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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000328
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】進退移動装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/90 20140101AFI20231225BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20231225BHJP
   E05B 81/28 20140101ALI20231225BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
E05B81/90
E05B83/34
E05B81/28
B60K15/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099057
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野守 千尋
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅紀
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ46
2E250JJ49
2E250LL13
2E250PP02
2E250PP03
2E250QQ07
2E250RR34
3D038CA32
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】手動操作によるロック解除を安定して行うことができる進退移動装置を提供する。
【解決手段】進退移動装置は、ケースと、端部がケースから突出した状態でケースに支持され、ケースの内部から外部に向かう方向に前進し、又は当該方向とは逆方向に後退する進退部材と、駆動部の出力に基づいて、駆動部に設けられた出力軸が回転することによって、進退部材の進退移動が規制されるロック位置と、進退部材の進退移動が可能となるアンロック位置との間を移動する移動部材と、出力軸に固定され、ケースから露出する手動操作部を有する手動操作部材と、を備え、手動操作部を手動操作することにより、移動部材をロック位置とアンロック位置との間で移動させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
端部が前記ケースから突出した状態で前記ケースに支持され、前記ケースの内部から外部に向かう方向に前進し、又は当該方向とは逆方向に後退する進退部材と、
駆動部の出力に基づいて、前記駆動部に設けられた出力軸が回転することによって、前記進退部材の進退移動が規制されるロック位置と、前記進退部材の進退移動が可能となるアンロック位置との間を移動する移動部材と、
前記出力軸に固定され、前記ケースから露出する手動操作部を有する手動操作部材と、を備え、
前記手動操作部を手動操作することにより、前記移動部材を前記ロック位置と前記アンロック位置との間で移動させることができる、
進退移動装置。
【請求項2】
前記出力軸の回転に伴って、前記移動部材を前記ロック位置と前記アンロック位置との間を移動させる伝達部材を、備える、請求項1に記載の進退移動装置。
【請求項3】
前記伝達部材は、前記出力軸とともに回転し、伝達側ねじ部を有しており、
前記移動部材は、前記伝達側ねじ部と噛合する移動側ねじ部を有する、請求項2に記載の進退移動装置。
【請求項4】
前記移動部材は、前記伝達部材の前記伝達側ねじ部の少なくとも一部を覆うように前記伝達部材に当接し、前記伝達側ねじ部と対向する面に、前記伝達側ねじ部と噛合する前記移動側ねじ部を有する、請求項3に記載の進退移動装置。
【請求項5】
前記伝達部材は、伝達側歯部を有する歯車であり、
前記移動部材は、前記伝達側歯部と噛合する移動側歯部を有する、請求項2に記載の進退移動装置。
【請求項6】
前記移動部材は、前記出力軸が1回転以上回転した場合に、前記ロック位置と前記アンロック位置との間の距離を移動する、請求項1に記載の進退移動装置。
【請求項7】
前記手動操作部材は、前記駆動部に設けられた前記出力軸の軸方向において、前記出力軸上に設けられる前記伝達部材と駆動部本体との間に設けられる、請求項2に記載の進退移動装置。
