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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032690
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20240305BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240305BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K31/551
A61P27/02
A61P27/06
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138207
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022135720
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023057860
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 忍
(72)【発明者】
【氏名】二科 哲志
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC54
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA33
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】容器と当該容器に収容されたハロゲン化イソキノリン誘導体含有水性組成物とを備え、容器が滅菌処理されていながら水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体の安定性が良好な医薬製剤を提供すること。
【解決手段】次の一般式(1)
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ガス滅菌処理された容器に収容されてなる、医薬製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ガス滅菌処理された容器に収容されてなる、医薬製剤。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記容器が、樹脂製容器である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記容器が、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の樹脂製の容器である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記ガス滅菌処理が、エチレンオキサイドガス滅菌処理及び過酸化水素ガス滅菌処理から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の構造式:
【0003】
【化1】
【0004】
で表されるリパスジル(化学名:4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン)や、以下の構造式:
【0005】
【化2】
【0006】
で表される4-ブロモ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリンなどのハロゲン化イソキノリン誘導体は、Rhoキナーゼ阻害作用等の薬理作用(例えば、特許文献1、2)を有し、眼疾患の予防や治療に有用であることが知られている。具体的には例えば、高眼圧症や緑内障等の予防又は治療(例えば、特許文献3)や、加齢黄斑変性等の眼底疾患の予防又は治療(例えば、特許文献4)に有用であることが報告されている。また、リパスジルについては、これを有効成分とする高眼圧症・緑内障治療剤として、グラナテック(登録商標)点眼液0.4%が日本において上市されるに至っている。
そのため、これらのハロゲン化イソキノリン誘導体を、点眼剤や眼軟膏剤などの眼科用剤等として安定的に製剤化する技術を確立することは重要である。
【0007】
一方、眼科用剤は、通常、水を含有する組成物(水性組成物)であり、内容物の散逸や外気からの不純物の混入等を防ぐため容器に収容する必要がある。また、眼科用剤は、人体において特に鋭敏な器官である眼に直接投与されるため、使用時まで無菌状態を保つことが求められている。そのため、眼科用剤に用いられる容器には、滅菌処理することが望まれる。こうした滅菌処理としては、ガンマ線滅菌、電子線滅菌、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、過酸化水素ガス滅菌等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4212149号公報
【特許文献2】国際公開第2006/115244号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/068208号パンフレット
【特許文献4】特許第5557408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、容器の滅菌処理の種類と、当該容器に収容される水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体の安定性との関係については、これまでに知られていない。
【0010】
本発明者らは、容器に収容された水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体の安定性について検討したところ、容器の電子線滅菌処理によりハロゲン化イソキノリン誘導体の安定性が低下し、ハロゲン化イソキノリン誘導体由来の類縁物質が経時的に生成し得ることが判明した。
したがって、本発明の課題は、容器と当該容器に収容されたハロゲン化イソキノリン誘導体含有水性組成物とを備え、容器が滅菌処理されていながら水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体の安定性が良好な医薬製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、滅菌処理の中でもガス滅菌処理という特定の方法により処理された容器にハロゲン化イソキノリン誘導体含有水性組成物を収容することにより、水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体由来の類縁物質の生成が抑制され、安定性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、次の一般式(1)
