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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032878
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】圧力スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 35/34 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
H01H35/34 A
H01H35/34 R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010978
(22)【出願日】2024-01-29
(62)【分割の表示】P 2021114052の分割
【原出願日】2021-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 聡紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍介
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】湯口 史章
(72)【発明者】
【氏名】今瀬 隆則
(72)【発明者】
【氏名】横尾 活輝
(57)【要約】
【課題】位置付手段の強度を向上し、位置付手段の調整位置の変動を抑制すると共に作動値のばらつきを防止して、調整精度を向上でき、精密に動作可能とする。
【解決手段】圧力スイッチ1が、ダイアフラム44(感圧部材)の変位を伝える伝達部材62の進退方向D11の位置を、中途位置に解除自在に位置付ける位置付手段9として、板部材90と、伝達部材62の位置付けを調整する位置調整ねじ11と、を含む。板部材90の平面部92には、長手方向に沿って伸びた凸部92aと、凸部92aの裏面側に配置される凹部92bと、が設けられ、板部材90の平面部92の短手方向における一方の端部には、長手方向に沿って伸びた折返部93が設けられる。凹部92bには、位置調整ねじ11の頂部が係合され、リセット手段10による位置付けの解除時には、折返部93がケース2における板部材90の取り付け部位であるベース体21の平板部21bに当接する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に設けられ、
低圧室と高圧室とを仕切り、前記高圧室の圧力変動により変位する感圧部材と、
前記感圧部材の変位を受けて予め設定された進退方向に移動することで当該変位を後段部位に伝える伝達部材と、
前記進退方向について、前記伝達部材が第1位置まで進行すると第1状態から第2状態へと導通状態を切り替え、前記伝達部材が前記第1位置よりも退行側の第2位置まで退行すると前記第2状態から前記第1状態へと導通状態を切り替える切替手段と、
前記伝達部材の前記進退方向における位置を、前記第1位置と前記第2位置との間の中途位置に解除自在に位置付ける位置付手段と、を備え、
前記位置付手段は、帯状をなす板部材と、前記進退方向について前記板部材がどのような位置に前記伝達部材を位置付けるかを調整する位置調整ねじと、を含み、
前記板部材の一端側を固定端とし、他端側に向けて長手方向に沿って伸びて配置される凸部が前記板部材の平面部に設けられると共に、前記凸部の裏面側に当該凸部の形状に伴った凹部が形成され、
前記凹部には、前記位置調整ねじの頂部が係合され、
前記板部材には、前記他端側に位置する自由端と、前記固定端と前記自由端の間に位置する支点部と、が設けられ、
前記支点部を曲げの支点として、前記自由端が前記進退方向に移動可能となっていることを特徴とする、圧力スイッチ。
【請求項2】
前記支点部は、前記長手方向に交差して延びるスリットを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の圧力スイッチ。
【請求項3】
前記凸部および前記凹部は、前記支点部から前記他端側に向けて形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の圧力スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧室と仕切られた高圧室の圧力変動により変位する感圧部材を備えた圧力スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感圧部材としてのダイアフラムやベローズ等を備えた圧力スイッチが知られている。かかる圧力スイッチとしては、例えば高圧室における異常高圧のような異常事象が生じた際に導通状態を切り替え、作業者がリセットボタンを押圧するまで切替え後の導通状態が維持されるマニュアルリセットタイプのものがある(例えば、特許文献1参照)。ここで、高圧室におけるどの程度の圧力状態を異常事象として導通状態を切り替えるかは、設計段階や製造段階で適宜に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-061094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したマニュアルリセットタイプの圧力スイッチには、高圧カットオフが生じた際にマイクロスイッチの一方の固定電極に可動電極が当接した第2状態を、その後、作業者がメンテナンス作業を行うまでの期間、維持する部材として位置付手段が設けられている。このような圧力スイッチでは、リセットボタンが押圧されたリセット状態において、リセットボタンの押圧により、連結部材のストッパとなる位置付手段が押し込まれ、ストッパが解除された状態となる。
【0005】
