(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032704
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】変性高シスポリブタジエンポリマー、関連方法及びゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08C 19/25 20060101AFI20240305BHJP
C08F 4/52 20060101ALI20240305BHJP
C08F 4/70 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08C19/25
C08F4/52
C08F4/70
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023217193
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2021566136の分割
【原出願日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/844,314
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シセルキ、ジェフリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン、テレンス イー.
(72)【発明者】
【氏名】クヘル、3世、ジェームズ ジェイ.
(57)【要約】
【課題】変性高シスポリブタジエンポリマー、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセス、及び変性高シスポリブタジエンポリマーを含有するタイヤゴム組成物を提供する。
【解決手段】本明細書に開示されるのは、変性高シスポリブタジエンポリマー、変性高シスポリブタジエンポリマー、及び変性高シスポリブタジエンポリマーを使用して作製されたタイヤ成分を調製するためのプロセスが開示される。プロセスは、特定の触媒系を使用して、1,3-ブタジエンモノマーの量から変性高シスポリブタジエンを調製するために、式(I)の官能化化合物を使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセスであって、
A.触媒系を提供することであって、
a.ランタニド系触媒系であって、(i)ランタニド化合物、(ii)アルキル化剤、及び(iii)ハロゲン源を含むランタニド系触媒系であって、(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供されてもよい、ランタニド系触媒系と、
b.ニッケル系触媒系であって、(i)任意選択的にアルコールと組み合わせたニッケル化合物、(ii)有機アルミニウム、有機マグネシウム、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせと、(iii)フッ素含有化合物又はこれらの錯体と、を含むニッケル系触媒系と、
c.(i)コバルト化合物、(ii)有機ハロゲン化アルミニウム、及び(iii)任意に水を含むコバルト系触媒系と、を含む、ことと、
B.(A)の触媒系を使用して、1,3-ブタジエンを重合させて、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、
C.(B)からの前記リビング末端ポリマー鎖を、以下の式(I)を有する官能化化合物と反応させることであって、
【化1】
式中、Xは、前記リビング末端ポリマー鎖と反応する基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、
R
1は、C
1~C
20、好ましくはC
1~C
10、より好ましくはC
1~C
3のヒドロカルビレンから選択され、上記のそれぞれは、1つの不飽和炭素-炭素結合を任意に含有し、
各R’は、C
1~C
20アルコキシ、好ましくはC
1~C
10アルコキシ、より好ましくはC
1~C
6アルコキシ、最も好ましくはC
1又はC
2のアルコキシから選択され、
R’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリール、好ましくはC
1~C
10のアルキル又はC
6~C
14のアリール、より好ましくはC
1~C
6のアルキル又はC
6のアリールから選択され、
それにより、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量を有する変性高シスポリブタジエンを生成する、ことと、
D.(C)の変性高シスポリブタジエンを単離して、最終変性高シスポリブタジエンを生成することであって、
100℃で20~100、好ましくは30~80の初期ムーニー粘度ML
1+4であり、
100℃で120以下、好ましくは105以下の熟成ムーニー粘度ML
1+4であり、
前記単離は、好ましくは、水蒸気蒸留によって行われる、ことと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記官能化化合物が、モル比が官能化化合物の前記モル、前記触媒系の一次金属のモルを基準として100:1~0.5:1、好ましくは50:1~1:1、より好ましくは30:1~2:1の前記モル比で使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
式(I)のXがエポキシ基であり、好ましくは、前記エポキシ環中に2~4個の炭素原子を有するエポキシ基である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
式(I)のXがグリシドキシ基である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
式(I)のXがシアノ基である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項6】
(D)の前に、(C)の前記変性高シスポリブタジエンを、以下の式(II)の安定化剤と反応させることであって、
R2
nSi(OR3)4-n
式中、R2は、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基からなる群から選択され、好ましくは、C1~C10アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6~C14芳香族基、より好ましくはC1~C6アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6芳香族基からなる群から選択され、
式中、R3はR2と同じであっても異なっていてもよく、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基から選択され、好ましくは、C1~C10アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6~C14芳香族基、より好ましくはC1~C6アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6芳香族基からなる群から選択され、
nは1~3の整数である、ことを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記安定化剤が、安定化剤の前記モル、官能化化合物のモルを基準として、モル比が0.01:1~10:1、好ましくは0.1:1~5:1、より好ましくは0.5:1~2:1の前記モル比で使用される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記安定化剤が、以下の式(III)の急冷剤と共に使用され、
R4COOH
式中、R4はH及びC1~C18アルキルからなる群から選択され、好ましくはH及びC1~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくはC2~C8アルキルからなる群から選択される、請求項6又は7に記載のプロセス。
【請求項9】
式(III)の前記急冷剤が、モル比が急冷剤の前記モル、安定化剤のモルに基づいて前記モル比が0.1:1~10:1、好ましくは0.1:1~5:1、より好ましくは0.5:1~2:1で使用される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒系が、ランタニド系触媒系(a)である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ポリブタジエンが、以下のうちの少なくとも1つを満たし、
a.150,000~2,000,000グラム/モル、好ましくは250,000~1,000,000グラム/モル、より好ましくは300,000~800,000グラム/モルのMwを有する、
b.80,000~800,000グラム/モル、好ましくは90,000~500,000グラム/モル、より好ましくは150,000~400,000グラム/モルのMnを有する、
c.1.5~4、好ましくは1.8~3.8、又は1.8~2.5のMw/Mnを有し、又は
d.100℃で40~70の初期ムーニー粘度ML1+4を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセスから得られる変性高シスポリブタジエンポリマー。
【請求項13】
変性高シスポリブタジエンポリマーであって、
以下の式(I)を有する官能化化合物の残基に結合したポリマー鎖を有し、
【化2】
式中、Xは、前記リビング末端ポリマー鎖と反応する基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、
R
1は、C
1~C
20、好ましくはC
1~C
10、より好ましくはC
1~C
3のヒドロカルビレンから選択され、上記のそれぞれは、1つの不飽和炭素-炭素結合を任意に含有し、
各R’は、C
1~C
20アルコキシ、好ましくはC
1~C
10アルコキシ、より好ましくはC
1~C
6アルコキシ、最も好ましくはC
1又はC
2のアルコキシから選択され、
R’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリール、好ましくはC
1~C
10のアルキル又はC
6~C
14のアリール、より好ましくはC
1~C
6のアルキル又はC
6のアリールから選択され、
各ポリマー鎖が、前記X基を介して前記官能化化合物の前記残基に結合され、前記ポリマーが、
100℃で20~100、好ましくは30~80の初期ムーニー粘度ML
1+4であり、
100Cで120以下、好ましくは105以下の熟成ムーニー粘度ML
1+4である、変性高シスポリブタジエンポリマー。
【請求項14】
以下のうちの少なくとも1つを満たす、請求項13に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマーであって、
a.150,000~2,000,000グラム/モル、好ましくは250,000~1,000,000グラム/モル、より好ましくは300,000~800,000グラム/モルのMwを有し、
b.80,000~800,000グラム/モル、好ましくは90,000~500,000グラム/モル、より好ましくは150,000~400,000グラム/モルのMnを有し、
c.1.5~4、好ましくは1.8~3.8、又は1.8~2.5のMw/Mnを有し、又は
d.100℃で40~70の初期ムーニー粘度ML1+4を有する、請求項13に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマー。
【請求項15】
(a)~(d)のそれぞれが満たされる、請求項14に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマー。
【請求項16】
式(I)のXがエポキシ基である、請求項13~15のいずれか一項に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマー。
【請求項17】
式(I)のXがグリシドキシ基であり、前記ポリマー鎖が、前記エポキシ基から炭素原子に結合している、請求項16に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマー。
【請求項18】
式(I)のXがシアノ基である、請求項13~15のいずれか一項に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマー。
【請求項19】
ゴム組成物を含むタイヤ成分であって、
a.エラストマー成分であって、
i.10~100phr、好ましくは20~80phrの、請求項13~18のいずれか一項に記載の高シス変性ポリブタジエンポリマー又は請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスから得られる前記高シス変性ポリブタジエンポリマーと、
ii.0~90phrの、未変性ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレンからなる群から選択される少なくとも1つの追加のポリマーと、を含む、エラストマー成分と、
b.補強充填剤成分であって、
i.10~200phr、好ましくは30~200phr、より好ましくは50~150phrの補強シリカ充填剤と、
ii.0~50phrの補強カーボンブラック充填剤であって、前記補強カーボンブラック充填剤が、補強シリカ充填剤の重量の20%以下、好ましくは補強シリカ充填剤の重量の10%以下の量で存在する、補強カーボンブラック充填剤と、を含む、補強充填剤成分と、
c.可塑化成分であって、
i.0~50phr、好ましくは0~30phr、より好ましくは0~15phrの少なくとも1種の可塑化油と、
ii.0~60phr、好ましくは5~60phr、より好ましくは10~50phrの、少なくとも30℃のTgを有する少なくとも1つの炭化水素樹脂と、を含む、可塑化成分と、
d.硬化パッケージ(好ましくは、少なくとも1つの加硫剤;少なくとも1つの加硫促進剤;及び任意選択で加硫活性剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫抑制剤、及び/又は焦げ付き防止剤、より好ましくは、前述のそれぞれの少なくとも1つを含む)と、を含む、タイヤ成分。
【請求項20】
トレッドである、請求項19に記載のタイヤ成分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、変性高シスポリブタジエンポリマー、関連する方法及びタイヤゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高シスポリブタジエンポリマーは、タイヤトレッドなどのタイヤ成分に使用するためのタイヤゴム組成物での使用を含む、業界での多くの用途を有する。特定の官能化化合物によるこのような高シスポリブタジエンポリマーの変性は、フィラ-ポリマー相互作用を増加させるために、望ましい初期ムーニー粘度を有するポリマーをもたらし得るが、このようなポリマーは、熟成時にムーニー粘度成長を起こしやすく、変性ポリマーの貯蔵を伴う課題が生じる場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示されるのは、変性高シスポリブタジエンポリマー、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセス、及び変性高シスポリブタジエンポリマーを含有するタイヤゴム組成物が開示される。
【0004】
第1の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセスが提供される。第1の実施形態によれば、本プロセスは、(A)(a)ランタニド系触媒系であって、(i)ランタニド化合物、(ii)アルキル化剤、及び(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供され得るハロゲン源を含む、と、を含むランタニド系触媒系と、(b)ニッケル系触媒系であって、(i)任意選択的にアルコールと組み合わせたニッケル化合物、(ii)有機アルミニウム、有機マグネシウム、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせ、及び(iii)フッ素含有化合物又はこれらの錯体と、を含むニッケル系触媒系と、又は(c)(i)コバルト化合物、(ii)有機ハロゲン化アルミニウム、及び(iii)任意に水を含むコバルト系触媒系と、を含む、触媒系を提供することと、(B)(A)の触媒系を使用して、1,3-ブタジエンを重合させて、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(C)(B)からのリビング末端ポリマー鎖を、以下の式(I)を有する官能化化合物と反応させることであって、
【化1】
式中、Xは、リビング末端ポリマー鎖と反応する基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、R
1は、C
1~C
20のヒドロカルビレンから選択され、上記のそれぞれは、1つの不飽和炭素-炭素結合を任意に含有し、各R’はC
1~C
20のアルコキシから選択され、R’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリールから選択され、それにより、少なくとも92%のシス1,4-結合含量を有する変性高シスポリブタジエンを生成することと、(D)(C)の変性高シスポリブタジエンを単離して、20~100の100℃で初期ムーニー粘度ML
1+4、及び100℃で120以下の熟成ムーニー粘度ML
1+4を有する最終変性高シスポリブタジエンを生成することと、を含む。
【0005】
第2の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーが提供される。第2の実施形態によれば、変性高シスポリブタジエンポリマーは、以下の式(I)を有する官能化化合物の残基に結合したポリマー鎖を有する。
【化2】
式中、Xは、リビング末端ポリマー鎖と反応性の基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、R
1はC
1~C
20のヒドロカルビレンから選択され、上記のそれぞれは1つの不飽和炭素-炭素結合を含有し、R’はC
1~C
20のアルコキシから選択され、及びR’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリールから選択され、各ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物の残基に結合し、ポリマーは、100℃で20~100の初期ムーニー粘度ML
1+4、及び100℃で120以下の熟成ムーニー粘度ML
1+4を有する。
【0006】
第3の実施形態では、第2の実施形態の高シス変性ポリブタジエン又は第1の実施形態のプロセスによって作製された高シス変性ポリブタジエンを含むゴム組成物を含むタイヤ成分が提供される。第3の実施形態によれば、タイヤ成分のゴム組成物は、(a)エラストマー成分であって、(i)第2の実施形態に係る10~100phrの高シス変性ポリブタジエンポリマー、又は第1の実施形態のプロセスから得られる高シス変性ポリブタジエンポリマーと、及び(ii)0~90phrの未変性ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレンからなる群から選択される少なくとも1種の追加のポリマーと、を含むエラストマー成分と、(b)補強充填剤成分であって、(i)10~200phrの補強シリカ充填剤と、(ii)0~50phrの補強カーボンブラック充填剤と、を含み、補強カーボンブラック充填剤が、補強シリカ充填剤の重量の20%以下の量で存在する補強充填剤成分と、(c)可塑化成分であって、(i)0~50phr、好ましくは0~30フリン、及び(ii)少なくとも30CのTgを有する少なくとも1つの炭化水素樹脂0~60phrと、を含む、可塑化成分と、(d)硬化パッケージと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に開示されるのは、変性高シスポリブタジエンポリマー、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセス、及び変性高シスポリブタジエンポリマーを含有するタイヤゴム組成物が開示される。
【0008】
第1の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセスが提供される。第1の実施形態によれば、本プロセスは、(A)(a)ランタニド系触媒系であって、(i)ランタニド化合物、(ii)アルキル化剤、及び(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供され得るハロゲン源を含む、と、を含むランタニド系触媒系と、(b)ニッケル系触媒系であって、(i)任意選択的にアルコールと組み合わせたニッケル化合物、(ii)有機アルミニウム、有機マグネシウム、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせ、及び(iii)フッ素含有化合物又はこれらの錯体と、を含むニッケル系触媒系と、又は(c)コバルト化合物、(ii)有機ハロゲン化アルミニウム、及び(iii)任意に水を含むコバルト系触媒系と、を含む、触媒系を提供することと、(B)(A)の触媒系を使用して、1,3-ブタジエンを重合させて、リビング末端を有するポリマー鎖を生成することと、(C)(B)からのリビング末端ポリマー鎖を、以下の式(I)を有する官能化化合物と反応させることであって、
