(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003283
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/46 20060101AFI20240105BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240105BHJP
【FI】
F16H1/46
F16H57/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102305
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西浦 謙佑
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA22
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD03
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD08
3J027GD12
3J027GD14
3J027GE01
3J027GE11
3J027GE14
3J027GE21
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA11
3J063CB03
3J063CB04
3J063CB05
3J063CB06
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD38
3J063XD43
3J063XD46
3J063XD62
3J063XD72
3J063XD73
(57)【要約】
【課題】高効率に稼働することができる変速機を提供する。
【解決手段】ハウジングと、ハウジングに収容される遊星歯車機構とを備える変速機であって、遊星歯車機構は、太陽歯車と、太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、遊星歯車を支持しており、変速機の軸方向に延在する遊星ピンと、遊星ピンを支持しており、太陽歯車と同軸に回転するように構成される遊星キャリアと、を含む。遊星キャリアは、径方向に延在し、遊星ピンを支持する径方向延在部と、径方向延在部から軸方向に延在する軸方向延在部であって、遊星歯車と周方向に並ぶように配置される軸方向延在部と、軸方向延在部から径方向の内側に延在し、遊星歯車の少なくとも一部を間にして径方向延在部と軸方向に並ぶように配置される第1空間充填部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに収容される遊星歯車機構とを備える変速機であって、
前記遊星歯車機構は、
太陽歯車と、
前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、
前記遊星歯車を支持しており、前記変速機の軸方向に延在する遊星ピンと、
前記遊星ピンを支持しており、前記太陽歯車と同軸に回転するように構成される遊星キャリアと、を含み、
前記遊星キャリアは、
径方向に延在し、前記遊星ピンを支持する径方向延在部と、
前記径方向延在部から前記軸方向に延在する軸方向延在部であって、前記遊星歯車と周方向に並ぶように配置される軸方向延在部と、
前記軸方向延在部から前記径方向の内側に延在し、前記遊星歯車の少なくとも一部を間にして前記径方向延在部と前記軸方向に並ぶように配置される第1空間充填部とを有する、
変速機。
【請求項2】
前記第1空間充填部は、第1ラティス構造、または、外殻によって空間が囲まれた第1中空構造を有する、
請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記第1空間充填部は、前記径方向に開放された流路である第1油流路を有する、
請求項1または2に記載の変速機。
【請求項4】
前記第1空間充填部は、第1ラティス構造を有し、
前記第1油流路は、前記第1ラティス構造を前記径方向に貫通するように配置される、
請求項3に記載の変速機。
【請求項5】
前記軸方向延在部は、
前記軸方向に延在する延在本体部と、
前記延在本体部を前記径方向に貫通するように配置され、前記第1油流路と連通する延在部油流路と、
を有する、
請求項3に記載の変速機。
【請求項6】
前記遊星キャリアは、前記第1空間充填部の前記径方向における内側端部に接続され、前記太陽歯車と前記軸方向に隙間をあけて対向する第2空間充填部をさらに有する、
請求項1に記載の変速機。
【請求項7】
前記第2空間充填部は、第2ラティス構造、または、外殻によって空間が囲まれた第2中空構造を有する、
請求項6に記載の変速機。
【請求項8】
前記第2空間充填部は、前記径方向に開放された流路である第2油流路を有する、
請求項6または7に記載の変速機。
【請求項9】
前記第2空間充填部は、第2ラティス構造を有し、
前記第2油流路は、前記第2ラティス構造を前記径方向に貫通するように配置される、
請求項8に記載の変速機。
【請求項10】
前記遊星歯車は、
前記太陽歯車と噛み合う大径歯車と、
前記大径歯車よりも小さい小径歯車と、
を有する2段歯車であり、
前記軸方向延在部は、前記大径歯車と前記周方向に並ぶように配置される第1延在部を有し、
前記第1延在部は、前記径方向において、前記小径歯車よりも外側に位置する第3空間充填部を有する、
請求項1に記載の変速機。
【請求項11】
前記第3空間充填部は、第3ラティス構造、または、外殻によって空間が囲まれた第3中空構造を有する、
請求項10に記載の変速機。
【請求項12】
前記ハウジングは、
前記遊星歯車機構の収容空間と外側空間とを隔てる隔壁と、
前記隔壁の内部に形成され、潤滑油を前記収容空間に導くためのハウジング油流路と、
を含み、
前記隔壁は、前記遊星キャリアの前記径方向延在部に前記軸方向において対向する対向壁を有し、
前記ハウジング油流路は、前記対向壁の内部に形成された第1ハウジング油流路であって、前記収容空間と連通する開口である第1出口を有する第1ハウジング油流路を有し、
前記遊星ピンは、前記軸方向に開放された孔であるピン軸方向油流路を有し、
軸方向視において、前記変速機の回転中心と前記第1出口との間の最小の径方向距離である第1距離は、前記回転中心と前記遊星ピンとの間の最小の径方向距離である第2距離以上、且つ、前記回転中心と前記遊星ピンとの間の最大の径方向距離である第3距離以下である、
請求項1に記載の変速機。
【請求項13】
前記遊星歯車は、
前記軸方向に延在する遊星円筒部と、
前記遊星円筒部を前記径方向に貫通するように配置される遊星歯車油流路と、
を有し、
前記遊星ピンは、前記径方向に開放される孔であるピン径方向油流路であって、前記ピン軸方向油流路と連通するピン径方向油流路を有する、
請求項12に記載の変速機。
【請求項14】
前記太陽歯車に連結される一端部と、前記ハウジングの外側空間に配置される他端部とを有し、前記軸方向に延在する動力伝達軸をさらに備え、
前記遊星キャリアの前記径方向延在部は、前記一端部と前記他端部の間において、前記ハウジングに軸受を介して連結される円筒状の遊星軸受連結部を有し、
前記遊星軸受連結部は、潤滑油が前記軸方向に流れるための孔である遊星軸受部油流路を有し、
前記ハウジングは、
前記遊星歯車機構の収容空間と前記外側空間とを隔てる隔壁と、
前記隔壁の内部に形成され、前記潤滑油を導くためのハウジング油流路と、
を含み、
前記隔壁は、前記遊星キャリアの前記径方向延在部に前記軸方向において対向する対向壁を有し、
前記ハウジング油流路は、前記対向壁の内部に形成された第2ハウジング油流路であって、前記収容空間と連通する開口である第2出口を有する第2ハウジング油流路を含み、
