(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032709
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】磁気浮上可能なロータおよびこのようなロータを有する回転機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/48 20060101AFI20240305BHJP
H02K 1/2733 20220101ALI20240305BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
F04D29/48
H02K1/2733
H02K7/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023217940
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2018116252の分割
【原出願日】2018-06-19
(31)【優先権主張番号】17179501.6
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511081820
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナターレ バーレッタ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンピエロ、フォイエーラ
(72)【発明者】
【氏名】トマス エバーレ
(72)【発明者】
【氏名】レト シェーブ
(72)【発明者】
【氏名】トマス ゲンプ
(72)【発明者】
【氏名】マチアス フォフマン
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、回転機械のために磁気浮上することが可能なロータを提案し、さらに、このようなロータを有する回転機械を提案することである。
【解決手段】磁気浮上するロータを有する回転機械のためのロータが提案され、ロータは磁気浮上可能であり、ロータは、磁気的有効コア(2)と、熱可塑的に加工可能なフルオロポリマーで作られた被覆材(3)とを有し、被覆材(3)は磁気的有効コア(2)を完全に包囲し、磁気的有効コア(2)は少なくとも1つの永久磁石(21)を備え、各永久磁石(21)は酸性または化学的腐食性物質に対する保護のための金属コーティング(6)を有し、金属コーティング(6)と被覆材(3)との間にプラスチックコーティング(7)が設けられ、前記プラスチックコーティング(7)はパレリン族に属するポリマーからなる。さらに、このようなロータを有する回転機械(100)が提案される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気浮上するロータを有する回転機械のためのロータであって、前記ロータは磁気浮上可能であり、前記ロータは、磁気的有効コア(2)と、熱可塑性フルオロポリマーで作られた被覆材(3)とを有し、前記被覆材(3)は前記磁気的有効コア(2)を完全に包囲し、前記磁気的有効コア(2)は少なくとも1つの永久磁石(21)を備え、各永久磁石(21)は酸性または化学的腐食性物質に対する保護のための金属コーティング(6)を有し、前記金属コーティング(6)と前記被覆材(3)との間にプラスチックコーティング(7)が設けられ、前記プラスチックコーティング(7)はパリレン族に属するポリマーからなることを特徴とする、ロータ。
【請求項2】
前記金属コーティング(6)は、ニッケルまたは金またはロジウムからなる少なくとも1つの層(61、62、63)を備える、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記金属コーティング(6)は、互いに上下に配置された少なくとも3つの層(61、62、63)を備え、最内層(61)は前記永久磁石(21)の表面上に直接設けられ、ニッケルからなる、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記金属コーティング(6)は、互いに上下に配置された、厳密に3つの層(61、62、63)を備え、前記最内層(61)および最外層(63)は各々ニッケルからなり、間の中間層(62)は銅または金またはロジウムからなる、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記被覆材(3)は、ペルフルオロアルコキシポリマーまたはエチレンクロロトリフルオロエチレンまたはポリビニリデンフルオリドからなる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項6】
前記プラスチックコーティング(7)と前記被覆材(3)との間に熱保護フィルム(9)が設けられ、前記熱保護フィルムはポリイミドフィルムである、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項7】
前記プラスチックコーティング(7)は、フッ化パリレンからなる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項8】
前記金属コーティング(6)は、前記磁気的有効コア(2)を完全に包囲する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項9】
前記プラスチックコーティング(7)は、前記磁気的有効コア(2)を完全に包囲する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項10】
前記金属コーティング(6)は各永久磁石(21)上に直接設けられ、各永久磁石(21)は、その上に直接設けられた金属コーティング(6)によって完全に包囲される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項11】
前記プラスチックコーティング(7)は前記金属コーティング(6)上に直接設けられ、各金属コーティング(6)は、その上に直接設けられた前記プラスチックコーティング(7)によって完全に包囲される、請求項10に記載のロータ。
【請求項12】
前記磁気的有効コア(2)は永久磁石(21)からなり、前記永久磁石(21)は一体にリングの形態で設計される、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項13】
前記被覆材(3)は、前記磁気的有効コア(2)を受容するカップ型ハウジング部品(31)と、前記カップ型ハウジング部品(31)に溶接されるカバー(32)とを有し、前記カップ型ハウジング部品(31)は、前記磁気的有効コア(2)と前記カップ型ハウジング部品(31)との間に空隙(81、82)が存在するように設計されている、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項14】
磁気浮上可能なロータ(1)およびステータ(104、110)を有する、流体に影響を及ぼすための回転機械であって、これにより前記ロータ(1)は、動作状態において軸方向(A)の周りで回転するために磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、前記ロータ(1)は磁気浮上し、請求項1から請求項13のいずれか一項にしたがって設計されていることを特徴とする、回転機械。
【請求項15】
ベアリングレスモータとして設計されており、前記ステータは軸受ステータおよび駆動ステータ(104)として設計され、これによって前記ロータ(1)は動作状態において磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、これによって前記ロータ(1)は前記ステータ(104)に対して少なくとも径方向に磁気的に非接触で浮上させられることが可能である、請求項14に記載の回転機械。
【請求項16】
