(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032871
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】脊椎固定インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61F2/44
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010528
(22)【出願日】2024-01-26
(62)【分割の表示】P 2022012078の分割
【原出願日】2017-10-24
(31)【優先権主張番号】15/333,892
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/791,194
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517373240
【氏名又は名称】インスティテュート フォー マスキュロスケレタル サイエンス アンド エジュケイション,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サック,ジェイムズ,エイ.
(57)【要約】
【課題】脊椎へ前方からの挿入するためのインプラントの構造を提供する。
【解決手段】ハウジング201内の退避位置と、ハウジング201から外方に延びる延伸位置との間で移動するブレード241と、従動軸部320およびブレード係合部322を有するブレード移動要素260と、を備え、前記ブレード移動要素260は、退避位置と延伸位置との間でブレード241を移動させることができ、ブレード係合部322は、少なくとも部分的に上側表面および下側表面によって区画される基本的にU字型の形状を有しており、ブレード241が延伸位置にあるとき、ブレード係合部322の上側表面は、ハウジング201の上側表面と実質的に同一面にあり、ブレード係合部322の下側表面は、ハウジング201の下側表面と実質的に同一面にある。
【選択図】
図27
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内の退避位置と、ブレードが前記ハウジングから外方に延びている延伸位置とを有する、前記ブレードと、
従動軸部およびブレード係合部を備えるブレード移動要素と、を備え、
前記ブレード移動要素は、前記退避位置と前記延伸位置との間で前記ブレードを移動させるために前記ハウジングに対して移動するように構成され、
前記ブレード移動要素の前記ブレード係合部は、少なくとも部分的に上側表面および下側表面によって区画されるU字型の形状を有しており、
前記ブレードが前記延伸位置にあるとき、前記ブレード係合部の前記上側表面は、前記ハウジングの上側面と実質的に同一面にあり、前記ブレード係合部の前記下側表面は、前記ハウジングの下側面と実質的に同一面にある、インプラント。
【請求項2】
前記ハウジングの上側面および下側面は互いに所定の角度(「インプラントの前弯角」という)を形成するように配置されており、さらに
前記ブレード移動要素の前記上側表面および前記下側表面は、前記ハウジングの上側面および下側面とそれぞれ同じ角度で整列するように配向されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記ブレード移動要素の前記上側表面および前記下側表面は、ブレードが退避位置にあるとき、インプラントの外包絡面の内部に配置される。請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記ブレード移動要素の遠位端は、ブレードが延伸位置にあるとき、インプラントの外側側部と同一面にある、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記ブレード移動要素は、ブレードが退避位置にあるときにハウジングの外側に配置される従動端を有し、前記ブレードは前記従動端に力が加わったときに前記退避位置から前記延伸位置に移動する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記ブレードが延伸位置にあるとき、前記ブレード移動要素の従動端は前記ハウジングの内側に配置される、請求項5に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者における骨の成長を支持するインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の異なるインプラントが体内で使用される。あるエリアを安定させ、骨の内部成長を促すように使用されるインプラントは、安定性(すなわち、圧力下での経時的な最小限の変形)および骨の内部成長のためのスペースの双方を提供する。
【0003】
脊椎固定術または脊椎癒着術としても知られている脊椎固定は、変性円板疾患、脊椎すべり症(椎骨のすべり)、脊柱管狭窄症、脊柱側弯症、骨折、感染または腫瘍等の、種々の病的状態の治療に使用される外科的な治療方法である。脊椎固定処置の目的は、不安定さ、ひいては痛みを低減することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脊椎の固定に備えて、椎間板のほとんどが除去される。脊椎固定ケージ等のインプラントを椎骨間に配置して、脊椎のアライメントおよび椎間板の高さを維持してもよい。癒合(すなわち、骨橋)は、椎骨の終板間で生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある態様において、本発明は、インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングを含むインプラントに関連する。インプラントは、中央開口内に位置付けられているブレードも含んでもよく、該ブレードは、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外向きに延びている延伸位置とを有する。また、インプラントは、従動軸部とブレード係合部とを備えるブレード移動要素を含んでもよい。ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間でブレードを移動させるために並進されるように構成されてもよい。または、周辺フレームの内縁は、ブレードを2つの場所で支持するように構成されている後縁を含んでもよい。
【0006】
別の態様において、本発明は、インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングを含むインプラントに関連する。インプラントは、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に延びている延伸位置とを有するブレードをさらに含んでもよい。また、インプラントは、従動軸部とブレード係合部とを備えるブレード移動要素を含んでもよい。ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間でブレードを移動させるために並進されるように構成されてもよい。ハウジングは、少なくとも一部がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または(PEKK)から形成されてもよい。さらに、少なくとも1つのX線不透過性マーカーをハウジングの一部に埋め込んでもよい。
【0007】
別の態様において、本発明は、インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングを含むインプラントに関連する。インプラントは、中央開口内に位置付けられているブレードも含んでもよく、該ブレードは、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に延びている延伸位置とを有する。また、インプラントは、従動軸部とブレード係合部とを備えるブレード移動要素を含んでもよい。ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間でブレードを移動させるために並進されるように構成されてもよい。ハウジングは、少なくとも一部がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作られてもよい。また、インプラントは、周辺フレームの外面から延び
ている少なくとも1つの係合部を含んでもよく、該係合部は、埋め込み処置中にインプラントを保持するように構成されている挿入ツールの把持要素を受けるように構成される凹部を含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングを含むインプラントに関連する。インプラントは、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に上側方向に延びている延伸位置とを有する第1ブレードを含む。また、インプラントは、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に下側方向に延びている延伸位置とを有する第2ブレードを含む。さらに、インプラントは、従動軸部とブレード係合部とを備えるブレード移動要素を含み、該ブレード移動要素は、第1ブレードおよび第2ブレードを退避位置と延伸位置との間で移動させるために並進されるように構成されている。第1ブレードは、第1突出部を含み、ブレード移動要素は、第1ブレードの第1突出部を受け入れるように構成されている第1チャンネルを含む。第1ブレードの第1突出部およびブレード移動要素の第1チャンネルは、ブレード移動要素の並進により第1ブレードが退避位置から延伸位置に移動するように、垂直軸に対してゼロではない角度で配置されている。また、第2ブレードは、第2突出部を含み、ブレード移動要素は、第2ブレードの第2突出部を受け入れるように構成されている第2チャンネルを含む。第2ブレードの第2突出部およびブレード移動要素の第2チャンネルは、ブレード移動要素の並進により第2ブレードが退避位置から延伸位置に移動するように、垂直軸に対してゼロではない角度で配置されている。
【0009】
実施形態の他のシステム、方法、特徴および利点は、当業者には、以下の図面および詳細な説明を考察すれば、明らかであろう、または明らかになるであろう。このようなすべての追加のシステム、方法、特徴および利点は、本明細書および本概要に含まれること、実施形態の範囲に含まれること、ならびに以下の特許請求の範囲により保護されることが意図される。
【0010】
実施形態は、以下の図面および説明を参照するとよりよく理解することができる。図面内の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、むしろ実施形態の原理を説明するにあたり強調を施している。また、図面において、同様な符号は、種々の図を通して、対応する部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】患者と挿入ツールを取り付けたインプラントとを示す模式図である。
【
図3】脊椎と展開されたインプラントを示す模式図である。
【
図4】インプラントの一実施形態を示す模式図である。
【
図6】インプラントの本体部を示す等角上面図である。
【
図7】インプラントの本体部を示す等角下面図である。
【
図8】インプラントの本体部を示す模式的な後方側面図である。
【
図9】インプラントの本体部を示す模式的な前方側面図である。
【
図10】ブレード移動要素を示す模式的な等角図である。
【
図11】ブレード移動要素を示す模式的な前方側面図である。
【
図12】ブレード移動要素を示す模式的な側面図である。
【
図16】ブレード移動要素と2つの対応するブレードとを示す模式的な等角図である。
【
図17】2つの対応するブレードに連結されている
図16のブレード移動要素の模式的な等角図である。
【
図18】インプラントのカバーの上側側部の模式的な等角図である。
【
図20】インプラントの本体部およびカバーを示す模式的な等角図である。
【
図21】インプラントの本体部およびカバーを示す模式的な等角図である。
【
図22】展開位置におけるインプラントの模式的な等角図である。
【
図23】展開位置におけるインプラントの模式的な前方側面図である。
【
図24】展開位置におけるインプラントの模式的な外側側面図である。
【
図25】いくつかの構成要素の断面図を含む、挿入位置におけるインプラントを示す模式的な等角図である。
【
図26】いくつかの構成要素の断面図を含めて描かれている、挿入位置と展開位置との間の中間位置における
図25のインプラントの模式的な等角図である。
【
図27】いくつかの構成要素の断面図を含む、展開位置における
図25のインプラントの模式的な等角図である。
【
図28】いくつかの構成要素の断面図を含む、中間位置における
図25のインプラントの模式的な等角図である。
【
図31】止めねじを取り付けたインプラントを示す模式的な等角図である。
【
図32】インプラントを示す模式的な等角図および止めねじの拡大図である。
【
図33】別の実施形態による、インプラントのブレード移動要素を示す模式的な外側側面図である。
【
図34】別の実施形態による、挿入位置における本体部およびブレード移動要素を示す断面図である。
【
図35】別の実施形態による、展開位置における本体部およびブレード移動要素を示す断面図である。
【
図36】インプラントおよび挿入ツールを上から見た模式図である。
【
図37】
図36のインプラントの図に重ねた、挿入ツールを上から見た模式的な断面図である。
【
図38】別の実施形態による、インプラントを示す模式的な斜視前面図である。
【
図40】
図38に示すインプラントの模式的な斜視後面図である。
【
図41】
図38に示すインプラントの後方部の模式的な上面図である。
【
図43】
図41に示すように切断されたインプラントの模式的な断面図である。
【
図44】インプラントの挿入ツール係合部の模式的な拡大図である。
【
図45】T字形スロットを使用して接合された、相対するブレードとブレード移動要素との模式的な組立図である。
【
図46】T字形スロットを使用して接合された、相対するブレードとブレード移動要素との模式的な組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に説明される実施形態は、脊椎で使用するためのインプラントに関する。実施形態は、本体部および1枚または複数枚のブレードを備えるインプラントを含む。
【0013】
以下に述べる種々の手段に加えて、任意の実施形態で、2016年12月29日に公開され、「Interbody Fusion Device and System for Implantation(埋め込み用椎体間固定デバイスおよびシステム)」と題するDuffield等の米国特許公開第2016/0374
831号、2018年4月19日に公開され、「Implant With Deployable Blades(展開
可能なブレードを備えるインプラント)」と題する、Sackの米国特許公開第2018/0104068号、および2017年4月13日に公開され、「Insertion Tool For Implant And Methods of Use(インプラント用の挿入ツールおよび使用法)」と題するDuffield等の米国特許公開第2017/0100260号に開示される本体部/支持構造、ブレ