軸方向視において、前記第2出口の少なくとも一部は前記遊星軸受連結部と重なる、
請求項1に記載の変速機。
【請求項15】
前記太陽歯車は、
太陽本体部と、
前記太陽本体部の外周面に規定ピッチで配置される複数の歯と、
前記複数の歯よりも前記径方向の内側において前記太陽本体部の外表面に形成された窪みである油侵入部と、
を有し、
前記油侵入部は、前記遊星軸受部油流路よりも前記径方向において内側に位置する、
請求項14に記載の変速機。
【請求項16】
前記油侵入部は、前記周方向に延在すると共に、内側空間を前記径方向の外側から覆う内周面を有し、
前記太陽歯車は、
前記内周面において開口する内開口と、前記太陽本体部の前記外周面において開口する油流出口とを有する太陽歯車油流路と、をさらに有する、
請求項15に記載の変速機。
【請求項17】
前記油流出口は、隣接するいずれか2つの前記歯の間において開口する第1油流出口を有し、
前記太陽歯車油流路は、前記内開口と前記第1油流出口とを有する第1太陽歯車油流路を有する、
請求項16に記載の変速機。
【請求項18】
前記油流出口は、いずれかの前記歯の歯先において開口する第2油流出口を有し、
前記太陽歯車油流路は、前記内開口と前記第2油流出口とを有する第2太陽歯車油流路を有する、
請求項16に記載の変速機。
【請求項19】
前記太陽歯車は、前記複数の歯のそれぞれの外周面、及び、前記太陽本体部の前記外周面を有する表層部であって、前記太陽歯車の前記周方向の全長に亘って形成される表層部を含み、
前記油流出口は、前記周方向に間隔を空けて設けられた第1油流出口、および、第2油流出口を有し、
前記表層部は、
前記第1油流出口を含む第1中空部と、
前記第2油流出口を含む第2中空部と、
前記第1中空部から前記第2中空部までに亘って中実に形成された中実部と、
を有する、
請求項16乃至18の何れか1項に記載の変速機。
【請求項20】
前記太陽本体部は、前記表層部と前記太陽本体部との間に配置される太陽基部を有し、
前記太陽基部は、ラティス構造を有する、
請求項19に記載の変速機。
【請求項21】
前記軸方向に延在するとともに前記太陽歯車に連結される軸部、及び、前記ハウジングの外側空間に配置される外部機器のロータに連結される継手部を含む動力伝達軸をさらに備え、
前記軸部と前記継手部とはAM造形によって一体的に形成されている、
請求項1に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遊星歯車機構を備える変速機が知られている。例えば、特許文献1に開示される遊星歯車機構においては、太陽歯車と遊星歯車とに潤滑油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の遊星歯車機構がハウジングに収容される構成においては、潤滑油がハウジングの内部に溜まる。太陽歯車または遊星歯車の少なくとも一方が溜まった潤滑油を掻き上げると、潤滑油からの抵抗が発生するため攪拌損失が生じる。この攪拌損失が大きい程、変速機の稼働効率は低下する。
【0005】
本開示の目的は、高効率に稼働することができる変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る変速機は、
ハウジングと、前記ハウジングに収容される遊星歯車機構とを備える変速機であって、
前記遊星歯車機構は、
太陽歯車と、
前記太陽歯車と噛み合う遊星歯車と、
前記遊星歯車を支持しており、前記変速機の軸方向に延在する遊星ピンと、
前記遊星ピンを支持しており、前記太陽歯車と同軸に回転するように構成される遊星キャリアと、を含み、
前記遊星キャリアは、
径方向に延在し、前記遊星ピンを支持する径方向延在部と、
前記径方向延在部から前記軸方向に延在する軸方向延在部であって、前記遊星歯車と周方向に並ぶように配置される軸方向延在部と、
前記軸方向延在部から前記径方向の内側に延在し、前記遊星歯車の少なくとも一部を間にして前記径方向延在部と前記軸方向に並ぶように配置される第1空間充填部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高効率に稼働することができる変速機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る変速機の断面を示す概略図である。
【
図2】一実施形態に係る遊星キャリアを示す概略図である。
【
図3】構成部品を一部省略した遊星キャリアを示す概略図である。
【
図4】軸方向視における太陽歯車、遊星歯車、及び遊星キャリアを示す概略図である。
【
図5A】一実施形態に係る第1空間充填部および第2空間充填部を示す概略図である。
【
図5B】他の実施形態に係る第1空間充填部および第2空間充填部を示す概略図である。
【
図6A】一実施形態に係る第3空間充填部を示す概略図である。
【
図6B】他の実施形態に係る第3空間充填部を示す概略図である。
【
図7】一実施形態に係る変速機の潤滑油の供給路を示す概略図である。
【
図8】第1出口、第2出口、および、遊星軸受連結部、および遊星ピンの軸方向視における位置関係を示す概略図である。
【
図9】一実施形態に係る太陽歯車および遊星歯車を拡大した概略図である。
【
図10】一実施形態に係る太陽歯車の断面を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0010】
<1.変速機10の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る変速機10の断面を示す概略図である。同図で例示される変速機10は、第1動力伝達軸11、第1動力伝達軸11と同軸に配置される第2動力伝達軸12、および、第1動力伝達軸11と第2動力伝達軸12を回転可能に支持するハウジング5を備える。第1動力伝達軸11は、ハウジング5の内側空間である収容空間S1に配置される一端部11A、および、ハウジング5の外側空間S2に配置される他端部11Bを有しており、他端部11Bが継手8を介して外部機器6のロータ7に連結されている。本例の変速機10は、第1動力伝達軸11に入力される回転を減速して第2動力伝達軸12に出力するように構成された減速機である。ロータ7を含む外部機器6は、ハウジング5の外側空間S2に配置される。この外部機器6は、車両、船舶、または、航空機といった乗り物の動力源であってもよく、より具体的にはモータまたは内燃機関などであってもよい。
【0011】
ハウジング5の収容空間S1には、潤滑油の液溜まりが形成されている(図示外)。潤滑油は、ギア、軸、または軸受などであってもよい可動部品の動きをスムーズにする機能と、可動部品を冷却する機能とを有する。本実施形態に係る潤滑油は、外側空間S2に配置される動力源(図示外)によってハウジング5の収容空間S1に供給される。収容空間S1までの潤滑油の供給系統の詳細は後述する。
【0012】
変速機10の方向を定義する。変速機10の軸方向とは、変速機10の中心軸線Pが延在する方向である。上述の第1動力伝達軸11と第2動力伝達軸12は中心軸線Pと同軸である。また、変速機10の径方向と周方向はいずれも、上記の中心軸線Pを基準とした方向である。以下の説明では、変速機10の軸方向、径方向、および周方向をそれぞれ単に、軸方向、径方向、および、周方向と呼ぶ場合がある。なお、
図1の例に係る軸方向は水平方向に平行である。
【0013】
<2.遊星歯車機構100の概略的な構成>
図1に示すように、変速機10は、ハウジング5に収容される遊星歯車機構100をさらに備える。遊星歯車機構100は、第1動力伝達軸11と一体的に回転するように構成される太陽歯車20、太陽歯車20よりも径方向外側に配置される内歯車60、および、太陽歯車20と内歯車60とに噛み合う複数の遊星歯車30を備える。太陽歯車20は第1動力伝達軸11の一端部11Aに固定されており、複数の遊星歯車30は周方向に並ぶように配置される。各々の遊星歯車30は軸方向に延在する遊星円筒部33を有しており、遊星円筒部33の外周面には複数の歯が規定ピッチで配置されている。本実施形態では一例として、遊星歯車30は2段歯車であり、遊星円筒部33は小径部と大径部とを有する。そして、内歯車60は2段歯車の各々に噛み合うように構成されている。2段歯車構造の詳細は後述する。