前記回転機械は、遠心ポンプまたは混合装置である、請求項14または15に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気浮上したロータを有する回転機械用のロータであって、ロータは磁気浮上可能である、ロータに関し、それぞれのカテゴリの独立請求項のプリアンブルによる回転機械にも関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば遠心ポンプまたは混合装置または攪拌装置など、磁気浮上するロータを有する回転機械は、具体的には、機械軸受からの摩耗粒子によって流体を汚染することなく、高純度の流体が搬送、攪拌、または混合される用途向けの、多くの技術分野で使用される。半導体産業では、たとえば磁気浮上するロータは、半導体産業において半導体構造の製造または処理に使用される際に、超純水ならびに酸性、酸化性、またはその他の化学的腐食性物質を搬送するために使用される。このような金属イオンは半導体のドーピングを変化させる可能性があるので、磁気浮上するロータから液体に金属イオンが到達しないことが重要である。
【0003】
磁気浮上するロータを有する回転機械、具体的には遠心ポンプの設計に関して、ロータの回転が別の駆動ユニットによって駆動されている間、個別の磁気軸受によって非接触式にロータが浮上する装置が知られている。この場合、各磁気軸受は通常、ロータを磁気浮上させるためにロータの磁気的有効コアと相互作用する軸受ステータを備える。駆動ユニットは、ロータを電磁回転駆動部の原理にしたがって回転させる、駆動ステータを備える。
【0004】
しかしながら、個別の磁気軸受が設けられず、軸受機能および駆動機能が同じステータによって実現される、磁気的に非接触浮上するロータを有するような回転機械の設計もまた知られている。個別の磁気軸受(magnetic bearing)がロータに設けられていないので、このような設計のために用語「ベアリングレスモータ」が確立された。軸受機能および駆動機能は、互いに分離され得ない。これらの特に効率的なベアリングレスモータは、特に著しくコンパクトな設計と「非接触」の概念との同時実現を特徴とする。
【0005】
このように、ベアリングレスモータは、ロータがステータに対して完全に磁気浮上し、個別の磁気軸受が設けられていない、電磁回転駆動部である。この目的のために、ステータは軸受ステータおよび駆動ステータとして設計されており、これは電気駆動部のステータおよび磁気軸受のステータの両方である。回転磁界は、軸受ステータおよび駆動ステータの電気巻線を用いて生成されることが可能であり、この回転磁界は、一方ではロータにトルクを印加してこれを回転させ、他方では、その径方向位置がアクティブに制御または調整され得るようにロータに対して自由に調節可能な横力を印加する。
【0006】
回転機械のロータは、特にポンプ、ミキサー、または攪拌機として設計されたときに一体型ロータであることが多く、この一体型ロータは、電磁駆動部のロータおよびポンプまたはミキサーのロータの両方であり、これにより流体に影響を及ぼす。
【0007】
ロータの磁気的有効コアの設計について、異なる概念も知られている。たとえば、ロータの磁気的有効コア全体が永久磁石材料で作られるように、磁気的有効コアは1つ以上の永久磁石のみで構成されることが可能である。しかしながら、磁気的有効コアが軟磁性部品と組み合わせられた1つ以上の永久磁石を備えるような設計も、知られている。通常、軟磁性部品は、鉄、ニッケル鉄、またはシリコン鉄で作られる。
【0008】
たとえば遠心ポンプなどの回転機械が個別の磁気軸受を有して設計されるかベアリングレスモータの概念にしたがって設計されるかにかかわらず、酸性または化学的腐食性物質の搬送が、ロータの磁気的有効コア、特に永久磁石も、このような腐食性物質から保護することが特に重要である。たとえばネオダイン、サマリウム、またはコバルトなど、永久磁石に通常使用される材料は、一般的にこのような腐食性物質に対する耐性が非常に低い。
【0009】
半導体製造において使用および搬送されなければならない酸性またはその他の化学的腐食性物質は、たとえばオゾン水(O3、H2Oに溶解)、硫酸(H2SO4)、リン酸(H3PO4)、塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、硝酸(HNO3)、オゾン(O3)もしくはたとえば硫酸(H2SO4)と過酸化水素(H2O2)または硫酸(H2SO4)と硝酸(HNO3)などの混合物などである。さらに悪いことに、これらの腐食性物質はしばしば、たとえば150℃から200℃またはそれ以上の高温で提供されなければならない。
【0010】
このような腐食性物質から保護するために、ロータの磁気的有効コア、具体的には複数または1つの永久磁石にフッ化炭化水素のプラスチック被覆材を提供することが知られているが、これはこれらの炭化水素が、化学的腐食性物質に、特に上述の酸に対する非常に良好な耐性を示すからである。
【0011】
しかしながら、フッ化炭化水素は、化学物質の気体成分に対して十分な障壁を形成しないことが非常に多い。このため、フッ化炭化水素からの封入は、たとえばかなりの量の硫酸およびオゾン(O3を有するH2SO4)の搬送すべき混合物に含まれ得るオゾン(O3)に対して、非常に限られた障壁効果しか持たない。さらに、特にロータの永久磁石上では、比較的短い動作時間の後にはこのようなフッ化炭化水素の被覆材があっても腐食が発生することが、研究によって示されている。この結果、ロータが膨張し、金属コーティングが劣化し、ロータコアまたは被覆材の一部が欠けてロータの磁気的有効コアが完全に破壊される可能性がある。
【0012】
したがって欧州特許第2549113号明細書において、二重被覆材、すなわち永久磁石を完全に包囲する内部金属被覆材、および金属被覆材を完全に包囲するフッ化炭化水素の外部被覆材を有する、ロータの永久磁石を提供することが提案されている。
【0013】
この考え方は、通常は液体の酸に対して永久磁石または磁気的有効コアを外部プラスチック被覆材が保護し、プラスチック被覆材を比較的よく貫通できる気体成分に対しては内部金属被覆材が磁気的有効コアを保護するということである。
【0014】
二重被覆材のこの概念自体は実際に証明されているとはいえ、まだ改善の必要がある。一方では、被覆材の個々の部品の溶接は気密性でなければならないため、欧州特許第2549113号明細書において提案されたロータの永久磁石の厚肉金属被覆材を実現するのは比較的困難であるが、他方では、永久磁石材料の構造が変化しないように、溶接中のエネルギー入力は十分に低く保たれなくてはならない。磁気的な空隙は、あまり大きな力の損失を伴わずに磁気浮上の間に増加することはできないので、この問題は、金属の被覆材が永久磁石に比較的接近していなければならないという事実によって複雑化される。その際に、被覆材を溶接するために必要とされる熱は、ロータの永久磁石内に直接散逸される。加えて、オゾン、水素、または酸の蒸気はプラスチックを通じて拡散し、金属被覆材を腐食させる可能性がある。ロータの金属被覆材が腐食してしまうと、金属イオンがプラスチック被覆材を通じて搬送される流体内に拡散し、流体を汚染する可能性がある。半導体産業の用途において、流体中のこのような金属イオンは極端に否定的な結果を有する可能性があるが、これはたとえば、溶解した金属イオンの濃度が非常に低くても、制御されないやり方で処理される半導体構造のドーピングを変化させ、最悪の場合には半導体製品を使用不可能にする可能性があるからである。
【0015】
したがって、酸性またはその他の化学的腐食性物質に対してロータの磁気的有効コアをよりよく保護するため、そして同時に永久磁石の金属被覆材を溶接する上での上記の問題を回避するために、大きな努力が払われてきた。この目的のために、多種多様な金属層が永久磁石に電気的に付着させられ、これらの耐腐食性が試験された。しかし、たとえば非常に不活性であると考えられる金またはロジウムを用いて電気的に付着させられた金属被覆材であっても、驚くほどに本当に十分な結果には至らなかった。たとえば100から200時間という比較的短い使用寿命の後に、大規模な腐食がロータ上で発生する可能性がある。
【0016】