【化3】
式中、Xは、リビング末端ポリマー鎖と反応性の基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、R
1は、C
1~C
20、好ましくはC
1~C
10、より好ましくはC
1~C
3のヒドロカルビレンから選択され、上記のそれぞれは1つの不飽和炭素-炭素結合を含有し、各R’はC
1~C
20のアルコキシから選択され、好ましくは、C
1~C
10のアルコキシ、より好ましくはC
1~C
6アルコキシ、最も好ましくはC
1又はC
2のアルコキシ、及びR’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリール、好ましくはC
1~C
10のアルキル又はC
6~C
14のアリール、より好ましくはC
1~C
6のアルキル又はC
6のアリールから選択され、それによって、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量を有する変性高シスポリブタジエンを生成する、ことと、(D)(C)の変性高シスポリブタジエンを単離することであって、単離が水蒸気蒸留によって行われ、100℃で20~100、好ましくは30~80の初期ムーニー粘度ML
1+4、及び100℃で120以下、好ましくは105以下の熟成ムーニー粘度ML
1+4を有する最終変性高シスポリブタジエンを生成することと、を含む。
【0009】
第2の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーが提供される。第2の実施形態によれば、変性高シスポリブタジエンポリマーは、以下の式(I)を有する官能化化合物の残基に結合したポリマー鎖を有する。
【化4】
式中、Xは、リビング末端ポリマー鎖と反応する基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、R
1は、C
1~C
20、好ましくはC
1~C
10のヒドロカルビレンから選択され、より好ましくはC
1~C
3であり、上記のそれぞれは、1つの不飽和炭素-炭素結合を任意に含有し、R’はC
1~C
20アルコキシ、好ましくはC
1~C
10アルコキシ、より好ましくはC
1~C
6アルコキシ、最も好ましくはC
1又はC
2のアルコキシから選択され、及びR’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリール、好ましくはC
1~C
10のアルキル又はC
6~C
14のアリールから選択され、より好ましくは、C
1~C
6のアルキル又はC
6のアリールから選択され、各ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物の残基に結合し、ポリマーは、100℃で20~100、好ましくは30~80で初期ムーニー粘度ML
1+4を有し、100℃で120以下、好ましくは105以下の熟成ムーニー粘度ML
1+4である。
【0010】
第3の実施形態では、第2の実施形態の高シス変性ポリブタジエン又は第1の実施形態のプロセスによって作製された高シス変性ポリブタジエンを含むゴム組成物を含むタイヤ成分が提供される。第3の実施形態によれば、タイヤ成分のゴム組成物は、(a)エラストマー成分であって、(i)第2の実施形態に係る10~100phr、好ましくは20~80phrの高シス変性ポリブタジエンポリマー、又は第1の実施形態のプロセスから得られる高シス変性ポリブタジエンポリマー、及び(ii)0~90の未変性ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレンからなる群から選択される少なくとも1種の追加のポリマーと、を含むエラストマー成分と、(b)補強充填剤成分であって、(i)10~200phr、好ましくは30~200phr、より好ましくは50~150phrの補強シリカ充填剤と、(ii)0~50phrの補強カーボンブラック充填剤と、を含み、補強カーボンブラック充填剤は、補強シリカ充填剤の重量の20%以下、好ましくは補強シリカ充填剤の重量の10%以下の量で存在する補強充填剤成分と、(c)可塑化成分であって、(i)0~50phr、好ましくは0~30phr、より好ましくは0~15phrの少なくとも1つの可塑化油、及び(ii)0~60phr、好ましくは5~60phr、より好ましくは10~50phrの、少なくとも30CのTgを有する少なくとも1つの炭化水素樹脂を含む、可塑化成分と、(d)硬化パッケージ(好ましくは少なくとも1種の加硫剤を含む)と、少なくとも1種の加硫促進剤と、任意に加硫活性化剤、加硫阻害剤、及び/又はスコーチ防止剤、より好ましくは前述のそれぞれのうちの少なくとも1つ)を含む。
定義
【0011】
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「リビング末端」(例えば、ポリマー鎖のリビング末端)は、まだ終端されていないリビング末端を有するポリマー種を指すように用いられ、リビング末端は官能化化合物と反応することができ、したがって反応性と言うことができる。
【0013】
本明細書で使用されるとき、略記Mnは、数平均分子量に使用される。
【0014】
本明細書で使用されるとき、略記Mwは、重量平均分子量に使用される。
【0015】
本明細書で特に指示がないかぎり、用語「ムーニー粘度」とは、ムーニー粘度、ML1+4を意味する。当業者には理解されるように、ポリマー又はゴム組成物のムーニー粘度は、加硫又は硬化前に測定される。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「天然ゴム」は、パラゴムノキ属のゴムの木及びパラゴムノキ属以外の原料(例えば、グアユールの低木及びタンポポ(例えば、TKS)など)の原料から採取することができるものなど、天然由来のゴムを意味する。言い換えれば、用語「天然ゴム」は、合成ポリイソプレンを除くものと解釈すべきである。
【0017】
本発明で使用する場合、用語「phr」とは、ゴム100部あたりの部を意味する。100部のゴムは、本明細書において100部のエラストマー成分とも称され得る。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「ポリイソプレン」は、合成ポリイソプレンを意味する。言い換えれば、この用語は、イソプレンモノマーから製造されたポリマーを示すために用いられ、天然由来のゴム(例えば、パラゴムノキ天然ゴム、グアユール起源の天然ゴム、又はタンポポ起源の天然ゴム)を含むと解釈すべきではない。ただし、用語「ポリイソプレン」は、イソプレンモノマーの天然源から製造されるポリイソプレンを含むと解釈すべきである。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「トレッド」は、通常の膨張及び負荷下で路面と接触するタイヤの部分、並びに任意のサブトレッドの両方を指す。
変性高シスポリブタジエンポリマーの調製方法
【0020】
一般に、本明細書に記載される第1の実施形態のプロセスは、溶液重合プロセスであると考えることができる。この種の重合プロセスでは、重合反応は有機溶媒系溶液中で起こる。ここで、有機溶媒系溶液は、最初に、ある量の共役ジエンモノマー及び特定の触媒系のうちの1つを含有する。一般に、第1の実施形態のプロセスによれば、有機溶媒系溶液は、溶液中のモノマー、有機溶媒、及びポリブタジエンの総重量に基づいて、20~90%重量(重量%)の有機溶媒を含む。好ましくは、有機溶媒は、モノマー、有機溶媒、及びポリブタジエンの総重量に基づいて、溶液の主成分、すなわち、50~90重量%の有機溶媒、より好ましくは70重量%~90重量%の有機溶媒を含む。本明細書に開示される溶液重合プロセスは、重合が、任意の有機溶媒が存在せずに行われる場合、又はモノマー、有機溶媒、及びポリブタジエンの総重量に基づいて存在する有機溶媒が20重量%未満存在する場合、ガス型又はバルク型重合と対比することができる。
【0021】
本明細書に記載の第1の実施形態による溶液重合プロセスで使用するのに好適な有機溶媒は、溶媒が重合反応における反応物ではないように、重合反応に対して不活性である溶媒である。好適な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が挙げられる。好適な芳香族炭化水素溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ナフタレン、メシチレン、キシレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂肪族炭化水素溶媒の例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、石油スピリットなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な脂環式炭化水素溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前述の芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、及び脂環式炭化水素溶媒の混合物も使用することができる。第1の実施形態の特定の実施形態では、好ましい有機溶媒として、脂肪族炭化水素溶媒、脂環式炭化水素溶媒、又はこれらの混合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセス中での使用に好適な更なる有用な有機溶媒が、当業者に既知である。
【0022】
本明細書に開示される第1の実施形態による溶液重合プロセスは、好ましくは、窒素、アルゴン、又はヘリウムなどの不活性ガスで覆われた嫌気条件下で実施される。重合温度は、-50℃~150℃の範囲で広範に変化してもよく、好ましい温度範囲は、50℃~120℃である。重合圧力はまた、1気圧(atm)~30atm、好ましくは1atm~10atm(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10atm)の範囲で大きく変化し得る。
【0023】
本明細書に開示される第1の実施形態による溶液重合プロセスは、連続的、半連続的、又はバッチプロセスとして実施することができる。半連続プロセスでは、モノマーを断続的に充填して、すでに重合したモノマーと置き替える。本明細書に記載のプロセスに従って1,3-ブタジエンモノマーを高シスポリブタジエンに重合することは、モノマー及びランタニド系触媒系が全て有機溶媒系溶液中に存在するときに生じる。モノマー及び触媒を有機溶媒に添加する順序は問題ではない。
【0024】
一般に、本明細書に開示される第1の実施形態の重合プロセスは、任意の好適な停止剤を添加することによって停止され得る。好適な停止剤の非限定的な例としては、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、及びこれらの混合物などのプロトン性化合物が挙げられる。他の好適な停止剤は、当業者に既知である。更に、重合が停止されると、得られた高シスポリジエンは、従来の方法、例えば、当業者に知られている、蒸気脱溶媒又は水蒸気蒸留、アルコールによる凝固、濾過、精製、乾燥などを用いて溶液から回収(又は単離)することができる。第1の実施形態の好ましい実施形態では、高シスポリブタジエンポリマーは、水蒸気蒸留を使用することによって単離される。
触媒系
【0025】
上述のように、第1の実施形態のプロセスによれば、触媒系は、(a)ランタニド系触媒系、(b)ニッケル系触媒系、又は(c)コバルト系触媒系のうちの1つから選択される。好ましくは、ランタニド系触媒系が使用される。第1の実施形態のプロセスにおける特定の触媒系のうちの1つの使用は、以下に更に説明されるように、官能化化合物でポリマー鎖のリビング末端を変性する上で利点を提供する。第1の実施形態のプロセスによれば、使用される触媒系は、アニオン性開始剤(例えば、n-ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物)の使用を回避する。
ランタニド系触媒系
【0026】
上述したように、第1の実施形態のプロセスは、(i)ランタニド化合物、(ii)アルキル化剤、及び(iii)(iii)は、(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)の両方によって任意に提供されてもよいハロゲン源を含むランタニド系触媒系を利用してもよい。ランタニド系触媒系を使用して、ある量の共役ジエンモノマー(以下に詳述される)を重合し、リビング末端を有するポリマー鎖を生成する。好ましくは、第1の実施形態のプロセスによれば、ランタニド系触媒系は、共役ジエンモノマーの任意の溶液に添加される前に予備形成される。
【0027】
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、ランタニド化合物を含む。第1の実施形態のプロセスにおいて有用なランタニド化合物は、少なくとも1つのランタニド元素原子を含む化合物である。本明細書で使用するとき、「ランタニド元素」とは、ランタニド系列の周期律表(すなわち、元素番号57~71)に見出される元素、並びにジジムを指し、これは、モンザライト砂から得られる希土類元素の混合物である。特に、本明細書に開示されるランタニド元素としては、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムが挙げられる。好ましくは、ランタニド化合物は、ネオジム、ガドリニウム、サマリウム、又はこれらの組み合わせのうち少なくとも1つの原子を含む。最も好ましくは、ランタニド化合物は、少なくとも1つのネオジム原子を含む。
【0028】
ランタニド化合物中のランタニド原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3及び+4の酸化状態であってもよい。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態によれば、ランタニド原子が+3酸化状態にある三価ランタニド化合物が使用される。一般に、第1の実施形態のプロセスで使用するのに好適なランタニド化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィナート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドβ-ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド疑似ハライド、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ランタニド化合物は、ランタニドカルボキシレートであり、より好ましくはネオジムカルボキシレート、最も好ましくはネオジムベルサテートである。
【0029】
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ランタニド化合物は、本明細書に開示される芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、又は脂環式炭化水素溶媒などの炭化水素溶媒に可溶性であり得る。しかし、重合媒体中で懸濁させて、触媒活性種を形成することができるため、炭化水素不溶性のランタニド化合物も第1の実施形態のプロセスにおいて有用な場合がある。
【0030】
説明を簡単にするために、第1の実施形態のプロセスにおいて有用なランタニド化合物についての更なる説明では、ネオジム化合物に焦点を合わせるが、当業者であれば、本明細書に開示される他のランタニド金属ベースの同様の化合物を選択することができるであろう。
【0031】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムカルボキシレートの例として、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(すなわち、ネオジムベルサテート又はNdV3)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエート、及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスフェートの例として、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスホネートの例として、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、及びネオジム(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジム有機ホスフィナートの例として、ネオジムブチルホスフィナート、ネオジムペンチルホスフィナート、ネオジムヘキシルホスフィナート、ネオジムヘプチルホスフィナート、ネオジムオクチルホスフィナート、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィナート、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジムデシルホスフィナート、ネオジムドデシルホスフィナート、ネオジムオクタデシルホスフィナート、ネオジムオレイルホスフィナート、ネオジムフェニルホスフィナート、ネオジム(p-ノニルフェニル)ホスフィナート、ネオジムジブチルホスフィナート、ネオジムジペンチルホスフィナート、ネオジムジヘキシルホスフィナート、ネオジムジヘプチルホスフィナート、ネオジムジオクチルホスフィナート、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)ホスフィナート、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジムジデシルホスフィナート、ネオジムジドデシルホスフィナート、ネオジムジオクタデシルホスフィナート、ネオジムジオレイルホスフィナート、ネオジムジフェニルホスフィナート、ネオジムビス(p-ノニルフェニル)ホスフィナート、ネオジムブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、ネオジム(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィナート、及びネオジム(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィナートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムカルバメートの例として、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソプロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメート、及びネオジムジベンジルカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物としての使用に好適なネオジムジチオカルバメートの例として、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメート、及びネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムキサンテートの例として、ネオジムメチルキサンテート、ネオジムエチルキサンテート、ネオジムイソプロピルキサンテート、ネオジムブチルキサンテート、及びネオジムベンジルキサンテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムβ-ジケトネートの例として、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネート、ネオジム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムアルコキシド又はアリールオキシドの例として、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2-エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適なネオジムハライドの例としては、ネオジムフルオリド、ネオジムクロリド、ネオジムブロミド、及びネオジムヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジム疑似ハライドには、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアニドが含まれるが、これらに限定されない。好適なネオジムオキシハライドには、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、及びネオジムオキシブロミドが含まれるが、これらに限定されない。ルイス塩基(例えばテトラヒドロフラン(「THF」))を、このクラスのネオジム化合物を不活性有機溶媒中に可溶化しやすくするための補助として用いてもよい。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライド、又はハロゲン原子を含有する他のランタニド化合物を用いる場合、ランタニド化合物は任意に、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を提供してもよい。
