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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024032894
(43)【公開日】2024-03-12
(54)【発明の名称】磁性壁パネルおよび磁性壁材シート
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240305BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
E04F13/08 G
E04F13/07 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011728
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2020095335の分割
【原出願日】2020-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】長澤 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】笠原 修
(57)【要約】
【課題】防耐火性に加え、耐擦傷性、消去性および低光沢性の要件を同時に兼ね備えた磁性壁パネルおよび磁性壁材シートを提供すること。
【解決手段】強磁性材料を含み弾力性を有する強磁性シート20と、硬質化機能およびマット化機能を備えるとともに片面にインキ層32Aを有する透明なコートフィルム40とを、コートフィルム40のインキ層32Aを強磁性シート20に対面させて、下からこの順で接着剤Gを介して積層させた積層体からなる磁性壁材シート6Aと、強磁性シート20における上記インキ層32Aおよびコートフィルム40の積層の側と反対側の面において当該磁性壁材シート6Aと一体化した無機ボード10とを備える磁性壁パネル6であって、防耐火性に関する所定試験の評価基準を満たすとともに、壁面11となる表面が4H以上の鉛筆硬度とされた構成とする。
【選択図】図15

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性材料を含み弾力性を有する強磁性シートと、硬質化機能およびマット化機能を備えるとともに片面にインキ層を有する透明なコートフィルムとを、コートフィルムのインキ層を強磁性シートに対面させて、下からこの順で接着剤を介して積層させた積層体からなる磁性壁材シートと、強磁性シートにおける上記インキ層およびコートフィルムの積層の側と反対側の面において当該磁性壁材シートと一体化した無機ボードとを備え、
防耐火性に関する下記試験の評価基準を満たすとともに、壁面となるコートフィルムの表面が4H以上の鉛筆硬度である磁性壁パネルであって、
強磁性シートの厚さが80μ~400μとされ、
強磁性シートとコートフィルムとの積層体の総厚が155μ~540μとされ、
コートフィルム単体における強磁性シートと非対向面側になる表面の鉛筆硬度が上記積層体でのコートフィルムの表面の鉛筆硬度未満とされ、
コートフィルム単体における強磁性シートと非対向面側になる表面の鉛筆硬度が、壁面となるコートフィルムの表面の鉛筆硬度未満でありながら、下層に強磁性シートが配置される積層構造とすることにより、弾力性を有する強磁性シートがコートフィルムのクッションになることで、壁面となるコートフィルムの表面の鉛筆硬度が4H以上になることを特徴とする磁性壁パネル。
〔発熱性試験〕
ISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、
〔1〕加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
〔2〕加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200KW/mを超えず、
〔3〕加熱開始後20分間、防火上有害な亀裂及び穴がない条件を満たす不燃性を有すること。
〔ガス有害性試験〕
昭和51年8月25日建設省告示第1231号によるガス有害試験方法に準じたガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間値が6.8分以上であること。
【請求項2】
強磁性シートは、硬磁性材料の微粉末と、粘結材となる有機高分子エラストマーとの混合体を、シート状に成形し、その少なくとも一面に着磁を施したマグネットシートからなる請求項1に記載の磁性壁パネル。
【請求項3】
強磁性材料を含み弾力性を有する強磁性シートと、硬質化機能およびマット化機能を備えるとともに片面にインキ層を有する透明なコートフィルムとを、コートフィルムのインキ層を強磁性シートに対面させて、下からこの順で接着剤を介して積層させた積層体からなり、防耐火性に関する下記試験の評価基準を満たすとともに、壁面となるコートフィルムの表面が4H以上の鉛筆硬度である磁性壁材シートであって、
強磁性シートの厚さが80μ~400μとされ、
強磁性シートとコートフィルムとの積層体の総厚が155μ~540μとされ、
コートフィルム単体における強磁性シートと非対向面側になる表面の鉛筆硬度が上記積層体でのコートフィルムの表面の鉛筆硬度未満とされ、
コートフィルム単体における強磁性シートと非対向面側になる表面の鉛筆硬度が、壁面となるコートフィルムの表面の鉛筆硬度未満でありながら、下層に強磁性シートが配置される積層構造とすることにより、弾力性を有する強磁性シートがコートフィルムのクッションになることで、壁面となるコートフィルムの表面の鉛筆硬度が4H以上になることを特徴とする磁性壁材シート。