しかしながら、位置付手段は板状部材であることから撓み易いため、接点板のばね性による反力を受けて反りや歪みが発生し、作動値(リセット調整位置)に誤差や変動等のばらつきが生じる場合があった。また、位置付手段は、ベース体の平板部に1か所でねじ止め固定されているため、リセット動作時におけるリセットボタンの押し込み時にねじ止め部分を支点に回転し、調整位置にズレが生じて作動値が変動してしまう虞があった。さらに、リセット調整ねじの坐りが悪く、ねじの傾きにより、位置付手段の調整位置が変動する虞があった。よって、位置付手段の歪みを考慮して調整精度を決める必要があり、調整の幅が狭くなる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は前述したような問題に着目したもので、その目的は、位置付手段の強度を向上し、位置付手段の調整位置の変動を抑制すると共に作動値のばらつきを防止することで、調整精度を向上でき、精密に動作可能なマニュアルリセットタイプの圧力スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の圧力スイッチは、筐体の内部に設けられ、低圧室と高圧室とを仕切り、前記高圧室の圧力変動により変位する感圧部材と、前記感圧部材の変位を受けて予め設定された進退方向に移動することで当該変位を後段部位に伝える伝達部材と、前記進退方向について、前記伝達部材が第1位置まで進行すると第1状態から第2状態へと導通状態を切り替え、前記伝達部材が前記第1位置よりも退行側の第2位置まで退行すると前記第2状態から前記第1状態へと導通状態を切り替える切替手段と、前記伝達部材の前記進退方向における位置を、前記第1位置と前記第2位置との間の中途位置に解除自在に位置付ける位置付手段と、を備え、前記位置付手段は、帯状をなす板部材と、前記進退方向について前記板部材がどのような位置に前記伝達部材を位置付けるかを調整する位置調整ねじと、を含み、前記板部材の一端側を固定端とし、他端側に向けて長手方向に沿って伸びて配置される凸部が前記板部材の平面部に設けられると共に、前記凸部の裏面側に当該凸部の形状に伴った凹部が形成され、前記凹部には、前記位置調整ねじの頂部が係合され、前記板部材には、前記他端側に位置する自由端と、前記固定端と前記自由端の間に位置する支点部と、が設けられ、前記支点部を曲げの支点として、前記自由端が前記進退方向に移動可能となっているものである。
【0008】
本発明の圧力スイッチによれば、位置付手段における板部材の平面部には、長手方向に沿って伸びて配置される凸部が設けられることで、位置付手段の強度を向上し、撓み難くでき、反りや歪みの発生を抑制できる。また、平面部の凸部の裏面側は、当該凸部の形状に伴った凹部をなしており、この凹部には、位置調整ねじの頂部が係合されるので、位置調整ねじの坐りを改善し、作動値(リセット調整位置)における誤差や変動等のばらつきの発生を抑制できる。そのため、位置付手段の調整位置の変動を抑制すると共に作動値のばらつきを防止して、位置付手段による調整精度を向上できる。かくして、本発明の圧力スイッチによれば、精密に動作できる。また、この構成によれば、自由端を動かすという良好な操作性の下で、位置付手段による伝達部材の位置における中途位置への位置付けを確実に行うことができる。
【0009】
ここで、本発明の圧力スイッチにおいて、前記支点部は、前記長手方向に交差して延びるスリットを備えていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の圧力スイッチにおいて、前記凸部および前記凹部は、前記支点部から前記他端側に向けて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位置付手段の強度を向上し、位置付手段の調整位置の変動を抑制すると共に作動値のばらつきを防止することで、調整精度を向上でき、精密に動作可能なマニュアルリセットタイプの圧力スイッチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る圧力スイッチの外観斜視図である。
図2図1における圧力スイッチの内部構造をV11-V11線に沿って模式的に示す断面図である。
図3図2における位置付手段とリセット手段とを取り出して示す斜視図である。
図4図3における位置付手段を示す拡大斜視図である。
図5】実施形態に係る圧力スイッチの動作において、高圧室の圧力が異常な高圧まで上昇する異常高圧が生じ、その後に圧力が降下するまでの動作を示す図である。
図6図5における動作に続いて、リセット手段に対するリセット操作が行われるときの圧力スイッチの動作を示す図である。
図7図4における調整手段による事前調整において、位置付手段が作動点に対応した位置へと動かされるまでの手順を示す図である。
図8図7における手順に続いて、伝達部材がリセット調整位置に位置付けられるまでの手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る圧力スイッチの一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る圧力スイッチは、空調、冷熱、自動車、各種制御用アクチュエータ等の作動媒体を圧力流体として、その流体圧力の検出に利用されるものである。
【0014】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る圧力スイッチ1は、全体として箱状の筐体としてのケース2と、ケース2の上部に設けられる切替手段としてのマイクロスイッチ3と、ケース2の下部に固定されるダイアフラムアッセンブリ4と、を備える。また、圧力スイッチ1は、ダイアフラムアッセンブリ4に対して上下方向に進退自在に支持された作動部材5と、作動部材5の移動をマイクロスイッチ3に伝達する伝達機構6と、を備える。さらに、圧力スイッチ1は、ダイアフラムアッセンブリ4のダイアフラム(感圧部材)44を付勢して初期圧縮力を付加する板ばね7と、板ばね7の付勢力を調節する板ばね調節手段8と、を備える。
【0015】
