(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032679
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】サーマルバジェット最適化で電子装置のオーミックコンタクトを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240305BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240305BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
H01L29/78 658
H01L29/78 652K
H01L29/78 652B
H01L29/78 301S
H01L29/78 301D
H01L29/78 301B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136182
(22)【出願日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】102022000017733
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591002692
【氏名又は名称】エスティーマイクロエレクトロニクス エス.アール.エル.
【氏名又は名称原語表記】STMicroelectronics S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100076185
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 正明
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジウセッペ サッジーオ
(72)【発明者】
【氏名】カテーノ マルコ カマッレリ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ ベッロッキ
(72)【発明者】
【氏名】シモーネ ラスクーナ
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA10
5F140AC21
5F140BA02
5F140BA06
5F140BA09
5F140BA16
5F140BB13
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5F140BD04
5F140BD05
5F140BD06
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5F140BD11
5F140BD13
5F140BE07
5F140BE09
5F140BE10
5F140BF04
5F140BF05
5F140BF06
5F140BF07
5F140BH30
5F140BJ05
5F140BJ07
5F140BJ08
5F140BJ15
5F140BJ17
(57)【要約】
【課題】 従来技術の問題点を解消した電子装置を製造する方法を提供する。
【解決手段】 電子装置(20)を製造する方法が、半導体ボディ(48)の注入領域(26;55)においてオーミックコンタクト(59;61)を形成することを包含している。該オーミックコンタクトを形成することは、金属物質のシリサイドを形成するために、半導体ボディの物質と金属物質との間の反応を可能とする高温熱処理を実施する。該オーミックコンタクトを形成する工程は、該シリサイドを形成する熱処理の高温によって損傷される場合がある物質を包含している一つ又はそれ以上の電気的構成体(52,56)を形成する工程の前に実施する。
【選択図】
図2F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置(20)を製造する方法において、
シリコンカーバイドの半導体ボディ(48)内に、該半導体ボディ(48)の第1側部(48a;48b)に面する該半導体ボディ(48)内に延在する第1注入領域(26;55)を形成する工程、
該第1注入領域(26;55)において該半導体ボディ(48)とコンタクトして、金属物質の反応層(57)を形成する工程、
前記金属物質のシリサイドを形成するために該第1注入領域(26;55)において該半導体ボディ(48)の該物質と前記金属物質との間の反応を許容するための熱処理を実施することによって該第1注入領域(26;55)にオーミックコンタクト(59;61)を形成する工程、
