(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032731
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】効果の持続期間が延長された眼内圧降下用徐放性インプラント
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5575 20060101AFI20240305BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240305BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
A61K31/5575
A61P27/02
A61K9/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000170
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2020525851の分割
【原出願日】2018-11-09
(31)【優先権主張番号】62/583,967
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/683,337
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018268
【氏名又は名称】アラーガン、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン マイケル アール
(72)【発明者】
【氏名】ベジャニアン マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ミッシェル ワイ
(57)【要約】
【課題】患者の目の眼内圧(IOP)の降下方法であって、ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に注入することを含み、この眼内インプラントは、降下を必要とする患者のIOPを約12カ月~約24カ月の期間にわたって降下させるのに有効である方法を提供する。
【解決手段】本出願では、前房内眼内インプラントを用いた眼内圧上昇の治療方法を開示する。前眼房へのビマトプロストの制御された持続性放出は、IOPの降下のため少なくとも1年以上にわたって眼を治療するのに有効であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の目の眼内圧(IOP)の降下方法であって、下記:
ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に注入することを含み;
前記眼内インプラントは、約12カ月~約24カ月の期間にわたって、それを必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、
前記方法。
【請求項2】
前記眼内インプラントが、降下を必要とする前記患者のIOPを約24カ月の期間降下させるのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼内インプラントが、6μg、10μg、15μg又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記眼内インプラントが、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール 3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、前記ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール 3350は、
a) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
b) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
c) 0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)
を含む前記生分解性ポリマーマトリックスと関連し;
前記ビマトプロスト又はその塩は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの13.5~16.5%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量で前記インプラントの36~44%を構成し、かつ前記ポリエチレングリコール 3350は、質量で前記インプラントの3.5~6.5%を構成し、前記ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中前記ポリマーの0.1%溶液について決定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者の開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法であって、下記:
ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む1個以上の単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に、最初の眼内インプラント及び最後の眼内インプラントの注入を含む治療期間にわたって、4カ月毎に1個の眼内インプラントから12カ月毎に1個の眼内インプラントの頻度で注入することを含み;
前記眼内インプラントは、最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたって、降下を必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、
前記方法。
【請求項6】
前記患者が、4カ月毎に1個の眼内インプラントを受け;かつ前記眼内インプラントは、約12カ月~約24カ月の期間にわたって、降下を必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、前記治療期間にわたって2個のインプラントから8個のインプラントを受ける、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が3個のインプラントを受ける、請求項5~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記眼内インプラントが、約12カ月の期間にわたって、降下を必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記眼内インプラントが、6μg、10μg、15μg、又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含む、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記眼内インプラントが、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール 3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、前記ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール 3350は、
d) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
e) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
f) 0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)
を含む前記生分解性ポリマーマトリックスと関連し;
前記ビマトプロスト又はその塩は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの13.5~16.5%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量で前記インプラントの36~44%を構成し、かつ前記ポリエチレングリコール 3350は、質量で前記インプラントの3.5~6.5%を構成し、前記ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中前記ポリマーの0.1%溶液について決定される、
請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、降下を必要とする前記患者のIOPをベースラインから約30%降下させるのに有効である、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
患者の開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法であって、下記:
ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む1個以上の単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に、最初の眼内インプラント及び最後の眼内インプラントの注入を含む治療期間にわたって、4カ月毎に1個の眼内インプラントから12カ月毎に1個の眼内インプラントの頻度で注入することを含み;
前記最後の眼内インプラントの注入後、前記患者は、前記最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない、
前記方法。
【請求項14】
前記患者が、4カ月毎に1個の眼内インプラントを受け;かつ前記患者は、前記最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、前記治療期間にわたって2個のインプラントから8個のインプラントを受ける、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が3個のインプラントを受ける、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、約12カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記眼内インプラントが、10μg、15μgのビマトプロスト又はその塩を含む、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記眼内インプラントが、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール 3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、前記ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール 3350は、
g) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
h) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
i) 0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)
を含む前記生分解性ポリマーマトリックスと関連し;
前記ビマトプロスト又はその塩は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの13.5~16.5%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量で前記インプラントの36~44%を構成し、かつ前記ポリエチレングリコール 3350は、質量で前記インプラントの3.5~6.5%を構成し、前記ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中前記ポリマーの0.1%溶液について決定される、