〔発熱性試験〕
ISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、
〔1〕加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
〔2〕加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200KW/mを超えず、
〔3〕加熱開始後20分間、防火上有害な亀裂及び穴がない条件を満たす不燃性を有すること。
〔ガス有害性試験〕
昭和51年8月25日建設省告示第1231号によるガス有害試験方法に準じたガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間値が6.8分以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性壁パネルおよび磁性壁材シートに関する。より詳しくは、防耐火性に加えて、耐擦傷性、消去性および低光沢性を同時に兼ね備え、建造物の室内壁への適用に好適な磁性壁パネルおよび磁性壁材シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、強磁性体を装着した表示片或いは棚等の物品を磁力によって壁面上に吸着保持できる室内磁性壁が人気をよんでいる。このような磁性壁は、室内壁であることから、火災発生時に被害を拡大させない防耐火性に優れることが求められる。下記特許文献1の図2,6には、表装材を積層した防火磁性壁面材が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005-290707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室内用の磁性壁は、防耐火性に加え、壁面にいくつかの条件が求められる。例えば傷のつきにくい耐擦傷性、汚れを容易に消去できる消去性、部屋に開放感や落ち着きを与える低光沢性などであるが、これらの要件を同時に満たすことは難しかった。
【0005】
例えば、耐擦傷性を良くするために表面硬度を高めると、反射率が増大して低光沢性が損なわれる。すなわち、光の照り返しによる不快感や、ぎらつき等による意匠性低下が生じる。そこで光の反射を抑制するために、壁表面にエンボス加工を施すことが考えられるが、エンボス加工を施した場合、表面の微細凹部に汚れが残存しやすく、消去性に劣るといった問題がでてくる。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、防耐火性に加え、耐擦傷性、消去性および低光沢性の要件を同時に兼ね備えた磁性壁パネルおよび磁性壁材シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段をとる。
なお、本欄(「課題を解決するための手段」の欄)において各構成手段に付した括弧書きの符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すための参考用のものであり、本発明の構成手段をこれに限定するものではない。
【0008】
本発明の一の態様は、強磁性材料を含み弾力性を有する強磁性シート(20,70)と、硬質化機能およびマット化機能を備えるとともに片面にインキ層(32A)を有する透明なコートフィルム(40)とを、コートフィルム(40)のインキ層(32A)を強磁性シート(20,70)に対面させて、下からこの順で接着剤(G)を介して積層させた積層体からなる磁性壁材シート(6A)と、強磁性シート(20,70)における上記インキ層(32A)およびコートフィルム(40)の積層の側と反対側の面において当該磁性壁材シート(6A)と一体化した無機ボード(10)とを備え、防耐火性に関する下記試験の評価基準を満たすとともに、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面が4H以上の鉛筆硬度である磁性壁パネル(6)であって、
強磁性シート(20,70)の厚さが80μ~400μとされ、
強磁性シート(20,70)とコートフィルム(40)との積層体の総厚が155μ~540μとされ、
コートフィルム(40)単体における強磁性シート(20,70)と非対向面側になる表面の鉛筆硬度が上記積層体でのコートフィルム(40)の表面の鉛筆硬度未満とされ、
コートフィルム(40)単体における強磁性シート(20,70)と非対向面側になる表面の鉛筆硬度が、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面の鉛筆硬度未満でありながら、下層に強磁性シート(20,70)が配置される積層構造とすることにより、弾力性を有する強磁性シート(20,70)がコートフィルム(40)のクッションになることで、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面の鉛筆硬度が4H以上になることを特徴とする。
〔発熱性試験〕
ISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、
〔1〕加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
〔2〕加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200KW/mを超えず、
〔3〕加熱開始後20分間、防火上有害な亀裂及び穴がない条件を満たす不燃性を有すること。