ード移動要素または他の構造のいずれを利用してもよく、同特許は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0014】
インプラントの概要
図1は、インプラント100の一実施例を示す模式図である。インプラント100は、人体104の脊柱102の絵に隣接して示されている。
図2では、インプラント100の実施形態は、挿入ツール206を使用して人体104に挿入しようとしている状態のインプラント100の一実施形態が示されている。人体104とともに描かれているインプラント100および挿入ツール206の相対的なサイズは、図示するために調整されていることは理解されるべきである。
【0015】
本開示において、インプラント100は、ケージまたは固定デバイスともいわれることがある。いくつかの実施形態において、インプラント100は、人体の一部に埋め込まれるように構成されている。いくつかの実施形態において、インプラント100は、脊椎に埋め込むように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、インプラント100は、隣接する椎骨間に挿入して、椎骨間の支持を提供しおよび/または固定を助ける脊椎固定インプラントまたは脊椎固定デバイスであってもよい。
【0016】
たとえば、脊柱102の一区画を図示している
図3を参照すると、インプラント100は、第1椎骨192と第2椎骨194との間に位置付けられている。また、インプラント100は、2枚のブレード(第1ブレード241および第2ブレード242)を含むことが分かり、このブレードは、インプラント100の上側表面および下側表面から延びている。ブレードのそれぞれは、インプラント100の繋止(anchor)を助けるように、隣接する椎骨(すなわち、第1椎骨192または第2椎骨194)に打ち込まれている。
【0017】
いくつかの実施形態では、インプラント100は、前方経路腰椎椎体間固定(ALIF)の手術手技を使用して挿入してもよく、腹部から脊椎にアプローチすることによって、椎間板のスペースが固定される。ALIFアプローチでは、通例、腹部付近で3インチから5インチの切開を行い、腹筋を脇に退ける。ある場合には、インプラント100は、体の前部または前方側部の小さな切開から挿入することができる。ある場合には、前方アプローチは、外科医への椎間板のスペースの露出を改善するであろう。前方アプローチは、固定のためにより大きなデバイスの使用を許容することができ、固定が行われる表面積を大きくするとともに、手術後の安定性を高められる。前方アプローチは、腰椎分離すべり症などの種々の症状によって生じる変形をある程度軽減することができることが多い。固定デバイスを人体の前部に沿って挿入し配置することは、ある場合には、患者の正常な矢状アライメントを復元することもでき、より正常な内方湾曲を個々人の腰に与える。
【0018】
明確にするために、詳細な説明および特許請求の範囲において方向を示す種々の形容詞に言及する。本明細書において用いられる場合、「前方」という用語は、インプラントを体内に置いたときに人体の前面の方に向けられることが意図される、インプラントの側部または部分を指す。同様に、「後方」という用語は、埋め込み後に人体の背面の方に向けられることが意図される、インプラントの側部または部分を指す。また、「上側」という用語は、体の上部(例、頭)の方に向けられることが意図されるインプラントの側部または部分を指すのに対し、「下側」は、体の底部の方に向けられることが意図されるインプラントの側部または部分を指す。本明細書において、インプラントの「外側」側部または
部分にも言及し、これは、体の外側方向に面する側部または部分である。
【0019】
図4は、一実施形態によるインプラント100の一実施形態の模式的な等角図である。
図4で分かるように、インプラント100は、前方側部110および後方側部112を備えて構成されることが理解される。インプラント100は、第1外側側部114および第2外側側部116も含んでもよい。さらに、インプラント100は、上側側部130および下側側部140も含んでもよい。
【0020】
また、方向または軸の言及は、体に対してそれが意図される向きではなく、インプラント自体に対するものを指す。たとえば、「遠位」という用語は、インプラントの中心から遠くの方に位置付けられる部分を指すのに対し、「近位」という用語は、インプラントの中心の近くの方に位置付けられる部分を指す。本明細書において用いられる場合、「インプラントの中心」とは、質量の中心、および/または中心面、および/または中心に位置付けられる別の基準面、とすることができるであろう。
【0021】
インプラントは、種々の軸にも関連付けられていてもよい。
図4を参照すると、インプラント100は、インプラント100の最長寸法に沿って、第1外側側部114と第2外側側部116との間に延びている長手軸120に関連付けられていてもよい。さらに、インプラント100は、インプラント100の幅寸法に沿って、後方側部112と前方側部110との間に延びている前後軸122(「幅方向軸」ともいう)に関連付けられていてもよい。さらに、インプラント100は、インプラント100の厚さ寸法に沿って延びているとともに長手軸120および前後軸122のどちらに対しても略垂直な、垂直軸124に関連付けられていてもよい。
【0022】
インプラントは、種々の基準面または基準表面にも関連付けられていてもよい。本明細書において用いられる場合、「正中面」という用語は、インプラントを右側半体および左側半体に分ける、または2つの外側半体に分ける、インプラントの前方側部から後方側部に通る垂直面を指す。本明細書において用いられる場合、「横断面」という用語は、インプラントを上側半体および下側半体に分ける、インプラントの中心に位置付けられる水平面を指す。本明細書において用いられる場合、「冠状面」という用語は、インプラントを前方半体および後方半体に分ける、インプラントの中心に位置付けられる垂直面を指す。いくつかの実施形態では、インプラントは、正中面および横断面等の2つの平面を中心に対称または実質的に対称である。
【0023】
図5は、一実施形態によるインプラント100の模式的な等角分解図である。
図4~
図5を参照すると、インプラント100は、本体部200とカバー220とから構成されており、これらは合わせてインプラント100のハウジング201と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、本体部およびカバーは一体的に形成されていてもよい。他の実施形態では、本体部およびカバーは、1つまたは複数の留め具で接合される別々の部材であってもよい。
図4~
図5の実施形態では、本体部200およびカバー220は、インプラント100の追加構成要素を使用して一緒に締結されている個々の部材である。
【0024】
インプラントの実施形態は、隣接する椎体にインプラントを繋止するための手段を含んでもよい。いくつかの実施形態では、インプラントは、1つまたは複数の繋止部材を含んでもよい。
図4~
図5の実施形態では、インプラント100は、椎体間にインプラント100を挿入した後、隣接する椎体にインプラント100を繋止することを容易にする、1組のブレード240を含む。1組のブレード240はさらに第1ブレード241および第2ブレード242から構成されてもよい。本明細書で説明する実施形態では2枚のブレードを含むが、インプラントの他の実施形態は、任意の他の数のブレードを含むことができるであろう。たとえば、別の実施形態では、3枚のブレードを使用することができるであ
ろう。別の実施形態では、2枚のブレードがインプラントの下側表面から延び、2枚のブレードが上側表面から延びている4枚のブレードを使用することができるであろう。さらに別の実施形態は、5枚以上のブレードを含むことができるであろう。さらに別の実施形態では、1枚のブレードを使用することができるであろう。
【0025】
ブレードを備えるインプラントは、インプラントのハウジングに対してブレードを移動させるための手段を含むことができる。いくつかの実施形態では、インプラントは、1枚または複数枚のブレードと係合してインプラントの表面からブレードを延ばし、および/または後退させるブレード移動要素を含む。
【0026】
図4~
図5に示す実施形態では、インプラント100はブレード移動要素260を含む。いくつかの実施形態では、ブレード移動要素260は、第1ブレード241および第2ブレード242に連結されている。さらに、ハウジング201内におけるブレード移動要素260の位置を調整することにより、第1ブレード241および第2ブレード242は、インプラント100の表面の中に後退するかまたは表面から延びることができる。
【0027】
インプラントは、インプラントの1つまたは複数の要素の位置をロックするための手段を含むことができる。ブレード移動要素の位置を変更することのできる実施形態では、インプラントは、ねじ切り留め具または他の種類の取り付け機構の使用による等、作動構成要素を所定の位置にロックすることによって1枚または複数枚のブレードも所定の位置にロックするための手段を含むことができる。
【0028】
図5に示す実施形態では、インプラント100は止めねじ280を含む。いくつかの実施形態では、止めねじ280を使用して、ブレード移動要素260をインプラント100内の適所にロックすることができ、これは、以下でさらに示すように、第1ブレード241および第2ブレード242を延伸位置または展開位置に留めることを確実にする。
【0029】
実施形態は、本体部をカバーに装着することを助ける1つまたは複数の留め具も含むことができる。いくつかの実施形態では、ピン、ねじ、釘、ボルト、クリップまたは任意の他の種類の留め具を使用することができるであろう。
【0030】
図5に示す実施形態では、インプラント100は、カバー220を本体部200に締結することを助ける1組のピン290を含む。実施形態では、第1ピン291と第2ピン292とを含む2本のピンが使用される。しかし、他の実施形態では、任意の他の数のピンを使用することができるであろう。別の実施形態では、1本のピンを使用することができるであろう。さらに他の実施形態では、3本以上のピンを使用することができるであろう。
【0031】
本体部の構成要素
ここで
図6~
図9を参照すると、本体部200の一実施形態の4つの図が提示されている。
図6は、本体部200の模式的な等角上側側面図または上から見た等角図である。
図7は、本体部200の模式的な等角下側側面図または下から見た等角図である。
図8は、本体部200の模式的な後面図または背面図である。
図9は、本体部200の模式的な前面図または正面図である。異なる実施形態において、本体部200は、ハウジング201の後方側部および前方側部、ならびにハウジング201の少なくとも1つの外側側部を提供してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、本体部の外側側部は、どちらも格子状の幾何学形状を有してもよい。種々の開口または孔は、以下に述べるように、インプラントの総重量の軽量化、および/または材料の使用量に伴う製造コストの削減を助けることができる。さらに
、ある場合には、以下でさらに述べるように、開口は、本体部200にわたって利用できる表面積を増やし、インプラントへの骨成長促進材料の塗布を容易にし、および/または、インプラントと挿入ツールとの連結を容易にすることができる。いくつかの他の実施形態では、外側側部は、1つまたは複数の開口をもつ中実の壁として構成することができるであろう。さらに、インプラントのハウジングに開口を設けることにより、ブレードの展開度または展開の程度に関して視認性を改善することができる。
【0033】
図6~
図9に示す実施形態では、本体部200は、水平面が略楕円の断面形状を有する。さらに、上側側部130および下側側部140のそれぞれは、少なくとも1つの貫通穴開口を含む。たとえば、
図6および
図7では、インプラント100は、第1開口610および第2開口612を含むことが分かる。第1開口610および第2開口612のそれぞれは、上側側部130から下側側部140に垂直軸124に実質的に整列した方向に、インプラント100の厚さを貫いて連続して延びている。開口は、異なる実施形態では、サイズ、形状および寸法を変えることができるが、ある実施形態では、第1開口610および第2開口612はいずれも、水平面に沿って略半円形、または半円形の断面形状を有する。
【0034】
また、
図8および
図9に示すように、本体部200の後方側部112および前方側部110は、略長矩形の形状を有する。さらに、
図4、
図6および
図8~
図9では、側壁630が本体部200の周長の大半にわたって延びて、垂直軸124に実質的に整列した方向に上側側部130と下側側部140との間に延び、インプラントの外面の大半を取り囲むかまたは画定する周縁を形成することが分かる。いくつかの実施形態において、第1外側側部114および第2外側側部116は実質的に同様である(すなわち、実質的に同様な構造的特徴を含むことができる)が、他の実施形態では、各側部はバリエーションを含むことができる。いくつかの実施形態では、インプラント100に形成された追加の開口があってもよい。異なる実施形態では、側壁630は複数の側部開口または孔を含むことができるが、他の実施形態では、側壁630は、実質的に連続すること、または中実にすることができる。
【0035】
再び
図4を参照すると、第1外側側部114は、第1孔480、第2孔482、第3孔484、第4孔486、第5孔488、および第6孔490を含むことが分かる。いくつかの実施形態では、各孔は異なる形状にすることができる。たとえば、第1孔480は実質的に長矩形形状を有し、第2孔482は、5つの辺をもつかまたは実質的に五角形の形状を有し、第3孔484および第5孔488は、それぞれ4つの辺をもつかまたは実質的に台形形状を有し、第4孔486は、実質的に円形形状を有し、第6孔490は、6つの辺をもつかまたは実質的に六角形形状を有する。他の実施形態では、第2外側側部116は、これより少ない数、または多い数の孔を有することができる。いくつかの実施形態では、第2外側側部116も、第1外側側部114と同様な配置で配設されている複数の孔を含むことができることは理解されるべきである。種々の開口の形状は、インプラントの本体部を直接金属レーザー焼結(DMLS)プロセスで製造可能なように、かつ下側および上側の荷重支持面にサポートを提供するように構成される。
【0036】
図6に示すように、ある実施形態では、本体部200の前方側部110は、ガイド開口222を含む。ガイド開口222は、側壁630の厚さを貫いて、前後軸122に実質的に整列した方向に延びている。ガイド開口222は、チャンバ部(「チャンバ」)492と、筒内溝部(筒内溝部は、
図31および
図32に関して以下でさらに述べる)とを含む。いくつかの構成要素がチャンバ492から溝部内まで(またはその逆に)通過できるようにチャンバ492が溝部に連結されることは理解できる。
【0037】
いくつかの実施形態では、以下でさらに述べ、
図4に大略的に示すように、ブレード移
動要素260の一部は、チャンバ部を通って延びるかまたはチャンバ部によって受け入れられるように構成することができる。すなわち、いくつかの実施形態では、チャンバ部は、ブレード移動要素260の一部に嵌合するかまたはその周りに密接して延びるようなサイズおよび寸法にすることができる。
【0038】
図6では、チャンバ492は、略長形の4つの辺をもつ開口を備えることが分かる。ある実施形態では、チャンバ492は、垂直面が略長方形または矩形の断面形状を有する。