たとえば塩酸(HCl)またはフッ酸(HF)またはオゾン(O3)など、非常に小さい分子を有する特定の物質は、たとえば気泡または毛細管亀裂など、金属層の格子欠陥または微細構造欠陥を通じて被覆材中に拡散し、ロータの永久磁石または磁気的有効コアを腐食させて、ロータが内側から腐食してしまうことが示唆される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明はこの問題に特化している。
【0019】
したがって、この従来技術から始まって、本発明の目的は、そのロータ内でロータの磁気的有効コアおよび具体的には永久磁石が酸化性および酸性物質またはその他の化学的腐食性物質に対して特によく保護される、回転機械のために磁気浮上することが可能なロータを提案することである。さらに、本発明は、このようなロータを有する回転機械を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この問題を解決する本発明の目的は、それぞれのカテゴリの独立請求項の特徴によって特徴付けられる。
【0021】
本発明によれば、磁気浮上するロータを有する回転機械のために、磁気浮上可能なロータが提案され、このロータは、磁気的有効コアと、熱可塑的に加工可能なフルオロポリマーで作られた被覆材とを有し、被覆材は磁気的有効コアを完全に包囲し、磁気的有効コアは少なくとも1つの永久磁石を備え、各永久磁石は酸性または化学的腐食性物質に対する保護のための金属コーティングを有し、金属コーティングと被覆材との間にプラスチックコーティングが設けられ、このプラスチックコーティングはパレリン族に属するポリマーからなる。
【0022】
好ましくは、金属コーティングは永久磁石に直接接着する。
【0023】
非常に複雑で広範な研究により、フルオロポリマーの外部被覆材およびパリレンコーティングがその間に設けられた、永久磁石に直接接着する永久磁石の金属コーティングのこの正確な組み合わせは、酸、酸性流体、およびたとえばオゾンまたは水素などのその他の化学的腐食性物質に対するロータの磁気的有効コアの特に良好で長続きする保護を保証することが示された。ロータの磁気的有効コアは、この特殊な組み合わせにより、たとえば液体酸などの腐食性液体成分および気体成分の両方に対して保護される。具体的には、ロータの磁気的有効コアまたは永久磁石への、たとえば水素(H2)、オゾン(O3)、フッ酸(HF)、または塩酸(HCl)などの非常に小さい分子を有する物質の拡散もまた防止され、または少なくとも著しく低減される。外部被覆材のフルオロポリマーと比較して、パリレンのポリマー鎖は著しく長く、これにより、これらはフルオロポリマーよりもはるかに優れた拡散障壁を形成する。
【0024】
パリレンはまた、化学蒸着によって製造されたポリ(p-キシリレン)ポリマーの群の商品名としても使用される。出発材料はp-キシレン(キシレンは、キシレンまたはジメチルベンゼンとも称される)またはそのハロゲン化誘導体である。どの置換基がベンゼン環に結合しているかに応じて、異なるパリレンが区別される。パリレンNとして知られる基本製品であるポリ-p-キシレンにおいて、ベンゼン環は芳香族水素原子しか有しておらず、すなわちベンゼン環の4つのラジカルの各々は水素原子である。加えて、その他の市販製品は、具体的にはパリレンC、パリレンD、およびパリレンHTである。パリレンCでは、芳香族水素原子の1つが塩素原子で置換され、パリレンDでは芳香族水素原子の2つが各々1つの塩素原子で置換され、パリレンHTは、二量体のアルファ水素原子が各々フッ素原子で置換されたハロゲン化誘導体である。
【0025】
ロータの磁気的有効コアの1つまたは複数の永久磁石は、好ましくはネオダイン-鉄-ホウ素(NdFeB)またはサマリウム-コバルト(SmCo)合金で作られている。
【0026】
ロータに直接接着する金属コーティングが、ニッケルまたは金またはロジウムで作られた少なくとも1つの層を備えていれば、有利であると判明した。
【0027】
金属コーティングが、互いに上下に配置された複数の、具体的には少なくとも3つのコーティングを有し、最内層が永久磁石の表面上に直接設けられ、好ましくはニッケルからなる場合、特に良好な保護が実現可能である。ニッケルはNdFeBベース合金ならびにSmCoベース合金にもよく接着するので、ニッケルが特に好ましい。パリレンもまた、特に金またはロジウムなどの貴金属よりもよくニッケルと接着するので、ニッケルは最も外側の金属層としても好ましい。
【0028】
好適な実施形態において、金属コーティングは、互いに上下に配置された、厳密に3つの層を備え、最内層および最外層は各々ニッケルからなり、間の中間層は好ましくは銅または金またはロジウムからなる。
【0029】
多層金属コーティングにおいて、最内層が最初に永久磁石の表面に付着させられる。続いて中間層が付着させられるが、これはたとえば、最も内側のコーティング内の気泡、毛細管亀裂、またはその他の微細構造欠陥を充填するために使用され得る。次いで、中間層は、最外層のための特に平坦で平滑な基部を形成する。好ましくは、金属コーティングはガルバニ技術(電気メッキ)によって、または無電流金属蒸着(外部電流を用いない化学蒸着)によって、永久磁石の表面上に堆積される。
【0030】
金属コーティングが3つの層を備える場合には、以下の層の組み合わせが特に好まれるが、内側から、すなわち永久磁石の表面側から外側に向かって順に:ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、またはニッケル、金、ニッケル、またはニッケル、ロジウム(Rh)、ニッケルである。金属層コーティングが1層のみからなる場合には、これは好ましくはニッケル、金、またはロジウムである。
【0031】
金属コーティングの全厚は、好ましくは30から100マイクロメートル、特に好ましくは50から60マイクロメートルである。
【0032】
被覆材に関しては、被覆材がペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)またはエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはポリビニリデンフルオリド(PVDF)からなることが好ましい。酸に対する耐性に加えて、これらの熱可塑的に加工可能なフルオロポリマーは、たとえば赤外線溶接によって射出成形および溶接され得るという、際だった利点を有する。これはロータの製造に有利である。
【0033】
フルオロポリマーの被覆材は、好ましくは互いに溶接された少なくとも2つの部品を備え、この目的には赤外線溶接が好ましい。特に溶接プロセス中に、過剰な熱入力からパリレン製のプラスチックコーティングを保護するために、熱保護フィルム、好ましくはポリイミドフィルムがプラスチックコーティングと被覆材との間に設けられることが、有利な手段となる。この目的のために、たとえばカプトン(Kapton)の商品名で入手可能な材料が適している。
【0034】
好適な実施形態によれば、プラスチックコーティングは、フッ化パリレン、好ましくは脂肪族フッ化パリレンからなる。具体的には、フッ化パリレンの2つの変異体が現在市販されており、すなわちパリレンAF4と称される脂肪族フッ化変異体およびパリレンVT4と称される芳香族フッ化変異体である。脂肪族フッ化パリレンは、ベンゼン環の間の脂肪族炭素結合中の2つの水素原子が2つのフッ素原子で置換された変異体である。この目的のため、二量体のアルファ水素原子はパリレンを生成するためにフッ素原子で置換される。芳香族フッ化変異体では、芳香族水素原子が各々フッ素原子で置換されており、すなわちベンゼン環の4つのラジカルの各々がフッ素原子である。
【0035】
フッ化パリレン、具体的には脂肪族フッ化パリレンは、高い熱安定性を有する、すなわち高温に対する耐性が高く、少なくとも短時間の間は劣化症状を伴わずに最高450°の温度に曝されることが可能であるという利点を有する。当然ながら、フッ化パリレンを用いるときにはパリレンのプラスチックコーティングと被覆材との間にポリイミド熱保護フィルムが設けられることも可能である。
【0036】
