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特開2024-32677ゲート誘電体を改良したSICを基礎とする電子装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032677
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ゲート誘電体を改良したSICを基礎とする電子装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240305BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240305BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240305BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240305BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/86 301D
H01L29/86 301F
H01L29/78 658F
H01L29/86 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135813
(22)【出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】102022000017730
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】パトリク フィオレンツァ
(72)【発明者】
【氏名】ファブリヅィオ ロッカフォルテ
(72)【発明者】
【氏名】エドアルド ザネッティ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジウセッペ サッジーオ
(57)【要約】
【課題】 従来技術の欠点を解消した電子装置及びその製造方法を提供する
【解決手段】 電子装置(20,60)は、第1方向(Z)に沿って互いに反対側の第1面(48a,68a)と第2面(48b、68b)とを有しており特にシリコンカーバイドSiCからなる半導体ボディ(48,68)、及び電気的絶縁領域(52,80)によって該半導体ボディ(48,68)から絶縁されている該第1面(48b、68b)における電気的端子(G;82,74)を有している。該電気的絶縁領域は多層であり、該半導体ボディと接触しているシリコン酸化物からなる第1絶縁層(102)と、該第1絶縁層(102)上のハフニウム酸化物からなる第2絶縁層(104)と、該第2絶縁層(104)上のアルミニウム酸化物からなる第3絶縁層(106)とを包含している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置(20,60)において、
第1方向(Z)に沿って互いに反対側の第1面(48a,68a)及び第2面(48b,68b)を有しており特にシリコンカーバイドからなる半導体ボディ(48,68)、
導電層(53)と電気的絶縁領域(52,80)とを包含しており該電気的絶縁領域が(52,80)が該半導体ボディ(48,68)と該導電層(53)との間に延在している該第1面(48b,68b)における電気的端子(G;82,74)、
を有しており、前記電気的絶縁領域(52,80)が多層であって、
該半導体ボディと接触しており、第1バンドギャップ値及び第1厚さを有しており、該半導体ボディ(48,68)から来る電荷キャリアによって使用中にトンネル効果によって横断される構成とされている第1絶縁層(102)と、
該第1バンドギャップ値よりも一層低い第2バンドギャップ値及び該第1厚さよりも一層大きな第2厚さを有しており、前記電荷キャリアに対しての電位井戸を形成する構成とされている前記第1絶縁層(102)上の第2絶縁層(104)と、
該第1及び第2バンドギャップ値の間の第3バンドギャップ値及び該第2厚さよりも一層大きな第3厚さを有している該第2絶縁層(104)上の第3絶縁層(106)と、
を包含している電子装置。
【請求項2】
該第1絶縁層(102)が0.5nmと1nmとの間の厚さを有しており、
該第2絶縁層(104)が1.5nmと2.5nmとの間の厚さを有しており、
該第3絶縁層(106)が10nmと100nmとの間の厚さを有している、
請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
該第1絶縁層(102)がSiN、SiOAlNの内の一つからなり、
該第2絶縁層(104)がHfOHfSiOZrO2,ZrSiO内の一つからなり、