【0014】
遊星歯車機構100は、複数の遊星歯車30をそれぞれ支持する複数の遊星ピン50、および、複数の遊星ピン50を支持する遊星キャリア40を備える。軸方向に延在する各遊星ピン50は各遊星歯車30の自転中心として機能する。より具体的な一例として、遊星ピン50の一端は遊星キャリア40に固定されてもよく、この場合、遊星ピン50は遊星歯車30に軸受を介して連結される。他の例として、遊星ピン50の一端は遊星キャリア40に軸受を介して連結されてもよく、この場合、遊星ピン50は遊星歯車30に固定される。自転する遊星歯車30は、内歯車60(より具体的には後述の固定内歯車61)に沿って転動可能である。また、遊星キャリア40は、太陽歯車20と同軸に回転するように構成されている(詳細な構造例は後述する)。これにより遊星歯車30は、遊星キャリア40の回転に伴って、中心軸線Pを中心に公転することができる。
【0015】
図2は本開示の一実施形態に係る遊星キャリア40を示す概略図であり、
図3は構成部品を一部省略した遊星キャリア40の斜視図である。本例の遊星キャリア40は、径方向に延在する径方向延在部47と、複数の遊星歯車30を挟んで径方向延在部47とは反対側に位置する他端支持部49と、径方向延在部47から他端支持部49まで軸方向に延在する複数の軸方向延在部45とを備える。遊星ピン50の一端は径方向延在部47によって支持され、他端は、径方向に延在する他端支持部49によって支持される。複数の軸方向延在部45は、複数の遊星歯車30と周方向に交互に並ぶように配置される。つまり、1つの軸方向延在部45は、複数の遊星歯車30のいずれか2つと周方向に並ぶように配置されている。
【0016】
図3に示すように、遊星キャリア40は、複数の軸方向延在部45からそれぞれ径方向の内側に延在する複数の第1空間充填部41をさらに有する。各第1空間充填部41は、複数の遊星歯車30のいずれかの少なくとも一部を間にして、径方向延在部47と軸方向に並ぶ。より具体的な一例として、各第1空間充填部41は、2つの遊星歯車30のそれぞれの一部を間にして(
図4参照)、径方向延在部47と軸方向に並ぶ。第1空間充填部41は、ハウジング5の収容空間S1(
図1参照)のうちで、軸方向延在部45よりも径方向内側の空間を充填するように配置されている。第1空間充填部41の具体的構造については後述する。
【0017】
上記構成によれば、ハウジング5内における潤滑油の液溜まりができる空間が、第1空間充填部41によって狭められるので、ハウジング5における潤滑油の収容量を低減できる。よって、太陽歯車20および複数の遊星歯車30を含む可動部品が潤滑油の液溜まりを掻き上げることに伴って生じる攪拌損失が低減され、変速機10は高効率に稼働できる。
【0018】
図1、
図3に示すように、遊星キャリア40は、各第1空間充填部41の径方向における内側端部に接続される第2空間充填部42をさらに備える。第2空間充填部42は太陽歯車20および他端支持部49の間に位置している。第2空間充填部42は他端支持部49と隙間を空けて軸方向に対向してもよいし、他端支持部49に接続されていてもよい。また、第2空間充填部42は、太陽歯車20と隙間をあけて軸方向に対向する。本例の第2空間充填部42は、軸方向視において、太陽歯車20の半分以上と重なる。より詳細には軸方向視において、第2空間充填部42は太陽歯車20よりも大きく、太陽歯車20の全部位は第2空間充填部42の外形線の内側に配置される。第2空間充填部42の具体的構造については後述する。
【0019】
上記構成によれば、第2空間充填部42がハウジング5内における潤滑油の液溜まりができる空間をさらに狭めることができる。よって、ハウジング5内における攪拌損失を低減でき、変速機10は高効率に稼働できる。
【0020】
<3.遊星歯車機構100のより詳細な構成の例示>
図1、
図3、
図4を参照し、遊星歯車機構100の詳細な構成を例示する。
図4は、軸方向視における太陽歯車20、遊星歯車30、及び遊星キャリア40を示す概略図である。本例の遊星歯車30は、大径歯車31と、大径歯車31よりも小さい小径歯車32とを有する2段歯車である。大径歯車31は太陽歯車20と噛み合っており、小径歯車32は大径歯車31と同軸に配置されている。内歯車60は、ハウジング5に固定された固定内歯車61と、固定内歯車61とは別体に構成された可動内歯車62とを備える。固定内歯車61は各遊星歯車30の大径歯車31と噛み合っており、可動内歯車62は各遊星歯車30の小径歯車32と噛み合っている。可動内歯車62は、ハウジング5によって回転可能に支持される回転体68に形成されている。回転体68は軸受を介してハウジング5に連結しており(
図1参照)、この回転体68に上述の第2動力伝達軸12は固定されている。つまり第2動力伝達軸12は、回転体68を介してハウジング5に回転可能に支持されている。
【0021】
図3で示される遊星キャリア40の各軸方向延在部45は、延在本体部451を有しており、各延在本体部451は段付き形状を呈する。より具体的には、延在本体部451は、大径歯車31と周方向に並ぶように配置される第1延在部141と、小径歯車32と周方向に並ぶように配置される第2延在部142とを有する。第1延在部141の外周面よりも径方向内側に第2延在部142の外周面は配置されており、第1延在部141の外周面と第2延在部142の外周面はいずれも周方向に沿って延在する。なお、上述の第2空間充填部42は、第2延在部142の径方向における内側端部に接続されている。また、上述の第1空間充填部41は、2つの遊星歯車30の各々の大径歯車31の一部を間にして、径方向延在部47と軸方向に並ぶ(
図4参照)。
【0022】
図4で示すように、軸方向視において、中心軸線Pから大径歯車31の歯先までの最大径方向距離(寸法L1)は、中心軸線Pから第1延在部141の外周面までの径方向距離(寸法M1)と実質的に同一である。これにより、固定内歯車61は、第1延在部141と干渉することなく大径歯車31と噛み合うことができる。同様に軸方向視において、中心軸線Pから小径歯車32の歯先までの最大径方向距離(寸法L2)は、中心軸線Pから第2延在部142の外周面までの径方向距離(寸法M2)と実質的に同一である。これにより、可動内歯車62は、第2延在部142と干渉することなく小径歯車32と噛み合うことができる。また本実施形態では、軸方向視において、第1延在部141の周方向の両端よりも内側に、第2延在部142の周方向の両端は配置される。
【0023】
第1延在部141のうちで、第2延在部142よりも径方向の外側に位置する部位は、第3空間充填部43である。第3空間充填部43は、径方向において小径歯車32よりも外側に位置する。第3空間充填部43の具体的構造については後述する。
【0024】
上記構成によれば、ハウジング5内における潤滑油の液溜まりができる空間は、第2延在部142よりも径方向の外側に位置する第3空間充填部43によって狭められる。よって、ハウジング5内における攪拌損失を低減でき、変速機10は高効率に稼働できる。
【0025】