該電子装置(20)の一つ又はそれ以上の更なる電気的構成体(G,53,56)であって前記熱処理によって損傷される場合のある一つ又はそれ以上の物質を包含している前記一つ又はそれ以上の更なる電気的構成体(G,53,56)を形成する工程、
を包含しており、該オーミックコンタクトを形成する該工程が、前記一つ又はそれ以上の更なる電気的構成体(G,53,56)を形成する工程の前に実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記一つ又はそれ以上の更なる電気的構成体(G,53,56)を形成する工程が該電子装置(20)の電気的制御端子(G)を形成することを包含している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該電子装置(20)の該電気的制御端子(G)がゲート端子であり且つゲート誘電体(52)と該ゲート誘電体(52)上のゲート導電層(53)とを包含しており、該ゲート誘電体(52)が該熱処理によって損傷される場合がある前記物質を包含している請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該ゲート誘電体物質(52)が高k又は水素リッチ物質である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該オーミックコンタクトを形成するための前記熱処理が800℃と1150℃との間の温度において実施される先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該第1注入領域(26,45)を形成する該工程の前に第2注入領域(45)を形成する工程を更に包含しており、前記第1注入領域(26,45)が該第2注入領域(45)内に完全に閉じ込められている先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該第2注入領域(45)が該電子装置(20)のボディ領域であり且つ第1導電型(P)及びドーピング種の第1濃度を有しており、該第1注入領域(26;55)が、
該第1導電型(P)とは反対の第2導電型(N)を有しているソース領域(26)と、
第1導電型(P)及びドーピング種の該第1濃度よりも一層大きなドーピング種の第2濃度を有しているボディコンタクト領域(55)と、
の内の一つである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該制御端子(G)が該第1注入領域(26;55)へ横方向に延在している請求項7及び請求項2-4の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該オーミックコンタクト(59;61)と電気的にコンタクトしている導電性端子(S;D)を形成する工程を更に包含する先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該電子装置(20)の前記一つ又はそれ以上の更なる電気的構成体(52,56)を形成する工程が、特にALD技術によって一つ又はそれ以上の誘電体又は絶縁性物質を付着することを包含している先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該オーミックコンタクト(59;61)において及びその上に該オーミックコンタクト(59;61)を完全に被覆する多層であって、シリコン酸化物の第1保護層(80)とシリコン窒化物の第2保護層(81)とを包含している該多層を形成する工程を更に包含しており、
該電子装置(20)の前記一つ又はそれ以上の更なる電気的構成体(52,53,56)を形成する該工程が該第1及び第2保護層(80,81)を形成した後に実施される、
先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該半導体ボディ(48)の該第1側部(48b)上に、該第1注入領域(26;55)の少なくとも一つの表面部分(48’)における貫通開口を有するマスク(51)を形成する工程を更に包含しており、
該反応層(57)が該マスク(51)上方及び該表面部分(48a’)とコンタクトして形成され、
本方法が、該オーミックコンタクトを形成する該工程の前に、該マスク(51)及び反応しなかった該反応層(57)の金属物質を除去する工程を更に包含している、