該第3絶縁層(106)がアルミニウム酸化物とハフニウム酸化物からなる2個又はそれ以上の交番する層を包含している、
請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
該第3絶縁層(106)が、Al23びHfO2個又はそれ以上の交番する層、又はAlSiOびHfSiO2個又はそれ以上の交番する層を包含している請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
使用中に電流を収容する構成とされている前記半導体ボディ(48,68)におけるチャンネル領域(38,36;69,70)を更に包含しており、前記電気的絶縁領域(52,80)が前記チャンネル領域において延在している先行する請求項の内の何れか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
正の界面電荷を画定する前記第1面(48a,68a)において正の電荷キャリアを有しており、前記電気的絶縁領域(52,80)が、前記正の界面電荷を少なくとも部分的に平衡させるように負の電荷を発生させる電子のトラップ状態を有するような態様で構成されている請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子装置が表面端子(S,26,59)とドレイン端子(D,27)とを有するMOSFETであって、
前記電気的端子が該MOSFETのゲート端子(G,53)であって、該導電層がゲートメタリゼーション(53)であり、且つ該電気的絶縁領域(52)が、全体として、ゲート誘電体を形成している、先行する請求項の内のいずれか1項に記載の電子装置(20)
【請求項8】
前記電子装置がダイオードであり且つ
該半導体ボディ(68)の第2面(68b)を延在しているカソード端子(72)と、
該第1面(68a)から該第2面(68b)へ向かって延在している少なくとも1個のトレンチ(73)であって、前記電気的絶縁領域(80)が前記トレンチ(73)内に延在している該トレンチと、
を包含しており、
前記電気的端子が該ダイオードのアノード端子(82)を形成しており且つ前記トレンチ(73)内に延在する一部(82)を有している金属層を包含しており、
前記電気的絶縁層領域(80)が該アノード端子(74)の前記一部(82)と該半導体ボディ(68)との間に延在している、
請求項1乃至6の内の何れかの1項に記載の電子装置(60)。
【請求項9】
該ダイオードが、該アノード端子(74)と前記トレンチ(73)に対して横方向の該半導体ボディ(68)との間の電気的コンタクト領域によって形成されている少なくとも1個の金属-半導体接合を有しているショットキーダイオードである請求項8に記載の電子装置(60)。
【請求項10】
電子装置(20,60)を製造する方法において、
第1方向(Z)に沿って互いに反対側の第1面(48a,68a)及び第2面(48b,68b)を有しており特にシリコンカーバイドからなる半導体ボディ(48,68)を提供するステップ、
導電層(53)及び該導電層(53)と該半導体ボディ(48,68)との間の電気的絶縁領域(52,80)を形成することを包含している該第1面(48b,68b)に電気的端子(G;82,74)を形成するステップであって、該電気的端子(G;82,74)を該半導体ボディ(48,68)から電気的に絶縁させる構成とさせる該電気的端子を形成するステップ、
を包含しており、前記電気的絶縁領域(52,80)を形成する該ステップが、
第1バンドギャップ値及び第1厚さを有しており該半導体ボディ(48,68)から来る電荷キャリアによって使用中にトンネル効果によって横断される構成とされている第1絶縁層(102)を該半導体ボディと接触して形成すること、
該第1バンドギャップ値よりも一層低い第2バンドギャップ値及び該第1厚さよりも一層大きな第2厚さを有しており前記電荷キャリアに対する電位井戸を形成する構成とされている第2絶縁層(104)を該第1絶縁層(102)上に形成すること、及び
該第1及び第2バンドギャップ値の間の第3バンドギャップ値及び該第2厚さよりも一層大きな第3厚さを有している第3絶縁層(106)を該第2絶縁層(104)上に形成すること、
を包含して多層を形成することを包含している方法。
【請求項11】
該第1絶縁層(102)が0.5nmと1nmとの間の厚さを有しており、
該第2絶縁層(104)が1.5nmと2.5nmとの間の厚さを有しており、
該第3絶縁層(106)が10nmと100nmとの間の厚さを有している、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該第1絶縁層(102)がSiN、SiOAlNの内の一つからなり、