図6では、チャンバ492は、側壁630の外向き面または遠位方向を向く面685と、側壁630の内向き面または近位方向を向く面695との間に延びている。以下でさらに説明するように、近位方向を向く面695にチャンバ492が近づくと、ガイド開口222のサイズを拡大して、ブレード移動要素260の種々の部分をきちんと受け入れるかまたは嵌合するように構成することのできる、追加の陥凹領域または対角スロット632があってもよい。また、チャンバ部の断面形状は、従動軸部がチャンバ部に挿入されたときに、従動軸部の回転を防止するように構成されることは理解できる。
【0039】
本体部200は、追加の補強構造も含むことができる。たとえば、
図6および
図7に示すように、本体部200は、前後軸122に実質的に整列する方向に延びている第1内方側壁634と、前後軸122に実質的に整列する方向に延びている第2内方側壁636とを含む。ある実施形態では、第1内方側壁634および第2内方側壁636は、実質的に平行にすることができる。上述したように、本体部200の様々な部分が陥凹エリアまたは孔を含むことができる。
【0040】
図7にもっともよく示されるある実施形態では、第1内方側壁634および/または第2内方側壁636は、複数の孔645を含む。
【0041】
さらに、いくつかの実施形態では、第1内方側壁634および第2内方側壁636は、本体部200に中央中空領域638を画定するかまたは境界付けることを助けることができる。中央中空領域638は、本体部200の厚みを貫いて延びることができる。以下でさらに述べるように、中央中空領域638は、ブレードおよびブレード移動要素を受け入れるように構成することができる。
【0042】
図6および
図7では、中央中空領域638は、主開口640および後方開口642を含み、いくつかの構成要素が主開口640から後方開口642まで通り抜けできるように、主開口640が後方開口642に接続されていることが分かる。主開口640は、本体部の中央または中間部に向いて位置付けられており、後方開口642は、本体部の後方周縁に沿って位置付けられている。ある実施形態では、後方開口642は、主開口640に関連付けられている幅に対して、水平面における幅が大幅に狭い。
【0043】
異なる実施形態において、後方開口642は、本体部200の後方側部112に関連付けられている第1端部696と第2端部698との間に設けることができる。また、いくつかの実施形態では、各端部は、陥凹領域を含むことができる。
【0044】
図6では、第1後方凹部692が第1端部696の一部の中に形成され、第2後方凹部694が第2端部698の一部の中に形成されている。
図20および
図21に関して以下述べるように、第1後方凹部692および第2後方凹部694は、カバーを受け入れるように構成することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1端部696および第2端部698は、実質的に同様にすることができる。ある実施形態では、第1端部696および第2端部698は、中央前後軸または正中線に対して互いに鏡像である。いくつかの実施形態では、第1後方凹部69
2および第2後方凹部694は、本体部200の第1端部696および第2端部698の間に延びている後部カバーもしくはキャップ、または本体部200の第1端部696と第2端部698とにまたがる後部カバーもしくはキャップをきちんと受け入れるようなサイズおよび寸法にされ、インプラントの実質的に連続した外周縁を提供する。また、いくつかの実施形態では、第1端部696および第2端部698の一方または両方が、本体部200の後方側部にカバーを取り付けるのを助けるために使用することができるピンホール(
図5にピンホール202として示されている)を含むことができる(
図20~
図21を参照)。
【0046】
図6~
図9の実施形態について示される本体部200の構成は、異なる実施形態では、製造プロセスを容易にする可能性がある。特に、この構成は、複数の開口をもつ一体部品を形成することにより、最小限のサポート構造でのレーザーまたは電子ビームによる3D印刷を可能にするだろう。この設計は、インプラントのすべての試験要件および臨床負荷に耐えられるだけの構造的な支持および剛性をなおも提供しながら、X線透視撮影による隣接した骨構造の視認性を改善することも助けるだろう。図面に図示していない他の実施形態は、前方側部、後方側部または外側側部の、その他は中実な幾何学形状に、円形または矩形の開口を含む。
【0047】
実施形態は、1つまたは複数のブレード保持部も含むことができる。ブレード保持部は、ブレードの1つまたは複数の縁および/または面を含め、ブレードの任意の部分を受け入れてもよい。ある実施形態において、本体部は、各ブレードの前縁および後縁を受け入れるブレード保持部を含む。
【0048】
図6で分かるように、本体部200は、第1内方側壁634の前方側部110に向けて位置付けられている第1ブレード保持部600と、第1内方側壁634の後方側部112に向けて位置付けられている第2ブレード保持部602とを含む。このように、各ブレード保持部は、中央中空領域638の主開口640の外側側部の外周に形成されている。第1ブレード保持部600は、本体部200の奥行にわたって延びて、第1ブレードの前縁を受け入れるように構成されている第1ブレード保持チャンネルを備える(
図13を参照)。同様に、第2ブレード保持部602は、本体部200の奥行にわたって延びて、第1ブレードの後縁を受け入れるように構成されている第2ブレード保持チャンネルを備える(
図13を参照)。
【0049】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のチャンネルは、水平面に対して実質的に対角線の方向に方向付けることができる。ある実施形態では、チャンネルは、水平面に対して約45度に方向付けることができる。他の実施形態では、チャンネルは、垂直(水平面に対して約90度)に方向付けることができ、または水平面に対して30度から90度の間に方向付けることができる。いくつかの実施形態では、チャンネルの向きは、ブレードの前縁および/または後縁の向きに対応するように構成することができる。
【0050】
本体部200は、第2ブレードの前縁および後縁を受け入れるための第3ブレード保持部604および第4ブレード保持部606も含む。この構成は、ブレードの外側縁が並進の軌道の役割を果たすため、インプラント内で利用できる骨移植片の容量を最大化することを助けるだろう。具体的には、これにより、インプラントにおいて追加の容量を占めることになる、ブレード上の追加の軌道部材の必要性を抑制するであろう。さらに、保持チャンネルおよび関連付けられているブレードの縁の配置は、後退位置における保持チャンネルの容量のほとんどがブレードの縁によって埋められることになるので、移植片材料またはBGPM(骨成長促進材料の効果および使用に関する詳細は以下でさらに述べる)が保持チャンネルに侵入したり正常なブレードの移動を阻止したりすることを防ぐのに役立つ。
【0051】
ブレードおよびブレード移動要素
図10は、ブレード移動要素260の一実施形態の等角側面図である。ブレード移動要素260の正面図または前方側面図も
図11に示しており、ブレード移動要素260の外側側面図は
図12に図示している。
図10~
図12を参照すると、ブレード移動要素260は、従動軸部320およびブレード係合部322を含んでもよい。従動軸部320は、従動軸部320の最前方端に沿って従動端(driven shaft portion)262をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、従動端262は、1つまたは複数の係合機能を含むことができる。たとえば、
図10でもっともよく分かるように、従動軸部320は、従動端262からアクセス可能なねじ切り開口267を含むことができる。いくつかの実施形態では、ねじ切り開口267は、対応するねじ切り先端をもつツールを受け止めてもよい。この構成を用いると、従動端262は、ブレード移動要素260を嵌め込み、1組のブレードを隣接する椎骨に打ち込むために使用されるツールの先端と一時的に嵌め合わせることができる(
図37を参照)。このことは、嵌め込み中に打ち込みツールおよび従動端262の両方を整列された状態にしておき、打ち込みツールが従動端262に対して滑る傾向を減じることを助けるだろう。嵌合機能を使用することは、従動端262がより容易にインプラント100から遠位に「引っ張られる」ことも許容し、万が一インプラント100を取り出すかまたはブレードを位置付けし直す必要がある場合に、ブレードを後退させるために使用することができる。
【0053】
また、従動軸部320は、ブレード係合部322と比べて実質的に細長く、および/または細くすることができる。たとえば、
図10および
図12では、従動軸部320は、実質的に細長い矩形の角柱を備えていることが分かる。すなわち、従動軸部320は、垂直面に実質的に丸みのある矩形断面形状を有する。
【0054】
また、
図12でもっともよく分かるように、ブレード係合部322は、垂直軸124に整列する方向に、より大きな幅を有し、U字形またはレンチ形の後方端をもつ略矩形形状を含む。このブレード移動要素260のサイズおよび形状は、本体部に形成されているガイド開口にスムーズに従動軸部320が挿入するのを許容しながら(
図6を参照)、ブレード係合部322を本体部の中央開口に位置付けられるような形状およびサイズにするとともに(
図7を参照)、ブレードの組を受け入れるように構成される。
【0055】
また、
図20および
図21に関して以下でさらに述べるように、ブレード移動要素260は、インプラント内にカバーの一部を取り付けるかまたは受け入れるための手段を含む。たとえば、
図10および
図12では、ブレード移動要素260は、受け入れ部1210を含む作動後方端1200を含む。いくつかの実施形態では、受け入れ部1210は、カバーの一部を受け入れるか、カバーの一部と嵌合するか、またはカバーの一部の周りに配設されるようなサイズおよび寸法にすることができる。ある実施形態では、受け入れ部は、垂直軸124に沿って互いに離間している2本の又付きの口1220を備える。ある場合には、2本の又は、カバーの厚さと実質的に同様な幅の分だけ離間することができる。
【0056】
ブレード移動要素は、1枚または複数枚のブレードと連結するための手段を含むことができる。いくつかの実施形態では、ブレード移動要素は、1つまたは複数のチャンネルを含むことができる。
【0057】
図10および
図11の実施形態では、ブレード係合部322は、第1チャンネル350および第2チャンネル352を含む。第1チャンネル350は、ブレード移動要素260の第1側面334に配設されてもよいのに対し、第2チャンネル352は、ブレード移動
要素260の第2側面336に配設されてもよい。
【0058】
また、
図11を参照すると、ブレード係合部322は、垂直軸124に対して斜めに方向付けられていることが分かる。すなわち、ブレード係合部322の上側端342は、下側端344に対してずれているので、2つの端部は、構成要素の前方側部から見たときに、垂直軸に対して整列していない。いくつかの実施形態において、これにより、第1チャンネル350および第2チャンネル352を垂直方向にほぼ整列させることができる。
【0059】
図13は、第1ブレード241の遠位面408の模式的な等角図であり、
図14は、第1ブレード241の近位面410の模式的な等角図であり、
図15は、第1ブレード241の下側側部1330を描いている。第1ブレード241、または単にブレード241は、ブレード241の下側側部1330に関連付けられている外縁400と、上側側部1340に関連付けられている内縁402と、前縁404と、後縁406とを含む。これらの縁は、遠位面408(すなわち、外向き面または遠位方向に向けられる面)と近位面410(すなわち、内向き面または近位方向に向けられる面)とをつなぎ合わせる。
【0060】
異なる実施形態では、ブレードの幾何学形状は変えることができるであろう。いくつかの実施形態では、
図15にもっともよく示されるように、ブレードは、ブレードの遠位面および近位面がそれぞれ共通の平面に平行になるように、実質的に扁平な幾何学形状を有することができるであろう。他の実施形態では、ブレードは、1つまたは複数の屈曲部を備えて構成することができるであろう。いくつかの実施形態では、ブレードは、チャンネル状の幾何学形状(例、「C字形」または「S字形」)を有することができる。
【0061】
図15に示す実施形態では、ブレード241は、フランジを備えるU字形の幾何学形状を有する。特に、ブレード241は、第1チャンネル部420、第2チャンネル部422および第3チャンネル部424を有する。ここでは、第1チャンネル部420は、第1屈曲部430で第2チャンネル部422に対して角度をなしている。同様に、第3チャンネル部424は、第2屈曲部432で第2チャンネル部422に対して角度をなしている。さらに、ブレード241は、第3屈曲部434で第1チャンネル部420から延びている第1フランジ440を含む。ブレード241は、第4屈曲部436で第3チャンネル部424から延びている第2フランジ442も含む。ブレード241のこの幾何学形状は、同様なサイズおよび厚さの他の扁平なブレードと比べて、ブレード241に最適な強度を提供することを助け、より大きな移植片の容量を許容する。
【0062】
また、いくつかの実施形態では、ブレード241は、ブレード241の支持または構造的強度を高めるための手段を含むことができる。ある実施形態では、ブレード241は、遠位面408に配設または形成されているブリッジ部1350を含む。
【0063】
図13を参照すると、ブリッジ部1350は、第3屈曲部434と第4屈曲部436との間に延びている。ブリッジ部1350は、ブレード241の構造的な支持を高めるように構成することができる。異なる実施形態では、ブリッジ部1350は、ブレード241の湾曲構造または波形構造にトラス、筋交い、控え壁、突っ張り、梁、または他の種類の補強を提供する特徴を含むことができる。ある実施形態では、ブリッジ部1350は、外縁よりも内縁の近くに配設して、ブリッジ部1350がブレードの遠位面に対してずれるようにする。
【0064】
いくつかの実施形態では、ブリッジ部1350は、比較的幅広のU字形または湾曲したV字形の外方側壁1370を含む。
図13では、外方側壁1370は、第3屈曲部434と第4屈曲部436との間に延びている。また、ブリッジ部1350は、(外方側壁に対してブリッジ部の相対する側に配設されている)内方側壁を有することができ、内方側壁
は、U字形の縁1380によって
図13に表される、第1チャンネル部420、第2チャンネル部422および第3チャンネル部424の遠位面に接触させるかまたは連続して配設されている。ある実施形態では、ブリッジ部1350の内方側壁または内縁に関連するU字形は、ブレード241のU字形の幾何学形状と実質的に同様である。
【0065】
いくつかの実施形態では、ブリッジ部1350は、実質的に対称形にすることもできる。たとえば、
図13では、ブリッジ部1350は、中央湾曲部によって第2三角柱部1320につなげられている第1三角柱部1310を備える。各部分は、ブレードの構造を強化し、インプラントの使用中、外力によってブレードにかかる圧力に対する抵抗を提供することができる。このように、ブリッジ部1350は、ブレード241が外圧および外力に抵抗する能力を高め、および/またはブレード241がその特定の形状を維持するのを助けることができる。
【0066】