請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記レスキュー薬物療法が、プロスタグランジン類似体又はプロスタミドを含有する点眼薬を含む、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、降下を必要とする前記患者のIOPをベースラインから約30%降下させるのに有効である、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりそれらの内容全体を本明細書に援用する2018年11月9日に出願された米国仮出願第62/583,967号及び2018年6月11に出願された米国仮出願第62/683,337号の利益を主張する。
【0002】
背景
分野
本出願の開示は、一般的に薬物送達インプラントに関し、より詳細には、眼状態の治療に用いる薬物送達インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
より悪い予後を伴う緑内障においては局所眼内圧(IOP)降下薬物療法への不十分なアドヒアランスが一般的である1。これらの限界のため、参照することによりその内容全体(製剤、インプラントの寸法、使用方法、並びにポリマー組成物及び特性の開示を含めて)を本明細書に援用する米国特許出願公開第2015-0118279号に記載のもののようなビマトプロストを含有する生分解性徐放性インプラントが開発されて、緑内障集団のノンアドヒアランスに取り組んでいる。他のビマトプロスト含有眼内インプラントは、参照することによりその内容全体を援用する米国特許第7,799,336号に記載されている。これらの公表文献は、長期間にわたって患者の眼に薬物を送達するインプラントについて記載しているが、延長された持続期間の臨床効果を有するの薬物、例えば、患者の眼内圧を少なくとも1年にわたって降下させることができるインプラントを開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
概要
従って、実施形態は、患者の目の眼内圧(IOP)の降下方法であって、ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に注入することを含み、この眼内インプラントは、降下を必要とする患者のIOPを約12カ月~約24カ月の期間にわたって降下させるのに有効である方法を提供する。一部の実施形態では、眼内インプラントは、約24カ月の期間の降下を必要とする患者のIOPを降下させるのに有効である。一部の実施形態では、眼内インプラントは、6μg、10μg、15μg又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含む。一実施形態では、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール3350は、生分解性ポリマーマトリックスと関連しており、生分解性ポリマーマトリックスは、0.25dl/g~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、0.16dl/g~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、並びに0.16dl/g~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)を含み、ビマトプロスト又はその塩は、質量でインプラントの18%~22%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの18%~22%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの13.5%~16.5%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの36%~44%を構成し、かつポリエチレングリコール3350は、質量でインプラントの3.5%~6.5%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%溶液について決定される。
【0005】
実施形態では、患者の開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法であって、ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む1個以上の眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に、最初の眼内インプラント及び最後の眼内インプラントの注入を含む治療期間にわたって4カ月毎に1個の眼内インプラントから12カ月毎に1個の眼内インプラントの頻度で注入することを含む方法を提供する。眼内インプラントは、最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたって、降下を必要とする患者のIOPを降下させるの有効であり得る。一部の実施形態によれば、患者は、4カ月毎に1個の眼内インプラントを受け、眼内インプラント(複数可)は、約12カ月~約24カ月の期間にわたって、降下を必要とする患者のIOPを降下させるのに有効である。一実施形態では、患者は、治療期間にわたって2個のインプラントから8個のインプラントを受ける。一実施形態では、患者は3個のインプラントを受ける。他の実施形態によれば、眼内インプラントは、約12カ月の期間にわたって、降下を必要とする患者のIOPを降下させるのに有効である。眼内インプラントは、6μg、10μg、15μgのビマトプロスト又はその塩を含むことができる。一実施形態では、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール3350は、生分解性ポリマーマトリックスと関連しており、生分解性ポリマーマトリックスは、0.25dl/g~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、0.16dl/g~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、並びに0.16dl/g~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)を含み、ビマトプロスト又はその塩は、質量でインプラントの18%~22%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの18%~22%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの13.5%~16.5%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの36%~44%を構成し、かつポリエチレングリコール3350は、質量でインプラントの3.5%~6.5%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%について決定される。
【0006】
一部の実施形態によれば、患者の開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法は、ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む1個以上の単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に、最初の眼内インプラント及び最後の眼内インプラントの注入を含む治療期間にわたって、4カ月毎に1個の眼内インプラントから12カ月毎に1個の眼内インプラントの頻度で注入することを含む。該実施形態では、最後のインプラントの注入後、患者は、約12カ月~約24カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない。一部の実施形態では、患者は、1個の眼内インプラントを4カ月毎に受け、患者は、最後のインプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたってレスキュー薬物を必要としない。一部の実施形態によれば、患者は、治療期間にわたって2個のインプラントから8個のインプラントを受ける。患者は3個のインプラントを受けることができる。一実施形態では、患者は、約12カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない。眼内インプラントは、一部の実施形態では、6μg、10μg、又は15μgのビマトプロスト又はその塩を含むことができる。実施形態では、眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール3350は、生分解性ポリマーマトリックスと関連しており、生分解性ポリマーマトリックスは、0.25dl/g~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、0.16dl/g~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、並びに0.16dl/g~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)を含み、ビマトプロスト又はその塩は、質量でインプラントの18%~22%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの18%~22%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの13.5%~16.5%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの36%~44%を構成し、かつポリエチレングリコール3350は、質量でインプラントの3.5%~6.5%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%溶液について決定される。本方法の一部の実施形態によれば、レスキュー薬物は、プロスタグランジン類似体又はプロスタミドを含有する点眼薬を含む。一部の実施形態では、本方法は、降下を必要とする患者のIOPをベースラインから約30%降下させるの有効である。
【0007】
次に、以下に要約する図面を参照して、これら及び他の特徴について説明する。これらの図面及び関連する説明は、1つ以上の実施形態を例証するために提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例2に記載の研究計画を含む実施形態例に従う臨床研究投与計画を示す。
【
図2】実施例2に記載の方法に従うチモロール溶液の局所投与に対して本明細書に記載の製剤を比較してベースラインから週12までの平均IOP降下結果を示す。
【
図3】実施例2に記載の方法に従う治療サイクル内の週2、6及び12におけるIOP値の平均差を示す。
【
図4】10μg又は15μg含有する本明細書に記載のインプラント製剤を、実施例2に記載の方法に従って1日2回適用されるチモロール溶液と比較して、本明細書で開示する投与方法例に従う第3サイクル投与後のレスキュー薬物療法の使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
説明
定義
この説明のために、文脈から単語が異なる意味を示さない限り、我々は、このセクションで定義する下記用語を使用する。
本明細書で使用する場合、「眼内インプラント」及び「眼内薬物送達システム」は、目の中に設置すべき構造にされ、大きさに作られ、又はその他の方法で構成されて、目に治療レベルの薬物を送達できるデバイス又は要素を指す。本開示に従う眼内インプラント及び薬物送達システムは、一般的に目の生理的状態と生体適合性であり、有害な副作用又は免疫反応を引き起こさない。本インプラントは、好ましくは完全に生分解性である。眼内インプラントは、目の視覚を妨害することなく目の中に設置することができる。非限定例としては、生分解性ポリマーマトリックス及びこのポリマーマトリックスと関連する活性薬、例えばビマトプロストを含み、前眼房などの目の眼領域内に設置するのに適した直径を有し、該設置に適した長さにカットされた押出フィラメント又はロッドが挙げられる。
【0010】
「前房内インプラント」は、前眼房内に設置すべき構造にされ、大きさに作られ、又はその他の方法で構成される眼内インプラントである。前眼房は、虹彩と最内層の角膜表面(角膜内皮)との間の目の内側の液体に満ちた腔を指す。前房内インプラントは、角膜内皮と接触せず、従って角膜の外傷、炎症、若しくは浮腫、又は虹彩の擦傷を引き起こさずに、前房角、虹彩の前面と角膜の後面の接合部に適合するのが好ましい。
「硝子体内」インプラントは、目の硝子体内設置に適した大きさに作られる眼内インプラントである。