〔ガス有害性試験〕
昭和51年8月25日建設省告示第1231号によるガス有害試験方法に準じたガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間値が6.8分以上であること。
【0009】
本態様によると、室内壁に望ましい防耐火性に関する上記試験の評価基準を満たすため、建造物の室内壁への適用に好適である。
また、コートフィルム(40)は硬質化機能を備え、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面が4H以上の鉛筆硬度とされるため、耐擦傷性および消去性を向上できる。さらにコートフィルム(40)は、透明であり且つマット化機能を備えるため、その透明な層を通して見えるインキ層(32A)の低光沢性が確保され、艶消し調の落ち着きのある壁面とすることができる。また、この構成では、壁材フィルム(30)を有さずにインキ層(32A)を表示でき、総厚を薄くできるとともに接着剤層が一層分不要となり、その分だけ防耐火性の度合いを向上させることができる。
なお、磁性壁材シート(6A)と無機ボード(10)との一体化は直接に限らず間接でもよい。例えば、後述のように軟質磁性材料層(60)を介してもよい。
【0010】
本発明の他の態様では、上記磁性壁パネル(6)において、強磁性シートは、硬磁性材料の微粉末と、粘結材となる有機高分子エラストマーとの混合体を、シート状に成形し、その少なくとも一面に着磁を施したマグネットシート(20)からなる。
【0011】
本態様によると、永久磁石としての性質を有するものと有さないいずれの磁性体も磁着できる壁面(11)として機能する。
【0012】
本発明の他の態様では、強磁性材料を含み弾力性を有する強磁性シート(20,70)と、硬質化機能およびマット化機能を備えるとともに片面にインキ層(32A)を有する透明なコートフィルム(40)とを、コートフィルム(40)のインキ層(32A)を強磁性シート(20,70)に対面させて、下からこの順で接着剤(G)を介して積層させた積層体からなり、防耐火性に関する下記試験の評価基準を満たすとともに、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面が4H以上の鉛筆硬度である磁性壁材シート(6A)であって、
強磁性シート(20,70)の厚さが80μ~400μとされ、
強磁性シート(20,70)とコートフィルム(40)との積層体の総厚が155μ~540μとされ、
コートフィルム(40)単体における強磁性シート(20,70)と非対向面側になる表面の鉛筆硬度が上記積層体でのコートフィルム(40)の表面の鉛筆硬度未満とされ、
コートフィルム(40)単体における強磁性シート(20,70)と非対向面側になる表面の鉛筆硬度が、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面の鉛筆硬度未満でありながら、下層に強磁性シート(20,70)が配置される積層構造とすることにより、弾力性を有する強磁性シート(20,70)がコートフィルム(40)のクッションになることで、壁面(11)となるコートフィルム(40)の表面の鉛筆硬度が4H以上になることを特徴とする。
〔発熱性試験〕
ISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、
〔1〕加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、
〔2〕加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200KW/mを超えず、
〔3〕加熱開始後20分間、防火上有害な亀裂及び穴がない条件を満たす不燃性を有すること。
〔ガス有害性試験〕
昭和51年8月25日建設省告示第1231号によるガス有害試験方法に準じたガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間値が6.8分以上であること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、防耐火性に加え、耐擦傷性、消去性および低光沢性の要件を同時に兼ね備えた磁性壁パネルおよび磁性壁材シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る第1実施形態の磁性壁パネルの断面図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の磁性壁パネルの一部分解断面図である。
図3】コートフィルムをより詳しく示す断面図である。
図4】磁性壁パネルの製作手順を示す流れ図である。
図5】ドライラミネータにより磁性壁材シートを製作するときの具体的製作手順を示す図である。
図6】本発明に係る磁性壁パネルを備えた磁性壁の斜視図である。
図7】本発明に係る第2実施形態の磁性壁パネルの断面図である。
図8】本発明に係る第2実施形態の磁性壁パネルの一部分解断面図である。
図9】本発明に係る第3実施形態の磁性壁パネルの断面図である。
図10】本発明に係る第3実施形態の磁性壁パネルの一部分解断面図である。
図11】本発明に係る第4実施形態の磁性壁パネルの断面図である。
図12】本発明に係る第4実施形態の磁性壁パネルの一部分解断面図である。
図13】本発明に係る第5実施形態の磁性壁パネルの断面図である。
図14】本発明に係る第5実施形態の磁性壁パネルの一部分解断面図である。
