通過する前記レーザ光の前記第3方向から見た場合の拡がり角よりも大きくなるように設定されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項10】
前記光源部と前記光検出部とは、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項11】
前記光源部の前記レーザ光が出射される側に配置され、前記レーザ光を集光又はコリメートするレンズを更に備え、
前記光源部は、量子カスケードレーザ素子であり、
前記レンズと前記量子カスケードレーザ素子との距離は、前記第1方向における前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との最短距離よりも短い、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項12】
前記光源部は、量子カスケードレーザ素子であり、
前記光検出部は、前記量子カスケードレーザ素子と対応する特性を有する量子カスケード光検出器である、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項13】
前記特性は、偏光方向に関する特性であり、
前記光源部と前記光検出部とは、前記光源部から出射された後に前記ミラー部を経て前記光検出部に入射する前記レーザ光の偏光方向と前記光検出部が感度を有する偏光方向とが一致するように、配置されている、
請求項12に記載の光測定装置。
【請求項14】
前記特性は、波長に関する特性であり、
前記光検出部は、前記光源部の発振波長に対応する感度波長を有する、
請求項12に記載の光測定装置。
【請求項15】
前記光源部から出射された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記第1ミラー面に導光する第1導光ミラーと、
前記折り返された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記光検出部に導光する第2導光ミラーと、を更に備え、
前記第1導光ミラーと前記第2導光ミラーとは、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項16】
前記光源部は、第1波長の前記レーザ光を出射する第1光源部と、前記第1波長とは異なる第2波長の前記レーザ光を出射する第2光源部と、を有し、
前記光検出部は、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第1波長の前記レーザ光を検出する第1光検出部と、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第2波長の前記レーザ光を検出する第2光検出部と、を有し、
前記第1光源部、前記第2光源部、前記第1光検出部、及び前記第2光検出部は、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項17】
前記光源部は、第1波長の前記レーザ光を出射する第1光源部と、前記第1波長とは異なる第2波長の前記レーザ光を出射する第2光源部と、を有し、
前記光検出部は、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第1波長の前記レーザ光を検出する第1光検出部と、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第2波長の前記レーザ光を検出する第2光検出部と、を有し、
前記第1光源部と前記第2光源部とは、前記第1方向に並んで配置されており、
前記第1光検出部と前記第2光検出部とは、前記第1方向に並んで配置されており、
前記第1光源部と前記第1光検出部とは、前記第3方向において互いに重なるように配置されており、
前記第2光源部と前記第2光検出部とは、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項18】
前記ミラー部を気密に収容する筐体を更に備え、
前記測定対象物は、ガスであり、
前記筐体には、前記筐体の外側から前記筐体の内側へと前記ガスを導入するための開口部が設けられており、
前記光源部及び前記光検出部は、前記筐体の外側に配置されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項19】
前記光源部、前記光検出部、及び前記ミラー部を収容する筐体を更に備え、
前記測定対象物は、ガスであり、
前記筐体には、前記筐体の外側から前記筐体の内側へと前記ガスを導入するための開口部が設けられている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項20】
前記測定対象物は、ガスであり、
前記光源部は、前記ガスに吸収される第1波長の前記レーザ光と、前記ガスに吸収される度合いが前記第1波長よりも小さい第2波長の前記レーザ光と、を出射可能に構成されている、
請求項1に記載の光測定装置。
【請求項21】
前記光源部は、単一のレーザ素子から出射される光に基づいて、前記第1波長の前記レーザ光と前記第2波長の前記レーザ光とを切り替えて出射可能に構成されている、
請求項20に記載の光測定装置。
【請求項22】
請求項1に記載の光測定装置の製造方法であって、
前記光測定装置は、前記光源部から出射された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記第1ミラー面に導光する第1導光ミラーと、前記折り返された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記光検出部に導光する第2導光ミラーと、を更に備え、
前記光源部、前記光検出部、前記ミラー部、及び前記第2導光ミラーの各々を固定するステップと、
前記固定するステップの後に、前記光源部から前記レーザ光を出射させながら、前記光検出部における光検出強度が最大となるように、前記第1導光ミラーの位置及び角度を調整及び固定するステップと、
を含む、光測定装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光測定装置及び光測定装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中赤外光(波長3μm~20μm)は、分子の基本振動に由来した強い吸収が観測されるため、ガス分子を対象とした吸収分光法(分光測定)に用いられる。また、非特許文献1に開示されているように、上述した吸収分光法の感度を向上させるための手法として、2つの凹面ミラーを対向配置し、この2つの凹面ミラー間で光を多重反射させることで長光路を実現するヘリオットセルと呼ばれる技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Donald R. Herriott and Harry J. Schulte, “Folded Optical Delay Lines”,Applied Optics vol.4, pp.883-889, August 1, 1965.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示されたヘリオットセルのように凹面ミラーを用いたガス吸収分光器には、高度な加工精度及び高度な組み立て精度が要求されるため、高額になると共に装置が大型化し易いという問題があった。
【0005】
そこで、本開示の一側面は、装置の簡素化及び小型化を図ることができる光測定装置及び当該光測定装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の[1]~[20]の光測定装置と、[21]の光測定装置の製造方法と、を含んでいる。
【0007】
[1]
レーザ光を出射する光源部と、
前記光源部から出射された前記レーザ光が入射する第1ミラー面を有する第1平面ミラーと、前記第1ミラー面と対向する第2ミラー面を有する第2平面ミラーと、を有し、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間に測定対象物が導入されるミラー部と、
前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記レーザ光を検出する光検出部と、
を備え、
前記第1ミラー面と前記第2ミラー面とは、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射しながら前記第1ミラー面に直交する第1方向に直交する第2方向に往復する前記レーザ光の光路が形成されるように、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向から見た場合に、互いに非平行に配置されており、
前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間における前記レーザ光の光路は、前記第3方向に対して傾斜している、
光測定装置。
【0008】
上記光測定装置によれば、2つの平面ミラー(第1平面ミラー及び第2平面ミラー)を非平行に対向配置した構成(すなわち、従来の凹面ミラーを用いたヘリオットセル等の構成と比較して安価且つ簡素な構成)によって、長光路の光測定装置を実現できる。また、平面ミラー間におけるレーザ光の光路を第3方向に対して傾斜するように設定することにより、平面ミラー間のレーザ光の往路と復路とを第3方向において空間的に分離できるため、平面ミラー間に導入された測定対象物の光測定(例えば、所定の波長(単一波長)の吸光度測定、複数の波長に対する吸収分光測定等)を適切に実施することができる。より具体的には、平面ミラー間で往路光と復路光とが干渉することを防止できると共に、ミラー部で折り返されたレーザ光が光源部に再入射することを防止し、折り返し光を光検出部に適切に導くことができる。従って、上記光測定装置によれば、装置の簡素化(低価格化)及び小型化を図ることができる。
【0009】
[2]
前記第1ミラー面に最初に入射する前記レーザ光の光路は、前記第3方向に対して傾斜しており、
前記第1ミラー面及び前記第2ミラー面は、前記第3方向と平行である、
[1]の光測定装置。
上記構成によれば、第1ミラー面に最初に入射するレーザ光の光路を第3方向に対して傾斜させることにより、第1平面ミラー及び第2平面ミラーを第3方向に対して傾斜させることなく、平面ミラー間のレーザ光の光路が第3方向に対して傾斜する構成を容易に実現することができる。
【0010】
[3]
前記第3方向から見た場合の前記第1ミラー面に最初に入射する前記レーザ光の前記第1ミラー面に対する入射角度は、前記第3方向から見た場合の第1ミラー面に対する前記第2ミラー面の傾斜角度の自然数倍となるように調整されている、
[1]又は[2]の光測定装置。
上記構成によれば、第3方向から見た場合に、平面ミラー間のレーザ光の往路と復路とが重なるように、平面ミラー間のレーザ光の光路を設定することができる。これにより、光源部からミラー部へとレーザ光を導くための往路光学系及びミラー部から折り返された折り返し光を光検出部へと導くための復路光学系の配置を容易に行うことが可能となる。
【0011】
[4]
前記第1ミラー面に対して前記レーザ光が最初に入射する位置から前記レーザ光の往路方向における第1ミラー面の端部までの前記第2方向に沿った距離は、300mm以下である、
[1]~[3]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、より一層効果的に装置の小型化を図ることができる。
【0012】
[5]
前記第3方向における前記ミラー部の長さは、50mm以下である、
[1]~[4]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、ミラー部の第3方向の高さを一定以下に抑えることによって、装置の小型化を図ると共に、平面ミラー間に導入(充填)される測定対象物(例えばガス)の量を一定以下に抑えることができる。すなわち、比較的少量の測定対象物を平面ミラー間に導入するだけで、当該測定対象物の光測定を行うことが可能となる。
【0013】
[6]
前記レーザ光の復路方向における前記第1ミラー面の端部は、前記第2ミラー面の前記復路方向における端部よりも前記復路方向に突出している、
[1]~[5]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、第1ミラー面に対してレーザ光を入射させ易くすることができる。また、平面ミラー間の多重反射による長光路の伝搬を経てレーザ光のビーム径が拡がる場合において、最後に第1ミラー面で反射して光検出部側へと導光されるレーザ光が第2ミラー面に遮られてしまうこと(すなわち、折り返し光のビーム損失が生じること)を抑制することができる。
【0014】
[7]
前記第3方向から見た場合の前記第1ミラー面に最初に入射する前記レーザ光の前記第1ミラー面に対する入射角度をθと表した場合、前記レーザ光の復路方向における前記第2ミラー面の端部から前記復路方向における前記第1ミラー面の前記端部までの前記第2方向に沿った距離は、前記第1方向に沿った前記第1ミラー面と前記第2ミラー面の前記端部との距離にtanθを乗じた値以上に設定されている、
[6]の光測定装置。
上記構成によれば、第2ミラー面の復路方向における端部で反射して第1ミラー面へと向かう折り返し光が第1ミラー面の復路方向における端部よりも外側(復路方向側)に抜けてしまうことに起因するビーム損失を回避することが可能となる。
【0015】
[8]
前記復路方向における前記第2ミラー面の端部から前記復路方向における前記第1ミラー面の前記端部までの前記第2方向に沿った距離は、前記第1方向に沿った前記第1ミラー面と前記第2ミラー面の前記端部との距離にtanθを乗じた値に設定されている、
[7]の光測定装置。