本明細書で使用する場合、「生分解性ポリマーマトリックスと関連する」は、該マトリックスと混合され、その中に分散され、それに結合され、それを覆っているか、又はそれを包囲していることの1つ以上を意味し得る。通常は、プロスタミドは、ポリマーマトリックスと非共有結合的に関連し、マトリックスの中に及び/又はその全体にわたって分散されている。
本明細書で使用する場合、「眼領域」又は「眼部位」は、一般的に目の前区及び後区を含めた眼球のいずれの領域をも指し、これには一般的に、限定するものではないが、眼球内で見られるいずれの機能的(例えば、視力のため)又は構造的組織、又は眼球の内部若しくは外部を部分的若しくは完全に裏打ちする組織若しくは細胞層も含まれる。目の中の眼領域の具体例としては、前眼房、後眼房、硝子体腔、硝子体、脈絡膜、上脈絡膜腔、結膜、結膜下腔、テノン嚢下腔、上強膜腔、角膜内腔、角膜上(epicorneal)腔、強膜、毛様体扁平部、外科的に誘導された無血管領域、斑、及び網膜が挙げられる。
【0011】
本明細書で使用する場合、「眼状態」は、目又は目の部分若しくは領域の1つに影響を与えるか又は関わる疾患、病気又は医学的状態である。眼状態は、前側又は後側眼状態として分類可能である。大まかに言えば、目は、眼球並びに眼球を構成する組織及び液体、眼周囲筋肉(例えば斜筋及び直筋)並びに眼球の中又は隣りにある視神経部分を包含する。本開示の範囲内の眼状態の例としては、眼内圧亢進、高眼圧症、及び緑内障が挙げられる。患者の緑内障は、さらに開放隅角緑内障又は閉塞隅角緑内障として分類可能である。患者は、特に原発性開放隅角緑内障と診断されることがある。
前側眼状態は、前側(すなわち目の前面)の眼領域又は部位、例えば水晶体嚢若しくは毛様体筋の前壁から後壁に位置する眼周囲筋、眼瞼又は眼球の組織若しくは液体に影響を与えるか又は関わる疾患、病気又は医学的状態である。従って、前側眼状態は、主に結膜、角膜、前眼房、虹彩、毛様体、後眼房、水晶体又は水晶体嚢並びに前側眼領域若しくは部位を血管形成するか又は神経支配する血管及び神経に影響を与えるか又は関わる。緑内障治療の臨床目標は前眼房内の水性液の圧上昇を降下させる(すなわち眼内圧を降下させる)ことであり得るので、緑内障は、前側眼状態であるとみなすこともできる。
【0012】
後側眼状態は、後側眼領域又は部位、例えば脈絡膜又は強膜(水晶体嚢の後壁を通る平面の後方にある位置の)、硝子体、硝子体房、網膜、視神経(すなわち視神経乳頭)、並びに後側眼領域若しくは部位を血管形成するか又は神経支配する血管及び神経に影響を与えるか又は関わる。緑内障は、その治療目標が網膜細胞又は視神経細胞の損傷又は減少に起因する視力喪失を予防するか又は視力喪失の発生を減らすこと(すなわち神経保護)なので、後側眼状態と考えることもできる。
眼内圧は目の中の液圧を指し、眼房水分泌物と流出量の割合の差によって決定される。分泌された眼房水の約90%が前眼房内の線維柱帯網を通って出る。流出への抵抗が眼内圧亢進をもたらし得る。正常張力(すなわち、正常圧)緑内障のある一部の集団又は患者群は、約11~21mmHgのIOPを有し得る。眼内圧亢進又は高眼圧症のある一部の患者群又は患者は、眼圧計で測定して20又は21mmHg超のIOPを有し得る。本開示のインプラントは、正常圧及び高眼圧の両緑内障患者の眼内圧を降下させることができると予想される。
【0013】
用語「生分解性ポリマー」及び「生分解性眼内インプラント」は、生体内で分解するポリマー又は眼内インプラントを指し、ポリマー又はインプラントの浸食が経時的に治療薬の放出と同時又は放出の後に起こる。用語「生分解性」及び「生体適合性」は等しく、本明細書では互換的に使用される。生分解性ポリマーはホモポリマー、コポリマー、又は3種以上の異なるポリマー単位を含むポリマーであり得る。本開示の範囲内の生分解性ポリマーの例は、ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)コポリマーである。
【0014】
本明細書で使用する用語「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、眼状態、眼の外傷若しくは損傷の軽減若しくは回復若しくは予防、又は負傷若しくは損傷した眼組織の治癒を促進することを指す。治療は、眼状態の少なくとも1つの徴候若しくは症状又は眼状態に関連するリスク因子を低減させるのに有効であり得る。
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、目又は目の領域に著しくネガティブ若しくは有害な副作用を引き起こすことなく、眼状態の治療又は眼の外傷若しくは損傷の軽減若しくは予防に必要な薬剤のレベル又は量を指す。
「活性薬」、「薬物」、「治療薬」、「治療的に活性な薬剤」、及び「医薬的に活性な薬剤」は、それが投与される患者に治療効果をもたらし、かつ患者の眼状態を治療するために使用できる化合物を指す。治療的に活性な薬剤及び治療薬の一例はビマトプロストである。好ましい実施形態では、治療効果は眼内圧(IOP)降下効果であり、これは、目に化合物を適用し、適用後に眼内圧が降下するかどうかを評価することによって確認することができる。
【0015】
さらに特定しない限り、「患者」は、眼状態の治療を必要とするヒト被験者又は非ヒト哺乳動物を指す。例えば、患者をさらにヒト患者に分類することができる。用語「哺乳動物」には、ヒト患者と非ヒト哺乳動物が両方含まれる。本開示方法のいずれもの対象となり得る非ヒト哺乳動物の非限定例としては、ウマ、イヌ、サル、ブタ、ウサギ等が挙げられる。
用語「生体適合性」及び「適合性」は、生体組織又は生体系との適合性を意味する。生体適合性インプラント及びポリマーは、ほとんど若しくは全く毒作用をもたらさないか、有害でないか、又は生体組織と生理的に反応性でなく、かつ免疫反応を引き起こさない。
当業者は、本明細書で使用する度合の種々の用語の意味が分かるであろう。例えば、量を指す文脈において本明細書で使用する場合(例えば、「約6%」)、用語「約」は、所望の機能をまだ果たすか又は所望の結果を達成する記載量に近い量を、記載量を含めて表し、例えば「約6%」は、6%及び所望の機能をまだ果たすか又は所望の結果を達成する6%に近い量を含み得る。例えば、用語「約」は、記載量の10%未満以内、5%未満以内、0.1%未満以内、又は0.01%未満以内にある量を指すことができる。
【0016】
プロスタミドは、種々の高眼圧状態、例えば緑内障、眼内圧亢進、及び他の高眼圧エピソード、例えば術後及びレーザー施術後高眼圧エピソード(1、4)などのいくつかの治療に役立つ強力な眼圧降下薬である。プロスタミドは、拡大を続けるプロスタグランジンF2α C-1アミドのファミリーに属する(1~5)。プロスタミドの生合成及び薬理効果論は広範に記載されている(1~3、9)。例えば、天然起源のプロスタミド、例えばプロスタミドF2αは、排他的にCOX-2と関わる経路によってアナンダミドから生合成される。COX-1は関わらない(1、2、15)。他の商業的に入手可能なプロスタグランジン類似体としてはトラボプロスト及びラタノプロストがある。
【0017】
【0018】
眼の治療に広範な用途を見出した1つのプロスタミドはビマトプロストである。他のプロスタミドと同様に、ビマトプロストは、プロスタグランジン(PG)感受性受容体との意味ある相互作用を示さない(3、10)。それにもかかわらず、ビマトプロストは強力な眼圧降下薬であり、開放隅角緑内障又は高眼圧症のある患者の眼内圧亢進の軽減に非常に有効である(1、6~8)。ビマトプロストは典型的に、商品名LUMIGAN(登録商標)で知られる点眼液の形態で患者が使用するために処方される。通常の治療過程では、患者は、1日1回1滴のLUMIGAN(登録商標)溶液を患目の表面に適用して眼内圧亢進を抑える。ビマトプロストは、ぶどう膜強膜路を通る眼房水流出量を増やすことによって眼内圧(IOP)を下げると考えられている。
緑内障は一般的に、視野喪失を伴う進行性視神経障害を特徴とする目の進行性疾患である。緑内障は、さらに眼内圧上昇を伴うことがある。その病因論に基づいて、緑内障は、原発性又は続発性に分類されている。成人の原発性緑内障は、開放隅角緑内障又は急性若しくは慢性閉塞隅角緑内障であり得る。続発性緑内障は、ぶどう膜炎、眼内腫瘍又は拡張型(enlarged)白内障などの既存の眼疾患に起因する。
【0019】
原発性緑内障の根本原因はまだ分かっていない。リスク因子としては、高眼内圧若しくは眼内圧亢進、高齢、及び家族歴が挙げられる。眼内圧上昇又は眼内圧亢進は、眼房水流出の閉塞が原因である。原発性開放隅角緑内障においては、前眼房及びその解剖学的構造は正常に見えるが、眼房水のドレナージが妨害される。急性又は慢性閉塞隅角緑内障においては、前眼房が浅く、濾過角度が狭小になり、虹彩がシュレム管の入口で線維柱帯網を閉塞する可能性がある。瞳孔の散大が虹彩の根をその角度に対して前方に押すことがあり、瞳孔ブロックをもたらす可能性があり、結果として急性の発作を誘発し得る。前眼房角が狭い眼は、種々の重症度の急性閉塞隅角緑内障発作の素因になる。
続発性緑内障は、後眼房から前眼房へ、その後にシュレム管への眼房水の流れとのあらゆる干渉によって引き起こされる。前区の炎症性疾患は、膨隆虹彩に完全な虹彩後癒着を引き起こすことによって水の逃避を妨げる可能性があり、かつ瞳孔を通る眼房水の移動を閉塞し、眼内圧亢進につながる可能性がある。他の一般的原因は、眼内腫瘍、拡張型白内障、網膜中心静脈閉塞症、眼への外傷、手技及び眼内出血である。全てのタイプをまとめて考えると、緑内障は、40歳超の全ての人の約2%に起こり、顕著な周辺視野の喪失後に中心視力喪失に進行する前の数年間は無症状のことがある。
【0020】
緑内障治療の臨床目標は、前眼房からの眼房水流出の妨害のための眼内圧亢進を抑えることのみならず、目の後側の網膜細胞若しくは視神経細胞(すなわち、神経節細胞)への損傷又はその損失に起因する視力喪失を予防するか又はその発生を減らすこと(すなわち神経保護)でもあり得るので、緑内障は、前側と後側の両方の眼状態である可能性があるとみなすことができる。臨床治験は、IOPを降下させると、緑内障の進行を遅らせるのを助けることができ、一貫したIOP降下は、視神経損傷の発症及び進行のリスク低減と関連することを示した。
局所療法への患者のノンアドヒアランスは、緑内障に起因する視力喪失を予防することへの主要な課題の1つである。薬物療法を受けない患者は、緑内障からの視力喪失のリスクが最も高く;しかしながら、一部の患者ではIOPの変動が進行の考えられるリスク因子と確認されたこともあるので、間欠的に薬物療法を受ける患者もリスクがある。
従って、治療有効量の降圧薬、例えばビマトプロストを直接前眼房に持続的に送達できる徐放薬物送達システム、例えば生分解性眼内インプラントは、眼内圧を制御し、緑内障に関連する症状を管理するための局所眼圧降下薬又は他の抗緑内障薬物療法への患者の依存を減らすのに役立つことがある。このような生分解性眼内法を施す特定の方法は、患者の予後を改善し、患者が眼内圧の満足のいく降下を果たすのに必要となり得る治療回数を最小限にすることもできる。
【0021】
本開示は、眼内圧の驚くほど持続した降下を伴い及び/又は局所的な眼のレスキュー薬物療法を必要としない、開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法を提供する。
本開示は、開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法であって、眼内圧(IOP)を少なくとも12カ月間降下させるためのビマトプロスト含有生分解性眼内インプラントの投与を含む方法を提供する。インプラントは、目の中に設置後12カ月~24カ月、又は24カ月、又は24カ月より長く、目の眼内圧を(インプラントを受ける前の目の眼内圧に対して)降下レベルで維持するに有効であり得る。インプラントを受けた後の目のIOPの相対的降下パーセントは、インプラントの大きさ(ひいては薬物負荷)及び患者に応じて変動し得るが、ベースラインIOP(インプラントを受ける前の目の眼内圧)の10~20%、20~30%、又は10~50%であり、場合によっては、単剤インプラントの移植後少なくとも12カ月、12~24カ月、又は24カ月以上にわたってベースラインIOPより20~30%低いままであり得る。
【0022】