図15】第1実施形態の変形例の磁性壁パネルの一部分解断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明に係る第1実施形態の磁性壁パネル1の断面図、図2は本発明に係る第1実施形態の磁性壁パネル1の一部分解断面図、図3はコートフィルム40をより詳しく示す断面図である。図1,2および後述の各図において、磁性壁パネル1の各構成要素は、図示の便宜上のため横方向に短い形で示されているが、実際は長尺のものである。
【0016】
磁性壁パネル1は、後述の図6に示すように、その壁面11が室内空間側に面するように設置され、強磁性体(磁石としての性質を有するものと有さないもののいずれでもよい)を装着した表示片或いは棚等の物品を磁力によって壁面11に吸着保持できる室内壁材として機能し、図1,2に示すように、石膏ボード10とマグネットシート20と壁材フィルム30とコートフィルム40とをこの順でそれぞれウレタン系の透明な接着剤Gを介して積層した構成とされる。
なお、以下の説明で、マグネットシート20と壁材フィルム30とコートフィルム40の積層体を磁性壁材シート1Aとする。
【0017】
石膏ボード10は、磁性壁パネル1の基体となる板材であり、例えば縦横1800mm×900mm、厚さ12.5mm~15mmのサイズとされる。厚さをこの範囲とした石膏ボード10は、防耐火性に優れ、ボード単体で不燃性を有する。なお、石膏ボード10に代えて、ダイライト(大建工業株式会社の登録商標)やケイカル板(ケイ酸カルシウム板)などを使用してもよい。
【0018】
マグネットシート20は、厚さ80μ~400μとされる可撓性シート状の磁石体であり、その表裏各面は、N極とS極とが交互に縞状に着磁され、一定ピッチの着磁ラインを有する両面多極着磁型となっている。厚さを上記範囲としたのは、防耐火性と磁気吸着力を確保するためである。すなわち400μを超えると防耐火性の確保が難しくなり、80μ未満とすると十分な磁気吸着力が期待できない。
【0019】
このような可撓性シート状の磁石体は、硬磁性材料(例えばバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等のフェライト系磁石材料又はサマリウム・コバルト系磁石、ネオジウム・鉄・ホウ素系磁石等、希土類磁石材料)の微粉末と、粘結材となる少量の有機高分子エラストマー(例えば塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニール共重合体、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム)との混合体を、圧延または押出しなどの成形方式によりシート状に成形し、両面に着磁を施して製作される。なお、マグネットシート20の着磁ピッチは1.0mm以上7.0mm以下であることが好ましい。また、磁着面は相応な磁気吸着力を要するため異方性材料を用いることが好ましい。
【0020】
壁材フィルム30は、厚さ50μ~90μとされたフィルム状の装飾壁面材であり、ベースフィルム31の上面に絵柄や模様が印刷されたインキ層32を備える。ベースフィルム31としては、表面にインキ受理層を形成したポリ塩化ビニール系樹脂、ポリエチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂、または薄いコート紙などを使用することができる。このインキ受理層に用途に応じた印刷によりインクを定着させる。印刷方式には、オフセット印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷などを挙げることができる。このような構成の壁材フィルム30は既に生産もされている。厚さ90μ以下としたのは、磁性壁材シート1Aの総厚を、防耐火性の確保を期待できる最上限の540μ以下に収めるためである。また、必要以上に厚いと、シート磁石からの磁力線の透過率が小さくなり、磁性壁としての磁気吸着能力が劣ってしまうためである。また厚さ50μ以上としたのは適当な引張強度を確保するためである。
【0021】
コートフィルム40は、被積層対象となる壁材フィルム30の表面に硬質化機能とマット化機能を同時に付与するものであり、フィルム状のハードマットコート材である。その構成は、透光性を有したベースフィルム41の上にハードマット層42を積層したものとされる。
ベースフィルム41としては、表面に易接着処理を施したポリエチレン系樹脂等の透明な熱可塑性樹脂を主材料とすることができる。
ハードマット層42は、図3に示すように、アクリル系樹脂材421と、そこに内包された多数のアクリル系の微粒子422とからなる。
【0022】
コートフィルム40は、単体ではそのハードマット層42の表面硬度が鉛筆硬度にして2Hとなっている。
【0023】
ここでいう鉛筆硬度とは、例えばJIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験(引っ掻き試験)で測定したときの硬度のことである。この試験は、鉛筆に一定荷重を加えるとともに、その芯の移動速度を1mm/秒とした状態で行うものとする。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において被試験体の表面に傷が付かなかった最も高い硬度とする。
なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回試験を行い、5回のうち4回以上被試験体の表面にスクラッチなどの外見異常が目視されない場合に、その試験時に使用した鉛筆の硬度を鉛筆硬度とする。例えば、3Hの鉛筆を使用して5回の試験操作を行い、4回以上外見異常が生じなかった場合、当該被試験体の鉛筆硬度は少なくとも3Hである。