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ガス滅菌処理された容器に収容されてなる、医薬製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器が滅菌処理されていながら水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体由来の類縁物質の生成が抑制され、安定性に優れる医薬製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書の開示において使用される用語は特に言及しない限り、当該分野における通常の意味で用いられる。従って、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の記載と当業者の一般的な理解が矛盾する場合には、本明細書の記載が優先する。
【0017】
前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。前記一般式(1)において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
また、前記一般式(1)において、メチル基の置換したホモピペラジン環を構成する炭素原子は不斉炭素である。そのため、立体異性が生じるが、一般式(1)で表される化合物にはいずれの立体異性体も包含され、単一の立体異性体でもよく、各種立体異性体の任意の割合の混合物でもよい。前記一般式(1)で表される化合物としては、絶対配置がS配置である化合物が好ましい。
【0018】
前記一般式(1)で表される化合物の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されず、具体的には例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、塩酸塩が好ましい。
さらに、前記一般式(1)で表される化合物又はその塩は、水和物やアルコール和物等の溶媒和物であってもよく、水和物であるのが好ましい。
【0019】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、具体的には例えば、
リパスジル(化学名:4-フルオロ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン)若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物;
等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物としては、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物がより好ましく、リパスジル若しくはその塩酸塩又はそれらの水和物がさらに好ましく、以下の構造式:
【0021】
【化4】
【0022】
で表されるリパスジル塩酸塩水和物(リパスジル1塩酸塩2水和物)が特に好ましい。
【0023】
前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は公知であり、公知の方法により製造できる。具体的には例えば、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第1999/020620号パンフレット、国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。また、4-ブロモ-5-{[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル}イソキノリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物は、国際公開第2006/115244号パンフレット記載の方法等により製造することが出来る。
【0024】
水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は特に限定されず、適用疾患や患者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定すればよいが、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、一般式(1)で表される化合物のフリー体に換算して0.01~10w/v%含有するのが好ましく、0.02~8w/v%含有するのがより好ましく、0.04~6w/v%含有するのが特に好ましい。中でも、一般式(1)で表される化合物としてリパスジルを用いる場合においては、優れた薬理作用を得る観点から、水性組成物全容量に対して、リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリー体に換算して0.05~5w/v%含有するのが好ましく、0.1~3w/v%含有するのがより好ましく、0.1~2w/v%含有するのが特に好ましい。
【0025】
本開示において「水性組成物」とは、少なくとも水を含有する組成物を意味し、その性状としては、液状(溶液又は懸濁液)、半固形状(軟膏)が挙げられる。なお、組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
水性組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、医薬製剤の使用時の安全性、使用感等の観点から、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、90~99.8質量%が特に好ましい。
【0026】
また、水に対する一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有質量比〔(化合物(1))/(水)〕は特に限定されないが、医薬製剤の使用時の有効性や安全性、使用感等の観点から、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00007以上、更に好ましくは0.0001以上、更に好ましくは0.0005以上、更に好ましくは0.001以上、更に好ましくは0.002以上、更に好ましくは0.003以上、特に好ましくは0.004以上であり、また、医薬製剤の使用時の有効性や安全性、使用感等の観点から、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、更に好ましくは0.03以下、更に好ましくは0.01以下、更に好ましくは0.009以下、更に好ましくは0.008以下、更に好ましくは0.007以下、更に好ましくは0.006以下である。具体的な範囲としては、0.00007以上0.009以下が好ましく、0.002以上0.008以下がより好ましく、0.003以上0.007以下が更に好ましく、0.004以上0.006以下が特に好ましい。
【0027】
水性組成物は、例えば、第十八改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、後述する容器に収容可能なものである限り特に限定されないが、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用を有効に利用する観点から、眼疾患用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0028】