【請求項8】
前記手動操作部材は、前記伝達部材と一体に構成されている、請求項7に記載の進退移動装置。
【請求項9】
前記手動操作部材は、円盤状であって、外周面の一部が前記ケースから露出している、請求項1に記載の進退移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進退移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フューエルリッドの開閉を行うための進退部材を備えた進退移動装置が開示されている。進退部材は、前端部がケースから突出した状態でケースに支持されており、回転しつつ前後方向に移動可能である。
【0003】
又、特許文献1に開示された進退移動装置は、モータの出力に基づいて、進退部材の移動を規制するロック位置と、進退部材の移動を可能とするアンロック位置との間を移動するロック部を備えている。ロック部は、ラックギアを含む複数のギアを介してモータに接続されている。
【0004】
又、特許文献1に開示された進退移動装置は、モータの非通電時において、手動によりロック部を移動させるためのケーブルを備えている。作業者がケーブルを引くと、ロック部がロック位置からアンロック位置に向かって移動して、進退部材が移動可能な状態(アンロック状態)になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-53198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された進退移動装置の場合、作業者によりケーブルが引かれると、ロック部は、ロック部とモータとの間に設けられた複数のギア同士の噛合による拘束力に抗して移動する。この際、ロック部が移動方向に対して傾斜すると、ロック部とラックギアとの噛合部に引っ掛かり等が生じて、進退部材の解除が困難になる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、手動操作によるロック解除を安定して行うことができる進退移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る進退移動装置の一態様は、
ケースと、
端部がケースから突出した状態でケースに支持され、ケースの内部から外部に向かう方向に前進し、又は当該方向とは逆方向に後退する進退部材と、
駆動部の出力に基づいて、駆動部に設けられた出力軸が回転することによって、進退部材の進退移動が規制されるロック位置と、進退部材の進退移動が可能となるアンロック位置との間を移動する移動部材と、
出力軸に固定され、ケースから露出する手動操作部を有する手動操作部材と、を備え、
手動操作部を手動操作することにより、移動部材をロック位置とアンロック位置との間で移動させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手動操作によるロック解除を安定して行うことができる進退移動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る進退移動装置を備えた開閉装置を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る進退移動装置の側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る進退移動装置の断面図である。
図4図4は、ロック機構及び手動操作機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下、本実施形態の進退移動装置1の構造を説明するにあたり、各図に示す直交座標系(X,Y,Z)を使用し、本発明の実施の形態について、例えば、「Xに平行」およびこれに類する表現は、Xに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Xに対して略平行であることを含んで指すものとする。
【0012】
[実施形態]
図1は本発明の実施形態に係る進退移動装置1を備えた開閉装置100を示す図である。図2は進退移動装置1の側面図である。図3は進退移動装置1の断面図である。図4はロック機構6及び手動操作機構7の斜視図である。
【0013】