先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電子装置がMOSFETである先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該半導体ボディ(48)がポリタイプ4Hのシリコンカーバイド、即ち4H-SiCからなる先行する請求項の内のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関するものであって、特に電子装置のオーミックコンタクトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既知の如く、ワイドバンドギャップを有する半導体物質で、特に、バンドギャップの高い値と、低オン状態抵抗(RONと、熱伝導率の高い値と、高い動作周波数と、電荷キャリアの高い飽和速度とを有している半導体物質は、特に、電子的適用例のためのダイオード又はトランジスタ等の電子部品を製造するために理想的である。前記特性を有しており且つ電子部品を製造するために使用されるべく適合されている物質は、シリコンカーバイド(SiC)である。特に、その異なるポリタイプ(例えば、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiC)において、シリコンカーバイドは、上掲した特性に関して、シリコンよりも望ましい。
【0003】
六方晶SiCポリタイプ(4H-SiC)は最も研究されているポリタイプであり、且つ典型的なシリコンウエハよりもコスト高であるが、4H-SiCウエハの大量生産が現在市場で入手可能である。
【0004】
シリコンカーバイド基板で提供される電子装置は、シリコン基板で提供される同様の装置と比較して、導通における低出力抵抗、低漏洩電流、及び高い動作周波数等の更なる利点を有している。特に、SiCショットキーダイオードは、一層高いスイッチング性能を示しており、SiC電子装置を特に高周波数適用例に対して望ましいものとしている。
【0005】
多数の科学文献が、シリコンカーバイド(SiC)MOSFET装置の良好なスイッチング性能を報告している。産業的観点からは、スイッチング性能に加えて、SiCMOSFET装置は良好な構造的堅牢性も有しており、そのことはパワーシステムにおいて望ましい特性である。
【0006】
SiC(特に4H-SiC)MOSFET装置における重要な構造要素はゲート誘電体(又は酸化物)である。ゲート誘電体の特性(誘電率、固定電荷、等)及び誘電体/SiC界面の品質(界面状態密度Dit近界面酸化物トラップ、NIOT)は、電界効果チャンネル移動度μFEオン状態抵抗、及びスレッシュホールド電圧VthのMOSFETの関連するパラメータに顕著な影響を有している。従って、ゲート誘電体の最適化は、SiCMOSFETの性能を完全に利用するための前提条件である。
【0007】
シリコン酸化物(SiO2は、SiCの熱酸化によって容易に製造できるために、ゲート誘電体として市販のSiCMOSFETにおいて一般的に使用されている。しかしながら、SiCの酸化率はシリコンのものよりも一層低いし且つ界面状態密度はSiO2Si積層体のものよりも約2-3桁一層高い。界面状態密度Dit減少させ且つゲート誘電体としてSiO2使用する4H-SiCMOSFETのチャンネル移動度μFE改善するために、典型的に、窒素(N2、NO)が豊富な環境において、酸化後アニーリング(POA)又は付着後アニーリング(PDA)工程を実施する。しかしながら、SiCの熱酸化、及びPOA及びPDAプロセスは、典型的に、高い温度(>1100℃)と長いアニーリング時間(幾つかの場合には、最大で8時間)とを必要とする。更に、これら全てのプロセスは、NO又はN2での高温アニーリング期間中に発生する不可避的な界面再酸化の結果としてSiO2SiC界面において「無秩序」領域を形成することとなる。この無秩序界面は、SiO2Cとの非化学量論欠陥の存在によって特性付けられ、そのことは、チャンネル移動度とスレッシュホールド電圧(Vthの安定性との両方に悪影響を有している。
【0008】
本発明者等に既知の解決法によれば、SiC酸化に必要なサーマルバジェットを減少させるために、CVDによって付着させたSiO2をSiO2OSFETにおけるゲート絶縁体として使用することが可能である。
【0009】
本発明者等に既知の解決法によれば、SiCMOSFETにおけるVthを調節するためにAl23がゲート絶縁体として提案されている。特に、SiCMOSFETにおけるオン状態におけるVthを増加させるために、高k絶縁体(「高k」物質として知られている)を使用することが可能である。しかしながら、SiC装置においてコンタクトを形成するために必要なサーマルバジェット(>800℃)においての結晶化現象が起きやすいために、高k誘電体の組込は制限されている。更に、該絶縁体の誘電率が増加するために該絶縁体のバンドギャップは減少し、その結果、単純な高kの選択は、通常、SiCとの小さなバンドオフセットを発生し、その結果、高い漏洩電流を発生する。