水性組成物は、上記した以外に、剤形に応じて、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいても良い。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
こうした添加物としては、具体的には例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルギン酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、イプシロン-アミノカプロン酸、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エデト酸ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d-カンフル、dl-カンフル、キシリトール、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、グリセリン、グルコン酸、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、クレアチニン、クロルヘキシジングルコン酸塩液、クロロブタノール、結晶リン酸二水素ナトリウム、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酸化チタン、ジェランガム、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、臭化べンゾドデシニウム、酒石酸、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、D-ソルビトール、ソルビトール液、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チメロサール、チロキサポール、デヒドロ酢酸ナトリウム、トロメタモール、濃グリセリン、濃縮混合トコフェロール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、濃ベンザルコニウム塩化物液50、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、ヒアルロン酸ナトリウム、人血清アルブミン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ベンジルアルコール、ベンゼトニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、d-ボルネオール、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D-マンニトール、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メタンスルホン酸、メチルセルロース、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リンゴ酸、ワセリン等が例示される。
【0029】
添加物の中では、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、グリセリン、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、濃グリセリン、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ブドウ糖、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物液、ホウ砂、ホウ酸、ポビドン、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール4000、マクロゴール6000、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メチルセルロース、モノエタノールアミン、リン酸、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、l-メントール等が好ましい。
【0030】
水性組成物は、さらに、上記した以外に、適用疾患等に応じて、他の薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、例えば、ブナゾシン塩酸塩などのブナゾシン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα1受容体遮断薬;ブリモニジン酒石酸塩などのブリモニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アプラクロニジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むα2受容体遮断薬;カルテオロール塩酸塩などのカルテオロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ニプラジロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、チモロールマレイン酸塩などのチモロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベタキソロール塩酸塩などのベタキソロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、レボブノロール塩酸塩などのレボブノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ベフノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メチプラノロール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むβ遮断薬;ネタルスジルメシル酸塩などのネタルスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むRhoキナーゼ阻害薬;ドルゾラミド塩酸塩などのドルゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ブリンゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、アセタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ジクロルフェナミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、メタゾラミド若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む炭酸脱水素酵素阻害剤;イソプロピルウノプロストン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、タフルプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、トラボプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ビマトプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ラタノプロスト若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、クロプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フルプロステノール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むプロスタグランジンF2α誘導体;ジピべフリン塩酸塩などのジピべフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エピネフリン、エピネフリンホウ酸塩、エピネフリン塩酸塩などのエピネフリン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む交感神経作動薬;ジスチグミン臭化物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、ピロカルピン、ピロカルピン塩酸塩、ピロカルピン硝酸塩などのピロカルピン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、カルバコール若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含む副交感神経作動薬;ロメリジン塩酸塩などのロメリジン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むカルシウム拮抗薬;デメカリウム若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、エコチオフェート若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、フィゾスチグミン若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むコリンエステラーゼ阻害剤;オミデネパグイソプロピルなどのオミデネパグ若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含むEP2受容体作動薬などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を配合できる。
他の薬効成分としては、ブリモニジン、ラタノプロスト、ニプラジロール、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、チモロール及びオミデネパグイソプロピル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0031】
水性組成物のpHは特に限定されないが、4~9が好ましく、4.5~8がより好ましく、5~7が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6~3が好ましく、0.6~2が特に好ましい。
【0032】
本開示において「容器」とは、前記水性組成物を直接的に収容する包装体を意味する。容器は、第十八改正日本薬局方 通則に定義される「密閉容器」、「気密容器」、「密封容器」のいずれをも包含する概念である。
【0033】
当該容器の形態は、前記水性組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形、医薬製剤の用途等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。
【0034】
本開示において「ガス滅菌処理された容器」とは、通常の保存状態において水性組成物が接する容器の本体部分が、滅菌ガスと接触させることにより滅菌処理された容器を意味する。従って、ガス滅菌処理された容器において、必要に応じて設けられるノズル、蓋等の他の部材は滅菌処理されていなくともよく、他の滅菌処理が施されているものであってもよい。ここで、ガス滅菌処理に用いられる滅菌ガスとしては特に限定されず、具体的には例えば、エチレンオキサイド(酸化エチレン)ガス、プロピレンオキサイドガス、塩素、オゾン、ホルムアルデヒド、βプロピオラクトン、メチルブロマイド、過酸化水素ガス等が挙げられる。
本開示においてガス滅菌処理としては、類縁物質の生成の抑制の観点から、エチレンオキサイドガス滅菌処理及び過酸化水素ガス滅菌処理から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0035】
本開示においてガス滅菌としては、ガスを用いて滅菌処理する方法であれば特に制限されないが、例えば、所定の温度、所定の湿度の下、滅菌するのに十分な時間、容器を滅菌ガスに曝すことで滅菌を行い、その後、滅菌ガスを除去するためにエアレーションをする手順で行われる。
本開示においてガス滅菌の温度は、ガスの種類、容器の特性に応じて適宜選択できるが、好ましくは30~60℃である。
本開示においてガス滅菌の湿度(相対湿度)は、ガスの種類、容器の特性に応じて適宜選択できるが、好ましくは30~90%、より好ましくは30~85%である。
本開示においてガス滅菌の時間は、例えば、1分間~10時間、好ましくは2分間~5時間である。
【0036】
本開示においてガス滅菌に使用されるガスは、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性気体と滅菌ガスとの混合ガスであってもよい。混合ガスを用いる場合の滅菌ガスと不活性気体との割合は、例えば、体積比で5:95~50:50であり、10:90~40:60が好ましく、20:80~35:65がより好ましい。
本開示においてガス滅菌で使用されるガスの濃度は、ガスの種類、容器の特性に応じて適宜選択できるが、好ましくは120~1200mg/Lである。
本開示において滅菌ガスを除去するためのエアレーションは必ずしも実施する必要はないが、エアレーションを実施する場合は、例えば、空気、窒素、アルゴン、二酸化炭素等を使用することができ、エアレーション時間は、8時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましく、24時間以上がさらに好ましい。
【0037】
本開示において、ガス滅菌された容器は、残留ガス濃度が、例えば0~10ppmであり、0~5ppmが好ましく、0~1ppmがより好ましく、検出されないのが最も好ましい。なお、残留ガス濃度は、例えば、日本医療用プラスチック協会「医療用具の残留エチレンオキサイドの定量法」等を参考に測定することができる。
【0038】
容器の材質(材料)は特に限定されず、ガス滅菌処理が可能な限りにおいて、容器の形態に応じて適宜選択できる。このような容器の材質としては、具体的には例えば、樹脂、ガラス、金属等が挙げられる。この中でも、容器の製造時及び使用時の取扱容易性の観点から、樹脂製であるのが好ましい。ガス滅菌処理は容器の過度な加熱を要しないため、樹脂製のような一般的に耐熱性に劣る材質も使用することが可能である。
樹脂としては、合成樹脂、天然樹脂の別を問わず熱可塑性樹脂であるのが好ましく、具体的には例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましく、さらにこれらの混合体(ポリマーアロイ)であってもよい。