開閉装置100は、例えば、車体2に設けられた給油開口部2aを塞ぐための蓋であるフューエルリッド120を開閉する装置である。開閉装置100は、進退移動装置1を備えている。尚、進退移動装置1については後述する。なお、進退移動装置1は、フューエルリッド以外にも、車両の充電リッドを開閉する装置に適用することもできる。
【0014】
開閉装置100は、車体2に設けられた給油開口部2aに取り付けられている本体部110、フューエルリッド120、フューエルリッド120を回転可能に支持するヒンジ130、及び進退移動装置1を有する。
【0015】
本体部110は、例えば給油管を囲む給油室を構成する。尚、給油管の先端に形成された給油口は、スクリューキャップ160により閉塞されている。
【0016】
進退移動装置1は、フューエルリッド120を開閉するための部材である進退部材53を有する。進退部材53は、先端に、リッド係止部533を有する。
【0017】
以下、フューエルリッド120が閉じた状態をフューエルリッド120の閉状態と称する。又、フューエルリッド120が開いた状態をフューエルリッド120の開状態と称する。
【0018】
このように構成された開閉装置100において、フューエルリッド120が閉じられると、フューエルリッド120に設けられたリッド被係止部140が進退部材53に接触する。このとき、進退部材53に設けられたリッド係止部533がリッド被係止部140の内部に挿入される。
【0019】
この状態で、フューエルリッド120が押し込まれると、進退部材53が車体2の内側に後退する。後退とは、進退部材53が後述するケース4の外側からケース4の内側に向かう方向(Z軸の負の方向)に移動することである。尚、進退部材53が、ケース4の内側からケース4の外側に向かう方向(Z軸の正の方向)に移動することを、前進という。
【0020】
更に、進退部材53が後退すると、リッド係止部533が回転して、リッド係止部533がリッド被係止部140に係合される。リッド係止部533がリッド被係止部140に係止された状態で、進退部材53は後退位置に配置される。
【0021】
進退部材53の後退位置は、後退した進退部材53の停止位置である。進退部材53の後退位置は、フューエルリッド120の閉状態における、進退部材53の位置でもある。
【0022】
フューエルリッド120を開く際、進退部材53が車体2の外側へ前進する。進退部材53は前進しつつ回転するため、リッド係止部533とリッド被係止部140との係合が解除される。リッド被係止部140とリッド係止部533との係合が解除されると、フューエルリッド120は、閉状態から開状態へと遷移可能な状態となる。
【0023】
次に、進退移動装置1の具体的な構成について説明する。
【0024】
進退移動装置1は、進退部材53をケース4に対して、前進又は後退させる装置である。進退移動装置1は、ケース4、進退機構5、ロック機構6、及び手動操作機構7を有する。
【0025】
ケース4は、進退機構5、ロック機構6、及び手動操作機構7を保持するための部材である。ケース4は、進退移動装置1が車体2に組み込まれた状態において、車体2に固定される。
【0026】
ケース4は、第一収容部41及び第二収容部42を有する。
【0027】
第一収容部41は、進退機構5を収容するための収容部である。第一収容部41は、Z方向に延在する筒状の空間により構成されている。第一収容部41は、Z軸に平行な中心軸を有する。第一収容部41の前端部(Z軸の正の方向側の端部)は開口している。一方、第一収容部41の後端部(Z軸の負の方向側の端部)は、ケース側蓋部411により塞がれている。
【0028】
第二収容部42は、ロック機構6及び手動操作機構7を収容するための収容部である。第二収容部42は、Z軸に直交する方向に延在する筒状の空間により構成されている。第二収容部42は、第一収容部41の中心軸に直交する中心軸を有する。第二収容部42の中心軸は、Y軸に平行である。
【0029】
第二収容部42は、移動部材収容部421と、モータ収容部422と、を有する。移動部材収容部421とモータ収容部422とは、第二収容部42の中心軸に平行な方向(Y軸方向)に並んで設けられている。移動部材収容部421は、モータ収容部422よりも第一収容部41に近い位置に設けられている。
【0030】
移動部材収容部421は、後述のロック機構6の移動部材62を収容するための収容部である。移動部材収容部421とモータ収容部422との間には、移動部材収容部421とモータ収容部422とを、第二収容部42の中心軸に平行な方向(Y軸方向)に仕切る仕切り部423が設けられている。