該第2絶縁層(104)がHfOHfSiOZrOZrSiO内の一つからなり、
該第3絶縁層(106)がアルミニウム酸化物とハフニウム酸化物の2個又はそれ以上の交番する層を包含している、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
該第3絶縁層(106)が、Al23びHfO2個又はそれ以上の交番する層、又はAlSiOびHfSiO2個又はそれ以上の交番する層、を包含している請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該第2及び第3絶縁層(104,106)を形成することがALD技術による夫々の付着を実施することを包含している請求項10乃至13の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
使用中に電流を収容する構成とされたチャンネル領域(38,36;69,70)を前記半導体ボディ(48;68)内に更に有しており、
前記電気的絶縁領域(52,80)が前記チャンネル領域に形成される、
請求項10乃至14の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記電子装置がMOSFETであって、
該製造ステップが、該MOSFETのソース端子(S、26,59)及びドレイン端子(D,27)を形成することを更に包含しており、
前記電気的端子が該MOSFETのゲート端子(G,53)であり、該導電層(53)がゲートメタリゼーション(53)であり、且つ該電気的絶縁領域(52)が、全体として、ゲート誘電体を形成している、
請求項10乃至15の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記電子装置がダイオードであって、該製造ステップが、更に、
該半導体ボディ(68)の第2面(68b)に延在するカソード端子(72)を形成すること、
該第1面(68a)から該第2面(68b)へ延在する少なくとも1個のトレンチ(73)であって前記電気的絶縁領域(80)が前記トレンチ(73)内に延在している該トレンチ(73)を形成すること、
を包含しており、
前記電気的端子が該ダイオードのアノード端子(74)であり且つ前記トレンチ(73)内に延在する一部(82)を有している金属層を包含しており、
前記電気的絶縁領域(80)が該アノード端子(74)の前記一部(82)と該半導体ボディ(68)との間に延在している、
請求項10乃至16の内のいずれか1項に記載の方法(60)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、特にパワーMOSFET及びショットキーダイオード、及び該電子装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既知の如く、ワイドバンドギャップを有している半導体物質、特にバンドギャップの高い値と、低オン状態抵抗(RONと、熱伝導率の高い値と、高い動作周波数と、電荷キャリアの高い飽和速度とを有している半導体物質は、特に電気的適用例において、ダイオード又はトランジスタ等の電子部品を製造するために理想的である。この様な特性を有しており且つ電子部品を製造するために使用されるべく適合されている物質は、シリコンカーバイド(SiC)である。特に、シリコンカーバイドは、その異なるポリタイプ(例えば、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiC)において、上述した特性に関してシリコンより好適である。
【0003】
シリコンカーバイドで提供される電子装置は、シリコン基板で提供される同様の装置と比較して、導通における低い出力抵抗や、低い漏洩電流や、高い動作周波数等の更なる利点を有している。特に、SiCショットキーダイオードは一層高いスイッチング性能を示しており、SiC電子装置を特に高周波数適用例に好適なものとしている。
【0004】
多数の科学論文でもシリコンカーバイド(SiC)MOSFET装置の良好なスイッチング性能を報告している。産業的観点からは、スイッチング性能に加えて、SiCMOSFET装置は、良好な構造的堅牢性も有しており、そのことはパワーシステムにおいて望ましい特性である。
【0005】
SiC(特に、4H-SiC)MOSFET装置における関連する構造要素は、ゲート誘電体(又は酸化物)である。ゲート誘電体の特性(誘電率、固定電荷等)及び誘電体/SiC界面品質(界面状態密度Dit近界面酸化物トラップ(near interface oxide traps)NIOT)は、電界効果チャンネル移動度μFEオン状態抵抗、及びスレッシュホールド電圧VthのMOSFETの重要なパラメータについて顕著な影響を有している。したがって、SiCMOSFETの性能を十分に利用するためには、ゲート誘電体の最適化は前提条件である。