好ましくは、金属コーティングは磁気的有効コアを完全に包囲し、すなわち磁気的有効コア全体が金属コーティングによって完全に包囲される。第1の実施形態によれば、ロータの磁気的有効コアは、たとえば永久磁石リングなど、1つの永久磁石のみからなる。この場合、永久磁石全体が金属コーティングで完全に被覆されるように、すなわち金属コーティングによって完全に包囲または封入されるように、永久磁石の各表面には金属コーティングが完全に設けられている。
【0037】
プラスチック被覆材が磁気的有効コアを完全に包囲することもまた好ましい。通常、パリレンで作られたプラスチックコーティングは、被覆される基板上のポリマー層として蒸着によって製造される。したがって、たとえば、ロータの磁気的有効コアまたは永久磁石には、まず金属コーティングが設けられ、次いでパリレンのプラスチックコーティングがこの金属コーティング上に堆積される。
【0038】
好適な実施形態は、金属コーティングが各永久磁石上に直接設けられ、各永久磁石がその上に直接設けられた金属コーティングによって完全に包囲されることである。
【0039】
さらに、プラスチックコーティングは金属コーティング上に直接設けられ、各金属コーティングはその上に直接設けられたプラスチックコーティングによって完全に包囲されることが好ましい。
【0040】
既に述べられたように、磁気的有効コアは、第1の変形例の永久磁石からなり、永久磁石は好ましくは一体に、特に好ましくはリングの形態で設計される。
【0041】
好適な実施形態によれば、被覆材は、磁気的有効コアを受容するカップ型ハウジング部品と、ハウジング部品に溶接されるカバーとを有し、カップ型ハウジング部品は好ましくは、磁気的有効コアとハウジング部品との間に空隙が存在するように設計されている。磁気的有効コアに金属コーティングおよびプラスチックコーティングが設けられている場合、この空隙は、ハウジング部品の壁と被覆された磁気的有効コアとの間に、たとえば約0.1mmの径方向の幅を有する。空隙は、軸方向、すなわちカップ型ハウジング部品の底部またはカバーにも設けられ、軸方向に約0.5から1mmの幅を有する。
【0042】
さらに、磁気浮上可能なロータおよびステータを有する、流体に影響を及ぼす回転機械、具体的には遠心ポンプまたは混合装置が本発明によって提案され、これによりロータは、動作状態において軸方向の周りで回転するために磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、ロータは磁気浮上し、本発明によって設計されている。
【0043】
回転機械は好ましくはベアリングレスモータとして設計されており、ステータは軸受ステータおよび駆動ステータとして設計され、これによってロータは動作状態において磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、少なくともステータに対して径方向に磁気的に非接触で浮上させられることが可能である。
【0044】
本発明のさらに有利な手段および実施形態は、従属請求項から得られる。
【0045】
以下において、本発明は、実施形態によって、図面を参照して、より詳細に説明される。図示されるのは以下の通りである(一部断面)。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明によるロータの第1の実施形態を有する、本発明による回転機械の第1の実施形態の断面図である。
【
図2】
図1の磁気浮上可能なロータの断面図である。
【
図4】本発明によるロータの第2の実施形態を有する、本発明による回転機械の第2の実施形態の断面図である。
【
図5】
図2の磁気浮上可能なロータの断面図である。
【
図6】
図5の切断線VI-VIに沿った
図5のロータの断面図である。
【
図7】
図5のロータの第1の変形例の概略断面図である。
【
図8】
図5のロータの第2の変形例の概略断面図である。
【
図9】
図5のロータの第3の変形例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、本発明によるロータの第1の実施形態を有する、本発明による回転機械の第1の実施形態を第1の断面図で示す。ここで、回転機械は遠心ポンプとして設計されており、全体として参照符号100が付される。このような遠心ポンプ100は、特に半導体産業において、酸性流体または化学的腐食性物質を搬送するために使用されることが可能である。このような流体は、硫酸(H
2SO
4)、リン酸(H
3PO
4)、塩酸(HCl)、フッ酸(HF)、硝酸(HNO
3)、オゾン(O
3)、またはたとえば硫酸(H
2SO
4)と過酸化水素(H
2O
2)または硫酸(H
2SO
4)と硝酸(HNO
3)の混合物を含んでもよい。
【0048】
遠心ポンプ100は、搬送される流体用の入口102および出口103を有するポンプハウジング101を備える。本発明による磁気浮上可能なロータの第1の実施形態はポンプハウジング101内に設けられ、このロータは全体として参照符号1が付される。よりわかりやすくするために、
図2は、
図1の磁気浮上可能なロータ1の断面図を示す。ロータ1は、軸方向Aを画定する設定回転軸の周りでロータ1の回転を駆動するために、少なくとも1つの永久磁石21を備える磁気的有効コア2を有する。軸方向Aに垂直な方向は、径方向と記載される。
【0049】
第1の実施形態において、磁気的有効コア2は永久磁石21のみからなり、これは本明細書においてリング状永久磁石21として設計されている。好ましくは、リング状永久磁石21は一体になっている。しかしながら、永久磁石21はいくつかのセグメントを備え、これらが互いに補完してリングを形成することもまた、可能である。動作状態において、リング状永久磁石21は、設定回転軸の周りに延在するように配置される。
【0050】
ロータ1は、熱可塑的に加工可能なフルオロポリマーで作られた被覆材3をさらに備え、これは磁気的有効コア2が被覆材3内に完全に埋め込まれ、被覆材3によって封入されるように、磁気的有効コア2を完全に包囲する。被覆材3はペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)からなる。あるいは、被覆材3は、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)またはポリビニリデンフルオリド(PVDF)からなることも可能である。被覆材3には複数の羽根4が設けられ、これにより流体は入口102から出口103に搬送されることが可能である。さらに、羽根4を覆うカバープレート5が設けられ、これは被覆材3から離れる方に向いた面で羽根4を覆っている。ポンプハウジング101は、好ましくはプラスチック製である。これは、被覆材3が作られたのと同じプラスチックまたは別のプラスチックであってもよい。ポンプハウジング101は好ましくは、少なくとも基本的に、フルオロポリマーからなる。熱可塑的に加工可能ではない、すなわち溶接または射出成形できないプラスチックまたはポリマー、特にフルオロポリマーもまた、ポンプハウジング101に適している。
【0051】
ポンプハウジング101は、ステータ104内に挿入可能なように設計されており、これによりロータ1は、軸方向Aの周りで回転するために磁気的に非接触で駆動されることが可能となり、少なくとも径方向に磁気的に非接触で浮上させられることが可能である。したがって、ロータ1は一体型ロータ1として設計され、これはポンプロータ1および電磁回転駆動部のロータ1の両方を形成する。
【0052】
ステータ104はそれ自体周知の方法で、コイルまたは巻線106を有するいくつかのコイルコア105を有し、これによりロータ1は、動作状態において磁気的に非接触で駆動されることが可能である。コイルコア105は終結部107によって接続されるが、これは好ましくは鉄からなる。第1の実施形態において、ステータ104は軸受ステータおよび駆動ステータ104として設計されており、これによってロータ1は動作状態において磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、ステータ104に対して接触することなく磁気的に非接触で浮上させられることが可能である。したがって、ステータ104およびロータ1は電磁回転駆動部を形成し、これは好ましくはベアリングレスモータの原理にしたがって設計される。