【0039】
一つの態様として、容器の材質としては、ポリオレフィン系樹脂であるのが好ましい。
本開示において「ポリオレフィン系樹脂製」とは、その材質の少なくとも一部にポリオレフィン系樹脂を含んでいることを意味し、例えば、ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリオレフィン系樹脂製」に含まれる。
【0040】
ここで、ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、単一種のモノマーの重合体(ホモポリマー)であっても、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、コポリマーである場合においては、その重合様式は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよい。さらに、その立体規則性(タクティシティー)は特に限定されない。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、具体的には例えば、ポリエチレン(より詳細には例えば低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0041】
また、別の態様として、容器の材質としては、ポリエステル系樹脂であるのが好ましい。
本開示において「ポリエステル系樹脂製」とは、その材質の少なくとも一部にポリエステル系樹脂を含んでいることを意味し、例えば、ポリエステル系樹脂と他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリエステル系樹脂製」に含まれる。
【0042】
ここで、ポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸、ジオールは特に限定されず、ジカルボン酸としては例えばフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが、ジオールとしては例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどが挙げられる。また、単一種のポリエステル単位の重合体であっても、複数種のポリエステル単位の重合体であってもよい。また、複数種のポリエステル単位の重合体の場合には、その重合様式は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよい。さらに、その立体規則性(タクティシティー)は特に限定されない。
このようなポリエステル系樹脂としては、具体的には例えば、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアルキレンナフタレート(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等)、ポリシクロアルキレンテレフタレート(例えば、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)等)、ポリアリレート(例えば、ビスフェノールとフタル酸で構成された樹脂等)等のホモポリエステルや、これらのホモポリエステル単位を主成分として含むコポリエステル、さらには前記ホモポリエステルの共重合体などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組合わせて使用できる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0043】
容器には、さらに紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などの紫外線の透過を妨げる物質を練り込んでもよい。これにより、一般式(1)で表される化合物の光に対する安定性が改善される。上記紫外線散乱剤としては、具体的には例えば、酸化チタン;酸化亜鉛等が挙げられる。また、上記紫外線吸収剤としては、具体的には例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール(例えば、Tinuvin P:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(例えば、Tinuvin 234:BASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin320:BASF社)、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 326:BASF社)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin327:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール(例えば、Tinuvin PA328:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 329:BASF社)、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(例えば、Tinuvin 360:BASF社)、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300の反応生成物(例えば、Tinuvin 213:BASF社)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(例えば、Tinuvin 571:BASF社)、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3'-(3'',4'',5'',6''-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5'-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2-ビス{[2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート)(例えば、Uvinul 3030 FF:BASF社)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル(例えば、Uvinul 3035:BASF社)、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルへキシル(例えば、Uvinul 3039:BASF社)等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(例えば、Tinuvin 1577 ED:BASF社)等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン(例えば、Chimassorb 81:BASF社)、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン(例えば、Uvinul 