【0010】
SiCパワーMOSFETにおいては、シリサイドを形成するために、金属をシリサイド化させることによってオーミックコンタクトを形成する。このプロセスには高温工程が関与し、そのことは幾つかの実現例においては有害である場合がある。例えば、水素リッチゲート誘電体(PECVDによって付着される)として使用される誘電体は、シリサイドを形成するプロセス期間中に使用される温度においてこの層の内在的な不安定性のために、ゲート端子用の中間絶縁体として使用することは出来ない。更に、高k誘電体での実現例は過剰に高い処理温度にさらされる。この制限は、該物質の誘電特性の劣化に起因する(即ち、これらの物質が一度ウエハ上に付着されると、その後の処理工程では使用される高k物質の特性又はそれによって耐えられたものよりも一層高い温度を使用することができない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、上述した問題点を考慮に入れて、特に使用するゲート誘電体の関数としてサーマルバジェットを最適化させることの必要性に関して、オーミックコンタクトを製造するプロセスを画定することの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、請求項1に定義されるように、電子装置を製造する方法が提供される。
【0013】
本発明をよりよく理解するために、添付の図面を参照して、純粋に非制限的な例によって本発明の好適実施例について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の1側面に基づくMOSFET装置を示した横断面図。
【
図2A】本発明に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図2B】本発明に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図2C】本発明に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図2D】本発明に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図2E】本発明に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図2F】本発明に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図3A】本発明の別の実施例に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【
図3B】本発明の別の実施例に基づく製造方法の或る段階における電子装置の一部の状態を示した横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明するように、本発明は、ゲート端子を形成する前にオーミックコンタクトを形成すること、処理の流れの中でサーマルバジェットの分布を最適化させること、及び高い処理温度、特にソース及び/又はボディウエルのオーミックコンタクトを形成するために使用される温度、と適合性の無い場合がある物質(特に、ゲート誘電体用)の使用を可能とさせること、を提供している。
【0016】
本発明は、又、高溶融点金属層(例えば、W)で被覆された、高い温度で形成された金属シリサイド(例えば、Ti)に基づいてオーミックコンタクトを形成することを提供している。これらは、処理温度においては溶融することの無い層である。それらは、構成体のモルフォロジーを保存する被覆層であって、コンタクトの形成期間中には固体のままである。
【0017】
図1は、本発明の1側面に基づくトランジスタ20、特に縦型チャンネルMOSFET,更に特定的にはパワーMOSFET、を軸X,Y,Zからなるカーテシアン(3軸)参照系において例示した断面図である。トランジスタ20は、使用中にバイアス電圧V
GS発生器へ結合可能なゲート端子G(制御端子を形成)と、ソース領域26(N型注入領域)及びソースメタリゼーション59(例えば、ニッケルからなり、それはソース領域26とオーミック電気的コンタクトを形成する)を包含している第1導通端子Sと、第2導通端子D又はドレイン領域D(例えばニッケルからなるドレインメタリゼーション27を包含しており、それはオーミック電気的コンタクトを形成する)と、を包含している。使用において、適切なバイアスによって、多数キャリア(ここでは、電子)の導電性チャンネルがソース領域26とドレイン領域27との間に確立される。
【0018】
より詳細には、トランジスタ20は、特にSiCからなる半導体ボディ48を包含しており、それは、Z軸の方向に沿って互いに反対側の第1及び第2面48a,48bを有している。特に、本実施例においては、「半導体ボディ」という用語は、ベース基板上に成長させた一つ又はそれ以上のエピタキシャル層を有する場合がある構造要素即ち固体本体のことを意味している。特に、
図1は、ベース基板36を包含する半導体ボディ48を示しており、該ベース基板36上に延在してドリフト層として作用するエピタキシャル的に成長された構成層38が設けられている。基板36は、第1導電型、ここではN型、及び、例えば、1×10
18m
-35×10
19m
-3の間のドーピングを有している。構成増38は、第1導電型、ここではN型、及び、例えば、1×10
14m
-35×10
16m
-3の間の、基板36のものよりも一層低いドーピングを有している。
【0019】
本発明の1側面によれば、半導体ボディ48のポリタイプは立方晶ポリタイプのシリコンカーバイド、即ち3C-SiCである。代替的に、及び本発明の更なる側面によれば、半導体ボディ48のポリタイプは4H-SiCである。しかしながら、本発明は、更なる且つ異なるシリコンカーバイドポリタイプにも適用可能である。
【0020】
ゲート端子Gが半導体ボディ48の第1面48a上に延在しており、第1導電型と反対の第2導電型を有しているボディ領域45(ここでは、P型注入領域)が第1面48aにおいて(面して)半導体ボディ48内に(より特定的には、構成層38内に)延在しており、第1導電型を有しているソース領域26が第1表面48aにおいて(面して)ボディ領域45内に延在しており、及びドレインメタリゼーション27が半導体ボディ48の第2面48bにおいて延在している。従って、トランジスタ20は、垂直導通型(即ち、導通チャンネルがZ軸である主要方向に沿って延在している)である。
【0021】
ゲート端子Gは、ゲートメタリゼーション53及びゲート誘電体52を包含している。ゲートメタリゼーション53はゲート誘電体52上を延在している。
【0022】
ゲート誘電体52は、所定の目的にとって適切な任意の物質から構成することが可能であり、例えば、酸化物(例えば、SiO2、又は化合物、多層、又はアルミニウムを含有する合金(例えば、Al23AlN、AlON)とすることが可能である。ゲート誘電体52は、前述した物質を包含し、Al23AlN、AlON、AlN/SiN、Al23HfO2SiO2Al23SiO2SiO2HfO2Al23包含して、積層体即ち多層を形成する複数個のサブ層によって形成することも可能である。
【0023】
ゲート誘電体52を形成するために使用可能なその他の物質は、NiO、CeO2HfO2SiN、SiO2HfO2SiO2包含している。
【0024】
絶縁層52は、10nmと100nmとの間の、Z軸に沿って測った厚さを有している。
【0025】
絶縁性即ち誘電体の層56がゲート端子G上を延在しており、特に、二酸化シリコン(SiO2又は窒化シリコン(SiN)からなり、且つZ軸に沿って測ったその厚さは0.5μmと1.5μmとの間である。更に、特に金属物質、例えばアルミニウム、からなり
Z軸に沿って測った厚さが0.5μmと2μmとの間であるソース端子58が、絶縁層56に近接して延在している。
【0026】
ソース端子58は、例えばNi、Ti、Co、Ptのシリサイド等の金属シリサイドからなるオーミックコンタクト領域59を介して、ソース領域26とコンタクトするまで延在している。
【0027】
例えばTi/Ni/Auからなりゲート端子Dを形成している金属層27が半導体ボディ48の第2面48b上を延在している。例えばニッケルシリサイドからなる不図示のオーミックコンタクトを可能とするインターフェース層が、半導体ボディ48と金属層27との間に存在することが可能である。
【0028】
ゲート誘電体52を参照すると、1実施例においては、それは、使用期間中にゲート誘電体内に負電荷密度を誘起(増加)する高密度の電子トラップを有するような態様で構成されている積層体によって形成される。特に、該積層体は、ボディ48の半導体物質(例えば、SiC)の伝導帯のエネルギ近接性(例えば、0eVと2eVとの間)にあるエネルギレベルを少なくとも有する絶縁性多層である。
【0029】
特に、該積層体は、特にシリコン酸化物(SiO2からなるZに沿っての厚さが0.5nmと5nmとの間である第1絶縁層と、特にハフニウム酸化物(HfO2からなるZに沿っての厚さが0.5nmと5nmとの間であり該第1絶縁層上の第2絶縁層と、特にアルミニウムを含有する合金(例えば、Al23AlN、AlON)からなりZに沿っての厚さが10nmと100nmとの間であり該第2絶縁層上の第3絶縁層と、を包含している。1実施例においては、該第3絶縁層は、Al23HfO2複数個(例えば2個)のサブ層によって形成されている。