実施形態において、外縁400は、隣接する椎体内に埋め込まれるように構成されている挿通縁である。挿通を最大化するために、外縁400は、外縁400に隣接する傾斜面409をブレード241が有するように先鋭化してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、前縁404および後縁406も外縁400と同様に先鋭化させて、強度および挿通の改善を助けるために外縁400の延長部として作用するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、ブリッジ部1350も、ブレードが所望の展開延伸に達したら、さらに外方に椎骨内を下方に延びるのを防止することを助ける役目をすることができることは理解できる。
【0067】
ブレードは、ブレード移動要素と連結するための手段をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、ブレードは突出部を含むことができる。いくつかの実施形態では、突出部は、ブレードの面から離れて延びることができ、ブレード移動要素のチャンネル内に嵌入してもよい。
【0068】
図14を参照すると、ブレード241は、近位面410から延びている突出部450を含む。突出部450は、ブレード移動要素のチャンネル(すなわち、
図11に示す第1チャンネル350)内に大略的に嵌入するようなサイズおよび形状にしてもよい。特に、断面形状がブレード移動要素260のチャンネル内に嵌入してもよい。ある場合には、突出部450の断面幅を近位部452と遠位部454との間で大きくして、以下詳細に述べるように、突出部450がチャンネル内に噛み合うようにされてもよい。
【0069】
突出部は、ブレード移動要素の傾斜付きチャンネルと嵌まり合うように、ブレードに角度をもって方向付けられてもよい。
図14の実施形態では、突出部450は、突出部450が第1チャンネル内に挿入されたときにブレード241の本体部がインプラント内で垂直に方向付けられるように、内縁402に対して角度をなしていてもよい。すなわち、突出部450の最長寸法が内縁402と突出角度459を形成していてもよい。
【0070】
上記説明は、第1ブレード241に関するものであるが、第2ブレード242にも同様な原理が適用されることは認識されよう。特に、いくつかの実施形態では、第2ブレード242は、第1ブレード241と実質的に同一の幾何学形状を有してもよい。また、第1ブレードに関して上側側部および下側側部への言及があるが、いくつかの実施形態では、第2ブレードの向きは、内縁が下側側部に関連付けられ、外縁が上側側部に関連付けられるように異ならせることができることは理解されるであろう。
【0071】
上述したように、各ブレードは、ブレード移動要素のブレード係合部に関連付けてもよい。
図16に、ブレード移動要素260、第1ブレード241および第2ブレード242の分解等角図を示し、
図17に、第1ブレード241および第2ブレード242をブレー
ド移動要素260の中に組み立てている。第1ブレード241の突出部450は、第1チャンネル350に嵌入していることが分かる。同様に、第2ブレード242の突出部455が第2チャンネル352に嵌入している。
図16および
図17を参照すると、ブレード係合部322は、上側表面330、下側表面332、第1側面334および第2側面336を備えてもよい。ここで、第1側面334は、第1外側側部向き表面であってもよく、第2側面336は、第2外側側部向き表面であってもよい。
【0072】
ブレード係合部322に形成されている各チャンネルは、ブレード係合部322の上側表面330と下側表面332との間に角度をもって延びていることが分かる。たとえば、
図16でもっともよく分かるように、第1チャンネル350は、上側表面330に沿って開いている第1端部354と、下側表面332に沿って開いている第2端部356とを有する。さらに、第1端部354は、第2端部356よりも従動軸部320から遠くに配設されている。同様に、第2チャンネル352は、上側表面330と下側表面332とに相対する端部を含むが、この場合は、上側表面330に配設されている端部が、下側表面332に配設されている端部よりも従動軸部320の近くに配設されている。
【0073】
異なる実施形態では、各チャンネルの角度は、多様なインプラントのサイズに対して適切なブレード延長部を提供するように選択することができるであろう。本明細書において用いられる場合、チャンネルの角度とは、チャンネルとブレード移動要素の横断面との間に形成される角度と定義される。
【0074】
図16および
図17の実施形態では、第1チャンネル350は、ブレード移動要素260の横断面370と第1角度を形成するのに対し、第2チャンネル352は、横断面370と第2角度を形成する。実施形態において、ブレードが展開されたときに釣り合いのとれた反力を提供するために、第1角度と第2角度とは等しい。ブレードおよびブレード移動要素をこのように構成することにより、各ブレードは、ブレード移動要素の中心線(例、横断面370)を中心に展開され、ブレード展開中にこれらの部品間の摩擦および結束負荷を最小化することを助ける。さらに、この構成は、挿入力および摩擦を軽減するために釣り合いのとれた反力を提供することを助ける。
【0075】
異なる実施形態において、各チャンネルの角度は変えることができるであろう。いくつかの実施形態では、チャンネルは、15度から75度までの任意の角度で方向付けることができるであろう。他の実施形態では、チャンネルは、35度から65度までの任意の角度で方向付けることができるであろう。さらに、いくつかの実施形態では、チャンネルの角度が、対応するブレードの突出部の角度を決定してもよい。たとえば、突出部450とブレード241の内縁402との間に形成される突出角度459(
図14を参照)は、第1チャンネル350と横断面370との間に形成される角度と略等しくてもよい。これによりブレード241の外挿通縁が略水平に保たれるので、挿通の程度は、ブレードの異なるセクションで変わることがない。
【0076】
さらに、
図16で分かるように、各チャンネルは、ブレードの対応する部分との連結または嵌合を容易にする断面形状を有する。一実施例として、チャンネル350は、第1側面334に開口幅390の開口355を有する。開口355の近位の場所357で、チャンネル350は、開口幅390よりも大きい幅392を有する。これにより、第1ブレード241の対応する部分との滑り接合を許容するチャンネル350の断面形状が提供される。
【0077】
実施形態では、第1チャンネル350および第2チャンネル352は、蟻継ぎ断面形状で構成される。しかし、他の実施形態では、対応する形状にされた部分と同様な滑り接合接続を容易にするであろう、他の種々の断面形状を使用することができるであろう。すな
わち、他の実施形態では、ブレードおよびブレード移動要素がなんらかの種類の対応する嵌合面を含む場合、ブレードおよびブレード移動要素の任意の幾何学形状を使用することができるであろう。また、いくつかの実施形態では、ブレード係合部322は、上側表面および下側表面で輪郭削りされて、陥没に耐えるとともに、ブレード展開幅を最大にさせるようにしてもよい。この幾何学形状は、ブレード係合部322を椎体終板間の中心に保つことも助けるだろう。一実施例として、本実施形態の上側表面330および下側表面332の輪郭削りは、
図17の拡大断面図でもっともよく分かる。
【0078】
各チャンネルは、第1チャンネル方向と、反対の第2チャンネル方向とに関連付けられていてもよい。たとえば、
図10でもっともよく分かるように、第1チャンネル350は、第1チャンネル350の長さに沿って上側表面330の方に向く、第1チャンネル方向460と関連付けられていてもよい。同様に、第1チャンネル350は、第1チャンネル350の長さに沿って下側表面332の方を向く、第2チャンネル方向462を含む。
【0079】
第1ブレード241の第1突出部450を第1チャンネル350に配設すると、第1突出部450は、第1チャンネル方向460または第2チャンネル方向462に摺動することができる。第1突出部450が第1チャンネル方向460に摺動すると、第1ブレード241がインプラントの上側側部で外向きに展開位置まで延びるように、第1ブレード241がブレード移動要素260に対して垂直に移動する(
図26~
図27を参照)。
【0080】
第1突出部450が第2チャンネル方向462に摺動すると、第1ブレード241がインプラント100のハウジング201内に後退するように、第1ブレード241がブレード移動要素260に対して垂直に移動する(
図28を参照)。同様に、第2ブレード242が下側側部でインプラント100から延びたり後退したりできるように、第2ブレード242の第2突出部455は、第2チャンネル352の第1および第2のチャンネル方向に摺動してもよい(
図25~
図28を参照)。この構成を使用して、ブレード移動要素260は、両方のブレードを反対方向に推進させ、それによって反応荷重を釣り合わせるとともに、ガイドバーにかかる片持ち荷重および摩擦を最小限にする。
【0081】
図17の断面に示されるように、各ブレードとブレード移動要素260の各チャンネルとの嵌め合いは、対応するチャンネル方向に直交する方向の動きに抵抗するように構成してもよい。たとえば、第1突出部450を第1チャンネル350内に挿入すると、第1ブレード241は、第1チャンネル方向460または第2チャンネル方向462に沿って並進することができるが、第1チャンネル方向460および第2チャンネル方向462に垂直な方向465に移動することはできない(すなわち、ブレード241は、第1チャンネル350の長さに垂直な方向に並進することはできない)。具体的には、前述したように、第1チャンネル350および第1突出部450の対応する断面形状は、第1突出部450がブレード移動要素260の第1側面334にある第1チャンネル350の開口を通り抜けることはできない。
【0082】
いくつかの実施形態では、各突出部は、対応するチャンネルと滑り蟻継ぎ接続または接合を形成する。ブレード移動要素の蟻継ぎ軌道と後方ブレードおよび前方ブレードの対応する蟻継ぎ機能とを使用すると、ブレードの嵌め込みおよび後退中に受ける荷重による離脱を防ぎながら、傾斜角に沿った軸方向の移動が可能になる。荷重による離脱を防ぐことにより、蟻継ぎ接続は、上側ブレード、ブレード移動要素および下側ブレード間の実質的に剛直な連続性を提供する。この実質的に剛直な連続性は、圧縮、せん断および捻れ時の強度、安定性および耐疲労性を提供するだろう。したがって、上側ブレード、ブレード移動要素および下側ブレード間のこの実質的に剛直な連続性は、脊椎固定処置に一般的に使用される、環状切除部(annulotomy)にまたがる椎体にねじ込まれるプレートと同様な構造上の利点を提供するだろう。
【0083】
図17では、第1突出部450は、第1チャンネル350と滑り蟻継ぎ接合を形成する。当然ながら、実施形態は、蟻継ぎ接合に制限されるわけではなく、チャンネルの開口がブレードの突出部のもっとも幅広の部分よりも小さい、他の嵌め合い/接合も使用することができるであろう。たとえば、いくつかの実施形態では、T字形の突出と対応するスロットとを使用してもよい(たとえば、
図45を参照)。別の代替例として、矩形の突出と対応するスロットとを使用してもよい(たとえば、
図46を参照)。
【0084】
他の実施形態では、ブレードとブレード移動要素との間の相互接続部分の幾何学形状を反転させることができるであろうことは認識されよう。たとえば、別の実施形態では、ブレードは、1つまたは複数のチャンネルを備えることができ、ブレード移動要素は、チャンネルに嵌合するための対応する突起を含むことができるであろう。このような実施形態では、ブレード移動要素の突起部およびブレードのチャンネルの両方が、対応する蟻継ぎの幾何学形状を有することができるであろう。
【0085】
本体部およびカバー
図5に関して上述したように、インプラント100の実施形態は、本体部200の後方開口を閉鎖するかまたは該後方開口にまたがり、インプラント100の種々の構成要素をまとめて取り付けるのを助けるように構成されているカバー220を含むことができる。
【0086】
図18は、カバー220の一実施形態の模式的な等角主側側面図であり、
図19は、カバー220の一実施形態の模式的な等角従側側面図である。
図18および
図19を参照すると、カバー220は、インプラント100の異なる部分に係合するための1つまたは複数の開口を含む。たとえば、カバー220は、第1ピンおよび第2ピンをそれぞれ受け入れるように構成されている第1ピンホール227および第2ピンホール228を含んでもよい(
図5を参照)。各ピンホールは、カバー220の上側表面から下側表面まで延びている貫通穴を備えることができるが、他の実施形態では、ピンホールは、止まり穴にすることができる。さらに、以下に述べるように、カバー220の第1ピンホール227および第2ピンホール228(
図18および
図19に図示)は、本体部の対応する穴に整列させてもよい。
【0087】
図20は、本体部200およびカバー220の模式的な等角分解図である。
図21は、合わせてインプラント100のハウジング201を形成する本体部200およびカバー220の模式的な等角組立図である。具体的には、いくつかの実施形態では、カバー220は、本体部200の後方端2000に関連付けられている凹部に挿入することができる。また、
図20に示す第1ピンホール227および第2ピンホール228は、後方端2000に2つから4つの貫通穴チャンネルを備える本体部200のピン受け開口と整列させることができる。
図20では、第1端部696は、第1端部696の上側部に第3ピンホール2030を、また、第1端部696の下側部に第4ピンホール2040を含む。同様に、第2端部698は、第2端部698の上側部に第5ピンホール2050を、また、第2端部698の下側部に第6ピンホール2060を含む。
【0088】
図21に示すように、カバー220が本体部200によって受け入れられると、第3ピンホール2030および第4ピンホールがカバー220の第1ピンホールと整列し、第5ピンホール2050および第6ピンホールがカバー220の第2ピンホールと整列する。他の実施形態は、これより少ない数または多い数のピンホールを有してもよい。いくつかの実施形態では、たとえば、本体部200は、第3ピンホール2030および第5ピンホール2050だけを含んでもよい。カバー220が本体部200に挿入されたら、第1ピン291および第2ピン292(
図20を参照)を2組のピンホールに挿入して、本体部をカバーに締結するかまたは取り付けることができる。
【0089】
インプラントの挿入位置および展開位置
上述したように、本明細書で説明する実施形態は、インプラントが低プロファイルを維持することを許容する第1位置(「挿入位置」)から、ブレードを展開してそれを近位の上下の椎体に挿入する第2位置(「嵌め込み位置」または「展開位置」)まで移動することのできるインプラントを提供する。インプラントが第1(挿入)位置にあるとき、デバイスのブレードは、インプラントの本体部内に後退していてもよい(すなわち、ブレード自体が「後退位置」にあってもよい)。インプラントの第2(展開)位置では、ブレードは、インプラントを越えて上側(もしくは頭側)または下側(もしくは尾側)に延びて、椎体に入り、インプラントが時間とともに位置からずれることを防止する。このため、ブレード自体が「延伸位置」または「展開位置」にあると言われることもある。ブレードが展開されるとき、インプラントは、左右の回転に抵抗するとともに、屈曲および/または伸展に抵抗する。ブレードは、おおむね垂直方向(すなわち、上下方向)に移動するかもしれないが、実際の移動方向は実施形態によって変わってもよいことは認識されよう。たとえば、いくつかの実施形態では、ブレードは、インプラント内でやや傾斜させてもよく、垂直方向(または上下方向)に対してわずかな角度をもって展開してもよい。