3049:BASF社)、2,2'-4,4'-テトラヒドロベンゾフェノン(例えば、Uvinul 3050:BASF社)、オキシベンゾン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ケイ皮酸ベンジル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、4-[N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)アミノ]安息香酸エチル等の安息香酸エステル系紫外線吸収剤;サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤;グアイアズレン;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル;2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5-トリアジン;パラヒドロキシアニソール;4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン;フェニルベンズイミダゾールスルホン酸;2-(4-ジエチルアミノ-2-ヒドロキシベンゾイル)-安息香酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0044】
なお、紫外線の透過を妨げる物質を容器に練り込む場合、その配合割合は、当該物質の種類等によって異なるが、例えば、容器中に、0.001~50質量%、好ましくは0.002~25質量%、特に好ましくは0.01~10質量%程度とすればよい。
【0045】
容器は、その内部が肉眼で視認可能(観察可能)であるのが好ましい。内部が視認可能であれば、医薬製剤の製造工程において異物混入の有無等の検査が可能となる、医薬製剤の使用者が内容物(水性組成物)の残量を確認できる等のメリットが生ずる。ここで、視認可能性は、少なくとも容器表面の一部において確保されていればよい(例えば、点眼剤用容器の側面がシュリンクフィルム等により見通せなくなっていても、底面が視認可能であれば視認可能と言える。)。容器表面の一部において内部が視認可能であれば、これにより、容器内の水性組成物が確認可能となる。
【0046】
容器への水性組成物の収容手段は特に限定されず、容器の形態等に従って常法により充填等すればよい。
【0047】
医薬製剤の適用疾患は特に限定されず、前記一般式(1)で表される化合物の有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。
具体的には例えば、一般式(1)で表される化合物の有するRhoキナーゼ阻害作用や眼圧低下作用に基づき、高眼圧症や緑内障の予防又は治療剤として利用できる。ここで、緑内障としては、より詳細には例えば、原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateau iris syndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障などが挙げられる。
【0048】
また、日本国特許第5557408号公報に開示されるように、眼底疾患(主として網膜及び/又は脈絡膜に発現する病変。具体的には例えば、高血圧と動脈硬化による眼底変化、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion)や網膜静脈分枝閉塞症(branch retinal vein occlusion)等の網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病黄斑症、イールズ病(Eales disease)、コーツ病(Coats disease)等の網膜血管先天異常、ヒッペル病(von Hippel disease)、脈なし病(pulseless disease)、黄斑疾患(中心性網脈絡膜症(central serous chorioretinopathy)、嚢胞様黄斑浮腫(cystoid macular edema)、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration)、黄斑円孔(macular hole)、近視性黄斑萎縮(myopic macular degeneration)、網膜硝子体界面黄斑変性症、薬物毒性黄斑変性症、遺伝性黄斑変性等)、(裂孔原性、牽引性、滲出性等の)網膜剥離、網膜色素変性症、未熟児網膜症等が挙げられる。)の予防又は治療剤、より好適には糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫又は加齢黄斑変性の予防又は治療剤として利用できる。
さらに、日本国特許第5657252号公報に開示されるように、角膜内皮障害の予防及び/又は治療剤としても利用できる。
【0049】
また、本開示は、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物を、ガス滅菌処理された容器に収容する工程を含む、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量低下の抑制方法にも関する。
なお、斯かる態様の発明において、各種文言の意義、各成分の配合量等は全て上記した「医薬製剤」について説明したのと同様である。
【0050】
本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の実施形態を開示する。
[1A] 次の一般式(1)
【0051】
【化5】
【0052】
[式中、Xはハロゲン原子を示す。]
で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ガス滅菌処理された容器に収容されてなる、医薬製剤。
[2A] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[1A]記載の医薬製剤。
[3A] 前記容器が、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の樹脂製の容器である、[1A]又は[2A]記載の医薬製剤。
[4A] 前記容器が、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の樹脂製の容器である、[1A]~[3A]のいずれか記載の医薬製剤。
[5A] 前記ガス滅菌処理が、過酸化水素ガス滅菌処理及びエチレンオキサイドガス滅菌処理よりなる群から選ばれるガス滅菌処理である、[1A]~[4A]のいずれか記載の医薬製剤。
【0053】
[1B] 前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物を、ガス滅菌処理された容器に収容する工程を含む、前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含量低下の抑制方法。
[2B] 前記一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、[1B]記載の方法。