【0031】
仕切り部423には、仕切り部423を第二収容部42の中心軸に平行な方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔424が設けられている。貫通孔424には、電動モータ60に設けられた出力軸601が挿通されている。
【0032】
又、移動部材収容部421と第一収容部41とは、仕切り部412により仕切られている。仕切り部412は、第一収容部41を画定する周壁部410の一部により構成されている。
【0033】
仕切り部412には、仕切り部412を第二収容部42の中心軸に平行な方向(Y軸方向)に貫通する貫通孔413が設けられている。貫通孔413には、後述のロック機構6のロック状態において、移動部材62に設けられたロック部621が挿通される。
【0034】
ケース4は、移動部材収容部421におけるモータ収容部422に近い側の端部に対応する位置に、手動操作窓425(図2参照)を有する。手動操作窓425は、移動部材収容部421を画定する壁部を貫通した貫通孔により構成されている。手動操作窓425は、移動部材収容部421と外部空間とを連通している。
【0035】
手動操作窓425には、後述の手動操作機構7を構成する手動操作部材70の一部(手動操作部702)が配置されている。手動操作窓425に配置された手動操作部材70の一部(手動操作部702)は、ケース4の外部に露出している。
【0036】
モータ収容部422は、後述のロック機構6に設けられた電動モータ60を配置するための収容部である。
【0037】
進退機構5は、ケース4(具体的には、第一収容部41)に収容されており、進退部材53を前進又は後退させるための機構である。
【0038】
具体的には、進退機構5は、図3に示すように、付勢ばね52と、進退部材53と、を有する。
【0039】
付勢ばね52は、付勢部材の一例に該当し、コイルばねである。付勢ばね52は、第一収容部41において、後述の進退部材53の後方に設けられている。付勢ばね52の前端部は、進退部材53の後端面に当接している。
【0040】
一方、付勢ばね52の後端部は、ケース4に設けられたケース側蓋部411の前端面に当接している。
【0041】
付勢ばね52は、常時、進退部材53を、前後方向に付勢している。具体的には、付勢ばね52は、常時、進退部材53を前方に付勢している。
【0042】
進退部材53は、ケース4に対して前進移動及び後退移動が可能な部材である。進退部材53は、図3に示すように、第一収容部41において付勢ばね52よりも前方に配置されている。進退部材53は、前端部がケース4から突出した状態でケース4に支持され、ケース4の内部から外部に向かう方向に前進し、又は当該方向とは逆方向に後退する。尚、図3において、進退機構5は、断面図ではなく、側面図として示されている。
【0043】
進退部材53は、ケース4に対して最も前進した前進位置と、ケース4に対して最も後退した後退位置との間を移動する。以下、進退部材53の前後方向における移動のストロークを、進退部材53の前後ストロークと称する。又、進退部材53が、前後ストロークの前端に位置する状態を、進退機構5の第一状態と称する。又、進退部材53が、前後ストロークの後端に位置する状態を、進退機構5の第二状態と称する。
【0044】
又、進退機構5の第一状態において、進退部材53はケース4に対して最も前進した前進位置に位置する。一方、上述した進退機構5の第二状態において、進退部材53はケース4に対して最も後退した後退位置に位置する。
【0045】
進退部材53の前進位置は、前進した進退部材53の停止位置でもある。進退部材53の前進位置は、図1に示すリッド被係止部140とリッド係止部533との係合状態が解除されたときの進退部材53の位置でもある。
【0046】
進退部材53は、軸状であって、前端部にリッド係止部533を有する。リッド係止部533は、上述のフューエルリッド120が閉じられた際、フューエルリッド120に設けられたリッド被係止部140と係止する。
【0047】
進退部材53は、ガイド凸部(不図示)を有する。ガイド凸部は、ケース4(具体的には、第一収容部41)の内面に設けられたガイド溝(不図示)と係合している。
【0048】
進退部材53の前進時及び後退時に、ガイド凸部(不図示)がガイド溝(不図示)に案内されることにより、進退部材53が回転する。進退部材53は、ガイド凸部とガイド溝との係合により、ケース4に対して抜け止めされている。又、進退部材53は、付勢ばね52により、ケース4の内部から外部に向かう前進方向に常時付勢されている。