【0041】
本明細書で使用するとき、「有機ランタニド化合物」という用語は、少なくとも1つのランタニド-炭素結合を含有する任意のランタニド化合物を指す。これらの化合物は主に、排他的ではないが、シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl、「Cp」)、置換シクロペンタジエニル、アリル、及び置換アリル配位子を含有する化合物である。第1の実施形態のプロセスにおけるランタニド化合物として使用するのに好適な有機ランタニド化合物としては、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、及びLn(アリル)2Cl(Lnは、ランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基を表す)が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、第1の実施形態のプロセスにおいて有用なヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子などを含有していてもよい。
【0042】
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、アルキル化剤を含む。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、アルキル化剤(ヒドロカルビル化剤と称されることもある)には、1つ以上のヒドロカルビル基を別の金属に移すことができる有機金属化合物が含まれる。概して、これらの薬剤には、陽性金属、例えば第1族、第2族、及び第3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)の有機金属化合物が含まれる。第1の実施形態のプロセスで有用なアルキル化剤としては、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「有機アルミニウム化合物」という用語は、少なくとも1つのアルミニウム-炭素結合を有する任意のアルミニウム含有化合物を指す。1つ以上の実施形態では、炭化水素溶媒に可溶性である有機アルミニウム化合物を用いることができる。本明細書で使用するとき、「有機マグネシウム化合物」という用語は、少なくとも1つのマグネシウム-炭素結合を有する任意のマグネシウム含有化合物を指す。1つ以上の実施形態では、炭化水素に可溶性である有機マグネシウム化合物を用いることができる。後に詳細に説明するように、特定の好適なアルキル化剤をハライド化合物の形態とすることができる。ここで、アルキル化剤はハロゲン原子を含み、アルキル化剤は、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を任意に提供することもできる。
【0043】
第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態では、利用される有機アルミニウム化合物としては、一般式AlRa
nX3-nで表されるものが挙げられ、式中、各Raは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合した一価の有機基であり、各Xは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、nは1~3の範囲の整数である。1つ以上の実施形態では、各Raは、独立して、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基であって、各基が1個の炭素原子、又は適切な最小数の原子を含有し、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は20個の炭素原子)を形成する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基は、任意に、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。
【0044】
一般式AlRa
nX3-nによって表される、第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤として使用するための有機アルミニウム化合物の種類の例として、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド、及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-n-ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1-メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、トリス(2,6-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル-p-トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ-p-トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物の例として、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
プロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドの例として、エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn-オクチルアルミニウムジヒドリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物の例として、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ-n-プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ-n-ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ-n-オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ-p-トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムクロリド、p-トリルエチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムクロリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムクロリド、p-トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル-n-オクチルアルミニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物の例として、エチルアルミニウムジクロリド、n-プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n-ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn-オクチルアルミニウムジクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
一般式AlRa
nX3-nによって表される、第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適な他の有機アルミニウム化合物の例として、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2-エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2-エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機アルミニウム化合物は、アルミノキサンである。好適なアルミノキサンとしては、以下の一般式によって表すことができるオリゴマー直線状アルミノキサンと、
【化5】
以下の一般式によって表すことができるオリゴマー環式アルミノキサンとが挙げられ、
【化6】
式中、xは、1~100(例えば、1、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100)、又は10~50(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45又は50)の範囲の整数であり、yは、2~100(例えば、2、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100)、又は3~20(例えば、3、5、10、15又は20)の範囲の整数であり、各Rは、独立して、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合している一価の有機基である。第1の実施形態のプロセスの一実施形態では、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリル、アリル、及びアルキニル基であり、各基は、好ましくは1個の炭素原子を含有するか、又は適切な最小数の原子を含有し、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は20個の炭素原子)を形成する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。本明細書で使用するとき、アルミノキサンのモル数は、オリゴマーアルミノキサン分子のモル数ではなく、アルミニウム原子のモル数を指す。この慣習は、アルミノキサンを用いる触媒系の技術分野において広く用いられている。
【0052】
アルミノキサンの調製は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって行うことができる。この反応は、例えば、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解した後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含有される結晶体の水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させる方法、又は(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合するモノマー又はモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法などの既知の方法により行うことができる。
【0053】
第1の実施形態のプロセスにおいてアルキル化剤として使用するのに好適なアルミノキサン化合物の例として、メチルアルミノキサン(「MAO」)、変性メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及び2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンが挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、アルキル化剤はMAOを含む。変性メチルアルミノオキサンは、当業者に既知の技術を使用して、20~80パーセントのメチルアルミノキサンのメチル基をC2~C12ヒドロカルビル基(例えば、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11又はC12)に、好ましくはイソブチル基と置換することによって形成することができる。
【0054】
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、アルミノキサンは、単独で、又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することができる。第1の実施形態の一実施形態では、メチルアルミノオキサン及びアルミノオキサン以外の少なくとも1つの有機アルミニウム化合物、例えば、AlRa
nX3-nによって表される有機アルミニウム化合物は、アルキル化剤として組み合わせて使用される。この及び他の実施形態によれば、アルキル化剤は、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、アルミノキサン、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、一実施形態によれば、アルキル化剤は、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミノキサン、又はこれらの組み合わせを含む。米国特許第8,017,695号には、アルミノキサン及び有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いることができる他の例が示されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0055】
上述のように、第1の実施形態のプロセスで使用される好適なアルキル化剤としては、有機マグネシウム化合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、好適な有機マグネシウム化合物としては、一般式MgRb
2で表されるものが挙げられ、式中、各Rbは、独立して、炭素原子を介してマグネシウム原子に結合する一価の有機基である。1つ以上の実施形態では、各Rbは、独立して、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリール、及びアルキニル基であって、各基が好ましくは1個の炭素原子を含有するか、又は適切な最小数の原子を含有し、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は20個の炭素原子)を形成する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を任意に含有してもよい。
【0056】
一般式MgRb
2によって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤として使用するのに好適な有機マグネシウム化合物の例として、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、及びジベンジルマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
第1の実施形態のプロセスの実施形態によるアルキル化剤としての使用に好適な別のクラスの有機マグネシウム化合物は、一般式RcMgXcで表され、式中、Rcは、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基である。1つ以上の実施形態では、Rcは、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり、これには、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、アリル、置換アリール、アラルキル、アルカリール、及びアルキニル基であって、各基が1個の炭素原子、又は適切な最小数の原子を含有し、最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は20個の炭素原子)を形成する。これらのヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基はまた、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子が挙げられるが、これらに限定されない、へテロ原子を含有してもよい。一実施形態では、Xcはカルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、各基は、1個の炭素原子から最大20個の炭素原子(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19個又は20個の炭素原子)を含有する。
【0058】
一般式RcMgXcによって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤としての使用に好適な種類の有機マグネシウム化合物の例としては、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
一般式RcMgXcによって表される、第1の実施形態のプロセスにおけるアルキル化剤としての使用に好適な有機マグネシウム化合物の例として、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
前述したように、第1の実施形態のプロセス中に用いられるランタニド系触媒系は、ハロゲン源を含む。本明細書で使用するとき、「ハロゲン源」という用語は、少なくとも1つのハロゲン原子を含む任意の物質を指す。第1の実施形態のプロセスの1つ以上の実施形態によれば、ハロゲン源の全て又は一部は、ランタニド化合物、アルキル化剤、又はランタニド化合物及びアルキル化剤の両方によって任意に提供されてもよい。言い換えれば、ランタニド化合物は、ランタニド化合物とハロゲン源の全て又は少なくとも一部との両方として機能することができる。同様に、アルキル化剤は、アルキル化剤とハロゲン源の全て又は少なくとも一部との両方として機能することができる。
【0061】
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ハロゲン源の少なくとも一部は、触媒系において、別個で異なるハロゲン含有化合物の形態で存在することができる。1つ以上のハロゲン原子を含有する種々の化合物(又はそれらの混合物)をハロゲン源として用いることができる。ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上のハロゲン原子の組み合わせを用いることもできる。本明細書に開示される芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素溶媒などの有機溶媒に可溶性であるハロゲン含有化合物は、第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適である。更に、触媒活性種を形成するために重合系中に懸濁され得る炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物も、第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態において有用である。
【0062】
第1の実施形態のプロセスにおける使用に好適な種類のハロゲン含有化合物の例としては、元素ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハライド、無機ハライド、金属ハライド、及び有機金属ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。第1の実施形態のプロセスの特定の好ましい実施形態では、ハロゲン含有化合物は有機金属ハライドを含む。
【0063】
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な元素ハロゲンの例としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。好適な混合ハロゲンのいくつかの具体例として、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
開示されるプロセスにおいてハロゲン源としての使用に好適なハロゲン化水素の例としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な有機ハライドの例として、t-ブチルクロリド、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、及びメチルブロモホルメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な無機ハライドの例として、リントリクロリド、リントリブロミド、リンペンタクロリド、リンオキシクロリド、リンオキシブロミド、ボロントリフルオリド、ボロントリクロリド、ボロントリブロミド、シリコンテトラフルオリド、シリコンテトラクロリド、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラヨージド、ヒ素トリクロリド、ヒ素トリブロミド、ヒ素トリヨージド、セレンテトラクロリド、セレンテトラブロミド、テルルテトラクロリド、テルルテトラブロミド、及びテルルテトラヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な金属ハライドの例として、スズテトラクロリド、スズテトラブロミド、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムトリブロミド、アンチモントリクロリド、アンチモンペンタクロリド、アンチモントリブロミド、アルミニウムトリヨージド、アルミニウムトリフルオリド、ガリウムトリクロリド、ガリウムトリブロミド、ガリウムトリヨージド、ガリウムトリフルオリド、インジウムトリクロリド、インジウムトリブロミド、インジウムトリヨージド、インジウムトリフルオリド、チタンテトラクロリド、チタンテトラブロミド、チタンテトラヨージド、亜鉛ジクロリド、亜鉛ジブロミド、亜鉛ジヨージド、及び亜鉛ジフルオリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