[3B] 前記容器が、ポリオレフィン系樹脂及びポリエステル系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の樹脂製の容器である、[1B]又は[2B]記載の方法。
[4B] 前記容器が、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートよりなる群から選ばれる1種以上の樹脂製の容器である、[1B]~[3B]のいずれか記載の方法。
[5B] 前記ガス滅菌処理が、過酸化水素ガス滅菌処理及びエチレンオキサイドガス滅菌処理よりなる群から選ばれるガス滅菌処理である、[1B]~[4B]のいずれか記載の方法。
【実施例0054】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の試験例において、リパスジル1塩酸塩2水和物は、例えば国際公開第2006/057397号パンフレット記載の方法により製造することが出来る。
また、以下の試験例において、HPLCを用いたリパスジル及びその類縁物質の測定は、カラムとしてODSカラムを、移動相として0.01モル/L リン酸緩衝液とアセトニトリルを、検出器として紫外吸光光度計(波長:280nm)をそれぞれ用いて行った。
【0055】
[試験例1]
以下の実施例1、2及び比較例1の医薬製剤を製造し、40℃、25±10パーセントの範囲内の相対湿度(RH)で6ヶ月間保存した。
容器の滅菌方法の相違によるリパスジルの分解物の生成の有無を確認するため、保存開始前及び6ヶ月保存後の各医薬製剤につき、リパスジル類縁物質を評価した。リパスジル類縁物質は、HPLCを用いて、リパスジルのピーク面積に対する、類縁物質のピーク面積の比率(%)として評価した。
そして、得られた各医薬製剤の保存開始前及び6ヶ月保存後の類縁物質のピーク面積の比率(%)から、以下の式により、類縁物質増加量(%)を算出した。結果を表1に示す。
【0056】
[数1]
類縁物質増加量(%)=6ヶ月保存後の類縁物質のピーク面積の比率(%)-保存開始時の類縁物質のピーク面積の比率(%)
【0057】
〔実施例1〕
市販のグラナテック(登録商標)点眼液0.4%と同一組成の水性組成物(1mL中に、リパスジル1塩酸塩2水和物4.986mg(リパスジルとして4.0mg)、無水リン酸二水素ナトリウム、グリセリン、水酸化ナトリウム及び濃ベンザルコニウム塩化物液50を含有する水性組成物)を、過酸化水素ガス滅菌処理された容器(VHP滅菌容器、ポリプロピレン製の点眼容器)に収容し、実施例1の医薬製剤とした。
なお、VHP滅菌容器は、容積10立方メートルのチャンバー内にて、処理温度40~50℃の条件下で、過酸化水素水溶液(35質量%)110~220gを気化させて得られたガスに10分間曝すことにより滅菌処理されたものを使用した。
【0058】
〔実施例2〕
VHP滅菌容器の代わりに、エチレンオキサイドガスにより滅菌処理された容器(EOG滅菌容器、ポリプロピレン製の点眼容器)に収容したほかは実施例1の医薬製剤と同様の方法により、実施例2の医薬製剤とした。
なお、EOG滅菌容器は、エチレンオキサイドガス濃度400~700mg/L、処理温度40~50℃、相対湿度45~85%、処理時間3時間以上の条件で滅菌処理したものを使用した。
【0059】
〔比較例1〕
VHP滅菌容器の代わりに、電子線照射により滅菌処理された容器(EB滅菌容器、ポリプロピレン製の点眼容器)に収容したほかは実施例1の医薬製剤と同様の方法により、比較例1の医薬製剤とした。
なお、EB滅菌容器は、電子線を25kGy照射することにより滅菌処理されたものを使用した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1記載の結果の通り、リパスジル1塩酸塩2水和物を含有する水性組成物を、過酸化水素ガス滅菌処理された容器に収容した実施例1の医薬製剤においては、同じく電子線滅菌処理された容器に収容した比較例1の医薬製剤と比較して、類縁物質増加量が5分の1以下となった。また、リパスジル1塩酸塩2水和物を含有する水性組成物を、エチレンオキサイドガス滅菌処理された容器に収容した実施例2の医薬製剤においては、同じく電子線滅菌処理された容器に収容した比較例1の医薬製剤と比較して、類縁物質増加量が15分の1以下となった。
【0062】
以上の試験結果から、リパスジル1塩酸塩2水和物に代表される前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、過酸化水素ガス滅菌やエチレンオキサイドガス滅菌に代表されるガス滅菌処理のされた容器に収容されてなる医薬製剤においては、同じく電子線滅菌処理のされた容器に収容されてなる医薬製剤と比較して類縁物質の増加が抑制されることが明らかとなった。
【0063】
[試験例2]
市販のグラナテック(登録商標)点眼液0.4%と同一組成の水性組成物(1mL中に、リパスジル1塩酸塩2水和物4.986mg(リパスジルとして4.0mg)、無水リン酸二水素ナトリウム、グリセリン、水酸化ナトリウム及び濃ベンザルコニウム塩化物液50を含有する水性組成物)を準備し、これを2つに分け、一方は実施例1と同様のVHP滅菌容器に収容して実施例3の医薬製剤とし、他方は滅菌処理を施していないほかは同一のポリプロピレン製の点眼容器に収容して比較例2の医薬製剤とした。
【0064】
得られた実施例3、比較例2の医薬製剤を、60℃で1ヶ月間保存した。
1ヶ月保存後の各医薬製剤につき、試験例1と同様の方法により類縁物質のピーク面積の比率(%)を評価した。
【0065】
【表2】
【0066】
表2記載の結果の通り、リパスジル1塩酸塩2水和物を含有する水性組成物を、過酸化水素ガス滅菌処理された容器に収容した実施例3の医薬製剤における60℃1ヶ月保管後の類縁物質量は、滅菌処理を施していない容器に収容した比較例2の医薬製剤の類縁物質量と殆ど異ならない値となった。
【0067】
以上の試験結果から、リパスジル1塩酸塩2水和物に代表される前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、過酸化水素ガス滅菌に代表されるガス滅菌処理のされた容器に収容されてなる医薬製剤においては、滅菌処理に起因する類縁物質の生成が抑制されることが明らかとなった。
【0068】
[製造例1]
市販のグラナテック(登録商標)点眼液0.4%と同一組成の水性組成物(1mL中に、リパスジル1塩酸塩2水和物4.986mg(リパスジルとして4.0mg)、無水リン酸二水素ナトリウム、グリセリン、水酸化ナトリウム及び濃ベンザルコニウム塩化物液50を含有する水性組成物)5mLを、エチレンオキサイドガス滅菌処理された容器(EOG滅菌容器、ポリプロピレン製の点眼容器)に収容し、製造例1の医薬製剤とした。
なお、EOG滅菌容器は、エチレンオキサイドガス濃度400~700mg/L、処理温度40~50℃、相対湿度45~85%、処理時間3時間以上の条件で滅菌処理したものを使用した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、容器が滅菌処理されていながら水性組成物中のハロゲン化イソキノリン誘導体由来の類縁物質の生成が抑制され、安定性に優れる医薬製剤を提供することができ、医薬品産業等において好適に利用できる。