【0090】
図4、
図21、および
図22~
図24は、異なる動作モードまたは動作位置のインプラント100のいくつかの図を示す。具体的には、
図4は、挿入位置におけるインプラント100の模式的な等角前方側面図である。
図21は、
図4の同じ挿入位置におけるインプラント100の模式的な等角後方側面図である。
【0091】
図4を参照すると、挿入位置では、ブレード移動要素260の従動端262は、本体部200のチャンバ部の遠位に配設されてもよい(すなわち、ブレード移動要素260の一部がチャンバ部を貫いて配設されるかまたはチャンバ部を貫いて延びる)。インプラント100が挿入位置にあるとき、第1ブレード241および第2ブレード242は、ハウジング201内に後退させられる。このように、
図4および
図21でもっともよく分かるように、第1ブレード241または第2ブレード242のいずれも、インプラント100の上側側部130または下側側部140からそれぞれ外向きに(遠位に)延びていない。この挿入位置では、インプラント100は、コンパクトなプロファイルを有し、隣接する椎骨間の切除された椎間板のスペースの適所に、より容易に入れることができる。
【0092】
図22は、展開位置におけるインプラント100の模式的な等角図である。
図23は、
図22の同じ展開位置におけるインプラント100の模式的な前方側面図である。
図24は、
図23の同じ展開位置におけるインプラント100の模式的な外側側面図である。
【0093】
図23を参照すると、展開位置では、ブレード移動要素260の従動端262は、本体部200の外周縁に形成されている前方開口2250の近位に配設されてもよい(すなわち、ブレード移動要素260の全体がインプラント100内に配設されている)。インプラント100が展開位置にあるとき、第1ブレード241および第2ブレード242は、隣接する椎体に挿入されるように、上側側部130および下側側部140から外向きに延びている。さらに、各ブレードは、退避位置でも延伸位置でも、本体部の中央中空領域に位置付けられたままである。たとえば、退避位置では、各ブレードの内縁は、ハウジングの中央中空領域に配設され、延伸位置では、ブレードの内縁は、中央中空領域に留まる。
【0094】
いくつかの実施形態では、1枚または複数枚のブレードは、インプラントの上側表面および下側表面に、直角方向に対してわずかな角度をもって展開することができるであろう。いくつかの実施形態では、1枚または複数枚のブレードは、0度から30度までの角度で方向付けることができるであろう。他の実施形態では、1枚または複数枚のブレードは、30度よりも大きい角度で方向付けることができるであろう。
【0095】
図23に示す実施形態では、第1ブレード241および第2ブレード242はともに、直角軸251からわずかな角度をもって方向付けられている。具体的には、第1ブレード241は、直角軸251と第1角度250を形成し、第2ブレード242は、直角軸251と第2角度252を形成する。ある実施形態において、第1角度250および第2角度252は、どちらも約10度である。ブレードにこのように角度をもたせることで、展開時に第1ブレード241および第2ブレード242を隣接する椎骨の略中心に維持することを助けてもよい。
【0096】
実施形態では、ブレードを椎体の中心線の近くに維持して、ブレードの展開中に椎体にかかる回転荷重を最小化するとともに、オプションのカバープレートのねじクリアランスを提供するように、前方インプラントブレードの共通角度が選ばれる。また、
図23で、ブレードが展開されているとき、各ブレードの外縁は、インプラントの中央領域に向いて位置付けられて、延伸位置で外縁がハウジングに対して中央に位置付けられていることが分かる。
【0097】
各ブレードの延伸は、異なる実施形態では変えることができるであろう。いくつかの実施形態では、ブレードは、インプラントの奥行の0%から100%までの長さ分、外向きに延びることができるであろう。さらに他の実施形態では、合わせたブレード高さが、インプラントの奥行の100%から130%の長さ分、外向きに延びることができるであろう。
【0098】
図22~
図24に示す例示的な実施形態では、第1ブレード241および第2ブレード242は合わせて、インプラント100の奥行の110%に等しい量の分、インプラント100から外向きに延びることができてもよい。これは、ブレードが本体部200の2本の頑丈な平行軌道によって、またブレード移動要素260の傾斜付きクロスチャンネルによって案内され、したがって、6本の運動軸全部を制限することによって案内されるため、ブレードをインプラント100内に完全に後退させたままの状態にしておきながら行うことができる。他の実施形態では、展開時の合わせたブレード高さを100%未満にすることができるであろう。ある実施形態では、隣接する椎体を砕くリスクを減じるために、合わせたブレード高さが10mm未満になるようにインプラントを設計することができるであろう。別の実施形態では、インプラントは、合わせたブレードの高さが6mm以下である。
【0099】
さらに、「展開可能なブレードを備えるインプラント」出願で開示されるように、いくつかの実施形態では、インプラント100は、第1ブレード241および第2ブレード242のそれぞれについて、3点装着構成を採用している。具体的には、各ブレードは、2つのブレード保持部によってその外側縁に沿って受け入れられ、前述した蟻継ぎ接続を使用してブレード移動要素260にも連結している。
【0100】
すなわち、第1ブレード241の前縁404は、第1ブレード保持部600の第1ブレード保持チャンネル内に受け入れられている。第1ブレード241の後縁406は、第2ブレード保持部602の第2保持チャンネル内に受け入れられている。さらに、第1ブレード241の遠位面408は、インプラント100の他の要素に未装着のままである。第1ブレード241が遠位面408に沿って未装着なだけでなく、前縁404と後縁406との間の遠位面408全体が、インプラント100の他のすべての要素から離間している(すなわち、接触していない)。また、第2ブレード242も同様に、その外側縁で、対応するブレード保持部に装着されて、滑り蟻継ぎ接続を使用してブレード移動要素260にも連結している。このように、第1ブレード241および第2ブレード242は、嵌め込み中に第1ブレード241および第2ブレード242にかかる望ましくない摩擦を抑制
する可能性のある3点装着構成を使用して、インプラント100に保持される。各ブレードと各ブレード保持チャンネルとの嵌め合いは、保持チャンネルに沿ったブレードの並進を許容するのに十分な隙間を提供することは認識されよう。すなわち、保持チャンネルの中での外側縁の動きを妨げるような、きつすぎる嵌め合いはなされないだろう。
【0101】
異なる実施形態では、1つまたは複数のブレード保持部のチャンネルの断面幾何学形状を変えることができるであろう。いくつかの実施形態では、断面幾何学形状は円形にすることができるであろう。本書で開示されている実施形態では、第1ブレード保持部600(
図22を参照)は、矩形のブレード保持チャンネルを有する。ブレードの軌道またはチャンネルのこの矩形の幾何学形状および許容誤差は、作動傾斜路の角度変動から動かなくなることなく、正確な軸方向の移動を許容する。いくつかの実施形態では、骨移植片材料がブレードの自由な展開を制限しないようにブレードが後退している間、各ブレードの後縁および前縁は、各ブレード保持部の軌道またはチャンネルに留まっていてもよい。
【0102】
蟻継ぎ滑り接合などの互いに噛み合う接合を使用してブレードとブレード移動要素とを接続することは、嵌め込み中にブレードがブレード移動要素から外れるのを防ぐことを助ける。さらに、互いに噛み合う接合を用いて、ブレード移動要素を、ブレードを後退させるために使用することができる。
【0103】
図25~
図28は、嵌め込みシーケンス中(
図25~
図27)およびブレードの後退ステップ中(
図28)の、インプラント100のいくつかの模式図を示す。
図25~
図28では、インプラント100のハウジング201は仮想線で示して、ブレード移動要素260、第1ブレード241および第2ブレード242をよりよく見せるようにしている。また、
図25~
図28はそれぞれ、ブレード移動要素260、第1ブレード241および第2ブレード242のセクションの断面図を含み、これらの部品間の作動中の連結をよりよく示している。
【0104】
図25では、インプラント100は挿入位置にあり、第1ブレード241および第2ブレード242はハウジング201内に完全に後退している。次に、
図26で分かるように、ブレード移動要素260の従動端262に嵌め込み力700が加えられる。ブレード移動要素260がインプラント100の後方側部112の方に並進すると、ブレード移動要素260は、第1チャンネル350および第2チャンネル352に沿って、それぞれ、第1ブレード241および第2ブレード242に力を加える。具体的には、第1チャンネル350の向きは、第1ブレード241がインプラント100の下側側部の方に押しやられるようになっている。同様に、第2チャンネル352の向きは、第2ブレード242がインプラント100の上側側部の方に押しやられるようになっている。しかし、他の実施形態では、チャンネルの向きは、第1ブレード241がインプラント100の上側側部に向かって押しやられ、第2ブレード242がインプラント100の下側側部に向かって押しやられるように切り替えることができる。
【0105】
さらに、突出部450と第1チャンネル350との間(および第2突出部455と第2チャンネル352との間)の互いに噛み合う接続は、どちらのブレードも常にブレード移動要素260の動きに連結されたままであることを意味する。両方のブレードが長手方向の移動を制限されるため、その結果生じる各ブレードの動きは、純粋に垂直であることに留意すべきである。また、各ブレードに蟻継ぎ形の突出部を使用することは、突出部がともに中心線で盛り上がって、これらの可動部の動きまたは結束に対する(摩擦)抵抗を増大させるおそれのあるコッキング力または回転モーメントを抑制することを意味する。
【0106】
この構成を使用すると、ブレードを展開する力は、従動軸部320と本体部200のガイド開口(
図6を参照)との摩擦および結束を最小化するために、ブレード移動要素26
0を通して釣り合いが取られ、これが、ブレード移動要素260を案内してその動きを長手軸に平行な方向に制限しておくことを助ける(
図2を参照)。
【0107】
図27では、インプラント100は、完全に展開された位置に置かれ、第1ブレード241および第2ブレード242はともに、インプラント100から完全に延びている。断面図で分かるように、第1ブレード241および第2ブレード242はいずれも、インプラント100が完全に展開された位置にあるとき、ブレード移動要素260に連結したままである。この連結によって、
図28に図示するように、ブレード移動要素260の動きを逆向きにさせて第1ブレード241および第2ブレード242を後退させることができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、ブレード移動要素(たとえば、ブレード移動要素260)は、隣接する椎体を支持するように機能してもよいことは認識されよう。これは、外部支持構造の高さと同様な高さのブレード移動要素を使用して、ブレード移動要素の上側表面および下側表面が埋め込み後に椎体に接触してもよいように行うことができる。ブレード移動要素は、インプラント内の荷重支持構造として機能するので、これにより、本来であれば追加の支持構造によって占められるインプラントの追加スペースが空き、それによって骨移植片またはBGPMに利用できる内部容量が増す。
【0109】
図28を参照すると、ブレード移動要素260の従動端262は、
図26に示される動きとは反対の方向に引かれてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、ねじ切りコネクタを使用して送達ツールを従動端262に連結することができる。そして、送達ツールの先端が後退させられると、従動端262に後退力または牽引力710が加えられてもよい。ブレード移動要素260(また具体的には、ブレード係合部322)がインプラント100の前方側部110の方に引かれると、ブレード移動要素260は、第1チャンネル350および第2チャンネル352に沿って、それぞれ第1ブレード241および第2ブレード242に力を加える。具体的には、第1チャンネル350の向きは、第1ブレード241がインプラント100の上側側部の方に押しやられるようになっている。同様に、第2チャンネル352の向きは、第2ブレード242がインプラント100の下側側部の方に押しやられるようになっている。図示していないが、従動端262に十分な力を加えると、第1ブレード241および第2ブレード242が完全に後退することになるので、インプラント100は、
図25に示す挿入位置に戻るだろう。
【0110】
上述したように、本体部200は、ブレード移動要素260の一部を受け入れるためのガイド開口222を含んでもよい。インプラントが展開位置にあるとき、従動軸部は、チャンバ部に確実に配設することができる。いくつかの実施形態では、ガイド開口222のチャンバ部は、ブレード移動要素の従動軸部の断面形状と一致する形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、チャンバ部およびブレード移動要素の従動軸部は、いずれも矩形の断面形状を有する(
図9および
図11を参照)。この構成は、軸方向の動きを許容するであろうが、ブレード嵌め込み中に生じる可能性のある回転荷重および傾斜荷重を制御する。
【0111】
止めねじ
図29~
図30は、一実施形態による止めねじ280の2つの模式図を示す。いくつかの実施形態では、止めねじ280は、1種のねじ切り留め具とすることができる。
図29では、止めねじ280は、ねじ切りセグメント部284を備えるフランジ付き頭282を含み、さらに実質的に滑らかな細長い本体部288を含む。ねじ切りセグメント部284は、本体部の溝部と係合するようなサイズおよび寸法にされている(以下の
図33を参照)。フランジ付き頭282は、インプラント内に止めねじを取り付けるために、打ち込みツールと係合することのできる受け凹部2900も含むことができる。このように、ねじ
ロックが確実にされているとき、本体部288は、ブレード移動要素のねじ切り開口内に配設されているが、本体部288は、ねじ切り開口に関連付けられているねじ山と係合する必要も、またはロックする必要もない。
【0112】
インプラント100は、展開位置でインプラント100を取り付ける手段を含むことができる。
図31の分解等角図を参照すると、ガイド開口222は、チャンバ部のすぐ隣に形成されている溝部3100を含むことができる。溝部3100は、垂直面が円形断面形状を有することができ、チャンバ部の直径または幅に対して、より広い直径を有する。溝部3100の直径は、フランジ付き頭の直径と合致するように構成することができる。ある実施形態では、溝部3100は、ガイド開口222の最外前方周縁のすぐ隣に配設されている。止めねじ280をガイド開口222の前方側部に挿入すると(
図32を参照)、止めねじ280のフランジ付き頭282の周りに延びているねじ切りセグメント部284が溝部3100に係合することができるので、止めねじ280が本体部200に取り付けられる。この位置にあるとき、止めねじ280の本体部288は、ブレード移動要素260のねじ切り開口267の通路にも配設することができる。