第1の実施形態のプロセスにおけるハロゲン源としての使用に好適な有機金属ハライドの例として、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、トリブチルスズクロリド、及びトリブチルスズブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、ハロゲン源は有機金属ハライドを含む。例えば、特定の実施形態によれば、ハロゲン源はジエチルアルミニウムクロリドを含み、これは上記のように、ランタニド系触媒系中のアルキル化剤としても機能することができる。したがって、第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態によれば、ハロゲン源は、本明細書に開示される触媒系中のアルキル化剤によって全て又は部分的に提供されてもよい。
【0069】
第1の実施形態のプロセスにおいて用いられるランタニド系触媒系は、前述の触媒構成成分を組み合わせるか又は混合することによって形成され得る。用語「触媒組成物」及び「触媒系」は、本明細書で言及されるとき、構成成分の単純な混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる様々な構成成分の合成物、構成成分の化学反応生成物、又は前述したものの組み合わせを包含する。用語「触媒組成物」及び「触媒系」は、本明細書において互換的に使用され得る。
ニッケル系触媒系
【0070】
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、(i)任意選択的にアルコールと組み合わせたニッケル化合物、(ii)有機アルミニウム、有機マグネシウム、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせ、及び(iii)フッ素含有化合物又はこれらの錯体を含むニッケル系触媒系を利用してもよい。(i)、(ii)及び(iii)のそれぞれに使用される特定の化合物は、変化してもよい。
【0071】
第1の実施形態のプロセスによれば、ニッケル系触媒系で使用されるニッケル化合物は、変化してもよい。ニッケル含有化合物中のニッケル原子は、0、+2、+3及び+4酸化状態を含むがこれらに限定されない様々な酸化状態であり得る。第1の実施形態のプロセスによるニッケル系触媒系での使用に好適なニッケル含有化合物としては、限定するものではないが、ニッケルカルボキシレート、ニッケルカルボキシレートボレート、ニッケル有機ホスフェート、ニッケル有機ホスホネート、ニッケル有機ホスフィネート、ニッケルカルバメート、ニッケルジチオカルバメート、ニッケルキサンテート、ニッケルβ-ジケトネート、ニッケルアルコキシド又はアリールオキシド、ニッケルハロゲン化物、ニッケル疑似ハライド、オキシハロゲン化ニッケル、及び有機ニッケル化合物が挙げられる。第1の実施形態のプロセスの好ましい実施形態では、ニッケル系触媒系が使用されるとき、ニッケル化合物は、ニッケルカルボキシレートである。
【0072】
好適なニッケルカルボキシレートとしては、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、アクリル酸ニッケル、メタクリル酸ニッケル、吉草酸ニッケル、グルコン酸ニッケル、クエン酸ニッケル、フマル酸ニッケル、乳酸ニッケル、マレイン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、ニッケル2-エチルヘキサノエート、ネオデカン酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、オレイン酸ニッケル、安息香酸ニッケル、及びニッケルピコリン酸を挙げることができる。
【0073】
好適なニッケルカルボキシレートボレートとしては、式(RCOONiO)3B又は(RCOONiO)2B(OR)によって定義される化合物を挙げることができ、式中、各Rは同じであっても異なっていてもよく、水素原子又は一価有機基である。一実施形態では、各Rは、これらに限定されないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アリル基、及びアルキニル基などのヒドロカルビル基であってよく、各基は、好ましくは1個の炭素原子を含有し、又は適切な最小数の炭素原子を含有して、基を形成し、最大約20個の炭素原子を含有する。これらのヒドロカルビル基には、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子などの、しかしこれらに限定されないヘテロ原子が含有されてよい。ニッケルカルボキシレートボレートは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,522,988号に開示されているものを挙げることができる。ニッケルカルボキシレートボレートの具体例としては、ニッケル(II)ネオデカノエートボレート、ニッケル(II)ヘキサノエートボレート、ニッケル(II)ナフテンエートボレート、ニッケル(II)ステアレートボレート、ニッケル(II)オクトエートボレート、ニッケル(II)2-エチルヘキサノエートボレート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
好適なニッケル有機ホスフェートとしては、ニッケルジブチルホスフェート、ニッケルジペンチルホスフェート、ニッケルジヘキシルホスフェート、ニッケルジヘプチルホスフェート、ニッケルジオクチルホスフェート、ニッケルビス(1-メチルヘプチル)ホスフェート、ニッケルビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ニッケルジデシルホスフェート、ニッケルジドデシルホスフェート、ニッケルジオクタデシルホスフェート、ニッケルジオレイルホスフェート、ニッケルジフェニルホスフェート、ニッケルビス(p-ノニルフェニル)ホスフェート、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフェート、及びニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられる。
【0075】
好適なニッケル有機ホスホネートとしては、ニッケルブチルホスホネート、ニッケルペンチルホスホネート、ニッケルヘキシルホスホネート、ニッケルヘプチルホスホネート、ニッケルオクチルホスホネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケルデシルホスホネート、ニッケルドデシルホスホネート、ニッケルオクタデシルホスホネート、ニッケルオレイルホスホネート、ニッケルフェニルホスホネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ニッケルブチルブチルホスホネート、ニッケルペンチルペンチルホスホネート、ニッケルヘキシルヘキシルホスホネート、ニッケルヘプチルヘプチルホスホネート、ニッケルオクチルオクチルホスホネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケルデシルデシルホスホネート、ニッケルドデシルドデシルホスホネート、ニッケルオクタデシルオクタデシルホスホネート、ニッケルオレイルオレイルホスホネート、ニッケルフェニルフェニルホスホネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスホネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスホネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)(2-エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられる。
【0076】
好適なニッケル有機ホスフィネートとしては、ニッケルブチルホスフィネート、ニッケルペンチルホスフィネート、ニッケルヘキシルホスフィネート、ニッケルヘプチルホスフィネート、ニッケルオクチルホスフィネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)ホスフィネート、ニッケル(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、ニッケルデシルホスフィネート、ニッケルドデシルホスフィネート、ニッケルオクタデシルホスフィネート、ニッケルオレイルホスフィネート、ニッケルフェニルホスフィネート、ニッケル(p-ノニルフェニル)ホスフィネート、ニッケルジブチルホスフィネート、ニッケルジペンチルホスフィネート、ニッケルジヘキシルホスフィネート、ニッケルジヘプチルホスフィネート、ニッケルジオクチルホスフィネート、ニッケルビス(1-メチルヘプチル)ホスフィネート、ニッケルビス(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、ニッケルジデシルホスフィネート、ニッケルジドデシルホスフィネート、ニッケルジオクタデシルホスフィネート、ニッケルジオレイルホスフィネート、ニッケルジフェニルホスフィネート、ニッケルビス(p-ノニルフェニル)ホスフィネート、ニッケルブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、ニッケル(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)ホスフィネート、及びニッケル(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられる。
【0077】
好適なニッケルカルバメートとしては、ニッケルジメチルカルバメート、ニッケルジエチルカルバメート、ニッケルジイソプロピルカルバメート、ニッケルジブチルカルバメート、及びニッケルジベンジルカルバメートを挙げることができる。
【0078】
好適なニッケルジチオカルバメートとしては、ニッケルジメチルジチオカルバメート、ニッケルジエチルジチオカルバメート、ニッケルジイソプロピルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、及びニッケルジベンジルジチオカルバメートを挙げることができる。
【0079】
好適なニッケルキサンテートとしては、ニッケルメチルキサンテート、ニッケルエチルキサンテート、ニッケルイソプロピルキサンテート、ニッケルブチルキサンテート、及びニッケルベンジルキサンテートが挙げられる。
【0080】
好適なニッケルβ-ジケトネートとしては、ニッケルアセチルアセトネート、ニッケルトリフルオロアセチルアセトネート、ニッケルヘキサフルオロアセチルアセトネート、ニッケルベンゾイルアセトネート、及びニッケル2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネートを挙げることができる。
【0081】
好適なニッケルアルコキシド又はアリールオキシドとしては、ニッケルメトキシド、ニッケルエトキシド、ニッケルイソプロポキシド、ニッケル2-エチルヘキオキシド、ニッケルフェノキシド、ニッケルノニルフェノキシド、及びニッケルナフトキシドを挙げることができる。
【0082】
好適なニッケルハロゲン化物としては、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、及びヨウ化ニッケルを挙げることができる。ニッケル疑似ハライドとしては、ニッケルシアン化物、シアン酸ニッケル、ニッケルチオシアネート、ニッケルアジド、及びニッケルフェロシアン化物が挙げられる。オキシハロゲン化ニッケルとしては、オキシフッ化ニッケル、オキシ塩化ニッケル、及びオキシ臭化ニッケルが挙げられる。ニッケルハロゲン化物、オキシハロゲン化ニッケル、又は他のニッケル含有化合物が、不安定なフッ素又は塩素原子を含有する場合、ニッケル含有化合物は、フッ素含有化合物又は塩素含有化合物としても機能し得る。アルコールなどのルイス塩基は、この部類の化合物の溶解助剤として使用することができる。
【0083】
有機ニッケル化合物という用語は、少なくとも1つのニッケル-炭素結合を含有する任意のニッケル化合物を指し得る。有機ニッケル化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(ニッケルロセンとも呼ばれる)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ニッケル(デカメチルニッケルロセンとも呼ばれる)、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(ペンタジエニル)ニッケル、ビス(2,4-ジメチルペンタジエニル)ニッケル、(シクロペンタジエニル)(ペンタジエニル)ニッケル、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、及びビス(クロチル)ニッケルが挙げられる。
【0084】
第1の実施形態のプロセスによれば、ニッケル系触媒系の(ii)成分に使用される有機アルミニウム、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせが変化し得る。好ましい実施形態では、第1の実施形態のプロセスがニッケル系触媒系を利用する場合、成分(ii)は、有機アルミニウム又は有機マグネシウム化合物、より好ましくは有機アルミニウム化合物である。有機アルミニウム、有機マグネシウム、又は有機亜鉛化合物が、不安定なフッ素を含む場合、フッ素含有化合物としても機能し得る(別個のフッ素含有化合物を必要としない)。特定の実施形態では、有機アルミニウム、有機マグネシウム又は有機亜鉛化合物は、塩素原子又は臭素原子を含まない。
【0085】
ニッケル系触媒系中の有機アルミニウム化合物又は有機マグネシウム化合物として使用するのに好適な化合物は、ランタニド系触媒系の部分で上述されている。
【0086】
第1の実施形態のプロセスによれば、ニッケル系触媒系で使用されるフッ素含有化合物は、変化してもよい。好適なフッ素含有化合物は、1つ以上の不安定なフッ素原子を含有する様々な化合物又はこれらの混合物を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、フッ素含有化合物は、炭化水素溶媒に可溶性であってもよい。他の実施形態では、触媒活性種を形成するために重合媒体中に懸濁され得る炭化水素不溶性フッ素含有化合物が有用であり得る。
【0087】
フッ素含有化合物の好適な種類としては、元素フッ素、ハロゲンフッ化物、フッ化水素、有機フッ化物、無機フッ化物、金属フッ化物、有機金属フッ化物、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、フッ素含有化合物と、エーテル、アルコール、水、アルデヒド、ケトン、エステル、ニトリル、又はこれらの混合物などのルイス塩基との錯体を用いてもよい。これらの錯体の具体例としては、三フッ化ホウ素とフッ化水素とのルイス塩基との錯体が挙げられる。
【0088】
ハロゲンフッ化物としては、一フッ化ヨウ素、三フッ化ヨウ素、及びヨウ素五フッ化物を挙げることができる。
【0089】
有機フッ化物としては、t-ブチルフルオリド、アリルフルオリド、ベンジルフルオリド、フルオロ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルフルオリド、ベンジリデンフルオリド、メチルトリフルオロシラン、フェニルトリフルオロシラン、ジメチルジフルオロシラン、ジフェニルジフルオロシラン、トリメチルフルオロシラン、ベンゾイルフルオリド、プロピオニルフルオリド、及びメチルフルオロホルマートを挙げることができる。
【0090】
無機フッ化物としては、三フッ化リン、五フッ化リン、オキシフッ化リン、三フッ化ホウ素、四フッ化ケイ素、三フッ化ヒ素、四フッ化セレン、及びテルルテトラフッ化物を挙げることができる。
【0091】
金属フッ化物としては、四フッ化スズ、三フッ化アルミニウム、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、三フッ化ガリウム、三フッ化インジウム、四フッ化チタン、及び二フッ化亜鉛を挙げることができる。
【0092】
有機金属フッ化物としては、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキフルオリド、エチルアルミニウムセスキフルオリド、イソブチルアルミニウムセスキフルオリド、フッ化メチルマグネシウム、フッ化エチルマグネシウム、フッ化ブチルマグネシウム、フッ化フェニルマグネシウム、フッ化ベンジルマグネシウム、フッ化トリメチルスズ、フッ化トリエチルスズ、ジ-t-ブチルスズジフルオリド、ジブチルスズジフルオリド、及びトリブチルスズフルオリドを挙げることができる。
【0093】
上述のように、第1の実施形態のプロセスがニッケル系触媒系を利用する場合、ニッケル化合物はアルコールと組み合わせて使用されてもよい。様々なアルコール及び混合物が用いられてもよい。1つ以上の実施形態では、アルコールは、一価アルコール(すなわち、1つのヒドロキシル基を含むもの)を含み、他の実施形態では、アルコールは、グリコール又はジオール、グリセロールと称され得る三価アルコール、及び多価アルコールを含む多価アルコール(すなわち、2つ以上のヒドロキシル基を含むアルコール)を含む。1つ以上の実施形態では、アルコールは、一級及び/又は二級アルコールを含む。一級及び二級アルコールとしては、α-炭素(すなわち、ヒドロキシル基を含む炭素に隣接する炭素)が一級又は二級であるアルコールが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、ニッケル系触媒系が使用される場合、一価アルコール、好ましくはヘキサノールが利用される。
【0094】
アルコールは、直鎖又は分枝鎖アルコールを含む脂肪族アルコールを含んでもよい。他の実施形態では、アルコールは、環状アルコール、他の実施形態では芳香族アルコール、他の実施形態では複素環式アルコール、及び他の実施形態では多環式アルコールを含んでもよい。
【0095】
これらの又は他の実施形態では、アルコールは飽和していてもよく、他の実施形態では、これらは不飽和であってもよい。特定の実施形態では、有用なアルコールとしては、重合が行われる反応媒体内で可溶性であるか、又は少なくとも部分的に可溶性であるアルコールが挙げられる。
【0096】
1つ以上の実施形態では、有用なアルコールは、式R-OH(式中、Rは一価の有機基であり、-OHはヒドロキシル基である)によって定義され得る。一価有機基としては、ヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、及びアルキニル基が挙げられる。置換基としては、基の水素原子が一価の有機基で置換されている基が挙げられる。これらのヒドロカルビル基は、限定するものではないが、窒素、酸素、ケイ素、スズ、硫黄、ホウ素、及びリン原子などのヘテロ原子を含有してもよい。特定の実施形態では、ヒドロカルビル基は、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子を含まなくてもよい。特定の実施形態では、一価有機基は、それに結合した1つ以上のヒドロキシル基を含有してもよい。結果として、アルコールは、2つ以上のヒドロキシル基を含有し得る。他の実施形態では、ヒドロカルビル基は、ヘテロ原子を含まない。
【0097】
1つ以上の実施形態では、有用なアルコールとしては、1~約40個の炭素原子、他の実施形態では約2~約26個の炭素原子、他の実施形態では約4~約18個の炭素原子、他の実施形態では約6~約12個の炭素原子を含む。
【0098】
例示的な脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、n-ヘプタノール、オクタノール、デカノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0099】
例示的な環状アルコールとしては、シクロヘキサノール、メタノール、t-ブチルシクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0100】
例示的な不飽和アルコールとしては、アリルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0101】
例示的な芳香族アルコールとしては、置換フェノール、フェノール、ベンジルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0102】
例示的な複素環式アルコールとしては、フルフリルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0103】
例示的な多環式アルコールとしては、ステロール類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0104】
前述の触媒組成物は、広範囲の触媒濃度及び触媒成分比にわたって共役ジエンを立体特異的なポリジエンに重合するための高い触媒活性を有し得る。触媒成分は、活性触媒種を形成するように相互作用し得ると考えられる。任意の1つの触媒成分の最適濃度は、他の触媒成分の濃度に依存し得るとも考えられる。