上記構成によれば、上記[7]の効果を奏すると共に、第2平面ミラー(第2ミラー面)に対する第1平面ミラー(第1ミラー面)の突出長を上記のビーム損失を回避するために必要十分な長さに設定することにより、ビーム損失の回避と装置の小型化との両立を図ることができる。
【0016】
[9]
前記第3方向から見た場合の第1ミラー面に対する前記第2ミラー面の傾斜角度は、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間を通過する前記レーザ光の前記第3方向から見た場合の拡がり角よりも大きくなるように設定されている、
[1]~[8]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、平面ミラー間の多重反射による長光路の伝搬を経てレーザ光のビーム径が拡がる場合において、折り返し光のビーム損失を効果的に抑制することができる。
【0017】
[10]
前記光源部と前記光検出部とは、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
[1]~[9]のいずれかの光測定装置。
平面ミラー間におけるレーザ光の光路を第3方向に対して傾斜させることによって、光源部からミラー部へと導光されるレーザ光の光路とミラー部から光検出部へと導光される折り返し光の光路とを第3方向に分離することができる。これを利用して光源部と光検出部とを第3方向に並べて配置することによって、光源部と光検出部とを第3方向に重ねずに配置する場合と比較して、光源部及び光検出部の配置に必要な面積(第3方向から見た場合の面積)を小さくすることができる。その結果、より効果的に装置の小型化を図ることができる。
【0018】
[11]
前記光源部の前記レーザ光が出射される側に配置され、前記レーザ光を集光又はコリメートするレンズを更に備え、
前記光源部は、量子カスケードレーザ素子であり、
前記レンズと前記量子カスケードレーザ素子との距離は、前記第1方向における前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との最短距離よりも短い、
[1]~[10]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、光源部から出射されたレーザ光の拡がりをレンズによって効果的に抑制できる。その結果、平面ミラー間におけるレーザ光のビーム径の拡がりを抑制でき、ビーム径の拡がりに起因する折り返し光のビーム損失を低減することができる。
【0019】
[12]
前記光源部は、量子カスケードレーザ素子であり、
前記光検出部は、前記量子カスケードレーザ素子と対応する特性を有する量子カスケード光検出器である、
[1]~[11]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、中赤外で動作する量子カスケードレーザ素子及び量子カスケード光検出器を光源部及び光検出部として用いることにより、分子の基本振動に由来した強い吸収を観測できるため、高感度な光測定を行うことが可能となる。
【0020】
[13]
前記特性は、偏光方向に関する特性であり、
前記光源部と前記光検出部とは、前記光源部から出射された後に前記ミラー部を経て前記光検出部に入射する前記レーザ光の偏光方向と前記光検出部が感度を有する偏光方向とが一致するように、配置されている、
[12]の光測定装置。
上記構成によれば、散乱等によって偏光方向が乱れた迷光成分が、光検出部でノイズとして検出されることを防ぎ、信号対雑音比(S/N)の向上を図ることができる。
【0021】
[14]
前記特性は、波長に関する特性であり、
前記光検出部は、前記光源部の発振波長に対応する感度波長を有する、
[12]又は[13]の光測定装置。
上記構成によれば、量子カスケード光検出器が擬似的に波長フィルタの役割を果たすため、背景光ノイズの影響を抑制し、高感度な光測定を行うことが可能となる。
【0022】
[15]
前記光源部から出射された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記第1ミラー面に導光する第1導光ミラーと、
前記折り返された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記光検出部に導光する第2導光ミラーと、を更に備え、
前記第1導光ミラーと前記第2導光ミラーとは、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
[1]~[14]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、第1導光ミラー及び第2導光ミラーを用いることにより、ミラー部に対する光源部及び光検出部の配置(レイアウト)の自由度を向上させることができる。また、第1導光ミラーと第2導光ミラーとを第3方向に並べて配置することによって、第1導光ミラーと第2導光ミラーとを第3方向に重ねずに配置する場合と比較して、第1導光ミラー及び第2導光ミラーの配置に必要な面積(第3方向から見た場合の面積)を小さくすることができ、装置の小型化を図ることもできる。
【0023】
[16]
前記光源部は、第1波長の前記レーザ光を出射する第1光源部と、前記第1波長とは異なる第2波長の前記レーザ光を出射する第2光源部と、を有し、
前記光検出部は、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第1波長の前記レーザ光を検出する第1光検出部と、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第2波長の前記レーザ光を検出する第2光検出部と、を有し、
前記第1光源部、前記第2光源部、前記第1光検出部、及び前記第2光検出部は、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
[1]~[15]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、第1光源部、第2光源部、第1光検出部、及び第2光検出部を第3方向において互いに重なるように配置することにより、2つの系統の光源部及び光検出部をコンパクトに配置することができる。また、系統間で波長帯を異ならせることによって、互いに異なる2つの波長帯の吸収分光測定を同時に行うことができる。
【0024】
[17]
前記光源部は、第1波長の前記レーザ光を出射する第1光源部と、前記第1波長とは異なる第2波長の前記レーザ光を出射する第2光源部と、を有し、
前記光検出部は、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第1波長の前記レーザ光を検出する第1光検出部と、前記第1ミラー面と前記第2ミラー面との間で多重反射して折り返された前記第2波長の前記レーザ光を検出する第2光検出部と、を有し、
前記第1光源部と前記第2光源部とは、前記第1方向に並んで配置されており、
前記第1光検出部と前記第2光検出部とは、前記第1方向に並んで配置されており、
前記第1光源部と前記第1光検出部とは、前記第3方向において互いに重なるように配置されており、
前記第2光源部と前記第2光検出部とは、前記第3方向において互いに重なるように配置されている、
[1]~[15]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、第1光源部と第1光検出部とを第3方向に重ねて配置すると共に、第2光源部と第2光検出部とを第3方向に重ねて配置することにより、2つの系統の光源部及び光検出部をコンパクトに配置することができる。また、系統間で波長帯を異ならせることによって、互いに異なる2つの波長帯の吸収分光測定を同時に行うことができる。
【0025】
[18]
前記ミラー部を気密に収容する筐体を更に備え、
前記測定対象物は、ガスであり、
前記筐体には、前記筐体の外側から前記筐体の内側へと前記ガスを導入するための開口部が設けられており、
前記光源部及び前記光検出部は、前記筐体の外側に配置されている、
[1]~[17]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、ミラー部のみを気密に収容する筐体の内部を減圧した上で、開口部からガスを導入することにより、より精密な測定を行うことが可能となる。
【0026】
[19]
前記光源部、前記光検出部、及び前記ミラー部を収容する筐体を更に備え、
前記測定対象物は、ガスであり、
前記筐体には、前記筐体の外側から前記筐体の内側へと前記ガスを導入するための開口部が設けられている、
[1]~[18]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、光源部、光検出部、及びミラー部を1つの筐体内に収めることにより、光測定装置を構成する各部材を、外部からの汚染、機械的衝撃等から適切に保護することができる。
【0027】
[20]
前記測定対象物は、ガスであり、
前記光源部は、前記ガスに吸収される第1波長の前記レーザ光と、前記ガスに吸収される度合いが前記第1波長よりも小さい第2波長の前記レーザ光と、を出射可能に構成されている、
[1]~[19]のいずれかの光測定装置。
上記構成によれば、第1波長に対応する測定値と第2波長に対応する測定値との差分に基づく分析、すなわち差分吸収分光法によるガス濃度の測定を実施することが可能となる。
【0028】
[21]
前記光源部は、単一のレーザ素子から出射される光に基づいて、前記第1波長の前記レーザ光と前記第2波長の前記レーザ光とを切り替えて出射可能に構成されている、
[20]の光測定装置。
上記構成によれば、単一のレーザ光源によって、上記[20]の構成を実現できる。
【0029】
[22]
[1]~[21]のいずれかの光測定装置の製造方法であって、
前記光測定装置は、前記光源部から出射された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記第1ミラー面に導光する第1導光ミラーと、前記折り返された前記レーザ光を反射することにより、前記レーザ光を前記光検出部に導光する第2導光ミラーと、を更に備え、
前記光源部、前記光検出部、前記ミラー部、及び前記第2導光ミラーの各々を固定するステップと、
前記固定するステップの後に、前記光源部から前記レーザ光を出射させながら、前記光検出部における光検出強度が最大となるように、前記第1導光ミラーの位置及び角度を調整及び固定するステップと、
を含む、光測定装置の製造方法。
上記構成によれば、光源部、光検出部、ミラー部、及び第2導光ミラーを予め機械精度の範囲で位置決め(固定)した上で、光検出部における光検出強度を最大化するという比較的単純な指標に基づいて、第1導光ミラーの厳密な角度調整等を行うことができる。上記方法は、特に光源部から出射されるレーザ光が不可視の中赤外光である場合において有効である。
【発明の効果】
【0030】
本開示の一側面によれば、装置の簡素化及び小型化を図ることができる光測定装置及び当該光測定装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、第1実施形態の分光測定装置の概略斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った筐体の断面図である。
図3図3は、光源部及び光検出部の偏光特性の説明に用いる図である。
図4図4は、光源部の発振スペクトル及び光検出部の感度スペクトルの一例を示す図である。
図5図5は、ミラー部で折り返される前のレーザ光に関する光学系を概略的に示す平面図である。
図6図6は、ミラー部で折り返された後のレーザ光に関する光学系を概略的に示す平面図である。
図7図7は、Y軸方向から見た場合の第1導光ミラーと第2導光ミラーとの間を通過するレーザ光の光路を示す図である。
図8図8は、出射導光ミラーに到達するレーザ光のビーム形状を示す図である。
図9図9は、出射導光ミラーに到達するレーザ光のビーム径を示す図である。
図10図10は、第2実施形態の分光測定装置の構成の一部を示す図である。
図11図11は、第3実施形態の分光測定装置の構成のうちミラー部で折り返される前のレーザ光に関する光学系を概略的に示す平面図である。
図12図12は、第3実施形態の分光測定装置の構成のうちミラー部で折り返された後のレーザ光に関する光学系を概略的に示す平面図である。
図13図13は、第4実施形態の分光測定装置の構成の一部を示す図である。
図14図14は、第5実施形態の分光測定装置の概略斜視図である。
図15図15は、図14のXV-XV線に沿った概略断面図である。
図16図16は、第6実施形態の分光測定装置の構成を概略的に示す平面図である。
図17図17は、第7実施形態の分光測定装置の構成を概略的に示す平面図である。
図18図18は、第8実施形態の分光測定装置の構成を概略的に示す平面図である。
図19図19は、固体の測定対象物の光測定を行う場合の分光測定装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0033】
[第1実施形態]
図1図9を参照して、第1実施形態の分光測定装置1A(光測定装置)について説明する。図1及び図2に示されるように、分光測定装置1Aは、光源部2と、光検出部3と、ミラー部4と、入射調整ミラー6(第1導光ミラー)と、出射導光ミラー7(第2導光ミラー)と、支持部材8と、を有している。ミラー部4は、ミラー面41a(第1ミラー面)を有する平面ミラー41(第1平面ミラー)と、ミラー面41aに対向するミラー面42a(第2ミラー面)を有する平面ミラー42(第2平面ミラー)と、を有している。ミラー面41aとミラー面42aとの間には、分光測定の対象となるガス(測定対象物)が導入される。
【0034】
一例として、光源部2及び光検出部3は、同一の筐体10に収容されている。筐体10は、略直方体状の外形を有しており、ミラー部4の側方に配置されている。より具体的には、筐体10は、平面ミラー42に対して平面ミラー41が位置する側とは反対側において、平面ミラー42の側方に配置されている。言い換えると、筐体10は、平面ミラー42のミラー面42aとは反対側の裏面42fに対向する位置に配置されている。