【0053】
ベアリングレスモータでは、ロータ1は、磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、ステータ104に対して磁気的に非接触で浮上させられることが可能である。この目的のために、ステータ104は軸受ステータおよび駆動ステータ104として設計されており、これによってロータ1は、設定回転軸の周りで磁気的に非接触で駆動させられることが可能であり、すなわちこれは、ステータ104に対して磁気的に非接触で回転および浮上させられることが可能である。
【0054】
ベアリングレスモータは当業者にとって周知であるので、その機能の詳細な説明はもはや必要ではない。ベアリングレスモータという用語は、ロータ1が完全に磁気浮上しており、別個の磁気軸受が設けられていないという事実を指す。この目的のために、ステータ104は軸受ステータおよび駆動ステータ104として設計されており、これは電気駆動部のステータおよび磁気軸受のステータの両方である。ステータ104は巻線106を備え、これによって磁気回転場が発生し、これは一方ではロータ1にトルクを印加してその回転を生じ、他方では、その径方向位置、すなわち軸方向Aに垂直な径方向平面における位置がアクティブに制御または調整され得るように、ロータ1に対して自由に調節可能な横力を印加する。したがって、ロータ1の少なくとも3つの自由度がアクティブに制御可能である。ロータ1は、軸方向Aの軸方向撓みに関して少なくともパッシブに磁気を帯びており、すなわちこれは制御可能ではなく、磁気抵抗力によって安定化される。ロータ1は、設計に応じて、残り2つの自由度、すなわち設定回転軸に垂直な径方向平面に対する傾斜に関しても、パッシブに磁気的に安定させられることが可能である。
【0055】
従来の磁気軸受とは対照的に、ベアリングレスモータのモータの磁気軸受および駆動部は電磁回転場を介して実現され、その総和は一方ではロータ1上で駆動トルクを発生し、またロータ1の径方向位置を制御できるようにする自由に調節可能な横力も発生する。これらの回転場は、個別に、すなわち異なるコイルを用いて生成されてもよく、あるいは回転場は、必要とされる電流または電圧を数学的に重ね合わせ、その後単一コイルシステムを使用することによって、生成されることも可能である。ベアリングレスモータの特徴は、駆動機能が軸受機能から分離され得ないことである。これは、駆動機能が軸受機能から分離された個別の磁気軸受の設計との大きな相違点である。
【0056】
ロータ1を有するポンプハウジング101をステータ104内に載置するために、ステータ104は、巻線106を有するコイルコア105がロータ1を包囲するように、ポンプハウジング101が挿入され得る略円筒形の凹部を有する。ロータ1は、コイルコア105によって形成されたステータ極の間の中央に配置されている。したがって、ロータ1およびステータ104は、内部ロータの原理にしたがって設計された、電磁回転駆動部を表す。
【0057】
本明細書に記載される実施形態では、遠心ポンプ100、より正確にはステータ104およびロータ1によって形成された回転駆動部は、いわゆるテンプルモータとして設計されている。テンプルモータ設計の特徴は、ステータ104が、各々が縦脚および横脚を有するL字型になっている、複数の個別のコイルコア105を備えることである。各縦脚は第1末端から第2末端まで軸方向Aに延在し、そこから横脚が径方向内向きに延在してステータ極を形成する。縦脚の全ての第1末端(これらは
図1の図によれば下部末端である)は、終結部107によって互いに接続されている。終結部107は、各々がコイルコア105の第1末端を隣接するコイルコア105の第1末端に接続する、いくつかのセグメントを備える。個々のコイルコア105は、これらがロータ1を円形に包囲してこの円上に等距離で配置されるように、好ましく配置される。動作中、ロータ1は、径方向内側を指しているステータ極の間で、磁気的に非接触なやり方で浮上させられる。ロータの磁気的有効コア2は、軸方向Aに対してステータ極と同じ高さにある。全てが軸方向Aと平行に延在してロータ1を取り囲む、コイルコア105の平行な縦脚は、寺院(テンプル)の柱と似ているのでテンプルモータと名付けられたものである。
【0058】
テンプルモータの別の特徴は、ステータ104の巻線106がコイルコア105の縦脚の周りに各々配置され、こうして図にしたがって磁気ロータ面の下で磁気ロータ面の外側に配置されることである。磁気ロータ面は、ロータ1の磁気的有効コア2の磁気中心面である。これは、ロータ1が傾斜していない場合にロータ1またはロータ1の磁気的有効コア2が動作状態において浮上させられている、軸方向Aに垂直な平面である。一般的に、磁気ロータ面は、軸方向Aに垂直な、ロータ1の磁気的有効コア2の幾何学的中心面である。
【0059】
好ましくは、巻線106は完全に磁気的有効コア2の下に配置されている。したがって、巻線106は、動作状態においてロータ1が駆動または浮上させられる平面内には配置されていない。コイル軸が各々磁気ロータ面内に、すなわちロータが浮上させられる平面内にあるようにステータの巻線が配置される、別の電磁回転駆動部とは対照的に、ステータ104の巻線106は、巻線106の軸が磁気ロータ面に垂直となり、したがって軸方向Aと平行となるように、テンプルモータ内に配置される。
【0060】
本発明は、テンプルモータのような実施形態に限定されないことは明らかである。ステータ104の他の多くの実施形態も可能である。唯一重要なことは、ロータ1が、動作状態において軸方向の周りで回転させるため磁気的に非接触で駆動可能なことである。
【0061】
以下、
図2および
図3を参照してロータ1をより詳細に説明するが、
図3は
図2の詳細Iの拡大図である。
【0062】
既に述べられたように、第1の実施形態において、磁気的有効コア2はリング状永久磁石21からなり、すなわち磁気的有効コア2は永久磁石21と同一である。永久磁石21は好ましくはネオダイン-鉄-ホウ素(NdFeB)合金からなるが、たとえばサマリウム-コバルト(SmCo)合金など、永久磁石に一般的に使用されるその他の材料からなってもよい。
【0063】
永久磁石21は、特に酸性または化学的腐食性物質の気体成分に対する保護として機能し、永久磁石へのこのような成分の拡散を可能な限り防止するかまたは少なくとも著しく低減する、金属コーティング6を有する。金属コーティング6は、以下により詳細に説明するが、永久磁石21の全ての表面に金属コーティング6が設けられ、永久磁石21が金属コーティング6で完全に包囲されるように、永久磁石21の表面上に直接設けられる。金属コーティング6は永久磁石21の気密封止であり、いかなる物質も永久磁石21と直接接触するのを防止する。
【0064】
好ましくは、金属コーティングはガルバニ技術(電気メッキ)によって、または無電流金属蒸着(外部電流を用いない化学蒸着)によって、永久磁石21の各表面上に直接堆積される。
【0065】
プラスチックコーティング7は金属コーティング6上に直接設けられ、このプラスチックコーティングは、パリレン族に属するポリマーからなる。パリレンN、パリレンCおよびパリレンDの商品名で市販されているこれらのパリレンは、プラスチックコーティングに特に適している。パリレンNは、このポリマー族の基本製品である。パリレンNは完全に直線状のポリマーのポリ(パラキシリレン)である。パリレンCおよびパリレンDは、パリレンNと同じ原材料から作られる変異体であるが、パリレンCでは芳香族水素原子の1つが塩素原子に置換され、パリレンDでは芳香族水素原子の2つが塩素原子で各々置換されている。特に、プラスチックコーティング7は、フッ化パリレン、および好ましくは脂肪族フッ化パリレンからなってもよい。たとえば、パリレンAF4として記載され、パリレンHTの商品名で市販されているこの誘導体では、2つの水素原子が、ベンゼン環の間の脂肪族炭素結合中の2つのフッ素原子で置換されている。
【0066】