【0030】
上述したことの変形例も可能であり、特に、該第1絶縁層は代替的にSiN、AlNからなるものとすることが可能であり、該第2絶縁層は代替的にHfSiOxZrO2ZrSiOxらなるものとすることが可能であり、該第3絶縁層は代替的にAlSiOxHfSiOxらなるものとすることが可能である。
【0031】
ここで、
図2A-2Fを参照して、MOSFET装置20の製造工程について以下に説明する。
【0032】
図2A-2Fは、夫々のオーミックコンタクト59,61を形成することが望まれる個所であるソース領域及びボディ領域に限定して装置(例えば、
図1に例示したタイプのMOSFET)の一部を例示している。
図2A-2Fの示すことは、一般的に、MOSFET装置20、及び、より一般的に、例えば、VMOS(縦型チャンネルMOS)、DMOS(拡散型MOS)、CMOS(相補的MOS)、FET、トレンチFET等の異なるタイプの装置においての、任意のオーミックコンタクトの形成に適用される。
【0033】
説明の簡略性及び改良した明確性のために、
図2A-2Fの文脈において、
図1と同じ参照番号は、一般性を喪失すること無しに、共通の要素を例示するために使用する。
【0034】
図2Aは、基板36を用意し且つ基板36上にエピタキシャル層38を形成(エピタキシーによって)することを包含する半導体ボディ48を形成する工程を包含しているが、該工程自身は既知のものであるから詳細な説明は割愛する。
【0035】
次いで、
図2Bを参照すると、注入領域45(ボディウエル)及び26(ソース領域)を形成するためにドーピング種の注入を実施する。この実施例においては、P+注入領域55も夫々のボディ領域45内に、且つ夫々のボディ領域45と直接電気的コンタクトをして形成する。ソース領域26がP+注入領域55に対して横方向に延在している。P+注入領域55は、ボディ領域45(ここでは、P型)と同じタイプのドーパントを有しており、且つボディ領域45のドーパント濃度よりも一層大きなドーパント濃度を有している。P+注入領域55はボディ領域45とのオーミックコンタクトを可能とする機能を有している。
【0036】
次いで、ボディ領域45及びソース注入領域26のドーパントの活性化のためにアニーリング工程を実施する(例えば、約1400-2000℃の高温において)。
【0037】
次いで、
図2Cを参照すると、本方法はソース領域59及びボディ領域61のオーミックコンタクトの形成に進行する。
【0038】
この工程は、例えばシリコン酸化物からなる付着マスク51を形成すること、オーミックコンタクト59,61を形成することが所望される個所の半導体ボディ48のソース領域48a’を露出されたままとする態様でパターニングをすること、を包含している。例示した非制限的な例においては、該オーミックコンタクトは、ソース領域26(図の左側)及びP+注入領域55(図の右側)に形成される。
【0039】
次いで、マスク51上及びマスク51を介して露出されている表面領域48a’に金属層57(典型的に、Ni、Ti、又はNi/Tiの組み合わせ)を付着させる。この工程に続いて、適宜の高温アニーリング(迅速熱処理で、800℃と1150℃との間、より特定的には、900℃と1150℃との間で1分と120分との間の時間期間にわたり)を実施する。このことは、付着させた金属と半導体ボディ48(本実施例では、SiCからなる)中に存在するシリコンとの間の化学反応によって、オーミックコンタクト59,61(例えば、層57がNiからなる場合にはニッケルシリサイドからなる)が形成されることを可能とさせる。実際に、該付着させた金属は、それが半導体ボディ48の表面物質と接触している箇所において反応し、オーミックコンタクト(例えば、層57の金属がNiである場合にはNi2iからなる)を形成する。
【0040】
その後に、
図2Dに示したように、マスク51の上方に延在している層57の金属及びマスク51を除去する。
【0041】
次いで、
図2Eに示したように、ゲート誘電体52を形成するための一つ又はそれ以上の工程を実施する。
【0042】
ゲート誘電体52を形成することは、例えば、SiO2はSiNを付着させ且つフォトリソグラフィによって画定すること、又は前述したタイプの多層を形成することを包含する場合がある。
【0043】
特に、或る実施例においては、SiO2HfO2Al23包含する多層即ち積層体を半導体ボディ48上に形成する。
【0044】