【0035】
支持部材8は、矩形板状に形成されており、平面状の支持面8aを有している。筐体10及びミラー部4は、支持部材8の支持面8a上に固定(支持)されている。平面ミラー41,42は、ミラー面41a,42aが支持面8aに垂直となるように、支持面8a上に配置されている。入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7についても、図示しない支柱等の支持部材を介して、支持部材8に固定されてもよい。
【0036】
以降の説明において、ミラー面41aに直交する方向をX軸方向(第1方向)と表し、支持面8aに直交する方向をZ軸方向(第3方向)と表し、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向(第2方向)と表す。平面ミラー41,42は、Z軸方向から見た場合にミラー面41aとミラー面42aとが非平行となるように配置されている(図5参照)。より具体的には、Y軸負方向に向かうにつれてミラー面41aとミラー面42aとの間隔(X軸方向の距離)が小さくなるように、ミラー面41aはミラー面42aに対して傾斜している。本実施形態では、便宜上、Y軸負方向(すなわち、ミラー面41a,42aの間隔が狭まる方向)を「後方」と定義し、Y軸正方向(すなわち、ミラー面41a,42aの間隔が拡がる方向)を「前方」と定義する。また、支持面8aに対してミラー部4等の各部材が配置される側を「上方」と定義する。
【0037】
図2に示されるように、筐体10は、光源部2及び光検出部3と共に、レンズ11、レンズ12、ヒートシンク15、及びペルチェ素子16を気密に収容している。一例として、光源部2及び光検出部3は、ヒートシンク15及びペルチェ素子16を介して、筐体10の側壁10aの内側面に固定されている。側壁10aは、筐体10のうちミラー部4(平面ミラー42)に対向する壁部である。ペルチェ素子16は、側壁10aの内側面に固定されており、ヒートシンク15は、ペルチェ素子16の側壁10aに対向する側とは反対側において、ペルチェ素子16に固定されている。光源部2及び光検出部3は、ヒートシンク15のペルチェ素子16に対向する側とは反対側において、ヒートシンク15に固定されている。ペルチェ素子16は、筐体10内の温度制御を行う役割を果たす。すなわち、光源部2において発生した熱が、ヒートシンク15を介してペルチェ素子16に吸熱(冷却)されることにより、光源部2及び光検出部3の温度が一定の範囲内に保たれる。なお、光源部2、光検出部3、ヒートシンク15、及びペルチェ素子16の配置及び形状は上記に限定されない。例えば、ヒートシンク15の代わりに、側壁10aに固定される平板状の第1部分と、第1部分の後端部からX軸正方向に延びる平板状の第2部分と、からなるL字状のヒートシンクが用いられてもよい。また、このようなヒートシンクが用いられる場合、第2部分の後面にペルチェ素子の冷却面が対向するようにペルチェ素子が配置されてもよい。さらに、このように配置されたペルチェ素子の後方(排熱側)にペルチェ素子を冷却するファン等の2次冷却部が設けられてもよい。
【0038】
光源部2は、レーザ光L1を出射する光源である。例えば、光源部2は、活性層を含む量子カスケードレーザ素子である。一例として、光源部2は、分布帰還型の量子カスケードレーザ素子(DFB-QCL:Distributed Feedback Quantum Cascade Laser)である。本実施形態では、光源部2は、波長4.6μmの単一モードで動作するDFB-QCLである。活性層は、量子井戸層と障壁層とが交互に積層された量子井戸構造を含む層であり、レーザ光L1を発生させる。活性層は、例えば、InGaAs層とInAlAs層とを積層方向に沿って交互に複数積層した構造を有している。光源部2は、前方(Y軸正方向)にレーザ光L1を出射するように配置されている。すなわち、光源部2は、前方を向き、前方にレーザ光L1を出射する光出射面2aを有している。
【0039】
レンズ11は、光源部2のレーザ光L1が出射される側(すなわち、光源部2の前方)に配置されている。レンズ11は、レーザ光L1を集光又はコリメートすることにより、レーザ光L1の拡がりを抑える役割を果たす。一例として、レンズ11は、レーザ光L1をコリメートするコリメートレンズである。レンズ11は、レーザ光L1が入射する入射面11aと、レンズ内を通過したレーザ光L1を外部に出射する出射面11bと、を有している。一例として、入射面11aは平面状に形成され、出射面11bは凸面状に形成される。筐体10の小型化を図る観点から、例えば、焦点距離が10mm以下のZnSe製の非球面レンズをレンズ11として用いることができる。レンズ11の入射面11a及び出射面11bには、レーザ光L1の波長に対する透過率が90%以上となるような低反射コーティングが施されてもよい。また、レンズ11の母材はZnSeに限られず、中赤外光(レーザ光L1)を低損失に透過させることが可能な他の材料によって構成されてもよい。本実施形態では、レンズ11は、焦点距離が1mmでありレンズ径(直径)が5mmであるZnSe非球面レンズによって構成されている。
【0040】
筐体10の前方の側壁10bのうちレンズ11の出射面11bに対向する部分には、光源部2から出射されたレーザ光L1(レンズ11によってコリメートされたレーザ光L1)を通過させるための開口部10cが設けられている。開口部10cには、レーザ光L1を透過させるための窓部材13が設けられている。窓部材13の材料としては、例えば、レンズ11と同様に、ZnSeを用いることができる。また、窓部材13の内面(レンズ11に対向する面)及び外面(内面とは反対側の面)には、レンズ11と同様の低反射コーティングが施されてもよい。
【0041】
図1及び図2に示されるように、光源部2から出射されたレーザ光L1は、レンズ11及び窓部材13を通過し、入射調整ミラー6を介して、所定の角度条件(後述するθ及びθ)で平面ミラー41のミラー面41aの位置P1に入射する。位置P1は、最初にミラー面41aに入射するレーザ光L1の光軸とミラー面41aとが交差する位置である。平面ミラー41,42間において、ミラー面41a,42a間で多重反射しながら前後方向(Y軸方向)に往復するレーザ光L1の光路OPが形成される。光路OPは、後方(往路方向)にレーザ光L1が進む往路OP1と、折り返されて前方(復路方向)にレーザ光L1(折り返し光L2)が進む復路OP2と、を含んでいる。
【0042】
ミラー面41aに入射したレーザ光L1は、ミラー面41aとミラー面42aとの間で多重反射しながら後方(Y軸負方向)に進む。すなわち、平面ミラー41,42間において、位置P1から後方(往路方向)に多重反射しながら向かう往路OP1が形成される。その後、進行方向が後方から前方へと折り返されたレーザ光L1である折り返し光L2が、ミラー面41aとミラー面42aとの間で多重反射しながら前方(Y軸正方向)に進む。すなわち、平面ミラー41,42間において、折り返し点(本実施形態では、後述する位置P2(図5参照))から前方(復路方向)に多重反射しながら向かう復路OP2が形成される。
【0043】
ミラー面41aの位置P3で最後に反射された折り返し光L2は、出射導光ミラー7を介して、筐体10へと導光される。位置P3は、最後にミラー面41aに入射する折り返し光L2の光軸とミラー面41aとが交差する位置であり、復路OP2の最終到達地点である。
【0044】
光検出部3は、上述したようにミラー面41a,42aの間で多重反射して折り返されたレーザ光L1(折り返し光L2)を検出する。光検出部3は、前方を向き、前方から入射する折り返し光L2を受光(検出)する光検出面3aを有している。例えば、光検出部3は、量子カスケードレーザ素子(光源部2)と対応する特性を有する量子カスケード光検出器(QCD:Quantum Cascade Photodetector)である。量子カスケード光検出器は、上述した量子カスケードレーザ素子と同様の活性層を含んでいる。中赤外で動作する量子カスケードレーザ素子及び量子カスケード光検出器を光源部2及び光検出部3として用いることにより、分子の基本振動に由来した強い吸収を観測できるため、高感度な吸収分光測定を行うことが可能となる。なお、上記特性の例としては、以下に述べる偏光方向に関する特性と、波長に関する特性と、が挙げられる。
【0045】
(偏光方向に関する特性について)
量子カスケードレーザ素子と量子カスケード光検出器とは、互いに共通の偏光依存性を有している。そこで、図3に示されるように、光源部2(量子カスケードレーザ素子)と光検出部3(量子カスケード光検出器)とは、光源部2から出射された後にミラー部4を経て光検出部3に入射するレーザ光L1(すなわち、折り返し光L2)の偏光方向D1と光検出部3が感度を有する偏光方向とが一致するように、配置されてもよい。ここで、レーザ光L1の偏光方向D1は、レーザ光L1の電場振動方向であり、光源部2に含まれる活性層の積層方向D2と平行な方向である。また、光検出部3が感度を有する偏光方向は、光検出部3に含まれる活性層の積層方向D3と平行な方向である。よって、光検出部3に入射する折り返し光L2(レーザ光L1)の偏光方向D1が積層方向D3(すなわち、光検出部3が感度を有する偏光方向)と一致するように、光検出部3が配置されればよい。上記構成によれば、光出射面2aから光検出面3aに至るまでの光路上で散乱等によって発生した偏光方向が乱れた迷光成分が、光検出部3でノイズとして検出されることを防ぎ、信号対雑音比(S/N)の向上を図ることができる。
【0046】
(波長に関する特性について)
図4に示されるように、光検出部3は、光源部2の発振波長(一例として、4.6μm)に対応する感度波長を有してもよい。図4において、OSは光源部2の発振スペクトルを示しており、SSは光検出部3の感度スペクトルを示している。図4は、平面ミラー41,42間に測定対象のガスとして二酸化炭素(CO)が導入された場合の例を示している。光検出部3は、例えば、光源部2の発振波長(4.6μm)に対して最大の感度を有するように設計される。例えば、光源部2の発振波長を測定対象のガスの赤外領域における吸収帯(図4の例では、COの吸収帯である4.3μm)付近の値(4.6μm)に設定すると共に、光検出部3の感度波長のピークを光源部2の発振波長に合わせればよい。図4の感度スペクトルSSに示されるように、量子カスケード光検出器は、一般的な光検出器と比較して感度波長範囲が狭い。このため、量子カスケード光検出器である光検出部3は、擬似的に波長フィルタの役割を果たす。従って、上述したように、例えば、光検出部3の感度が最大となる波長を光源部2の発振波長と一致させることにより、背景光ノイズの影響を抑制し、高感度な吸収分光測定を行うことが可能となる。
【0047】
レンズ12は、光検出部3の折り返し光L2が入射する側(すなわち、光検出部3の前方)に配置されている。レンズ12は、折り返し光L2を集光する集光レンズである。レンズ12は、折り返し光L2が入射する入射面12aと、レンズ内を通過した折り返し光L2を光検出面3aに向けて出射する出射面12bと、を有している。一例として、入射面12aは凸面状に形成され、出射面12bは平面状に形成される。例えば、レンズ12は、レンズ11と同様に、焦点距離が10mm以下のZnSe製の非球面レンズによって構成され得る。また、レンズ12の入射面12a及び出射面12bには、折り返し光L2の波長に対する透過率が90%以上となるような低反射コーティングが施されてもよい。また、レンズ12の母材はZnSeに限られず、中赤外光(レーザ光L1)を低損失に透過させることが可能な他の材料によって構成されてもよい。本実施形態では、レンズ12は、レンズ11と同様に、焦点距離が1mmであり、レンズ径(直径)が5mmであるZnSe非球面レンズによって構成されている。
【0048】
筐体10の側壁10bのうちレンズ12の入射面12aに対向する部分には、折り返し光L2を筐体10の内部に導光するための開口部10dが設けられている。開口部10dには、折り返し光L2を透過させるための窓部材14が設けられている。窓部材14は、窓部材13と同様の材料によって形成され得る。また、窓部材14の内面(レンズ12に対向する面)及び外面(内面とは反対側の面)には、レンズ12と同様の低反射コーティングが施されてもよい。
【0049】
筐体10内において、光源部2と光検出部3とは、Z軸方向において互いに重なるように配置されている。本実施形態では、一例として、光源部2が光検出部3よりも上方に配置されている。図2に示されるように、光源部2の光軸(光出射面2aの中心を通る軸線)と光検出部3の光軸(光検出面3aの中心を通る軸線)とは、Z軸方向において、距離hだけ離間している。同様に、光源部用のレンズ11及び窓部材13も、それぞれ光検出部用のレンズ12及び窓部材14とZ軸方向において重なるように、レンズ12及び窓部材14の上方に配置されている。
【0050】
入射調整ミラー6は、光源部2の光出射面2aに対向する位置において、レンズ11を通過したレーザ光L1が入射する位置に配置されている。入射調整ミラー6は、光源部2の光出射面2aから出射されたレーザ光L1を反射することにより、レーザ光L1を平面ミラー41のミラー面41a(位置P1)に所定の角度(後述する入射角度θ及び入射角度θ)で入射するように導光する。すなわち、入射調整ミラー6は、ミラー面41aに対するレーザ光L1の入射角度を三次元的に調整する機能を有している。本実施形態では、入射調整ミラー6は、レーザ光L1が後方(Y軸負方向)及び下方(Z軸負方向)に進むように、レーザ光L1を導光する。本実施形態では、入射調整ミラー6は、平面ミラーである。ただし、入射調整ミラー6は、凹面ミラーでもよい。入射調整ミラー6を凹面ミラーにした場合には、レーザ光L1の拡がりを抑制することができる。