【0105】
1つ以上の実施形態では、(ii)成分とニッケル含有化合物とのモル比は、約1:1~約200:1、他の実施形態では約3:1~約30:1、他の実施形態では約5:1~約15:1で変動させることができる。本明細書で使用するとき、モル比という用語は、成分の関連成分の当量比、例えば、アルミニウム含有化合物上のアルミニウム原子の等価物とニッケル含有化合物上のニッケル原子の等価物との比を指す。換言すれば、二官能性又は多官能性化合物(例えば、2つ以上のカルボン酸基を含む化合物)が用いられる場合、所望の当量比を達成するために、より少ないモルの化合物が必要とされる。
【0106】
1つ以上の実施形態では、フッ素含有化合物のニッケル含有化合物(F/Ni)に対するモル比は、約7:1~約500:1、他の実施形態では約7.5:1~約450:1、他の実施形態では約8:1~約400:1で変動させることができる。
【0107】
1つ以上の実施形態では、アルコールのニッケル含有化合物(-OH/Ni)に対するモル比は、約0.4:1~約80:1、他の実施形態では約0.5:1~約75:1、他の実施形態では約0.7:1~約65:1で変動させることができる。本明細書で使用するとき、モル比という用語は、成分の関連成分の当量比、例えば、塩素含有化合物上の塩素原子の当量のニッケル含有化合物上のニッケル原子の等価物に対する比を指す。
【0108】
一般に、ニッケル系触媒系は、触媒成分を組み合わせるか又は混合することによって形成されてもよい。活性触媒種はこの組み合わせからもたらされると考えられるが、様々な成分又は構成成分間の相互作用又は反応の程度は、任意の程度の確実性では知られていない。したがって、用語「触媒系」は、成分の単純な混合物、物理的若しくは化学的な引力によって引き起こされる様々な成分の錯体、成分の化学反応生成物、又は前述の組み合わせを包含するために用いられている。
【0109】
ニッケル系触媒系は、以下の方法のうちの1つを使用することによって形成することができる。1つ以上の実施形態では、ニッケル系触媒系は、触媒成分を、モノマー及び溶媒又は単にバルクモノマーを含有する溶液に段階的又は同時のいずれかで添加することによって、その場で形成されてもよい。一実施形態では、(ii)構成成分、ニッケル含有化合物、及びアルコール(存在する場合)の混合物が形成される。この混合物は、溶媒中に形成されてもよい。次いで、この混合物及びフッ素含有化合物を、重合されるモノマーに添加してもよい。
【0110】
1つ以上の実施形態では、ニッケル系触媒系の選択された触媒成分は、重合系外で適切な温度で予備混合されてもよく、これは約-20℃~約80℃であってもよく、得られた触媒系は、数秒~数日間の範囲の時間にわたって熟成され、次いでモノマーに添加されてもよい。
【0111】
1つ以上の実施形態では、(ii)成分、ニッケル含有化合物、及びアルコール(存在する場合)の混合物は、少量のモノマー及び任意に溶媒の存在下で形成される。すなわち、選択された触媒成分は、約-20℃~約80℃であり得る適切な温度で少量の共役ジエンモノマーの存在下で形成されてもよい。この混合物を形成するために使用され得る共役ジエンモノマーの量は、ニッケル含有化合物1モル当たり約1~約500モル、他の実施形態では約5~約250モル、他の実施形態では約10~約100モルの範囲であり得る。得られた組成物を数秒~数日間の範囲の期間熟成させ、次いで、フッ素含有化合物と一緒に重合される共役ジエンモノマーの残部に添加してもよい。
【0112】
ニッケル系触媒系又はその1つ以上の触媒成分の溶液が、前述の方法に記載される重合系外で調製される場合、有機溶媒又は担体が用いられてもよい。有機溶媒は、触媒組成物又は成分を溶解するように機能してもよく、又は溶媒は、触媒組成物又は成分が懸濁され得る担体として機能し得る。有機溶媒は、触媒組成物に対して不活性であってもよい。有用な溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び/又はこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒の非限定的な例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、石油スピリットなどが挙げられる。脂環式炭化水素溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。上記炭化水素の商業的混合物も使用され得る。
コバルト系触媒系
【0113】
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、コバルト系触媒系を利用してもよく、コバルト系触媒系は、(i)コバルト化合物、(ii)有機ハロゲン化アルミニウム、及び(iii)任意選択的に水を含む。(i)及び(ii)のそれぞれに使用される特定の化合物は、変化してもよい。
【0114】
コバルト系触媒系に使用するのに好適なコバルト化合物としては、限定されないが、安息香酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトボロアシル酸、ナフテン酸コバルト、ビス(α-フリルジオキシム)コバルト、コバルトヘキサン酸、オクタン酸コバルト、シュウ酸コバルト、酒石酸コバルト、ソルビン酸コバルト、アジピン酸コバルト、パルミチン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ビス(サリチルアルデヒドエチレンジイミン)コバルト、コバルトサリチルアルデヒド、ジコバルトオクタカルボニル、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態によれば、第1の実施形態のプロセスがコバルト系触媒系を使用する場合、コバルト化合物はコバルト塩である(コバルト塩は、2つの一価アニオン又は1つの二価アニオンのいずれかを含む)。コバルト塩中のアニオンは、好ましくはC6~C20の有機酸から誘導される。
【0115】
コバルト系触媒系で使用するのに好適な有機ハロゲン化アルミニウム化合物としては、ランタニド系触媒系について上述したものが挙げられるが、これらに限定されない。上記の有機ハロゲン化アルミニウム化合物の好適な例としては、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド及びヒドロカルビルアルミニウムジハライドが挙げられる。
【0116】
好ましくは、有機ハロゲン化アルミニウム化合物は、以下の式を有する化合物を含む。
R5
pAlXq
式中、R5はC2~C12アルキル基であり、Xはハロゲンであり、p+qは3である。
【0117】
より好ましくは、有機ハロゲン化アルミニウム化合物は、ジオルガノー(好ましくはジアルキル)塩化アルミニウム化合物、アルキルアルミニウムセスキクロリド化合物、及びこれらの混合物を含む群から選択される。
【0118】
更により好ましくは、有機ハロゲン化アルミニウム化合物は、(I)(a)塩化ジエチルアルミニウム及びエチルアルミニウムセスキクロリドから選択されるアルキルアルミニウムクロリド(これは、塩化ジエチルアルミニウムと塩化エチルアルミニウムとの約等モル量を含有する混合物によって達成され得る)と(b)式R3Alの有機アルミニウム化合物(式中、RはC8~C12アルキル基(例えば、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなど)との混合物、及び(II)アルキル基が8~12個の炭素原子を有するアルキルアルミニウムクロリド(例えば、塩化ジオクチル、塩化ジデシルアルミニウムなど)から選択される。
【0119】
実施形態(I)は、より好ましい。この好ましい実施形態では、式R3Alの有機アルミニウム化合物を使用し、(I)及び(II)の混合物の0~1重量%の量で存在することが特に好ましい。式R3Alの特に好ましい有機アルミニウム化合物は、トリオクチルアルミニウムを含む。
【0120】
本プロセスで使用するのに好ましい触媒系は、コバルトオクトエート及びナフテン酸コバルトから選択されるコバルト塩と、(i)塩化ジエチルアルミニウムと、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、及びトリドデシルアルミニウムのうちの1つ以上との混合物、並びに(ii)ジオクチル塩化アルミニウム、塩化ジデシルアルミニウム、及び塩化ジドデシルアルミニウムのうちの1つ以上との混合物から選択される有機ハロゲン化アルミニウム化合物を含む。
【0121】
コバルト系触媒系が第1の実施形態のプロセスで使用される場合、構成成分(i)、(ii)及び(iii)の比は変化し得る。特定の実施形態では、コバルト化合物の全有機ハロゲン化有機アルミニウム(例えば、トリオクチルアルミニウムを備えた塩化ジエチルアルミニウム)とのモル比は、約1:15~約1:30(例えば、1:15、1:20、1:25又は1:30)、好ましくは約1:15~約1:20(例えば、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19又は1:20)であり、ハロゲン化物(例えば、塩化ジエチルアルミニウム中の塩素)と有機ハロゲン化アルミニウム中の全金属含量(例えば、塩化ジエチルアルミニウム+トリオクチルアルミニウム中のアルミニウム)とのモル比は、約0.7:1~約0.95:1(例えば、0.7:1、0.75:1、0.8:1、0.85:1、0.9:1又は0.95:1)、好ましくは約0.8:1~約0.9:1(例えば、0.82:1、0.84:1、0.86:1、0.88:1又は0.9:1)である。特定の実施形態では、水の量は、使用される有機ハロゲン化アルミニウム(例えば、アルキルアルミニウムクロリド)のミリモル当たり約0.3~約0.8(例えば、0.4:1、0.5:1、0.6、0.7又は0.8)、好ましくは約0.5~約0.65(例えば、0.5、0.55、0.6又は0.65)ミリモルである。
官能性化合物
【0122】
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、リビング末端ポリマー鎖を式(I)の官能化化合物と反応させることを含む。上述のように、第2及び第3の実施形態によれば、変性高シスポリブタジエンポリマーは、式(I)を有する官能化化合物の残基に結合している1,3-ブタジエンの重合から生じるポリマー鎖を含み、各ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物の残基に結合している。
【0123】
第1~第3の実施形態によれば、式(I)は以下のとおりである。
【化7】
式中、Xはリビング末端ポリマー鎖と反応する基であり、シアノ、エポキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、及び酸無水物からなる群から選択され、各R
1は、C
1~C
20のヒドロカルビレン(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10、C
11、C
12、C
13、C
14、C
15、C
16、C
17、C
18、C
19又はC
20)から選択され、好ましくはC
1~C
10(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9又はC
10)、より好ましくはC
1~C
3(例えば、C
1、C
2又はC
3)から選択され、上記のそれぞれは、1つの不飽和炭素-炭素結合を含有し、R
’はC
1~C
20のアルコキシ(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10、C
11、C
12、C
13、C
14、C
15、C
16、C
17、C
18、C
19又はC
20)、好ましくはC
1~C
10アルコキシ(例えば
、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9又はC
10)、より好ましくはC
1~C
6アルコキシ(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5又はC
6)のアルコキシから選択され、最も好ましくはC
1又はC
2のアルコキシ、及びR’’は、C
1~C
20のアルキル又はC
6~C
20のアリールから選択される(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10、C
11、C
12、C
13、C
14、C
15、C
16、C
17、C
18、C
19又はC
20)、好ましくはC
1~C
10のアルキル(例えば、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9又はC
10)、又はC
6~C
14のアリール(例えば、C
6、C
7、C
8、C
9、C
10、C
11、C
12、C
13又はC
14)、より好ましくはC
1~C
6のアルキル又はC
6のアリールから選択される。式(I)は、X-R
1-Si(R’)
2(R’’)として表すこともできる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、式(I)の官能化化合物は、R
1,R’及びR’’が全て、好ましいものとして記載される基から選択される構造を有する。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、式(I)の官能化化合物は、R
1,R’及びR’’が全て、好ましいものとして記載される基から選択される構造を有する。式(I)の官能化化合物は、Si上に2つのアルコキシ基を有するので、化合物は、ジアルコキシシラン(より具体的にはR’’基の存在により、アルキルジアルコキシシラン又はアリールジアルコキシシラン)と呼ぶことができる。R
1がヒドロカルビレン基であることを意味することは、それが2つの他の構成成分(すなわち、X基及びSi)に結合していることを意味する。第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、R
1は、脂肪族及び不飽和である。第1~第3の実施形態の他の実施形態では、R
1は脂肪族であり、1つの不飽和炭素-炭素結合を含むことができる。一般に、第1~第3の実施形態によれば、R
1基中の炭素は、直鎖状に配置されてもよく、又は分枝状であってもよい。
【0124】
第1~第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、Xは、シアノ基又はエポキシ基、より好ましくはエポキシ基である。第1~第3の実施形態によれば、Xがシアノ基である場合、その特定の構造は、以下により詳細に記載されるように変化し得る。第1~第3の実施形態によれば、Xがエポキシ基である場合、エポキシ環中に2~4個の炭素原子(例えば、2、3個又は4個の炭素原子)を有することが好ましい。
【0125】
上述したように、第1~第3の実施形態によれば、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXは、エポキシ基から選択され、より好ましくは、エポキシ基はグリシドキシ基である。Xがエポキシ基である式(I)の官能化化合物として用いるのに好適な化合物としては、これに限定されないが、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)エチルジメトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)エチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)エチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)エチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチルジメトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチルジエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(エチルジメトキシ)シラン、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(エチルジエトキシ)シランが挙げられる。上記の中でも、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン及び(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0126】
上述したように、第1~第3の実施形態によれば、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXは、好ましくはシアノ基から選択される。第1~第3の実施形態の特定の実施形態による式(I)においてXとして使用され得る好適なシアノ基の非限定的な例としては、シアノ基及びSiが、1~10個の炭素、好ましくは3~8個の炭素を有するヒドロカルビレン基によって分離される化合物が挙げられる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態による式(I)においてXとして使用され得る好適なシアノ基の非限定的な例としては、2-シアノエチルメチルジエトキシシラン及び3-シアノプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXがケトン基から選択され、様々な化合物が官能化化合物として好適であり得る。
【0127】
第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXがケトン基から選択され、様々な化合物が官能化化合物として好適であり得る。このような化合物の非限定的な例は、p-(メチルジエトキシシリル)アセトフェノンである。
【0128】
第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXがアルデヒド基から選択され、様々な化合物が官能化化合物として好適であり得る。このような化合物の非限定的な例は、(メチルジエトキシシリル)ウンデカナールである。
【0129】
第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXがエステル基から選択され、様々な化合物が官能化化合物として好適であり得る。好適なこのような化合物の非限定的な例としては、カルボン酸ヒドロカルビルエステル残基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げられる。このような化合物の具体例としては、限定するものではないが、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジイソプロポキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。上記の中でも、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及び3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。
【0130】
第1~第3の実施形態のこれらの実施形態では、式(I)の官能化化合物(又はそれから得られる残基)のXが酸無水物基から選択され、様々な化合物が官能化化合物として好適であり得る。好適なこのような化合物の非限定的な例としては、カルボン酸無水物残基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げられる。このような化合物の具体例としては、3-(メチルジエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物及び3-(メチルジメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、3-(メチルジエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物が好ましい。
【0131】
第1~第3の実施形態によれば、(定義された触媒系のうちの1つを使用した1,3-ブタジエンの重合から得られる)は、X基を介して官能化化合物に結合される。官能化化合物の構造は、ポリマー鎖をX基に結合するとある程度変化するため、ポリマー鎖が結合している部分は、官能化化合物の残基として記載される。一般に、1つのポリマー鎖は、官能化化合物の各分子のX基を介して官能化化合物の残基に結合する。しかしながら、X基の構造に応じて、官能化化合物の残基に結合するために、2つ以上のポリマー鎖が可能である。第1の実施形態のプロセスによるポリマー鎖結合(すなわち、定義された触媒系のうちの1つを使用する)は、アニオン性開始剤(例えば、n-ブチルリチウム)が1,3-ブタジエンを重合するために使用される場合、ポリマー鎖が結合する官能化化合物上の位置と対比され得る。より具体的には、アニオン性開始剤を使用した場合、ポリマー鎖は、Si上のアルコキシ基を介して(アルコキシ基のORを置換し、Siに直接結合する)、並びにX基を介して官能化化合物に結合してもよい。定義された触媒系のうちの1つを使用して、1,3-ブタジエンを重合し、リビング末端ポリマー鎖を生成するとき、ポリマー鎖は、X基を介して官能化化合物に結合する(のみ)。非限定的な例として、官能化化合物のXがエポキシ基である場合、ポリマー鎖は、エポキシ環の酸素に対して炭素αのうちの1つに結合する。より具体的には、このような結合反応によれば、1つのポリマー鎖は、エポキシ環の酸素に対して炭素原子αのうちの1つに結合し、結合は、酸素原子のOHへの変換を伴う開環を引き起こす。