図1で例示される本実施形態においては、第1動力伝達軸11の回転と共に太陽歯車20が回転すると、各遊星歯車30は固定内歯車61に沿って転動する。即ち、太陽歯車20の回転に従動する遊星歯車30は、中心軸線Pを中心に公転しながら、遊星ピン50を中心に自転する。遊星歯車30の公転によって遊星キャリア40は中心軸線Pを中心に回転する。また、遊星歯車30の自転によって可動内歯車62は回転し、回転体68と一体的に回転する第2動力伝達軸12から、減速された回転が出力される。2段歯車構造が採用される本実施形態では、大径歯車31および小径歯車32のそれぞれの歯数の調整が可能となる。従って、変速機10の変速比(本実施形態では減速比)の設計の自由度が、1段歯車構造が採用される場合に比べて向上し、結果として本例の変速機10は大きな減速比を実現できる。
【0026】
<4.空間充填部の具体的構造>
図5A~
図6Bを参照し、第1空間充填部41、第2空間充填部42、および、第3空間充填部43(以下、これらを総称して空間充填部という場合がある)の具体的構成を説明する。
図5A、
図6Aは一実施形態に係る空間充填部を示す概略図であり、
図5B、
図6Bは他の実施形態に係る空間充填部を示す概略図である。第1空間充填部41、第2空間充填部42、第3空間充填部43はいずれも、AM造形(AM;Aditive Manufacturing)によって作成される。AM造形が採用されることによって、空間充填部の自在な形状が実現される。
【0027】
<4-1.一実施形態に係る空間充填部>
図5Aで示すように、第1空間充填部41A(41)は、第1ラティス構造411、第1ラティス構造411を覆う外殻415、および、径方向に開放された流路である第1油流路417を有する。第1ラティス構造411は、種々の方向に沿って直線状に延在する複数の柱が間隔を空けて並べられることで形成される。外殻415は径方向に延在する筒状に形成される。第1油流路417は、第1ラティス構造411と外殻415とを径方向に貫通するように配置されている。さらに本実施形態では第1油流路417よりも径方向外側にある軸方向延在部45(より詳細には第2延在部142)は、延在本体部451を径方向に貫通するように配置される延在部油流路457を有する。
図5Aの例では、延在本体部451のうち延在部油流路457以外の部位は全て中実である。
【0028】
第2空間充填部42A(42)は、第2ラティス構造421、第2ラティス構造421を覆う外殻425、および、径方向に開放された流路である第2油流路427を有する。第2ラティス構造421は第1ラティス構造411と同様の構造を有する。外殻425は軸方向に延在する筒状であり、第1空間充填部41(より詳細な一例として外殻415)と接触するように配置されている。第2油流路427は、第2ラティス構造421と外殻425を径方向に貫通しており、第1油流路417と連通する。
【0029】
本構成が採用されることにより、変速機10が稼働する場合に、第2空間充填部42Aの第2油流路427にある潤滑油は、遊星キャリア40の回転に伴って生じる遠心力によって径方向外側に流れる。従って、潤滑油は、第2油流路427、第1油流路417、および、延在部油流路457を順に流れて、ハウジング5を構成する隔壁70(
図1参照)に到達することができる。
【0030】
上記構成によれば、第1ラティス構造411と第2ラティス構造421が採用されることで、第1空間充填部41Aと第2空間充填部42Aを軽量化することができ、遊星キャリア40の回転に必要な力を低減することができる。よって、変速機10は効率的に稼働できる。また、変速機10の稼働時、第1油流路417にある潤滑油と第2油流路427にある潤滑油は、遠心力の作用により径方向外側に流れることができる。これにより、潤滑油が変速機10の中心軸線P側に留まることが抑制され、潤滑油の流れを促進できる。例えば変速機10が、潤滑油の供給に応じてハウジング5から潤滑油を排出するように構成される場合、ハウジング5の内部に潤滑油が貯まり過ぎるのを抑制できる。また、第1油流路417を径方向外側に流れる潤滑油は、延在部油流路457を経由してハウジング5を構成する隔壁70に到達することができるので、潤滑油の流れをさらに促進できる。さらに、第1ラティス構造411と第2ラティス構造421が採用されることで、第1空間充填部41Aと第2空間充填部42Aの各々の強度を確保することができる。従って、第1空間充填部41Aと第2空間充填部42Aが潤滑油の液溜まりを掻き上げる場合であっても、第1空間充填部41Aと第2空間充填部42Aの各々における変形および破損を抑制することができる。
【0031】
なお、上記実施形態において、第1空間充填部41Aは外殻415を有さなくてもよいし、第2空間充填部42Aは外殻425を有さなくてもよい。この場合、第1ラティス構造411と第2ラティス構造421が互いに接触してもよい。また、遊星キャリア40は、第2空間充填部42Aを備えなくてもよく、さらに延在部油流路457は設けられなくてもよい。この場合であっても、第1油流路417の内側にある潤滑油は、遊星キャリア40の回転に伴って径方向外側に流れることができ、ハウジング5の隔壁70に到達することができる。
【0032】
図6Aで示すように、第3空間充填部43A(43)は、第3ラティス構造431、および、第3ラティス構造431を覆う外殻435を有する。第3ラティス構造431は、第1ラティス構造411と同様の構造を有する。一実施形態では、軸方向延在部45の延在本体部451が全てAM造形によって作成されてもよいし、延在本体部451のうちで第3空間充填部43のみがAM造形によって作成されてもよい。
【0033】
上記構成によれば、第3空間充填部43Aが第3ラティス構造431を有することで、第3空間充填部43Aの軽量化が実現され、遊星キャリア40の回転に必要な力を低減することができる。よって、変速機10は効率的に稼働できる。また、第3ラティス構造431が採用されることで、第3空間充填部43Aの強度を確保することができる。従って、第3空間充填部43Aが潤滑油の液溜まりを掻き上げる場合であっても、第3空間充填部43Aにおける変形および破損を抑制することができる。
【0034】
<4-2.他の実施形態に係る空間充填部>
図5B、
図6Bを参照し、他の実施形態に係る第1空間充填部41B(41)、第2空間充填部42B(42)、および、第3空間充填部43B(43)を説明する。
図5Bで示すように、第1空間充填部41Bは、外殻415と、外殻415によって空間C1が囲まれた第1中空構造412とを有する。同図の例に係る第1油流路417は、外殻415の径方向内側端部と、径方向外側端部とをそれぞれ貫通しており、外殻415の内側にある空間C1と連通している。同様に、第2空間充填部42Bは、外殻425と、外殻425によって空間C2が囲まれた第2中空構造422とを有する。同図の例に係る第2油流路427は、外殻425を径方向に貫通している。
図6Bで示すように、第3空間充填部43B(43)は、外殻435と、外殻435によって空間C3が囲まれた第3中空構造432とを有する。
【0035】
上記構成によれば、第1中空構造412、第2中空構造422、および第3中空構造432が採用されることで、第1空間充填部41、第2空間充填部42、および、第3空間充填部43を軽量化することができる。遊星キャリア40回転に必要な力を低減することができるので、変速機10は効率的に稼働できる。
【0036】
<5.潤滑油の供給路105の例示>
図7は、本開示の一実施形態に係る変速機10の潤滑油の供給路105を示す概略図である。ハウジング5は、収容空間S1と外側空間S2とを隔てる隔壁70と、隔壁70の内部に形成されたハウジング油流路110とを備える。本実施形態では、隔壁70がAM造形によって作成されることで、隔壁70の内部にハウジング油流路110を自在に形成することができる。
【0037】