【0006】
更に、MOSFETを設計する場合に、オン状態抵抗が減少する場合のVth不所望な低下を解消するための解決手段を見出すべきである。特に、低オン状態抵抗を維持しながらVth増加させる解決手段が望ましい。
【0007】
シリコン酸化物(SiOは、SiCの熱酸化による製造の容易性に起因して、ゲート誘電体として市販のSiCMOSFETにおいて一般的に使用されている。しかしながら、SiCの酸化率はシリコンの酸化率よりも一層低いし、且つ界面状態密度は、SiOSi積層体のものよりも約2乃至3桁一層高い。界面状態密度Dit減少させ且つSiOゲート誘電体として使用する4H-SiCMOSFETのチャンネル移動度μFE改善させるために、窒素(N、NO)が豊富な環境において、酸化後アニーリング(POA)又は付着後アニーリング(PDA)の工程が典型的に実施される。しかしながら、SiCの熱酸化、及びPOA及びPDAプロセスは、典型的に、高い温度(1100℃を越える)と長いアニーリング時間(幾つかの場合には、最大で8時間)を必要とする。更に、これらの処理全ては、NO又はNでの高温アニーリング期間中に発生する不可避的な界面再結晶化の結果としてSiOSiC界面において「無秩序」領域の形成となる。この無秩序界面は、チャンネル移動度及びスレッシュホールド電圧(Vthの両方に悪影響を有しているSiOCの非化学量論欠陥の存在によって特性付けられる。
【0008】
更に、4H-SiCと比較してSiO誘電率が低いために、高電圧動作条件下において、SiO側の電界はSiCのものよりも約2.5倍一層高い。従って、電界が4H-SiCの臨界電界(約3乃至4MV/cm)に到達すると、ガウスの法則によれば、SiOート誘電体は約2.3倍一層大きな電界、即ち約7乃至9MV/cmに露呈されることとなる。従って、そのSiO電体は、高ストレス及び貧信頼性条件下にさらされることとなる。
【0009】
本発明者等に既知の一つの解決法によれば、SiC酸化のために必要なサーマルバジェットを減少させるために、CVDによって付着させたSiOをSiOOSFETにおけるゲート絶縁体として使用する場合がある。
【0010】
本発明者等に既知の一つの解決法によれば、ゲート絶縁体における電界を弱めるために高誘電率の誘電体(Al23HfOLa23)が提案されている。しかしながら、このプロセスにおいては、界面においてSiOが形成されて、MOSCAP(金属酸化物半導体キャパシタ)において電圧VFBフラットバンド電圧)の不安定性を発生させる場合がある炭素関連欠陥(空格子、格子間原子、C-C二量体、炭素クラスター、等)を形成することとなる場合がある。
【0011】
本発明者等に既知の一つの解決法によれば、SiCMOSFETにおけるVthを調節するためにゲート絶縁体としてAl23が提案されている。特に、SiCMOSFETにおけるオン状態におけるVthを増加させるために、高k絶縁体(「高k」物質として知られている)を使用することが可能である。しかしながら、高k誘電体の組込は、SiC装置におけるコンタクトを形成するために必要とされるサーマルバジェット(>800℃)においての結晶化現象に影響されやすいことによって制限されている。更に、誘電率が増加すると絶縁体のバンドギャップが減少し、その結果、単純な高kの選択は、通常、SiCとの小さなバンドオフセットを発生し、その結果、高漏洩電流を発生させることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、上述した問題に対する解決策を提供することの必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、特許請求の範囲に定義されるように、電子装置及びその製造方法が提供される。
【0014】
本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して、純粋に非制限的な例によって、本発明の好適な実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の1側面に基づくMOSFET装置を例示する横断面図。
図2】本発明の1側面に基づく図1の装置のゲート誘電体を形成している積層体を例示している拡大詳細図。
図3図1の装置の製造プロセスの夫々のステップを例示しているブロック図。