【0049】
ロック機構6は、進退機構5の第二状態において、進退部材53の進退移動を規制するための機構である。ロック機構6は、ケース4(具体的には、モータ収容部422)に収容されている。
【0050】
具体的には、ロック機構6は、図3及び図4に示すように、電動モータ60、雄ねじ部材61、及び移動部材62を有する。
【0051】
電動モータ60は、ロック機構6を駆動するための駆動部の一例に該当する。電動モータ60は、モータ本体600と、出力軸601と、を有する。モータ本体600は、駆動部本体の一例に該当し、第二収容部42に配置されている。
【0052】
出力軸601は、Y軸に平行な軸部材であって、一端部がモータ本体600に接続されている。出力軸601の中間部は、仕切り部423に設けられた貫通孔424に挿通されている。出力軸601の他端部は、移動部材収容部421に配置されている。尚、電動モータ60には、ブレーキ装置は設けられていない。
【0053】
雄ねじ部材61は、伝達部材の一例に該当し、電動モータ60に設けられた出力軸601の回転に基づいて、後述の移動部材62をロック位置とアンロック位置との間で移動させるための部材である。
【0054】
雄ねじ部材61は、外周面に螺旋状の雄ねじ部610を有する。雄ねじ部610は、伝達側ねじ部の一例に該当する。雄ねじ部材61の電動モータ60に近い側の端部(以下、モータ側端部と称する。)は、電動モータ60に設けられた出力軸601に固定されている。
【0055】
雄ねじ部材61の電動モータ60から遠い側の端部(以下、非モータ側端部)は、ケース4の仕切り部412に、回転可能な状態で支持されている。このような雄ねじ部材61は、出力軸601とともに回転する。
【0056】
雄ねじ部材61の中心軸と、出力軸601の中心軸とは、同軸である。又、電動モータ60と雄ねじ部材61との間には、減速機等の速度変換機構は設けられていない。よって、電動モータ60(出力軸601)の回転速度と雄ねじ部材61の回転速度(回転数)とは、同じである。
【0057】
移動部材62は、電動モータ60の出力(回転)に基づいて、電動モータ60に設けられた出力軸601が回転することにより、進退部材53の進退移動が規制されるロック位置と、進退部材53の進退移動が可能となるアンロック位置との間を移動する。
【0058】
以下、移動部材62がロック位置に位置する状態を、ロック機構6のロック状態と称する。一方、移動部材62がアンロック位置に位置する状態を、ロック機構6のアンロック状態と称する。
【0059】
又、移動部材62がアンロック位置からロック位置に向かって移動する方向(本実施形態の場合、Y軸の正の方向)を、ロック直進方向と称する。又、移動部材62がロック位置からアンロック位置に向かって移動する方向(本実施形態の場合、Y軸の負の方向)を、アンロック直進方向と称する。
【0060】
移動部材62は、ナット部620と、ロック部621と、を有する。
【0061】
ナット部620は、雄ねじ部材61に設けられた雄ねじ部610の少なくとも一部を覆うように雄ねじ部材61に当接している。換言すれば、ナット部620には、雄ねじ部材61が挿通されている。
【0062】
ナット部620は、雄ねじ部材61と対向する面(内周面)に、雄ねじ部材61に設けられた雄ねじ部610と噛合(螺合)する雌ねじ部620aを有する。雌ねじ部620aは、移動側ねじ部の一例に該当する。
【0063】
ナット部620は、ケース4(具体的には、移動部材収容部421)との係合に基づいて、ケース4に対する回転を阻止されている。よって、雄ねじ部材61が回転すると、雄ねじ部610と雌ねじ部620aとの螺合に基づいて、ナット部620が、ナット部620の軸方向(Y軸方向)に移動する。
【0064】
このように、雄ねじ部材61とナット部620とにより、電動モータ60の回転をナット部620の軸方向への直線移動に変換する変換機構を構成している。ナット部620の移動方向は、雄ねじ部材61の回転方向(つまり、電動モータ60の回転方向)に応じて変わる。
【0065】
本実施形態の場合、雄ねじ部材61及びナット部620は、電動モータ60に設けられた出力軸601が1回転以上回転した場合に、移動部材62がロック位置とアンロック位置との間の距離を移動するように構成されている。
【0066】