【0024】
ここでマグネットシート20と壁材フィルム30とコートフィルム40の積層体である磁性壁材シート1Aは、総厚が155μ~540μであることが好ましい。その理由は次のとおりである。すなわち、現行技術のマグネットシート20では、前述のようにその厚みが400μ以上になると、燃焼試験の評価基準を満足することが難しく、80μ以下になると、十分な磁気吸着力の確保が難しくなる。この観点から、磁性壁材シート1Aの総厚を上記範囲としたのである。
【0025】
次に、磁性壁パネル1の製作方法について説明する。図4は磁性壁パネル1の製作手順を示す流れ図、図5はドライラミネータDLにより磁性壁材シート1Aを製作するときの具体的製作手順を示す図である。なお、図5において、(a)は第1ステップS1のラミネート動作を示し、(b)は第2ステップS2のラミネート動作を示す。
【0026】
磁性壁パネル1の製作は、図4に示すように、第1ステップS1と第2ステップS2と第3ステップS3により行われる。このような3段階の工程のうち第1ステップS1と第2ステップS2は、例えば図5に示すドライラミネータDLを用いて行われる。
図5に示すように、ドライラミネータDLは、巻出機61,62、グラビアコータ63、乾燥炉64、加熱ニップロール65、冷却ロール66および巻取機67などを備える。なお以下の説明では、上記したマグネットシート20、壁材フィルム30およびコートフィルム40は、それぞれロール体として準備されているものとする。
【0027】
第1ステップS1では、図4,5(a)に示すように、壁材フィルム30にコートフィルム40をラミネートしてコート壁材シート50を製作する。
具体的には、図5(a)に示すように、巻出機61に壁材フィルム30のロール体がセットされ、巻出機62にはコートフィルム40のロール体がセットされる(図4のステップS11)。巻出機61から繰り出された壁材フィルム30は、グラビアコータ63でインキ層32側の面に接着剤Gが塗布され(ステップS12)、その後、乾燥炉64にて乾燥が行われ、接着剤希釈用の有機溶剤が除去される(ステップS13)。有機溶剤が除去された壁材フィルム30は、加熱ニップロール65にて、巻出機62から繰り出されたコートフィルム40と熱圧着により貼り合わされ(ステップS14)、冷却ロール66で冷却されて(ステップS15)、巻取機67でコート壁材シート50として巻き取られる(ステップS16)。巻き取られたコート壁材シート50は所定時間の養生がなされる(ステップS17)。
【0028】
次の第2ステップS2では、図4,5(b)に示すように、マグネットシート20に、第1ステップS1で製作したコート壁材シート50をラミネートして磁性壁材シート1Aとする。
具体的には、巻出機61,62にセットされるロール体の付け替えが行われる。すなわち、図5(b)に示すように、巻出機61にコート壁材シート50のロール体がセットされ、巻出機62にマグネットシート20のロール体がセットされる(ステップS21)。巻出機61から繰り出されたコート壁材シート50は、グラビアコータ63でベースフィルム31側の面に接着剤Gが塗布され(ステップS22)、その後、乾燥炉64にて乾燥が行われ、接着剤希釈用の有機溶剤が除去される(ステップS23)。有機溶剤が除去されたコート壁材シート50は、加熱ニップロール65にて、巻出機62から繰り出されたマグネットシート20と熱圧着により貼り合わされ(ステップS24)、冷却ロール66で冷却後(ステップS25)、巻取機67で磁性壁材シート1Aとして巻き取られる(ステップS26)。巻き取られた磁性壁材シート1Aは所定時間の養生がなされる(ステップS27)。
【0029】
最後の第3ステップS3では、貼りつけ対象となる石膏ボード10に応じたサイズに磁性壁材シート1Aを切断後、石膏ボード10の表面に接着剤を塗布し、当該表面に磁性壁材シート1Aのマグネットシート20における壁面11側とならない方の磁着面を重ね合わせて接着する。なお接着剤の載りをよくするため、磁性壁材シート1Aの裏側面、つまりマグネットシート20における壁面11側とならない方の磁着面に不織布を設けることも可能である。また石膏ボード10の表面に接着剤を塗布して磁性壁材シートを接着するのではなく、マグネットシート20の上記磁着面に予め離型紙付の粘着テープを設けておき、離型紙を剥離して石膏ボード10の表面に接着するようにしてもよい。これらの場合の不織布や離型紙付の粘着テープについても上記ドライラミネータDLにより形成することができる。
【0030】
以上のようにして製作された磁性壁パネル1および中間体である磁性壁材シート1Aは、それぞれISO5660-1に準拠し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施工令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において〔1〕加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、〔2〕加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200KW/mを超えず、〔3〕加熱開始後20分間、防火上有害な亀裂及び穴がない条件を満たす不燃性を有する。
【0031】