ケース2は、金属製のベース体21と、ベース体21を内部に保持する箱体22と、箱体22の上部開口を塞いで取り付けられる蓋体23(支持体)と、を備えている。ベース体21は、有底円筒状の筒状部21aと、筒状部21aの上端に連続して水平方向外方に延びる平板部21bと、を有して一体に形成されている。筒状部21aの内部にはダイアフラムアッセンブリ4が支持されると共に、筒状部21aの底面中央に設けられた開口を通してダイアフラムアッセンブリ4が有する接手部材Pが外部に露出している。
【0016】
蓋体23は絶縁性の樹脂で形成されている。この蓋体23は、天板部23aと、環状部23bと、垂下片部23cと、を有して形成されている。天板部23aは、マイクロスイッチ3が取り付けられる壁部であり、環状部23bは、側面部22bに沿って箱体22に挿入される四角環状の部位である。また、垂下片部23cは、環状部23bの四隅から下方に延びてベース体21の平板部21bに当接する部位である。このような垂下片部23cにより後述の伝達部材62のストロークが安定するように組み立てることができる。環状部23bには、箱体22の係止部22cに係止する係止爪23dが設けられている。箱体22の側面部22bの内面には、環状部23bと密接する環状の止水部材24が設けられている。
【0017】
箱体22は、全体として角筒状に形成されると共に、その底面部22aに設けられた円形の開口に筒状部21aが挿通されてベース体21が保持されている。箱体22の側面部22bには、蓋体23との係止のための複数の係止部22cが形成されている。
【0018】
マイクロスイッチ3は、ケース2の蓋体23の内部に設けられ、蓋体23の内部にて上下に対向して設けられる一対の固定電極31,32と、上下の固定電極31,32間を移動自在に設けられる可動電極33と、を備える。また、マイクロスイッチ3は、一対の固定電極31,32に接続されて蓋体23の外部に延びる一対の第1端子34,34’と、可動電極33が接合される板ばねによって構成された導通部材35と、を備える。さらに、マイクロスイッチ3は、導通部材35に接続されて蓋体23の外部に延びる第2端子36と、上側の固定電極31の位置を調節するための調節ねじ37と、を備える。導通部材35は、第2端子36から延びて先端に可動電極33が固定される導通片35aと、第2端子36から延びて中間部に伝達機構6が接続される可動片35bと、可動電極33を固定電極31,32の何れかに付勢するスナップ片35cと、を有している。後述するように伝達機構6を介してダイアフラム44の変位が可動片35bに伝えられ、この変位に応じて可動片35bが動かされる。このマイクロスイッチ3は、上側の固定電極31に可動電極33が当接してこれらが導通される低圧状態と、下側の固定電極32に可動電極33が当接してこれらが導通される高圧状態と、を検出する。マイクロスイッチ3は、このようにダイアフラム44の変位に応じて導通状態を切り替えることによって、一対の第1端子34,34’と第2端子36との間の導通および遮断を切り替えるように構成されている。
【0019】
ダイアフラムアッセンブリ4は、ベース体21の筒状部21aに支持される下保持板42と、上保持板41と下保持板42との間に保持されるスペーサ43、ダイアフラム44、底板部材45、および上保持板41と、を備える。上保持板41は、全体円盤状に形成されると共に、その中心部を上下に貫通して作動部材5を挿通させて上下に案内する挿通孔41aを有して形成されている。下保持板42は、全体円筒状に形成されると共に、スペーサ43、ダイアフラム44および底板部材45を保持するための段部42aと、上向きに延びて上保持板41を加締め固定するための加締め片42bと、を有して形成されている。ダイアフラムアッセンブリ4では、上保持板41と下保持板42の段部42aとの間にスペーサ43、ダイアフラム44および底板部材45が挟まれている。そして、加締め片42bが内側に向かって加締められることで、ダイアフラム44および底板部材45の周縁部が上保持板41と下保持板42の間に保持されている。
【0020】
ダイアフラム44は、複数枚の金属製薄板材を重ねて全体円板状に形成されると共に、自然状態において上方に向かって凸となるドーム状の凸状部44aを有して構成されている。底板部材45は、全体円板状の金属板材から中央部が下方に向かって膨らんだ皿状に形成され、その中央部には継手部材Pが固定される貫通孔45aが形成されている。ダイアフラム44と底板部材45とスペーサ43とは、気密性および耐圧性を確保できるように溶接等により互いに接合されている。このダイアフラムアッセンブリ4では、ダイアフラム44と底板部材45とによって囲まれた空間によって高圧室46が形成され、この高圧室46に継手部材Pを介して高圧流体が流入するようになっている。また、ダイアフラム44とスペーサ43と上保持板41とによって囲まれた空間によって低圧室47が形成され、この低圧室47は、挿通孔41aを通して箱体22の内部空間に連通されることで、大気圧と同等の内圧になっている。従って、高圧室46に流入した高圧流体の圧力変動に応じて感圧部材であるダイアフラム44が上下に変位するように構成されている。このように、ダイアフラム44は、低圧室47と高圧室46とを仕切り、高圧室46の圧力変動により変位する感圧部材となっている。
【0021】