図4】本発明の更なる側面に基づくショットキーダイオードを例示している横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の1側面に基づく、トランジスタ20、特に縦型チャンネルMOSFET、更により詳細には、パワーMOSFETを、X,Y,Z軸からなるカーテシアン(3軸)参照系における断面図で例示している。トランジスタ20は、使用中にバイアス用電圧VGS結合可能なゲート端子G(制御端子を形成)と、ソース領域26(N型注入領域)及びソースメタリゼーション59(例えば、ニッケルからなり、ソース領域26とオーミック電気的コンタクトを形成している)を包含している第1導通端子Sと、第2導通端子D即ちドレイン領域D(例えばニッケルからなるドレインメタリゼーション27を包含しており、オーミック電気的コンタクトを形成している)とを有している。使用において、適宜のバイアス印加によって、多数キャリア(ここでは、電子)の導電性チャンネルがソース領域26とドレイン領域27との間に確立される。
【0017】
より詳細には、トランジスタ20は、特にSiCからなり、Z軸の方向に沿って互いに反対側の第1及び第2面48a,48bを有している。特に、本実施例においては、「半導体ボディ」という用語は、ベース基板上に成長させた一つ又はそれ以上のエピタキシャル層を有する場合のある構造的要素又は固体ボディのことを意味している。特に、図1は、ドリフト層として作用しその上に延在しているエピタキシャル的に成長された構造層38を具備しているベース基板36を包含している半導体ボディ48を例示している。基板36は第1導電型、ここではN型、及び、例えば、1×1018cm5×1019cmの間のドーピングを有している。構造層36は、第1導電型、ここではN型と、例えば1×1014cm5×1016cmの間である基板36のものよりも一層低いドーピングとを有している。
【0018】
本発明の1側面によれば、半導体ボディ48のポリタイプは、シリコンカーバイドの立方晶ポリタイプ、即ち3C-SiCである。代替的に且つ本発明の更なる側面によれば、半導体ボディ48のポリタイプは4H-SiCである。しかしながら、本発明は、更なる且つ異なるシリコンカーバイドポリタイプにも適用性を見出す。
【0019】
ゲート端子Gが、半導体ボディ48の第1面48a上を延在しており、第1導電型とは反対の第2導電型を有しているボディ領域45(ここでは、P型注入領域)が、第1面48aに(面して)おいて、半導体ボディ48内に(より特定的には構造層38内に)延在しており、第1導電型を有するソース領域26が第1表面48aにおいて(面して)ボディ領域45内に延在しており、及びドレインメタリゼーション27が半導体ボディ48の第2面48bにおいて延在している。従って、トランジスタ20は、垂直導通型(即ち、導通チャンネルがZ軸に沿っての主要方向に沿って延在している)である。
【0020】
ゲート端子Gは、ゲートメタリゼーション53と、ゲート誘電体52とを包含している。ゲートメタリゼーション53はゲート誘電体52上を延在している。
【0021】
本発明によれば、ゲート誘電体52は積層体100であって、複数個の重畳された層を包含しており、それは図2に例示しており且つ図2を参照して以下に説明する。
【0022】
絶縁性、即ち誘電体の層56がゲート領域24上を延在しており、且つ、特に、二酸化シリコン(SiO又はシリコン窒化物(SiN)からなり、そのZ軸に沿って測った厚さは0.5μmと1.5μmとの間である。更に、特に金属物質、例えばアルミニウムからなりZ軸に沿って測った厚さが0.5μmと2μmとの間であるソース端子58が、絶縁層56の近傍に延在している。
【0023】
ソース端子58は、オプションとして、オーミックコンタクト59を介して、ソースコンタクト26とコンタクトするまで延在している。
【0024】
例えばTi/Ni/Auからなりゲート端子Dを形成している金属層27が、半導体ボディ48の第2面48b上を延在している。例えばニッケルシリサイドからなり不図示であるオーミックコンタクトを可能とするインターフェース層が、半導体ボディ48と金属層27との間に存在することが可能である。
【0025】
ゲート誘電体52に関し図2を参照すると、全体としてゲート誘電体52を形成している積層体は、使用期間中に、ゲート誘電体内側(特に、層104内に)負電荷密度を誘起させる(増加させる)高密度の電子トラップを有するような態様で構成されている。特に、積層体100は、絶縁性の多層であって、それは、少なくとも、ボディ48の半導体物質(例えば、SiC)の伝導帯のエネルギ的に近接した(例えば、0eVと2eVとの間)エネルギレベルを有している。
【0026】