上述したことの変形例も可能であり、特に、第1絶縁層は、代替的に、Al23SiN、又はAlNから構成することが可能であり、第2絶縁層は、代替的に、HfSiOxZrO2又はZrSiOxら構成することが可能であり、第3絶縁層の第1サブ層は、代替的に、AlSiOxら構成することが可能であり及び/又はその第2サブ層は、代替的に、HfSiOxら構成することが可能である。
【0045】
第1絶縁層は、半導体ボディ48からの電子のトンネリングを可能とするために減少した厚さを有しており、且つ第2絶縁層のバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有している。従って、第1絶縁層は、電子の井戸内に閉じ込められており且つ該井戸によって許容される状態によって制限される数でありMOSFET20の正のVth発生させる電子によるトンネル効果によって横断されることが可能であるような厚さを有している。
【0046】
電荷に対するトラップとして作用する該層は第2絶縁層であり、それは、バンドギャップが減少されており、第1絶縁層と第3絶縁層との間に量子井戸を形成する。1実施例においては、ハフニウム酸化物が、第1絶縁層によって片側に閉じ込められており且つ第3絶縁層よって反対側に閉じ込められている電子に対する電位井戸を表している。
【0047】
第3絶縁層は、第2絶縁層のバンドギャップよりも一層大きなバンドギャップを有している。第3絶縁層は前述した2個(又は複数個の)のサブ層を有しているので、高いバンドギャップ(例えば、Al23バンドギャップは7eVと9eVとの間である)と高い誘電定数(例えば、HfO2誘電定数は約20である)との結合した利点が得られている。
【0048】
1実施例において、
第1絶縁層は第1バンドギャップ値及び第1厚さを有しており、
第2絶縁層は該第1バンドギャップ値よりも一層低い第2バンドギャップ値及び該第1厚さよりも一層大きな第2厚さを有しており、及び
第3絶縁層は該第1及び第2バンドギャップ値の間の第3バンドギャップ値及び該第2厚さよりも一層大きな第3厚さを有している。
【0049】
1実施例において、
第1絶縁層は、0.5nmと1nm、極値を含む、との間の厚さ、及び、7eVと9eV、極値を含む、との間のバンドギャップを有しており、第1絶縁層はSiO2らなるか又はこの層に対して上述した物質の内の一つからなり、
第2絶縁層は、1.5nmと2.5nm、極値を含む、との間の厚さ、及び、4eVと6eV、極値を含む、との間のバンドギャップを有しており、第2絶縁層はHfO2らなるか又はこの層に対して上述した物質の内の一つからなり、
第3絶縁層は,10nmと100nm、極値を含む、との間の厚さ、及び、7eVと9eV、極値を含む、との間のバンドギャップを有しており、この第3絶縁層は第1サブ層と第2サブ層とを包含する多層であるか又は互いに交互とされた一連の複数個の層である。
【0050】
本発明に基づく積層体は、高k物質からなる単一の層又はここに記載したもの以外の一組のサブ層に関して、第3絶縁層の高いバンドギャップの利点と第2絶縁層の高い誘電定数の利点とを結合させることを可能とする。
【0051】
該積層体は安定しており、且つそれを形成している物質が非晶質(及び非結晶性)である場合に、前述した特性を有している。更なる付加的な正の効果は、ここに提案した構成は、単独のシリコン酸化物からなるゲート誘電体と比較して一層高い容量を有しており、一層高いRC定数を有することを可能とし、その結果MOSFET装置20の高速スイッチングにより誘起されるリンギング現象を制限するということである。
【0052】
前述した積層体を製造するプロセスに関して、該第1シリコン酸化物絶縁層は、熱酸化によって、又は酸化溶液(H22内の浸漬によって、又はALD技術によって付着される。次いで、HfO2らなる第2絶縁層がALD技術によって該第1絶縁層上に形成される。次いで、Al23らなる第3絶縁層がALD技術によって該第2絶縁層上に形成される。
【0053】
1実施例において、HfO
2らなる該第2絶縁層は、以下の表に基づくパラメータを使用して、熱処理又はプラズマによって付着させることが可能である。
【表1】
1実施例において、Al
23らなる該第3絶縁層は、以下の表に基づくパラメータを使用して、熱処理又はプラズマによって付着させることが可能である。
【表2】
ALDによる付着に対する代替策として、前述した絶縁層の内の1つ又は全てを、CVD技術又は反応性イオンスパッタリングによって付着させることが可能である。
【0054】
次いで、酸素を含有する雰囲気中か又は不活性雰囲気中(アルゴン及び/又は窒素を有する)において、特に1000℃以下の温度において、付着後アニーリング工程を実施する。