【0051】
出射導光ミラー7は、光検出部3の光検出面3aに対向する位置において、ミラー面41a(位置P3)で最後に反射された折り返し光L2が入射する位置に配置されている。出射導光ミラー7は、折り返し光L2を反射することにより、折り返し光L2を光検出部3の光検出面3aに導光する。本実施形態では、出射導光ミラー7は、平面ミラーである。ただし、出射導光ミラー7は、凹面ミラーでもよい。出射導光ミラー7を凹面ミラーにした場合には、折り返し光L2の拡がりを抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、Z軸方向から見た場合に、往路OP1が復路OP2と重なる(一致する)と共に、往路OP1と復路OP2とが高さ方向(Z軸方向)にずれる(分離される)ように、位置P1に対するレーザ光L1の入射角度(後述するθ及びθ)が入射調整ミラー6によって調整されている。これにより、入射調整ミラー6と出射導光ミラー7とは、互いに異なる高さ位置において、Z軸方向において互いに重なるように配置されている。本実施形態では、入射調整ミラー6は、出射導光ミラー7よりも上方に配置されている。また、光源部2から入射調整ミラー6までのレーザ光L1の光路、及び出射導光ミラー7から光検出部3までの折り返し光L2の光路は、いずれもY軸方向に沿っている。このため、図7に示されるように、入射調整ミラー6及びレーザ光L1の光軸が交わる位置と出射導光ミラー7及び折り返し光L2の光軸が交わる位置との距離は、上述した光源部2と光検出部3とのZ軸方向の距離hと等しくされている。なお、距離hは、例えば15mmに設定される。この場合、筐体10を一辺30mmの立方体よりも小さくなるように構成することが可能となる。
【0053】
次に、図1及び図5図7を参照して、ミラー部4の構成と、ミラー部4によって形成されるレーザ光L1の光路と、について詳細に説明する。
【0054】
平面ミラー41は、矩形板状に形成されている。平面ミラー41は、平面ミラー42に対して筐体10が配置される側とは反対側に配置されている。平面ミラー41は、ミラー面41aと、下面41bと、上面41cと、前端面41dと、後端面41eと、を有する。下面41bは、支持面8aに固定される面である。上面41cは、下面41bの反対側の面である。前端面41dは、前方(Y軸正方向)を向く面であり、後端面41eは、後方(Y軸負方向)を向く面である。
【0055】
平面ミラー42は、矩形板状に形成されている。平面ミラー42は、平面ミラー41と筐体10との間に配置されている。平面ミラー42は、ミラー面42aと、下面42bと、上面42cと、前端面42dと、後端面42eと、裏面42fと、を有する。下面42bは、支持面8aに固定される面である。上面42cは、下面42bの反対側の面である。前端面42dは、前方(Y軸正方向)を向く面であり、後端面42eは、後方(Y軸負方向)を向く面である。裏面42fは、ミラー面42aの反対側の面である。
【0056】
平面ミラー41,42のミラー面41a,42aは、例えば、対象波長(光源部2から出射されるレーザ光L1の発振波長)に対する反射率が90%以上となるような面精度を有している。或いは、ミラー面41a,42aには、上記反射率を実現するための表面処理が施されてもよい。一例として、ミラー面41a,42aには、金コートが施されてもよい。
【0057】
Y軸方向において、ミラー面41aの前端部41g(すなわち、ミラー面41aと前端面41dとの境界部)は、ミラー面42aの前端部42g(すなわち、ミラー面42aと前端面42dとの境界部)よりも前方に突出している。本実施形態では、Y軸方向において、前端部41gは、前端部42gよりも距離d3(d3>0)だけ前方に位置している。一方、Y軸方向において、ミラー面41aの後端部41h(すなわち、ミラー面41aと後端面41eとの境界部)の位置は、ミラー面42aの後端部42h(すなわち、ミラー面42aと後端面42eとの境界部)の位置と一致している。
【0058】
図5及び図6に示されるように、ミラー面41aとミラー面42aとは、ミラー面41aとミラー面42aとの間で多重反射しながらY軸方向(前後方向)に往復するレーザ光L1の光路OPが形成されるように、Z軸方向から見た場合に、互いに非平行に配置されている。上述した通り、本実施形態では、後方(Y軸負方向)に進む往路OP1と、前方(Y軸正方向)に進む復路OP2と、が形成される。
【0059】
図5に示されるように、Z軸方向から見た場合に、平面ミラー41,42の間隔(ミラー面41a,42a間のX軸方向の距離)が後方(Y軸負方向)に向かうにつれて短くなるように、平面ミラー41に対して平面ミラー42が傾斜角度αで傾斜している。すなわち、平面ミラー42は、Z軸方向から見た場合に、後方に向かうにつれてミラー面42aがミラー面41aに近づくように、Y軸方向(YZ平面)に対して傾斜している。このため、X軸方向におけるミラー面41aとミラー面42aとの距離は、ミラー面42aの前端部42gにおいて最長の距離d1(最長距離)となる。本実施形態では、一例として、距離d1は、55mmである。
【0060】
図5に示されるように、レーザ光L1は、入射調整ミラー6によって、Z軸方向から見た場合にミラー面41aに対して傾斜する方向に沿ってミラー面41aに導光される。すなわち、入射調整ミラー6で反射されたレーザ光L1は、Z軸方向から見た場合に、入射角度θ(θ≠0)でミラー面41aの位置P1(最初の入射位置)に入射する。上記のようにミラー面41aに対してミラー面42aを傾斜させる(すなわち、ミラー面41aとミラー面42aとを非平行に対向させる)と共に、ミラー面41aに対して入射角度θでレーザ光L1を入射させることにより、ミラー面41aとミラー面42aとの間で多重反射しながら前後方向(Y軸方向)に往復するレーザ光L1の光路OPを形成することができる。
【0061】
図7に示されるように、レーザ光L1は、入射調整ミラー6によって、Z軸方向に対して傾斜する方向に沿ってミラー面41aに導光される。すなわち、入射調整ミラー6で反射されたレーザ光L1は、Z軸方向に対して垂直な方向(すなわち、X軸方向及びY軸方向に平行なXY平面に沿った方向)ではなく、XY平面に対して傾斜する方向に沿ってミラー面41aに導光される。本実施形態では、入射調整ミラー6で反射されたレーザ光L1は、Y軸方向から見た場合に、入射角度θ(θ≠0)でミラー面41aの位置P1に入射する。これにより、往路OP1と復路OP2との高さ位置をずらし、往路OP1と復路OP2とを空間的に分離することができる。これにより、折り返し光L2が光源部2の光出射面2aに再入射することが防止され、光源部2の動作が不安定となることが防止される。
【0062】
図5に示されるように、位置P1は、ミラー面41aの前端部41gよりも後方に位置している。すなわち、位置P1からミラー面41aの後端部41hまでのY軸方向に沿った距離をd2とすると、ミラー面41aのY軸方向の長さd4(すなわち、前端部41gから後端部41hまでの距離)は、距離d2よりも長い。分光測定装置1Aの小型化の観点から、距離d2は、例えば300mm以下に設定される。本実施形態では、一例として、距離d2は150mmである。また、本実施形態では、位置P1のY座標は、ミラー面42aの前端部42gのY座標と一致している。このため、位置P1から前端部41gまでのY軸方向に沿った距離は、前端部42gから前端部41gまでのY軸方向に沿った距離d3(すなわち、ミラー面42aの前端部42gに対するミラー面41aの前端部41gの突出量)と一致している。
【0063】
一例として、入射角度θは、傾斜角度αの自然数倍となるように設定される。この場合、図5に示されるように、ミラー面41aの位置P1に入射したレーザ光L1は、ミラー面41aとミラー面42aとの間で繰り返し反射されながら後方(Y軸負方向)に進むが、ミラー面42aがミラー面41aに対して傾斜角度αだけ傾斜していることにより、レーザ光L1がミラー面41a,42aで反射する度に、Z軸方向から見た場合のミラー面41aに対するレーザ光L1の入射角度が傾斜角度αずつ減少する。その結果、最終的に、Z軸方向から見た場合のミラー面41a又はミラー面42aに対するレーザ光L1の入射角度が0となる。すなわち、Z軸方向から見た場合にレーザ光L1がミラー面41a又はミラー面42aに対して垂直に入射する。入射角度θが傾斜角度αの偶数倍の場合には、レーザ光L1はミラー面41aに垂直に入射し、入射角度θが傾斜角度αの奇数倍の場合には、レーザ光L1はミラー面42aに垂直に入射する。
【0064】
図5は、入射角度θが傾斜角度αの偶数倍に設定されている場合の例である。図5における位置P2は、Z軸方向から見た場合にレーザ光L1がミラー面41aに対して垂直に入射する位置であり、往路OP1の最終到達地点となる。往路OP1は、位置P1から位置P2までのレーザ光L1の光路である。なお、入射角度θが傾斜角度αの奇数倍の場合には、位置P2は、ミラー面41aではなくミラー面42aに位置する。
【0065】
図6に示されるように、ミラー面41aの位置P2で反射されて折り返されたレーザ光L1(折り返し光L2)は、Z軸方向から見た場合に往路OP1と重なる光路(復路OP2)を形成するように、ミラー面41aとミラー面42aとの間で繰り返し反射されながら前方(Y軸正方向)に進む。最終的に、ミラー面41aの位置P3で反射された折り返し光L2は、出射導光ミラー7へと導光される。復路OP2は、位置P2から位置P3までの折り返し光L2の光路である。
【0066】
Z軸方向から見た場合に往路OP1と復路OP2とが重なるように傾斜角度α及び入射角度θが調整されると共に、図7に示されるようにミラー面41a,42a間における光路OPがZ軸方向に対して入射角度θで傾斜しているため、位置P3は、位置P1よりも下方において、Z軸方向で位置P1と重なる位置となる。なお、入射調整ミラー6の反射点からミラー部4を経由して出射導光ミラー7の反射点に至るまでの光路長をDと表すと、「h=D×tanθ」の関係が成り立つ。
【0067】
また、パラメータE,Eをそれぞれ下記式(1)及び(2)のように定義すると、入射角度θが下記式(3)の条件を満たす場合に、Z軸方向から見た場合の平面ミラー41,42間の往路OP1及び復路OP2が完全に重なり、且つ、光路OPの総光路長を最大にすることができる。すなわち、下記式(3)の条件を満たすように、入射角度θを調整することにより、往路OP1の最終到達地点である位置P2をなるべく後端部41h(又は後端部42h)に近づけると共にミラー面41a,42a間の反射回数を最大化することができる。
【数1】
【0068】
一例として、上述した距離d1、距離d2、及び傾斜角度αは、それぞれ以下のように設定され得る。
・d1=55mm
・d2=150mm
・α=0.3°
【0069】
上記のようにd1、d2、及びαが設定されている場合、上記式(1)~(3)に基づいて、光路OPの総光路長を最大にする入射角度θは9.6°と求められる。この場合、位置P1から折り返し位置(位置P2)を経て位置P3に至るまでの光路OPの光路長は、およそ3.5mとなる。また、入射角度θは、3.5mの光路長を経た後でレーザ光L1の中心位置がZ軸方向に距離h(本実施形態では15mm)だけずれるように調整されればよいため、上記条件下においては、「θ=tan-1(15/3500)=0.25°」と算出される。ここで、中赤外光であるレーザ光L1は、レンズ11においてコリメートされているものの、可視光及び近赤外光に比べて波長が長いことから、長距離伝搬に伴ってビーム径が拡がり易い。すなわち、図8に示されるように、位置P1に最初に入射したレーザ光L1のビーム径b1よりも、位置P3で最後に反射して出射導光ミラー7に向かうレーザ光L1(折り返し光L2)のビーム径b2の方が大きくなる。なお、本実施形態で用いられる光源部2(波長4.6μmの単一モードで動作するDFB-QCL)とレンズ11(焦点距離1mmのコリメートレンズ)との組み合わせでは、レーザ光L1の伝搬に伴うレーザ光L1の拡がり角(強度が1/e2となる幅(ここでは後述するFast方向の幅))が片側で0.28°となるため、3.5mの伝搬後のレーザ光L1のビーム径b2は25mm程度となる。
【0070】
このようにビーム径b2が比較的大きくなると、位置P3から出射導光ミラー7へと向かう折り返し光L2の一部が平面ミラー42に遮られてビーム損失(図8の破線で示した欠損部分DE1)が生じるおそれがある。また、折り返し光L2が位置P3に向かう前に平面ミラー42のミラー面42aで反射する際に、折り返し光L2の一部がミラー面42aの外側に抜けてしまうことによってビーム損失(図8の破線で示した欠損部分DE2)が生じるおそれもある。その結果、最終的に出射導光ミラー7へと導光される折り返し光L2のビーム形状Bが、Y軸方向の両側部分が欠損した状態になるおそれがある。すなわち、ビーム形状Bを有する折り返し光L2のY軸方向の幅bは、ビーム径b2よりも小さくなるおそれがある。
【0071】
ここで、ビーム形状Bにおいて、欠損前の折り返し光L2の少なくとも半分以上の面積を確保する(幅bをビーム径b2の1/2以上にする)ためには、傾斜角度αをレーザ光L1の拡がり角(本実施形態では、0.28°)よりも大きくすればよい。また、図9に示されるように、出射導光ミラー7へと戻される折り返し光L2のZ軸方向から見たビーム範囲は、距離d3が十分に長い場合には、ミラー面42aの前端部42gで反射した後にミラー面41aで反射する部分Laからミラー面42aの前端部42gの近傍をすり抜ける部分Lb(すなわち、ぎりぎり前端部42gで遮られずに出射導光ミラー7へと向かう部分)までの範囲となる。ここで、部分Laがミラー面42aの前端部42gで反射した後にミラー面41aに入射する位置を位置P4とすると、前端部42gと位置P4とのY軸方向に沿った距離d6は「d1×tanθ」と表される。従って、折り返し光L2のビーム損失を回避する観点から、下記式(4)が成立するように、距離d3を設定することが好ましい。さらに、上記の折り返し光L2のビーム損失を回避しつつ、なるべく分光測定装置1Aの小型化(すなわち、分光測定装置1Aを構成する部材(平面ミラー41)の小型化)を図る観点からは、下記式(5)が成立するように、距離d3を設定することが好ましい。