【0132】
第1~第3の実施形態によると、リビング末端ポリマー鎖と反応するために使用される(すなわち、第1の実施形態のプロセスに従って)、又は変性高シスポリブタジエンポリマー中に残留物として存在する(すなわち、第2及び第3の実施形態による)式(I)の官能化化合物の量は変化し得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、官能化化合物は、100:1~0.5:1(例えば、100:1、90:1、80:1、70:1、60:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、4:1、2:1、1:1、0.5:1)、好ましくは50:1~1:1(例えば、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、4:1、2:1又は1:1)、より好ましくは30:1~2:1(例えば、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、8:1、6:1、4:1又は2:1)のモル比で使用され、触媒系中の一級金属のモルに対する官能化化合物のモル(すなわち、ランタニド系触媒系のランタニドのモル、ニッケル系触媒系のニッケルのモル、又はコバルト系触媒系のコバルトのモル)に基づくモル比である。
安定化剤
【0133】
第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーを調製するためのプロセスは、以下の式(II)の安定化剤と(工程Cからの)変性高シスポリブタジエンを反応させる工程を更に含む(更に含む)。
R2
nSi(OR3)4-n
式中、R2は、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基からなる群から選択され、好ましくは、C1~C10アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6~C14芳香族基、より好ましくはC1~C6アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6芳香族基からなる群から選択され、R3はR2と同じであっても異なっていてもよく、C1~C20アルキル、C4~C10シクロアルキル、又はC5~C20芳香族基から選択され、好ましくは、C1~C10アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6~C14芳香族基、より好ましくはC1~C6アルキル、C4~C6シクロアルキル、又はC6芳香族基から選択され、nは1~3、好ましくは2~3、より好ましくは3の整数である。第1の実施形態のプロセスの特定の実施形態では、式(II)の安定化剤は、前述の好ましい基又は値から選択されるR2、R3及びnを有する。第1の実施形態のプロセスの他の実施形態では、式(II)の安定化剤は、前述のより好ましい基又は値から選択されるR2、R3及びnを有する。第1の実施形態のプロセスの特に好ましい実施形態では、安定化剤トリアルコキシ(アルキル)シラン(すなわち、上記のように、nは3であり、R2はアルキルである)は、オクチルトリエトキシシランが特に好ましい。安定化剤が利用される第1の実施形態の実施形態では、(C)の後であるが(D)の前に、すなわち、変性高シスポリブタジエンを単離する前に添加される。安定化剤の使用は、変性高シスポリブタジエンポリマーを組み込んだタイヤトレッドにおいて、改善されたスノー又は氷上性能をもたらす、変性高シスポリブタジエンポリマーの製造に有益であり得る。当業者には理解されるように、タイヤトレッドへの組み込み時のゴム組成物のスノー又は氷上性能は、ゴム組成物の-20℃におけるG’の値を測定することによって予測することができ、より高い値は好ましい性能を示す。
【0134】
第1の実施形態の特定の実施形態では、プロセスにおいて安定化剤は使用されない。安定化剤の使用を回避することは、1つの未加工材料の使用及び全体的なプロセスにおける工程の排除のために、変性高シスポリブタジエンポリマーの製造における全体的なコスト削減をもたらすことができる。
【0135】
安定化剤が利用される第1の実施形態の実施形態では、プロセスにおいて利用される量は変化し得る。第1の実施形態の特定の実施形態では、安定化剤は、モル比が0.01:1~10:1(例えば、0.01:1、0.05:1、0.1:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1)、好ましくは0.1:1~5:1(例えば、0.1:1、0.5:1、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1又は5:1)のモル比、より好ましくは0.5:1~2:1(例えば、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1又は2:1)のモル比で使用され、安定化剤のモル、官能化化合物のモルに基づくモル比である。
急冷剤
【0136】
上述したように、第1の実施形態のプロセスによれば、式(III)の急冷剤は、式(II)の安定化剤と組み合わせて使用される。第1の実施形態のプロセスによれば、急冷剤の式(III)は、以下のとおりである。
R4COOH
式中、R4はHから選択され、C1~C18アルキル、好ましくはHからなる群、及びC1~C10アルキルからなる群から選択され、より好ましくはC2~C7アルキルからなる群から選択される。第1の実施形態の特定の好ましい実施形態では、急冷剤は、2-エチルヘキサン酸又は酢酸、より好ましくは2-エチルヘキサン酸を含み、特定のそのような実施形態では、急冷剤は、2-エチルヘキサン酸からなる。
急冷剤が利用される第1の実施形態の実施形態では、プロセスにおいて利用される量は変化し得る。第1の実施形態の特定の実施形態では、急冷剤は、0.1:1~10:1(例えば、0.1:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1)、好ましくは0.1:1~5:1(例えば、0.1:1、0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1又は5:1)、より好ましくは0.5:1~2:1(例えば、0.5:1、1:1、1.5:1又は2:1)のモル比で使用され、急冷剤のモル、式(II)の安定化剤のモルに基づくモル比である。
変性高シスポリブタジエンポリマーの特性
【0137】
上述のように、第1の実施形態のプロセスは、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量を有する変性高シスポリブタジエンポリマー、100℃で20~100、好ましくは30~80の初期ムーニー粘度ML1+4及び100℃で20~100、好ましくは30~80の熟成ムーニー粘度ML1+4をもたらす。同様に上述したように、第2の実施形態の変性高シスポリブタジエンポリマーは、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量を有し、100℃で20~100、好ましくは30~80の初期ムーニー粘度ML1+4、及び100℃で20~100、好ましくは30~80の熟成ムーニー粘度ML1+4を有する。第3の実施形態のタイヤゴム組成物は、第2の実施形態の変性高シスポリジエンポリマー又は第1の実施形態に係るプロセスにより製造された変性高シスポリジエンポリマーのいずれかを利用するので、第3の実施形態の変性高シスポリジエンポリマーはまた、少なくとも92%、好ましくは少なくとも94%のシス1,4-結合含量を有するものとして理解することができ、100℃で20~100、好ましくは30~80の初期ムーニー粘度ML1+4、及び100℃で20~100、好ましくは30~80の熟成ムーニー粘度ML1+4を有するものとして理解することができる。シス1,4-結合含量が少なくとも92%であることを意味することは、92~99%、92~98%、92~97%、92~96%、92~95%などの範囲を含むと理解されるべき92%以上(例えば、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%以上)であることを意味する。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーのシス1,4-結合含量は、少なくとも94%である。シス1,4-結合含量が少なくとも94%であることを意味することは、94~99%、94~98%、94~97%、94~96%、94~95%などの範囲を含むと理解されるべき94%以上(例えば、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%以上)であることを意味する。本明細書で言及されるシス1,4-結合含量は、FTIR(フーリエ変換赤外線分光法)によって決定される。具体的には、ポリマー試料をCS2に溶解し、次いでFTIRに供する。
【0138】
100℃での初期ムーニー粘度ML1+4は、熱熟成される前に最終変性高シスポリブタジエンポリマー(ポリマーが、例えば、水蒸気蒸留によって単離され、乾燥された)に取られるムーニー粘度測定値を指す(以下に記載されるように)。100℃における初期ムーニー粘度ML1+4が20~100であることを意味することは、20~100(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100)から変化し得ることを意味する。好ましくは、第1~第3の実施形態によると、100℃における初期ムーニー粘度ML1+4は、30~80(例えば、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、65、68、70、72、74、75、76、78又は80)である。100℃での熟成ムーニー粘度ML1+4は、熱熟成された高シスポリブタジエンポリマーの試料上で得られるムーニー粘度測定値を指す。より具体的には、ポリマー試料は、100℃で少なくとも2日間(より好ましくは2日間)熟成されている。一般に、変性高シスポリブタジエンポリマーの熟成ムーニー粘度は、ポリマーの初期粘度よりも幾分高い。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、上述の熟成ムーニー粘度値を満たすことに加えて、最終変性高シスポリブタジエンポリマーはまた、初期ムーニー粘度(例えば、30%超以下、25%超以下、20%超以下、15%超以下、10%超以下、5%超以下、又はそれ以下)の100℃で30%以下、120以下(例えば、120、110、100、90、80、70、60、50以下)である熟成ムーニー粘度ML1+4を有する。第1~第3の実施形態の好ましい実施形態では、最終変性高シスポリブタジエンポリマーは、初期ムーニー粘度(例えば、20%超以下、18%超以下、16%超以下、15%超以下、14%超以下、12%超以下、10%超以下、8%超以下、6%超以下、5%超以下、4%超以下、又はそれ以下)より20%超以下、105以下(例えば、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50以下)である100℃で熟成ムーニー粘度ML1+4を有する。非限定的な例として、変性高シスポリブタジエンポリマーが、80であった初期ムーニー粘度及び88であった熟成ムーニー粘度を有する場合、ムーニー粘度の増加は10%である。
【0139】
第1~第3の実施形態によれば、変性高シスポリブタジエンポリマーの他の特性は変化し得る。例えば、ポリマーは、様々なMw、Mn、及びMw/Mn値を有し得る。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、以下の少なくとも1つに合致し、(a)150,000~2,000,000グラム/モル(例えば、150,000200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000、1,100,000、1,200,000、1,300,000、1,400,000、1,500,000、1,600,000、1,700,000、1,800,000、1,900,000、又は2,000,000グラム/モル)、好ましくは90,000~1,000,000グラム/モル(例えば、90,000、150,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、又は1,000,000グラム/モル)、より好ましくは300,000~800,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、750,000、又は800,000グラム/モル)のMwを有し、(b)80,000~800,000グラム/モル(例えば、80,000100,000、120,000、140,000、160,000、180,000、200,000、250,000、300,000、350,000、400,000、450,000、500,000、550,000、600,000、650,000、700,000、750,000、又は800,000グラム/モル)、好ましくは90,000~500,000グラム/モル(例えば、90,000、110,000、130,000、150,000、170,000、190,000、210,000、230,000、250,000、270,000、290,000、310,000、330,000、350,000、370,000、390,000、410,000、430,000、450,000、470,000、490,000、又は500,000グラム/モル)、より好ましくは150,000~400,000グラム/モル(例えば、150,000、160,000、180,000、200,000、250,000、300,000、350,000、又は400,000;グラム/モル)のMnを有し、(c)1.5~3.5(例えば、1.5、1.7、1.9、2.1、2.3.、2.5、2.7、2.9、3.1、3.3又は3.5)、好ましくは1.8~3(例えば、1.8、2、2.2、2.4、2.6、2.8又は3)、より好ましくは2~2.5(例えば、2、2.1、2.2、2.3、2.4又は2.5)のMw/Mnを有し、又は(d)100℃で40~70(例えば、40、42、44、45、46、48、50、52、54、55、56、58、60、62、64、65、66、68又は70)の初期ムーニー粘度ML1+4を有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれを満たす。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれの好ましい範囲を満たす。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、変性高シスポリブタジエンポリマーは、(a)~(d)のそれぞれのより好ましい範囲を満たす。Mnは、グラム/モル(GPCによる)の数平均分子量を示し、Mwは、グラム/モル(GPCによる)の重量平均分子量、及びMw/Mnがポリマーの分子量分散又は多分散性を示す。一般に、これらのポリマーのMn及びMwは、ポリスチレン標準で較正されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することによって決定され得る。
【0140】
第1の実施形態のプロセスは、(及び第2の実施形態のポリマーが存在してもよく、第3の実施形態のゴム組成物は、高分子量ポリマー材料の微量部分を含有する変性高シスポリブタジエンポリマー生成物であるポリマーを利用してもよい。一般的に、このような高分子量材料は、ポリマーの使用前(例えば、ゴム組成物中)又はポリマーの販売前に濾過されてもよい。高分子量材料の量は、一般に、約10%未満、時として約5重量%未満である。前述の段落で提供されるMw、Mn、及びMw/Mn値は、第1の実施形態のプロセスによって作製された材料の試料上で、及び/又は第2の若しくは第3の実施形態による材料の試料上のGPCを介して決定され得、濾過され得る高分子量材料のMw及びMn値を包含する値を指す。実施例に提供されるMw及びMn値は、GPCへの潜在的な損傷を回避するために、高分子量材料及びゲルを除去するために濾過された試料のGPCによって測定される。また、第1の実施形態のプロセス(及び第2の実施形態のポリマー及び第3の実施形態で使用され得るポリマー)によって製造されるポリマー製品であって、少なくとも90%重量%、好ましくは少なくとも95%重量%、又は更には少なくとも98%ポリマー生成物中のポリマーの重量は、150,000~800,000グラム/モル、好ましくは250,000~600,000グラム/モル、より好ましくは300,000~500,000グラム/モルのMw、及び80,000~400,000グラム/モル、好ましくは90,000~300,000グラム/モル、より好ましくは150,000~300,000グラム/モルのMnを有することが本明細書に開示されている。
変性高シスポリブタジエンポリマー含有タイヤ成分
【0141】
上述したように、第1の実施形態のプロセスに従って製造された変性高シスポリブタジエン及び第2の実施形態の変性高シスポリブタジエンは、タイヤ成分に使用されるゴム組成物において特に有用である。本明細書に開示される第3の実施形態によれば、第2の実施形態の高シスポリブタジエンを含むゴム組成物を含むタイヤ成分、又は第1の実施形態のプロセスにより製造された高シス変性ポリブタジエンが提供される。より具体的には、第3の実施形態によれば、タイヤ成分のゴム組成物は、(a)エラストマー成分であって、(i)第2の実施形態に係る10~100phr、好ましくは20~80phrの高シス変性ポリブタジエンポリマー、又は第1の実施形態のプロセスから得られる高シス変性ポリブタジエンポリマー、及び(ii)0~90phrの未変性ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレンからなる群から選択される少なくとも1種の追加のポリマー含むエラストマー成分と、(b)補強充填剤成分であって、(i)10~200phr、好ましくは30~200phr、より好ましくは50~150phrの補強シリカ充填剤と、(ii)0~50phrの補強カーボンブラック充填剤と、を含み、補強カーボンブラック充填剤は、補強シリカ充填剤の重量の20%以下、好ましくは補強シリカ充填剤の重量の10%以下の量で存在する補強充填剤成分と、(c)可塑化成分であって、(i)0~50phr、好ましくは0~30phr、より好ましくは0~15phrの少なくとも1つの可塑化油、及び(ii)0~60phr、好ましくは5~60phr、より好ましくは10~50phrの、少なくとも30CのTgを有する少なくとも1つの炭化水素樹脂と、を含む、可塑化成分と、(d)硬化パッケージ(好ましくは少なくとも1種の加硫剤、少なくとも1種の加硫促進剤と、任意に加硫活性化剤、加硫阻害剤、及び/又はスコーチ防止剤、より好ましくは前述のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む)と、を含む。第3の実施形態の好ましい実施形態では、タイヤ成分はタイヤトレッドであり、したがって、ゴム組成物は、タイヤトレッドゴム組成物として、又はタイヤトレッドで使用するためのゴム組成物として代替的に説明することができる。
【0142】
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物中に存在する変性高シスポリブタジエンポリマー(a)(i)の量は、10~100phr(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100phr)から変化し得る。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、ゴム組成物中に存在する変性高シスポリブタジエンポリマー(a)(i)の量は、20~80phr(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80phr)である。上記範囲内の(a)(i)の量はまた、第3の実施形態のゴム組成物、例えば、40~80phr、50~80phr、40~70phr、40~60phrなどを使用してもよい。
他のゴム
【0143】
同様に上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は、未変性ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の追加のポリマーを0~90phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85又は90phr)含むことができる。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、追加のポリマー(b)(ii)の量は、20~80phr(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80phr)である。上記範囲内の(b)(ii)の量はまた、第3の実施形態のゴム組成物、例えば、20~60、20~50、30~60、40~60などに利用されてもよい。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、1つ以上の追加のゴム、すなわち、(a)及び(b)に加えて含む。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物用エラストマー成分の100phr全体が、(a)(i)及び(a)(ii)の組み合わせからなる。換言すれば、このような実施形態では、(a)(i)及び(a)(ii)のゴム以外に他のゴムが存在しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ポリイソプレン(すなわち、0phrのポリイソプレン)を含有しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、(a)(i)に従ったポリブタジエン以外の変性高シスポリブタジエンを含有しない。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は天然ゴムを含有せず、ポリイソプレンを含有しない。