特に、積層体100は、特に、シリコン酸化物(SiOからなりZに沿って0.5nmと5nmとの間の厚さを有している第1絶縁層102と、特にハフニウム酸化物(HfOからなりZに沿って0.5nmと5nmとの間の厚さを有している該第1絶縁層102上の第2絶縁層104と、特にアルミニウムを含有する合金(例えば、Al23AlN、AlON)からなりZに沿って10nmと100nmとの間の厚さを有している該第2絶縁層104上の第3絶縁層106と、を包含している。1実施例においては、第3絶縁層106は、複数個(例えば、2個)のサブ層106a,106bから構成されており、サブ層106aはアルミニウム酸化物(例えば、Al23からなり且つサブ層106bはハフニウム酸化物(例えば、HfOからなる。
【0027】
上述したことの変形例も可能であり、特に、第1絶縁層102は、代替的に、Al23SiN、又はAlNから構成することが可能であり、第2絶縁層104は、代替的に、HfSiOZrOZrSiOら構成することが可能であり、第3絶縁層106のサブ層106aは、代替的に、AlSiOら構成することが可能であり、及び/又はサブ層106bは、代替的に、HfSiOら構成することが可能である。
【0028】
絶縁層102は、半導体ボディ48からの電子のトンネル動作を可能とさせるために減少させた厚さを有しており、且つ絶縁層104のバンドギャップよりも一層大きなバンドギャップを有している。絶縁層102は、従って、電位の井戸に閉じ込められており該井戸によって許容される状態によって制限される数でありMOSFET20の正のVth発生させる電子によるトンネル効果によって横断することが可能な厚さを有している。
【0029】
電荷に対するトラップとして作用する該層は、減少したバンドギャップを有する絶縁層104であり、それは、絶縁層102と絶縁層106との間に量子井戸を形成している。1実施例においては、該ハフニウム酸化物が、片側が絶縁層102によって及び反対側が絶縁層106によって閉じ込められる電子に対する電位井戸を表す。
【0030】
絶縁層106は、絶縁層104のバンドギャップよりも一層大きなバンドギャップを有するように構成されている。層106は、前述したように2個(又は複数個)のサブ層106a及び106bを有しているので、それは高いバンドギャップ(例えば、7eVと9eVとの間である場合があるAl23バンドギャップ)と高い誘電定数(例えば、約20であるHfO誘電定数)という利点を結合させることを可能とする。
【0031】
1実施例においては、第1絶縁層102は第1ハンドギャップ値と第1厚さとを有しており、第2絶縁層104は該第1バンドギャップ値よりも一層低い第2バンドギャップ値と該第1厚さよりも一層大きな第2厚さを有しており、及び第3絶縁層106は該第1及び第2バンドギャップ値の間の第3バンドギャップ値と該第2厚さよりも一層大きな第3厚さを有している。
【0032】
1実施例においては、第1絶縁層102は0.5nmと1nm、極値を含む、との間の厚さと7eVと9eV、極値を含む、との間のバンドギャップとを有していて絶縁層102はSiO又はこの層について上述した物質の内の一つからなり、第2絶縁層104は1.5nmと2.5nm、極値を含む、との間の厚さと4eVと6eV、極値を含む、との間のバンドギャップとを有していて絶縁層104はHfOはこの層について上述した物質の内の一つからなり、第3絶縁層106は10nmと100nm、極値を含む、との間の厚さと7eVと8.5eV、極値を含む、との間のバンドギャップとを有していて絶縁層106は層106aと層106bとからなるか又は互いに交番させた複数個の層106aと106bの連続体からなる多層である。
【0033】
本発明に基づく積層体100は、高k物質からなる単一層又は本書に記載したもの以外の1組のサブ層に関して、絶縁層106の高いバンドギャップの利点と絶縁層104の高い誘電定数の利点とを結合させることを可能とする。
【0034】
積層体100は、それを形成する物質が非晶質(非結晶性)である場合に、安定であり且つ前述した特性を有している。更なる付加的な利点は、ここに提案する構成は、シリコン酸化物のみのゲート誘電体と比較して一層高い容量を有しており、一層高いRC定数を有することを可能とし、その結果、MOSFET装置20の高速スイッチングによって誘起されるリンギング現象を制限することである。
【0035】
図3のフローチャートを参照して、MOSFET装置20の製造ステップについて説明するが、特に積層体100の形成について参照を行う。
【0036】
ステップ200は、基板36を設けることや、基板36上にエピタキシャル層38(エピタキシーにより)を形成することを包含する半導体ボディ48を形成するための幾つかの工程を包含しているが、それらの工程は既知のものであるから詳細な説明は割愛する。
【0037】