【0072】
d3≧d1×tanθ …(4)
d3=d1×tanθ …(5)
【0073】
また、分光測定装置1Aの小型化の観点から、距離d2は、300mm以下であることが好ましい。同様の理由により、平面ミラー41,42のZ方向の長さd5(高さ)は、50mm以下であることが好ましい。ここで、例えば、距離d1と距離d2とを同じ長さにした場合、ジグザグに多重反射しながらY軸方向に進む往復の光路OPを実現しつつ、光路OPをガス計測にとって有意な長光路にするためには、入射角度θ及び傾斜角度αを制御が困難な程に小さくする必要が生じ得る。また、入射角度θ及び傾斜角度αを小さくする程、レーザ光L1のビーム径の拡大に伴って生じる折り返し光L2のビーム損失(図8参照)が大きくなる。一方、距離d2に対する距離d1の比をある程度小さくすることにより、入射角度θをある程度大きくして折り返し光L2のビーム損失を低減しつつ、ミラー部4のY軸方向(奥行方向)の全体を有効活用して光路OPを長くすることが容易となる。以上のような観点から、距離d1は、例えば距離d2の1/3以下に設定されることが好ましい。上記のように寸法を設定した場合、測定対象のガスを満たすべき空間(すなわち、平面ミラー41,42間の空間)の体積を、最大でも「300(距離d2)×50(長さd5)×100(距離d1)mm」以下に抑えることができ、少量のサンプルガスによる測定が可能となる。本実施形態では、Z軸方向における折り返し光L2のビーム損失を回避する観点から、長さd5を例えば30mm以上とすればよい。
【0074】
次に、分光測定装置1Aの製造方法について説明する。上述した通り、光源部2から出射されレンズ11によってコリメートされたレーザ光L1は、ミラー部4に入射し、Z軸方向において重なる往路OP1及び復路OP2を形成する。このような光路OPは、ミラー面41aに対して、厳密に入射角度θで入射した場合にのみ成立する。また、入射角度θによって定まる光路の位置ずれ(すなわち、入射調整ミラー6に入射したレーザ光L1の高さ位置(Z軸方向の位置)と出射導光ミラー7に入射した折り返し光L2の高さ位置との差)が、入射調整ミラー6と出射導光ミラー7とのZ軸方向の距離hと一致した場合に、光検出部3での信号強度(光検出強度)が最大となる。上記に基づいて、まず、光源部2、光検出部3、ミラー部4、及び出射導光ミラー7の各々を固定する。例えば、支持部材8に対して、光源部2、光検出部3、ミラー部4、及び出射導光ミラー7の各々を予め設計された位置及び向きに位置決め及び固定する。続いて、光源部2からレーザ光L1を出射させながら、光検出部3における信号強度が最大となるように、入射調整ミラー6の位置及び角度を調整及び固定する。このような手順によれば、光源部2、光検出部3、ミラー部4、及び出射導光ミラー7を予め機械精度の範囲で位置決め(固定)した上で、光検出部3における信号強度を最大化するという比較的単純な指標に基づいて、入射調整ミラー6の厳密な角度調整等を行うことができる。上記方法は、特に、本実施形態のように光源部2から出射されるレーザ光L1が不可視の中赤外光である場合において有効である。
【0075】
[第1実施形態の作用効果]
以上説明した分光測定装置1Aによれば、2つの平面ミラー41,42を非平行に対向配置した構成(すなわち、従来の凹面ミラーを用いたヘリオットセル等の構成と比較して安価且つ簡素な構成)によって、長光路の分光測定装置1Aを実現できる。また、平面ミラー41,42間におけるレーザ光L1の光路OPをZ軸方向に対して傾斜するように設定することにより、平面ミラー41,42間のレーザ光L1の往路OP1と復路OP2とをZ軸方向において空間的に分離できるため、平面ミラー41,42間に導入されたガスの分光測定を適切に実施することができる。より具体的には、平面ミラー41,42間で往路光(往路OP1)と復路光(復路OP2)とが干渉することを防止できると共に、ミラー部4で折り返されたレーザ光L1(折り返し光L2)が光源部2に再入射することを防止し、折り返し光L2を光検出部3に適切に導くことができる。従って、分光測定装置1Aによれば、装置の簡素化(低価格化)及び小型化を図ることができる。
【0076】
このように、分光測定装置1Aによれば、非平行に対向配置された平面ミラー対を用いて光を多重反射させることで、小さな体積の中に長光路を折り畳むことが可能となる。これにより、コンパクトな構成を採用しつつ、平面ミラー41,42で挟まれた空間に導入された測定対象のガスに対して、長光路による高感度な吸収分光を実現することができる。また、平面ミラー41,42は、一般的な長光路ガスセルで使用されるような球面(凹面)ミラーと比較して安価であるため、分光測定モジュールとしての価格を低く抑えることができる。
【0077】
また、ミラー面41aに最初に入射するレーザ光L1の光路は、Z軸方向に対して入射角度θで傾斜している。また、ミラー面41a及びミラー面42aは、Z軸方向と平行である。上記構成によれば、ミラー面41aに最初に入射するレーザ光L1の光路をZ軸方向に対して傾斜させることにより、平面ミラー41,42をZ軸方向に対して傾斜させることなく(すなわち、平面ミラー41,42を単純に支持面8a上に垂直に配置することによって)、平面ミラー41,42間のレーザ光L1の光路OPがZ軸方向に対して傾斜する構成を容易に実現することができる。
【0078】
また、Z軸方向から見た場合のミラー面41aに最初に入射するレーザ光L1のミラー面41aに対する入射角度θは、Z軸方向から見た場合のミラー面41aに対するミラー面42aの傾斜角度αの自然数倍となるように調整されている。上記構成によれば、Z軸方向から見た場合に、平面ミラー41,42間のレーザ光L1の往路OP1と復路OP2とが重なるように、平面ミラー41,42間のレーザ光L1の光路OPを設定することができる。これにより、光源部2からミラー部4へとレーザ光L1を導くための往路光学系(本実施形態では、レンズ11、窓部材13、入射調整ミラー6等)及びミラー部4から折り返された折り返し光L2を光検出部3へと導くための復路光学系(本実施形態では、レンズ12、窓部材14、出射導光ミラー7等)の配置を容易に行うことが可能となる。
【0079】
また、ミラー面41aに対してレーザ光L1が最初に入射する位置P1からミラー面41aの後端部41h(すなわち、レーザ光L1の往路方向におけるミラー面41aの端部)までのY軸方向に沿った距離d2(図5参照)は、300mm以下である。上記構成によれば、より一層効果的に装置の小型化を図ることができる。
【0080】
また、Z軸方向におけるミラー部4(平面ミラー41,42)の長さd5(図7参照)は、50mm以下である。上記構成によれば、ミラー部4の高さを一定以下に抑えることによって、装置の小型化を図ると共に、平面ミラー41,42間に導入(充填)されるガスの量を一定以下に抑えることができる。すなわち、比較的少量のガスを平面ミラー41,42間に導入するだけで、ガスの分光測定を行うことが可能となる。
【0081】
また、ミラー面41aの前端部41gは、ミラー面42aの前端部42gよりも前方(Y軸正方向)に突出している。図5に示されるように、本実施形態では、ミラー面41aの前端部41gは、ミラー面42aの前端部42gよりも距離d3だけ前方に位置している。上記構成によれば、ミラー面41aに対してレーザ光L1を入射させ易くすることができる。また、平面ミラー41,42間の多重反射による長光路の伝搬を経てレーザ光L1のビーム径が拡がる場合において、最後にミラー面41a(位置P3)で反射して光検出部3側へと導光されるレーザ光L1(折り返し光L2)がミラー面42aに遮られてしまうこと(すなわち、折り返し光L2のビーム損失が生じること)を抑制することができる。
【0082】
また、ミラー面42aの前端部42gからミラー面41aの前端部41gまでのY軸方向に沿った距離d3は、X軸方向に沿ったミラー面41aとミラー面42aの前端部42gとの距離d1にtanθを乗じた値以上に設定されている。すなわち、上述した式(4)を満たすように、距離d3が設定されている。上記構成によれば、図9に示したように、ミラー面42aの前端部42gで反射してミラー面41aへと向かう折り返し光がミラー面41aの前端部41gよりも外側(前方)に抜けてしまうことに起因するビーム損失を回避することが可能となる。
【0083】
なお、本実施形態(例えば図5図6、及び図9参照)では、距離d3は、距離d1にtanθを乗じた値よりも長く設定されているが、距離d3は、距離d1にtanθを乗じた値と一致するように設定されてもよい。すなわち、上述した式(5)を満たすように、距離d3が設定されてもよい。この場合、上記式(4)を満たす場合と同様の効果が得られると共に、平面ミラー42(ミラー面42a)に対する平面ミラー41(ミラー面41a)の突出長(すなわち、距離d3)を上記のビーム損失を回避するために必要十分な長さに設定することにより、ビーム損失の回避と装置の小型化との両立を図ることができる。
【0084】
また、ミラー面41aに対するミラー面42aの傾斜角度αは、ミラー面41aとミラー面42aとの間を通過するレーザ光L1のZ軸方向から見た場合の拡がり角よりも大きくなるように設定されている。上記構成によれば、平面ミラー41,42間の多重反射による長光路の伝搬を経てレーザ光L1のビーム径が拡がる場合(図8参照)において、折り返し光L2のビーム損失を効果的に抑制することができる。例えば、上述したように、ビーム形状B(図8参照)において、欠損前の折り返し光L2の少なくとも半分以上の面積を確保すること(すなわち、ビーム形状Bを有する折り返し光L2のY軸方向の幅bをビーム径b2の半分以上にすること)が容易となる。ただし、ビーム形状Bにおいて欠損前の折り返し光L2の半分以上の面積を確保することは必須ではない。例えば、光検出強度が非常に高い光検出部3を用いることができる場合等には、ビーム形状Bにおいて欠損前の折り返し光L2の半分以上の面積が確保されなくともよい。
【0085】
なお、上記実施形態(図8)では、レーザ光L1のビーム径が円形になると仮定したが、実際には、量子カスケードレーザ素子である光源部2から出射されるレーザ光L1は、ビーム拡がりについての異方性を有している。より具体的には、図3に示されるように、活性層の積層方向D2に沿った方向DF(Fast方向)に沿ったレーザ光L1の拡がり角(放射角)の方が、積層方向D2に直交する方向DS(Slow方向)に沿ったレーザ光L1の放射角よりも大きくなる。上記実施形態において想定した拡がり角(片側で0.28°)は、方向DFに沿った拡がり角である。このように、傾斜角度αをより大きい拡がり角(方向DFに沿った拡がり角)よりも大きくすることにより、より確実にビーム損失を抑制又は回避することができる。また、図8に示したようなY軸方向におけるビーム損失を抑制するために、平面ミラー41,42間を通過するレーザ光L1の方向DSがY軸方向に沿うように、光源部2の向き、入射調整ミラー6の位置及び角度等が設定されてもよい。
【0086】
また、光源部2と光検出部3とは、Z軸方向において互いに重なるように配置されている。平面ミラー41,42間におけるレーザ光L1の光路OPをZ軸方向に対して傾斜させることによって、光源部2からミラー部4へと導光されるレーザ光L1の光路とミラー部4から光検出部3へと導光される折り返し光L2の光路とをZ軸方向に分離することができる。これを利用して光源部2と光検出部3とをZ軸方向に並べて配置することによって、光源部2と光検出部3とをZ軸方向に重ねずにX軸方向又はY軸方向にずらして配置する場合と比較して、光源部2及び光検出部3の配置に必要な面積(Z軸方向から見た場合の面積)を小さくすることができる。その結果、より効果的に装置の小型化を図ることができる。
【0087】
また、レンズ11と光源部2(量子カスケードレーザ素子)との距離(光出射面2aと入射面11aとの距離)は、X軸方向におけるミラー面41aとミラー面42aとの最短距離(後端部41hと後端部42hとの距離)よりも短い。上記構成によれば、光源部2から出射されたレーザ光L1の拡がりをレンズ12によって効果的に抑制できる。すなわち、レーザ光L1のビーム径を十分に小さくすることができる。その結果、平面ミラー41,42間におけるレーザ光L1のビーム径の拡がりを抑制でき、ビーム径の拡がりに起因する折り返し光L2のビーム損失を低減することができる。
【0088】
また、分光測定装置1Aは、入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7を備えており、入射調整ミラー6と出射導光ミラー7とは、Z軸方向において互いに重なるように配置されている。上記構成によれば、入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7を用いることにより、ミラー部4に対する光源部2及び光検出部3の配置(レイアウト)の自由度を向上させることができる。例えば、本実施形態のように、光源部2及び光検出部3を収容する筐体10をミラー部4の側方にコンパクトに配置することが可能となる。また、入射調整ミラー6と出射導光ミラー7とをZ軸方向に並べて配置することによって、入射調整ミラー6と出射導光ミラー7とをZ軸方向に重ねずに配置する場合と比較して、入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7の配置に必要な面積(Z軸方向から見た場合の面積)を小さくすることができ、装置の小型化を図ることもできる。
【0089】
[第2実施形態]