患者の目の眼領域内にインプラントを設置して目の眼内圧を降下させ、それによって高眼圧症及び眼内圧亢進と関連する眼状態、例えば緑内障などを治療することができる。ここで述べるビマトプロスト含有インプラントは、特に前眼房内設置に適した大きさに作られ、処方される(本明細書では「前房内」投与と称することもある)。前眼房角幅をシェッファー(Shaffer)システムに従って段階分けすることができる(Shaffer RN. (1960) “Primary glaucomas. Gonioscopy, ophthalmoscopy, and perimetry” Trans Am Acad Ophthalmol Otolaryngol. 64:112-127)。シェッファーグレード1及びグレード2の隅角は狭小とみなすことができる。シェッファーグレード1又はグレード2のどちらかの隅角を有する患者は、前眼房ではなく目の硝子体内にインプラントを設置して、角膜毒性の機会を減らすことによって治療するのが好ましいことがある。開放隅角を有する患者、例えばシェッファーグレード3及び4の隅角を有する患者は、前房内インプラント又は硝子体内インプラントのどちらかに適した候補であり得る。
【0023】
本開示のインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、目の眼領域内にインプラントが設置された時から2カ月の期間にわたってインプラントから治療有効量のプロスタミドを徐放する速度でプロスタミドを放出することができる。場合によっては、インプラントは、目の中にインプラント設置後少なくとも12カ月間、又は12~24カ月間、又は24カ月より長く目の眼内圧を降下させるのに有効であり得る。インプラントは、特に前眼房内に設置するためにデザインされるが、緑内障及び高眼圧症などの状態を治療するか、又は一般的に目のIOPを降下させるために他の眼領域設置に適しすることもある。従って、本開示のインプラントは、例えば、前眼房内に設置することができる。
【0024】
インプラント
上述したように、本開示のインプラント製剤は、ビマトプロスト又は他のプロスタミドを含有してよい。一部の実施形態では、インプラントに含まれるプロスタミド、下記式(I)を有する化合物を含む。
【0025】
【0026】
式中、破線の結合は、cis又はtrans配置であり得る単結合又は二重結合を表し、Aは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン又はアルケニレン基であり、この基は、1つ以上のオキシド基で中断され、かつ1つ以上のヒドロキシ、オキソ、アルキルオキシ又はアルキルカルボキシ基で置換されていてもよく、前記アルキル基は、1~6個の炭素原子を含み;Bは、3~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は4~10個の炭素原子を有するヒドロカルビルアリール及びヘテロアリール基から成る群より選択されるアリール基であり、ここで、ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄原子から成る群より選択され;Xは-N(R4)2であり、ここで、R4は、水素と、1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基とから成る群より独立に選択され;Zは=Oであり;R1及びR2の1つは=O、-OH又は-O(CO)R6基であり、他の1つは-OH又は-O(CO)R6であり、或いはR1は=Oであり、R2はHであり、ここで、R6は、1~約20個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和炭化水素基、又は-(CH2)mR7であり、ここで、mは0又は1~10の整数であり、かつR7は、3~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、又は上記定義どおりのヒドロカルビルアリール若しくはヘテロアリール基である。
より具体的な実施形態では、インプラントに含まれるプロスタミドは、下記化学構造を有するビマトプロストである。
【0027】
【0028】
プロスタミド(プロスタグランジンF2αアミド)の他の例としては、限定するものではないが、Woodward et al. (2008) “Prostamides (prostaglandin ethanolamides) and their pharmacology”British J. Pharmacology 153:410-419;及びSchuster et al. (2000) “Synthetic modification of prostaglandin F2α indicates different structural determinants for binding to the prostaglandin F receptor versus the prostaglandin transporter” Molecular Pharmacology 58:1511-1516に記載のプロスタグランジンF2αアミド;並びに米国特許第5,688,819号及び第5,834,498号に記載のプロスタグランジンF2αアミドが挙げられ、これらの文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0029】
一般に、本開示の眼内インプラントは、活性薬としてのビマトプロスト、生分解性ポリマーマトリックス、及び任意的なポリエチレングリコールを含むか又はこれらから成る。ビマトプロスト(又は他のプロスタミド)は、インプラントの5質量%~90質量%、又はインプラントの5質量%~30質量%、又はインプラントの18~22質量%を構成し得るが、好ましくはインプラントの20質量%である。生分解性ポリマーマトリックスは一般的に、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)ポリマーから成る群より独立に選択される少なくとも3種の異なる生分解性ポリマーの混合物を含む。例えば、生分解性ポリマーマトリックスは、互いにそれらの反復単位、固有粘度、若しくは末端基、又はその任意の組み合わせが異なる第1、第2、及び第3の生分解性ポリマーを含むか又はこれらから成り得る。いくつかの例では、本開示の生分解性ポリマーマトリックスは、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)ポリマーから成る群より独立に選択される第1、第2、第3、及び第4の生分解性ポリマーを含んでよく、ここで、第1、第2、第3、及び第4のポリマーは、互いにそれらの反復単位、固有粘度、若しくは末端基、又はその任意の組み合わせが異なる。ポリマーの合成中に用いる連鎖停止剤によっては、PLA又はPLGAポリマーがフリーのカルボン酸末端基又はアルキルエステル末端基を有することがあり、本明細書では、それぞれ酸末端又はエステル末端(若しくはエステルキャップト(ester-capped))PLA又はPLGAポリマーと称することがある。
【0030】
一実施形態では、生分解性ポリマーマトリックスは、第1、第2、及び第3の生分解性ポリマーを含むか又はこれらから成り、ここで、第1の生分解性ポリマーは、0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)ポリマーであり、第2のポリマーは、0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)ポリマーであり、第3のポリマーは、73:27~77:23、又は約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比、及び0.16~0.24dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーであり、ここで、各ポリマーの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%w/v溶液について決定される。
インプラントにより含有されるプロスタミドは、生分解性ポリマーマトリックス全体にわたって均一又は不均一に分布していてよい。プロスタミドは、生分解性ポリマーマトリックス内に分散していてよい。
上述したように、インプラントは、さらにポリエチレングリコールを含んでよい。インプラントにより含有されるポリエチレングリコールは、3000~20,000g/モルの平均分子量を有してよい。一実施形態では、インプラントはポリエチレングリコール3350(PEG 3350)を含有する。ポリエチレングリコールは、一般的に生分解性ポリマーマトリックスと関連することになる。例えば、ポリエチレングリコールは、生分解性ポリマーマトリックス内に分散していてよい。
【0031】
前述のあらゆる実施形態において、ポリエチレングリコール(PEG)は、3,000~20,000g/モルの平均分子質量を有してよい。好ましい実施形態では、インプラント中のポリエチレングリコールはPEG 3350である。例えば、ある実施形態は、20質量%(w/w)のビマトプロスト、20質量%のR203S、15質量%のR202H、40質量%のRG752S、及び5質量%のポリエチレングリコール3350を含む生分解性眼内インプラント(製剤2)を提供する。より一般的には、インプラントは、18~22質量%(w/w)のビマトプロスト、18~22質量%のR203S、13.5~16.5質量%のR202H、36~44質量%のRG752S、及び3.5~6.5質量%のポリエチレングリコールを含むことができる。
【0032】
この関連で、一実施形態は、患者の眼内圧又は高眼圧を降下させるための生分解性眼内インプラントであって、インプラントは、生分解性ポリマーマトリックス及びこの生分解性ポリマーマトリックスと関連する活性薬としてプロスタミドを含み、生分解性ポリマーマトリックスは、
a) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)であるR203S;
b) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)であるR202H;
c) 約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比及び0.16~0.24dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)であるRG752S;及び
d) ポリエチレングリコール3350
を含むか又はこれらから成り;
プロスタミドは、質量でインプラントの20%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの20%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの15%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの40%を構成し、かつポリエチレングリコール(PEG) 3350は、質量でインプラントの5%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%溶液について決定される、生分解性眼内インプラントである。
【0033】
一部の実施形態では、プロスタミドは、式Iを有する化合物である。一実施形態では、プロスタミドはビマトプロストである。
本開示に従って眼状態を治療する方法に用いる眼内インプラントの例としては、下表1及び2に示すものがある。例えば患者の眼内圧及び高眼圧を降下させるための眼内インプラントは、20質量%のビマトプロスト、15質量%のR203S、20質量%のRG858S、40質量%のRG752S、及び5質量%のポリエチレングリコール3350を含んでよい。RG858Sは、1.3~1.7dl/gの固有粘度及び83:17~87:13、又は約85:15のD,L-ラクチド対グリコリド比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である。
別の実施形態は、患者の目の眼状態を治療するための生分解性眼内インプラントであり、インプラントは、18~22質量%(w/w)のビマトプロスト、18~22質量%のR203S、13.5~16.5質量%のR202H、36~44質量%のRG752S、及び3.5~6.5質量%のポリエチレングリコールを含む。
さらなる実施形態は、患者の目の眼状態を治療するための生分解性眼内インプラントであり、インプラントは20質量%(w/w)のビマトプロスト、20質量%のR203S、15質量%のR202H、40質量%のRG752S、及び5質量%のポリエチレングリコールを含む。