次いで、ステップ202において、注入領域45(ボディウエル)及び25(ソース領域)を形成するためのドーピング種の注入が実施される。次いでボディ45及びソース26の注入領域のドーパントの活性化のためのアニーリングステップが実施される(例えば、1600℃と1800℃との間の温度において)。
【0038】
次いで、ステップ204において、本方法は、ソース59及びドレイン27のメタリゼーション(夫々のオーミックコンタクトを形成する)の形成に進む。このステップは、ソース/ボディ注入物においての金属層(典型的には、Ni,Ti,又はNi/Tiの組み合わせ)を付着することを包含している。このステップに続いて適宜の高温アニーリングが行われる(1分乃至120分の時間期間に対して800℃と1200℃との間での迅速熱処理)。このことは、半導体ボディ48(本実施例においては、SiCからなる)中に存在するシリコンと付着した金属との間の化学反応によってオーミックコンタクト(例えば、該金属層がNiからなる場合には、ニッケルシリサイドNii)が形成されることを可能とさせる。実際に、付着した金属は、それが半導体ボディ48の表面金属と接触している箇所において反応をして、オーミックコンタクトを形成する。
【0039】
次いで、ステップ206において、積層体100を形成するための処理が行われる。
【0040】
特に、ソースメタリゼーション59の間の半導体ボディ48上(より詳細には、エピタキシャル層38上)にシリコン酸化物層を付着させることによって第1絶縁層102が形成される。このステップは、熱酸化によるか又は酸化溶液(H22中に浸漬させることによって実施することが可能である。このステップは、温度に依存して30秒と5分の間の時間での900℃と1400℃との間の温度で実施される。過酸化水素の水溶液内の浸漬は、最大で120分に到達する場合のある期間の間室温(25℃)から最大で80-90℃の間の範囲の温度で実施することが可能である。
【0041】
代替的に、絶縁層102は、ALD(原子層付着)技術によって付着させることが可能である。
【0042】
次いで、第2絶縁層104を第1絶縁層102の上に形成させるが、それもALD技術によって行うことが可能である。1実施例において、第2絶縁層104はHfOらなり且つ以下の表に示したパラメータを使用して、熱処理又はプラスマによって付着させることが可能である。
【表1】
次いで、第3絶縁層106を第2絶縁層104の上に形成するが、これもALD技術によって行うことが可能である。1実施例において、第3絶縁層106はAl23らなり、且つ以下の表に基づくパラメータを使用して熱処理又はプラズマによって付着させることが可能である。
【表2】
ALDによる付着に対する代替案として、絶縁層102,104,106の内の一つ又は全てをCVD技術又は反応性イオンスパッタリングによって付着させることが可能である。
【0043】
次いで、ステップ208において、酸素を含む環境におけるか又はアルゴン及び/又は窒素等の不活性環境において、付着後アニーリングステップを実施する。
【0044】
最後に、ステップ210において、MOSFET20の形成を完成するための残りの工程を実施するが、該工程としては、それ自体既知の態様でのゲート導電性端子(ゲートメタリゼーション53及び絶縁層56)の形成を包含している。ソース端子の形成も完了してメタリゼーション58を形成する。
【0045】
ゲート誘電体(積層体100)を参照すると、それは高密度の電子トラップを有するような態様で構成される。
【0046】
更なる特定的処置が電子トラップの形成を可能とさせる場合がある。その様な処置は以下のものを包含している。
【0047】
a.酸素空孔を増加させるための還元環境においてのアニーリング処理(例えば、NAr、NH中からのガスでのチャンバー内において)。
【0048】
b.該絶縁層内の電荷の蓄積を許容するためにゲート誘電体への電圧の印加(例えば、正の電圧)。
【0049】
c.陰性原子種(例えば、フッ素)の導入を介してのインサイチュ、即ちその場でのドーピング。
【0050】
上述したことの結果としてのゲート誘電体内で発生する負電荷が、チャンネル抵抗が減少する場合に装置のスレッシュホールド電圧Vth減少することを補償する。従って、高いスレッシュホールド電圧Vth低いRONを有するMOSFET装置が得られる。
【0051】
図4は、ショットキー装置(ダイオード)60を軸X,Y,Zからなるカーテシアン(3軸)参照系における横断面図で示している。
【0052】