図10を参照して、第2実施形態の分光測定装置1Bについて説明する。分光測定装置1Bは、複数(一例として2つ)の光源(光源部2)及び光検出器(光検出部3)の組み合わせ(系統)を含んでおり、平面ミラー41,42間に導入されたガスの分光測定を複数系統で同時に実施可能に構成されている点で、分光測定装置1Aと主に相違している。第2実施形態の構成は、長光路を実現するための構成として平面ミラー対(ミラー部4)を採用していることにより、容易に実現することができる。
【0090】
図10の例では、光源部2は、第1波長(例えば、発振波長4.6μm)のレーザ光L1Aを出射する光源部2A(第1光源部)と、第1波長とは異なる第2波長(例えば、発振波長7.4μm)のレーザ光L1Bを出射する光源部2B(第2光源部)と、を有している。また、光検出部3は、ミラー面41a,42a間で多重反射して折り返された第1波長のレーザ光L1A(折り返し光L2A)を検出する光検出部3A(第1光検出部)と、ミラー面41a,42a間で多重反射して折り返された第2波長のレーザ光L1B(折り返し光L2B)を検出する光検出部3B(第2光検出部)と、を有している。光源部2A、光源部2B、光検出部3A、及び光検出部3Bは、Z軸方向において互いに重なるように配置されている。
【0091】
第1実施形態と同様に、各光源部2A,2Bは、量子カスケードレーザ素子(DFB-QCL)によって構成され得る。また、各光検出部3A,3Bは、各光源部2A,2Bに対応する特性(例えば、感度波長)を有する量子カスケード光検出器によって構成され得る。
【0092】
分光測定装置1Bでは、光源部2Aと光検出部3Aとの組み合わせに対応する第1系統の光路(すなわち、光源部2Aから入射調整ミラー6を経てミラー部4に入射し、ミラー部4で折り返されて出射導光ミラー7を経て光検出部3Aへと導光される光路)と、光源部2Bと光検出部3Bとの組み合わせに対応する第2系統の光路(すなわち、光源部2Bから入射調整ミラー6を経てミラー部4に入射し、ミラー部4で折り返されて出射導光ミラー7を経て光検出部3Bへと導光される光路)と、が同時に形成される。
【0093】
また、分光測定装置1Bは、光源部2Aに対応するレンズ11Aと、光源部2Bに対応するレンズ11Bと、光検出部3Aに対応するレンズ12Aと、光検出部3Bに対応するレンズ12Bと、を含んでいる。各レンズは、それぞれ対応する部材の前方に配置されている。
【0094】
光源部2Aの光軸(光源部2Aの光出射面2aの中心を通る軸線)と光検出部3Aの光軸(光検出部3Aの光検出面3aの中心を通る軸線)とは、Z軸方向において、距離hだけ離間している。同様に、光源部2Bの光軸(光源部2Bの光出射面2bの中心を通る軸線)と光検出部3Bの光軸(光検出部3Bの光検出面3bの中心を通る軸線)とは、Z軸方向において、距離hだけ離間している。光源部2Bは、光源部2Aと光検出部3Aとの間に配置されている。光検出部3Aは、光源部2Bと光検出部3Bとの間に配置されている。光源部2Bの光軸と光検出部3Aの光軸とは、Z軸方向において、距離h1だけ離間している。このため、分光測定装置1Bでは、最上段に位置する光源部(光源部2A)と最下段に位置する光検出部(光検出部3B)との間の距離が、分光測定装置1Aにおける距離hよりも「h-h1」だけ長くなっている。
【0095】
第2実施形態におけるミラー部4、入射調整ミラー6、及び出射導光ミラー7は、上記の2つの系統に対して共通に用いることができる。すなわち、ミラー部4、入射調整ミラー6、及び出射導光ミラー7は、系統毎に個別に設ける必要がない。従って、第2実施形態におけるミラー部4、入射調整ミラー6、及び出射導光ミラー7の構成は、第1実施形態と同様である。ただし、第2実施形態では、Z軸方向に互いに位置がずらされた2つの系統の光路を形成する必要があるため、その分だけミラー部4、入射調整ミラー6、及び出射導光ミラー7の寸法を、第1実施形態の寸法よりも大きくする必要がある。例えば、第1実施形態と比較してZ軸方向における光路のずれ幅が「h-h1」だけ増加しているため、ミラー部4の長さd5を第1実施形態よりも「h-h1」だけ大きくすればよい。また、入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7についても、2つの系統の光路を同時に反射することが可能な形状及び大きさとされればよい。
【0096】
上記のようにミラー部4、入射調整ミラー6、及び出射導光ミラー7を構成することにより、第1系統の光路と第2系統の光路とは、Z軸方向においてずれているのみで、Z軸方向から見た場合に完全に一致し、各光路の総光路長も一致する。
【0097】
分光測定装置1Bによれば、光源部2A、光源部2B、光検出部3A、及び光検出部3BをZ軸方向において互いに重なるように配置することにより、2つの系統の光源及び検出器をコンパクトに配置することができる。また、系統間で波長帯を異ならせることによって、互いに異なる2つの波長帯の吸収分光測定を同時に行うことができる。本実施形態では、第1系統(波長4.6μm)の光路によって、例えば、CO、NO等の吸収分光測定を好適に行うことができる。また、第2系統(波長7.4μm)の光路によって、例えば、CH等の吸収分光測定を好適に行うことができる。
【0098】
このように、複数の系統の吸収分光測定を同時に行うことが可能な構成を、互いに非平行に対向配置された平面ミラー41,42を用いることによって容易に実現できる。これに対して、凹面ミラーを用いたヘリオットセル、キャビティリングダウン分光法等の方法では、複雑な光学系が必要であるため、本実施形態のような複数系統の吸収分光測定を同時に行う構成を実現することは容易ではない。
【0099】
なお、2つの系統間で、感度波長に重なりが生じてしまう場合には、各系統間で上述した偏光方向が直交するように光源部2A,2B及び光検出部3A,3Bを配置することによって、各系統における測定が互いに影響を及ぼすことを回避してもよい。また、各系統の光路に、測定対象となる波長域のみを通す光学フィルタを配置してもよい。また、複数系統の光源部2及び光検出部3をZ軸方向に並べる順番、及び各部材間の間隔は、図10に示した形態に限られない。また、分光測定装置1Bは、3つ以上の光源部2及び光検出部3の組み合わせを有してもよい。
【0100】
[第3実施形態]
図11及び図12を参照して、第3実施形態の分光測定装置1Cについて説明する。分光測定装置1Cは、複数系統(一例として2系統)の光源(光源部2A,2B)及び光検出器(光検出部3A,3B)の組み合わせを含む点において、第2実施形態と同様であるが、光源部2A,2BがZ軸方向ではなくX軸方向に並んで配置されている点、光検出部3A,3BがZ軸方向ではなくX軸方向に並んで配置されている点、1つのレンズ11Cが光源部2A,2Bに共通に用いられる点、及び1つのレンズ12Cが光検出部3A,3Bに共通に用いられる点において、第2実施形態と相違している。また、分光測定装置1Cでは、光源部2Aの光出射面2aと光源部2Bの光出射面2bとがZ軸方向ではなくX軸方向にずれているため、各系統の光路は、Z軸方向から見た場合に一致していない。
【0101】
すなわち、分光測定装置1Cでは、光源部2Aと光源部2Bとは、X軸方向に並んで配置されており、光検出部3Aと光検出部3Bとは、X軸方向に並んで配置されている。また、第1系統の組み合わせ(光源部2A及び光検出部3A)は、Z軸方向において互いに重なるように配置されており、第2系統の組み合わせ(光源部2B及び光検出部3B)は、Z軸方向において互いに重なるように配置されている。
【0102】
一例として、一方の光源部2Aは、レンズ11Cの中心を通る光路と光源部2Aの光軸(光出射面2aの中心)とが一致するように配置される。また、他方の光源部2Bは、光源部2Aと同じ高さ位置において、光源部2Aに対してX軸方向に僅かにずれた位置に、光源部2Aと平行に配置される。光源部2A,2Bの発光点(光出射面2a,2bの各々の中心)は、レンズ11Cの焦点面に配置される。光源部2Aの光軸と光源部2Bの光軸とのX軸方向における離間幅は、例えば、0.5mm程度に設定される。光検出部3A,3Bについても、Z軸方向から見た場合の光検出部3A,3Bの位置関係がZ軸方向から見た場合の光源部2A,2Bの位置関係と同じになるように配置される。
【0103】
図11に示されるように、レンズ11Cとしては、第1実施形態のレンズ11よりも焦点距離が長く、レンズ径が大きいレンズが用いられる。例えば、レンズ11Cの焦点距離は5mmであり、レンズ11Cのレンズ径(直径)は15mmである。また、図12に示されるように、レンズ12Cも、レンズ11Cと同様に、第1実施形態のレンズ12よりも焦点距離が長く、レンズ径が大きいレンズが用いられる。例えば、レンズ12Cの焦点距離は5mmであり、レンズ12Cのレンズ径(直径)は15mmである。
【0104】
図11及び図12に示されるように、第1系統において光源部2Aの光出射面2aから出射されてレンズ11Cでコリメートされたレーザ光L1Aは、入射調整ミラー6で反射した後、Z軸方向から見た場合に入射角度θ1で平面ミラー41のミラー面41aの位置P1Aに入射し、ミラー面41a,42aの間で多重反射しながら後方(Y軸負方向)へと進む。また、ミラー部4で折り返されて前方(Y軸正方向)へと進むレーザ光L1A(折り返し光L2A)は、ミラー面41aの位置P3Aで最後に反射されて、出射導光ミラー7及びレンズ12Cを介して、光検出部3Aの光検出面3aに至る。
【0105】
一方、第2系統において光源部2Bの光出射面2bから出射されてレンズ11Cでコリメートされたレーザ光L1Bは、入射調整ミラー6で反射した後、Z軸方向から見た場合に入射角度θ1とは異なる入射角度θ2で平面ミラー41のミラー面41aの位置P1Bに入射し、ミラー面41a,42aの間で多重反射しながら後方(Y軸負方向)へと進む。また、ミラー部4で折り返されて前方(Y軸正方向)へと進むレーザ光L1B(折り返し光L2B)は、ミラー面41aの位置P3Bで最後に反射されて、出射導光ミラー7及びレンズ12Cを介して、光検出部3Bの光検出面3bに至る。
【0106】
レンズ11Cの焦点面に配置された光源からレンズ11Cの入射面11aに向けて出射されたレーザ光はコリメートされてレンズ11Cの中心を通る方向へと伝搬する。このため、図11に示されるように、Z軸方向から見た場合に、光源部2Bから出射されるレーザ光L1Bの光路は、光源部2Aから出射されるレーザ光L1Aの光路に対して、「tan-1(0.5mm/5mm)=5.7°」だけ傾斜している。このため、第1系統の入射角度θ1は、第2系統の入射角度θ2よりも5.7°だけ小さくなる。例えば、第1実施形態と同様に、距離d1を55mmとし、距離d2(図5参照)を150mmとし、傾斜角度αを0.3°とする場合について考える。また、例えば第2系統のレーザ光L1Bの光路が最長となるように(すなわち、第1実施形態における式(3)を満たすように)、入射角度θ2が調整される場合について考える。この場合、入射角度θ2は、第1実施形態のθと同様に9.6°と求められ、入射角度θ1は、3.9°となる。ここで、入射角度θ1,θ2はいずれも傾斜角度αの自然数倍となる。従って、第1系統の往路(図11に示されるレーザ光L1A)と復路(図12に示される折り返し光L2A)とは、Z軸方向から見た場合に一致している。同様に、第2系統の往路(図11に示されるレーザ光L1B)と復路(図12に示される折り返し光L2B)とは、Z軸方向から見た場合に一致している。
【0107】
分光測定装置1Cによれば、光源部2Aと光検出部3AとをZ軸方向に重ねて配置すると共に、光源部2Bと光検出部3BとをZ軸方向に重ねて配置することにより、2つの系統の光源部及び光検出部をコンパクトに配置することができる。また、第2実施形態と同様に、系統間で波長帯を異ならせることによって、互いに異なる2つの波長帯の吸収分光測定を同時に行うことができる。また、1つのレンズ11Cを複数の光源部2A,2Bで共有すると共に、1つのレンズ12Cを複数の光検出部3A,3Bで共有することができるため、複数系統の測定と同時に行う構成を実現しつつ、装置の小型化を図ることができる。
【0108】
なお、平面ミラー41,42間のレーザ光L1A,L1Bの光路長は、それぞれ入射角度θ1,θ2に依存する。上記例では、平面ミラー41,42間のレーザ光L1A,L1Bの光路長は、それぞれ1.4m,3.5mとなる。例えば、分光測定装置1Cを用いて、複数の波長帯のガスについての吸収分光測定を行う場合、吸収係数の大きいガスに対応する発振波長を持つ系統の光路を、光路長が短くなる方の光路に設定し、吸収係数の小さいガスに対応する発振波長を持つ系統の光路を、光路長が長くなる方の光路に設定してもよい。上記構成によれば、測定対象のガスの吸収係数に応じて各系統の光路長を適切に調整することができる。また、分光測定装置1Cでは、分光測定装置1Aよりも焦点距離の長いレンズ11Cを用いることになるが、このように焦点距離の長いレンズ11Cを用いることにより、長距離伝搬におけるビームの拡がりを抑制することができるため、図8に示したようなビーム拡がりに起因するビーム損失を抑制することができる。
【0109】
また、平面ミラー42の前端部42gは、Y軸方向において、平面ミラー41の位置P1Aと位置P1Bとの間に位置するように設定されればよい。これにより、一方の光路のレーザ光のビーム損失が極端に大きくなることを回避することができる。また、平面ミラー41の前端部41gと位置P1Aとの距離は、レーザ光L1Aが最初にミラー面42aで反射する位置P5と位置P1AとのY軸方向に沿った距離以上に設定されればよい。また、分光測定装置1Cは、分光測定装置1Bと同様に、3つ以上の光源部2及び光検出部3の組み合わせを有してもよい。
【0110】
[第4実施形態]
図13を参照して、第4実施形態の分光測定装置1Dについて説明する。分光測定装置1Dは、ミラー部4を気密に収容する筐体51を備える点において、分光測定装置1Aと相違している。分光測定装置1Dの他の構成は、分光測定装置1Aと同様である。図13は、分光測定装置1Dのうちミラー部4が収容される筐体51のみを図示している。図13の例では、筐体51は、支持部材8(図1参照)の支持面8a上においてミラー部4の周囲を取り囲むように立設された側壁(図13においてハッチングにより図示された部分)と、当該側壁の上端部を塞ぐように設けられた天壁(不図示)と、によって構成されている。つまり、筐体51は、支持面8a上において、ミラー部4のみを気密に取り囲んでいる。