【0113】
図32の部分断面図にもっともよく示されるように、インプラント100が展開位置にあるとき、従動軸部320の一部は、ガイド開口222のチャンバ492の中に配設されており、主に従動軸部320のうちねじ切り開口267を含む部分を備える。さらに、止めねじ280のフランジ付き頭282は、前方開口2250から溝部3100に延びており、止めねじ280の本体部288は、従動軸部320のねじ切り開口267を通って延びている。フランジ付き頭282の直径の方が本体部288より大きいため、フランジ付き頭282は、ガイド開口222の中までさらに移動することを防止される。このように、インプラントの挿入およびインプラントのブレードの展開は、挿入ツールが1つのガイド開口222内にのみ係合することで行われるので、外科手術の効率および安全性が高まる。
【0114】
代替のブレード移動要素
異なる実施形態において、インプラントは、異なる種類の構成要素を利用して、本明細書で説明する特徴および機能を提供することができる。いくつかの実施形態では、ブレード移動要素の特徴は、多様な外科的要件をもつインプラントの利用を容易にするために調整することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、第2ブレード移動要素(「第2作動構成要素」)3300の代替実施例を、
図33に示すように、本体部のハウジング内に置くことができる。
【0115】
図33では、第2作動構成要素3300は、上記提示したブレード移動要素の実施形態よりも幅の広い口3320をもつ受け部3350を備えて構成される。ブレード移動要素の受け部の口のサイズの調整は、インプラントで使用されるカバー、ブリッジ片またはキャップの寸法または形状の変化に対応させることができる。
【0116】
また、インプラントが様々な力に耐え、異なるブレードのタイプと協働できるようにするため、ブレード係合部の高さおよび/または他の寸法を増減することができる。たとえば、
図12では、ブレード移動要素260は第1最高高さ1230を有し、
図33では、第2作動構成要素3300は第2最高高さ3330を有する。人体のより小さな領域にブレード移動要素260が挿入されることができるように、第1最高高さ1230は、第2最高高さ3330より低い。しかし、使用するブレードのサイズを大きくしなければならないとき、第2作動構成要素3300の高さを高くすることで、デバイスに構造的なサポートを提供する。また、第2作動構成要素3300は、作動構成要素の中央に向いて配設されて、チャンネル3310の長さを延ばし、ブレードの追加重量を支持することのできる斜材部3340を含む。いくつかの実施形態では、斜材部3340は、第2作動構成要
素3300と一体的に形成されている。また、斜材部3340は、前述したブレード移動要素と比べて、作動構成要素に湾曲または傾斜付きインタフェースを追加することができ(
図12を参照)、従動軸部320とブレード係合部322との交差は、実質的に垂直である。
【0117】
最初の挿入位置および展開位置に関してさらに詳しく記載するために、
図34および
図35は、嵌め込み力を加える前(
図26)と、嵌め込み力を加えた後と、のインプラントの2つの断面図を提供する。
図34および
図35は、第2作動構成要素3300を採用しているが、インプラント100の大略的な動作および挿入から展開までの移行は、ブレード移動要素260に関して上記説明したプロセスと実質的に同じままであることは留意するべきである。
【0118】
図34では、第2作動構成要素3300は、従動端262が遠位外方に、本体部200の前方端3400から離れて延びるように配設されている。第2作動構成要素3300の残りの要素は、前後軸122に沿ってインプラントの内部空間に対してずれるように位置付けられている。すなわち、挿入位置では、ブレード係合部322の大部分は、本体部200の後方端2000よりも前方端3400の近くに配設されている。
【0119】
しかし、嵌め込み力が従動端262に加わると、第2作動構成要素3300の実質的に全体を本体部の内部空間内に配設することができる。さらに、作動後方端1200は、本体部200の中央中空領域の主開口から後方開口に向けて並進移動することができる。後方開口642の一部はカバー220の中央部で埋められているか、または該一部にカバー220の中央部がまたがっていることが分かる。作動後方端1200が後方開口に近づくと、
図33に示す2又付きの口を備える受け部1210がカバー220の上側表面の上と下側表面の下とに摺動するか、または受け部1210がカバー220を上側表面の上と下側表面の下とに位置付けることができ、適所への組立体の取り付けを助けるとともに、連続した外面を形成する。
【0120】
さらに、上述したように、
図34では、従動軸部320のねじ切り開口267を、ねじ切り打ち込みツールを受けるように構成することができることが分かる。また、
図35に示すように、止めねじのねじ切りフランジ付き頭282は、本体部200の構造に形成されている溝部3100と係合し、止めねじの本体部は、ねじ切り開口267によって提供されるチャンネル内にスムーズに挿入される。インプラント100が展開位置にあるとき、従動端262は、溝部3100の後方端のすぐ隣に位置付けることができる。すなわち、インプラント100が展開位置になったら、従動端262は、溝部3100を備える領域によって本体部200に形成されている外部開口から離間するように配設される。
【0121】
挿入プロセス
上述したように、インプラント100の実施形態は、「インプラント用の挿入ツールおよび使用法」出願で開示される特徴または構造を利用することができる。いくつかの実施形態では、インプラント100は、埋め込みプロセスを大幅に容易にすることのできる1つのツールとともに使用されるように構成することができる。たとえば、外科医が椎間板のスペースに前方アプローチからアプローチするかどうかは、外科医が、前方アプローチを用いて、大動脈および大静脈の周囲で手術をどれほど容易にこなせるかによる。脊椎の前に大動脈および大静脈があるため、前方側部から患者にアプローチすることにより、血管を傷つけるリスクがある。しかし、安定性と固定範囲とが増す利点は、非常に多くの場合、余分な手術のリスクにまさり、本明細書で提供される展開プロセスは、このようなリスクを低減するのに役立てることができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、本体部200は、挿入具の装着点を含んでもよい。
図36お
よび
図37に、挿入ツール3600の一部をインプラント100とともに示している。
図36では、挿入ツール3600は、インプラント100を保持または把持している状態で示されている。
図37では、
図36の同じ図を部分断面で示し、ガイド開口222へのねじ切りドライバ3610の係合を見せている。
【0123】
本体部200は、挿入ツール3600と相互作用するための手段を含んでもよい。たとえば、
図37で分かるように、本体部200は、第1空洞580および第2空洞582を含んでもよい(第1空洞580は、
図4で確認される第1孔480をいう)。脊椎の椎骨間への挿入(または、からの取り外し)のる間、ツールによるインプラント100のグリップを改善するために、第1空洞580および第2空洞582は、それぞれ挿入ツール3600の端部を受け入れてもよい。さらに、同じ挿入ツール3600を利用して、インプラント100を挿入位置から展開位置まで移行させることができる。
【0124】
図36および
図37に示すように、挿入ツール3600は、インプラントの本体部を把持するために使用することができる。インプラントの本体部が2つの把持顎3620によって把持されている間、ブレード移動要素は、ねじ切りドライバ3610によって制御するおよび/または打ち込むことができる。この構成は、インプラントの挿入中にブレードを退避位置に維持することができ、ねじ切りカバーが近位端から取り外されるとき、外科医からの嵌め込み荷重を移動させる。したがって、挿入ステップ、展開ステップ、および止めねじ挿入ステップは、1つのツールを使用して、主にインプラントの前向き側との相互作用のみで行うことができる。また、ブレード移動要素が内方または外方に押されると、ねじ切りドライバに伴って回転する。挿入ツール3600および1つのガイド開口222の使用により、回転を、挿入ツールの顎内に大略的に閉じ込めることまたは遮蔽することが可能になる。このプロセスは、患者への種々の異物の挿入に伴うリスクを軽減するのに役立てることができる。
【0125】
インプラントの寸法
異なる実施形態では、インプラントのサイズを変えることができるであろう。いくつかの実施形態では、インプラントは、任意の長さを有することができるであろう。実施形態は、40mmから60mmまでの範囲の長さを有することができるであろう。ある場合には、製造者は、40mmから60mmの間で5mm刻みで長さを変えられる複数のインプラントの選択肢を提供することができるであろう。いくつかの実施形態では、インプラントは、任意の高さを有することができるであろう。実施形態は、4mmから16mmまでの範囲の高さを有することができるであろう。ある場合には、製造者は、4mmから16mmまで2mm刻みで高さを変えられるインプラントを提供することができるであろう。実施形態は、18mm、22mm、26mmおよび他のサイズの幅(すなわち、前後軸)を有することができるであろう。
【0126】
実施形態は、種々の脊柱前湾角、すなわち、後方側部と前方側部との間に傾斜角を設けて構成することもできる。実施形態は、たとえば、8度、15度および20度の脊柱前湾角を設けて構成することができるであろう。他の実施形態では、他の脊柱前湾角をインプラントに使用することができるであろう。さらに、いくつかの実施形態では、ブレードは、追加のインプラントまたは他の埋め込みデバイスを、隣接するレベルに位置付けられている脊椎に収容するような角度にすることができ、患者の器官系における安定化を促進する。
【0127】
整列機能
実施形態は、任意選択的に、1つまたは複数の整列機能を含んでもよい。整列機能は、透視撮影の位置付け用の窓、ブレード展開の検証用の窓、ブレード移動要素を1枚または複数枚のブレードと整列させるための窓、および種々の他の種類の整列機能を含むが、こ
れだけに限定されない。
【0128】
図4を参照すると、インプラント100の本体部200は中央整列窓(
図4では、第4孔486という)を含む。さらに、
図13に示すように、ブレード241は整列窓297を含む。整列窓297は、ブレード241が完全に後退したときに、中央整列窓と整列してもよい。さらに、
図12に示すように、ブレード移動要素260は、作動整列窓277を含む。作動整列窓277は、第1ブレードおよび第2ブレードが完全に展開されるかまたは完全に後退したときに、インプラント本体部の中心線に整列してもよい。これらの窓(すなわち、中央整列窓または作動整列窓277)のうちの1つまたは複数も、透視撮影の位置付けを容易にしてもよく、ブレードの展開を確認するために使用されてもよい。たとえば、ある場合には、第1ブレードおよび第2ブレードが完全に展開されるとき、ブレードは、ブレード移動要素260の作動整列窓277を通り越してもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、蟻継ぎ接続は、ブレードの位置を両方向により正確に制御するのを助けることができる。インプラントのいくつかの実施形態は、1つまたは複数のストローク制限ストップ(止め具)も含んでもよい。たとえば、ブレード移動要素260上に2つのストローク制限ストップが形成されていてもよい。これらのストップは、ブレード移動要素260の行き過ぎを防ぐことを助けるだろう。具体的には、ストローク制限ストップは、本体部200の内面に接触してもよい。すなわち、ブレード移動要素は、インプラントの近位壁の内部と適所にピン留めされているカバーの内面とから測定した、その遠位部の長さとインプラントの内部奥行とによって決定される限定ストロークを有する。
【0130】
埋め込み
いくつかの実施形態は、骨移植片または骨移植片代用品材料を含め、骨成長促進材料を使用してもよい。本明細書で用いられる場合、「骨成長促進材料」(BGPM)とは、骨の成長を助ける任意の材料である。骨成長促進材料は、リンカー分子またはバインダの使用により表面に凍結乾燥されるかまたは金属に付着される手段を含んでもよい。骨成長促進材料の例は、BMP-1、BMP-2、BMP-4、BMP-6およびBMP-7等の骨形成タンパク質(BMP)を含む、任意の材料である。これらは、幹細胞を骨形成細胞に変換するホルモンである。別の例には、rhBMP-2、rhBMP-4およびrhBMP-7等のリコンビナントヒトBMP(rhBMP)が挙げられる。さらに別の例には、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、コラーゲン、BMP模倣ペプチド、およびRGDペプチドが挙げられる。一般に、これらの化学物質の組み合わせも使用してもよい。これらの化学物質は、スポンジ、基質またはゲルを使用して塗布することができる。
【0131】
また、いくつかの骨成長促進材料は、プラズマスプレーまたは電気化学的手法を使用して埋め込み型プロテーゼに塗布してもよい。これらの材料の例には、限定ではないが、ヒドロキシアパタイト、βリン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、および他の化学物質が挙げられる。
【0132】
骨成長促進材料は、骨移植片または骨移植片代用品を含むことができるか、またはこれらと組み合わせて使用してもよい。種々の材料が、(患者の体の腸骨稜から摘出された)自家移植片、同種移植片、脱灰骨基質、および種々の合成材料を含む骨移植片または骨移植片代用品として働いてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態は、自家移植片を使用してもよい。自家移植片は、脊椎固定に、新たな骨が成長するためのカルシウムコラーゲン足場を提供する(骨伝導能)。さらに、自家移植片は、骨成長細胞、間葉系幹細胞および骨を再生する骨芽細胞を含む。最後に、自家移植片は、患者における新たな骨成長を促進させるために、骨形態形成タンパク質(B
MP)を含む骨成長タンパク質を含む。
【0134】
骨移植片代用品は、リン酸カルシウムまたはヒドロキシアパタイト、幹細胞と他の種類の骨移植片代用品のうちの1つとを組み合わせる幹細胞含有生成物、および、Medtronic, Inc.のINFUSE(登録商標)(rhBMP-2含有骨移植片)等の成長因子含有基質を含む合成材料を含んでもよい。
【0135】
ここに挙げる手段は、考えられる骨成長促進材料、骨移植片または骨移植片代用品の網羅的なリストであることを意図しているわけではないことは理解されるべきである。
【0136】
いくつかの実施形態では、BGPMは、インプラントの1つまたは複数の外面に塗布してもよい。他の実施形態では、BGPMは、インプラント内の内部容量に塗布してもよい。さらに他の実施形態では、BGPMは、外面と、インプラント内の内側と、の両方に塗布してもよい。
【0137】
材料
インプラントの種々の構成要素は、特定の用途および/または医師による選択に応じて、金属(たとえば、チタン、チタン合金、ステンレススチール、コバルトクロム、または他の金属)、合成ポリマー(たとえば、PEEKまたはPEKK)、セラミック、および/またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、人体に埋め込むのに好適な生体適合性材料から製造されてもよい。