更に、昭和51年8月25日建設省告示第1231号によるガス有害試験方法に準じたガス有害性試験において、マウスの平均行動停止時間値が6.8分以上であるという評価基準を満たしている。すなわち、被試験体を加熱炉内で電気ヒータからの輻射熱と接炎により加熱し、発生するガスを吸入した8匹のマウスが行動停止に至るまでの時間(行動停止時間)の平均値X及び標準偏差σを求め、次式によりマウスの行動停止時間Xsを求める。
Xs=X-σ
Xsの値が6.8分(標準的な木材におけるマウスの行動停止時間)よりも大きい場合を合格とする評価基準を満たしている。ここで、行動停止時間の平均値からその標準偏差を引いた値を合否の判断基準としているのは、材料及び試験結果のバラツキを含めて、評価しようとする考え方によるものである。
【0032】
また、JISK5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験に準ずる試験を行った結果、壁面11となるハードマット層42の表面は、鉛筆硬度が6Hとなっていた。
【0033】
この磁性壁パネル1は、室内用の磁性壁の壁材パネルとして使用され、その具体例を、図6を参照して説明する。
図6は本発明に係る磁性壁パネル1を備えた磁性壁100の斜視図である。
図6に示すように、磁性壁100は、磁性壁パネル1の壁面11を外側、すなわち室内空間に向けた状態で、合板、コンクリート、または軽金属などを基材とした壁下地80に対し、釘、ビス、接着剤、ステープルなどで留付け固定した構成とされる。
【0034】
これによって、磁性壁パネル1は、室内磁性壁として機能する。すなわち、表面に意匠が施されるとともに、強磁性体を装着した表示片或いは棚等の物品などを磁気吸着できる。
【0035】
次に、この磁性壁パネル1及び磁性壁材シート1Aの備える優利点について説明する。
【0036】
磁性壁パネル1及び磁性壁材シート1Aによると、防耐火性に関する前述の試験の評価基準を満たすため、建造物の室内壁として好適である。
【0037】
また、磁性壁パネル1及び磁性壁材シート1Aは、トップ層として、アクリル系樹脂材421にアクリル系の微粒子422を内包したコートフィルム40を設けたことにより、入射光がアクリル系の微粒子422の表面で乱反射拡散を起こすようにしている。これにより、すぐ下層に存在する壁材フィルム30における絵柄や模様の下地、つまりインキ層32が艶消し状態となって見えるようになり、壁面11では、光の照り返しによる不快感や、ぎらつき等による意匠性の低下が防止される。また、壁面11をプロジェクタの映写面として使用した場合、映写光が局所的に明るくなるホットスポットの発生を抑制することができ、視線角度によらない見やすい像を映し出すことができるようになる。
【0038】
上述した微粒子422の表面で乱反射拡散を起こさせるという本方式は、壁面にエンボス加工を施すものとは異なり、壁面11における平坦度を高めることができ消去性にも優れる。
【0039】
ところで、このハードマット層42は単体では鉛筆硬度が2Hであるが、最下層にマグネットシート20が配置される積層構造とすることで、6Hという、出願人の予想を遙かに超えた大幅な鉛筆硬度の向上を達成した。その物理的理由については現段階では明確になっていないが、下層に配置された弾力性のあるマグネットシート20がクッションになることにより、壁面11での鉛筆の滑りが悪くなり、硬さが増すのではないかということが考えられる。この硬度により、壁面11の耐擦傷性および消去性がより一層確保される。なお、鉛筆硬度が4H以上であれば、耐擦傷性および消去性の観点からかなり有効である。
【0040】
消去性が良いことから、壁面11には、ホワイトボード用マーカー等の筆記具での書込み消去が自在となる。このため、プロジェクタの映写面として使用した場合、映像とともに書込み可能な壁面とすることができる。また、子供部屋に設置した場合に効を奏する。例えば、磁性壁100の壁面11上に落書き用のホワイトボードを磁着させたときに、子供の習性としてボード面からはみ出して壁面にまで描いてしまうことが多いが、このようにボード面からはみ出して描いてしまった場合でも、壁面11上のインクを容易に消去することができる。
【0041】
このように、磁性壁パネル1及び磁性壁材シート1Aは、防耐火性を有することに加え、壁面11に傷のつきにくい耐擦傷性、汚れを容易に消去できる消去性、および、光沢性の低減の要件を同時に兼ね備えている。
【0042】
その他の優利点としては、次のようなものが挙げられる。
【0043】
例えば、磁性壁パネル1の壁面11に磁着させる物品として、マグネットシート20と同じ着磁ピッチのマグネットシートを装着したものを用意した場合、物品と壁面11とは、それぞれのマグネットシートにおける縞状の磁極の異極同士が水平状態で磁着しあうようにできる。このとき物品は、着磁ラインに平行な水平方向には容易にスライドさせることができるが、着磁ラインに直交する鉛直方向には容易にスライドさせることができない。それ故、労力を要せずに物品を水平に固定することが可能になる。
また、マグネットシートや、マグネットシートを装着した棚類やディスプレイ物は勿論、極めて薄い鋼板、具体的には出願人製のスチールペーパー(登録商標)等に印刷した表示物を磁力で保持するための壁面として有効である。
【0044】
〔第2実施形態〕
図7は本発明に係る第2実施形態の磁性壁パネル2の断面図、図8は本発明に係る第2実施形態の磁性壁パネル2の一部分解断面図である。
図7,8に示すように、第2実施形態の磁性壁パネル2は、第1実施形態の磁性壁パネル1における石膏ボード10とマグネットシート20との間にスチールシート60を介在させた構成とされる。その他の構成については、第1実施形態の磁性壁パネル1と同一であり、同一構成要素については、同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0045】