【0111】
分光測定装置1Dにおいては、筐体51の側方に光源部2及び光検出部3が収容された筐体10が配置される。すなわち、光源部2及び光検出部3は、筐体51の外側に配置されている。本実施形態では、光源部2及び光検出部3を収容する筐体10と、入射調整ミラー6と、出射導光ミラー7とは、筐体51の外側において、分光測定装置1Aと同様に配置されている。
【0112】
筐体51の側壁には、筐体51の外側から筐体51の内側へと測定対象のガスを導入するためのガス導入口51b(開口部)が設けられている。また、筐体51の側壁には、筐体51の内部に充填されたガスを筐体51の外側に排気するためのガス排気口51cも設けられている。ガス導入口51b及びガス排気口51cの位置、形状及び大きさは特に限定されない。ガス導入口51b及びガス排気口51cは、筐体51の内部の圧力の維持、筐体51の内部のガスの置換を行う機能を有している。図13に示されるように、効率的なガスの置換を実現するためには、ガス導入口51b及びガス排気口51cは、筐体51の長手方向(Y軸方向)において互いに十分に離間するように、筐体51の長手方向の両側端部に近い位置にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0113】
また、筐体51の側壁のうち平面ミラー42に遮られることなくミラー面41aの位置P1と対向する部分には、入射調整ミラー6からミラー面41a(位置P1)へと導光されるレーザ光L1を透過させる光透過窓52が設けられている。光透過窓52は、例えば、CaF2、ZnSe等によって形成され得る。また、光透過窓52の内面(筐体51の内部を向く面)及び外面(筐体51の外側を向く面)には、第1実施形態の窓部材13,14と同様の低反射コーティングが施されてもよい。或いは、光透過窓52に対するレーザ光L1の入射角度がブリュースター角となるように調整することにより、低反射コーティングが省略されてもよい。同様に、筐体51の側壁のうち平面ミラー42に遮られることなくミラー面41aの位置P3(図1等参照)と対向する部分には、ミラー面41a(位置P3)で反射して出射導光ミラー7へと向かう折り返し光L2を透過させる光透過窓(不図示)も設けられている。この折り返し光L2を透過させるための光透過窓の構成は、上述した光透過窓52の構成と同様である。
【0114】
分光測定装置1Dによれば、ミラー部4のみを気密に収容する筐体51を設けることにより、当該筐体51の内部を減圧した上で、ガス導入口51bからガスを導入することによってより精密な測定を行うことが可能となる。より具体的には、筐体51の内部を減圧することにより、筐体51内に導入されたガスの吸収線が狭くなるため、干渉ガスの影響を回避して測定を行うことが可能となる。また、ミラー部4のみを筐体51で気密に収容することにより、位相敏感検波等の高精度な測定手法を適用することも容易となる。
【0115】
[第5実施形態]
図14及び図15を参照して、第5実施形態の分光測定装置1Eについて説明する。分光測定装置1Eは、光源部2、光検出部3、及びミラー部4を収容する筐体61を備える点において、分光測定装置1Aと相違している。本実施形態では、分光測定装置1Eの筐体61は、筐体61の底壁としての支持部材8(図1参照)と、支持部材8の支持面8aの周縁部に立設された側壁62と、側壁62の上端部を塞ぐ天壁63と、によって直方体状に形成されている。筐体61の内部に配置される筐体10(光源部2及び光検出部3)、ミラー部4、入射調整ミラー6、及び出射導光ミラー7の構成は、分光測定装置1Aと同様である。
【0116】
筐体61は、例えば、金属、プラスチック等の内部構造の保護と形状の維持が可能な材料によって形成され得る。本実施形態では、筐体61の底壁が、各構成部材を支持するベース部材(支持部材8)を兼ねているが、支持部材8は、筐体61の底壁とは別部材として構成されてもよい。その場合、支持部材8は、例えば、筐体61の底壁上に固定されてもよい。
【0117】
筐体61には、筐体61の外側から筐体61の内側へと測定対象のガスを導入するための通気口61a,61b(開口部)が設けられている。本実施形態では、一例として、2つの通気口61a,61bが、側壁62のうち互いに対向する壁部(本実施形態では、Y軸方向に対向する壁部)の各々に設けられている。ただし、筐体61に設けられる通気口の数、位置、大きさ及び形状は、上記例に限定されない。通気口の数、位置、大きさ及び形状は、筐体61の強度を著しく損なわない範囲で、任意に設計され得る。例えば、1つの通気口が天壁63に設けられてもよい。また、筐体61の通気口61a,61b以外の部分は、気密性を有することが好ましい。また、筐体61は、筐体61の内部のガスを置換するための排気又は吸気用のファン等を備えていてもよい。また、通気口61a,61bには、外部からの埃等が筐体61の内部に入り込むことを防止するための防塵フィルタが設けられてもよい。
【0118】
分光測定装置1Eによれば、光源部2、光検出部3、及びミラー部4を1つの筐体61内に収めることにより、分光測定装置1Eを構成する各部材を、外部からの汚染、機械的衝撃等から適切に保護することができる。
【0119】
[第6実施形態]
図16を参照して、第6実施形態の分光測定装置1Fについて説明する。分光測定装置1Fは、光源部2の代わりに光源部2Fを備え、入射調整ミラー6の代わりに回折格子6Fを備える点において、分光測定装置1Aと相違している。
【0120】
光源部2Fは、波長λon(第1波長)のレーザ光Lonと、波長λonとは異なる波長λoff(第2波長)のレーザ光Loffと、を出射可能に構成されている。平面ミラー41,42間に導入される測定対象のガスにレーザ光Lonが吸収される度合いは、当該ガスにレーザ光Loffが吸収される度合いよりも高い。例えば、波長λonは、測定対象のガスに吸収される波長(例えば、当該ガスの吸収帯に対応する波長)であり、波長λoffは、測定対象のガスへの吸収が波長λonよりも小さい波長(例えば、当該ガスの吸収帯から外れた波長)である。光源部2Fは、例えば、光源部2と同様の分布帰還型の量子カスケードレーザ素子(DFB-QCL)によって構成され得る。光源部2Fは、光源部2Fに対する電流注入量を変化させることにより、少なくとも波長λon及び波長λoffを含む波長範囲で波長掃引可能に構成されている。このように、本実施形態では、光源部2Fは、単一の量子カスケードレーザ素子(本実施形態では、DFB-QCL)から出射される光に基づいて、レーザ光Lonとレーザ光Loffとを切り替えて出射可能に構成されている。すなわち、分光測定装置1Fは、光源として複数のレーザ素子を必要とせず、単一のレーザ素子(本実施形態では光源部2F)から出射される光の波長を制御することにより、レーザ光Lonとレーザ光Loffとを切り替えて出射する構成を実現している。
【0121】
回折格子6Fは、反射型の回折格子である。回折格子6Fにおけるレーザ光Lon,Loffの入射面は、例えばブレーズドグレーティング等のグレーティング構造が形成された回折格子面である。回折格子6Fで反射されて平面ミラー41に向かうレーザ光の進行方向(すなわち、平面ミラー41のミラー面41aに対する入射角度θ)は、回折格子6Fに入射するレーザ光の波長によって変化する。例えば、波長λonと波長λoffとの間で波長掃引を行った場合には、入射角度θは、波長λonのレーザ光Lonの入射角度θonと波長λoffのレーザ光Loffの入射角度θoffとの間で連続的に変化する。ここで、入射角度θon及び入射角度θoffは、傾斜角度αの自然数倍である条件を満たすように設定され、それ以外の角度(すなわち、入射角度θonと入射角度θoffとの間の角度)は、上記条件を満たさないように設定されることが好ましい。このような構成によれば、波長λonと波長λoffとの間で波長掃引して光検出部3による折り返し光L2の検出を行った場合に、波長λon及び波長λoffの各々に対応する検出結果を容易に観測することが可能となる。より具体的には、波長λon及び波長λoff以外の波長のレーザ光に対応する信号は光検出部3によって検出されない(検出されたとしても僅かである)ため、波長λon及び波長λoffに対応する2つのピーク値を観測することができる。その結果、2つのピーク値の差分に基づく分析(後述する差分吸収分光法)を容易に行うことができる。
【0122】
分光測定装置1Fによれば、差分吸収分光法(例えば、差分吸収ライダー(DIAL:Differential Absorption Lidar)等)によるガス濃度の測定を実施することが可能となる。例えば、上述したように波長λonと波長λoffとの間で波長掃引を行うことでレーザ光Lonとレーザ光Loffとを交互に切り替えて出射し、各信号(光検出部3に検出されるピーク信号)の差(すなわち、波長λonについての吸収量と波長λoffについての吸収量との差)を解析することにより、平面ミラー41,42間に導入された測定対象のガス分子の濃度分布を精度良く測定することが可能となる。すなわち、波長λoffに対応する測定値を基準値として用いて波長λonに対応する測定値をキャリブレーションすることにより、環境由来のゆらぎ(ノイズ)を排除することができ、ガス分子の濃度分布を高精度に行うことが可能となる。上記のノイズの例としては、光源部2Fのぶれ、平面ミラー41,42の表面(ミラー面41a,42a)の汚れ、光源部2Fから光検出部3までの光路のアライメントのずれ、測定対象のガス以外の気体による吸収の影響等が挙げられる。すなわち、波長λonに対応する測定値に対して波長λoffに対応する測定値によるキャリブレーションを随時行うことができるため、計測環境の大気の影響等によるノイズをキャンセルして高精度の計測を行うことができる。また、回折格子として、後述する分光測定装置1Hの可動回折格子6Hのような可動部材ではなく、角度が固定された回折格子6Fを用いることにより、機械的強度の高い安定した構成を実現できる。
【0123】
また、DFB-QCLは掃引幅が比較的狭いため、波長λon及び波長λoffは比較的近い値となる。このため、入射角度θonと入射角度θoffとの差は比較的小さくなり、平面ミラー41,42間におけるレーザ光Lonの光路長とレーザ光Loffの光路長とのずれ(差)も比較的小さくなる。従って、光源部2FとしてDFB-QCLを用いて波長λonと波長λoffとの間の波長掃引を行うことにより、上述した差分吸収分光法による測定を高精度に実施することが可能となる。
【0124】
[第7実施形態]
図17を参照して、第6実施形態の分光測定装置1Gについて説明する。分光測定装置1Gは、単一の量子カスケードレーザ素子2G(以下、「QCL素子2G」)と、回折格子21と、によって構成された光源部20Gを備える点において、分光測定装置1Aと相違している。分光測定装置1Gも、分光測定装置1Fと同様に、光源として複数のレーザ素子を必要とせず、単一のレーザ素子(本実施形態ではQCL素子2G)から出射される光の波長を制御することにより、レーザ光Lonとレーザ光Loffとを切り替えて出射する構成を実現している。
【0125】
光源部20Gは、光源部2Fと同様に、波長λonのレーザ光Lonと波長λoffのレーザ光Loffとを出射可能に構成されている。上述した分光測定装置1Fは、QCL素子単体で波長掃引可能なDFB-QCLを光源部2Fとして備えることにより、レーザ光Lon,Loffを切替可能な構成を実現していた。これに対して、分光測定装置1Gは、QCL素子2Gと回折格子21とによって構成される外部共振型量子カスケードレーザ(EC-QCL:External Cavity Quantum Cascade Laser)を光源部20Gとして備えることにより、レーザ光Lon,Loffを切替可能な構成を実現している。
【0126】
QCL素子2Gは、入射調整ミラー6に対向する端面2Gaと、端面2Gaとは反対側の端面2Gbと、を有する。また、回折格子21は、QCL素子2Gと共に筐体10内に収容され、端面2Gbに対向する位置に配置されている。回折格子21は、回折格子6Fと同様の反射型の回折格子である。すなわち、端面2Gbに対向する回折格子21の表面は、例えばブレーズドグレーティング等のグレーティング構造が形成された回折格子面である。
【0127】
端面2Gbから出射された光は、回折格子21に入射し、回折及び反射されることにより、端面2Gbに帰還する。これにより、QCL素子2Gの端面2Gaと回折格子21との間で、リトロー型の外部共振器が構成される。QCL素子2Gに対する回折格子21の角度(傾斜)を変化させることにより、回折格子21からQCL素子2Gへと帰還する光の波長を変化させることができる。これにより、端面2Gaから入射調整ミラー6へと出射される出力光(すなわち、共振によって増幅する光)の波長を変化させることができる。
【0128】
分光測定装置1Gによれば、上述した分光測定装置1Fと同様の効果が奏される。また、分光測定装置1Gでは、回折格子6Fではなく入射調整ミラー6が用いられている。このため、分光測定装置1Gでは、レーザ光Lon,Loff間の光路長差は生じない。すなわち、レーザ光Lon,Loffは、同じ方向で入射調整ミラー6に入射し、同じ角度で反射されるため、レーザ光Lonの入射角度θonは、レーザ光Loffの入射角度θoffと一致する。このため、分光測定装置1Gでは、平面ミラー41,42間におけるレーザ光Lonの光路長は、レーザ光Loffの光路長と一致する。従って、分光測定装置1Gによれば、分光測定装置1Fのような回折格子6Fを用いる場合よりも、上述した差分吸収分光法による測定をより高精度に実施することが可能となる。
【0129】