ショットキー装置60は、特にSiCであり且つより詳細には3C-SiCからなる半導体ボディ68を包含しているが、本書に記載することはその他のSiCポリタイプ、例えば4H-SiCにも適用される。半導体ボディ68は、Z軸の方向に沿って互いに反対側の第1及び第2面68a、68bを有している。特に、本実施例においては、「半導体ボディ」という用語は、ベース基板上に成長された一つ又はそれ以上のエピタキシャル層を有する場合のある構造要素を意味している。図4は、1実施例に基づいて、ドリフト層として作用し上側に延在しているエピタキシャル的に成長された構造層70を具備しているべース基板69を包含している半導体ボディ68を例示している。基板69は、第1導電型、ここではN型、と、例えば1×1018cm5×1019cm間のドーピングとを有している。構造層70は、第1導電型と、基板69のドーピングよりも一層低い、例えば1×1014cm1×1017cmの間のドーピングとを有している。
【0053】
ショットキー装置60は、更に、半導体ボディ68の第2面68b上を延在している金属物質からなるカソード端子72と、半導体ボディ68の第1面68a上を延在している金属物質からなるアノード端子74とを包含している。使用において、適宜のバイアス印加によって、該アノード端子と該カソード端子との間に導電性チャンネルが確立される。
【0054】
ショットキー装置60は、Z軸に平行な主要方向に沿って、半導体ボディ68内に、特にドリフト層70内に深さが延在している1個又はそれ以上のトレンチ73を有している。例示的には、各トレンチ73は、第1面68aから第2面68bへ向かって測定され100nmと1000nmとの間の値を有している深さd1を有している。複数のトレンチ73が存在する場合には、各トレンチ73は、構造層70の一部から、X軸の方向に沿って、すぐ隣のトレンチ73から離隔されている。構造層70のこの部分はX軸の方向に沿って範囲d2を有しており、それは、例えば、100nmと5000nmとの間の値を有している。
【0055】
各トレンチ73は、誘電体又は絶縁層80によって部分的に充填されており、それは各夫々のトレンチ73の側壁及び底部を被覆している。更に、各トレンチ73の充填は、トレンチ73内に入り込み及び/又は被覆するアノード端子74の導電性部分82によって完成される。従って、該部分82の各々は、夫々の絶縁層80によって構造層70から絶縁される。
【0056】
絶縁層80は、前述した且つ同じ処理ステップ(図3のステップ206において記載した)に従って形成した積層体100と同じタイプの多層、即ち積層体である。更に、絶縁層80は誘電体層52(積層体100)を参照して説明したことと同様の態様で、即ち、多数キャリア(ここでは、電子)に対して多数のトラップを提供するような態様で、構成される。
【0057】
ショットキー接合71が、ドリフト層70とアノードメタリゼーション74の金属層との間の界面に存在する複数個の金属-半導体接合によって形成される。特に、ショットキー接合71(半導体-金属)は、アノードメタリゼーション74の夫々の部分と直接電気的接触しているドリフト層(N型)の部分によって形成される。
【0058】
絶縁層60における正味の負電荷の存在は、構造層70との界面において平衡を可能とし、従ってダイオード60の阻止特性を最適化させることを可能とする。特に、表面空乏層は、ダイオードのスイッチオン電圧とショットキーコンタクト上の負バイアスに対する阻止特性の両方を修正することによって最適化させることが可能である。
【0059】
本発明に基づく本発明の特性を吟味することによって、本発明の利点は明らかである。
【0060】
本発明によれば、ゲート端子の製造のために必要なサーマルバジェットを減少させこと、ゲート誘電体の信頼性を増加させること、RON減少させ且つVth増加させることが可能である。これらの利点は、少なくとも部分的に、その特性を上述したプロセスによって調節させることが可能な高誘電率高kゲート誘電体に起因して得られるものである。
【0061】
以上、本発明の具体的実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施例にのみ制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形及び修正を行うことが可能であることは勿論である。
【0062】
例えば、本発明は、3C-SiC又は4H-SiC以外のSiCポリタイプに基づく装置で、一般的には、トランジスタ及びダイオード、へ適用することが可能である。
【0063】
更に、本発明は、SiC以外の物質で、例えばGaN及びAlGaN/GaN(通常オフHEMT)に基づく装置へ適用することが可能である。
【0064】
更に、本発明は、上述した特定の実施例において記載したもの以外の種々の電子装置で、例えば、VMOS(縦型チャンネルMOS)、DMOS(拡散MOS)、CMOS(相補的MOS)等の装置にも適用可能である。
【0065】
本発明は、更に、水平チャンネル装置にも適用可能である。
図1
図2
図3
図4