別の実施形態は、患者の目の眼状態を治療するための生分解性眼内インプラントであり、インプラントは20質量%(w/w)のビマトプロスト、15質量%のRG858S、35質量%のRG752S、15質量%のRG755S、及び15質量%のRG502Sを含む。RG755Sは、エステル末端基、0.50~0.70dl/gの固有粘度(25℃でクロロホルム中0.1%溶液について測定して)及び73:27~77:23、又は約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である。RG502Sは、エステル末端基、0.16~0.24dl/gの固有粘度(25℃でクロロホルム中0.1%溶液について測定して)、及び48:52~52:48、又は約50:50のD,L-ラクチド:グリコリドを有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である。
【0034】
別の実施形態は、患者の目の眼状態を治療するための生分解性眼内インプラントであり、インプラントは20質量%(w/w)のビマトプロスト、30質量%のRG858S、40質量%のRG752S、5質量%のRG502、及び5質量%のRG502Hを含む。RG502Hは、酸末端基、0.16~0.24dl/gの固有粘度(25℃でクロロホルム中0.1%溶液について測定して)、及び約50:50のD,L-ラクチド:グリコリド比を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である(例えばRG502Hのような)。
別の実施形態は、20質量%(w/w)のビマトプロスト、20質量%のRG752S、50質量%のRG755S、5質量%のRG502、及び5質量%のRG502Hを含む生分解性眼内インプラントである。
別の実施形態は、20質量%(w/w)のビマトプロスト、25質量%のRG752S、50質量%のRG755S、及び5質量%のRG502を含む生分解性眼内インプラントである。
別の実施形態は、20質量%(w/w)のビマトプロスト、30質量%のRG752S、20質量%のRG502、及び30質量%のRG858Sを含む生分解性眼内インプラントである。
【0035】
本開示は、少なくとも60日(2カ月)にわたって目の中で治療有効量のプロスタミドを放出する生分解性眼内プロスタミド含有インプラントの製造方法をも提供する。この方法は、一般的にプロスタミド、少なくとも3種の生分解性ポリマー、及び場合によりポリエチレングリコールを混ぜ合わせて成分の組み合わせを形成し、この組み合わせをブレンドしてブレンド混合物を形成し、このブレンド混合物を加熱し、次に加熱混合物を押し出してフィラメントを形成し、次にこのフィラメントをカットして、患者の目の眼領域に設置するのに適したインプラントを形成することを含む。例えば、インプラントは、患者の目の前房又は硝子体内設置に適した長さにカットされ(適した大きさに作られ)得る。各成分を乾燥粉末として又は乾燥固体として混ぜ合わせてよい。従ってブレンディング工程は、乾燥粉末ブレンディングを含んでよい。少なくとも3種の生分解性ポリマーは、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)ポリマーから成る群より選択され得る。例えば、少なくとも3種の生分解性ポリマーは、互いにそれらの反復単位、固有粘度、及び/又は末端基が異なる第1、第2、及び第3の生分解性ポリマーから成り得る。場合によっては、少なくとも3種の生分解性ポリマーは、互いに異なる第1、第2、第3、及び第4の生分解性ポリマーから成ることがある。第1、第2、第3、及び場合により第4の生分解性ポリマーは、酸末端及びエステル末端PLA及びPLGAポリマーから成る群より選択され得る。例えば、上記方法に従ってインプラントを製造するために用いる第1、第2、第3、及び第4の生分解性ポリマーは、RESOMER(登録商標)生分解性ポリマーR203S、R202H、RG502、RG502H、RG752S、RG755S、及びRG858Sから成る群より選択可能であり、ここで、RG502は、エステル末端基及び0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約50:50のD,L-ラクチド:グリコリド比を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)であり、RG502Hは、酸末端基及び0.16~0.24dl/gの固有粘度、及び約50:50のD,L-ラクチド:グリコリド比を有するポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)であり、RG755Sは、0.50~0.70dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド:グリコリド比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)である。一部の実施形態では、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール3350(PEG 3350)である。
【0036】
従って、一実施形態は、生分解性眼内インプラントの製造方法であって、プロスタミドを、a)0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、b)0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、並びにc)0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、並びにポリエチレングリコール3350と混合し、この混合物を押し出してフィラメントを形成した後にフィラメントを目の前房又は硝子体内設置適した長さにカットして眼内インプラントを形成することを含み、プロスタミドは、質量でインプラントの約20%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの約20%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの約15%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの約40%を構成し、かつポリエチレングリコール3350は、質量でインプラントの約5%を構成する、方法である。特に断りのない限り、本明細書に記載のPLA及びPLGAポリマーの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%溶液について測定される。
【0037】
眼内インプラント(すなわち、薬物送達システム)の一例は、前眼房内移植に適した大きさに作られた押出生分解性眼内インプラントであり、このインプラントは20質量%(w/w)のビマトプロスト、5質量%のPEG 3350、20質量%のR203S、すなわち0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、15質量%のR202H、すなわち0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)ポリマー、並びに40質量%のRG752S、すなわち約75:25のD,L-ラクチド:グリコリドモル比及び0.16~0.24dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーを含むか又はこれらから成り、各ポリマーの固有粘度は、25℃でクロロホルム中0.1%w/v溶液について測定される。インプラントは、2か月より長い期間にわたって目の中に治療有効量のビマトプロストを徐放することができる。
【0038】
一部の実施形態では、眼内インプラントは、前眼房内設置(すなわち、前房内投与)に適した大きさに作られ、処方される。本開示に従って前眼房内設置に適した大きさに作られ、長期間にわたって哺乳動物の目に治療有効量のビマトプロストを送達できるインプラントは、一般的に総質量が20μg~200μg、長さが0.5~約3.0mm、直径が0.1~0.5mm(又は非円柱状インプラントに適する場合は他の最小寸法)である。一部の実施形態では、前眼房内設置に適した大きさに作られたインプラント(前房内インプラント)は、約30~約150μgの質量があり(従って総質量を有し)、約6μg~約30μgのビマトプロスト又は他のプロスタミドを含有し得る。好ましい実施形態では、前房内インプラントは30~150μgの総質量を有し、直径が150μm~300μm、長さが0.5mm~2.5mmである。さらに好ましい実施形態では、本開示の生分解性前房内インプラントは、30μg~100μgの総質量を有し、直径が150μm~300μm、長さが0.5mm~2.5mmである。一部の実施形態では、インプラントは、直径又は幅が約150~約300μm、長さが約1.0mm~約2.5mm、総質量が約30μg~約100μgである。一部の実施形態では、インプラントは、直径又は幅が150~約300μm、長さが1.0mm~2.5mm、総質量が30μg~75μg、又は30~90μgである。インプラントは、押出インプラントであり得る(すなわち、インプラントは押出プロセスにより製造され得る)。一部の実施形態では、インプラントは、押出プロセスにより形成され、かつ直径又は幅が150~300μm、長さが0.50~2.5mm、総質量が30~100μgである。
【0039】
従って、本開示の前房内インプラントは、20~120μg、30~100μg、30~90μg、30~75μg、又は30~50μgの総質量を有し得る。非限定例としては、約6μg、10μg、15μg、又は20μg(±5%)のビマトプロストを含有し、それぞれ約30μg、50μg、75μg、又は100μg(±5%)の総質量を有する押出インプラントが挙げられる。特定形態では、押出インプラントは、約200μm又は250μm(±5%)(目又は他の液体若しくは流体環境に設置する前)の直径及び約2.3mm、1.5mm、又は1.0mm(±5%)の長さを有し得る。好ましくは、インプラントは、目に受け入れられ、27、28、又は30ゲージの超薄壁針を通して目の中に注入され得る。インプラントの前眼房への送達にはこれらのような小径針が望ましいであろう。ここに記載の特定サイズのインプラントは、角膜の外傷(例えば浮腫)を引き起こすことなく、かつ虹彩を擦傷させることなく、前眼房角内に適合するというさらなる利点を有する可能性がある。一実施形態では前房内インプラントは、直径が約200μm~約300μm、長さが約1.0~約2.3mmである。本開示に従い、かつ前述の実施形態のいずれかに従う前眼房内設置に適した大きさに作られたインプラントは、20%(w/w)のビマトプロスト、20%(w/w)のR203S、15%(w/w)のR202H、40%(w/w)のRG752S、及び5%(w/w)のポリエチレングリコール(PEG)3350を含むことができる。インプラントは、前眼房内設置後の角膜内皮との接触を回避するように(すなわち、インプラントが角膜内皮と接しないように)、本開示に従って前眼房内設置に適した大きさに作られ、処方される。角膜内皮との接触は、角膜内皮細胞の損失(密度減少)及び角膜浮腫の発症をもたらす可能性がある。該有害作用のリスクは、一般的にインプラントのサイズが大きくなるにつれて上昇する。インプラントが大きいほど、例えば、シュワルベ線(Schwalbe’s line)の前側で内皮に触れることによって、角膜内皮と接触する可能性が大きくなる。
【0040】
一実施形態は、前眼房内設置に適した大きさに作られる本開示の押出生分解性眼内インプラントであり、該インプラントは、直径が150~300μmであり、長さが0.50~3mmであり、総質量が25~100μgである。別の実施形態は、前眼房内設置に適した大きさに作られる本開示の押出生分解性眼内インプラントであり、該インプラントは、直径が150~250μm(±5%)、長さが0.75~2mm、総質量が50~75μgである。どちらの実施形態のインプラントも通常は、i)エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、ii)酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、並びにiii)約75:25のD,L-ラクチド:グリコリド比及0.16~0.24dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)を含むか又はこれらから成る生分解性ポリマーマトリックスと関連する20質量%のビマトプロストを活性化薬として含むことになり、ここで、固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%溶液について測定される。より具体的な実施形態では、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は0.25~0.35dl/gの固有粘度を有し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する。