ハウジング油流路110は、収容空間S1に潤滑油を導くための供給路105と、収容空間S1から潤滑油を排出するための排出路106とを有する。本例の供給路105は、外側空間S2において開口する供給口109と、収容空間S1において開口する複数の出口とを有する。供給口109には、潤滑油の供給管(図示外)の一端が接続されてもよい。供給口109に供給される潤滑油は複数の出口のいずれかに導かれる。本例の排出路106は供給路105よりも下方に位置しており、隔壁70の底部を鉛直方向に貫通するように配置される。本例のハウジング5は、供給路105における潤滑油の供給に応じて、排出路106から潤滑油を排出するように構成される。
【0038】
一例として筒状に形成されてもよい隔壁70は、遊星キャリア40の径方向延在部47に軸方向にて対向する対向壁77を有する。供給路105は、対向壁77の内部に形成される第1ハウジング油流路101を有する。鉛直方向および水平方向に対して傾斜するように延在してもよい第1ハウジング油流路101は、収容空間S1と連通する開口である第1出口91を有する。第1出口91は収容空間S1において開口する。また、遊星ピン50は、軸方向において開放された孔であるピン軸方向油流路52を有する。
【0039】
図8は、第1出口91、第2出口92、および、遊星軸受連結部44、および遊星ピン50の軸方向視における位置関係を示す概略図である。寸法E1は、変速機10の回転中心(即ち中心軸線P)と第1出口91との間の最小の径方向距離である第1距離を示す。寸法E2は、回転中心と遊星ピン50との間の最小の径方向距離である第2距離を示し、寸法E3は、回転中心と遊星ピン50との間の最大の径方向距離である第3距離を示す。第1距離は、第2距離以上、且つ、第3距離以下である。換言すると、第1出口91の少なくとも一部は、軸方向視において、変速機10の稼働に伴い遊星ピン50が描く軌跡Rに侵入するように配置されている。軌跡Rは遊星ピン50の移動する際に通過する領域(空間)であると理解される。
【0040】
上記構成によれば、第1距離が第2距離以上且つ第3距離以下であることで、第1ハウジング油流路101の第1出口91から流出する潤滑油を遊星ピン50に供給できる。潤滑油がピン軸方向油流路52を流れるため、遊星歯車30への潤滑油の供給が促進される。これにより、遊星歯車30はスムーズに動作できると共に、遊星歯車30の温度上昇を抑制できる。また、潤滑油を供給するための駆動源を追加することなく潤滑油を遊星ピン50に供給できるので、変速機10の構成を簡素化することができる。
【0041】
図7に戻り、遊星歯車30は、上述した遊星円筒部33と、遊星円筒部33を径方向に貫通するように配置される遊星歯車油流路37とを有する。本例では、複数の遊星歯車油流路37が周方向に間隔をあけて配置されている。遊星ピン50は径方向に開放されたピン径方向油流路54を有し、ピン軸方向油流路52はピン径方向油流路54と連通する。本実施形態では、ピン径方向油流路54と複数の遊星歯車油流路37は、互いに同じ軸方向位置に配置されており、ピン径方向油流路54と複数の遊星歯車油流路37との間には軸受B2が介在している。
【0042】
上記構成によれば、ピン軸方向油流路52を軸方向に流れる潤滑油は、ピン径方向油流路54を経由して遊星ピン50に到達することができる。これにより、潤滑油の流れをさらに促進できる。また、遊星歯車30がスムーズに回転できると共に、遊星歯車30の温度上昇を抑制できる。
【0043】
また本実施形態では、遊星キャリア40の径方向延在部47は遊星軸受連結部44を有する。例えば軸方向に延在する円筒状であってもよい遊星軸受連結部44は、第1動力伝達軸111の一端部12Aと他端部12Bとの間において(第1動力伝達軸111の構成の詳細は後述する)、ハウジング5に軸受B1を介して連結される。遊星軸受連結部44は、潤滑油が軸方向に流れるための孔である遊星軸受部油流路440を有する。また、供給路105は、対向壁77の内部に形成された第2ハウジング油流路102を有する。鉛直方向と水平方向に対して傾斜するように延在してもよい第2ハウジング油流路102は、収容空間S1と連通する開口である第2出口92を有する。第2出口92は収容空間S1において開口する。
【0044】
図8に示すように、第2出口92の少なくとも一部は、遊星軸受連結部44と重なるように配置されている。上記構成によれば、第2出口92の少なくとも一部が軸方向視において遊星軸受連結部44と重なるので、第2ハウジング油流路102の第2出口92から流出する潤滑油が遊星軸受連結部44に供給される。潤滑油は、遊星軸受部油流路440を経由して太陽歯車20に到達できる。これにより、太陽歯車20はスムーズに回転できると共に、太陽歯車20の温度上昇を抑制することができる。また、潤滑油を供給するための駆動源を追加することなく、太陽歯車20に潤滑油を供給することができるので、変速機10の構成を簡素化することができる。
【0045】
図9は、本開示の一実施形態に係る太陽歯車20および遊星歯車30を拡大した概略図である。
図10は、本開示の一実施形態に係る太陽歯車20の断面を示す概略図である。太陽歯車20は、太陽本体部22と、太陽本体部22の外周面に規定ピッチで周方向に沿って配置される複数の歯25と、複数の歯25よりも径方向の内側において太陽本体部22の外表面28に形成された窪みである油侵入部281とを有する。一例として、外表面28は太陽本体部22の軸方向の一端面であり、油侵入部281は、外表面28から軸方向に凹む。油侵入部281は、外表面28の周方向の全長に亘って形成される。油侵入部281は、遊星軸受部油流路440よりも径方向において内側に位置する。同図で例示される油侵入部281は潤滑油を一時的に貯留可能である。油侵入部281において貯留される潤滑油は、太陽歯車20の回転に伴って発生する遠心力によって、油侵入部281から径方向の外側に移動する。これにより、太陽歯車20の複数の歯25に潤滑油が供給される。
【0046】
上記構成によれば、潤滑油が油侵入部281に侵入して溜まることで、太陽歯車20の温度上昇を抑制できる。また、油侵入部281に溜まった潤滑油が太陽歯車20の回転に伴って径方向外側に移動するため、太陽歯車20の複数の歯25に十分な潤滑油を供給できる。
【0047】
図9に示されるように、油侵入部281は前記周方向に延在する内周面29を有し、内周面29は油侵入部281の内側空間を径方向外側から覆う。太陽歯車20は太陽歯車油流路290を有し、太陽歯車油流路290は、内周面29において開口する内開口260と、太陽本体部22の外周面において開口する油流出口270とを有する。
【0048】
上記構成によれば、太陽歯車20に供給される潤滑油が、太陽歯車20の回転に伴い太陽歯車油流路290を径方向外側に流れる。これにより、内開口260から油流出口270に向かって流れる潤滑油を、太陽歯車20の複数の歯25に供給できる。
【0049】
図10に示されるように、油流出口270は、周方向において隣接する2つの歯25の間において開口する第1油流出口271と、いずれかの歯25の歯先において開口する第2油流出口272とを有する。太陽歯車油流路290のうちで、油侵入部281の内開口260から第1油流出口271までの流路は第1太陽歯車油流路291であり、内開口260から第2油流出口272までの流路は第2太陽歯車油流路292である。第1太陽歯車油流路291は内開口260と第1油流出口271とを有し、第2太陽歯車油流路292は内開口260と第2油流出口272とを有する。太陽歯車油流路290は、第1太陽歯車油流路291と第2太陽歯車油流路292のいずれの構成要素ともなる共通流路295を有する。共通流路295の上流端は内開口260である。
【0050】
上記構成によれば、第1太陽歯車油流路291が設けられることで、潤滑油が2つの歯25の間に供給されるので、太陽歯車20の外周面に潤滑油を行き渡らせることができる。また、第2太陽歯車油流路292が設けられることで、潤滑油が太陽歯車20の歯先に供給されるので、太陽歯車20の外周面、特に歯先面に、潤滑油を行き渡らせることができる。
【0051】