板ばね7は、一端部71がベース体21に固定され、他端部72が板ばね調節手段8に連結されている。板ばね7の平面視略中央部には、作動部材5の第2軸部53を挿通させる挿通孔73が設けられ、この挿通孔73の周辺部下面に作動部材5の拡径部52の一部上面が当接するようになっている。板ばね調節手段8は、ベース体21の平板部21bを貫通する調節ねじ81と、板ばね7の上面に当接して設けられて板ばね7を貫通した調節ねじ81に螺合するスライダ82と、を有して構成されている。調節ねじ81は、箱体22とベース体21とを組み付ける前に、平板部21bの下側から回転操作可能であり、スライダ82は、ケース2の内部に回転不能かつ上下スライド可能に支持されている。調節ねじ81を回転させることで、スライダ82が上下移動するように構成されている。従って、調節ねじ81を締め込んでスライダ82を下方に移動させると、板ばね7の他端部72を下降させ、調節ねじ81を緩めてスライダ82を上方に移動させると、板ばね7の他端部72を上昇させ、これにより板ばね7の付勢力が調整されるようになっている。このような板ばね7の付勢力は、作動部材5を介してダイアフラム44に伝達され、ダイアフラム44の凸状部44aが下方に押圧されることで初期圧縮力が付加される。また、板ばね7の付勢力を調整することによりダイアフラム44の押圧力を調整することができ、検知する圧力値の範囲を調整することができる。
【0022】
作動部材5は、上下に延びて上保持板41の挿通孔41aに挿通される第1軸部51と、上保持板41の上面に沿って水平方向に拡径された拡径部52と、拡径部52から上方に延びる第2軸部53と、を有して形成されている。作動部材5は、第1軸部51が挿通孔41aに案内されることで上下方向に進退自在に支持され、第1軸部51の下端がダイアフラム44の凸状部44aの中心に当接するように設けられている。従って、ダイアフラム44の変位に伴って作動部材5が上下移動すると共に、板ばね7の付勢力を受けた作動部材5によってダイアフラム44を高圧室46に向かって付勢することで、ダイアフラム44に初期圧縮力を付加するように構成されている。
【0023】
拡径部52は、その下面が上保持板41の上面に当接可能に設けられ、この当接位置よりも下方への作動部材5の移動を規制するために設けられる。従って、ダイアフラム44が初期圧縮状態を超えて高圧室46の側に変位することが規制されている。また、第2軸部53は、その上端が球面状に面取りされており、この上端が後述の伝達機構6の連結部材61に当接するようになっている。
【0024】
伝達機構6は、金属板材から形成された連結部材61と、伝達部材62と、連結部材61を回動自在に支持する軸部材63と、を有して構成されている。連結部材61は、板ばね7を挟んでダイアフラムアッセンブリ4の上方に対向配置されており、作動部材5の第2軸部53が下方から当接すると共に、伝達部材62が連結されている。この連結部材61が、軸部材63によってベース体21に対して回動自在に軸支されている。伝達部材62は、連結部材61から上方に延び、その上端部がマイクロスイッチ3の導通部材35の可動片35bに係合している。
【0025】
この伝達機構6は、作動部材5および連結部材61を介して伝達部材62がダイアフラム44の変位を受ける。伝達部材62は、この変位を受けて図中の上下方向に当たる進退方向D11に移動することで当該変位を、後段部位たるマイクロスイッチ3における導通部材35の可動片35bに伝える。
【0026】
ここで、本実施形態では、マイクロスイッチ3では、スナップ片35cを有していることから、後述のリセット操作に関わる位置付手段9を備えていないと仮定すると、伝達部材62の動きに応じて次のように動作するようになっている。
【0027】
すなわち、前述した仮定の下では、進退方向D11について、スナップ片35cが耐え得る限度位置よりも進行側(上側)の第1位置まで伝達部材62が進行すると第1状態から第2状態へと導通状態を切り替える。第1状態が、上側の固定電極31に可動電極33が当接した状態であり、第2状態が、下側の固定電極32に可動電極33が当接した状態である。本実施形態の圧力スイッチ1は、高圧室46に異常高圧が生じたときに導通状態を第1状態から第2状態へと導通状態を切り替える高圧カットオフのスイッチとなっている。
【0028】
そして、前述した仮定の下では、この切換え後、すなわちカットオフ後に切替え前の第1状態に復帰する際には、伝達部材62が第1位置よりも退行側(下側)の第2位置まで退行すると前述した第2状態から第1状態へと導通状態を切り替える。つまり、このマイクロスイッチ3は、高圧カットオフを実行するトリガとしての設定値である第1位置(動作点)と、元の状態に復帰させるトリガとしての設定値である第2位置(戻り点)と、が不一致のスイッチとなっている。
【0029】
本実施形態では、この圧力スイッチ1には、高圧カットオフが生じた際に下側の固定電極32に可動電極33が当接した第2状態を、その後の作業者のメンテナンス作業などのために維持する部材として位置付手段9が設けられている。また、その第2状態の維持を解除して上側の固定電極32に可動電極33が当接したカットオフ前の第1状態に復帰させるためのリセット手段10も設けられている。
【0030】
位置付手段9は、図3に示すように、図中に点線で示された伝達部材62の進退方向D11における位置を、カットオフの作動点となる第1位置と戻り点となる第2位置との間の中途位置に解除自在に位置付ける部材である。この位置付けは、伝達部材62と共に伝達機構6をなす連結部材61を介して行われる。なお、図3では、位置付手段9が見えるようにリセット手段10を除いた図と、位置付手段9とリセット手段10との双方を示した図とを並べて図示している。
【0031】
連結部材61は、一端側611の軸部材63に沿った中心軸63a回りに回動可能に軸支され他端側612が進退方向D11に移動可能な回動部材である。そして、中心軸63aから離れた位置に伝達部材62が連結され、中心軸63aと伝達部材62の連結箇所613との中間位置614でダイアフラム44の変位を受けて回動することで伝達部材62を進退方向D11に移動させる。
【0032】
位置付手段9は、この連結部材61の他端側612における進退方向の退行側(下側)を向いた裏面に当接し、当該他端側612を進退方向D11の進行側(上側)に押し上げて、伝達部材62の前述した中途位置に対応した位置にこの他端側612を位置付ける。
【0033】