パリレンからなるプラスチックコーティング7の製造は、それ自体が従来技術であり、したがってこれ以上の説明を必要としない。通常、パリレンコーティングは、化学蒸着によって製造される。最初に、ジパラキシリレン(またはハロゲン化、たとえばフッ素化誘導体)などの適切な二量体が蒸発して高温領域を通過させられ(熱分解)、これによりモノマーが形成される(たとえば、パラキシリレン)。次いでモノマーは被覆される表面上で、この場合は永久磁石21を包囲する金属コーティング6上で重合し、これによりパリレンコーティングがプラスチックコーティング7として形成される。
【0067】
この場合、プラスチックコーティング7は金属コーティング6を、したがって永久磁石21を完全に包囲することもまた好ましい。これは、プラスチックコーティング7が永久磁石21の周りに第2の被覆材を形成し、これが金属コーティング6を完全に包囲することを意味する。プラスチックコーティング7は、金属コーティング6上に直接設けられる。この目的のために、金属コーティング6は、プラスチックコーティング7の製造中にパリレンポリマーが堆積される基板として使用される。
【0068】
いくつかの連続した被覆プロセスにおいてプラスチックコーティング7を生成することが好ましく、その各々においてパリレン層が基板上に堆積される。この目的のために、金属コーティング6が設けられた永久磁石21は、被覆プロセス中に永久磁石21が置かれる接点もまた後続の被覆プロセス中に覆われるように、被覆プロセス中に少なくとも1回反転される。加えて、より均一で緻密なコーティングが複合被覆によって製造可能であり、永久磁石21または金属コーティング6の凹部もまた均一に被覆可能である。具体的には、完成したプラスチックコーティング7が少なくとも3つの重なり合ったパリレンを備えるように、各々においてパリレン層が製造される少なくとも3つの被覆プロセスが実行さる。プラスチックコーティング7の全厚は、好ましくは少なくとも40マイクロメートル、より好ましくは少なくとも60マイクロメートル、最も好ましくは約80マイクロメートル以上である。
【0069】
ロータ1は、永久磁石21と、永久磁石21を完全に包囲する金属コーティング6と、プラスチックコーティング7とを完全に包囲する、被覆材3をさらに備える。このように、被覆材3は、永久磁石21およびその上に設けられたコーティング6および7のための完全に閉鎖したハウジングを形成する。被覆材3は、金属コーティング6およびプラスチックコーティング7を有する永久磁石21を受容するカップ型ハウジング部品31と、カップ型ハウジング部品31を封止し、溶接継目33に沿ってカップ型ハウジング部品31に溶接されるカバー32と、を備える。カバー32をハウジング部品31に溶接するには、赤外線溶接が好ましい。
【0070】
既に述べられたように、被覆材3は、特に溶接可能である、熱可塑的に加工可能なフルオロポリマーからなる。特に好ましくは、被覆材3はPFAからなる。被覆材3もまた好ましくはECTFEまたはPVDFからなってもよい。
【0071】
したがって、テフロン(登録商標)の商品名で知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの溶接不可能なプラスチックまたは溶接不可能なフルオロポリマーは、被覆材3には特に適していない。通常は少量のPFAを含有する、溶接可能またはPFAはんだ付け可能なPTFE化合物のみが使用されてもよい。
【0072】
当然ながら、ポンプハウジング101は溶接不可能なプラスチック、具体的にはPTFEなどの溶接不可能なフルオロポリマーからなってもよい。
【0073】
永久磁石21を受容するカップ型ハウジング部品31は、金属コーティング6およびプラスチックコーティング7が設けられた永久磁石21が挿入される、略リング状の空洞を備える。空洞34の軸方向Aへの延長を意味する深さTは、ハウジング部品31が軸方向Aに対して永久磁石21およびプラスチックコーティング7の上に、
図2および
図3に示される下方向に突起するように、軸方向Aにおいて金属コーティング6およびプラスチックコーティング7を含む永久磁石21の延長よりもわずかに長くなっている。カバー32がハウジング部品31上に載置されるかまたはこれに溶接されると、いずれの場合も、金属コーティング6および永久磁石21を包囲するプラスチックコーティング7と、カバー32と空洞34の底部との間に、軸方向の空隙81がある。軸方向の空隙81の軸方向Aへの延長は、いずれの場合も好ましくは約0.5mmから1mmである。
【0074】
径方向において、空洞34は、金属コーティング6および永久磁石21を包囲するプラスチックコーティング7と被覆材3との間に径方向の空隙82が存在するような寸法の、幅Bを有する。径方向の空隙82は通常、0.5ミリメートル未満の幅(径方向)を有し、たとえば約0.1mmである。
【0075】
カバー32は、図(
図2)によれば軸方向の空隙81がいずれの場合も永久磁石21またはプラスチックコーティング7の上下両方に存在するように、カバー32から軸方向Aに突起する隆起部321を有する。金属コーティング6および永久磁石21を有するプラスチックコーティング7は、軸方向の空隙81が隆起部321の横方向に隣接して形成されるように、この隆起部321上に支えられることが可能である。たとえば、隆起部321は、設定回転軸と同軸に配置され、永久磁石21に対して径方向の中心にある、リング状の隆起部321として設計されることが可能である。
【0076】
磁気的有効コア2、この場合永久磁石21が被覆材3に対して回転できず、代わりにその回転中に被覆材3ならびに羽根4およびカバープレート5を伴うように、トルクが永久磁石21から被覆材3に伝達されることが可能な、いくつかの回転防止装置35が設けられる。各回転防止装置35は、被覆材3のカップ型ハウジング部品31の一体構成要素である、軸方向Aに延在するピン351と、それぞれのピン351が嵌合する、永久磁石内に設けられた穴352と、を備える。この目的のために、各ピン351およびピン351と相互作用するそれぞれの穴352は、永久磁石21は被覆材3に対して回転できないが、永久磁石21の回転は被覆材3に伝達されるように、設計されている。永久磁石21が金属コーティング6およびプラスチックコーティング7によって完全に包囲されるように、金属コーティング6およびプラスチックコーティング7の両方は穴352の各々にも設けられる。これは、金属コーティング6およびプラスチックコーティング7の両方が、各穴352とその中に嵌合するピン351との間に設けられることを意味する。
【0077】
図3に示されるように、金属コーティング6は、互いに上下に配置された複数の、すなわち3つの金属層を備える。最内層61は永久磁石21の表面上に直接設けられ、中間層62は最内層61上に直接設けられ、最外層63は中間層62上に直接設けられている。3つの層61、62、63は、好ましくはガルバニ技術(電気メッキ)によって、または無電流金属蒸着(外部電流を用いない化学蒸着)によって、連続して付着させられる。好ましくは、最内層61および最外層63は各々ニッケル(Ni)からなる。中間層は、好ましくは銅(Cu)からなるが、代わりに金(Au)またはロジウム(Rh)からなることも可能である。金属コーティングの全厚は、好ましくは30から100マイクロメートル、特に好ましくは50から60マイクロメートルである。この場合、最内層61は約10から20マイクロメートルの厚さを有し、中間層62は約10から20マイクロメートルの厚さを有し、最外層63は約30マイクロメートルの厚さを有する。
【0078】
図3の図から外れるが、金属コーティング6が1つの層のみからなることも当然ながら可能であり、そうするとこれは好ましくはNiまたはAuまたはRhからなる。金属コーティング6が2つの層からなることも可能であり、内側層は好ましくはNiからなり、外側層はAuまたはRhからなる。さらに、金属コーティング6は、3つの層61、62、63よりも多くを備えることも可能である。
【0079】
特にプラスチックコーティング7の劣化を招く可能性のあるカップ型ハウジング部品31へのカバー32の溶接の間の過剰な熱からプラスチックコーティング7を保護するために、好ましくは被覆材3のカバー32とプラスチックコーティング7との間に熱保護フィルム9が設けられる。熱保護フィルム9は、たとえばカプトン(Kapton)の商品名で市販されているものなど、好ましくはポリイミドフィルムである。熱保護フィルム9は、好ましくは図(