太陽歯車20は、太陽歯車20の周方向の全長に亘って形成される表層部21を有する。表層部21は、複数の歯25のそれぞれの外周面(即ち、歯先面および歯面)、および、太陽本体部22の外周面を有する。なお、歯25の歯面は、遊星歯車30の歯に対して摺動する摺動面である。
【0052】
表層部21は、第1油流出口271を規定する部位と第2油流出口272を規定する部位とを除いて、中実に形成される。具体的には、表層部21は、第1油流出口271を含む第1中空部211と、第2油流出口272を含む第2中空部212と、第1中空部211から第2中空部212までに亘って中実に形成された中実部213とを有する。上記構成によれば、中実部213が第1中空部211から第2中空部212までに亘って設けられるので、太陽歯車20の歯25の強度を維持できる。
【0053】
太陽本体部22は、表層部21と太陽本体部22の間に配置される太陽基部23を有し、太陽基部23はラティス構造231を有する。上記構成によれば、遊星歯車30との噛み合いに伴う反力の影響が受けにくく高い強度がさほど求められない太陽基部23をラティス構造231とすることで、太陽歯車20の軽量化が実現される。
【0054】
<6.第1動力伝達軸111>
図7に戻り、本開示の一実施形態に係る変速機10は、
図1で示される第1動力伝達軸11および継手8に代えて、第1動力伝達軸111を備えてもよい。第1動力伝達軸111は、軸方向に延在すると共に太陽歯車20に連結される一端部12Aを含む軸部112と、外部機器6(
図1参照)のロータ7に連結される継手部118を含む。本例では、軸部112と継手部118は、AM造形によって一体的に形成されている。つまり、軸部112と継手部118を含む第1動力伝達軸111は単一部品である。従って、継手部118は、外側空間S2に配置される第1動力伝達軸111の他端部12Bであると了解される。
【0055】
継手部118は周方向に弾性を有する弾性継手である。弾性継手は、例えばスリット型の継手(スリットカップリング)であってもよい。より具体的な一例として、該継手部118の周面には、周方向に延在するスリットが形成される。スリットは、例えば周方向に螺旋状に延在してもよい。
【0056】
上記構成によれば、第1動力伝達軸111と継手部118とが一体に形成されることで、変速機10の部品点数を削減することができ、変速機10の構成を簡素化できる。また、AM造形によって作成される継手部118の形状は自在に設計可能となるので、継手部118を弾性継手にすることも可能となる。従って、第1動力伝達軸111とロータ7との間における偏角および偏心を吸収することも可能となる。
【0057】
<7.変形例>
本開示は上記実施形態に限定されない。変速機10は、第2動力伝達軸12に入力される回転を増速して、第1動力伝達軸11(または第1動力伝達軸111)に出力するように構成された増速機であってもよい。この場合、第2動力伝達軸12が動力源(図示外)と連結され、第1動力伝達軸11に連結されるロータ7を含む外部機器6は、第1動力伝達軸11によって駆動される機器となる。また、変速機10の軸方向は鉛直方向に平行であってもよい。この場合、径方向は水平方向に平行である。そして、径方向延在部47が遊星ピン50の下端を支持するのであれば、他端支持部49は不要である。また、遊星歯車30は1段歯車であってもよい。この場合、固定内歯車61は不要であり、遊星歯車30は可動内歯車62と噛み合えばよい。
【0058】
<8.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0059】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る変速機(10)は、
ハウジング(5)と、前記ハウジング(5)に収容される遊星歯車機構(100)とを備える変速機(10)であって、
前記遊星歯車機構(100)は、
太陽歯車(20)と、
前記太陽歯車(20)と噛み合う遊星歯車(30)と、
前記遊星歯車(30)を支持しており、前記変速機(10)の軸方向に延在する遊星ピン(50)と、
前記遊星ピン(50)を支持しており、前記太陽歯車(20)と同軸に回転するように構成される遊星キャリア(40)と、を含み、
前記遊星キャリア(40)は、
径方向に延在し、前記遊星ピン(50)を支持する径方向延在部(47)と、
前記径方向延在部(47)から前記軸方向に延在する軸方向延在部(45)であって、前記遊星歯車(30)と周方向に並ぶように配置される軸方向延在部(45)と、
前記軸方向延在部(45)から前記径方向の内側に延在し、前記遊星歯車(30)の少なくとも一部を間にして前記径方向延在部(47)と前記軸方向に並ぶように配置される第1空間充填部(41)とを有する。
【0060】
一般的に変速機(10)のハウジング(5)の内部には、太陽歯車(20)および遊星歯車(30)を含む可動部品に供給するための潤滑油が供給され、ハウジング(5)の内部には潤滑油が貯留される。上記1)の構成によれば、ハウジング(5)内における潤滑油の液溜まりができる空間が第1空間充填部(41)によって狭められるので、ハウジング(5)における潤滑油の収容量を低減できる。よって、可動部品が潤滑油の液溜まりを掻き上げることに伴って生じる攪拌損失が低減され、変速機(10)は高効率に稼働できる。
【0061】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の変速機(10)であって、
前記第1空間充填部(41)は、第1ラティス構造(411)、または、外殻(415)によって空間が囲まれた第1中空構造(412)を有する。
【0062】
上記2)の構成によれば、第1空間充填部(41)を軽量化することができるので、遊星キャリア(40)の回転に必要な力を低減することができる。よって、変速機(10)は効率的に稼働できる。
【0063】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載の変速機(10)であって、
前記第1空間充填部(41)は、前記径方向に開放された流路である第1油流路(417)を有する。
【0064】
上記3)の構成によれば、変速機(10)の稼働時、第1油流路(417)にある潤滑油は、遠心力の作用により径方向外側に流れることができる。潤滑油が変速機(10)の中心軸線(P)側に留まることが抑制され、潤滑油の流れを促進できる。例えば変速機(10)が、潤滑油の供給に応じてハウジング(5)から潤滑油を排出するように構成される場合、ハウジング(5)の内部に潤滑油が貯まり過ぎるのを抑制することができる。
【0065】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の変速機(10)であって、
前記第1空間充填部(41)は、第1ラティス構造(411)を有し、
前記第1油流路(417)は、前記第1ラティス構造(411)を前記径方向に貫通するように配置される。
【0066】
上記4)の構成によれば、第1空間充填部(41)の強度を確保することができ、第1空間充填部(41)が潤滑油の液溜まりを掻き上げる場合であっても、第1空間充填部(41)の変形および破損を抑制することができる。
【0067】
5)幾つかの実施形態では、上記3)または4)に記載の変速機(10)であって、
前記軸方向延在部(45)は、
前記軸方向に延在する延在本体部(451)と、
前記延在本体部(451)を前記径方向に貫通するように配置され、前記第1油流路(417)と連通する延在部油流路(457)と、
を有する。
【0068】
上記5)の構成によれば、第1油流路(417)を径方向外側に流れる潤滑油は、延在部油流路(457)を経由してハウジング(5)を構成する隔壁(70)に到達することができる。これにより、潤滑油の流れをさらに促進できる。