具体的には、雄ねじ部材61における雄ねじ部材61のリード角及びナット部620における雌ねじ部620aのリード角が、電動モータ60に設けられた出力軸601が1回転以上回転した場合に、移動部材62がロック位置とアンロック位置との間の距離を移動するように規定されている。
【0067】
このような雄ねじ部材61のリード角及び雌ねじ部620aのリード角の構成により、移動部材62がロック位置とアンロック位置との間の距離を移動する際、電動モータ60に設けられた出力軸601が少なくとも1回転する。このため、移動部材62がロック位置とアンロック位置との間の距離を移動する際、電動モータ60を構成するブラシ(不図示)が、全ての整流子(不図示)と接触する。この結果、一部の整流子のみが摩耗するといった現象を抑制できる。
【0068】
又、上述のような雄ねじ部材61のリード角及び雌ねじ部620aのリード角の構成は、雄ねじ部材61の回転に対する移動部材62の移動量を、比較的小さくできる。このため、ロック機構6のロック状態において、意図しない力(作業者の操作力以外の力)が雄ねじ部材61に作用して雄ねじ部材61が回転したとしても、移動部材62が移動する距離は小さい。このため、上記意図しない力によりロック機構6のロックが解除されることを抑制できる。
【0069】
ロック部621は、ナット部620の電動モータ60から遠い側の端部(以下、非モータ側端部又は先端部と称する。)に設けられている。ロック部621は、ナット部620の非モータ側端部から、電動モータ60から離れる方向に延在している。
【0070】
ロック部621は、ロック機構6のロック状態において、ケース4における仕切り部412に設けられた貫通孔413に挿通される。この状態で、ロック部621の電動モータ60から遠い側の端部(以下、ロック部621の先端部と称する。)は、ケース4に設けられた第一収容部41に配置される。
【0071】
又、この状態で、ロック部621の先端部は、進退部材53に設けられたガイド凸部(
不図示)の移動経路に位置する。この結果、ガイド凸部(不図示)はロック部621と対向するため、進退部材53が回転移動した際にガイド凸部とロック部621とが係合することにより、進退部材53の回転移動を規制し、進退移動(具体的には、前進)が規制される。
【0072】
尚、本実施形態では、伝達部材の一例として、ねじ部材である雄ねじ部材61を採用している。但し、伝達部材は、例えば、伝達側歯部を有する歯車(不図示)であってもよい。この場合、移動部材は、当該歯車に設けられた伝達側歯部と噛合する移動側歯部を有するように構成される。
【0073】
手動操作機構7は、作業者が手動操作機構7に設けられた手動操作部702を手動操作することにより、上述のロック機構6に設けられた移動部材62をロック位置とアンロック位置との間で移動させるための機構である。
【0074】
上述のように、通常時、ロック機構6は、電動モータ60の動力に基づいて作動する。しかしながら、例えば、電動モータ60に電力を供給する電力供給系統の不具合等により、ロック機構6が作動できない状況がある。このような状況では、電動モータ60の動力に基づいてロック機構6の状態を切り換えることができないため、フューエルリッド120を開けなくなる可能性がある。
【0075】
そこで、本実施形態の場合、作業者の手動操作に基づいて、フューエルリッド120を開くことができる手動操作機構7が設けられている。
【0076】
具体的には、手動操作機構7は、手動操作部材70を有する。手動操作部材70は、円盤状であって、外周面に手動操作部材70の周方向に交互に連続した凹凸部を有する。本実施形態の場合、手動操作部材70は、雄ねじ部材61と一体に形成されている。
【0077】
具体的には、手動操作部材70は、雄ねじ部材61のモータ側端部に、雄ねじ部材61と一体に形成されている。つまり、手動操作部材70は、電動モータ60に設けられた出力軸601の軸方向において、出力軸601上に設けられた雄ねじ部材61と電動モータ60に設けられたモータ本体600との間に配置されている。
【0078】
手動操作部材70は、雄ねじ部材61とともに、移動部材収容部421に収容されている。又、手動操作部材70は、中心孔701を有する。手動操作部材70は、中心孔701に電動モータ60の出力軸601が挿通された状態で、出力軸601に固定されている。
【0079】