図2、
図3)によるプラスチックコーティング7の下側と被覆材3との間、すなわち溶接継目33に最も近いプラスチックコーティング7の領域にのみ、設けられる。
【0080】
熱保護フィルム9の代わりにまたはこれに加えて、プラスチックコーティング7がフッ化パリレンおよび特に好ましくはパリレンAF4としても指定される脂肪族フッ化パリレンからなることは、好ましい手段である。特に、脂肪族フッ化パリレンは、特に高い熱安定性を有する。
【0081】
特に被覆材のハウジング部品31にカバー32を溶接するときに、プラスチックコーティング7の温度関連の劣化を回避するために、いくつかの変異体が好ましい。プラスチックコーティング7は非フッ化パリレン、たとえばパリレンNまたはパリレンCまたはパリレンDからなり、熱保護フィルム9が設けられる。あるいはプラスチックコーティング7はフッ化パリレン、特にパリレンAF4タイプの脂肪族フッ化パリレンからなり、熱保護フィルム9は設けられない。あるいは、プラスチックコーティング7はフッ化パリレン、特にパリレンAF4タイプの脂肪族フッ化パリレンからなり、熱保護フィルム9が追加で設けられる。
【0082】
ロータ1を製造するには、以下の手順が好ましい。まず、永久磁石が金属コーティングによって完全に包囲されるように、金属コーティング6がリング状永久磁石21に付着させられる。続いて、金属コーティング6がプラスチックコーティング7によって完全に包囲されるように、プラスチックコーティング7が金属コーティング6上のパリレンから堆積される。次いで、カップ型ハウジング部品31が設けられる。金属コーティング6およびプラスチックコーティング7が設けられた永久磁石21は、ピン351が穴352内に嵌合するようなやり方で、ハウジング部品31のリング状の空洞34内に挿入される。場合により、カバー32に対向するプラスチックコーティング7の表面上に、またはプラスチックコーティングに対向するカバー32の表面上に、熱保護フィルム9が載置される。永久磁石21を内部に有するカップ型ハウジング部品31は、カバー32を載置することによって覆われるかまたは閉鎖される。次いで、蓋32が赤外線溶接によってカップ型ハウジング部品31に溶接される。
【0083】
移動した材料によってプラスチックコーティング7が損傷する危険性がないように、被覆材3を構成する、溶接中に液化されるフルオロポリマーが、溶接継目33に沿って空隙81、82の中に移動することが可能なので、この空隙81、82は溶接に関しても有利である。溶接中に移動したポリマー材料は、ビード36を通じて
図3に示されている。
【0084】
図4は、本発明によるロータの第2の実施形態を有する、本発明による回転機械の第2の実施形態の断面図を示す。回転機械の実施形態およびロータの第2の実施形態の以下の既述において、回転機械の第1の実施形態およびロータの第1の実施形態との違いのみが説明される。それ以外は、ロータまたは回転機械の第1の実施形態の説明が、ロータまたは回転機械の第2の実施形態でも同じようにまたはほぼ同じように有効である。ロータまたは回転機械の第2の実施形態において、同じ部品または同じ機能の部品は、ロータまたは回転機械の第1の実施形態と同じ参照符号が付されている。
【0085】
本発明による回転機械の第2の実施形態もまた、搬送される流体用の入口102および出口103を有するポンプハウジング101を備える遠心ポンプ100として設計されている。磁気浮上可能な本発明によるロータ1の第2の実施形態は、ポンプハウジング101の内部に設けられている。よりわかりやすくするために、
図5は
図4の磁気浮上可能なロータ1の別の断面図を示し、
図6は
図5の切断線VI-VIに沿った
図5のロータ1を通る断面、すなわち軸方向Aに垂直な断面を示す。
【0086】
ロータ1は、軸方向Aを画定する設定回転軸の周りでロータ1の回転を駆動するために、ここではいくつかの永久磁石21,すなわち2つの永久磁石21を備える磁気的有効コア2を有する。磁気的有効コア2は、2つの永久磁石21に加えて、永久磁石21が埋め込まれた基体22を備える。基体22は、鉄、ニッケル鉄、またはシリコン鉄などの軟磁性材料からなる。基体22は、永久磁石21とともにロータ1の磁気的有効コア2を形成する。基体22および永久磁石21は、磁気的有効コア2が全体的に円筒形状を有し、円筒形の磁気的有効コア2の縦軸が軸方向Aに延在するように、設計されている。
【0087】
基体22は、2つの永久磁石21を受容する円筒のシェル表面にリング状の凹部221を有する、略円筒形状を有する。軸方向Aに対して、凹部221は基体22の中央に設けられている。2つの永久磁石21の各々は、2つの永久磁石21が互いに補完し合って実質的に中空の円筒とするように、中空の半円筒の形状を有する湾曲したセグメントとして設計されている。この場合、基体22内の凹部221および2つの永久磁石21は、基体22および2つの永久磁石21が互いに補完し合って実質的に円筒形の磁気的有効コア2とするように、設計されている。
【0088】
ベアリングレスモータの原理で設計されている第1の実施形態とは対照的に、本発明による回転機械100の第2の実施形態では、ロータ1の駆動機能および磁気浮上するロータ1の磁気軸受機能は互いに分離している。この目的のために、遠心ポンプ100は、ロータ1の回転を軸方向Aの周りで駆動する駆動ステータ110(
図4)と、ロータ1を磁気浮上させることが可能な、好ましくは軸受ステータ111に対して磁気的に非接触で浮上させることが可能な少なくとも1つの軸受ステータ111、この場合は2つの軸受ステータ111と、を有する。全てのステータ110、111は、ポンプハウジング101に対して、したがってロータ1に対して、径方向外側に配置されている。
【0089】
駆動ステータ110は軸方向Aに対してポンプハウジング101を包囲し、そこでは2つの永久磁石21がロータ1の磁気的有効コア2内に配置されており、駆動ステータ110はまた電磁回転駆動部として磁気的有効コア2と相互作用する。この目的のために、駆動ステータ110は、電磁界、たとえばそれ自体周知の方法で軸方向Aの周りのロータ1の回転を駆動する回転場を生成できる、1つまたはいくつかの巻線110aを備える。駆動ステータ110の設計に関しては、全ての既知の設計が可能である。軸方向Aの周りのロータ1の回転は駆動ステータ110を用いて駆動されることのみが、重要である。
【0090】
ロータ1の磁気浮上のための2つの軸受ステータ111は、軸方向Aに対して駆動ステータ110の隣に配置されており、軸受ステータ111は駆動ステータ110の両側に設けられており、駆動ステータ110は、軸方向Aに対して2つの軸受ステータ111の間に配置されるようになっている。好ましくは、2つの軸受ステータ111は、駆動ステータ110から同じ距離を有する。各軸受ステータ111は、電磁界を生成することができ、ロータ1を磁気浮上させることが可能な、好ましくは軸受ステータ111に対して磁気的に非接触で浮上させることが可能な、1つ以上の巻線111aを備える。この場合、各軸受ステータ111は、磁気軸受の原理にしたがってロータ1の磁気的有効コア2と相互作用する。このような磁気軸受は、それ自体従来技術による多くの設計において知られているので、ここではさらなる説明を必要としない。軸受ステータ111の具体的な設計は、本発明にとって必須ではない。1つまたは複数の軸受ステータ111を有するロータ1は磁気浮上可能であり、好ましくは磁気的に非接触で浮上可能であることのみが重要である。
【0091】
本発明によれば、本発明によるロータ1の第2の実施形態でも、被覆材3は熱可塑的に加工可能な、具体的には溶接可能な、磁気的有効コア2を完全に包囲する、フルオロポリマーからなる。さらに、各永久磁石21は金属コーティング6を有し、プラスチックコーティング7は金属コーティング6と被覆材3との間に設けられ、このプラスチックコーティングも同様にパリレン族に属するポリマーからなる。
【0092】
やはりロータ1の第2の実施形態において、被覆材3は好ましくは溶接可能なPFAからなる。あるいは、被覆材3はECTFEまたはPVDFで作られることが好ましい。