この位置付手段9は、図3および図4に示すように、帯状をなす板部材90と、進退方向D11について板部材90がどのような位置に伝達部材62を位置付けるかを調整する位置調整ねじ11と、を含んで構成される。すなわち、位置付手段9は、伝達部材62を前述した中途位置に位置付けるように事前調整を受けることとなっており、本実施形態に係る圧力スイッチ1の位置付手段9には、このような事前調整を行うための調整手段である位置調整ねじ11が設けられている。板部材90は、金属板を折り曲げて形成された板金加工部品であり、当接部分91と、平面部92と、を有している。位置調整ねじ11は、その頂部が平面部92(具体的には、後述する凹部92b)に係合するように配置される。
【0034】
位置付手段9における当接部分91は、平面部92における長手方向の略中央から折起こされた状態で連結して形成されている。当接部分91は、進退方向D11に延在すると共に当該進退方向D11に対する交差方向D12、すなわち板金加工における曲げ戻し方向に転倒可能となっている。そして、図2に示すように、外壁側に若干倒れた起立状態において連結部材61の他端側612の裏面に当接する。
【0035】
また、平面部92は、一端が固定用ねじ901によってベース体21の平板部21bにねじ止めされた固定端921で、他端が進退方向D11に移動可能な自由端922となっている。平面部92の固定端921側には、固定用ねじ901が挿通される固定用孔921aが設けられている。また、平面部92には、前述した位置調整ねじ11による事前調整時における当該平面部92の曲げの支点となるスリット923が形成されている。
【0036】
本実施形態の場合、平面部92には、長手方向に沿って伸びて配置される補強リブとしての凸部92aが設けられている。凸部92aの裏面側は、当該凸部92aの形状に伴った凹部92bをなしている。凹部92bには、位置調整ねじ11の頂部が係合される。つまり、凹部92bは、係合される位置調整ねじ11の頂部を当該位置調整ねじ11の調整量(ねじ込み量)に応じて平面部92の長手方向に沿ってガイド可能となっている。
【0037】
ここで、凸部92aおよび凹部92bは、平面部92において、スリット923付近から、位置調整ねじ11が係合される部位と被らない自由端922に亘って設けられることが好ましい。これは、凹部92bの終端部が、位置調整ねじ11の係合される部位と被ってしまうと、前述した位置調整ねじ11による事前調整の際に、位置調整ねじ11が凹部92bによるガイドレーンから外れ、引っかかりなどによって前述した事前調整が困難となる場合があるためである。このように、凸部92aおよび凹部92bを設けることにより、前述した曲げの支点から位置調整ねじ11の頂部が係合される部位にかけて、板部材90の強度を確保することが可能となる。なお、凸部92aの突出量(すなわち、凹部92bの深さ)は、板部材90の板厚の倍になると断面2次モーメントが3乗に近くなるため、板部材90の板厚と同等であることが好ましい。また、ここでは、凸部92aおよび凹部92bが平面部92上の略中心に長手方向に沿って1本のみ設けられた場合について述べるが、位置調整ねじ11の頂部と係合可能であれば、複数本設けられていても良い。このとき、補強リブとしての凸部92aおよび凹部92bは、平面部92の短手方向に波形状に形成されても良い。
【0038】
また、板部材90において、平面部92の短手方向における一方の端部には、平面部92の長手方向に沿って伸びて配置される折返部93が設けられている。折返部93は、平面部92の短手方向における一方の端部を屈曲することで形成されており、凸部92aと同様に板部材90を補強する役目を果たす。折返部93は、凸部92aおよび凹部92bと同様に、平面部92に設けられるスリット923付近から自由端922に亘って設けられることが好ましい。これにより、前述した曲げの支点から位置調整ねじ11の頂部が係合される部位にかけて、板部材90の更なる強度を確保することが可能となる。このような位置付手段9において、リセット手段10(図3参照)による位置付けの解除時には、折返部93がケース2における板部材90の取り付け部位であるベース体21の平板部21bに当接するようになっている。すなわち、折返部93は、リセット手段10による位置付けの解除時における板部材90の回転を防止する役目も果たす。なお、折返部93の進退方向D11の長さは、事前調整後に折返部93の先端がベース体21の下面(板厚を含めた最下部)より下にあることが好ましい。
【0039】
また、位置付手段9は、伝達部材62を前述した中途位置に位置付けるように事前調整を受けることとなっており、本実施形態の圧力スイッチ1には、このような事前調整を行うための調整手段である位置調整ねじ11が設けられている。位置調整ねじ11は、進退方向D11について位置付手段9の当接部分91が連結部材61を介してどのような位置に伝達部材62を位置付けるかを調整する部材であり、連結部材61の他端側612に対する当接位置を進退方向D11に進退させて調整する。具体的には、位置調整ねじ11は、進退方向D11について位置付手段9における平面部92の自由端922を動かすことで、連結部材61の他端側612に対する当接部分91の当接位置を進退方向D11に進退させる。この位置調整ねじ11は、圧力スイッチ1の組立工程でのみアクセス可能な調整ねじとなっている。
【0040】
リセット手段10は、位置付手段9による伝達部材62の位置付けを解除して、当該伝達部材62を、進退方向D11に移動可能なフリー状態に移行させる部材である。このリセット手段10は、位置付手段9における当接部分91を連結部材61の他端側612の裏面から離隔することで、伝達部材62の位置付けを解除する。すなわち、リセット手段10は、起立状態の当接部分91を前述した交差方向D12に押圧して転倒させることで、当接部分91を他端側612の裏面から離隔する。
【0041】
このリセット手段10は、図2に示されているように、円筒ケース101に棒状部分としてリセットボタン102と、付勢部分としてのコイルバネ103と、が収められたユニット構成となっている。リセットボタン102は、交差方向D12に延在して一端で位置付手段9における当接部分91を押圧する。コイルバネ103は、リセットボタン102を当接部分91から離す方向に付勢する。