【0138】
一般に、インプラントは、十分な強度を有する、任意の好適な生体適合性の、非分解性の材料から形成することができる。典型的な材料としては、限定はされないが、チタン、生体適合性チタン合金(たとえば、チタンアルミナイド(γチタンアルミナイドを含む)、Ti6-Al4-V ELI(ASTM F 136およびASTM F 3001)
、またはTi6-Al4-V(ASTM F 1108、ASTM F 1472、およびASTM F 2989)、およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の不活性の生体適合性ポリマー(たとえば、PEEK-OPTIMA(登録商標)、Invibio Inc、Zeniva(登録商標)、Solvay Inc.など)が挙げられる。任意選択的に、インプラントは、X線透過性生体材料から構成される場合、画像化中の可視化を容易にするためにX線不透過性マーカーを含む。
【0139】
異なる実施形態では、インプラントを作製するプロセスは変えることができる。いくつかの実施形態では、インプラント全体は、従来の機械加工およびCNCマシニング、射出成形、鋳造または射出成形、インサート成形、共押出、引き抜き成型、トランスファー成形、オーバーモールド、圧縮成形、三次元(3D)プリンティング、浸漬被覆、スプレー被覆、粉末被覆、多孔性被覆、中実の原材料からの粉砕、およびそれらの組み合わせによって製造して組み立ててもよい。
【0140】
ある実施形態では、本体部200は、付加製造によって製造してもよい。具体的には、本体部200は、Ti-6Al-4V ELI粉末を使用した直接金属レーザー焼結(DMLS)で製作した後、特定の場所に従来の機械加工またはCNCマシニングを行って精密な寸法にしてもよい。また、ある実施形態では、
図5に示すように、ブレード移動要素260、第1ブレード241、第2ブレード242、カバー220、ピン290および止めねじ280も、チタン含有材料から作ってもよい。
【0141】
図38は、別の実施形態によるインプラントの模式的な斜視前面図である。ある場合には、
図38に示すインプラントは、少なくとも一部がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作られてもよい。PEEKは、チタン等の金属とは物性が異なるため、インプ
ラントのPEEK製の構成要素は、所望の構造的特徴を与えるために補強することができる。いくつかの実施形態では、インプラントの周辺フレームを、格子またはトラス構造とは対照的に、中実の本体部にしてもよい。また、いくつかの実施形態では、周辺フレームの追加部分がブレードに突き当たるように構成して、排除力に耐えるようにしてもよい。また、インプラントは、インプラントのPEEKセクションに配設される1つまたは複数のX線不透過性マーカーを含んでもよい。このようなX線不透過性マーカーは、任意の好適なX線不透過性材料から作ってもよい。いくつかの実施形態では、X線不透過性マーカーは、タンタルから作ってもよい。また、挿入ツール受け凹部を、インプラントの補強される部分に形成してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、挿入ツールと係合するリップ部は、凹部と実質的に同じ寸法を有する厚さを有してもよい。
【0142】
図38は、椎体間固定インプラント4000を示す。インプラント4000は、ハウジング4201を含んでもよい。ハウジング4201は、周辺フレーム5005を有してもよい。周辺フレーム5005は、インプラント4000の中央部に中央開口4638を画定する内縁5010を含んでもよい。
図38に示すように、インプラント4000は、前方側部4110、後方側部4112、第1外側側部4114、第2外側側部4116、上側側部4130および下側側部4140を有してもよい。
【0143】
インプラント4000は、埋め込まれたときにインプラント4000に隣接する椎骨と係合するように構成されている延伸可能なブレードも含んでもよい。延伸可能なブレードは、上述した他の実施形態のブレードと同様の構成を有してもよい。
図38に示すように、ブレードは、中央開口4638内に位置付けられている第1ブレード4241を含んでもよい。第1ブレード4241は、ハウジング4201内の退避位置を有してもよく、この位置で第1ブレード4241は、上側側部4130を越えて延びることはない。第1ブレード4241は、延伸位置も有してもよく、この位置で第1ブレード4241は、ハウジング4201から外向きに延びている。インプラント4000は、ブレードを退避位置と延伸位置との間で移動させるために並進されるように構成されているブレード移動要素4260を含んでもよい。ブレード移動要素4260は、従動軸部およびブレード係合部を含んでもよい(
図41、および他の実施形態のブレード移動要素に関する上記説明を参照)。
【0144】
図38に示すように、周辺フレーム5005は、ねじ切り開口5080を有する第1端部(例、前方側部4110)と、ねじ切り開口5080に隣接するガイド開口とを含んでもよい。ガイド開口は、ブレード移動要素4260の従動端を受け入れてもよい。インプラント4000は、止めねじ4280を含んでもよく、これは、ねじ切り開口5080内に取り付けられてもよい。止めねじ4280は、ブレード移動要素4260の従動端がガイド開口を通り抜けることのできるアンロック回転停止位置と、ブレード移動要素4260の従動端がガイド開口を通って移動することを防止されるロック回転停止位置との間で回転することができる。
【0145】
図38に示すように、インプラント4000は、周辺フレーム5005を通って延びて、止めねじ4280の回転制限溝5085に係合するピン6020をさらに含んでもよい。止めねじ4280のねじ切り部は、回転制限溝5085を含んでもよく、回転制限溝5085は、第1溝端および第2溝端を含む。回転制限溝5085は、止めねじ4280のねじ切り部の円周の1周分よりも短く延びていてもよい。インプラント4000の周辺フレーム5005内にブレード移動要素4260を取り付けるために、ピン6020が周辺フレーム5005に部分的に延びて、回転制限溝5085に係合し、止めねじ4280の抜けを防止してもよい。ピン6020および止めねじ4280の構成は、2016年10月18日に出願され、「Implant With Deployable Blades(展開可能なブレードを備えるインプラント)」と題する、現在のところ米国特許出願第15/296,902号の、2
018年4月19日に公開されるSackの米国特許公開第2018/0104068号にさらに示されて説明されており、その開示全体が、参照により本明細書に援用される。
【0146】
いくつかの実施形態では、インプラントには、大幅な前弯角を設けてもよい。すなわち、ハウジングは、椎骨間に埋め込むように構成されている前弯角を付けて形成してもよい。椎体間インプラントは、前方方向にインプラントを押しやる力を受ける可能性がある。これらの力は、インプラントを椎骨間の位置から排除する方向にインプラントを押しやるため、「排除力」と呼ばれる。本明細書で開示される延伸可能なブレードがインプラントを適所に繋止して、埋め込まれた位置からインプラントが排除されることを防止してもよい。
【0147】
前弯角を有するインプラントは、インプラントにかかる排除力の大きさを増大させる。前弯角が大きくなるほど、排除力も大きくなる傾向がある。
図39は、
図38に示すインプラントの模式的な外側図である。
図39に示すように、インプラント4000は、前弯角5090を有してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントは、5~25度の範囲の前弯角を有してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントは、25度より大きい前弯角を有してもよい。
図39は、インプラント4000の下側側部4140から延びている第2ブレード4242も示している。
【0148】
排除負荷下では、椎体間インプラントは、前方方向に押しやられるが、ブレードは、隣接する椎骨に繋止されているので、その場に留まっている。したがって、延伸可能なブレードは、インプラントの周辺フレームに関して後方方向に装入される。そのため、排除力は、ブレードを周辺フレームの中央開口の後縁に対して押す。
【0149】
インプラントのPEEK製ハウジングを、排除力によるブレードと周辺フレームとの間の負荷を分散するように構成するのが望ましいだろう。また、いくつかの実施形態では、開示されるインプラントは、さらに大きい前弯角を有してもよい。PEEK製の周辺フレームの構成も、前弯角を大きくしたために増大する負荷を分散してもよい。いくつかの実施形態では、周辺フレームとブレードとの間の許容差は、排除負荷下でブレードの表面積との接触がより大きくなることを助けるように構成してもよい。接触面積を大きくすることで、PEEK製ハウジングにかかる力が分散するので、ハウジングに加わる圧力が減じられるだろう。
【0150】
ハウジングに加わる排除力を分散するために、周辺フレームの追加部分がブレードに突き当たるように構成してもよい。
図40は、
図38に示されるインプラントの模式的な斜視後面図である。
図40に示すように、第1ブレード4241は、外側方向に延びている後向き表面5040を有する第1部分と、第1部分に対して垂直に後方方向に後方末端5045まで延びている第2部分とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、周辺フレーム5005の内縁は、第1ブレード4241を排除力に対して2箇所で支持するように構成されている後縁5015を含んでもよい。
【0151】
たとえば、
図40に示すように、後縁5015は、第1ブレード4241の第1部分の後向き表面5040および第2部分の後方末端5045で、第1ブレード4241を支持するように構成されている。
図40に示すように、後縁5015と第1ブレード4241の後向き表面5040との接触は、第1インタフェース5030で生じる。
図40にさらに示されるように、後縁5015と第1ブレード4241の後方末端5045との接触は、第2インタフェース5035で生じる。
【0152】
図41は、
図38に示されるインプラントの後方部の模式的な上面図である。
図41は、第1インタフェース5030および第2インタフェース5035を拡大上面図で示す。
【0153】
ハウジングがPEEKから作られているいくつかの実施形態では、インプラントは、1つまたは複数のX線不透過性マーカーを含んでもよい。
図41に示されるように、インプラント4000は、ハウジング4201の一部に埋め込まれている少なくとも1つのX線不透過性マーカー5050を含んでもよい。
【0154】
図41にさらに示すように、いくつかの実施形態では、第1X線不透過性マーカー5050をハウジング4201の周辺フレーム5005に配置してもよい。たとえば、第1X線不透過性マーカー5050は、インプラント4000の周縁5095の直近に配設してもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、X線不透過性マーカーを取り囲むPEEK材料は、周囲構造を補強するために増やしてもよい。同じく
図41に示されるように、周辺フレーム5005は、X線不透過性マーカー5050の近辺よりも、X線不透過性マーカー5050の直近の厚さを増してもよい。たとえば、
図41に示すように、周辺フレーム5005は、X線不透過性マーカー5050の直近の第1厚さ5070と、X線不透過性マーカー5050の第2厚さ5075とを有してもよい。
図41に示されるように、このように厚くなったエリアは、突条6000になって、第1X線不透過性マーカー5050が突条6000に整列するようにしてもよい。突条6000は、上下方向(すなわち、実質的に垂直方向)に延びてもよく、インプラント4000の中央の方に半径方向内方に向く周辺フレームの表面に配設されてもよい。いくつかの実施形態では、突条6000は、上側側部4130から下側側部4140まで、インプラント4000の全高に延びていてもよい。
【0156】
図42は、インプラント4000の模式的な下面図である。
図42に示すように、インプラント4000は、第2X線不透過性マーカー5055および第3X線不透過性マーカー5060を含んでもよい。
図43は、
図41に示すように切断されたインプラントの模式的な断面図である。
図43に示すように、インプラント4000は、第4X線不透過性マーカー5065を含んでもよい。
【0157】
図43に示すように、第1X線不透過性マーカー5050は、第1外側側部4114にインプラント4000の上側表面(すなわち、上側側部4130)の直近に配設されていてもよい。第2X線不透過性マーカー5055は、第1外側側部4114にインプラント4000の下側表面(すなわち、下側側部4140)の直近に配設されていてもよい。第3X線不透過性マーカー5060は、下側表面の直近で、第2外側側部4116に配設されていてもよい。第4X線不透過性マーカー5065は、上側表面の直近で、第2外側側部4116に配設されていてもよい。このように、
図43に図示するように、X線不透過性マーカーは、前後方向に見たときにインプラントの4隅に配置されている。これにより、インプラントが埋め込まれたときにその向きおよび位置のX線写真観察が容易になるだろう。
【0158】
いくつかの実施形態では、X線不透過性マーカーは、
図43に示されるように、球形であってもよい。しかし、他の実施形態では、X線不透過性マーカーは、任意の適切な形状を有してもよい。
【0159】
インプラントは、補強された挿入ツール係合部を含んでもよい。
図44は、インプラント4000の第1ツール係合部4580(単に第1係合部ともいう)の模式的な拡大図である。(
図38も参照)。インプラントは、第2ツール係合部も含んでもよい(
図39を参照)。
図44に示されるように、第1ツール係合部4580は、周辺フレーム5005の外面から延びていてもよい。第1係合部4580は、埋め込み処置中にインプラントを保持するように構成されている挿入ツールの把持要素を受けるように構成されている凹部
6006を含んでもよい。また、第1係合部4580は、突出リップ6005を含んでもよい。
図44に示されるように、突出リップ6005は、厚さ6010を有してもよい。同じく
図44に示されるように、凹部6606は、奥行6015を有してもよい。いくつかの実施形態では、第1係合部4580の突出リップ6005の厚さ6010および凹部6006の奥行6015は、実質的に同じでもよい。このような構成を用いると、凹部を作るためにハウジングから取り除かれる材料の量を突出リップに置き換えてもよいので、ハウジングの材料の量を実質的に同じに維持し、挿入ツールを受けるために凹部をくり抜くことにより生じる構造的な一体性が失われることを制限する。また、突出リップは、把持用凹部のアンダーカットを補強し、必要であれば、引き抜き中に、挿入ツールとの接続を強力にする。
【0160】
図45は、T字形スロットを使用して接合された、相対するブレードとブレード移動要素との模式的な組立図である。
図45は、
図27と同様な図を示すが、ブレード移動要素のチャンネルがT字形の断面形状を有する。具体的には、
図45は、下側ブレード5241および上側ブレード5242を示す。同じく