手動操作部材70の外周面の一部は、ケース4に設けられた手動操作窓425から外部に露出している。手動操作部材70の外周面のうち手動操作窓425から外部に露出した部分は、手動操作部702を構成している。手動操作部702は、作業者により操作される部分である。
【0080】
尚、本実施形態では、手動操作部材70が、伝達部材である雄ねじ部材61と一体に形成された構成を採用している。但し、手動操作部材は、伝達部材とは別の部材により構成されてもよい。この場合も、手動操作部材は、駆動部の出力軸に固定される。
【0081】
又、手動操作部材の構成は、手動操作部材70に限定されない。手動操作部材の構成は、作業者の手動操作に基づいて、電動モータ60に設けられた出力軸601を回転させることができればよく、本実施例の円盤状に代わって例えば舵輪状であったり、レバーのように延伸状の形態であったりと種々の構成であってよい。
【0082】
次に、図3を参照して、フューエルリッド120(図1参照)を閉じる際の進退移動装置1の動作について説明する。図3は、フューエルリッド120が開かれている状態(フューエルリッド120の開状態ともいう。)に対応する、進退移動装置1の状態を示す断面図である。図3に示す、進退移動装置1の状態は、進退移動装置1の第一状態である。
【0083】
図3に示す状態で、進退部材53は、付勢ばね52の付勢力によって、前進位置に配置されている。
【0084】
図3に示す状態でフューエルリッド120が押し込まれると、進退部材53が、付勢ばね52の付勢力に抗して、所定方向に回転しつつ後退方向(Z軸の負の方向)に移動する。進退部材53の回転は、進退部材53に設けられたガイド凸部(不図示)がケース4に設けられたガイド溝(不図示)によりガイドされる。
【0085】
更に、フューエルリッド120が押し込まれると、進退部材53に設けられたリッド係止部533が軸回りに回転しながら進退部材53が後退位置に到達する。進退部材53が後退位置に到達した状態で、進退部材53に設けられたリッド係止部533は、フューエルリッド120に設けられたリッド被係止部140に係合し、フューエルリッド120は、閉状態となる。
【0086】
又、進退部材53が後退位置に到達したとき、ロック機構6によるロックが可能となる。進退部材53が後退位置に位置した状態では、ロック機構6はアンロック状態である。よって、ロック機構6の移動部材62は、アンロック位置に位置している。
【0087】
この状態で、電動モータ60が作動すると、電動モータ60に設けられた出力軸601とともに雄ねじ部材61が回転する。そして、雄ねじ部材61の回転に基づいて、移動部材62がアンロック位置からロック位置に向かって移動する。
【0088】
移動部材62がロック位置に到達すると、移動部材62に設けられたロック部621が、進退部材53に設けられたガイド凸部(不図示)の移動経路に位置するため、ガイドと凸部と係合する。この結果、ロック機構6により、進退部材53の進退移動(具体的には、前進)が規制される。尚、進退部材53の移動を規制するために、ロック部621が係合する部材は、進退部材53に設けられたガイド凸部に限らない。ロック部621は、ガイド凸部以外の、進退部材53に設けられた部材と係合して、進退部材53の進退移動を規制してもよい。
【0089】
尚、フューエルリッド120が開かれるときの進退移動装置1の動作については、上述したフューエルリッド120が閉じられるときの進退移動装置1の動作とほぼ反対の動作である。なお、フューエルリッド120が開かれるとき進退部材53は、付勢ばね52が付勢することによって、所定方向に回転しつつ前進方向(Z軸の正の方向)に移動する。
【0090】
次に、作業者が、手動操作機構7を手動操作することにより、ロック機構6のロック状態を解除する際の、手動操作機構7及びロック機構6の動作について説明する。
【0091】
上述のように、ロック機構6のロック状態において、移動部材62に設けられたロック部621は、進退部材53に設けられたガイド凸部(不図示)と係合している。この状態で、ロック部621により、進退部材53の進退移動(具体的には、前進)が規制される。
【0092】
ロック機構6のロック状態において、作業者は、手動操作部702を操作する。具体的には、作業者は、手動操作部702を第一方向(以下、アンロック回転方向と称する。)に回転させる。すると、手動操作部材70がアンロック回転方向に回転する。
【0093】
次に、手動操作部材70は、電動モータ60に設けられた出力軸601に固定されているため、手動操作部材70とともに出力軸601がアンロック回転方向に回転する。出力軸601が回転すると雄ねじ部材61が、出力軸601とともにアンロック回転方向に回転する。