充填剤
【0144】
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物はまた、10~200phrの補強シリカ充填剤(例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195又は200phr)、及び0~50phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50phr)の補強カーボンブラック充填剤を充填剤成分として含む。換言すれば、上記によれば、シリカ充填剤は常に存在すると見なすことができ、一方、カーボンブラック充填剤は任意選択的に存在する。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、50~150phr(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150phr)の量の補強シリカ充填剤を含む。第3の実施形態の好ましい実施形態では、ゴム組成物は、1~20phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18又は20phr)、より好ましくは1-10phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10phr)の量の補強カーボンブラック充填剤を含む。第3の実施形態の特定の実施形態では、補強シリカ充填剤の量及び補強カーボンブラック充填剤の量は、両方とも前述の好ましい量の範囲内である。第3の実施形態の特定の好ましい実施形態では、補強カーボンブラック充填剤は、補強シリカ充填剤の重量の20%以下の量で存在し(例えば、100phrのシリカ充填剤を使用した場合、補強カーボンブラック充填剤の量は20phr以下であり)、好ましくは補強シリカ充填剤の重量の10%以下の量で存在する。
【0145】
本明細書で使用するとき、「補強カーボンブラック充填剤」、「補強シリカ充填剤」、及び「補強充填剤」について使用される用語「補強」は、一般に、補強として従来説明されている充填剤、並びに半補強と従来説明される場合がある充填剤の両方の充填剤を包含すると理解されたい。従来、用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約100m2/g超、場合によっては、100m2/g超、約125m2/g超、125m2/g超、又は更に約150m2/g超、又は150m2/g超である、微粒子材料を指すために使用される。あるいは(又は加えて)、用語「補強充填剤」を伝統的に用いて、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する微粒子材料を指すためにも使用できる。伝統的に、用語「半補強充填剤」は、粒径、表面積(N2SA)のいずれか、又は両方において、非補強充填剤(以下で考察するとおり)と補強充填剤との中間である充填剤を指すために使用される。本明細書において開示されている第3の実施形態の特定の実施形態では、用語「補強充填剤」は、窒素吸着比表面積(N2SA)が、約20m2/g以上(20m2/g以上を含む)、約50m2/g超(50m2/g超を含む)、約100m2/g超(100m2/g超を含む)、及び約125m2/g超(125m2/g超を含む)である、粒子材料を指すために本明細書で使用される。本明細書において開示されている第3の実施形態の特定の実施形態では、用語「補強充填剤」は、約10nm~約1000nm(10nm~1000nmを含む)、約10nm~約50nm(10nm~50nmを含む)の粒径を有する、粒子材料を指すために使用される。
【0146】
第3の実施形態によれば、使用されるカーボンブラックの特定の種類は変化してもよい。一般に、第3の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用するための好適なカーボンブラックには、少なくとも約20m2/g(少なくとも20m2/gを含む)及び、より好ましくは、少なくとも約35m2/g~約200m2/g又はそれより高い(35m2/g~200m2/gを含む)の表面積を有するものを含めた、一般に入手可能な商用製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、中補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、上述のブラックの2種以上の混合物を含む。好ましくは、第3の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適な典型的なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって指定されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。
【0147】
第3の実施形態のタイヤ用ゴム組成物に用いられる補強シリカ充填剤の具体的な種類は、変化してもよい。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適な補強シリカ充填剤の非限定例としては、以下に限定されないが、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適な他の補強シリカ充填剤としては、以下に限定されないが、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4など)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4.3SiO4.5H2Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3.CaO2SiO2など)などが挙げられる。列挙された補強シリカ充填剤の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填剤が好ましい。このような補強シリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから一次凝集体へと強力に結合し、順次、二次凝集体へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。表面積は、BET法で測定すると、様々な補強シリカ充填剤の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、100m2/g~400m2/g(例えば、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390又は400m2/g)、150m2/g~350m2/g、200m2/g~300m2/g、又は150m2/g~250m2/gの表面積(BET法により測定)を有する補強シリカ充填剤を含む。
【0148】
本明細書に開示される第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、5.5~8(例えば、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、7.9又は8)、6~8(例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8又は8)、6~7.5、6.5~8、6.5~7.5、又は5.5~6.8のpHを有する補強シリカ充填剤を含む。第3の実施形態の特定の実施形態で使用することができる市販の補強シリカ充填剤のいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって製造された、Hi-Sil(登録商標)EZ120G、Hi-Sil(登録商標)EZ120G-D、Hi-Sil(登録商標)134G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G-D、Hi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)190G-D、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G-D、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243LD、Hi-Sil(登録商標)255CG-D、Hi-Sil(登録商標)315-D、Hi-Sil(登録商標)315G-D、Hi-Sil(登録商標)HDP 320Gなど、が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、複数の有用な商用の異なる補強シリカ充填剤もまた、Evonik Corporation(例えば、Ultrasil(登録商標)320 GR、Ultrasil(登録商標)5000 GR、Ultrasil(登録商標)5500 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)VN2 GR、Ultrasil(登録商標)VN2、Ultrasil(登録商標)VN3、Ultrasil(登録商標)VN3 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)7005、Ultrasil(登録商標)7500 GR、Ultrasil(登録商標)7800 GR、Ultrasil(登録商標)9500 GR、Ultrasil(登録商標)9000 G、Ultrasil(登録商標)9100 GR)及びSolvay(例えば、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1200MP、Zeosil(登録商標)Premium、Zeosil(登録商標)195HR、Zeosil(登録商標)195GR、Zeosil(登録商標)185GR、Zeosil(登録商標)175GR、及びZeosil(登録商標)165 GR)から入手可能である。
【0149】
第3の実施形態の特定の実施形態では、1つ以上のシリカカップリング剤もまた、(任意に)利用され得る。シリカカップリング剤は、ゴム組成物中のシリカ充填剤の凝集の防止又は低減に有用である。シリカ充填剤粒子の凝集は、ゴム組成物の粘度を上昇させると考えられ、したがって、この凝集を防止することにより、粘度が低下し、ゴム組成物の加工性及びブレンドが改善される。
【0150】
概して、シラン及び構成成分、又はポリマー、特に加硫性ポリマーと反応可能な部分を有するものなどの任意の従来のシリカカップリング剤の種類が使用可能である。シリカカップリング剤は、シリカとポリマーとの間の連結架橋として作用する。第3の実施形態の特定の実施形態において使用するのに好適なシリカカップリング剤としては、アルキルアルコキシ、メルカプト、ブロックされたメルカプト、硫化物含有(例えば、一硫化物をベースとするアルコキシ含有、二硫化物をベースとするアルコキシ含有、四硫化物をベースとするアルコキシ含有)、アミノ、ビニル、エポキシ、及びこれらの組み合わせなどの基を含むものが挙げられる。特定の実施形態では、シリカカップリング剤は、前処理されたシリカの形態でゴム組成物に添加されてもよい。当該前処理されたシリカは、ゴム組成物に添加される前にシランで前処理されている。前処理されたシリカを使用することにより、1つの成分に2つの成分(すなわち、シリカとシリカカップリング剤)を添加することが可能になり、これによって概してゴムの配合が容易になる傾向がある。
【0151】
シリカカップリング剤が第3の実施形態によるタイヤゴム組成物中で利用される場合、使用される量は変化してもよい。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、いかなるシリカカップリング剤も含まない。第3の実施形態の他の実施形態では、シリカカップリング剤は、0.1:100~1:5(すなわち、シリカ100部当たり0.1~20重量部)、1:100~1:10、1:100~1:20及び1:100~1:25、並びに約1:100~約0:100及び1:100~0:100のシリカ充填剤に対するシリカカップリング剤の総量の比を提供するのに十分な量で存在する。第3の実施形態による特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、0.1~15phr(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15phr)、0.1~12phr、0.1~10phr、0.1~5phr、1~15phr(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15phr)、1~10phr(例えば、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10phr)、1~5phr、又は1~3phrの量のシリカカップリング剤を含む。
可塑剤
【0152】
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は、少なくとも1つの可塑化油の0~50phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50phr)と、少なくとも30℃のTgを有する少なくとも1つの炭化水素樹脂0~60phr(例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60phr)を含む可塑化成分を含む。好ましくは、可塑化油又は炭化水素樹脂のうちの少なくとも1つが、ゴム組成物中に存在する。第3の実施形態の好ましい実施形態では、可塑化成分は、0~30phrの可塑化油及び5~60phrの炭化水素樹脂を含む。第3の実施形態のより好ましい実施形態では、可塑化成分は、0~15phrの可塑化油及び5~50phrの炭化水素樹脂を含む。第3の実施形態の特定の実施形態では、可塑化油は、少なくとも1phr(例えば、1~50phr、1~30phr、1~15phr、1~10phr、1~5phrなど)の量で存在する。
【0153】
芳香族、ナフテン系、及び低PCA油が挙げられるがこれらに限定されない様々な種類の可塑化油が利用され得る。好ましくは、可塑化油は、25℃で液体(注入可能)である。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含有物を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003年、第62版に見出すことができる。好適な低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。好適なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。好適なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。好適な重ナフテン系油は、SHELLFELX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。好適な低PCA油としてはまた、野菜、木の実及び種子から採取できるものなど、様々な植物起源の油も挙げられる。非限定例としては、以下に限定されないが、ダイズ油、ヒマワリ油(少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%のオレイン酸含有量を有する高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられる。第3の実施形態の特定の実施形態では、タイヤゴム組成物は、10phr未満(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0phr)、5phr未満、1~5phr未満、又は更には0phrなどの限られた量の油を含む。
【0154】
可塑性樹脂を含む様々な種類の炭化水素樹脂が可塑化成分に利用されてもよい。本明細書で使用するとき、可塑性樹脂という用語は、室温(23℃)において固体である化合物を指し、通常、少なくとも5phrとなる使用される量で、ゴム組成物中で混和性である。一般に、可塑性樹脂は希釈剤として作用し、一般に、非混和性である粘着性樹脂と対比的なものとなり得、移動してゴム組成物の表面に粘性をもたらすことができる。可塑性樹脂が利用される第3の実施形態の特定の実施形態では、可塑性樹脂は、炭化水素樹脂を含み、この中に含まれているモノマーに応じて、脂肪族タイプ、芳香族タイプ、又は脂肪族/芳香族タイプとすることができる。第3の実施形態のゴム組成物において使用するのに好適な可塑性樹脂の例としては、以下に限定されないが、シクロペンタジエン(CPDと略称)又はジシクロペンタジエン(DCPDとして略称)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びC5留分のホモポリマー又はコポリマー樹脂が挙げられる。このような樹脂は、例えば、個々に、又は組み合わせて使用することができる。第3の実施形態の特定の実施形態では、30℃超(好ましくは、40℃超及び/又は120℃以下若しくは100℃以下)のTg、400~2000グラム/モル(好ましくは、500~2000グラム/モル)の数平均分子量(Mn)、及び3未満(好ましくは、2未満)の多分散度指数(PI)(PI=Mvv/Mnであり、Mvvは、樹脂の重量平均分子量である)のうちの少なくとも1つを満たす可塑性樹脂が使用される。樹脂のTgは、ASTM D3418(1999)に準拠して、DSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。樹脂のMw、Mn、及びPIは、THF、35℃、濃度1g/1、流速1ミリリットル/分、注入前に0.45μmの気孔率を有するフィルターを通して濾過した溶液、ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正、一連の3つの「Waters」カラムのセット(「Styragel」HR4E、HR1、及びHR0.5)、示差屈折率計(「Waters 2410」)及びその関連する操作ソフトウェア(「Waters Empower」)による検出を使用して、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定することができる。
硬化パッケージ
【0155】
上述したように、第3の実施形態によれば、ゴム組成物は硬化パッケージを含む。一般的に、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1種の加硫剤と、少なくとも1種の加硫促進剤と、少なくとも1種の加硫活性化剤と、任意に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤と、を含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として働く。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当分野で公知であり、所望の加硫特性に基づいて、当業者により選択され得る。
【0156】
第3の実施形態の特定の実施形態に使用するのに好適な加硫剤の種類の例としては、以下に限定されないが、硫黄、又は過酸化物をベースとする硬化性構成成分が挙げられる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。一般に、加硫剤は、1~7.5phrを含む、1~5phr、好ましくは1~3.5phrを含む、0.1~10phrの範囲の量で使用してもよい。
【0157】
加硫促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。好適な加硫促進剤の例としては、チアゾール加硫促進剤、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)、及び同様のものなど、グアニジン加硫促進剤、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバメート加硫促進剤などが挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、使用される加硫促進剤の分量は、0.1~10phr、好ましくは0.5~5phrの範囲である。
【0158】