スチールシート60は、厚さ0.05mm~0.35mmの箔またはシート状のスチールとされ、第1実施形態の磁性壁材シート1Aのマグネットシート20における壁材フィルム30の非積層面を接着面としてマグネットシート20と一体化される。スチールシート60は、マグネットシート20にヨーク効果を付与する部材として機能する。厚さを上記範囲としたのは次の理由による。すなわち厚さ0.35mm以上では、必要以上に重量が重くなり、0.05mm以下では、相応なヨーク効果が期待できないためである。なお、厚さが0.08mm以下であれば、磁性壁パネル2を回転刃により切断加工する際に、火花が発生しないという効果がある。
【0046】
このような磁性壁パネル2は、次のようにして製作される。すなわち、図4に示した磁性壁材シート1Aの養生(ステップS27)が終了した後に、図示は省略するが、巻出機61,62にセットされるロール体の付け替えが行われる。
具体的には、巻出機61に磁性壁材シート1Aのロール体がセットされ、巻出機62にスチールシート60のロール体がセットされる。巻出機61から繰り出された磁性壁材シート1Aは、グラビアコータ63で磁着面に接着剤Gが塗布され、その後、乾燥炉64にて乾燥が行われ、接着剤希釈用の有機溶剤が除去される。有機溶剤が除去された磁性壁材シート1Aは、加熱ニップロール65にて、巻出機62から繰り出されたスチールシート60と熱圧着により貼り合わされ、冷却ロール66で冷却後、巻取機67で磁性壁材シート2Aとして巻き取られる。巻き取られた磁性壁材シート2Aは所定時間の養生がなされる。
最後のステップでは、第1実施形態と同様に、貼りつけ対象となる石膏ボード10に応じたサイズに磁性壁材シート2Aを切断後、石膏ボード10の表面に接着剤を塗布し、当該表面に磁性壁材シート2Aのスチールシートの面を重ね合わせて接着する。
【0047】
第2実施形態の磁性壁パネル2では、磁性壁材シート1Aのマグネットシート20における壁材フィルム30の非積層面を接着面としてスチールシート60がマグネットシート20と一体化される。つまり磁性壁材シート1Aにおけるマグネットシート20の背面、言い換えればマグネットシート20の磁着面のうち壁面11とならない側の磁着面にスチールシート60(軟磁性体)を配置することでバックヨーク効果を生じさせる。これにより、第1実施形態の磁性壁パネル1の備える好適特徴に加えて、壁面11での高い表面磁束密度を確保し、磁気吸着力を高めることができる。
【0048】
〔第3実施形態〕
図9は本発明に係る第3実施形態の磁性壁パネル3の断面図、図10は本発明に係る第3実施形態の磁性壁パネル3の一部分解断面図である。
図9に示すように、第3実施形態の磁性壁パネル3は、第1実施形態の磁性壁パネル1におけるマグネットシート20に代えて、本出願人製のアイアンシート(登録商標)70を備えた構成とされる。その他の構成については、第1実施形態の磁性壁パネル1と同一であり、同一構成要素については、同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0049】
アイアンシート70は、軟磁性材料の微粉末と、粘結材となる少量の有機高分子エラストマーとの混合体を、圧延または押出しなどの成形方式によりシート状に成形したものである。
このような磁性壁パネル3を製作するにあたっては、図4のステップS21および図5(b)におけるマグネットシート20のロール体に代えて、アイアンシート70のロール体を取付ける。そして実施形態1と同様な製作要領で、まずアイアンシート70を備えた磁性壁材シート3Aを製作し、この磁性壁材シート3Aを所定のサイズに切断して石膏ボード10に接着する。
【0050】
磁性壁パネル3は、第1,2実施形態の磁性壁パネル1,2と同様に、強磁性体を磁気吸着できる磁性壁として機能するが、壁面に吸着することができるのは、永久磁石の性質を有するものに限られる。防耐火性および表面性能については、第1,2の実施形態の磁性磁パネル1,2と同様の効果を奏する。
【0051】
〔第4実施形態〕
図11は本発明に係る第4実施形態の磁性壁パネル4の断面図、図12は本発明に係る第4実施形態の磁性壁パネル4の一部分解断面図である。
図11,12に示すように、第4実施形態の磁性壁パネル4は、第3実施形態の磁性壁パネル3における石膏ボード10とアイアンシート70との間にスチールシート60を介在させた構成とされる。その他の構成については、第3実施形態の磁性壁パネル3と同一であり、同一構成要素については、同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0052】
本実施形態の磁性壁パネル4では、第3実施形態の磁性壁材シート3Aのアイアンシート70における壁材フィルム30の非積層面を接着面として、スチールシート60がアイアンシート70と一体化される。アイアンシート70は、スチールシート60に対して軽量化を図れることから、壁材の構成材として有利であるが、スチールシート60ほどの磁気吸着力は得られない。ここで用いられるスチールシート60は、アイアンシート70だけでは得られない不足分の磁気吸着力を補う部材として機能する。
【0053】
このような磁性壁パネル4は、次のようにして製作される。すなわち、第3実施形態の磁性壁材シート3Aに対して、これまでと同様な製作要領でドライラミネータDLによりスチールシート60を積層させ、スチールシート60を積層した磁性壁材シート4Aを得る。この磁性壁材シート4Aを所定サイズに切断し石膏ボード10に接着する。