【0093】
第2の実施形態において、ポンプハウジング101はやはり好ましくはフルオロポリマーからなるが、しかしこれは溶接可能であったり熱可塑的に加工可能であったりする必要はない。当然ながら、ポンプハウジング101がコーティングと同じプラスチックまたはポリマーからなることも可能である。
【0094】
金属コーティング6およびプラスチックコーティング7の設計、ならびにこれらのコーティング6、7の好適な材料に関しては、第1の実施形態に関する説明および定義が、第2の実施形態でも同じようにまたはほぼ同じように有効である。
【0095】
特に
図5および
図6に示されるように、金属コーティング6は、各永久磁石21上に直接設けられる。その際に、各永久磁石21は、その上に直接設けられた金属コーティング6によって完全に包囲される。
【0096】
プラスチックコーティング7は、磁気的有効コア2を完全に包囲する。この目的のために、プラスチックコーティング7は、基体22の表面上に直接設けられ、磁気的有効コアの外側境界面の一部を形成する金属コーティング6のその領域上に直接設けられる。
【0097】
したがって、ロータ1の製造において永久磁石21にはまず金属コーティング6が設けられる。この場合、金属コーティング6は、各永久磁石21が金属コーティング6によって完全に被覆および封入されるように、各永久磁石21の全ての表面上に堆積される。永久磁石21に金属コーティング6が設けられた後、これらは基体22の凹部221内に挿入される。次いで、磁気的有効コア2を完全に包囲する、少なくとも1つ、好ましくはいくつかのパリレン層を堆積することによって、磁気的有効コア2全体に、すなわち金属コーティング6をその上に有する基体22および永久磁石21の上に、プラスチックコーティング7が生成される。
【0098】
第1の実施形態とほぼ同じように、被覆材3は好ましくは再びいくつかの部品、たとえば2つの部品を備え、これにより、プラスチックコーティング7が設けられた磁気的有効コア2は部品のうちの1つに挿入され、その後2つの部品は互いに溶接される。
【0099】
図7は、磁気浮上可能なロータ1の第2の実施形態の第1の変形例の概略図を示す。ロータ1の羽根4およびカバープレート5は、
図7には示されていない。
【0100】
この第1の変形例において、プラスチックコーティング7はロータ1の磁気的有効コア2全体を包囲せず、金属コーティング6がその上に設けられた2つの永久磁石21の各々のみを包囲している。
【0101】
この第1の変形例では、永久磁石21にまず金属コーティング6が設けられる。この目的のために、金属コーティング6は、各永久磁石21が金属コーティング6によって完全に被覆および封入されるように、各永久磁石21の全ての表面上に堆積される。永久磁石21に金属コーティング6が設けられた後、金属コーティング6およびこれによって包囲された永久磁石21を完全に包囲する、少なくとも1つ、好ましくはいくつかのパリレン層を堆積することによって、各金属コーティング6上にプラスチックコーティング7が生成される。
【0102】
続いて、金属コーティング6およびプラスチックコーティング7が設けられた永久磁石21は、基体22の凹部221内に挿入される。次いで、ロータ2の磁気的有効コア2を完全に包囲する被覆材3が設けられる。
【0103】
図8は、磁気浮上可能なロータ1の第2の実施形態の第2の変形例の概略図を示す。ロータ1の羽根4およびカバープレート5は、
図8には示されていない。
【0104】
第2の変形例では、磁気的有効コア2全体が、金属コーティング6およびプラスチックコーティング7の両方によって完全に包囲されている。この変形例では、金属コーティング6は個々の永久磁石21を直接および完全には包囲せず、磁気的有効コア2の径方向外面の一部を形成する永久磁石21の表面のみに、金属コーティング6が直接設けられている。
【0105】
この第2の変形例では、まだ被覆されていない永久磁石21が、基体22の凹部221内に最初に挿入される。次いで、磁気的有効コア2全体、すなわち永久磁石21が内部に挿入された基体22に、金属コーティング6が設けられる。その際に、金属コーティング6は、金属コーティング6によって完全に被覆されて完全に包囲されるように、磁気的有効コア2の全表面上に堆積される。磁気的有効コア2に金属コーティング6が設けられた後、金属コーティング6およびこれによって包囲された磁気的有効コア2を完全に包囲する、少なくとも1つ、好ましくはいくつかのパリレン層を堆積することによって、プラスチックコーティング7がこの金属コーティング6上に直接生成される。次いで、ロータ1の磁気的有効コア2を完全に包囲する被覆材3が設けられる。
【0106】
図9は、磁気浮上可能なロータ1の第2の実施形態の第3の変形例の概略図を示す。ロータ1の羽根4およびカバープレート5は、
図9には示されていない。
【0107】
第3の変形例では、金属コーティング6はやはり各永久磁石21上に直接設けられる。この場合、各永久磁石21は、その上に直接設けられた金属コーティング6によって完全に包囲される。プラスチックコーティング7は、ロータ1の磁気的有効コア2全体を包囲せず、磁気的有効コア2の径方向外面の一部を形成する各永久磁石21の金属コーティング6の領域のみを覆う。これは、いずれの場合も金属コーティング6の径方向外面のみがプラスチックコーティング7によって覆われることを意味する。金属コーティング6と基体22の凹部221との間の境界領域が覆われて酸性または化学的腐食性物質の侵入に対して保護されるように、プラスチックコーティング7は、軸方向Aに対して金属コーティング6よりもわずかに遠くまで延在することが、好ましい。したがって、プラスチックコーティング7は、軸方向Aに対して両側に基体22との小さな重複を有するように設計されることが好ましい。パリレンは、傷、亀裂、または間隙に非常によく浸透するので、具体的には永久磁石21が、特に永久磁石上の金属コーティング6と基体22の凹部221との間の境界内への物質の侵入に対して保護されることが、保証される。
【0108】
この第3の変形例では、まず永久磁石21に金属コーティング6が各々設けられる。この場合、金属コーティング6は、各永久磁石21が金属コーティング6によって完全に被覆および封入されるように、各永久磁石21の全ての表面上に堆積される。永久磁石21に金属コーティング6が設けられた後、これらは基体22の凹部221内に挿入される。続いて、各金属コーティング6の径方向外面が、パリレンで被覆される。この目的のために、少なくとも1つ、好ましくはいくつかのパリレン層を堆積することによって、プラスチックコーティング7が金属コーティング6のこれらの表面上に直接生成されるが、プラスチックコーティング7は、軸方向Aに対して両側で基体22とわずかに重複するように製造される。これはたとえば、パリレン層の堆積中に、被覆されない基体22の領域を覆うかまたはマスキングすることによって、実現可能である。
【0109】
プラスチックコーティング7の完成後に、ロータ1の磁気的有効コア2を完全に包囲する被覆材3が設けられる。
【0110】
本発明による磁気浮上可能なロータ1、および本発明による回転機械100は、特に遠心ポンプまたは混合装置としての設計において、半導体産業に、とりわけ半導体または半導体チップの製造プロセスに、特に適している。
【符号の説明】
【0111】
1 ロータ
2 コア
3 被覆材
4 羽根
5 カバープレート
6 金属コーティング
7 プラスチックコーティング
9 熱保護フィルム
21 永久磁石
22 基体
31 カップ型ハウジング部品
32 カバー、蓋
33 溶接継目
34 空洞
35 回転防止装置
36 ビード
61 最内層
62 中間層
63 最外層
81 軸方向の空隙
82 径方向の空隙
100 遠心ポンプ、回転機械
101 ポンプハウジング
102 入口
103 出口
104 ステータ
105 コイルコア
106、110a、111a 巻線
107 終結部
110 駆動ステータ
111 軸受ステータ
221 凹部
321 隆起部
351 ピン
352 穴
A 軸方向
B 幅
T 深さ