【0042】
ここで、圧力スイッチ1における箱体22は、前述した位置付手段9を内側に収める筒状の外壁としての側面部22bを有した筐体となっている。リセット手段10は、この側面部22bにおける位置付手段9に応じた位置に設けられた貫通孔22b-1に当該側面部22bから位置付手段9へと向かうように嵌入されている。貫通孔22b-1の内周面には雌ねじが切られ、リセット手段10の円筒ケース101の外周面には雄ねじが切られている。ユニット構成のリセット手段10は、貫通孔22b-1に螺入して取り付けられる。また、円筒ケース101の内周面と棒状のリセットボタン102の外周面との間にはリング状のパッキン104が挟み込まれており両者間の気密を保つように密閉されている。
【0043】
また、図1に示されているように、リセット手段10の円筒ケース101において外部に露出している部分にいわゆる蟹目状の2カ所の小袋穴10aが設けられている。貫通孔22b-1に対するリセット手段10の螺入は、これらの小袋穴10aに専用工具側の突起を差し込んで捩じ込むことで行われる。
【0044】
ここで、このように構成された圧力スイッチ1の動作について、図5および図6を参照して説明する。なお、図5および図6には、図2に示す圧力スイッチ1の内部部品の動作状態と、この内部部品の動作に応じたマイクロスイッチ3の切替動作と、がそれぞれ模式的に示されている。マイクロスイッチ3の切替動作については、連結部材61の他端側612に応じた伝達部材62を表す「*」でその位置が示されている。
【0045】
図5のステップS11に示されているように、異常高圧発生前の通常動作時には、位置付手段9の当接部分91が連結部材61の他端側612を進退方向D11の進行側(上側)に押し上げている。これにより、伝達部材62は、第1位置としてのカットオフの作動点P11と、これよりも退行側(下側)の第2位置としての復帰への戻り点P12と、の中途位置に位置付けられている。この中途位置は、リセット手段10によって位置付けの解除を受ける位置付手段9によって調整されたリセット調整位置P13となっている。ステップS11の段階では、カットオフ前であり、図2に示されているようにマイクロスイッチ3における上側の固定電極31に可動電極33が当接した第1状態(ON状態)となっている。
【0046】
次に、ステップS12に示されているように、異常高圧が発生すると、作動部材5を介して連結部材61がダイアフラム44の変位を受けて回動する。その結果、連結部材61の他端側612に連結された伝達部材62が進退方向D11の進行方向D111に作動点P11まで移動する。これを受けて、マイクロスイッチ3の導通状態が、下側の固定電極31に可動電極33が当接した第2状態(OFF状態)に切り替わる。このとき、連結部材61の他端側612は、位置付手段9の当接部分91から離れる。
【0047】
その後、ステップS13に示されているように圧力が降下すると、作動部材5を介して連結部材61がダイアフラム44の変位を受けて圧力上昇時とは逆向きに回動する。その結果、伝達部材62が進退方向D11の退行方向D112に移動する。但し、このときの移動は、連結部材61の他端側612が位置付手段9の当接部分91に当接した段階で停止する。これにより、伝達部材62は、進退方向D11について戻り点P12よりも進行側のリセット調整位置P13に位置付けられることとなり、マイクロスイッチ3の導通状態の切り替えは行われない。その結果、圧力上昇時の第2状態(OFF状態)が維持される。メンテナンス要員等の作業者は、このマイクロスイッチ3の導通状態により、たとえその時点で圧力が降下していたとしても、異常高圧が発生していたことを認識し、予め定められたメンテナンス作業を行うこととなる。
【0048】
メンテナンス作業の終了後、マイクロスイッチ3の導通状態をステップS11の第1状態(ON状態)に復帰させるためのリセット操作が行われる。
【0049】
まず、図6のステップS14に示されているように、作業者がリセット手段10におけるリセットボタン102を交差方向D12に押圧する。すると、このリセットボタン102によって位置付手段9の当接部分91が押されて転倒方向D121に転倒する。この転倒により、当接部分91による連結部材61の他端側612を介した伝達部材62の位置付けが解除されて進退方向D11の退行方向D112に、位置付手段9による干渉を受けずに降下する。この降下は、前述した戻り点P12を過ぎて、位置付手段9による位置付けを受ける前の初期位置まで進む。この初期位置は、後述の調整手順によって伝達部材62がリセット調整位置P13に位置付けられる前のリセット調整前位置P14となる。このリセット調整前位置P14が、進退方向D11について戻り点P12よりも退行側に位置しているので、マイクロスイッチ3の導通状態が第1状態(ON状態)に復帰する。この段階では、位置付手段9の当接部分91と連結部材61の他端側612との間には間隙が開いており、これにより伝達部材62が進退方向D11に移動可能なフリー状態となる。
【0050】
その後、ステップS15に示されているように、作業者がリセット手段10におけるリセットボタン102の押圧を解除すると、コイルバネ103の付勢によってリセットボタン102が矢印D122方向に戻る。その結果、位置付手段9の当接部分91は、自身の剛性によって矢印D123方向に、リセット調整位置P13に対応した位置へと復位する。復位した当接部分91は、連結部材61の他端側612を裏面側から押し上げることとなり、これを受けて、伝達部材62は進退方向D11の進行方向D111に移動して再びリセット調整位置P13に位置付けられる。このリセット調整位置P13は、作動点P11よりも進退方向D11の退行側(下側)なので、このときの伝達部材62の移動ではマイクロスイッチ3の導通状態は切り替わらずに、第1状態(ON状態)が維持される。この段階において、前述した図5のステップS11の状態に戻ることとなる。