【0069】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載の変速機(10)であって、
前記遊星キャリア(40)は、前記第1空間充填部(41)の前記径方向における内側端部に接続され、前記太陽歯車(20)と前記軸方向に隙間をあけて対向する第2空間充填部(42)をさらに有する。
【0070】
上記6)の構成によれば、第2空間充填部(42)がハウジング(5)内における潤滑油の液溜まりができる空間をさらに狭めることができる。よって、ハウジング(5)内における攪拌損失を低減でき、変速機(10)は高効率に稼働できる。
【0071】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載の変速機(10)であって、
前記第2空間充填部(42)は、第2ラティス構造(421)、または、外殻(425)によって空間が囲まれた第2中空構造(422)を有する。
【0072】
上記7)の構成によれば、第2空間充填部(42)を軽量化することができるので、遊星キャリア(40)の回転に必要な力を低減することができる。よって、変速機(10)は効率的に稼働できる。
【0073】
8)幾つかの実施形態では、上記6)または7)に記載の変速機(10)であって、
前記第2空間充填部(42)は、前記径方向に開放された流路である第2油流路(427)を有する。
【0074】
上記8)の構成によれば、変速機(10)の稼働時、第2油流路(427)にある潤滑油は、遠心力の作用により径方向外側に流れることができる。これにより、潤滑油がハウジング(5)の軸心側に留まることが抑制され、潤滑油の流れを促進できる。
【0075】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載の変速機(10)であって、
前記第2空間充填部(42)は、第2ラティス構造(421)を有し、
前記第2油流路(427)は、前記第2ラティス構造(421)を前記径方向に貫通するように配置される。
【0076】
上記9)の構成によれば、第2空間充填部(42)の強度を確保することができ、第2空間充填部(42)が潤滑油の液溜まりを掻き上げる場合であっても、第2空間充填部(42)の変形および破損を抑制することができる。
【0077】
10)幾つかの実施形態では、上記1)から9)のいずれかに記載の変速機(10)であって、
前記遊星歯車(30)は、
前記太陽歯車(20)と噛み合う大径歯車(31)と、
前記大径歯車(31)よりも小さい小径歯車(32)と、
を有する2段歯車であり、
前記軸方向延在部(45)は、前記大径歯車(31)と前記周方向に並ぶように配置される第1延在部(141)を有し、
前記第1延在部(141)は、前記径方向において、前記小径歯車(32)よりも外側に位置する第3空間充填部(43)を有する。
【0078】
上記10)の構成によれば、第3空間充填部(43)がハウジング(5)内における潤滑油の液溜まりができる間を狭めることができる。よって、ハウジング(5)内における攪拌損失を低減でき、変速機(10)は高効率に稼働できる。また、2段歯車が採用されることで、変速機(10)は変速比を大きくすることができる。
【0079】
11)幾つかの実施形態では、上記10)に記載の変速機(10)であって、
前記第3空間充填部(43)は、第3ラティス構造(431)、または、外殻(435)によって空間が囲まれた第3中空構造(432)を有する。
【0080】
上記11)の構成によれば、第3空間充填部(43)の軽量化が実現される。遊星キャリア(40)の回転に必要な力を低減することができる。よって、変速機(10)は効率的に稼働できる。また、第3ラティス構造(431)が採用される実施形態では、第3空間充填部(43)の強度を確保することができる。従って、第3空間充填部(43)が潤滑油の液溜まりを掻き上げる場合であっても、第3空間充填部(43)の変形および破損を抑制することができる。
【0081】
12)幾つかの実施形態では、上記1)から11)のいずれかに記載の変速機(10)であって、
前記ハウジング(5)は、
前記遊星歯車機構(100)の収容空間(S1)と外側空間(S2)とを隔てる隔壁(70)と、
前記隔壁(70)の内部に形成され、潤滑油を前記収容空間(S1)に導くためのハウジング油流路(110)と、
を含み、
前記隔壁(70)は、前記遊星キャリア(40)の前記径方向延在部(47)に前記軸方向において対向する対向壁(77)を有し、
前記ハウジング油流路(110)は、前記対向壁(77)の内部に形成された第1ハウジング油流路(101)であって、前記収容空間(S1)と連通する開口である第1出口(91)を有する第1ハウジング油流路(101)を有し、
前記遊星ピン(50)は、前記軸方向に開放された孔であるピン軸方向油流路(52)を有し、
軸方向視において、前記変速機(10)の回転中心と前記第1出口(91)との間の最小の径方向距離である第1距離(寸法E1)は、前記回転中心と前記遊星ピン(50)との間の最小の径方向距離である第2距離(寸法E2)以上、且つ、前記回転中心と前記遊星ピン(50)との間の最大の径方向距離である第3距離(寸法E3)以下である。
【0082】
上記12)の構成によれば、第1距離(寸法E1)が第2距離(寸法E2)以上且つ第3距離(寸法E3)以下であることで、第1ハウジング油流路(101)の第1出口(91)から流出する潤滑油を遊星ピン(50)に供給できる。潤滑油がピン軸方向油流路(52)を流れるため、遊星歯車(30)への潤滑油の供給が促進される。これにより、遊星歯車(30)はスムーズに動作できると共に、遊星歯車(30)の温度上昇を抑制できる。また、潤滑油を供給するための駆動源を追加することなく潤滑油を遊星ピン(50)に供給できるので、変速機(10)の構成を簡素化することができる。
【0083】
13)幾つかの実施形態では、上記12)に記載の変速機(10)であって、
前記遊星歯車(30)は、
前記軸方向に延在する遊星円筒部(33)と、
前記遊星円筒部(33)を前記径方向に貫通するように配置される遊星歯車油流路(37)と、
を有し、
前記遊星ピン(50)は、前記径方向に開放される孔であるピン径方向油流路(54)であって、前記ピン軸方向油流路(52)と連通するピン径方向油流路(54)を有する。
【0084】
上記13)の構成によれば、ピン軸方向油流路(52)を軸方向に流れる潤滑油は、ピン径方向油流路(54)を経由して遊星ピン(50)に到達することができる。これにより、潤滑油の流れをさらに促進できる。また、遊星歯車(30)がスムーズに回転できると共に、遊星歯車(30)の温度上昇を抑制できる。
【0085】
14)幾つかの実施形態では、上記1)から13)のいずれかに記載の変速機(10)は、
前記太陽歯車(20)に連結される一端部(11A、12A)と、前記ハウジング(5)の外側空間(S2)に配置される他端部(11B、12B)とを有し、前記軸方向に延在する動力伝達軸(第1動力伝達軸11、111)をさらに備え、
前記遊星キャリア(40)の前記径方向延在部(47)は、前記一端部(11A)と前記他端部(11B)の間において、前記ハウジング(5)に軸受(B1)を介して連結される円筒状の遊星軸受連結部(44)を有し、
前記遊星軸受連結部(44)は、潤滑油が前記軸方向に流れるための孔である遊星軸受部油流路(440)を有し、
前記ハウジング(5)は、
前記遊星歯車機構(100)の収容空間(S1)と前記外側空間(S2)とを隔てる隔壁(70)と、
前記隔壁(70)の内部に形成され、前記潤滑油を導くためのハウジング油流路(110)と、
を含み、
前記隔壁(70)は、前記遊星キャリア(40)の前記径方向延在部(47)に前記軸方向において対向する対向壁(77)を有し、