【0041】
患者の目の眼内圧を降下させるためのビマトプロストの治療有効量は、約50~500ng/日の目の中におけるビマトプロスト放出速度に相当し得る。例えば約25μgの総質量を有し、約20質量%のビマトプロスト(すなわち、約5μgのビマトプロスト)を含む製剤2(表1)のインプラントは、目の中に設置後1日当たり約50ngのビマトプロストを放出することができる。約250μgの総質量を有し、約50μgのビマトプロストを含む製剤2のインプラントは、目の中に設置後1日当たり約500ngのビマトプロストを放出することができる。
インプラントのプロスタミド成分は、微粒子又は粉末形態であってよく、生分解性ポリマーマトリックス内に包埋され、又は生分解性ポリマーマトリックス全体に均一又は不均一に分散されることによって封入され得る。本開示インプラントでは、プロスタミドは、通常は質量対質量(w/w)基準でインプラントの約20%を構成することになる。言い換えれば、プロスタミドは、質量でインプラントの約20%を占めることになる。さらに一般的には、プロスタミドは、質量でインプラントの18%~22%を構成する(すなわち、該量で存在するか又は該量を占める)ことができる。
【0042】
ここ述べる眼内インプラントは、ポリ(D,L-ラクチド)(PLA)ポリマー及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)ポリマーから成る群より選択される少なくとも3種の異なる生分解性ポリマーの混合物を含む。3種のポリマー間の差は、末端基、固有粘度、若しくは反復単位、又はその任意の組み合わせに関してであり得る。
使用する場合、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、D,L-ラクチド反復単位(x)の1つ以上のブロック及びグリコリド反復単位(y)の1つ以上のブロックを含み、それぞれのブロックのサイズ及び数は変動し得る。ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)コポリマー中の各反復単位のモルパーセントは、独立に0-100%、50-50%,約15-85%、約25-75%、又は約35-65%であり得る。一部の実施形態では、D,L-ラクチドは、モル基準でPLGAポリマーの約50%~約85%であり得る。このポリマーの残余は本質的にグリコリド反復単位であり得る。例えば、グリコリドは、モル基準でPLGAポリマーの約15%~約50%であり得る。
【0043】
本開示は、目の眼内圧(IOP)を降下させるための生分解性眼内インプラントであって、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール3350、及び活性薬としてプロスタミドを含み、プロスタミド及びポリエチレングリコール3350は、0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、並びに0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)を含む生分解性ポリマーマトリックスと関連し、プロスタミドは、質量でインプラントの18~22%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの18~22%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの13.5~16.5%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの36~44%を構成し、かつポリエチレングリコール3350は、質量でインプラントの3.5~6.5%を構成し、ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中ポリマーの0.1%溶液について決定される、生分解性眼内インプラントを提供する。特定の実施形態では、プロスタミドは、質量でインプラントの20%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの20%を構成し、酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量でインプラントの15%を構成し、エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量でインプラントの40%を構成し、かつポリエチレングリコール3350は、質量でインプラントの5%を構成する。
【0044】
一部の実施形態では、上記インプラントはロッド状であり、形成されるインプラントは直径が150~300μm、長さ又は幅が0.50~2.5mm、総質量が30~100μgとなり、そのためインプラントは前眼房内設置後に角膜内皮と接しないようにホットメルト押出プロセスにより形成される。
以下、特定の製剤例について説明する。
【0045】
表1:押出前房内インプラント製造用のビマトプロスト含有持続送達製剤(1~5)
【0046】
表2:押出前房内インプラント製造用のビマトプロスト含有持続送達製剤(6~8)
【0047】
US特許出願公開第2015-0118279号の表3に記載のように、ほとんどの製剤例は、該US特許出願公開の
図1に示すように約60日又は2か月又は100日未満のインビトロ薬物放出プロファイルを示すのみだった。US特許出願公開第2015-0118279号の表4、及び
図4に示されるインビボビーグル犬研究では、4カ月で統計的に有意な差があり、IOP降下は6カ月まで測定されただけである。
【0048】
治療方法
本開示の眼内インプラントは、正常圧又は高眼圧のどちらの目の眼内圧をも長期間にわたって降下させるのに有効であり得る。本方法の一部の実施形態では、患者は、眼内圧が11~21mmHgの範囲である正常眼圧緑内障(NTG)を有することがある。このような患者は、進行的な視神経損傷及び視野喪失のリスクを減らすためにさらに低い眼圧を必要とすることがあり、本開示のインプラントの眼内投与から利益を得る可能性がある。従って、本開示のインプラントは、眼内圧亢進を特徴とする緑内障のみならず、低眼圧緑内障又は正常眼圧緑内障の患者も、眼内圧のさらなる降下から利益を得る可能性があり得るの、これらを含めた全ての形態の緑内障に有効であり得る。
本インプラントは、目の中にインプラント設置後12カ月以上、16カ月以上、又は24カ月、又は24カ月以上にわたって、インプラントを受ける前の目の眼内圧(IOP)に対して、10~20%、20~30%、おそらく30~40%以上(より高い薬物送達速度で)、目の眼内圧を降下させるのに有効であり得る。該インプラントは、患者の目の緑内障性損傷が発生するリスクを軽減し、その発症を遅延させ、又はその進行を遅くするのにさらに有効であり得る。目の緑内障性損傷としては、視神経の機能及び/又は構造への損傷並びに神経節細胞死があり、これらは周辺視野の喪失及び最終的に全盲につながる中心視力喪失をもたらす恐れがある。IOP亢進は、緑内障性視野喪失の主要なリスク因子となる。
【0049】
従って、現在述べているインプラントは、緑内障、開放隅角緑内障、原発性開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、正常眼圧緑内障、低眼圧緑内障、偽落屑緑内障、発育性緑内障、又は色素性緑内障から選択される眼状態に苦しんでいるか又は該状態と診断された患者を治療するのに有効であり得る。本インプラントの1つ以上は、高眼圧症又は眼内圧亢進を軽減し、それによって治療するために役立つこともある。例えば、本開示のインプラントは、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、又は高眼圧症のある患者の眼内圧を降下させるのに有効であり得る。患者は、ヒト又は非ヒト哺乳動物であり得る。本方法は、一般的に眼状態によって冒された目の眼内にインプラントを設置する工程を含むことになる。
【0050】
本開示のインプラントが長期間(60日以上)にわたって治療有効量のビマトプロストを放出する能力のため、該インプラントは、局所療法では必要であり得る眼球表面への点眼薬の頻繁な眼内注入又は定期的な滴下注入を必要とせずに長期間(例えば、12カ月以上又は24カ月以上)にわたって患者の眼内圧を降下させることができる。従って、一部の形態では、ここに記載のインプラントを単剤療法として用いて(すなわちIOPを制御するために補助的な抗高圧点眼薬を使用せずに単独で用いて)、患者の眼内圧を降下させ、それによって本明細書に記載の眼状態を治療する。それにもかかわらず、本開示のインプラントは、必要に応じて、局所適用される同一若しくは異なる治療薬と併用して二剤療法で使用可能である。
本インプラントは、目の中に設置後少なくとも2か月間、目に治療有効用量のプロスタミドを送達して、インプラントの前眼房内設置後少なくとも1か月、又は少なくとも2か月、又は4カ月にわたって、眼状態、又は眼状態と関連する少なくとも1つの徴候若しくは症状、若しくはリスク因子を軽減することになる。必要に応じて、複数のインプラントを目の中に設置することができる。例えば、2個のインプラントを目の前房又は硝子体内に設置して、より大用量のプロスタミドを送達してもよい。例えば、ある方法では、単独の100μgインプラントを使用するのではなく、2個の50μgのインプラント(それぞれ質量で20%のビマトプロストを含有する)を同時に前眼房内に設置することによって、20μgのビマトプロストを目に投与することができる。2個のより小さいインプラントは、目の中におけるインプラントの耐容性を改善し、さらにインプラントが角膜内皮と接触するリスクを減らし、それによって目が角膜内皮細胞密度減少及び角膜浮腫の発症を経験することになる機会を減らすか又は完全に排除する可能性があり得る。
【0051】
一実施形態は、哺乳動物の目の眼内圧の降下方法であって、本開示の生分解性眼内インプラントを哺乳動物の目の中に設置し、それによってインプラントが目の眼内圧の降下に有効な量で目にプロスタミドを与えることを含む方法である。この方法のいくつかの形態では、哺乳動物は、眼内圧亢進、高眼圧症、又は緑内障を有するヒト患者であり、インプラントを患者の患目の前房内に設置する。一部の実施形態によれば、本方法は、開放隅角緑内障又は高眼圧症のある患者の眼内圧(IOP)の降下に有効である。他の実施形態では、本方法は、開放隅角緑内障のある患者のIOPの降下に有効である。一部の実施形態では、本方法は、局所IOP降下薬物療法で不十分に処置されているか(例えば、不耐容又はノンアドヒアランスのため)又は局所療法に適さない、開放隅角緑内障又は高眼圧症のある患者のIOPの降下のために治療的に有効である。一部の実施形態では、本方法は、局所IOP降下薬物療法で不十分に処置されているか(例えば、不耐容又はノンアドヒアランスのため)又は局所療法に適さない、開放隅角緑内障のある患者のIOPの降下のために治療的に有効である。本インプラントは、前眼房内設置後少なくとも2か月間目の眼内圧を降下させるのに有効であり得る。場合によっては、本インプラントは、目の中にインプラントを設置した後12カ月より長く目の眼内圧を降下させることができる。一部の実施形態では、単剤インプラントは、12~24カ月間眼内圧を降下させることができる。一実施形態では、インプラントにより与えられるプロスタミドはビマトプロストである。好ましくは、インプラントは、前眼房内設置に適した大きさに作られ、処方され、かつ例えばヒトの目などの前眼房設置後に角膜内皮と接触せず、及び/又は角膜内皮を傷つけない。インプラントと角膜内皮との間の接触を排除すると、目の角膜内皮細胞密度減少及び角膜浮腫発症のリスクを減らすことができる。
【0052】