【0051】
ここで、前述したように、伝達部材62のリセット調整位置P13への位置付けは、図4に示す位置調整ねじ11による事前調整によって行われる。以下、この事前調整の手順について、図7および図8を参照して説明する。図7および図8においても、図2に示す圧力スイッチ1の内部部品の動作状態と、この内部部品の動作に応じたマイクロスイッチ3の切替動作と、がそれぞれ模式的に示されている。マイクロスイッチ3の切替動作については、連結部材61の他端側612に応じた伝達部材62を表す「*」でその位置が示され、位置付手段9を表す「×」でその位置、すなわち、この位置付手段9において連結部材61の他端側612に当接してこれを動かす当接部分91の位置が示されている。
【0052】
まず、図7のステップS21に示す未調整段階では、図4にも示したように、位置調整ねじ11が没しており、位置付手段9は、ベース体21の平板部21bに平面部92が接する未調整位置に位置し、連結部材61の他端側612の裏面から離隔している。その結果、伝達部材62は、進退方向D11について作動点P11および戻り点P12の何れよりも退行側となるリセット調整前位置P14に位置することとなる。
【0053】
調整の第1段階であるステップS22では、連結部材61が強制的に動かされて伝達部材62が進退方向D11のうちの進行方向D111に動かされる。この連結部材61を介した伝達部材62の強制移動は、マイクロスイッチ3の導通状態が、下側の固定電極31に可動電極33が当接した第2状態(OFF状態)に切り替わる作動点P11を超えるまで続けられる。この間、位置付手段9は不動のまま未調整位置に留められる。ここで、本実施形態では、伝達部材62の強制移動が、連結部材61に直にアクセスして動かすことで行われる。但し、伝達部材62の強制移動の手法は、これに限るものではなく、例えば高圧室46の内圧を強制的に上昇させることでダイアフラム44および作動部材5を介して連結部材61を動かす手法などであっても良い。
【0054】
第2段階のステップS23では、調整ねじである位置調整ねじ11が進行方向D111にねじ込まれて位置付手段9が進行方向D111に進行する。位置調整ねじ11のねじ込みは、伝達部材62を作動点P11に位置付けている連結部材61の他端側612の裏面に、位置付手段9の当接部分91が当接するまで続けられる。この間、連結部材61が拘束されてその位置が維持され、これにより伝達部材62は作動点P11を超えた位置に留められる。
【0055】
図8に示すように、第3段階のステップS24では、連結部材61の拘束が解除されると共に、位置調整ねじ11が退行方向D112に戻されて位置付手段9が退行方向D112に退行し、これに追随して連結部材61が動いて伝達部材62が退行する。位置調整ねじ11の戻しは、マイクロスイッチ3の導通状態が、上側の固定電極31に可動電極33が当接した第1状態(ON状態)に切り替わる戻り点P12に伝達部材62が達するまで続けられる。この第3段階のステップS24の操作は、位置付手段9を動かして戻り点P12の位置を探る操作となっている。
【0056】
最後の第4段階のステップS25では、位置調整ねじ11がステップS24とは逆に進行方向D111にねじ込まれて位置付手段9が進行方向D111に進行し、これに追随して連結部材61が動いて伝達部材62が戻り点P12から作動点P11に向かって進行する。このときの位置調整ねじ11のねじ込みは、伝達部材62が作動点P11に達する前に停止される。このときのねじ込み量は、ねじピッチなどに基づいて予め定められたねじ込み量となる。これにより、伝達部材62が作動点P11と戻り点P12との間の中途位置であるリセット調整位置P13に位置付けられて事前調整が終了する。
【0057】
以上に説明した実施形態の圧力スイッチ1によれば、位置付手段9における板部材90の平面部92には、長手方向に沿って伸びて配置される凸部92aが設けられることで、位置付手段9の強度を向上し、撓み難くでき、反りや歪みの発生を抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の圧力スイッチ1によれば、平面部92の凸部92aの裏面側は、当該凸部92aの形状に伴った凹部92bをなしており、この凹部92bには、位置調整ねじ11の頂部が係合される。これにより、位置調整ねじ11の坐りを改善し、作動値(リセット調整位置)における誤差や変動等のばらつきの発生を抑制できる。さらに、板部材90の平面部92の短手方向における一方の端部には、長手方向に沿って伸びて配置される折返部93が設けられているので、リセット手段10による位置付けの解除時には、折返部93がケース2における板部材90の取り付け部位であるベース体21の平板部21bに当接し、位置付手段9の回転を防止できる。そのため、位置付手段9の調整位置の変動を抑制すると共に作動値のばらつきを防止して、位置付手段9による調整精度を向上できる。かくして、本実施形態の圧力スイッチ1によれば、精密に動作できる。
【0059】
ここで、折返部93は、平面部92の短手方向における一方の端部が屈曲して形成されることが好ましい。この構成によれば、平面部92の強度をより向上できる上、折返部93が平面部92と一体に構成されるため、部品点数の増加を回避できる。
【0060】
また、本実施形態の圧力スイッチ1において、一端側に配置された中心軸63a回りに回動自在に軸支され、他端側が進退方向D11に移動可能な回動部材で、中心軸63aから離れた位置に伝達部材62が連結され、中心軸63aと伝達部材62の連結箇所との中間位置614で感圧部材の変位を受けて回動することで伝達部材62を進退方向D11に移動させる連結部材61を備え、位置付手段9が、平面部92から進退方向D11に延びて設けられ、連結部材61の他端側612の裏面に当接する当接部分91を更に備え、平面部92は、一端が固定端921で他端が進退方向D11に移動可能な自由端922であり、位置調整ねじ11が、進退方向D11について自由端922を動かすことで、連結部材61の他端側612に対する当接部分91の当接位置を進退方向D11に進退させることが好ましい。