【0054】
第4実施形態の磁性壁パネル4では、防耐火性および表面性能については、第3実施形態の磁性壁パネル3と同様の効果を奏する。それとともに、アイアンシート70だけでは足りない磁気吸着力を補うことができる。
【0055】
〔第5実施形態〕
図13は本発明に係る第5実施形態の磁性壁パネル5の断面図、図14は本発明に係る第5実施形態の磁性壁パネル5の一部分解断面図である。
図13,14に示すように、第5実施形態の磁性壁パネル5は、第4実施形態の磁性壁パネル4におけるスチールシート60とアイアンシート70の積層順序を反対にした構成とされる。その他の構成については、第4実施形態の磁性壁パネル4と同一であり、同一構成要素については、同一の符号を付しそれらの説明を省略する。
【0056】
このような磁性壁パネル5は、次のようにして製作される。すなわち、図4のステップS21および図5(b)におけるマグネットシート20のロール体に代えて、スチールシート60のロール体を取付ける。そして実施形態1と同様な製作要領で、まずスチールシート60を備えた磁性壁材シートを製作し、次いでこのスチールシート60を備えた磁性壁材シートに、アイアンシート70を積層した磁性壁材シート5Aを得る。この磁性壁材シート5Aを所定のサイズに切断して石膏ボード10に接着する。
【0057】
第5実施形態の磁性壁パネル5では、図11の第4実施形態の磁性壁パネル4Aと同様の効果を奏するとともに、防耐燃性についてはさらに優れる。アイアンシート70がスチールシート60と石膏ボード10との両方、つまり不燃材料により挟み込まれる形になるためである。また、スチールシート60がアイアンシート70よりも上層、つまり壁面11に近い方に配置される形となるため、壁面11上での磁気吸着力は、磁性壁パネル4よりも強い。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上に開示した実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【0059】
例えば、壁材フィルム30のベースフィルム31は、アルミウム箔等の金属箔としてもよい。この場合、ベースフィルム自体が燃えない材質であるため、磁性壁材シート全体としての防耐燃性の効果をより一層高めることができる。
【0060】
また、マグネットシート20の下面と、マグネットシート20の上面および壁材フィルム30の下面の間との少なくとも一方に、厚さが例えば10μ~80μのアルミウム箔等の金属箔を設けることも可能である。この場合、マグネットシート20および壁材フィルム30の少なくとも一方が金属箔により被覆される形となるので、火災時に外部からの熱気を遮断し、火炎がマグネットシート20の側に達するのを阻止し、磁性壁材シートの全体としての防耐燃性の効果をより一層高めることができる。
ここで金属箔の厚さを上記範囲としたのは、10μ以下では防耐燃性向上の効果が期待できず、80μ以上では壁面11での磁気吸着力が弱まる可能性が大きいためである。この金属箔を耐腐食性の強いものとすることで、壁材としての耐久年数を向上させることもできる。なお、以上の構成とした場合、磁性壁材シートの総厚は、上記実施形態の総厚よりも、金属箔の分だけ厚くなる。
【0061】
また、スチールシート60に代えて、シート状のフェライト系ステンレススチール(例えばSUS430)を用いてもよい。ステンレススチール(SUS430)は、永久磁石を吸着する性質を有するとともに、ヨーク効果を得ることが可能である。また、厚さが0.1mm以下であれば、回転刃による切断加工時に火花が発生しない。
【0062】
また、上述の実施の形態では、マグネットシート20の表面にフィルム状の各基材をラミネートしたが、塗布液を順次塗布硬化させる形態としてもよい。また、上述の実施の形態では、マグネットシート20またはアイアンシート70の片面側だけにスチールシート60やステンレススチールシートを貼着させる例を示したが、これらを両面に貼着させることも可能である。
【0063】
また、上述の実施の形態では、マグネットシート20とコートフィルム40との間に、インキ層32が予め形成された壁材フィルム30を設けたが、例えば図15に示すように、コートフィルム40におけるベースフィルム41の裏側面、すなわちハードマット層42の非積層側の面にインキ層32Aを直接形成し、このコートフィルムをマグネットシート20に接着剤を介して直接に貼着させることも可能である。この構成では、壁材フィルム30を有さずにインキ層32Aを表示でき、総厚を薄くできるとともに接着剤層が一層分不要となり、その分だけ防耐火性の度合いを向上させることができる。
上述の各実施の形態では、所定厚さとされた石膏ボード10、マグネットシート20、壁材フィルム30、コートフィルム40、スチールシート60、アイアンシート70などはそれぞれ不燃要素であるが、これらの積層体も全体として不燃性を有していることも大きな特徴である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
建造物の室内壁への適用に好適な磁性壁パネルおよび磁性壁材シートとして幅広く活用できる。
【符号の説明】
【0065】
6 磁性壁パネル
6A 磁性壁材シート
10 石膏ボード(無機ボード)
20 マグネットシート(強磁性シート)
32A インキ層
40 コートフィルム
70 アイアンシート(強磁性シート)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15