本開示は、患者の眼内圧の降下又は低下方法であって、患者の目の中に生分解性眼内インプラントを設置し、それによって例えば、少なくとも1か月、2か月間、又は少なくとも4カ月間のような長期間にわたって目の眼内圧を降下させることを含む方法をも提供する。場合によっては、患者は開放隅角緑内障、より詳細には原発性開放隅角緑内障、及び/又は高眼圧症を有することがある。本方法で用いるインプラントは、本明細書に記載のいずれのプロスタミド含有インプラントであってもよい。好ましい実施形態では、本方法は、製剤2を含む押出眼内インプラントを患者の目の中に設置することを含む。インプラントは、例えば、目の前房、硝子体、又は後房内に設置することができる。場合によっては、インプラントを目の特に前房角(虹彩角膜角)、さらに詳細には目の下位虹彩角膜角内に設置することができる。
【0053】
開放隅角緑内障又は高眼圧症のある患者を治療するための本明細書に記載の眼内インプラントの他の投与計画でIOP降下効果の持続時間の延長を観察することもできる。例えば、患者は、治療持続期間にわたって、3カ月(約12週間)又は4カ月(約16週間)又は5カ月(約20週間)又は6カ月(約24週間)又は7カ月(約28週間)又は8カ月(約32週間)又は9カ月(約36週間)又は10カ月(約40週間)又は11カ月(約44週間)又は12カ月(約48週間)毎に1回患者の前眼房内に注入される単剤眼内インプラントで、1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8個の総インプラントを受けて、IOP降下効果の持続期間の増加及び/又はIOP降下用レスキュー薬物療法(例えば、プロスタグランジン類似体又はプロスタミド含有点眼薬、例えばラタノプロスト、トラボプロスト、又はビマトプロスト)が必要ない時間を経験することができる。該投与計画後のIOP降下効果の持続期間又はレスキュー薬物療法が必要ない時間は、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月、又は24か月より長いことがある。一部の実施形態では、IOP降下効果の持続期間又はレスキュー薬物療法が必要ない時間は、12カ月~24カ月、12カ月超~15カ月、13カ月~24カ月、12カ月超~24カ月、12カ月超~16カ月、12カ月超~20カ月、16カ月超~24カ月などの範囲内であり得る。一部の実施形態では、IOP降下効果の持続期間又はレスキュー薬物療法が必要ない時間は、治療期間にわたる最後のインプラントの受け取り後12カ月~24カ月、12カ月超~15カ月、13カ月~24カ月、12カ月超~24カ月、12カ月超~16カ月、12カ月超~20カ月、16カ月超~24カ月の範囲内であり得る。
【0054】
一実施形態によれば、開放隅角緑内障又は高眼圧症を有する患者は、日1に患者の前眼房内に注入されるビマトプロストを含有する最初の眼内生分解性インプラント、次いで週16に患者の前眼房内に注入されるビマトプロストを含有する第2のインプラント、次いで週32に患者の前眼房内に注入される最後のビマトプロストインプラントを受けることができる。該実施形態によれば、開放隅角緑内障又は高眼圧症のある患者は、10μgのビマトプロスト又は15μgのビマトプロストを含有するインプラントを日1、週16、及び週32に受けることができる。一部の実施形態では、患者は、日1に患者の前眼房内に注入されるビマトプロストを含有する最初の眼内インプラント、次いで週16にビマトプロストを含有する最後のインプラントを受け、さらにインプラントを受けない。一部の実施形態では、それを必要とする患者は単独かつ最後のインプラントのみを受ける。該方法では、最後のインプラントの注入後5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、24カ月などの期間にわたって持続性IOP降下効果を観察することができる。一部の実施形態では、開放隅角緑内障又は高眼圧症を有する患者は、上記方法により治療持続期間にわたって約20~30%のIOP降下を示す。一部の実施形態では、開放隅角緑内障又は高眼圧症を有する患者は、上記方法により治療持続期間にわたって約30%のIOP降下を示す。
【0055】
一実施形態では、インプラントは、眼内送達装置を用いて目の中に設置され、この装置は、細長いハウジング及びこのハウジングから長手方向に伸長するカニューレを含み、このカニューレは、基部端と末端の鋭端及びカニューレを通って伸長する管腔を有し、この管腔は、インプラントを受け取って、管腔を介したインプラントの患者の目の中への通過を可能にするのに十分な内径を有する。この装置は、管腔を通して目の中にインプラントを駆出するために使用者が作動させるリンク機構と操作可能に連結されたプッシュロッド又はプランジャーをさらに含むことがある。
別の実施形態は、生分解性眼内インプラントを患者の目の中に送達するための装置の使用を含み、この装置は、上記いずれかの眼内インプラント、細長いハウジング及びこのハウジングから長手方向に伸長するカニューレを含み、このカニューレは、基部端と末端の鋭端及びカニューレを通って伸長する管腔を有し、この管腔は、眼内インプラントを受け取って、管腔を介したインプラントの患者の目の中への並進運動を可能にするのに十分な内径を有する。このカニューレは、25ゲージ、26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、又は30ゲージ針であってよく、そうでなければ25ゲージ、26ゲージ、27ゲージ、28ゲージ、29ゲージ、又は30ゲージ針の内径及び外径と等価の内径及び外径を有すると記述可能である。この針は、さらに、薄壁又は超薄壁針であってよい。
【0056】
一部の実施形態によれば、眼内インプラントは、それを必要とする患者の前眼房内に前房内投与され、約3~4カ月間IOP降下のために前眼房に高効率IOP降下薬ビマトプロスト(「BimSR」とも呼ばれる)の制御された持続性放出をできるように設計される。BimSRのポリマーマトリックスはゆっくり分解するので、薬物が放出されてもすぐにインプラントを除去する必要がない。US特許出願公開第2015-0118279号に記載のインビトロのビーグル犬データに基づいて、BimSRインプラントは、約3~4カ月の薬物放出持続期間を有し、同持続期間にわたってIOP降下を伴うと予想された。
【実施例0057】
実施例1
洗い流し後に研究対象の目が25.2(範囲22~36)mmHgのベースライン平均IOPである75名の緑内障患者でフェーズ1/2、前向き、24カ月、ペア目臨床治験を行なった。製剤2としてUS特許出願公開第2015-0118279号に記載される組成物を表1の仕様(6、10、15、又は20μgの用量強度)に記載どおりに有する眼内インプラントを研究対象の目に前房内投与し;片方の目を局所ビマトプロスト溶液0.03%で1日1回治療した。IOP、追加IOP降下治療までの時間、及び追加IOP降下治療のない患者の百分率により長期IOP降下効果を評価した。患者は、レスキュー局所薬物療法又はBimSRによる単剤反復治療を許可された。開発を続けているBimSRの10及び15μgの用量強度(それぞれn=21)について結果を提示する。
【0058】
4カ月及び6カ月まで、それぞれ95.2%及び66.7%の患者が、レスキュー薬物療法又はインプラントの再処置を必要とせずに初期BimSRの10又は15μgの治療状態で制御された。BimSR投与後の追加IOP降下治療までの中位時間は38~39週間であった。驚いたことに、24カ月で、10/42、すなわち23.8%の患者がまだ初期インプラント処置状態で維持され、平均(SD) IOPは、ビマトプロスト溶液治療した片方の目についての16.4(2.1)mmHg及び15.4(2.4)mmHgと比較してBimSR 10μg及び15μgの用量強度についてそれぞれ16.0(2.2)mmHg及び15.9(2.5)mmHgであった。報告された有害事象は、投与手順から及び局所IOP降下薬物療法の使用により予測されたことと一致した。
6μg及び20μgの用量強度で同様の結果が観察された。
【0059】
BimSR 10又は15μgの単剤投与は、66.7%の患者においてIOPを6カ月まで制御し、24カ月で23.8%の患者を制御した。24カ月での平均IOPは、BimSR 10μg又は15μgの単剤投与状態で維持された目及びビマトプロスト溶液で治療された片方の目において同等であった。BimSRは、大半の患者で6カ月間、一部の患者では24カ月まで続く単剤インプラントの効果による有利なIOP降下効力を実証した。
BimSRの単剤投与の効果の長寿命は、毎日の局所治療に対するノンアドヒアランスに取り組むため、及び緑内障又は高眼圧症のある患者におけるIOP降下薬物療法の長期使用の必要性を排除するために有利である。
臨床研究からのこれらの結果は、研究した動物におけるインプラントの薬物動態学的プロファイルに基づくと予想外であり、3~4カ月のIOP降下効果を支持する。
【0060】
BimSRを用いた犬の研究は、8~30μgの用量強度で2カ月~約4カ月に及ぶ作用(IOP降下のための)の用量関連持続期間を示した。効果の同様の持続期間がサルで見られた。別の研究、単剤前房内20μgのBimSRインプラントで治療した動物においては、ビマトプロスト及びその主要代謝物、ビマトプロスト酸が、ヒトでは局所暴露後に見られた濃度と同様の濃度で週10まで眼房水中で検出された2(表3)。投与後14週間で、ビマトプロストは、角膜、脈絡膜、及び虹彩-毛様体でも検出されたが、網膜及び硝子体液内の薬物レベルは定量限界未満だった。眼組織内ではビマトプロスト酸は検出されなかった。投与後14週間で回収された残存インプラント中では薬物が検出されなかった。
【0061】
表3:局所及び他の経路のビマトプロスト投与と比較したビマトプロストSRによる眼及び全身の薬物動態データ
【0062】
【0063】
実施例2
一例では、BimSRと活性コントロール(マレイン酸チモロール0.5%点眼薬;チモロールと称する)のフェーズ3多施設、ランダム化、遮蔽、並行群間比較において、初期投与及び反復投与後に開放隅角緑内障(OAG)又は高眼圧症(OHT)のある患者における眼内圧(IOP)降下効力及び2つの用量強度のBimSRの安全性を研究した。関連する詳細及び結果を
図1~4に示す。BimSRインプラントは、US特許公開第2015-0118279号に製剤2として記載されている組成物を表1の仕様(10又は15μgの用量強度)に記載どおりに有する眼内インプラントだった。下表4に示すように、患者を3つの群にランダム化し、群は、BimSR 10ugの眼内インプラント、BimSR 15ugの眼内インプラント、又は1日2回(BID)チモロール液滴を受けた。患者の前眼房内への注入により2つのBimSRインプラント強度の1つを受ける群の患者は、12カ月の治療期間中に日1、週16(約4ヵ月)、及び週32(約8カ月)の3回の投与サイクルで患者の前眼房内への注入によって単剤インプラントを受け、20カ月までの経過観察で安全だった。
【0064】
【0065】
2つの強度のBimSRは、12週間の主要有効性期間にわたってIOPを約30パーセント降下させ、チモロールに対する非劣性について予め定義された基準を満たした。BimSRの2つの強度は大半の患者で良好な耐容性をも示した。厳密に言えば、BimSR 15μgでは、研究対象の目のIOPの平均差(チモロールに対する)は-0.98~-0.41mmHgの範囲であり;95%CIの上限は、各治療サイクル中12週間にわたって分析した全6時点で≦1.0mmHgである。BimSR 10μgについては、研究対象の目のIOPの平均差(チモロールに対する)は-0.90~-0.21mmHgの範囲であり;平均差についての95%CIの上限は、各治療サイクル中12週間にわたって分析した全6時点で≦1.0mmHgである。
3回の治療サイクル後に、治療中止から12カ月以上経過した患者を分析した。3回の投与サイクルを受けた(すなわち、合計3個のインプラント、すなわち日1に1個のインプラント、週16に1個のインプラント、及び週32に1個のインプラントを受けた)患者について、Bim SR 15μg用量で治療した患者の90%、及びBim SR 10μg用量で治療した患者の83%は、3回目の投与後少なくとも360日(12カ月)間レスキュー治療が行なわれなかった。レスキュー薬物療法は、IOP上昇を制御するために非研究対象の眼内圧降下薬物療法を必要とすることを指す。Bim SRは、それぞれ4カ月毎に1回投与した3個のインプラントの効果による有利なIOP降下効力を実証し、研究した患者の大半で3回目の注入後少なくとも12カ月間持続した。