前記ハウジング油流路(110)は、前記対向壁(77)の内部に形成された第2ハウジング油流路(102)であって、前記収容空間(S1)と連通する開口である第2出口(92)を有する第2ハウジング油流路(102)を含み、
軸方向視において、前記第2出口(92)の少なくとも一部は前記遊星軸受連結部(44)と重なる。
【0086】
上記14)の構成によれば、第2出口(92)の少なくとも一部が軸方向視において遊星軸受連結部(44)と重なるので、第2ハウジング油流路(102)の第2出口(92)から流出する潤滑油が遊星軸受連結部(44)に供給される。潤滑油は遊星軸受部油流路(440)を経由して太陽歯車(20)に到達でき、太陽歯車(20)はスムーズに回転できると共に、太陽歯車(20)の温度上昇を抑制することができる。また、潤滑油を供給するための駆動源を追加することなく、太陽歯車(20)に潤滑油を供給することができるので、変速機(10)の構成を簡素化することができる。
【0087】
15)幾つかの実施形態では、上記14)に記載の変速機(10)であって、
前記太陽歯車(20)は、
太陽本体部(22)と、
前記太陽本体部(22)の外周面に規定ピッチで配置される複数の歯(25)と、
前記複数の歯(25)よりも前記径方向の内側において前記太陽本体部(22)の外表面(28)に形成された窪みである油侵入部(281)と、
を有し、
前記油侵入部(281)は、前記遊星軸受部油流路(440)よりも前記径方向において内側に位置する。
【0088】
上記15)の構成によれば、潤滑油が油侵入部(281)に侵入して溜まることで、太陽歯車(20)の温度上昇を抑制できる。また、油侵入部(281)に溜まった潤滑油が太陽歯車(20)の回転に伴って径方向外側に移動するため、太陽歯車(20)の複数の歯(25)に十分な潤滑油を供給できる。
【0089】
16)幾つかの実施形態では、上記15)に記載の変速機(10)であって、
前記油侵入部(281)は、前記周方向に延在すると共に、内側空間を前記径方向の外側から覆う内周面(29)を有し、
前記太陽歯車(20)は、
前記内周面(29)において開口する内開口(260)と、前記太陽本体部(22)の前記外周面において開口する油流出口(270)とを有する太陽歯車油流路(290)と、をさらに有する。
【0090】
上記16)の構成によれば、太陽歯車(20)に供給される潤滑油が、太陽歯車(20)の回転に伴い太陽歯車油流路(290)を径方向外側に流れる。これにより、内開口(260)から油流出口(270)に向かって流れる潤滑油を、太陽歯車(20)の複数の歯に供給できる。
【0091】
17)幾つかの実施形態では、上記16)に記載の変速機(10)であって、
前記油流出口(270)は、隣接するいずれか2つの前記歯の間において開口する第1油流出口(271)を有し、
前記太陽歯車油流路(290)は、前記内開口(260)と前記第1油流出口(271)とを有する第1太陽歯車油流路(291)を有する。
【0092】
上記17)の構成によれば、潤滑油が2つの歯の間に供給されるので、太陽歯車(20)の外周面に潤滑油を行き渡らせることができる。
【0093】
18)幾つかの実施形態では、上記16)または17)に記載の変速機(10)であって、
前記油流出口(270)は、いずれかの前記歯の歯先において開口する第2油流出口(272)を有し、
前記太陽歯車油流路(290)は、前記内開口(260)と前記第2油流出口(272)とを有する第2太陽歯車油流路(292)を有する。
【0094】
上記18構成によれば、潤滑油が太陽歯車(20)の歯先に供給されるので、太陽歯車(20)の外周面、特に歯先面に、潤滑油を行き渡らせることができる。
【0095】
19)幾つかの実施形態では、上記16)から18)のいずれかに記載の変速機(10)であって、
前記太陽歯車(20)は、前記複数の歯(25)のそれぞれの外周面、及び、前記太陽本体部(22)の前記外周面を有する表層部(21)であって、前記太陽歯車(20)の前記周方向の全長に亘って形成される表層部(21)を含み、
前記油流出口(270)は、前記周方向に間隔を空けて設けられた第1油流出口(271)、および、第2油流出口(272)を有し、
前記表層部(21)は、
前記第1油流出口(271)を含む第1中空部(211)と、
前記第2油流出口(272)を含む第2中空部(212)と、
前記第1中空部(211)から前記第2中空部(212)までに亘って中実に形成された中実部(213)と、
を有する。
【0096】
上記19)の構成によれば、中実部(213)が第1中空部(211)から第2中空部(212)までに亘って設けられるので、太陽歯車(20)の歯(25)の強度を維持できる。
【0097】
20)幾つかの実施形態では、上記19)に記載の変速機(10)であって、
前記太陽本体部(22)は、前記表層部(21)と前記太陽本体部(22)との間に配置される太陽基部(23)を有し、
前記太陽基部(23)は、ラティス構造(231)を有する。
【0098】
上記20)の構成によれば、遊星歯車(30)との噛み合いに伴う反力の影響が受けにくく高い強度がさほど求められない太陽基部をラティス構造(231)とすることで、太陽歯車(20)の軽量化が実現される。
【0099】
21)幾つかの実施形態では、上記1)から20)のいずれかに記載の変速機(10)において、
前記軸方向に延在するとともに前記太陽歯車(20)に連結される軸部(112)、及び、前記ハウジングの外側空間(S2)に配置される外部機器(6)、のロータ(7)に連結される継手部(118)を含む動力伝達軸(第1動力伝達軸111)をさらに備え、
前記軸部(112)と前記継手部(118)とはAM造形によって一体的に形成されている。
【0100】
上記21)の構成によれば、動力伝達軸(第1動力伝達軸111)と継手部(118)とが一体に形成されることで、変速機(10)の部品点数を削減することができ、変速機(10)の構成を簡素化できる。また、AM造形によって作成される継手部(118)の形状は自在に設計可能となるので、継手部(118)を弾性継手にすることも可能となる。従って、動力伝達軸(第1動力伝達軸111)とロータ(7)との間における偏角および偏心を吸収することも可能となる。
【符号の説明】
【0101】
5 :ハウジング
6 :外部機器
7 :ロータ
8 :継手
10 :変速機
11、111 :第1動力伝達軸(動力伝達軸)
11A、12A :一端部
11B、12B :他端部
20 :太陽歯車
21 :表層部
22 :太陽本体部
23 :太陽基部
25 :歯
28 :外表面
29 :内周面
30 :遊星歯車
31 :大径歯車
32 :小径歯車
33 :遊星円筒部
37 :遊星歯車油流路
40 :遊星キャリア
41 :第1空間充填部
42 :第2空間充填部
43 :第3空間充填部
44 :遊星軸受連結部
45 :軸方向延在部
47 :径方向延在部
50 :遊星ピン
52 :ピン軸方向油流路
54 :ピン径方向油流路
70 :隔壁
77 :対向壁
91 :第1出口
92 :第2出口
100 :遊星歯車機構
101 :第1ハウジング油流路
102 :第2ハウジング油流路
110 :ハウジング油流路
112 :軸部
118 :継手部
141 :第1延在部
211 :第1中空部
212 :第2中空部
213 :中実部
231 :ラティス構造
260 :内開口
270 :油流出口
271 :第1油流出口
272 :第2油流出口
281 :油侵入部
290 :太陽歯車油流路
291 :第1太陽歯車油流路
292 :第2太陽歯車油流路
411 :第1ラティス構造
412 :第1中空構造
415 :外殻
417 :第1油流路
421 :第2ラティス構造
422 :第2中空構造
425 :外殻
427 :第2油流路
431 :第3ラティス構造
432 :第3中空構造
435 :外殻
440 :遊星軸受部油流路
451 :延在本体部
457 :延在部油流路
S1 :収容空間
S2 :外側空間