【0094】
又、雄ねじ部材61が回転すると、移動部材62がアンロック直進方向(Y軸の負の方向)に移動する。そして、移動部材62に設けられたロック部621は、進退部材53に設けられたガイド凸部(不図示)と係合して進退部材53の回転移動を規制する位置から、進退部材53の回転移動が可能な係合解除位置へと移動し、ロック機構6はアンロック状態となる。
【0095】
ロック機構6がアンロック状態になると、進退部材53は、進退移動可能(具体的には、前進可能)な状態となる。
【0096】
尚、ロック機構6のアンロック状態において、作業者が、手動操作部702を第二方向(以下、ロック回転方向と称する。)に回転させることにより、ロック機構6の状態を、アンロック状態からロック状態に遷移させることもできる。
【0097】
以上のように、作業者は、手動操作部702を操作することにより、移動部材62をロック位置とアンロック位置との間で移動させることができる。その結果、作業者は、手動操作部702を操作することにより、ロック機構6の状態を、アンロック状態とロック状態との間で遷移させることができる。
【0098】
[作用・効果]
以上のような構成を有する本実施形態によれば、手動操作によるロック機構6のロック解除を安定して行うことができる。
【0099】
以下、この理由について説明する。本実施形態の場合、手動操作部材70及び雄ねじ部材61が、電動モータ60に設けられた出力軸601に固定されている。そして、作業者の手動操作により手動操作部材70が回転すると、上述のようにロック機構6のロック解除が行われる。
【0100】
この際、手動操作部材70及び雄ねじ部材61は、出力軸601を中心に回転するため、雄ねじ部材61の回転中心が傾斜することを抑制できる。特に、本実施形態の場合、手動操作部材70と雄ねじ部材61とが一体に形成されている。このような構成によれば、作業者が手動操作部材70を手動操作した際、雄ねじ部材61の回転中心が傾斜することを、より効果的に抑制できる。
【0101】
この結果、雄ねじ部材61に設けられた雄ねじ部610と移動部材62に設けられた雌ねじ部620aとの螺合状態が安定するため、ロック機構6のロック解除を、小さい操作力により安定して行うことができる。又、本実施形態では、手動操作部材70は、電動モータ60に設けられた出力軸601の軸方向において、出力軸601上に設けられた雄ねじ部材61と電動モータ60に設けられたモータ本体600との間に配置されているため、ロック機構6のロック解除を、小さい操作力により安定して行うことができる。尚、手動操作部材として円盤状の手動操作部材70を採用しているため、手動操作部材70のうちケース4の手動操作窓425から露出している範囲を複数回操作することでロック機構6をロック解除する構造とすることができる。したがって、手動操作部材70に誤って手等が触れて手動操作部材70の外周面のうち手動操作窓425から外部に露出した部分(手動操作部702)が回転したとしても、雄ねじ部材61の回転する量は少ないため、移動部材62の移動量を比較的小さくでき、意図しないロック解除を防ぐことができる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明した。尚、以上の説明は本発明の好適な実施形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る進退移動装置は、種々のリッドの開閉装置に適用できる。
【符号の説明】
【0104】
1 進退移動装置
2 車体
2a 給油開口部
4 ケース
41 第一収容部
410 周壁部
411 ケース側蓋部
412 仕切り部
413 貫通孔
42 第二収容部
421 移動部材収容部
422 モータ収容部
423 仕切り部
424 貫通孔
425 手動操作窓
5 進退機構
52 付勢ばね
53 進退部材
533 リッド係止部
6 ロック機構
60 電動モータ
600 モータ本体
601 出力軸
61 雄ねじ部材
610 雄ねじ部
62 移動部材
620 ナット部
620a 雌ねじ部
621 ロック部
7 手動操作機構
70 手動操作部材
701 中心孔
702 手動操作部
100 開閉装置
110 本体部
120 フューエルリッド
130 ヒンジ
140 リッド被係止部
160 スクリューキャップ
図1
図2
図3
図4