同様に、Bim SRの最後の投与(1又は2又は3回の投与サイクル)後、Bim SR 15μg用量で治療した患者の76%及びBim SR 10μg用量で治療した患者の76%は、少なくとも360日(12カ月)間レスキュー治療が行なわれなかった。BimSRは、研究した患者の大半で最後の注入後少なくとも12カ月間続く1、2、又は3個のインプラントの効果による有利なIOP降下効力を実証した。
2つの強度のBimSRは、12週間の主要有効性期間にわたってIOPを約30パーセント降下させ、チモロールに対する非劣性について予め定義された基準を満たした。BimSRの2つの強度は大半の患者で良好な耐容性をも示した。厳密に言えば、BimSR 15μgでは、研究対象の目のIOPの平均差(チモロールに対する)は-0.98~-0.41mmHgの範囲であり;95%CIの上限は、各治療サイクル中12週間にわたって分析した全6時点で≦1.0mmHgである。BimSR 10μgについては、研究対象の目のIOPの平均差(チモロールに対する)は-0.90~-0.21mmHgの範囲であり;平均差についての95%CIの上限は、各治療サイクル中12週間にわたって分析した全6時点で≦1.0mmHgである。
3回の治療サイクル後に、治療中止から12カ月以上経過した患者を分析した。3回の投与サイクルを受けた(すなわち、合計3個のインプラント、すなわち日1に1個のインプラント、週16に1個のインプラント、及び週32に1個のインプラントを受けた)患者について、Bim SR 15μg用量で治療した患者の90%、及びBim SR 10μg用量で治療した患者の83%は、3回目の投与後少なくとも360日(12カ月)間レスキュー治療が行なわれなかった。レスキュー薬物療法は、IOP上昇を制御するために非研究対象の眼内圧降下薬物療法を必要とすることを指す。Bim SRは、それぞれ4カ月毎に1回投与した3個のインプラントの効果による有利なIOP降下効力を実証し、研究した患者の大半で3回目の注入後少なくとも12カ月間持続した。
同様に、Bim SRの最後の投与(1又は2又は3回の投与サイクル)後、Bim SR 15μg用量で治療した患者の76%及びBim SR 10μg用量で治療した患者の76%は、少なくとも360日(12カ月)間レスキュー治療が行なわれなかった。BimSRは、研究した患者の大半で最後の注入後少なくとも12カ月間続く1、2、又は3個のインプラントの効果による有利なIOP降下効力を実証した。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕患者の目の眼内圧(IOP)の降下方法であって、下記:
ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に注入することを含み;
前記眼内インプラントは、約12カ月~約24カ月の期間にわたって、それを必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、
前記方法。
〔2〕前記眼内インプラントが、降下を必要とする前記患者のIOPを約24カ月の期間降下させるのに有効である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記眼内インプラントが、6μg、10μg、15μg又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含む、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記眼内インプラントが、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール 3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、前記ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール 3350は、
a) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
b) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
c) 0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)
を含む前記生分解性ポリマーマトリックスと関連し;
前記ビマトプロスト又はその塩は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの13.5~16.5%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量で前記インプラントの36~44%を構成し、かつ前記ポリエチレングリコール 3350は、質量で前記インプラントの3.5~6.5%を構成し、前記ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中前記ポリマーの0.1%溶液について決定される、
前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
〔5〕患者の開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法であって、下記:
ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む1個以上の単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に、最初の眼内インプラント及び最後の眼内インプラントの注入を含む治療期間にわたって、4カ月毎に1個の眼内インプラントから12カ月毎に1個の眼内インプラントの頻度で注入することを含み;
前記眼内インプラントは、最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたって、降下を必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、
前記方法。
〔6〕前記患者が、4カ月毎に1個の眼内インプラントを受け;かつ前記眼内インプラントは、約12カ月~約24カ月の期間にわたって、降下を必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、前記〔5〕に記載の方法。
〔7〕前記患者が、前記治療期間にわたって2個のインプラントから8個のインプラントを受ける、前記〔5〕又は前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕前記患者が3個のインプラントを受ける、前記〔5〕~〔6〕のいずれか1項に記載の方法。
〔9〕前記眼内インプラントが、約12カ月の期間にわたって、降下を必要とする前記患者のIOPを降下させるのに有効である、前記〔5〕~〔8〕のいずれか1項に記載の方法。
〔10〕前記眼内インプラントが、6μg、10μg、15μg、又は20μgのビマトプロスト又はその塩を含む、前記〔5〕~〔9〕のいずれか1項に記載の方法。
〔11〕前記眼内インプラントが、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール 3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、前記ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール 3350は、
d) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
e) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
f) 0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)
を含む前記生分解性ポリマーマトリックスと関連し;
前記ビマトプロスト又はその塩は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの13.5~16.5%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量で前記インプラントの36~44%を構成し、かつ前記ポリエチレングリコール 3350は、質量で前記インプラントの3.5~6.5%を構成し、前記ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中前記ポリマーの0.1%溶液について決定される、
前記〔5〕~〔10〕のいずれか1項に記載の方法。
〔12〕前記方法が、降下を必要とする前記患者のIOPをベースラインから約30%降下させるのに有効である、前記〔5〕~〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕患者の開放隅角緑内障又は高眼圧症の治療方法であって、下記:
ビマトプロスト又はその塩及び生分解性ポリマーを含む1個以上の単剤眼内インプラントを、それを必要とする患者の前眼房内に、最初の眼内インプラント及び最後の眼内インプラントの注入を含む治療期間にわたって、4カ月毎に1個の眼内インプラントから12カ月毎に1個の眼内インプラントの頻度で注入することを含み;
前記最後の眼内インプラントの注入後、前記患者は、前記最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない、
前記方法。
〔14〕前記患者が、4カ月毎に1個の眼内インプラントを受け;かつ前記患者は、前記最後の眼内インプラントの注入後約12カ月~約24カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕前記患者が、前記治療期間にわたって2個のインプラントから8個のインプラントを受ける、前記〔13〕又は前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕前記患者が3個のインプラントを受ける、前記〔13〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17〕前記患者が、約12カ月の期間にわたってレスキュー薬物療法を必要としない、前記〔13〕~〔16〕のいずれか1項に記載の方法。
〔18〕前記眼内インプラントが、10μg、15μgのビマトプロスト又はその塩を含む、前記〔13〕~〔17〕のいずれか1項に記載の方法。
〔19〕前記眼内インプラントが、生分解性ポリマーマトリックス、ポリエチレングリコール 3350、及びビマトプロスト又はその塩を含み、前記ビマトプロスト又はその塩及びポリエチレングリコール 3350は、
g) 0.25~0.35dl/gの固有粘度を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド)、
h) 0.16~0.24dl/gの固有粘度を有する酸末端ポリ(D,L-ラクチド)、及び
i) 0.16~0.24dl/gの固有粘度及び約75:25のD,L-ラクチド対グリコリドモル比を有するエステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)
を含む前記生分解性ポリマーマトリックスと関連し;
前記ビマトプロスト又はその塩は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの18~22%を構成し、前記酸末端ポリ(D,L-ラクチド)は、質量で前記インプラントの13.5~16.5%を構成し、前記エステル末端ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)は、質量で前記インプラントの36~44%を構成し、かつ前記ポリエチレングリコール 3350は、質量で前記インプラントの3.5~6.5%を構成し、前記ポリ(D,L-ラクチド)及びポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)ポリマーのそれぞれの固有粘度は、25℃でクロロホルム中前記ポリマーの0.1%溶液について決定される、
前記〔13〕~〔18〕のいずれか1項に記載の方法。
〔20〕前記レスキュー薬物療法が、プロスタグランジン類似体又はプロスタミドを含有する点眼薬を含む、前記〔13〕~〔19〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21〕前記方法が、降下を必要とする前記患者のIOPをベースラインから約30%降下させるのに有効である、前記〔13〕~〔20〕のいずれか1項に記載の方法。