【0061】
このような構成によれば、連結部材61の他端側612に対する位置付手段9の当接位置を進退させて調整するという操作性の良好な手法により、位置付手段9による伝達部材62の中途位置への位置付けを確実に行うことができる。また、厳密な部品寸法管理が不要となるため、部品価格の上昇を抑制できる。さらに、平面部92における自由端922を動かすという良好な操作性の下で、当接位置、延いては位置付手段9による伝達部材62の位置における中途位置への位置付けを確実に行うことができる。
【0062】
なお、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の圧力スイッチの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、圧力スイッチの一例として、一対の第1端子34,34’と第2端子36を備え、切替手段としてのマイクロスイッチ3の導通状態を切り替えることで、これら3つの端子間のON/OFFを切り替える圧力スイッチ1が例示されている。しかしながら、圧力スイッチはこれに限るものではなく、端子数や切替手段の導通状態の切り替えによって端子間の導通状態をどのように切り替えるか等といった具体的なスイッチ構成は適宜に設定し得るものである。
【0064】
また、上述した実施形態では、圧力スイッチの一例として、位置付手段9が、連結部材61の軸支された一端側611とは反対の他端側612の裏面に当接して押し上げて伝達部材62の位置づけを行う圧力スイッチ1が例示されている。また、本実施形態では、リセット手段10は、位置付手段9を連結部材61から離隔することで位置付けを解除することとなっている。しかしながら、位置付手段による伝達部材の位置付けやリセット手段による位置付け解除の具体的な構成は、これらに限るものではなく、任意に設定し得るものである。但し、連結部材61を介した位置付けや位置付手段9を連結部材61から離隔させることによる位置付け解除によれば、リセット手段から伝達部材を分離してリセット状態における設定値のずれを効果的に回避することができる点は上述した通りである。
【0065】
また、上述した実施形態では、圧力スイッチの一例として、リセット手段10が位置付手段9の当接部分91を押圧して転倒させることで連結部材61から離隔させ、伝達部材62に対する位置付け解除を行う圧力スイッチ1が例示されている。しかしながら、位置付部材を連結部材から離隔させる構成についても、離隔が可能であればその具体的構成を問うものではない。但し、当接部分91を転倒させる構成を採用することで、連結部材から効果的に離隔することができる点も上述した通りである。
【0066】
また、上述した実施形態では、圧力スイッチの一例として、リセット手段10が棒状部分としてのリセットボタン102と付勢部分としてのコイルバネ103とを有した圧力スイッチ1が例示されている。しかしながら、リセット手段はこれに限るものではなく、位置付手段の当接部分を押圧して転倒可能であれば、その具体的な構成を問うものではない。但し、棒状部分と付勢部分を有した構成とすることでリセット手段の操作性を向上させ得る点も上述した通りである。
【0067】
また、上述した実施形態では、圧力スイッチの一例として、リセット手段10が箱体22の側面部22bに設けられた貫通孔22b-1に嵌入して取り付けられる圧力スイッチ1が例示されている。しかしながら、リセット手段の取付け構成は、これに限るものではなく、圧力スイッチの筐体内の一部分をリセット手段のケースとして利用するなどといった構成としても良い。但し、貫通孔22b-1にリセット手段10を嵌入する構成を採用することで取り付けを容易に行うことができる点は上述した通りである。また、リセット手段10を取り付けずに貫通孔22b-1を蓋部材で塞ぐなどしてオートリセットタイプの圧力スイッチを容易に構築することができる点も上述した通りである。また、本実施形態では、リセット手段10において外部に露出している部分にいわゆる蟹目状の2カ所の小袋穴10aが開いておりその小袋穴10aに専用工具を差し込んで締結する構造となっている。しかしながら、リセット手段は、この構成に限らず、外部に露出している部分に袋穴がなく外周が正六角形等多角形状で、メガネレンチなどの汎用工具により締結する構造であっても良い。また更に、リセット手段は、外部に露出している部分の円筒状の一部が平行に切り取られた平面が形成され、その平面によりスパナなどの汎用工具により締結する構造であっても良い。リセット手段の固定方法は組立性・固定強度等により適宜選択される。
【符号の説明】
【0068】
1 圧力スイッチ
2 ケース
22 箱体
22b 側面部(外壁)
22b-1 貫通孔
3 マイクロスイッチ
31,32 固定電極
33 可動電極
34,34’ 第1端子
35 導通部材
36 第2端子
4 ダイアフラムアッセンブリ
44 ダイアフラム(感圧部材)
5 作動部材
6 伝達機構
61 連結部材
611 一端側
612 他端側
62 伝達部材
63 軸部材
63a 中心軸
7 板ばね
8 板ばね調節手段
9 位置付手段
90 板部材
91 当接部分
92 平面部
92a 凸部
92b 凹部
921 固定端
922 自由端
923 スリット
93 折返部
10 リセット手段
101 円筒ケース
102 リセットボタン
103 コイルバネ
104 パッキン
11 位置調整ねじ
D11 進退方向
D12 交差方向
P11 作動点
P12 戻り点
P13 リセット調整位置(中途位置)
P14 リセット調整前位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8