図45に示されるように、ブレード移動要素5260は、下側ブレード5241および上側ブレード5242を展開するように構成されてもよい。
【0161】
上側ブレード5242は、T字形の断面形状を有する第1突出部5450を含んでもよい。下側ブレード5241は、T字形の断面形状を有する第2突出部5455を有してもよい。第1突出部5450および第2突出部5455は、ブレード移動要素5260の対応するT字形チャンネルによって受けられるように構成されてもよい。ブレードとブレード移動要素とのこのT字形接続は、
図27に示される蟻継ぎ接続よりも優れた耐離脱性を提供するだろう。
【0162】
図46は、矩形スロットを用いて接合された、相対するブレードとブレード移動要素との模式的な組立図である。
図46は、
図45と同様な図を示すが、ブレード移動要素のチャンネルは、矩形の断面形状を有する。具体的には、
図46は、下側ブレード6241および上側ブレード6242を示している。同じく
図46に示されるように、ブレード移動要素6260は、下側ブレード6241および上側ブレード6242を展開するように構成されてもよい。
【0163】
上側ブレード6242は、実質的に矩形の断面形状を有する第1突出部6450を含んでもよい。下側ブレード6241は、実質的に矩形の断面形状を有する第2突出部6455を有してもよい。第1突出部6450および第2突出部6455は、ブレード移動要素6260の対応する矩形形状のチャンネルによって受け入れられるように構成されてもよい。ブレードとブレード移動要素とのこの矩形形状の接続は、
図27に示す蟻継ぎ接続および
図45に示すT字形接続よりも製造がしやすいだろう。
【0164】
他の実施形態
本開示によるインプラントは、以下の項目のリストに開示されたさまざまな特徴を含んでいてもよい。
【0165】
i.)インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングと、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に延びている延伸位置とを有するブレードと、従動軸部およびブレード係合部を備えるブレード移動要素と、を備えるインプラントであって、ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間でブレードを移動させるために並進されるように構成されており、周辺フレームの内縁は、ブレードを2箇所で支持するように構成されている後縁を含む、インプラントが開示される。
【0166】
ii.)ブレードは、外側方向に延びている後向き表面を有する第1部分と、第1部分に垂直に延びている第2部分とを含むことができ、ブレードの第2部分は、後方方向に後方末端まで延びている。
【0167】
iii.)後縁は、ブレードの第1部分の後向き表面および第2部分の後方末端でブレードを支持するように構成することができる。
【0168】
iv.)後縁は、ブレードを排除力に抗して支持するように構成することができる。
【0169】
v.)ハウジングは、少なくとも一部をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作ることができる。
【0170】
vi.)インプラントは、PEEKから作られるハウジングの部分に埋め込まれている少なくとも1つのX線不透過性マーカーを含むことができる。
【0171】
vii.)X線不透過性マーカーは、インプラントの周縁の直近に配設することができる。
【0172】
X線不透過性マーカーは、ハウジングの周辺フレームに配置することができ、周辺フレームは、X線不透過性マーカーの近辺よりも、X線不透過性マーカーの直近の厚さの方が厚い。
【0173】
ix.)周辺フレームは、ねじ切り開口とねじ切り開口に隣接しているガイド開口とを有する第1端部を含むことができ、ガイド開口は、ブレード移動要素の従動端を受け入れ、インプラントは、ねじ切り開口内に取り付けられる止めねじをさらに含み、止めねじは、ブレード移動要素の従動端がガイド開口を通り抜けることができるアンロック回転位置と、ブレード移動要素の従動端がガイド開口を通って移動するのを防止されるロック回転位置との間で回転することができる。
【0174】
x.)インプラントは、周辺フレームを通って延びて、止めねじの回転制限溝に係合するピンをさらに含むことができ、止めねじのねじ切り部が回転制限溝を含み、回転制限溝は、第1溝端および第2溝端を含み、回転制限溝は、ねじ切り部の円周の1周分よりも短く延びており、インプラントの周辺フレーム内にブレード移動要素を取り付けるために、ピンが周辺フレームに部分的に延びて、回転制限溝に係合し、止めねじの抜けを防止する。
【0175】
xi.)ハウジングは、椎骨間に埋め込むように構成されている前湾角を付けて形成することができる。
【0176】
xii.)前弯角は、5~25度の範囲にすることができる。
【0177】
xiii.)インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングと、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に延びている延伸位置とを有するブレードと、従動軸部およびブレード係合部を備えるブレード移動要素と、を備えるインプラントであって、ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間でブレードを移動させるために並進されるように構成されており、ハウジングは、少なくとも一部がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作られており、少なくとも1つのX線不透過性マーカーが、PEEKから作られているハウジングの部分に埋め込まれている、インプラントが開示される。
【0178】
xiv.)X線不透過性マーカーは、インプラントの周縁の直近に配設することができる。
【0179】
xv.)X線不透過性マーカーは、ハウジングの周辺フレームに配置することができ、周辺フレームは、X線不透過性マーカーの近辺よりも、X線不透過性マーカーの直近の厚さの方が厚い。
【0180】
xvi.)厚みを増した周辺フレームは、インプラントの中央の方に半径方向内方に向く周辺フレームの表面に配設される突条を形成することができる。
【0181】
xvii.)突条は、実質的に垂直方向に延びることができ、少なくとも1つのX線不透過性マーカーは、インプラントの上側表面の直近に配設されて、突条と整列している第1X線不透過性マーカーと、インプラントの下側表面の直近に配設されて、突条と整列している第2X線不透過性マーカーとを含む。
【0182】
xviii.)インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングと、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に延びている延伸位置とを有するブレードと、従動軸部およびブレード係合部を備えるブレード移動要素と、を備えるインプラントであって、ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間でブレードを移動させるために並進されるように構成されており、ハウジングは、少なくとも一部がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作られており、少なくとも1つの係合部が周辺フレームの外面から延びており、係合部は、埋め込み処置中にインプラントを保持するように構成されている挿入ツールの把持要素を受け入れるように構成されている凹部を含む、インプラントが開示される。
【0183】
xix.)係合部は、厚さを有する突出リップと、奥行を有する凹部とを含むことができ、係合部の突出リップの厚さおよび凹部の奥行は、実質的に同じである。
【0184】
xx.)インプラントは、周辺フレームの外面から延びている2つの係合部を含むことができる。
【0185】
xxi.)インプラントの中央部に中央開口を画定する内縁を含む周辺フレームを有するハウジングと、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に上側方向に延びている延伸位置とを有する第1ブレードと、中央開口内に位置付けられて、ハウジング内の退避位置と、ブレードがハウジングから外方に下側方向に延びている延伸位置とを有する第2ブレードと、従動軸部およびブレード係合部を備えるブレード移動要素と、を備えるインプラントであって、ブレード移動要素は、退避位置と延伸位置との間で第1ブレードおよび第2ブレードを移動させるために並進されるように構成されており、第1ブレードは、第1突出部を含み、ブレード移動要素は、第1ブレードの第1突出部を受け入れるように構成されている第1チャンネルを含み、第1ブレードの第1突出部およびブレード移動要素の第1チャンネルは、ブレード移動要素の並進により第1ブレードが退避位置から延伸位置に移動するように、垂直軸に対してで角度で配列されており、第2ブレードは、第2突出部を含み、ブレード移動要素は、第2ブレードの第2突出部を受け入れるように構成されている第2チャンネルを含み、第2ブレードの第2突出部およびブレード移動要素の第2チャンネルは、ブレード移動要素の並進により第2ブレードが退避位置から延伸位置に移動するように、垂直軸に対してゼロではない角度で配列されている、インプラントが開示される。
【0186】
xxii.)第1ブレードの第1突出部およびブレード移動要素の第1チャンネルは、
蟻継ぎ接続を形成してもよく、第2ブレードの第2突出部およびブレード移動要素の第2チャンネルは、蟻継ぎ接続を形成する。
【0187】
xxiii.)第1ブレードの第1突出部およびブレード移動要素の第1チャンネルは、実質的にT字形の断面形状を有する接続を形成してもよく、第2ブレードの第2突出部およびブレード移動要素の第2チャンネルは、実質的にT字形の断面形状を有する接続を形成する。
【0188】
xxiv.)第1ブレードの第1突出部およびブレード移動要素の第1チャンネルは、実質的に矩形の断面形状を有する接続を形成してもよく、第2ブレードの第2突出部およびブレード移動要素の第2チャンネルは、実質的に矩形の断面形状を有する接続を形成する。
【0189】
さらに、本発明に関連して上記および/または下記に記載されている(特定の項目i.)~xxiv.)またはその他の)あらゆる態様、構成要素、特徴および/または項目は、特許請求の範囲または説明により定義されるように、本発明の別個の実施形態と考えることができる。いくつかの場合には、(特定の項目i.)~xxiv.)またはその他の)2つ以上の態様、構成要素、特徴および/または項目は、特許請求の範囲または説明により定義されるように、本発明の実施形態を形成するために組み合わせられてもよい。
【0190】
種々の実施形態を説明してきたが、この説明は、制限的ではなく例示的なものであり、当業者には、実施形態の範囲内にあるさらに多くの実施形態および実施態様が可能であることは明らかであろう。考えられる多くの特徴の組み合わせを添付の図面に示し、本詳細な説明で述べているが、開示された特徴の、他の多くの組み合わせが可能である。任意の実施形態の任意の特徴は、特に制限されていない限り、任意の他の実施形態の任意の他の特徴もしくは要素と組み合わせて、またはその代わりに使用してもよい。そのため、本開示において図示および/または説明される特徴のいずれも、任意の適切な組み合わせで一緒に実施してもよいことは理解されるであろう。したがって、実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその均等物に鑑みる以外で制限されてはならない。また、添付の特許請求の範囲内で、種々の修正および変更を行ってもよい。
【0191】
関連出願の相互参照
本願は、2016年10月25日に出願されたSackの米国特許出願第15/333,892号の一部継続出願(CIP)であり、その開示全体が参照により本明細書に援用される。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内の退避位置と前記ハウジングから外方に延びる延伸位置とを有するブレードと、
従動軸部およびブレード係合部を有するブレード移動要素と、を備え、
前記ブレード移動要素は、前記退避位置と前記延伸位置との間で前記ブレードを移動させることができ、
前記ハウジングの後方側部が、前記ハウジングの第1の端部と前記ハウジングの第2の端部との間を延びる後方開口を含み、前記後方開口は前記ブレード移動要素の遠位端を受け入れるように構成されている、インプラント。
【請求項2】
前記後方開口は、基本的に、垂直に方向付けられた孔である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記孔は、ハウジングの後方部に沿って完全に延びており、そのためハウジングが不連続になっている、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記ハウジングに接触し、前記後方開口にまたがるように形成されたカバーをさらに含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記ハウジングの後方部は、前記カバーの一部を受け入れるように形成された第1の凹部を含む、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記カバーを前記ハウジングの凹部内に止める一対のピンをさらに含む、請求項5に記載のインプラント。
【請求項7】
前記ブレード移動要素は、前記ブレードが退避位置にあるときにハウジングの外に配置される従動端を含み、前記ブレードは、前記ブレード移動要素の前記従動端に力が加えられたときに退避位置から延伸位置に移動する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記ブレードが延伸位置にあるときに、前記ブレード移動要素の従動端はハウジングの中に収められる、請求項7に記載のインプラント。
【請求項9】
前記ブレード移動要素の前記ブレード係合部は、少なくとも部分的に上側表面および下側表面によって区画される基本的にU字型の形状を有している、請求項7に記載のインプラント。
【請求項10】
前記ブレードが前記延伸位置にあるとき、前記ブレード係合部の前記上側表面は、前記ハウジングの上側面と実質的に同一面にあり、前記ブレード係合部の前記下側表面は、前記ハウジングの下側面と実質的に同一面にある、請求項9に記載のインプラント。
【請求項11】
前記ブレード移動要素の前記上側表面および前記下側表面は、ブレードが退避位置にあるとき、インプラントの外包絡面の内部に配置される。請求項10に記載のインプラント。
【請求項12】
前記ハウジングの上側面および下側面は互いに所定の角度(「インプラントの前弯角」という)を形成するように形成されている、請求項10に記載のインプラント。
【請求項13】
前記ブレード移動要素の前記上側表面および前記下側表面は、互いに対してある角度をなして、前記ハウジングの上側面および下側面にそれぞれ整列するように配向されている、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記ハウジングがチャンネルを含む遠位部分を有し、インプラントは前記チャンネル内に受容されるように構成されたカバーをさらに含む、請求項7に記載のインプラント。
【請求項15】
前記ブレード移動要素が近位端および遠位端を含み、前記ブレード移動要素の前記遠位端が、前記カバーを受容するように構成された切欠きを含む、請求項14に記載のインプラント。