加硫活性化剤は、加硫を補助するために使用される添加剤である。一般的に、加硫活性化剤は、無機構成成分及び有機構成成分の両方を含む。酸化亜鉛は、最も広く使用されている無機加硫活性化剤である。ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、及びこれらのそれぞれの亜鉛塩を含む様々な有機加硫活性化剤が、一般的に使用されている。一般に、使用される加硫活性化剤の量は、0.1~6phr(例えば、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5又は6phr)、好ましくは0.5~4phr(例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3 3.5又は4phr)の範囲である。
【0159】
加硫阻害剤は、加硫プロセスを制御するため、一般的には、所望の時間及び/又は温度に達するまで加硫を遅らせるか又は阻害するために使用される。一般的な加硫阻害剤としては、以下に限定されないが、Santogard製のPVI(シクロヘキシルチオフタルミド)が挙げられる。一般的に、使用される加硫阻害剤の量は、0.1~3phr、好ましくは0.5~2phrである。
他の成分
【0160】
本明細書に開示される第3の実施形態のゴム組成物に任意に添加され得る様々な他の成分としては、ワックス、加工助剤、粘着付与樹脂、補強樹脂、解膠剤、及び酸化防止剤が挙げられる。
ゴム組成物の調製方法
【0161】
本明細書に開示する第3の実施形態によるゴム組成物は、一般に、(上記で開示した)ゴム組成物の成分を、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらの成分をバンバリーミキサー又はロール機で混練するなど、共に混合することによって形成することができる。これらの方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階とを含む。非生産用マスターバッチ段階という用語は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階であると理解されている。用語、最終生産用混合段階も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。第3の実施形態の特定の実施形態では、1つの非生産用マスターバッチ混合段階が、ゴム組成物を調製する際に使用されてよい。第3の実施形態の特定の実施形態では、2つ以上の非生産用マスターバッチ混合段階が使用される。シリカ及びシリカ結合剤が用いられる第3の実施形態の特定の実施形態では、複数の非生産用マスターバッチ混合段階が使用され、シリカ充填剤の少なくとも一部は、第2の非生産用マスターバッチ混合段階(再ミル粉砕段階としても記載される)において添加され、特定のこのような実施形態では、全てのシリカカップリング剤は、第2の非生産用マスターバッチ混合段階(シリカ充填剤の少なくとも一部分と共に)のみにおいて添加され、シリカカップリング剤は、初期の非生産用マスターバッチ混合段階では追加されない。
【0162】
第3の実施形態の特定の実施形態では、マスターバッチ混合段階は、タンデム混合又は噛み合い混合のうちの少なくとも1つを含む。タンデム混合は、2つの混合チャンバを有し、各チャンバが1組の混合用ロータを有する、ミキサーを使用することを含むものとして理解することができ、一般に、2つの混合チャンバは、一次ミキサーである上部混合器と一緒に積層され、下部ミキサーは、上部又は一次ミキサーからバッチを受け入れる。特定の実施形態では、一次ミキサーは噛み合うロータを利用し、他の実施形態では、一次ミキサーは接線方向のロータを利用する。好ましくは、下部ミキサーは、噛み合うロータを利用する。噛み合い混合は、噛み合うロータを有するミキサーの使用を含むものとして理解され得る。噛み合うロータとは、ロータが互いに噛み合うように、セット内の1つのロータの大径が、セット内の対向するロータの小径と相互作用する、1組のロータを指す。噛み合うロータは、ロータ間の相互作用により、均一の速度で駆動されなければならない。噛み合うロータとは対照的に、接線方向ロータとは、各々のロータが、側面と称され得る空洞内で互いに独立して回転する、1組のロータを指す。一般に、接線方向のロータを有するミキサーは、ラムを含むのに対し、ラムは、噛み合うロータを有するミキサーでは必要ではない。
【0163】
第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約130℃~約200℃の温度で行われる非生産用マスターバッチ混合段階(複数可)を伴うプロセスによって調製される。第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、ゴム組成物の望ましくない事前硬化を回避するために加硫温度を下回る温度で行われる最終生産用混合段階を伴うプロセスによって調製される。したがって、生産用混合段階の温度は、約120℃を超えるべきでなく、典型的には約40℃~約120℃、又は約60℃~約110℃、特に、約75℃~約100℃である。
【実施例0164】
以下の実施例は、本開示の特定の及び例示的な実施形態、並びに/又は実施形態の特徴を例示するものである。実施例は、単に例示の目的で提供されており、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの特定の実施例に対する多くの変更が可能である。具体的には、変性高シスポリブタジエンポリマーは、異なる官能性化合物を使用して(すなわち、上述のように、式(I)に従って)、異なる安定化剤を使用して、又は安定化剤を使用しない(上記のように)、又はゴム組成物中で使用する官能性化合物と安定化の異なる組み合わせを使用/有することができることを理解されたい。また、高シスポリブタジエンポリマーは、実施例で使用されているものとは相対的な量、組成、又はその両方が異なる成分(例えば、追加のゴム、充填剤、硬化パッケージ成分)とともにゴム組成物に利用することができる(つまり、前の段落で開示されているのと同じくらい完全に)ことも理解されたい。
【0165】
以下に詳細に説明するように、実施例1~5において高シスポリブタジエンポリマーを製造した。実施例3~5は、第2の実施形態の変性高シスポリブタジエンポリマーであると考えることができ、第1の実施形態の例示であるプロセスに従って製造することができるが、実施例1~2は、比較又は対照例として考慮されるべきである(それらは式(I)を満たす官能化化合物を利用しないため)。次いで、実施例1~5で生成したポリマーを使用して、実施例6でゴム組成物を調製した。ゴム組成物6-3,6-4及び6-5は、本明細書に開示される第3の実施形態の例示として考えることができるが、実施例6-1及び6-2は、比較例又は対照例として考慮されるべきである。
一般的な重合手順
【0166】
実施例1:窒素でパージした乾燥378リットルの反応器に、ヘキサン55,755グラム及びヘキサン中の78,361グラムの23.4重量%の1,3-ブタジエン溶液を添加した。溶液を32℃に維持した。260グラム/288ミリリットルのCOMCAT Nd-FC/SF触媒(Comar Chemical Ltd.から入手可能)を予備成形触媒として使用した。追加のジイソブチルアルミニウムヒドリドを必要に応じて添加して、25 MU~45 MUの範囲のベースML1+4を維持した。次いで、反応器ジャケットを、91℃に設定した。混合物を、52℃のピーク温度に達するまで重合させた。次いで、ジャケット温度を66℃に上昇させた。20分後、69,622グラムのヘキサン及び93.9グラムの未希釈の2-シアノエチルトリエトキシシラン(CETEOS)を反応器に充填した。ネオジムバーサチック中のCETEOS対Ndのモル比は、20:1であった。30分後、未希釈のトリエトキシ(オクチル)シラン120グラムを添加し、続いて39グラムの未希釈のエチルヘキサノエートを添加した。約30分後、重合混合物を冷却させた。得られたポリマーセメントを、46グラムの未希釈イソプロパノール、続いて183グラムの未希釈ジブチルヒドロキシトルエンを使用して急冷、凝固させた後、蒸気蒸留して乾燥させた。得られたポリマーの特性を以下の表1-Aに要約する。実施例1のポリマーは、対照ポリマーと見なすことができる。
【0167】
実施例2:CETEOSの代わりに100.0グラムの未希釈の3-シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTEOS)を使用したことを除き、実施例1について上述した手順に従って実施例2のポリマーを作製した。実施例2のポリマーは、対照ポリマーと見なすことができる。
【0168】
実施例3:実施例3のポリマーは、CETEOSの代わりに100.0グラムの未希釈の3-3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(GPMDEOS)を使用したことを除いて、実施例1について上述した手順に従って作製した。
【0169】
実施例4:より少ない安定化剤(75.3グラムのOTES)を使用したことを除き、実施例3について上述した手順に従って実施例4のポリマーを作製した。
【0170】
実施例5:実施例5のポリマーは、安定化剤(すなわち、0グラムのOTES)を使用しなかったことを除いて、実施例3について上述した手順に従って作製した。
【0171】
実施例6~11:GPTEOS/3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(実施例6及び9)、GPMDEOS/3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(実施例7及び10)、又はGPDMEOS/3-グリシドキシジメチルエトキシシラン(実施例8及び11)を使用して、高シスポリブタジエンポリマーを調製した。実施例6,7及び8は、5当量のOTES(すなわち、OTESのモル比:Ndは5:1)を使用した。実施例9,10及び11は、OTESを使用しない。実施例7及び9は本発明であり、実施例6、8、9及び11は、対照例(トリエトキシシラン及びモノエトキシシランをジエトキシシランと比較する)である。一般に、実施例1~5に記載の手順と同じ手順を使用して、上述の変性剤の使用を除いて(及び表1-Bに列挙される量で)ポリマーを調製した。特定のポリマーについて、安定化剤の使用(示されるように、及び表1-Bに列挙される量)を使用した。得られたポリマーの特性を以下の表1-Bに要約する。
【表1】
1官能化化合物のモル比:ネオジム
2安定化剤のモル比:ネオジム
3シス-1,4結合測定について上述したように、FTIRによって測定
4官能化化合物は、式(I)によらない
【表2】
1官能化化合物のモル比:ネオジム
2安定化剤のモル比:ネオジム
3シス-1,4結合測定について上述したように、FTIRによって測定
4官能化化合物は、式(I)によらない
【0172】
表1-A及び表1-Bに開示されるムーニー粘度は、大型ロータ、1分間のウォームアップ時間、及び4分間の稼働時間を有するAlpha Technologies Mooney粘度計を用いて100℃で決定されたポリマー値(ポリマー上で決定される)であり、したがってML1+4と称される。より具体的には、各バッチから100℃で1分間、ロータが始動する前に試料を予備加熱することにより、ムーニー粘度を測定した。ロータが始動して4分後に、トルクとして、各試料のムーニー粘度を記録した。初期値及び熟成値は、以下のとおりの試料で測定した。Mn、Mw、シス-1,4結合、及びビニル結合含量は、全て、一般に以下に記載されるように、試料上で決定された。ゲル含有量(重量%)は、トルエン中に試料を2日間浸漬し、次いで、任意のゲルをメッシュスクリーン上に捕捉し、ゲル含有量を計算することによって決定した(60℃で2時間真空下でスクリーンを乾燥させた後)。
【0173】
表1-Bのデータから分かるように、式(I)による官能化化合物の使用、すなわち、ジエトキシシラン基を有する)を、トリエトキシシラン基を有する類似の化合物の使用と比較して、安定化剤(すなわち、OTES)が使用されるかどうかにかかわらず、著しく低い不溶性含有量を有する変性高シスポリブタジエンをもたらす(0.8 vs.12.7%又は2.6 vs.27.6%)。安定化剤の存在下で初期から熟成された(21%vs.32)ムーニー粘度の増加が少ない。以下により詳細に記載されるように、式(I)による官能化化合物、すなわち、ジエトキシシラン基を有する官能化化合物の使用は、モノエトキシシラン基を有する類似の化合物の使用と比較して、ポリマーがゴム組成物に組み込まれたときに改善された特性をもたらした。表1-Aのデータと同様に、式(I)による官能化化合物の使用は、トリエトキシシラン基を含有するエポキシ含有化合物と比較して、より低い不溶性含量を有する変性高シスポリブタジエンをもたらし、安定化剤(すなわち、OTES)の量の増加の存在下でより顕著な効果をもたらす。更に、式(I)による官能化化合物の使用は、トリエトキシシラン基を含有するエポキシ含有化合物と比較して、低い初期ムーニー粘度(値が全て30~80の範囲内にある)及びより低い熟成ムーニー粘度(全て105未満である)の両方を有する変性高シスポリブタジエンをもたらす。モノエトキシ基を含有するエポキシ含有化合物と比較して、式(I)による官能化化合物の使用は、ポリマー加工に特に有利なムーニー粘度を有する変性高シスポリブタジエンをもたらす。より具体的には、少なくとも50又は少なくとも60の熟成された又は最終的なムーニー粘度は、そのようなポリマーがより低い粘着性を呈するという点で有利であり得る。
【0174】
実施例12:以下の表2に記載の式に従って、実施例1~11に従って生成されたポリマーを利用して、ゴム組成物(12-C1、12-C2及び12ー1~12ー11)を調製した。実施例1のポリマーを使用してゴム組成物12-1を調製した。実施例2のポリマーを使用してゴム組成物12-2などを調製した。実施例1-11に従って生成されたポリマーを使用することに加えて、Firestone Polymersから市販のネオジム触媒ポリマー(シス1,4結合含有量96%、ビニル結合含有量0%、トランス結合含有量4%、Tg -109℃、及び100℃で45の初期ML
1+4を有する)140NDDiene(商標)ポリブタジエンを使用して、追加の制御ゴム組成物を調製した。140NDの試料をOTES(12-C1)と共に、OTES(12-C2)なしで使用した。実施例12のゴム組成物の調製には、表3に記載の混合手順を用いた。実施例12-C1、12-C2、12-1、12-2、12-6、12-8、12-9及び12-11のゴム組成物は、対照例と見なすことができる。実施例12-3、12-4、12-5、12-7及び12-10のゴム組成物は、本発明を考慮することができる。
【表3】
1Ergon Manufacturingからの低PCA油、ブラックオイル
2ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド
3TBBS及びDPG
【表4】
【0175】
ゴム組成物12-C及び12-1~12-11試料の調製後、試料を採取し、以下の手順に従って特性を測定した。結果を以下の表4-A及び表4-Bに報告する。表4-A及び表4-Bに列挙した化合物ゴム組成物ムーニー粘度を、Alpha Technologies Mooney粘度計を大型ロータ、1分間のウォームアップ時間、及び4分間の稼働時間を用いて、100℃で測定した。
【0176】
TA InstrumentsからAdvanced Rheometric Expansion System(ARES)で実施した歪み掃引試験を用いてtanδ及びG’値を測定した。試験片は、長さ47mm、厚さ2mm、幅12.7mmの矩形形状を有していた。試験機のグリップ間の試験片の長さ(すなわち、間隙)は約27mmであった。試験は、3.14 rad/秒の周波数を用いて実施した。温度を、-80℃~-10℃の温度に使用した0.25%の歪みで-80℃から80℃に掃引し、歪みを-10℃から80℃まで2%まで上昇させた。65℃におけるゴム組成物のtanδは、タイヤトレッドに組み込まれたときの転がり抵抗を示し、そのtan G’-20℃は、タイヤトレッドに組み込まれたときのそのスノー性能を示し、0℃でのtanδは、タイヤトレッドに組み込まれたときのウェット性能を示す。tanδ値は、(所定の実施例の値を制御ゴム組成物の値と比較することによって計算される)指数番号として示され、100を超える数は改善であると考えられる。
【表5】
*実施例12-4及び12-5を実施例12-1~12-3とは別の時間で混合し、表4-Aに列挙したものと同じ組成を有する対照に指数化したが、実施例12-4及び12-5と同時に混合した。
【表6】
【0177】
表4-Aのデータを比較すると、トリエトキシシラン基を含有するシアノ含有化合物と比較して、式(I)による官能化化合物の使用の使用により、65℃におけるtanδの値が改善されたゴム組成物(ゴム組成物をタイヤトレッドに組み込んだときの転がり抵抗の向上を示す)をもたらすことが分かり得る。より具体的には、実施例12-3、12-4及び12-5の65℃におけるtanδの指数値は、実施例12-1及び12-2よりも高い。表4-Bのデータを比較すると、式(I)による官能化化合物(それぞれの対照組成物と比較した場合)の使用は、0℃のtanδを除いて、組成物12-7及び12-10の全ての特性の改善をもたらすことが分かり得る。特に、本発明のゴム組成物12-10は、65℃でのtanδの改善を最も示した。同様に、表4-Bのデータに基づいて、安定化剤(つまり、OTES)の使用は、スノー特性(つまり、-20℃でのG’)に利点をもたらすように見え、これは、組成物12-10対その対照組成物12-C2と比較して、組成物12-7対その対照組成物12-C1の値が増加することによって例示される。
【0178】
本出願は、本明細書において開示されている組成物及び方法の実施形態が開示される数値範囲全体で実行できるため、明確な範囲限界が明細書内に言葉どおりに言及されていなくても、開示される数値範囲内の任意の範囲を支持する、いくつかの数値範囲限界を開示している。実質的に任意の複数又は単数の用語を本明細書で用いることに関して、当業者は、状況又は用途に適切となるように、複数から単数へ、又は単数から複数へ置き換えることができる。様々な単数又は複数の置き換えは、簡潔にするため、本明細書では明示的に記述されている場合がある。
【0179】
一般的に、当業者は、本明細書及び特に添付の特許請求の範囲で使用された用語は、概して「オープン」な用語を意図していることを理解するだろう。例えば、用語「含む」は、「含むがこれらに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「挙げられる」は、「挙げられるがこれらに限定されない」と解釈されるべきである。更に、当業者は、前置きされた請求項の記載において特定の数が意図される場合、そのような意図は当該請求項中に明示的に記載されるものとし、そのような記載がない場合は、そのような意図も存在しないことを理解するだろう。例えば、理解を助けるものとして、以下の添付の特許請求の範囲には、請求項の記載を前置きするために、前置き語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含む場合がある。しかしながら、かかる語句の使用は、同じ請求項が、前置き語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」、及び、「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の前置きが、そのように前置きされた請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、かかる記載を1つのみ含む発明に限定することを意味するものとして解釈されてはならず(例えば、「a」又は「an」は、典型的には、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の前置きに使用される定冠詞の使用についても同じことが言える。加えて、前置きされた請求項の記載において特定の数が明示的に記載される場合でも、当業者は、このような記載が、典型的には、少なくとも記載される数を意味するものと解釈されるべきであることを理解している(例えば、他の修飾語句を持たない明らかな記載である「2つの記載」は、典型的には、少なくとも2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうち少なくとも1つ」に類似する慣例表現を用いる場合、一般に、このような構成は、当業者がその慣例を理解し得るという意味において意図される(例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つを有するシステム」として、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B、及びCを共になどを有するシステムが挙げられ得るが、これらに限定されない)。更に、当業者は、事実上、2つ以上の代替用語を示す任意の離接的単語又は語句は、明細書、請求項、又は図面を問わず、これらの用語のうちの1つ、これらの用語のうちのいずれか、又はこれらの用語の両方を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを、理解するであろう。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。特許、特許出願、及び非特許文献を含むがこれらに限定されない全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例示目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。