【0055】
最後に、
図2Fを参照すると、それ自身既知の態様でゲート端子(メタリゼーション又はポリシリコン)の導電層53の形成を包含している残余の工程を実施して、該MOSFET装置の形成を完了する。
【0056】
ソース59及びボディ61のオーミックコンタクトを電気的にコンタクトさせるために、ソース59及びボディ61のオーミックコンタクトにおいて層52及び53を介して貫通開口を形成する。
【0057】
次いで、該MOSFET装置の製造は、絶縁層56を形成し且つソース59及びボディ61オーミックコンタクトを該層52及び53を介して形成した該貫通開口を介して電気的にコンタクトするメタリゼーション58を付着することによって完了する。
【0058】
図3Aを参照すると、
図2E及び2Fのものに対する代替実施例に基づいて、
図2A-2Dを参照して既に説明した工程を完了した後に、ソース59及びボディ61オーミックコンタクトにおいて及びその上に第1及び第2保護層80,81を形成する。層80はシリコン酸化物(SiO
2であって、「パッド酸化物」としても知られており、一方、層80上に延在している層81は、LPCVD技術によって付着された窒化シリコン(SiN、Si
23である。これらの保護層80,81は、オーミックコンタクト59,61が存在する表面部分へ制限的に側部48a上を延在してそれらを完全に被覆しており且つゲート端子Gが形成される領域には延在していない。第1及び第2保護層80,81の機能は、該シリサイドを「封止」して(それを被覆して)、相次ぐ製造工程において汚染物が該装置の外側へ向かうことを回避することである。
【0059】
次いで、本方法は、
図2Eを参照して説明したのとほぼ同様の態様で、ゲート誘電体52の形成で進行する。この場合には、ゲート誘電体52も第1及び第2保護層80,81上方を延在している。
【0060】
最後に、ゲート端子(メタリゼーション又はポリシリコン)の導電層53及び絶縁層56の形成を包含する残余の工程を実施して本MOSFET装置の製造を完了する。
【0061】
図3Bを参照すると、ソース59及びボディ61オーミックコンタクトへ電気的にコンタクトするために、ソース59及びボディ61オーミックコンタクトにおいて該層52,53,80,81を介して貫通開口を形成しそれらを露出させる。次いで、本MOSFET装置の製造は、絶縁層56を形成し且つ該層52,53,80,81を介して形成した貫通開口を介してソース59及びボディ61オーミックコンタクトへ電気的にコンタクトするメタリゼーション58を付着させることによって完了する。
【0062】
本発明に基づく本発明の特徴を吟味することから、本発明が提供する利点は明らかとなる。
【0063】
特に、本発明は、シリサイドの形成のためのサーマルバジェットから影響を受ける物質(高k物質、Hリッチ物質等)を使用することを可能とする。何故ならば、ゲート端子又はその他の構造体を形成する前の、装置の初期的製造工程においてシリサイドオーミックコンタクトの形成を行っているからである。
【0064】
本発明の解決手段は、高温において使用不可能である場合がある高k物質を使用するゲート誘電体の場合において、及び従来のゲート誘電体(例えば、SiO2らなる)の場合においての両方で実施可能である。
【0065】
以上、本発明の具体的実施の態様について詳細に説明したが、本発明はこれらの具体的実施例のみに制限されるべきものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱すること無しに種々の変形及び修正を行うことが可能であることは勿論である。
【0066】
例えば、本発明は単独のソースオーミックコンタクト59(オーミックコンタクト61不存在)の形成に制限される場合がある。
【0067】
更に、本発明は、単独のドレインオーミックコンタクト(ソース59及びボディ61オーミックコンタクト不存在)へ制限される場合がある。
【0068】
代替的に、本発明は、ソースオーミックコンタクト59を形成すること、ドレインオーミックコンタクトを形成すること、ボディオーミックコンタクト61を形成すること、の内の2つ又はそれ以上の任意の組み合わせを形成することを包含する場合がある。
【0069】
更に、本発明は、4H-SiC以外の例えば3C-SiC又は6H-SiC等のその他のSiCポリタイプに基づく装置へ適用することが可能である。
【0070】
更に、本発明は、例えばGaN及びAlGaN/GaN(例えば、HEMTの製造において使用される)等のSiC以外の物質からなる基板(半導体ボディ)を有する装置へ適用することが可能である。
【0071】
本発明は、水平チャンネル装置にも適用可能である。