なお、分光測定装置1Fにおいて、回折格子6Fの代わりに入射調整ミラー6が用いられてもよい。また、分光測定装置1Gにおいて、入射調整ミラー6の代わりに回折格子6Fが用いられてもよい。上述したとおり、回折格子6Fを用いた場合には、入射角度θon,θoffのみが傾斜角度αの自然数倍となるように調整することにより、波長λon及びλoffの各々に対応する結果(2つのピーク値)を観測することができるというメリットが得られる。一方、入射調整ミラー6を用いた場合には、レーザ光Lon,Loffの光路長を一致させることができるため、差分吸収分光法による測定をより高精度に実施することができるというメリットが得られる。より具体的には、光源として連続的に波長を掃引するDFB-QCLを用いる分光測定装置1Fで入射調整ミラー6を用いた場合には、狙いの2波長λon,λoff以外の波長の光についても光検出部3で検出されてしまうというデメリットが生じるが、回折格子6Fを用いることにより、このようなデメリットを回避し、2つのピーク値のみを観測することが可能となる。一方、光源としてEC-QCLを用いる分光測定装置1Gでは、光源(EC-QCL)側で2波長λon,λoffを適切に選択できることから、上述したように分光測定装置1Fにおいて入射調整ミラー6を用いる場合のデメリット(すなわち、狙いの2波長λon,λoff以外の波長の光についても光検出部3で検出されてしまうこと)は生じない。すなわち、分光測定装置1Gによれば、EC-QCLを用いることによって、入射調整ミラー6を用いることによる上記デメリットを回避しつつ、上記メリット(すなわち、レーザ光Lon,Loffの光路長を一致させることによる測定精度の向上)を得ることができる。
【0130】
[第8実施形態]
図18を参照して、第8実施形態の分光測定装置1Hについて説明する。分光測定装置1Hは、単一の量子カスケードレーザ素子2H(以下、「QCL素子2H」)と、可動回折格子6Hと、によって構成された光源部20Hを備える点において、分光測定装置1Aと相違している。可動回折格子6Hは、QCL素子2Hとの外部共振器を構成すると共に、QCL素子2Hから出射されたレーザ光を平面ミラー41のミラー面41aへと導く役割(すなわち、入射調整ミラー6の役割)を有している。すなわち、分光測定装置1Hは、入射調整ミラー6の代わりに可動回折格子6Hを備えている点においても、分光測定装置1Aと相違している。
【0131】
光源部20Hは、光源部2Fと同様に、波長λonのレーザ光Lonと波長λoffのレーザ光Loffとを出射可能に構成されている。分光測定装置1Hは、分光測定装置1Gと同様に、QCL素子2Hと可動回折格子6Hとによって構成される外部共振型量子カスケードレーザ(EC-QCL:External Cavity Quantum Cascade Laser)を光源部20Hとして備えることにより、レーザ光Lon,Loffを切替可能な構成を実現している。ただし、分光測定装置1Gが、入射調整ミラー6とは別の回折格子21を筐体10内に備えていたのに対して、分光測定装置1Hは、入射調整ミラー6の役割を兼ねる可動回折格子6Hを筐体10の外側(すなわち、入射調整ミラー6に対応する位置)に備えている。
【0132】
QCL素子2Hは、可動回折格子6Hに対向する端面2Haと、端面2Haとは反対側の端面2Hbと、を有する。また、可動回折格子6Hは、端面2Haに対向する位置(すなわち、分光測定装置1Aにおける入射調整ミラー6に対応する位置)に配置されている。可動回折格子6Hは、回折格子21と同様の反射型の回折格子であるが、Z軸周りに回動することによって、端面2Haから出射されたレーザ光の可動回折格子6Hの表面(回折格子面)に対する入射角度が可変に構成されている点において、回折格子21と相違している。
【0133】
端面2Haから出射された光は、可動回折格子6Hに入射し、回折及び反射されることにより、端面2Haに帰還する。これにより、QCL素子2Hの端面2Hbと可動回折格子6Hとの間で、リトロー型の外部共振器が構成される。上述したように、QCL素子2Hに対する可動回折格子6Hの角度(傾斜)を変化させることにより、可動回折格子6HからQCL素子2Hへと帰還する光の波長が変化する。これにより、端面2Haから出射される出力光(すなわち、共振によって増幅する光)の波長を変化させることができる。また、端面2Haから出射されて可動回折格子6Hに入射した光の一部は、0次光として、可動回折格子6Hの表面でミラー反射し、平面ミラー41のミラー面41aへと向かう。分光測定装置1Hでは、このような0次光が、レーザ光Lon,Loffに相当する。言い換えれば、分光測定装置1Hは、このような0次光を利用することにより、差分吸収分光法による測定を実施可能に構成されている。
【0134】
分光測定装置1Hにおいては、波長掃引を行うために可動回折格子6Hの角度が変化する。このため、分光測定装置1Hでは、分光測定装置1Fと同様に、レーザ光Lonの入射角度θonは、レーザ光Loffの入射角度θoffと相違する。よって、分光測定装置1Hにおいても、分光測定装置1Fと同様に、入射角度θon及び入射角度θoffは、傾斜角度αの自然数倍である条件を満たすように設定され、それ以外の角度(すなわち、入射角度θonと入射角度θoffとの間の角度)は、上記条件を満たさないように設定されることが好ましい。上記構成によれば、分光測定装置1Fと同様に、波長λonと波長λoffとの間で波長掃引して光検出部3による折り返し光L2の検出を行った場合に、波長λon及び波長λoffの各々に対応する2つのピーク値を観測することが可能となる。
【0135】
分光測定装置1Hによれば、上述した分光測定装置1Fと同様の効果が奏される。また、分光測定装置1Hでは、入射調整ミラー6の代わりに用いられる可動回折格子6HをQCL素子2Hとの外部共振器として機能させることができるため、分光測定装置1Gにおける回折格子21が不要となる。これにより、部品点数を削減すると共にパッケージ(筐体10)の小型化を図ることができる。
【0136】
[変形例]
以上、本開示のいくつかの実施形態及びいくつかの変形例について説明したが、本開示は、上記の各実施形態及び各変形例で示した構成に限られない。各構成の材料及び形状には、上述した具体的な材料及び形状に限らず、上述した以外の様々な材料及び形状を採用することができる。また、上記の各実施形態及び各変形例に含まれる一部の構成は、適宜省略又は変更されてもよいし、任意に組み合わせることが可能である。例えば、形成される光路に関する実施形態(第1~第3、及び第6~第8実施形態)と分光測定装置の収容形態に関する実施形態(第4及び第5実施形態)と組み合わせることができる。また、第4実施形態と第5実施形態とを組み合わせることもできる。すなわち、ミラー部4は、筐体61内に配置された筐体51に収容されてもよい。
【0137】
また、光源部2と光検出部3の位置関係は逆でもよい。すなわち、上記実施形態では、光源部2が光検出部3よりも上方に配置されたが、光検出部3が光源部2よりも上方に配置されてもよい。この場合、入射調整ミラー6と出射導光ミラー7の位置関係も逆となる。また、入射角度θの符号(向き)が逆になり、往路OP1が復路OP2よりも上方に位置することになる。
【0138】
また、入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7は、省略されてもよい。ただし、その場合には、位置P1に対して入射角度θ及びθでレーザ光L1が入射するように光源部2の位置及び向きを高精度に調整する必要が生じる。同様に、位置P2で反射した折り返し光L2が光検出面3aに入射するように光検出部3の位置及び向きを精度良く調整する必要が生じる。入射調整ミラー6及び出射導光ミラー7を用いることにより、本実施形態のように、光源部2及び光検出部3の向きを単純にY軸方向に平行に配置するだけでよくなる。また、光源部2及び光検出部3(本実施形態ではこれらを収容する筐体10)をミラー部4の側方にコンパクトに配置することが可能となる。
【0139】
また、光源部2は、量子カスケードレーザ素子に限られず、光検出部3は、量子カスケード光検出器に限られない。また、光源部2から出射されるレーザ光L1も中赤外光に限られない。例えば、レーザ光L1の波長帯は可視光領域であってもよい。また、光源部2から出射されるレーザ光L1の拡がり角が比較的小さい場合等には、レンズ11,12は省略されてもよい。
【0140】
また、入射角度θは、必ずしも上記式(3)を満たす必要はない。例えば、上記実施形態で述べたように、中赤外光であるレーザ光L1は、可視光、近赤外光と比較して波長が長いため、平面ミラー41,42間の多重反射を利用したレーザ光L1の長距離伝搬に伴って、レーザ光L1のビーム径が拡がり易い。このため、折り返しの位置P2を後端部41hに近づけ過ぎると、ビーム径が拡がったレーザ光L1の一部が後端部41hよりも後方にはみ出してしまい、レーザ光L1の損失が生じ得る。このようなレーザ光L1の損失を抑制するために、入射角度θを、あえて上記式(3)を満たす角度よりも小さい角度に設定してもよい。
【0141】
また、入射角度θは、必ずしも傾斜角度αの自然数倍に設定されなくてもよい。すなわち、往路OP1と復路OP2とは、Z軸方向から見た場合に、必ずしも完全に一致する(重なる)必要はない。この場合、Z軸方向から見た場合に、折り返し光L2の光路が折り返し前のレーザ光L1の光路と一致しないが、このような場合でも、例えば出射導光ミラー7の位置及び角度を調整することによって、折り返し光L2を光検出部3へと導くことができる。ただし、往路OP1と復路OP2とがZ軸方向に重なるように設計することにより、光学系(入射調整ミラー6、出射導光ミラー7等)の配置設計が容易になると共に、上記実施形態のように入射調整ミラー6と出射導光ミラー7とをZ軸方向に重ねてコンパクトに配置することが容易になるというメリットが得られる。
【0142】
また、分光測定装置が備える光学系は、上記実施形態に示したものに限られない。例えば、レーザ光L1の平面ミラー41,42間を除く光路上の任意の位置に、レーザ光L1のビーム拡がりを抑制するためのコリメートレンズが配置されてもよい。
【0143】
また、第2実施形態及び第3実施形態において、光源部2A,2Bが出射するレーザ光L1A,L1Bの波長(第1波長及び第2波長)は、第6~第8実施形態における波長λon及び波長λoffに設定されてもよい。この場合、第2実施形態及び第3実施形態において、光検出部3Aにより検出される信号と光検出部3Bにより検出される信号との差分に基づいて、第6~第8実施形態で説明したような差分吸収分光法によるガス濃度の測定を実施することができる。
【0144】
また、上記の各実施形態及び各変形例では、2つの平面ミラー41,42間に導入されるガス(気体)が測定対象物とされたが、測定対象物はガスに限定されない。測定対象物は、2つの平面ミラー41,42間におけるレーザ光の光路上に配置されればよく、固体であってもよいし、液体(例えば、光を透過させる容器内に格納された液体等)であってもよい。
【0145】
図19は、固体の試料Sを測定対象物として用いる場合の分光測定装置1Aの構成例を示す図である。図19の例では、試料Sは、薄膜状の物質であり、平面ミラー41,42のミラー面41a,42a上に固着されている。図19に示されるように、レーザ光が平面ミラー41,42間を多重反射して往復する方向(Y軸方向)に沿って所定幅を有するように試料Sを配置することにより、レーザ光が試料Sを透過する距離を確保することができる。なお、試料Sは、ミラー面41a,42aのいずれか一方のみに設けられてもよいが、ミラー面41a,42aの両方に試料Sを配置することにより、レーザ光が試料Sを透過する距離をより好適に確保することができる。また、試料Sは、必ずしもミラー面41a,42aに固着されなくてもよい。例えば、レーザ光を透過させる透光性部材が平面ミラー41,42間に配置され、当該透光性部材の表面に試料Sが固着されてもよい。ただし、図19の例のように、ミラー面41a,42aを試料Sを固着するための部材として利用することにより、上記透光性部材を省略できるため、測定に必要となる装置構成の簡略化と部品点数の削減を図ることができる。
【0146】
また、上記の各実施形態及び各変形例では、複数の波長についての吸収分光測定を実施するように構成された光測定装置(分光測定装置1A~1H)について説明したが、本開示の光測定装置は、単一波長の測定(例えば、特定の波長についての吸光度測定)に用いられてもよい。例えば、ある物質について、テラヘルツ波(例えば、0.1THz~0.3THzの範囲に含まれる波長の光)に対する透過性を把握したいというニーズが存在し得る。このような場合、光源部は、テラヘルツ領域に含まれる特定の単一波長の光を出射するように波長が固定された光源として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0147】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H…分光測定装置(光測定装置)、2,2F,20G,20H…光源部、2A…光源部(第1光源部)、2B…光源部(第2光源部)、2G,2H…量子カスケードレーザ素子、3…光検出部、3A…光検出部(第1光検出部)、3B…光検出部(第2光検出部)、4…ミラー部、6…入射調整ミラー(第1導光ミラー)、7…出射導光ミラー(第2導光ミラー)、11…レンズ、41…平面ミラー(第1平面ミラー)、41a…ミラー面(第1ミラー面)、42…平面ミラー(第2平面ミラー)、42a…ミラー面(第2ミラー面)、51b…ガス導入口(開口部)、D1…偏光方向、L1,L1A,L1B,Lon,Loff…レーザ光、L2,L2A,L2B…折り返し光(レーザ光)、OP…光路、OP1…往路、OP2…復路、S…試料(測定対象物)、α…傾斜角度、θ…入射角度、θ…入射角度、θ1,θ2…入射角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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